説明

抵抗シート、感圧スイッチおよびこれを用いた入力装置

【課題】各種電子機器の操作に用いられる感圧スイッチに関し、押圧力を検出すると共に高精度に押圧方向を検出しうる抵抗シート、感圧スイッチおよびこれを用いた入力装置を提供することを目的とする。
【解決手段】感圧スイッチの抵抗体層に接続された端子を定圧電源に接続し、感圧スイッチの電極に接続された端子を前記制御手段に接続し、制御手段は前記抵抗体層を押圧した押圧方向を、制御手段に感圧スイッチの電極を介して入力された入力電圧に基づいて推定するものであり、操作者が押圧する方向の変化に従って変化する所定の電圧分布を抵抗体層に生じさせるため、操作者の押圧方向検出を高精度に行うことができ、押圧方向検出に好適な抵抗シート、感圧スイッチおよびこれを用いた入力装置を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に各種電子機器の操作に用いる抵抗シート、感圧スイッチおよびこれを用いた入力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やカーナビ等の各種電子機器の高機能化や多様化が進むに伴い、これらの操作に用いられる抵抗シート、感圧スイッチおよびこれを用いた入力装置には、簡便に多様な操作が可能なものが求められている。
【0003】
このような従来の抵抗シート、感圧スイッチおよびこれを用いた入力装置について、図11〜図13を用いて説明する。
【0004】
なお、構成を判り易くするために、図面は厚さ方向の寸法を拡大して表わしている。
【0005】
図11は従来の入力装置の断面図、図12は同分解斜視図であり、同図において、1はフィルム状のオーバーシート、2は略ドーム状の可動接点で、オーバーシート1下面に可動接点2が接着剤(図示せず)によって貼り付けられている。
【0006】
また、3はオーバーシート1と同様の可撓性を有するフィルム状のカバーシートで、可動接点2がカバーシート3上の略中央位置およびその前後左右の五箇所にオーバーシート1で貼り付けられている。
【0007】
また、4は、所定の面抵抗を備えた材料を印刷形成した抵抗体層で、5は、可動接点2の下方となる部分を除いて設けられたフィルム状のスペーサ層である。
【0008】
そして、カバーシート3、およびその下面の抵抗体層4と、スペーサ層5から抵抗シート6が構成される。
【0009】
また、7はフィルム状、あるいは板状の基板で、上下面には銅箔等によって複数の配線パターン(図示せず)が形成されると共に、基板7の略中央位置およびその前後左右の五箇所に、半円状の固定接点8A、8Bが所定の空隙を設けて対向した固定接点対8が設けられている。
【0010】
そして、基板7の上面には定圧電源9、抵抗素子10、マイコンなどから構成された制御手段11などから電子回路12が構成され、定圧電源9が固定接点8Aに、制御手段11が固定接点8Bに、抵抗素子10は一端が固定接点8Bに、他端がアース電位に接続される。
【0011】
そして、各固定接点対8の上方に、抵抗体層4のスペーサ層5で覆われていない部分が対向するように、抵抗シート6を載置している。
【0012】
また、13は絶縁樹脂製のラバーシート、14はラバーシート13の略中央上面に設けられた絶縁樹脂製の押釦、15は押釦14を囲んで設けられた絶縁樹脂製の操作体で、ラバーシート13下面の複数の押圧部13Aが複数の可動接点2中央部のカバーシート1上面に当接すると共に、この上方には押釦14が上下動可能に、操作体15が揺動可能に配置されて、入力装置が構成される。
【0013】
以上の構成において、図13の従来の電子機器の斜視図で示すように、例えば、操作体15の右側のVの位置を下方へ押圧操作すると、ラバーシート13が撓んで、可動接点2を押圧しクリック感を伴って下方へ弾性反転すると共に、抵抗体層4が下方へ撓み、抵抗体層4の下面が固定接点8Aと8Bに接触し、固定接点8Aと8Bが抵抗体層4を介して電気的に接続される。
