説明

折畳み式携帯端末

【課題】折畳み式携帯電話機を簡単に開き操作が行えると共に、開き操作を行うボタンができるだけ外観に露出しないようにして見映えのよいものとする。
【解決手段】折畳み式携帯電話機(折畳み式携帯端末)に、第1の筐体3と、第2の筐体5と、これら第1の筐体3と第2の筐体5とを折り畳み開閉自在に連結するヒンジ部6とを設ける。そして、第1の筐体3と第2の筐体5とを閉じた状態から、第1の筐体3を第2の筐体5に対して揺動させることで、第1の筐体3が第2の筐体5に対して自動的に開くようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折畳み式携帯端末に関し、特にその自動開閉構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、折畳み式携帯電話機では、片手で下筐体を持ち、他方の手で上筐体を持ち上げてヒンジ部を中心に開くようになっており、両手を使って開くのが一般的であった。
【0003】
しかし、両手を使って開くのが面倒な場合があり、片手だけでワンタッチで開き操作を行いたいというニーズが増えていた。
【0004】
そこで、例えば特許文献1の折畳み式携帯電話機は、第1筐体と、第2筐体と、第1筐体に固定され、第2筐体を第1筐体に回転自在に連結するためのヒンジ部とを備え、ヒンジ部は、操作部を備え、第2筐体は、操作部の操作に応じて、閉じられた状態を示す第1角度位置から予め決められた角度位置を示す第2角度位置まで開き、操作部の操作がないとき、第1角度位置、第2角度位置、第1角度位置と第2角度位置との間の第3角度位置のいずれか一方の角度位置に維持されるというフリーストップ機能とワンタッチオープン機能とを選択的に利用している。
【0005】
また、特許文献2の折畳み式携帯電話機は、上筐体及び下筐体と、上筐体及び下筐体の境界線に沿って配置された回動軸を中心として上筐体及び下筐体を相対的に回動可能に連結する連結部と、上下の筐体を自動的に開くワンプッシュ自動開き機構と、ワンプッシュ自動開き機構を操作して上下の筐体を開く解除手段とを備え、解除手段の第1操作部及び第2操作部をそれぞれ連結部の両端部に設け、第1操作部及び第2操作部を連動可能とし、使用者の嗜好や使用する形態、状況等に対応して、各操作部を選択的に操作可能としている。
【特許文献1】特開2002−344597号公報
【特許文献2】特開2006−324927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1及び2は、いずれもワンタッチオープンさせるための操作部をヒンジ部の両端に設け、この操作部を押すことでワンタッチオープンが実行されるが、この操作部がヒンジ部の両側面から露出して見映えが悪くなるという問題がある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡単に開き操作が行えると共に、開き操作を行うボタンができるだけ外観に露出しないようにして見映えをよくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明では、第1の筐体を揺動させてヒンジ部を中心に開く操作を行うようにした。
【0009】
具体的には、第1の発明では、第1の筐体と、第2の筐体と、該第1の筐体と第2の筐体とを折り畳み開閉自在に連結するヒンジ部とを備えた折畳み式携帯端末を前提とし、
上記折畳み式携帯端末は、上記第1の筐体と第2の筐体とを閉じた状態から、該第1の筐体を第2の筐体に対して揺動させることで、該第1の筐体が第2の筐体に対して自動的に開くように構成されている。
【0010】
上記の構成によると、従来のようにヒンジ部の側面にロックを解除するための操作ボタンを設ける必要がないので、外観がよく、また、第1の筐体を揺動させるだけで第1の筐体が自動的に開き、第1の筐体のどの部分を押してもよいので、従来のようにヒンジ部に設けたロック解除用ボタンを手探りして操作するのに比べて開操作が極めて容易である。
