説明

折り返し部付き衣類

【課題】折り返しの目印となり、また、折り返し位置が毎回同じで一義的に整然と決まり、不規則な折り目や嵩張りができず、着用中の動作によっても、折り返し部のずり上がりやずり下がり等を無くし、折り返し状態を常に整然と維持させることができ、着崩れしない折り返し部付き衣類を提供すること。
【解決手段】折り返しによって長さを調節可能とされる筒状部2を備え、この筒状部2が経編地又は緯編地で構成されている衣類1において、前記筒状部2に編み糸密度の粗部5が前記筒状部2の周方向に沿って2列で細幅環状に形成されており、前記2列の編み糸密度の粗部5の間には、編み糸密度の密部6が形成されており、これら2列の編み糸密度の粗部5とその間の編み糸密度の密部6とで折り返し部7が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折り返すことによって長さを調節可能とされた筒状部を備えた折り返し部付き衣類に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ウエスト部を広幅に形成してハイウエスト状態に伸ばして使用したり、又は、下方に折り返して通常のウエスト状態で使用したりできるようにしたマタニティショーツや、袖丈及び/又は脚丈を折り返して調節可能とした乳幼児服が公知である(例えば、特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特許第3578309号公報
【特許文献2】特開平10−96106号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1のものでは、妊娠中期まではウエスト部を伸ばしてハイウエスト状態にして着用して下腹部の安定感と保温効果を付与し、妊娠後期には、ウエスト部を下方に折り返して着用して下腹部のサポート力を強くし、安定感と着脱容易性を付与するようにしているが、このウエスト部には、折り返しのための目印や折り返し状態を保持させるための工夫がされていない。そのため、折り返し位置及び折り返し状態が毎回変化し、整然とした折り返し状態で着用することができず、不自然な折り返しラインの状態、例えば、折り目が斜めになった状態で癖付けされること等が避けられない上、折り返し状態での着用中に、着用者の動作に伴って折り返し位置が上下方向に容易にずれ動き、着崩れ状態となる等の問題点があった。
【0004】
また、特許文献2のものでも、折り返しを容易とし、その折り返し状態を安定して保持させるための工夫がされておらず、上記と同様な問題点があった。
本発明は、従来の上記問題点に鑑みて開発されたもので、その目的とするところは、折り返しの目印となり、また、折り返し位置が毎回同じで一義的に整然と決まり、不規則な折り目や嵩張りができず、着用中の動作によっても、折り返し部のずり上がりやずり下がり等を無くし、折り返し状態を常に整然と維持させることができ、着崩れしない折り返し部付き衣類を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するために本発明は、折り返しによって長さを調節可能とされる筒状部を備え、この筒状部が経編地又は緯編地で構成されている衣類において、前記筒状部に編み糸密度の粗部が前記筒状部の周方向に沿って2列で細幅環状に形成されており、前記2列の編み糸密度の粗部の間には、編み糸密度の密部が形成されており、これら2列の編み糸密度の粗部とその間の編み糸密度の密部とで折り返し部が形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、2列の編み糸密度の粗部が筒状部の他の部分とは異なる外観を呈することになる。これによって、2列の編み糸密度の粗部と、その間の編み糸密度の密部とが折り返し時の目印となる。また、2列の編み糸密度の粗部が筒状部のくびれ部分となり、筒状部の折り返しを容易化することができると共に、毎回、同じ位置で筒状部を整然と折り返すことができ、不規則な折り目や嵩張りができることを防止することができる。また、着用中の動作によっても、折り返し部のずり上がりやずり下がり等を無くし、折り返し状態を常に整然と維持させることができ、着崩れしない折り返し部付き衣類を提供することができる。なお、編み糸密度の粗部は、1列だけであると、折り返し状態が不安定となるが、2列で形成することにより、2列の間の編み糸密度の密部が折り目となり、この折り目が両側の編み糸密度の粗部で支持されることにより、折り返し状態を安定させることができる。