【0014】
そして、この後、さらに押圧力を加えると、押圧力によって抵抗体層4の固定接点8Aと8Bに対する接触面積が増え、固定接点8Aと8Bの間の抵抗値が小さくなる。
【0015】
この抵抗値の変化が定圧電源9と抵抗素子10により電圧の変化として基板7上面に形成された電子回路12の制御手段11により検出されて、例えば携帯電話などの電子機器16の表示手段17に表示された複数のメニュー18を選択するためのカーソル19の移動方向や移動速度を制御手段11が制御する。
【0016】
また、右斜め前方のWの位置を押圧すると、右方と前方の固定接点8Aと8Bが抵抗体層4を介して電気的に接続され、制御手段11はカーソル19を右斜め上方に移動し、移動速度を制御する。
【0017】
つまり、操作体15の右側のVの位置を押圧するとカーソル19がそれに対応して右に移動し、一方右斜め前方のWの位置を押圧すると、カーソル19がそれに対応して右斜め前方に移動し、押圧力を強くするとカーソル19の移動速度を速くする表示の制御などを電子回路が行うものであった。
【0018】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2009−016330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、上記従来の入力装置においては、固定接点対8は前後左右および中央の五箇所にしか設けられていないため、例えばVの位置から少し前方寄り、あるいは後方寄りの位置を押圧した際には、可動接点体2が固定接点対8に接するタイミングがずれるなどして各固定接点対8の押圧力の分布の再現性が低く、高精度な押圧方向の検出が出来ず、押圧方向と同じ方向へ高精度なカーソルなどの移動ができなかった。
【0021】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、押圧力を検出すると共に高精度に押圧方向を検出しうる感圧スイッチおよびこれを用いた入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0023】
本発明の請求項1に記載の発明は、可撓性を有したカバーシートと、カバーシートの下面に設けられた導電金属の配線からなるパターン配線と、パターン配線に接続して設けられた所定の面抵抗を備えた材料で形成された抵抗体層と、カバーシートの下面との間に前記パターン配線を挟み、下面が前記抵抗体層より下方に位置するよう構成されたスペーサ層からなり、抵抗体層が、第一の抵抗体層と、第一の抵抗体層の周囲にあって、少なくとも一部が第一の抵抗体層と接続して配置された第二の抵抗体層を備え、また抵抗体層下面に凹凸を備えたものであり、中央の第一の抵抗体層とその周囲の第二の抵抗体層で360度方向などの所定の角度範囲に抵抗体層を配置することが出来るため、簡便な抵抗体層の構成で押圧方向検出に好適な抵抗シートを得ることができるという作用を有する。
【0024】
請求項2に記載の発明は、抵抗体層が、第一の抵抗体層と、第一の抵抗体層の周囲にあって、少なくとも一部が第一の抵抗体層と接続して配置された第二の抵抗体層を備え、また抵抗体層下面に凹凸を備えて構成するものであり、操作者の押圧方向検出を安定して行うことができると共に、中央の第一の抵抗体層とその周囲の第二の抵抗体層による簡便な電極の構成で押圧方向検出に好適な感圧スイッチを得ることができるという作用を有する。
【0025】
請求項3に記載の発明は、請求項2記載の感圧スイッチと、感圧スイッチに接続されたスイッチ手段と、感圧スイッチと前記スイッチ手段に接続された制御手段と、所定電圧の定圧電源とを備え、感圧スイッチの電極に接続された端子を制御手段に接続し、制御手段は、スイッチ手段を切替えて、感圧スイッチの抵抗体層と感圧スイッチの電極との間で所定の電位差を生じさせ、制御手段は抵抗体層を押圧した押圧力を制御手段に感圧スイッチの電極を介して入力された入力電圧に基づいて推定するものであり、操作者が押圧する方向の変化に従って変化する所定の電圧分布を抵抗体層に生じさせるため、操作者の押圧方向検出を高精度に行うことができ、押圧方向検出に好適な入力装置を得ることができるという作用を有する。