【0011】
第2の発明では、第1の発明において、
上記ヒンジ部は、
上記第2の筐体のヒンジ部側角部の表面から該第2の筐体の厚さ方向へ膨出する一対の外側ボス部と、
上記第1の筐体のヒンジ部側端部から水平に膨出し、上記一対の外側ボス部に挟持される内側ボス部と、
上記一対の外側ボス部の一方と、上記内側ボス部とに挿通された第1水平ヒンジ軸と、
上記一対の外側ボス部の他方と、上記内側ボス部とに挿通された第2水平ヒンジ軸と、
上記第1水平ヒンジ軸内に設けられ、上記第1の筐体と第2の筐体とを開く方向に付勢すると共に、付勢力を蓄えた状態でロック可能な開操作補助用付勢機構と、
上記第1水平ヒンジ軸に設けられ、上記開操作補助用付勢部材のロックを解除するためのヒンジ側ボタンと、
上記第1の筐体と上記内側ボス部とを連結する垂直ヒンジ軸と、
上記垂直ヒンジ軸の先端側に設けられ、上記第1の筐体の厚さ方向に伸びる揺動軸と、
を備えている。
【0012】
そして、上記第1の筐体は、上記揺動軸に対して揺動可能に支持され、
上記一方の外側ボス部には、上記第1の筐体を揺動させたときに、該第1の筐体の上記ヒンジ部側端部に押されることでスライドし、上記ヒンジ側ボタンを押すロック解除用ボタンが設けられる構成とする。
【0013】
上記の構成によると、ロック解除用ボタンは、ヒンジ部と第1の筐体のヒンジ部側端部との間に露出しているので、従来のようにヒンジ部の側面に露出する場合に比べて外観がよく、また、第1の筐体を揺動させてロック解除用ボタンを押圧するようにすれば、第1の筐体のどの部分を押してもよいので、従来のようにヒンジ部に設けたロック解除用ボタンを手探りして操作するのに比べて開操作が極めて容易である。
【0014】
第3の発明では、第2の発明において、
上記第1の筐体の上記ヒンジ部側端部は、上記垂直ヒンジ軸の軸心から離れるにつれて上記ヒンジ部と隙間を拡げるように傾斜する揺動用テーパ面が形成されている。
【0015】
上記の構成によると、揺動用テーパ面を設けることで、第1の筐体が揺動するスペースが確保され、指で第1の筐体を揺動させやすくなり、開操作がさらに容易となる。
【0016】
第4の発明では、第3の発明において、
上記第1の筐体の上記ヒンジ部側端部の両側に上記揺動用テーパ面が形成され、
上記他方の外側ボス部には、上記ロック解除用ボタンと同様に該外側ボス部から露出する、押し込み不能なダミーボタンが設けられている。
【0017】
上記の構成によると、左右対称にテーパ面とボタンとを設けることで見映えがよくなり、また、そのように構成してもダミーボタン自体は押し込まれないので、第1の筐体の揺動方向を操作し間違えるのが防止される。
【0018】
第5の発明では、第2乃至第4のいずれか1つの発明において、
上記垂直ヒンジ軸には、揺動されて上記ロック解除用ボタンを押し込んだ上記第1の筐体を元の位置に戻すための引き戻し機構が設けられている。
【0019】
上記の構成によると、引き戻し機構により、第1の筐体を揺動させた後に元の位置に戻るので、引き戻し操作が不要となる。また、引き戻し機構の引張力を調整することで軽い衝撃のみで第1の筐体が揺動してロック解除用ボタンが押されるという誤動作が防止される。
【0020】
第6の発明では、第2乃至第5のいずれか1つの発明において、
上記引き戻し機構は、一端が上記垂直ヒンジ軸に連結され、他端が上記第1の筐体に連結された引張コイルバネを含む。
【0021】
上記の構成によると、引張コイルバネは、伸縮動作しか行わないので、必要とするスペースが小さく、コイル数を増やしても、コイルの外径を大きくしない限り第1の筐体の厚さは変わらないので、厚さを抑えながら引張力を強くすることが可能となる。
【0022】
第7の発明では、第2乃至第6のいずれか1つの発明において、
上記ヒンジ側ボタンは、上記第1水平ヒンジ軸の軸方向に伸び、該ヒンジ側ボタンを押圧することで、上記開操作補助用付勢機構のロックを解除可能に構成され、
上記ロック解除用ボタンは、