【0006】
前記筒状部が経編地で構成されている場合では、該筒状部が弾性糸と非弾性糸とで編成されており、前記折り返し部における編み糸密度の粗部は、弾性糸なしで非弾性糸のみで編成された糸抜き編目部として形成されており、また、編み糸密度の密部は、弾性糸が挿入されて弾性糸と非弾性糸とで編成された正規編目部として形成されていることを特徴としている。
この構成によれば、2列の糸抜き編目部が筒状部の他の部分の編組織と異なる外観を呈することになる。これによって、2列の糸抜き編目部と、その間の正規編目部とが折り返し時の目印となる。また、2列の糸抜き編目部が筒状部のくびれ部分となり、筒状部の折り返しを容易化することができると共に、毎回、同じ位置で筒状部を整然と折り返すことができ、不規則な折り目や嵩張りができることを防止することができる。また、2列の糸抜き編目部を除いて筒状部が弾性糸と非弾性糸とで編成されているため、筒状部の編地に弾性が付与され、着用者へのフィット性及び着脱性を向上させることができる。しかも、着用中の動作によっても、折り返し部のずり上がりやずり下がり等を無くし、折り返し状態を常に整然と維持させることができ、着崩れしない折り返し部付き衣類を提供することができる。また、折り返し位置の目印は、筒状部を編成している2本の糸の一方を供給しないで他方の糸だけで編成させているため、容易に形成することができる。なお、糸抜き編目部は、1列だけであると、折り返し状態が不安定となるが、2列で形成することにより、2列の間の正規編目部が折り目となり、この折り目が両側の糸抜き編目部で支持されることにより、折り返し状態を安定させることができる。
【0007】
前記2列の糸抜き編目部は、編目1つ分の幅で形成されており、その間の前記正規編目部は、編目1つ分〜複数編目分の幅で形成されていることが望ましい。
この構成によれば、筒状部を構成している編地の強度にそれほど悪影響を与えることなく折り返し位置の目安を体裁良く形成させることができる。しかも、2列の糸抜き編目部が正規編目部を間に挟んで形成されているため、折り返しを容易化することができ、その上、折り返し状態を安定して保持させることができ、着用中の動作に対するずれの防止作用を向上させることができる。また、正規編目部は、編目1つ分〜複数編目分の幅で形成すればよく、これを外れると折り曲げ状態が不安定となったり、強度低下等の問題がある。
【0008】
また、前記弾性糸は、前記非弾性糸よりも太い糸が使用されているのが好ましい。
この構成によれば、筒状部の他の編組織に対する糸抜き編目部の外観上の違いが表現し易くなり、折り返し位置の目安を明瞭化できる。
また、前記筒状部が緯編地で構成されている場合では、前記折り返し部における編み糸密度の粗部は、編み糸のループ長が筒状部の他の部分よりも長く編成された長ループ編目部として形成されており、また、編み糸密度の密部は、編み糸のループ長が筒状部の他の部分と同一として編成された正規ループ編目部として形成されていることを特徴としている。
【0009】
この構成によれば、2列の長ループ編目部が筒状部の他の部分の編組織と異なる外観を呈することになる。これによって、2列の長ループ編目部と、その間の正規ループ編目部とが折り返し時の目印となる。また、2列の長ループ編目部が筒状部のくびれ部分となり、筒状部の折り返しを容易化することができると共に、毎回、同じ位置で筒状部を整然と折り返すことができ、不規則な折り目や嵩張りができることを防止することができる。また、着用中の動作によっても、折り返し部のずり上がりやずり下がり等を無くし、折り返し状態を常に整然と維持させることができ、着崩れしない折り返し部付き衣類を提供することができる。また、折り返し部は、筒状部を編成している編み糸のループ長を変更させるだけで構成できるため、容易に形成することができる。なお、長ループ編目部は、1列だけであると、折り返し状態が不安定となるが、2列で形成することにより、2列の間の正規ループ編目部が折り目となり、この折り目が両側の長ループ編目部で支持されることにより、折り返し状態を安定させることができる。