【発明の効果】
【0026】
以上のように本発明によれば、押圧力を検出すると共に高精度に押圧方向を検出しうる抵抗シート、感圧スイッチおよびこれを用いた入力装置を実現することができるという有利な効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施の形態による感圧スイッチの分解斜視図
【図2】同感圧スイッチの断面図
【図3】同入力装置の分解斜視図
【図4】同入力装置を使用した電子機器の斜視図
【図5】同入力装置の回路図
【図6】同入力装置の動作説明のための回路図
【図7】同入力装置の動作説明のための回路図
【図8】同抵抗体層の上面図
【図9】同入力装置を使用した電子機器の画面図
【図10】同低抵抗層の上面図
【図11】従来の入力装置の断面図
【図12】同入力装置の分解斜視図
【図13】同入力装置を使用した電子機器の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図10を用いて説明する。
【0029】
なお、背景技術の項で説明した構成と同一構成の部分には同一符号を付して、詳細な説明を簡略化する。
【0030】
なお、これらの図面のうち断面図は、構成を判り易くするために厚さ方向の寸法を拡大して表わしている。
【0031】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による感圧スイッチの分解斜視図、図2は同断面図であり、同図において、21は、ポリエチレンテレフタレートやポリカーボネート、ポリイミド等の可撓性を有した材料で形成されたフィルム状のカバーシートである。
【0032】
また、22は銅などの導電金属の配線からなるパターン配線でカバーシート21下面にエッチングなどで形成されている。
【0033】
そして、221A〜221Dは円周に沿って等間隔に配置された4本の接続端で、接続端221A〜221Dから左方にパターン配線22が延出され、22A〜22Dで示す端子に接続される。
【0034】
また、221Eは接続端221A〜221Dの外方の接続端で、接続端221Eから左方にパターン配線22が延出され、22Eで示す端子に接続される。
【0035】
なお、このパターン配線22は、導電金属の配線として、銀等の導電粒子を含んだ導電性のインキなどで印刷により形成されていても良い。
【0036】
そして、23は合成樹脂内にカーボン粉を分散したシート抵抗値0.5kΩ〜30kΩ/□の抵抗体を材料とする略リング状に形成された低抵抗層で、パターン配線22下面に印刷などにより形成される。
【0037】
ここで、低抵抗層23は、低抵抗層23中央にあり略円形の第一の低抵抗部23Aと、第一の低抵抗部23Aの周囲を囲んで配置された第二の低抵抗部23Bを備えている。
【0038】
また、第一の低抵抗部23Aと第二の低抵抗部23Bの間に円弧状にスリットが設けられることにより、第一の低抵抗部23Aと第二の低抵抗部23Bは前後左右の90度間隔で、接続部23Cにより接続される。
【0039】
そして、第二の低抵抗部23Bの前後左右の端部はA点〜D点で示す接続端からなり、パターン配線22の内端221A〜221Dに接続端A〜Dがそれぞれ接続する。
【0040】
また、24は低抵抗層23の下面に重ねて印刷形成された、下面が細かな凹凸状でシート抵抗値50kΩ〜5MΩ/□の略円形の高抵抗層で、これらの低抵抗層23と高抵抗層24から抵抗体層25が構成される。
【0041】