上記一方の外側ボス部から露出して上記第1の筐体のヒンジ部側端部に押し込まれる被押圧部と、
上記被押圧部から上記ヒンジ側ボタンへ伸びると共に、該ヒンジ側ボタンを上記第1水平ヒンジ軸の軸方向へ押圧する押圧用テーパ部と、
上記ロック解除用ボタンを押し戻して上記被押圧部を露出させる押し戻し用付勢部材と、
を備えている。
【0023】
上記の構成によると、被押圧部のみが露出するので外観がよく、また、被押圧部の進行方向がヒンジ側ボタンの押圧方向と違っていても、押圧用テーパ部の作用により簡単な構成で確実にヒンジ側ボタンが、その押圧方向に押圧される。
【0024】
第8の発明では、第2乃至第7のいずれか1つの発明において、
上記第1の筐体は、上記垂直ヒンジ軸を中心に表裏反転可能に構成されている。
【0025】
上記の構成によると、表裏反転可能な第1の筐体を備える場合でも、簡単な構成で見映えのよい開き操作が容易な折畳み式携帯端末が得られる。
【0026】
第9の発明では、第2乃至第8のいずれか1つの発明において、
上記第1の筐体の表面には、表示部が設けられ、
上記第2の筐体の表面には、操作部が設けられている。
【0027】
上記の構成によると、待機時は傷が入りやすい表示部を内側にして第1の筐体を閉じておき、使用時には第1の筐体を揺動させるだけで開くので、使い勝手がよい。
【0028】
第10の発明では、第2乃至第9のいずれか1つの発明において、
上記第2水平ヒンジ軸及び上記垂直ヒンジ軸は、中空に形成され、該第2水平ヒンジ軸及び垂直ヒンジ軸には、上記第1の筐体内の基板と上記第2の筐体内の基板とを電気的に接続する信号線が挿通されている。
【0029】
上記の構成によると、ヒンジ部内に信号線を通す簡単な構成で第1の筐体と第2の筐体とを電気的に接続しながら、第1の筐体を揺動させるだけで第1の筐体を開くことができる。
【発明の効果】
【0030】
以上説明したように、本発明によれば、第1の筐体を第2の筐体に対して揺動させることで、第1の筐体と第2の筐体とを閉じた状態から第1の筐体が第2の筐体に対して自動的に開くようにしたことにより、簡単に開き操作が行えると共に、開き操作を行うボタンができるだけ外観に露出しないようにして見映えをよくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0032】
図1〜図5に本発明の実施形態にかかる折畳み式携帯端末としての折畳み式携帯電話機1を示し、この折畳み式携帯電話機1は、表面に表示部2を備えた第1の筐体3と、表面に操作部4を備えた第2の筐体5とを備えている。これら第1の筐体3と第2の筐体5とは、ヒンジ部6で折り畳み開閉自在に連結されている。第1の筐体3と第2の筐体5とは、共に略矩形板形状を有し、閉じられた状態で略直方体となって携帯が容易となっている。なお、本実施形態では、説明の都合上、図4における上下左右を折畳み式携帯電話機1の上下左右としている。
【0033】
そして、ヒンジ部6は、第2の筐体5のヒンジ部6側の角部表面から第2の筐体5の厚さ方向へ(表面側へ)膨出する一対の外側ボス部10を有している。また、第1の筐体3のヒンジ部6側端部には、水平、すなわち第1の筐体3の長手方向に膨出して一対の外側ボス部10に挟持される内側ボス部11が形成されている。
【0034】
図6〜図8では、見やすくするために第1の筐体3及びヒンジ部6の内部を見えるようにしている。図6〜図8に示すように、これら一対の外側ボス部10、内側ボス部11及び第1の筐体3内に金属製のヒンジユニット12が内蔵されている。ヒンジユニット12は、右側の外側ボス部10と、内側ボス部11とに挿通された第1水平ヒンジ軸13を備えている。この第1水平ヒンジ軸13は、樹脂等よりなる外筒13aと、中心軸(後述するヒンジ側ボタン15と一体)とが互いに相対回転可能に構成されている。外筒13a内には、第1の筐体3と第2の筐体5とを開く方向に付勢すると共に、付勢力を蓄えた状態でロック可能な開操作補助用付勢機構(図示せず)が設けられている。第1水平ヒンジ軸13には、ヒンジ側ボタン15が右側へ突出している。ヒンジ側ボタン15は、一対の平坦面が対向する位置に配されるように面取りされている。この第1水平ヒンジ軸13の軸方向に伸びるヒンジ側ボタン15を押圧することで、開操作補助用付勢機構のロックを解除可能に構成されている。