【0010】
さらに、前記折り返し部が適用される衣類の筒状部は、ガードル類のウエスト部及び/又は裾口部、シャツ類の袖口部及び/又は裾口部及び/又はタートルネック部、パンツ類のウエスト部及び/又は裾口部、腹巻若しくはウエストニッパー類の胴部、靴下類の穿き口部の何れにでも適用することができる。
この構成によれば、適用する衣類の筒状部について、前記した利点を得ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、折り返しの目印となり、また、折り返し位置が毎回同じで一義的に整然と決まり、不規則な折り目や嵩張りができず、着用中の動作によっても、折り返し部のずり上がりやずり下がり等を無くし、折り返し状態を常に整然と維持させることができ、着崩れしない折り返し部付き衣類を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1(A)は本発明を適用した衣類の筒状部の概略正面斜視図であり、(B)はその縦断側面図、(C)はその折り返し状態の縦断側面図であって、1は衣類、2は折り返しによって長さを調節可能とされる筒状部を示している。
この筒状部2は、経編地4A又は緯編地4Bのいずれで構成されていてもよい。そして、この筒状部2には、編み糸密度の粗部5が筒状部2の周方向に沿って2列で細幅環状に形成されており、この2列の編み糸密度の粗部5の間には、編み糸密度の密部6が形成されており、これら2列の編み糸密度の粗部5とその間の編み糸密度の密部6とで折り返し部7が形成されている。
【0013】
上記編み糸密度の密部6は、折り返し部7以外の他の部分における筒状部2の編み糸密度と同一とされている(これに限定されず、異ならせてもよい)。
筒状部2が経編地4Aで構成されている場合では、この筒状部2は、後述するように、弾性糸3aと非弾性糸3bとで編成されている(図4、図5参照)。
そして、この経編地4Aにおける編み糸密度の粗部5は、弾性糸3aなしで非弾性糸3bのみで編成された糸抜き編目部5aとして、前記筒状部2の周方向に沿って2列で細幅環状に形成されている(図1参照)。そして、前記2列の糸抜き編目部5aの間には、前記弾性糸3aが挿入されて弾性糸3aと非弾性糸3bとで編成された正規編目部6aが前記筒状部2の周方向に沿って細幅環状に形成されている。これら2列の糸抜き編目部5aとその間の正規編目部6aとで折り返し部7が形成されている。この折り返し部7は、筒状部2の折り返し予定位置に、経編地4Aの編成段階で形成される。
【0014】
図2は本発明に使用する経編地4Aの構成例を示す概略図であって、4個の製品用生地部4a〜4dを一連に経編で形成した場合を例示している。各製品用生地部4a〜4d内には前記折り返し部7が2箇所に形成されており、各製品用生地部4a〜4dの境界にはヘム部4eが形成され、両端には、端生地部4fが形成されている。
図2の経編地4Aは、例えば、次の構成からなっている。
糸種:NY56−24−セミダル
LY310−127クリアー
混率:NY76.5% LY23.5%
組織:サテンネット
上記NY56−24−セミダルは、NY=ナイロン糸(非弾性糸)で太さが56デシテックス、フィラメント数が24本、光沢がセミダル(やや暗色)を表しており、LY310−127クリアーは、LY=オペロンテックス社のポリウレタン糸(弾性糸)の商品名で太さが310デシテックス、商品番号127で光沢がクリアー(明色)を表している。
【0015】
前記経編地4Aのヘム部4eは、上記とは別の糸が、各製品用生地部4a〜4dの境界の両側の編地の端部を繋ぎ止めるように編み込まれ、この糸が編地4の編成後に抜き取られることによって、各製品用生地部4a〜4dが相互に分離可能とされている。