なお、高抵抗層24の形状は、図1で示したような円形でも良いし、低抵抗層23と同様の形状であっても良いし、高抵抗層24のうち第一の低抵抗部23A下方の円形の第一の高抵抗部24Aと、高抵抗層24のうち第二の低抵抗部23B下方のリング形状の第二の高抵抗部24Bが離間した形状であっても良い。
【0042】
また、第一の低抵抗部23Aと第一の高抵抗部24Aから第一の抵抗体層25Aが構成され、第二の低抵抗部23Bと第二の高抵抗部24Bから第二の抵抗体層25Bが構成される。
【0043】
すなわち、抵抗体層25の略中央に、略円形の第一の抵抗体層25Aが設けられ、第一の抵抗体層25Aを囲んで第二の抵抗体層25Bが設けられ、第一の抵抗体層25Aと第二の抵抗体層25Bは、低抵抗層23の接続部23Cで接続されている。
【0044】
また、26はポリエチレンテレフタレートやポリカーボネート、ポリイミド等の可撓性を有した材料で形成されたフィルム状のスペーサ層で、抵抗体層25の下面よりスペーサ層26の下面が下方になるように、カバーシート21下面に貼り付けられている。
【0045】
なお、スペーサ層26は、例えばエポキシ樹脂などを含んだ絶縁性のインキで印刷により形成されていても良い。
【0046】
つまり、カバーシート21とスペーサ層26の間に、パターン配線22と抵抗体層25が挟み込まれており、これらから抵抗シート27が構成される。
【0047】
さらに、28はステンレスなどの金属導体として、あるいはカーボン、銀の印刷などにより構成された略方形の電極で、上面は凹凸の無い平板で構成される。
【0048】
そして、電極28の上面と抵抗シート27の抵抗体層25の下面の間に10〜100μm前後の所定の間隙が設けられ抵抗シート27が重ねられて、感圧スイッチ40が構成される。
【0049】
また、抵抗シート27の接続端221Eは、異方性導電ペーストまたは、バネやゴムなどの圧接による接続部材(図示せず)を介して電極28と接続されており、これにより抵抗シート27の端子22Eが電極28に電気的に接続する。
【0050】
このような感圧スイッチ40は、例えば携帯電話などの電子機器に組み込まれて、図3の分解斜視図に示すような入力装置が構成されており、同図において41は、ポリエチレンテレフタレートやポリカーボネート等のフィルム状、あるいは紙フェノールやガラス入りエポキシ等の板状の基板で、基板41上下面には銅箔等によって複数の配線パターン(図示せず)が形成される。
【0051】
また基板41上面には、前後左右に設けられた導電金属製でリング状およびその中央の円形の固定接点からなる固定接点対42や、絶縁樹脂製の接続コネクタ43やマイコン等の半導体素子で構成された制御手段44や、制御手段44から信号が入力されて切替可能な複数のスイッチで構成されたスイッチ手段45、抵抗素子46などが配置され、各々配線パターンにより接続され電子回路47が構成される。
【0052】
また、48は、端面から進入させた光を所定箇所で発光させる絶縁樹脂製の導光シートを非導電樹脂のオーバーシート上面に固定した可動接点体シートで、可動接点体シート48の下面には前後左右に49で示す金属導体でドーム状に形成された可動接点体が貼り付けられる。
【0053】
そして、基板41の前後左右の固定接点対42上に、前後左右の可動接点体49を対向させて可動接点体シート48を基板41上に載置し、さらに、前後左右の可動接点体49の内側に感圧スイッチ40を配置し、感圧スイッチ40の端子22A〜Eを接続コネクタ43に接続する。
【0054】
また、50はシリコーンやエラストマーなどの弾性材からなるラバーシートで、ラバーシート50上の中央に51で示す絶縁樹脂製の中央釦が、中央釦51を囲んで52で示す同じく絶縁樹脂製でリング状のリング釦が、またリング釦52を囲んで53で示す同じく絶縁樹脂製でリング状の方向釦が接着剤(図示せず)などで貼り付けられる。
【0055】
そして、感圧スイッチ40の抵抗体層25の上方に中央釦51とリング釦52を配置し、前後左右の可動接点体49の上方に方向釦53が位置するよう、ラバーシート50上に各釦が貼り付けられて、入力装置60が構成される。