【0035】
ヒンジユニット12は、このヒンジ側ボタン15の形状に合わせた貫通孔を一方の右側アーム部16aに有する略コ字状のベース部16を備えている。このベース部16の反対側の左側アーム部16bの貫通孔には、第2水平ヒンジ軸17の左端がかしめ結合されている。
【0036】
ヒンジユニット12は、内側ボス部11に内蔵される、ベース部16よりも幅が狭い略コ字状の回動部18を有している。回動部18の一方の右側アーム18aには、第1水平ヒンジ軸13の外筒13aが回転不能に連結されている。また、第2水平ヒンジ軸17の右端は、回動部18の他方のアーム18bに挿通され、その先端がかしめられている。
【0037】
回動部18の中央部分の貫通孔18cには、垂直ヒンジ軸20が回転自在に挿通されている。垂直ヒンジ軸20の基端側には鍔部21が形成され、この鍔部21には他の部分よりも外径が大きくなるように突起21aが設けられている。この鍔部21の小径の部分に合わせた凹部19aを有するこの回動規制部材19が回動部18の中央部分にビス19bによってネジ止めされている。この回動規制部材19が突起21aに当接することで第1の筐体3の回動範囲が180°に制限されている。このことで、図3に示すように、外観上、第1の筐体3と内側ボス部11とが垂直ヒンジ軸20で連結されて、第1の筐体3は、垂直ヒンジ軸20を中心に表裏反転可能に構成されている。
【0038】
また、第2水平ヒンジ軸17及び垂直ヒンジ軸20は、それぞれ中心に貫通孔17a,20aを有し、これら貫通孔17a,20aには、第1の筐体3内の基板と第2の筐体5内の基板とを電気的に接続する信号線(共に図示せず)が挿通されている。このように簡単な構成で、第1の筐体3と第2の筐体5との開閉操作を阻害することなく、両基板が電気的に接続されている。
【0039】
垂直ヒンジ軸20の先端側は、側面視L字状の揺動軸取付部22が回転不能に連結されている。そして、この揺動軸取付部22には、第1の筐体3の厚さ方向に伸びる揺動軸23が回転可能に連結されている。
【0040】
揺動軸23の先端には、第1の筐体3にビス等によって取り付けられる取付部24が回転不能に結合されている。このことで、図5に矢印で示すように、第1の筐体3は、揺動軸23を中心に外観上内側ボス部11に対して揺動可能に支持されている。
【0041】
第1の筐体3のヒンジ部6側端部には、垂直ヒンジ軸20の軸心から離れるにつれてヒンジ部6と隙間を拡げるように、すなわち、左右外側へ向かって下方へ傾斜する揺動用テーパ面3aが左右対象に形成されている。このため、第1の筐体3のヒンジ部6側端部は、平面視でハの字状に形成されている。
【0042】
右側の外側ボス部10には、第1の筐体3を揺動させたときに、第1の筐体3のヒンジ部6側の端部(揺動用テーパ面3a)に押されることでスライドし、ヒンジ側ボタン15を押すロック解除用ボタン30が設けられている。同様に左側の外側ボス部10には、ロック解除用ボタン30と同様に外側ボス部10から露出する、押し込み不能なダミーボタン31が設けられている。
【0043】
ロック解除用ボタン30は、右側の外側ボス部10から露出して揺動用テーパ面3aに押し込まれる第1被押圧部30aを備えている。ダミーボタン31も左側の外側ボス部10から露出して揺動用テーパ面3aに押し込まれる第2被押圧部31aを備えている。これら第1被押圧部30aと第2被押圧部31aとは、いずれも揺動用テーパ面3aに合わせたテーパ面を有し、第1の筐体3が中心位置にあるときには、いずれも揺動用テーパ面3aに当接している。そして、ダミーボタン31は、第2被押圧部31aが左側の外側ボス部10に固定された押し込み不能状態であることから、図5に矢印で示すように、第1の筐体3は、中央位置からは右側にのみ揺動可能となっている。