各製品用生地部4a〜4dの折り返し部7付近は、図3に示すような糸配列で構成されている。即ち、図3の糸配列は、製品用生地部4a〜4d及び正規編目部6aでは、弾性糸3aと非弾性糸3bとが1:1で配列されているが、糸抜き編目部5aにおいては、弾性糸3aが配列されず非弾性糸3bだけが配列されていることを表しており、○印は糸が配列されている状態、×印は糸が配列されていない状態(糸抜き状態)を表している。
【0016】
従って、図3において、糸抜き編目部5aは、弾性糸3aが×印、非弾性糸3bが○印で表されている。そして、糸抜き編目部5aは2列で形成され、その間に、正規編目部6aが形成されている。
前記2列の糸抜き編目部5aは、それぞれ編目1つ分の幅で形成されており、その間の正規編目部6aは、編目2つ分の幅で形成されている。なお、正規編目部6aは、編目1つ分〜複数編目分の幅で形成してもよい。
前記弾性糸3aは、前記非弾性糸3bよりも太い糸を使用するのが好ましく、また、前記弾性糸3aは、ポリウレタン糸とされ、前記非弾性糸3bは、ナイロン糸とされるのが好ましいが、これに制約されず、糸太さや糸種類は他の組み合わせとしてもよい。
【0017】
図4及び図5は、図2の経編地4Aの編組織の概略例図を示しており、図4がパワーネット組織の概略説明図であり、図5がサテンネット組織の概略説明図である。
図4において、黒点は編み針を表しており、編み針は格子状の交点位置に配置され、図4の左側に非弾性糸3bのみからなる糸抜き編目部5aの編目組織が示されており、図4の右側に弾性糸3aと非弾性糸3bとからなる製品用生地部4a〜4dの編目組織が示されており、正規編目部6aも製品用生地部4a〜4dと同様な編目組織で編成される。
図5は、縦横の格子線の交点位置に編み針が配置され、その編み針に対して、非弾性糸3bの編目組織が図5の左側に示されており、弾性糸3aの編目組織が図5の右側に示されている。この場合においても、製品用生地部4a〜4d及び正規編目部6aの編目組織は、図5の左側の非弾性糸3bの編目組織と右側の弾性糸3aの編目組織とが重ね合わされた様な編み目組織で編成されるものであり、糸抜き編目部5aの部分では、図5の左側の非弾性糸3bのみによる編目組織で編成される。
【0018】
図4及び図5の組織は、6コースを1リピート単位として経編機で反復編成されるものである。
筒状部2が緯編地4Bで構成されている場合では、図6に示すように、編み糸密度の粗部5は、編み糸3cのループ長が筒状部2の他の部分よりも長く編成された長ループ編目部5bとして形成されており、また、編み糸密度の密部6は、編み糸のループ長が筒状部2の他の部分と同一として編成された正規ループ編目部6bとして形成されている。
緯編地4Bの場合、長ループ編目部5bは、筒状部2の折り返し部7となる予定位置に筒状部2の周方向に沿って2列で形成され、その間に、正規ループ編目部6bが形成されている。正規ループ編目部6bは、筒状部2の折り返し部7以外の他の部分と同一のループ長の編目組織で編成される。
【0019】
長ループ編目部5bの編み糸のループ長さは、正規ループ編目部6bの編み糸のループ長に対して、1.5倍〜3倍の範囲とし、好ましくは、2倍程度とするのがよい。
2列の長ループ編目部5bの間に形成する正規ループ編目部6bは、編目にして1編目〜数編目とすればよく、図6は2編目とした場合を例示している。
緯編地4bの場合の編み糸は、特に制約されないものであって、弾性糸単独、又は、非弾性糸単独、或いは、弾性糸と非弾性糸との交編、その他、種々の編組織を採用することができる。
【0020】
図7(A)は、本発明をハイウエストで脚部の裾丈が5分丈のガードル1Aに適用した場合であって、ウエストのくびれ部に折り返し部7を形成し、また、脚部の裾丈が3分丈となる位置に折り返し部7を形成したものであり、図7(B)は、図7(A)のウエスト部を折り返し部7で折り返して通常のウエスト丈とし、脚部の折り返し部7を折り返して3分丈とした場合を表している。なお、脚部の折り返し部7は、省略してもよいし、折り返し部7の位置を他の位置に変更し、或いは、複数段に形成してもよい。