【0056】
このように構成された入力装置60は例えば、図4の斜視図で示すような折りたたみ式の携帯電話などの電子機器61において、62で示す液晶表示素子等の表示手段に対向した下側筐体63の上面に、中央釦51、リング釦52、方向釦53を操作者が操作可能なように露出して配置するものである。
【0057】
次に、この入力装置60の電気的構成について、図5の回路図を用いて説明すると、同図において、抵抗体層25の低抵抗層23の点A〜Dに接続された端子22A〜22Dは、スイッチ手段45のスイッチ45A〜Dと接続している。
【0058】
ここで、スイッチ45A、45Dは定圧電源(例えば+5V)に接続した状態と開放状態を切替えるもので、スイッチ45B、45Cはアース電位(0V)に接続した状態と開放状態を切替えるもので、初期状態は、スイッチ45Aが定圧電源に接続した状態で、スイッチ45B〜Dは全て開放状態になっている。
【0059】
なお、定圧電源の電圧としては0.1V以上30V以下とすることができ、1V以上15V以下がより望ましい。
【0060】
さらに、電極28は端子22Eを介し、分岐した一端が制御手段44に接続されてVinで示す電圧信号を制御手段44に入力し、他端が抵抗素子46を介してスイッチ45Eに接続されている。
【0061】
ここで、スイッチ45Eは初期状態ではアース電位に接続した状態になっている。
【0062】
さらに、スイッチ45A〜45Eのスイッチ切替えは、制御手段44からの出力信号S1により行われ、スイッチ45A〜45Eのスイッチ切替え結果に応じて、電圧信号Vinが変化する。
【0063】
このように構成された入力装置60において、操作者が例えば、リング釦52を操作し、第二の抵抗体層25BのP点を押圧したとすると、第二の抵抗体層25Bと電極28の接触面積が変化し、Rpで示す第二の抵抗体層25Bと電極28の間の接触抵抗が変化する。
【0064】
そして、制御手段44は押圧力の推定処理を行うもので、スイッチ45Aから定圧電源が印加され、スイッチ45Eはアース電位に接続されるため、電圧信号Vinは、第二の抵抗体層25Bと電極28の間の接触抵抗Rpと点A−点P間の線路抵抗Rapの和である(Rp+Rap)と、抵抗素子46の抵抗値Rとの分圧比で決定される。
【0065】
つまり、制御手段44は、スイッチ手段45を切替えて、感圧スイッチ40の抵抗体層25Bと感圧スイッチ40の電極28との間で所定の電位差を生じさせるため、生じた電位差に応じた電圧信号Vinが制御手段44に入力される。
【0066】
そして、制御手段44は後述する第一〜第三の方向推定手順を経て点Pの押圧方向を推定後、点A−点P間の線路抵抗Rapを補正する補正手順を行い、第二の抵抗体層25Bと電極28の間の接触抵抗Rpを算出する。
【0067】
この補正手順について具体的に説明すると、まず、制御手段44は、例えば制御手段44内に設けられた電圧信号Vinと(Rp+Rap)の対比テーブルに基づき、(Rp+Rap)の抵抗値を推定する。
【0068】
そして、制御手段44が点Pの押圧方向を推定した後、例えば、点A−点C間の線路抵抗が既知の値であるRacでその間の円弧に対応する角度がα度、推定された点Pの押圧方向に対応する角度がβ度であるとすれば、点A−点P間の線路抵抗Rapである、Rac×β/αを算出する。
【0069】
そして、制御手段44は(Rp+Rap)から点A−点P間の線路抵抗Rapを減じて接触抵抗Rpを算出し、例えば制御手段44内に設けられた接触抵抗Rpと押圧力の対比テーブルに基づき、P点の押圧力を推定する。
【0070】
また、次に第一〜第三の方向推定手順について順を追って説明する。
【0071】
ここで、まず、制御手段44は制御信号S1により、図6の回路図で示すように、スイッチ45Aを開放状態から定圧電源に接続した状態に切替え、スイッチ45Cを開放状態からアース電位に接続した状態に切替え、スイッチ45Eを開放状態に切替える。