【0044】
ロック解除用ボタン30は、第1被押圧部30aからヒンジ側ボタン15へ伸びる押圧用テーパ部30bを備えている。押圧用テーパ部30bは、先端に向かって右側へ傾斜する誘導面30cを有し、この誘導面30cにより、図8に示すように、ロック解除用ボタン30が白矢印の方向へ押し込まれるにつれてヒンジ側ボタン15を第1水平ヒンジ軸13の軸方向(黒矢印で示す)へ押圧するように構成されている。
【0045】
第1被押圧部30aの内面側とベース部16との間には、ロック解除用ボタン30を押し戻して第1被押圧部30aを元の位置に露出させる押し戻し用付勢部材としての圧縮コイルバネ32が装着されている。
【0046】
そして、垂直ヒンジ軸20には、揺動されてロック解除用ボタン30を押し込んだ第1の筐体3を元の位置に戻すための引き戻し機構25が設けられている。具体的には、取付部24は、第1の筐体3側へ接地される一対の脚部24aを有し、左側脚部24aは、厚さ方向に折り曲げられ、この折り曲げられた部分に第1バネ取付用貫通孔24bが開口している。同様に揺動軸取付部22にも第2バネ取付用貫通孔22aが開口している。そして、これら第1バネ取付用貫通孔24b及び第2バネ取付用貫通孔22aに引張コイルバネ26が連結されている。このように構成することにより、第1の筐体3が右側へ揺動すると、引張コイルバネ26が伸びるので、この引張コイルバネ26の引張力で第1の筐体3を左側へ引き戻そうとするようになっている。待機時には、第1の筐体3は、引張コイルバネ26で引っ張られて揺動用テーパ面3aが第2被押圧部31aに押し付けられている。
【0047】
−作動−
次に、本実施形態にかかる折畳み式携帯電話機1の作動について説明する。
【0048】
携帯時などの待機時には、図1、図4及び図6に示すように、傷が入りやすい表示部2を内側にして第1の筐体3が第2の筐体5に対して閉じられた状態にある。このとき、ロック解除用ボタン30は、ヒンジ部6と揺動用テーパ面3aとの間に第1被押圧部30aのみが露出しているので、従来のようにヒンジ部6の側面に露出する場合に比べて外観がよい。また、揺動用テーパ面3aを設けることで、第1の筐体3が揺動するスペースが確保され、さらに、左右対称に揺動用テーパ面3aとロック解除用ボタン30又はダミーボタン31を設けることで見映えがよくなっている。
【0049】
また、引き戻し機構25の引張コイルバネ26の引張力を調整し、待機時に適度な力で揺動用テーパ面3aを第2被押圧部31aに押し付けることで、軽い衝撃のみで第1の筐体3が揺動してロック解除用ボタン30が押されるという誤動作が防止される。引張コイルバネ26は、伸縮動作しか行わないので、必要とするスペースが小さく、コイル数を増やしても、コイルの外径を大きくしない限り第1の筐体3の厚さは変わらないので、厚さを抑えながら引張力を強くすることが可能となる。
【0050】
そして、使用時に第1の筐体3と第2の筐体5とを開く場合には、図5及び図7に矢印で示すように、第1の筐体3を右側へ揺動させる。このとき、ロック解除用ボタン30を押圧するように第1の筐体3が揺動させればよいので、第1の筐体3のどの部分を押してもよい。このため、従来のようにヒンジ部6に設けたロック解除用ボタン30を手探りして操作するのに比べて開操作が極めて容易である。
【0051】
このとき、ユーザが第1の筐体3を中央位置から左側へ揺動させようとしても、ダミーボタン31自体は押し込まれないので、第1の筐体3の揺動方向を操作し間違えることはない。
【0052】
第1の筐体3を右側へ揺動させる力が引張コイルバネ26の引張力を越えると、図8に示すように、第1被押圧部30aがヒンジ側ボタン15の押圧方向(白矢印の方向)と垂直(黒矢印の方向)に押し進められる。このとき、第1被押圧部30aの進行方向がヒンジ側ボタン15の押圧方向と違っていても、押圧用テーパ部30bの作用により確実にヒンジ側ボタン15が押し込まれる。