図8(A)は、インナーシャツ1Bの袖部に折り返し部7を形成した場合を例示しており、この場合では、図8(B)に示すように、7分丈を5分丈に、或いは、5分丈を3分丈に折り返すようにした場合を例示している。この場合も、折り返し部7を袖部に複数段で形成してもよい。また、裾口部にも折り返し部7を形成してもよい。さらに、首周りがタートルネックタイプのシャツ類の場合では、タートルネック部に折り返し部7を1段〜複数段に亘って形成してもよい。
【0021】
図9(A)は、腹巻若しくはウエストニッパー1Cに折り返し部7を形成した場合を例示しており、図9(B)に示すように、折り返して使用可能とすることができる。
図示は省略したが、靴下類の穿き口部に同様な折り返し部7を形成させることもできる。このように、本発明は、ガードル類のウエスト部及び/又は裾口部、シャツ類の袖口部及び/又は裾口部及び/又はタートルネック部、パンツ類のウエスト部及び/又は裾口部、腹巻若しくはウエストニッパー類の胴部、靴下類の穿き口部等の筒状部の折り返し部に適用することができる。
【0022】
本発明の実施形態は、以上の構成からなり、次に、その作用効果を説明する。
即ち、本発明における衣類の折り返し部7の構造は、折り返しによって長さを調節可能とされる筒状部2を備えた衣類1に適用され、この筒状部2が経編地4A又は緯編地4Bのいずれで構成されていてもよい。
そして、筒状部2には、編み糸密度の粗部5が前記筒状部2の周方向に沿って2列で細幅環状に形成されており、前記2列の編み糸密度の粗部5の間には、編み糸密度の密部6が形成されており、これら2列の編み糸密度の粗部5とその間の編み糸密度の密部6とで折り返し部7が形成されているため、2列の編み糸密度の粗部5が筒状部2の他の部分とは異なる外観を呈することになる。これによって、2列の編み糸密度の粗部5と、その間の編み糸密度の密部6とが折り返し時の目印となる。また、2列の編み糸密度の粗部5が筒状部2のくびれ部分となり、筒状部2の折り返しを容易化することができると共に、毎回、同じ位置で筒状部2を整然と折り返すことができ、不規則な折り目や嵩張りができることを防止することができる。また、着用中の動作によっても、折り返し部7のずり上がりやずり下がり等を無くし、折り返し状態を常に整然と維持させることができ、着崩れしない衣類1の折り返し部7の構造を提供することができる。なお、編み糸密度の粗部5は、1列だけであると、折り返し状態が不安定となるが、2列で形成することにより、2列の間の編み糸密度の密部6が折り目となり、この折り目が両側の編み糸密度の粗部5で支持されることにより、折り返し状態を安定させることができる。
【0023】
また、前記筒状部2が経編地4Aで構成されている場合では、該筒状部2が弾性糸3aと非弾性糸3bとで編成されており、前記折り返し部7における編み糸密度の粗部5は、弾性糸3aなしで非弾性糸3bのみで編成された糸抜き編目部5aとして形成されており、また、編み糸密度の密部6は、弾性糸3aが挿入されて弾性糸3aと非弾性糸3bとで編成された正規編目部6aとして形成されているため、2列の糸抜き編目部5aが筒状部2の他の部分の編組織と異なる外観を呈することになる。
これによって、2列の糸抜き編目部5aと、その間の正規編目部6bとが折り返し時の目印となる。また、2列の糸抜き編目部5aが筒状部2のくびれ部分となり、筒状部2の折り返しを容易化することができると共に、毎回、同じ位置で筒状部2を整然と折り返すことができ、不規則な折り目や嵩張りができることを防止することができる。
【0024】
また、2列の糸抜き編目部5aを除いて筒状部2が弾性糸3aと非弾性糸3bとで編成されているため、筒状部2の編地4に弾性が付与され、着用者へのフィット性及び着脱性を向上させることができる。
しかも、着用中の動作によっても、折り返し部7のずり上がりやずり下がり等を無くし、折り返し状態を常に整然と維持させることができ、着崩れしない衣類1の折り返し部7の構造を提供することができる。
また、折り返し位置の目印は、筒状部2を編成している2本の糸3a、3bの一方3aを供給しないで他方の糸3bだけで編成させているため、容易に形成することができる。なお、糸抜き編目部5aは、1列だけであると、折り返し状態が不安定となるが、2列で形成することにより、2列の間の正規編目部6bが折り目となり、この折り目が両側の糸抜き編目部5aで支持されることにより、折り返し状態を安定させることができる。