【0072】
これにより、図6の経路A点−P点−C点間のP点での分圧比に対応した電圧が、第二の抵抗体層25Bと電極28の接触抵抗Rpを介して制御手段44に入力電圧Vinとして入力される。
【0073】
そして、制御手段44は、例えば制御手段44内に設けられた電圧信号Vinと押圧方向の対比テーブルに基づき押圧方向を推定するものであるが、A点−C点を結ぶ線分に対しP点を通って直交する点線Q上の点であれば、A点−P点−C点間のP点での分圧比に対応した電圧と同じ電圧がVinとして得られる。
【0074】
ここで、制御手段44は、点線Q上のいずれかの点が押圧されているものと推定する(第一の方向推定手順)。
【0075】
そして、次に制御手段44は図7の回路図で示すように、スイッチ45Aを開放状態に、スイッチ45Bをアース電位に、スイッチ45Cを開放状態に、スイッチ45Dを定圧電源に接続する状態にそれぞれ切替える。
【0076】
これにより、図7の経路D点−P点−B点間のP点での分圧比に対応した電圧が、第二の抵抗体層25Bと電極28の接触抵抗Rpを介して制御手段44に入力電圧Vinとして入力される。
【0077】
そして、制御手段44は、例えば制御手段44内に設けられた電圧信号Vinと押圧方向の対比テーブルに基づきD点−B点を結ぶ線分に対しP点を通って直交する点線R上の点が押圧されたものと推定する(第二の方向推定手順)。
【0078】
さらに、制御手段44は、第一の方向推定手順の結果と第二の方向推定手順の結果を比較し、押圧方向はP点の方向であると推定する(第三の方向推定手順)。
【0079】
つまり、所定の面抵抗を備えた抵抗体層に電圧を印加することにより、押圧方向により異なる入力電圧が制御手段44に入力されるため、制御手段44は押圧方向を推定しうる。
【0080】
また、操作者が例えば、中央釦51を操作し、図8に示す第一の抵抗体層25AのS点を押圧したとすると、第一の抵抗体層25Aと電極28の接触面積が変化し、第一の抵抗体層25Aと電極28の間の接触抵抗が変化する。
【0081】
この場合においても、リング釦52を操作した場合と同様に、制御手段44は第一〜第三の方向推定手順を経て点Sの押圧位置を推定し、A点−S点間の線路抵抗を補正する補正手順を行い、接触抵抗を算出する。
【0082】
つまり、押圧位置を推定する際には、制御手段44は第一の方向推定手順で、S点を含む点線T上が押圧されたものと推定し、第二の方向推定手順で、S点を含む点線U上が押圧されたものと推定する。
【0083】
そして、第三の方向推定手順で、制御手段44は点線Tと点線Uの交点となるS点が押圧されたものと推定する。
【0084】
そして、例えば図9の画面図に示すように、表示手段62に地図のメニューが表示された状態で、リング釦52の例えば斜め方向またはその方向から若干前後にずれた方向を押圧操作した場合においても、制御手段44は押圧操作した所望方向へ64で示すポインタを移動させ、さらに強い力で操作された場合にはポインタ64の移動速度を速める。
【0085】
また、操作者が中央釦51を押圧し、押圧力を変えた場合には、押圧力に合わせて、表示された地図のメニューの縮尺表示が変化する。
【0086】
つまり、制御手段44は、操作者が操作した方向へ高精度にポインタなどを移動することができ、またリング釦52の押圧力を推定してポインタなどの移動速度を変化させたり、中央釦51の押圧力を推定して地図のメニューの縮尺を変化させたりするため、操作自由度が高くかつスムーズな操作が可能となるものである。
【0087】
なお、上述の説明においては、低抵抗層23の形状は図10(a)の上面図で示すように、略円形の第一の低抵抗部23Aと、第一の低抵抗部23Aの周囲を囲んで配置された第二の低抵抗部23Bを備え、第一の低抵抗部23Aと第二の低抵抗部23Bは前後左右の90度間隔で、接続部23Cにより接続されるものとして説明したが、これは一例であり、本発明はこれに限られるものではない。