【0053】
さらに第1の筐体3を揺動させてヒンジ側ボタン15が所定量以上押し込まれると、開操作補助用付勢機構のロックが解除され、第1の筐体3が第2の筐体5に対して一気に押し開かれる。このように、使用時には第1の筐体3を揺動させるだけで第1の筐体3が第2の筐体5に対して開くので、非常に使い勝手がよい。
【0054】
そして、第1の筐体3が押し開かれるときには、引き戻し機構25と圧縮コイルバネ32により、第1の筐体3が元の左右中央位置に戻るので、引き戻し操作が不要となる。
【0055】
−実施形態の効果−
したがって、本実施形態にかかる折畳み式携帯電話機1によると、第1の筐体3を揺動軸23に対して揺動可能に支持し、右側の外側ボス部10にロック解除用ボタン30を設け、第1の筐体3を揺動させたときに、揺動用テーパ面3aでロック解除用ボタン30を押して第1水平ヒンジ軸13のロックを解除して第1の筐体3と第2の筐体5とを開くようにしたことにより、簡単に開き操作が行えると共に、開き操作を行うロック解除用ボタン30ができるだけ外観に露出しないようにして見映えをよくすることができる。
【0056】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0057】
すなわち、上記実施形態では、第1の筐体3は、ヒンジ部6に対して表裏反転可能としたが、表裏反転不能に構成してもよい。この場合には、垂直ヒンジ軸20を回動不能とし、回動規制部材19と突起21aは設けなくてもよい。
【0058】
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物や用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の実施形態にかかる折畳み式携帯電話機の閉じた状態を示す斜視図である。
【図2】折畳み式携帯電話機開いた状態を示す斜視図である。
【図3】折畳み式携帯電話機を開いた状態で、第1の筐体を表裏反転させる様子を示す斜視図である。
【図4】折畳み式携帯電話機の閉じた状態を示す正面図である。
【図5】折畳み式携帯電話機の閉じた状態から第1の筐体を揺動させる様子を示す正面図である。
【図6】ヒンジユニット及びその周辺を見えるようにした図4相当図である。
【図7】ヒンジユニット及びその周辺を見えるようにした図5相当図である。
【図8】ヒンジユニット及びその周辺を拡大して示す斜視図である。
【符号の説明】
【0060】
1 折畳み式携帯電話機(折畳み式携帯端末)
2 表示部
3 第1の筐体
3a 揺動用テーパ面
4 操作部
5 第2の筐体
6 ヒンジ部
10 外側ボス部
11 内側ボス部
13 第1水平ヒンジ軸
15 ヒンジ側ボタン
17 第2水平ヒンジ軸
20 垂直ヒンジ軸
23 揺動軸
25 引き戻し機構
26 引張コイルバネ
30 ロック解除用ボタン
30a 第1被押圧部
30b 押圧用テーパ部
31 ダミーボタン
32 圧縮コイルバネ(押し戻し用付勢部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の筐体と、第2の筐体と、該第1の筐体と第2の筐体とを折り畳み開閉自在に連結するヒンジ部とを備えた折畳み式携帯端末において、
上記第1の筐体と第2の筐体とを閉じた状態から、該第1の筐体を第2の筐体に対して揺動させることで、該第1の筐体が第2の筐体に対して自動的に開くように構成されている
ことを特徴とする折畳み式携帯端末。
【請求項2】
請求項1に記載の折畳み式携帯端末において、
上記ヒンジ部は、
上記第2の筐体のヒンジ部側角部の表面から該第2の筐体の厚さ方向へ膨出する一対の外側ボス部と、
上記第1の筐体のヒンジ部側端部から水平に膨出し、上記一対の外側ボス部に挟持される内側ボス部と、
上記一対の外側ボス部の一方と、上記内側ボス部とに挿通された第1水平ヒンジ軸と、
上記一対の外側ボス部の他方と、上記内側ボス部とに挿通された第2水平ヒンジ軸と、