【0025】
前記2列の糸抜き編目部5aは、編目1つ分の幅で形成されており、その間の前記正規編目部6bは、編目1つ分〜複数編目分の幅で形成されていることにより、筒状部2を構成している編地4の強度にそれほど悪影響を与えることなく折り返し位置の目安を体裁良く形成させることができる。しかも、2列の糸抜き編目部5aが正規編目部6bを間に挟んで形成されているため、折り返しを容易化することができ、その上、折り返し状態を安定して保持させることができ、着用中の動作に対するずれの防止作用を向上させることができる。また、正規編目部6bは、編目1つ分〜複数編目分の幅で形成すればよく、これを外れると折り曲げ状態が不安定となる。
【0026】
また、前記弾性糸3aは、前記非弾性糸3bよりも太い糸が使用されていることにより、筒状部2の他の編組織に対する糸抜き編目部5aの外観上の違いが表現し易くなり、折り返し位置の目安を明瞭化できる。
そして、前記弾性糸3aは、ポリウレタン糸とされ、前記非弾性糸3bは、ナイロン糸とすることにより、筒状部2をポリウレタン糸からなる弾性糸3aとナイロン糸からなる非弾性糸3bとで編成して着用者へのフィット性及び着脱性を向上させつつ肌触りをソフト化することができると共に、糸抜き編目部5aをナイロン糸の強度で維持させることができる。
【0027】
また、前記筒状部2が緯編地4Bで構成されている場合では、前記折り返し部7における編み糸密度の粗部5は、編み糸のループ長が筒状部2の他の部分よりも長く編成された長ループ編目部5bとして形成されており、また、編み糸密度の密部6は、編み糸のループ長が筒状部2の他の部分と同一として編成された正規ループ編目部6bとして形成されていることによって、2列の長ループ編目部5bが筒状部2の他の部分の編組織と異なる外観を呈することになる。これによって、2列の長ループ編目部5bと、その間の正規ループ編目部6bとが折り返し時の目印となる。また、2列の長ループ編目部5bが筒状部2のくびれ部分となり、筒状部2の折り返しを容易化することができると共に、毎回、同じ位置で筒状部2を整然と折り返すことができ、不規則な折り目や嵩張りができることを防止することができる。また、着用中の動作によっても、折り返し部7のずり上がりやずり下がり等を無くし、折り返し状態を常に整然と維持させることができ、着崩れしない衣類1の折り返し部7の構造を提供することができる。また、折り返し部7は、筒状部2を編成している編み糸3cのループ長を変更させるだけで構成できるため、容易に形成することができる。なお、長ループ編目部5bは、1列だけであると、折り返し状態が不安定となるが、2列で形成することにより、2列の間の正規ループ編目部6bが折り目となり、この折り目が両側の長ループ編目部5bで支持されることにより、折り返し状態を安定させることができる。
【0028】
さらに、前記折り返し部7が適用される衣類1の筒状部2は、ガードル1A類のウエスト部及び/又は裾口部、シャツ1B類の袖口部及び/又は裾口部及び/又はタートルネック部、パンツ類のウエスト部及び/又は裾口部、腹巻若しくはウエストニッパー1C類の胴部、靴下類の穿き口部の何れにでも適用することができ、この構成によれば、適用する衣類1の筒状部2について、前記した利点を得ることができる。
本発明の実施形態は、以上からなるが、本発明は、これらの実施形態にのみ制約されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内で自由に変形して実施することができる。例えば、前記実施形態では、編み糸密度の密部6は、折り返し部7以外の他の部分における筒状部2の編み糸密度と同一とした場合を例示しているが、これに制約されず、異なる編み糸密度としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】(A)は本発明を適用した衣類の筒状部の概略正面斜視図であり、(B)はその縦断側面図、(C)はその折り返し状態の縦断側面図である。