【0088】
例えば、図10(b)で示すように、低抵抗層71に設けられたスリットが三箇所で、その結果、三箇所の接続部71Cにより、第一の低抵抗部71Aと第二の低抵抗部71Bが接続されるものとして構成しても良く、図10(c)、(d)で示すように、低抵抗層72または低抵抗層73に設けられたスリットが二箇所で、二箇所の接続部72Cまたは73Cにより、第一の低抵抗部72Aと第二の低抵抗部72Bまたは第一の低抵抗部73Aと第二の低抵抗部73Bが接続されるものとして構成しても良い。
【0089】
また、図10(e)で示すように、スリットが一箇所で、一箇所の接続部74Cにより、第一の低抵抗部74Aと第二の低抵抗部74Bが接続されるものとして構成しても良く、さらには図10(f)で示すように、接続部は必ずしも必要ではなく、第一の低抵抗部75Aと第二の低抵抗部75Bが第一の低抵抗部75Aの外周の全周で接続されるものとして構成しても良い。
【0090】
そして、低抵抗層の外形は略円形でなくても良く、図10(g)で示すように、略方形で枠状の第二の低抵抗部76Bの内側に略円形の第一の低抵抗部76Aを配置するものでも良く、さらに図10(h)で示すように、第一の低抵抗部77Aも略方形などであっても良く、図10(i)で示すように、低抵抗層78の外形が略方形等であっても、第一の低抵抗部78Aと第二の低抵抗部78Bが第一の低抵抗部78Aの外周の全周で接続されるものとして構成しても良い。
【0091】
さらに、上述の説明においてはA点〜D点は略円形の低抵抗層23の前後左右に配置されるものとして説明したが、第二の低抵抗部79Bが略方形の場合には、少なくとも前後左右の各辺にA点〜D点を設けていれば、A点〜D点が第一の低抵抗部79Aを挟んで対称な位置関係に無くても良い。
【0092】
また、低抵抗層の第一の低抵抗部と第二の低抵抗部が、低抵抗層で直接電気的に接続されていなくても、低抵抗層の下面の高抵抗層で電気的に接続されていることにより、第一の抵抗体層と第二の抵抗体層が電気的に接続されている場合は、本発明を実施することが可能である。
【0093】
なお、上述の説明においては、押圧力の推定処理を行う際に、制御手段44が補正手順を行うものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、低抵抗層23のA点〜D点の複数の点を定圧電源に接続するものとして入力装置60を構成することにより、定圧電源に接続された点から押圧されたP点またはS点までの線路抵抗を小さくすることができるため、制御手段44が補正手順を行わなくても、ほぼ正確な押圧力の推定ができる。
【0094】
なお、この場合、A点〜D点の四箇所全てを定圧電源に接続するものとすれば、制御手段44は最も精度良く押圧力を推定しうる。
【0095】
このように本実施の形態によれば、抵抗体層は第一の抵抗体層と、前記第一の抵抗体層の周囲にあり、少なくとも一部が前記第一の抵抗体層と接続して配置された第二の抵抗体層を備えると共に、抵抗体層下面に凹凸を備えたものであり、水平面全面となる360度方向の所定の角度範囲およびその中央位置に抵抗体層を配置することが出来るため、簡便な抵抗体層の構成で押圧方向検出に好適な抵抗シートを得ることができるものである。
【0096】
また、抵抗体層は、第一の抵抗体層と、第一の抵抗体層の周囲にあり、少なくとも一部が第一の抵抗体層と接続して配置された第二の抵抗体層を備え、電極は前記抵抗体層の下方全面を覆って配置された薄板により構成されたものであり、操作者が押圧する所定方向と所定の幅をカバーする構成としうるため、操作者の押圧方向検出を安定して行うことができ、また、電極を単に薄板で構成できるため、簡便な構成で押圧方向検出に好適な感圧スイッチを得ることができるものである。
【0097】