上記第1水平ヒンジ軸内に設けられ、上記第1の筐体と第2の筐体とを開く方向に付勢すると共に、付勢力を蓄えた状態でロック可能な開操作補助用付勢機構と、
上記第1水平ヒンジ軸に設けられ、上記開操作補助用付勢部材のロックを解除するためのヒンジ側ボタンと、
上記第1の筐体と上記内側ボス部とを連結する垂直ヒンジ軸と、
上記垂直ヒンジ軸の先端側に設けられ、上記第1の筐体の厚さ方向に伸びる揺動軸と、
を備え、
上記第1の筐体は、上記揺動軸に対して揺動可能に支持され、
上記一方の外側ボス部には、上記第1の筐体を揺動させたときに、該第1の筐体の上記ヒンジ部側端部に押されることでスライドし、上記ヒンジ側ボタンを押すロック解除用ボタンが設けられている
ことを特徴とする折畳み式携帯端末。
【請求項3】
請求項2に記載の折畳み式携帯端末において、
上記第1の筐体の上記ヒンジ部側端部における少なくとも上記一方の外側ボス部側には、上記垂直ヒンジ軸の軸心から離れるにつれて上記ヒンジ部と隙間を拡げるように傾斜する揺動用テーパ面が形成されている
ことを特徴とする折畳み式携帯端末。
【請求項4】
請求項3に記載の折畳み式携帯端末において、
上記第1の筐体の上記ヒンジ部側端部の両側に上記揺動用テーパ面が形成され、
上記他方の外側ボス部には、上記ロック解除用ボタンと同様に該外側ボス部から露出する、押し込み不能なダミーボタンが設けられている
ことを特徴とする折畳み式携帯端末。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか1つに記載の折畳み式携帯端末において、
上記垂直ヒンジ軸には、揺動されて上記ロック解除用ボタンを押し込んだ上記第1の筐体を元の位置に戻すための引き戻し機構が設けられている
ことを特徴とする折畳み式携帯端末。
【請求項6】
請求項5に記載の折畳み式携帯端末において、
上記引き戻し機構は、一端が上記垂直ヒンジ軸に連結され、他端が上記第1の筐体に連結された引張コイルバネを含む
ことを特徴とする折畳み式携帯端末。
【請求項7】
請求項2乃至6のいずれか1つに記載の折畳み式携帯端末において、
上記ヒンジ側ボタンは、上記第1水平ヒンジ軸の軸方向に伸び、該ヒンジ側ボタンを押圧することで、上記開操作補助用付勢機構のロックを解除可能に構成され、
上記ロック解除用ボタンは、
上記一方の外側ボス部から露出して上記第1の筐体のヒンジ部側端部に押し込まれる被押圧部と、
上記被押圧部から上記ヒンジ側ボタンへ伸びると共に、該ヒンジ側ボタンを上記第1水平ヒンジ軸の軸方向へ押圧する押圧用テーパ部と、
上記ロック解除用ボタンを押し戻して上記被押圧部を露出させる押し戻し用付勢部材と、
を備えている
ことを特徴とする折畳み式携帯端末。
【請求項8】
請求項2乃至7のいずれか1つに記載の折畳み式携帯端末において、
上記第1の筐体は、上記垂直ヒンジ軸を中心に表裏反転可能に構成されている
ことを特徴とする折畳み式携帯端末。
【請求項9】
請求項2乃至8のいずれか1つに記載の折畳み式携帯端末において、
上記第1の筐体の表面には、表示部が設けられ、
上記第2の筐体の表面には、操作部が設けられている
ことを特徴とする折畳み式携帯端末。
【請求項10】
請求項2乃至9のいずれか1つに記載の折畳み式携帯端末において、
上記第2水平ヒンジ軸及び上記垂直ヒンジ軸は、中空に形成され、該第2水平ヒンジ軸及び垂直ヒンジ軸には、上記第1の筐体内の基板と上記第2の筐体内の基板とを電気的に接続する信号線が挿通されている
ことを特徴とする折畳み式携帯端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−103889(P2010−103889A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−275282(P2008−275282)
【出願日】平成20年10月27日(2008.10.27)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】