【図2】本発明に用いる経編地の構成例を示す概略図である。
【図3】図2の経編地の折り返し部の糸配列の説明図である。
【図4】本発明に適用される経編地の第1の編組織例の概略説明図である。
【図5】本発明に適用される経編地の第2の編組織例の概略説明図である。
【図6】本発明に適用される緯編地の編組織例の概略説明図である。
【図7】(A)(B)は本発明をガードルに適用した第1実施形態の折り返し前後の概略正面図である。
【図8】(A)(B)は本発明をインナーシャツに適用した第2実施形態の折り返し前後の概略正面図である。
【図9】(A)(B)は本発明を腹巻若しくはウエストニッパーに適用した第3実施形態の折り返し前後の概略正面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 衣類
1A ガードル
1B インナーシャツ
1C 腹巻若しくはウエストニッパー
2 筒状部
3a 弾性糸
3b 非弾性糸
3c 編み糸
4A 経編地
4B 緯編地
4a〜4d 製品用生地部
4e ヘム部
4f 端生地部
5 編み糸密度の粗部
6 編み糸密度の密部
5a 糸抜き編目部
6a 正規編目部
5b 長ループ編目部
6b 正規ループ編目部
7 折り返し部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
折り返しによって長さを調節可能とされる筒状部を備え、この筒状部が経編地又は緯編地で構成されている衣類において、前記筒状部に編み糸密度の粗部が前記筒状部の周方向に沿って2列で細幅環状に形成されており、前記2列の編み糸密度の粗部の間には、編み糸密度の密部が形成されており、これら2列の編み糸密度の粗部とその間の編み糸密度の密部とで折り返し部が形成されていることを特徴とする折り返し部付き衣類。
【請求項2】
前記筒状部が経編地で構成されている場合では、該筒状部が弾性糸と非弾性糸とで編成されており、前記折り返し部における編み糸密度の粗部は、弾性糸なしで非弾性糸のみで編成された糸抜き編目部として形成されており、また、編み糸密度の密部は、弾性糸が挿入されて弾性糸と非弾性糸とで編成された正規編目部として形成されていることを特徴とする請求項1に記載の折り返し部付き衣類。
【請求項3】
前記2列の糸抜き編目部は、編目1つ分の幅で形成されており、その間の前記正規編目部は、編目1つ分〜複数編目分の幅で形成されていることを特徴とする請求項2に記載の折り返し部付き衣類。
【請求項4】
前記弾性糸は、前記非弾性糸よりも太い糸が使用されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の折り返し部付き衣類。
【請求項5】
前記筒状部が緯編地で構成されている場合では、前記折り返し部における編み糸密度の粗部は、編み糸のループ長が筒状部の他の部分よりも長く編成された長ループ編目部として形成されており、また、編み糸密度の密部は、編み糸のループ長が筒状部の他の部分と同一として編成された正規ループ編目部として形成されていることを特徴とする請求項1に記載の折り返し部付き衣類。
【請求項6】
前記折り返し部が適用される衣類の筒状部は、ガードル類のウエスト部及び/又は裾口部、シャツ類の袖口部及び/又は裾口部及び/又はタートルネック部、パンツ類のウエスト部及び/又は裾口部、腹巻若しくはウエストニッパー類の胴部、靴下類の穿き口部の何れかであることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の折り返し部付き衣類。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−133036(P2010−133036A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−307390(P2008−307390)
【出願日】平成20年12月2日(2008.12.2)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】