さらに、感圧スイッチと、感圧スイッチに接続されたスイッチ手段と、感圧スイッチと前記スイッチ手段に接続された制御手段と、所定電圧の定圧電源とを備え、感圧スイッチの電極に接続された端子を前記制御手段に接続し、制御手段は、スイッチ手段を切替えて、感圧スイッチの抵抗体層と感圧スイッチの電極との間で所定の電位差を生じさせ、制御手段は前記抵抗体層を押圧した押圧方向を、制御手段に感圧スイッチの電極を介して入力された入力電圧に基づいて推定するものであり、操作者が押圧する方向の変化に従って変化する所定の電圧分布を抵抗体層に生じさせるため、操作者の押圧方向検出を高精度に行うことができ、押圧方向検出に好適な入力装置を得ることができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明による抵抗シート、感圧スイッチおよびこれを用いた入力装置は、押圧力を検出すると共に高精度に押圧方向を検出しうるものを提供しうるという有利な効果を有し、各種電子機器の操作用として有用である。
【符号の説明】
【0099】
21 カバーシート
22 パターン配線
23 低抵抗層
24 高抵抗層
25 抵抗体層
26 スペーサ層
27 抵抗シート
28 電極
40 感圧スイッチ
41 基板
42 固定接点対
43 接続コネクタ
44 制御手段
45 スイッチ手段
46 抵抗素子
47 電子回路
48 可動接点体シート
49 可動接点体
50 ラバーシート
51 中央釦
52 リング釦
53 方向釦
60 入力装置
61 電子機器
62 表示手段
63 下側筐体
64 ポインタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有したカバーシートと、前記カバーシートの下面に設けられた導電金属の配線からなるパターン配線と、前記パターン配線に接続して設けられた所定の面抵抗を備えた材料で形成された抵抗体層と、前記カバーシートの下面との間に前記パターン配線を挟み、下面が前記抵抗体層より下方に位置するよう構成されたスペーサ層からなり、前記抵抗体層は、第一の抵抗体層と、前記第一の抵抗体層の周囲にあり、少なくとも一部が前記第一の抵抗体層と接続して配置された第二の抵抗体層を備えると共に、前記抵抗体層下面に凹凸を備えた抵抗シート。
【請求項2】
所定の面抵抗を備えた材料で形成された抵抗体層と、前記抵抗体層と所定の間隔を空けて下方に配置され、前記抵抗体層が上方から押圧され接触すると、前記抵抗体層との間で押圧力に応じて接触面積が変化する導電性の電極と、前記抵抗体層と前記電極にそれぞれ接続される端子とを備え、前記抵抗体層は、第一の抵抗体層と、前記第一の抵抗体層の周囲にあり、少なくとも一部が前記第一の抵抗体層と接続して配置された第二の抵抗体層を備え、前記電極は前記抵抗体層の下方全面を覆って配置された薄板により構成された感圧スイッチ。
【請求項3】
請求項2記載の感圧スイッチと、前記感圧スイッチに接続されたスイッチ手段と、前記感圧スイッチと前記スイッチ手段に接続された制御手段と、所定電圧の定圧電源とを備え、前記感圧スイッチの電極に接続された端子を前記制御手段に接続し、前記制御手段は、前記スイッチ手段を切替えて、前記感圧スイッチの抵抗体層と前記感圧スイッチの電極との間で所定の電位差を生じさせ、前記制御手段は前記抵抗体層を押圧した押圧力を前記制御手段に前記感圧スイッチの前記電極を介して入力された入力電圧に基づいて推定する入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−138674(P2011−138674A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−297407(P2009−297407)
【出願日】平成21年12月28日(2009.12.28)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】