説明

抵抗制御装置及び抵抗制御方法

【課題】可変抵抗素子の抵抗値を簡易に制御する。
【課題を解決するための手段】抵抗制御装置は、DXセンタを形成可能な不純物を含む可変抵抗素子と、可変抵抗素子の温度を制御する温度制御装置と、可変抵抗素子に光を照射する光源と、光源以外からの可変抵抗素子への光の照射を遮蔽する遮蔽体と、を備え、不純物がDXセンタを形成可能となる温度以下に可変抵抗素子を冷却するとともに、可変抵抗素子に光を照射してDXセンタをイオン化させることにより可変抵抗素子の抵抗値を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗制御装置及び抵抗制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子回路には、その動作条件の微調整の目的で、半固定で利用する可変抵抗素子が多く利用されている。電気的に制御できる可変抵抗素子として、シフト抵抗やラダー抵抗を用いた電子ボリュームが知られている。単一の抵抗体の抵抗値を連続的に変化させるものとして、抵抗体と発熱体との組み合わせを用いて、抵抗体の抵抗値の温度係数に応じて発熱体の発熱量を調整して所望の抵抗値を得る方法がある。また、光により素子の抵抗を変化させる装置がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−224154号公報
【特許文献2】特開2002−252536号公報
【特許文献3】米国特許7503689号明細書
【特許文献4】特開2008−98576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シフト抵抗やラダー抵抗を用いた電子ボリュームの場合、高精度の抵抗調整を行おうとすると素子の規模が大きくなる問題がある。抵抗体と発熱体との組み合わせを用いて抵抗値を変化させる場合、常時加熱を行う必要があり、熱のノイズを嫌う低雑音増幅回路などの用途には利用できないという問題がある。光により素子の抵抗を変化させる装置について、抵抗値を保持する機能がない場合、常時光を照射する必要があり、ノイズ源になる恐れがある。本件は、可変抵抗素子の抵抗値を簡易に制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本件の一観点による抵抗制御装置は、DXセンタを形成可能な不純物を含む可変抵抗素子と、可変抵抗素子の温度を制御する温度制御装置と、可変抵抗素子に光を照射する光源と、光源以外からの可変抵抗素子への光の照射を遮蔽する遮蔽体と、を備え、不純物がDXセンタを形成可能となる温度以下に可変抵抗素子を冷却するとともに、可変抵抗素子に光を照射してDXセンタをイオン化させることにより可変抵抗素子の抵抗値を制御する。
【発明の効果】
【0006】
本件によれば、可変抵抗素子の抵抗値を簡易に制御することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施例1に係る抵抗制御装置1の構成図である。
【図2】可変抵抗素子3に対する光照射後のキャリアの増加率を示す図である。
【図3】可変抵抗素子3の抵抗値の変化を示した図である。
【図4】可変抵抗素子3への光の照射時間に対する可変抵抗素子3の抵抗値の変化を示す図である。
【図5】実施例2に係る抵抗制御装置1の構成図である。
【図6】実施例3に係る抵抗制御装置1の構成図である。
【図7】実施例4に係る抵抗制御装置1の構成図である。
【図8】LED11による光パルスの出力時間と、可変抵抗素子3の抵抗値の変化との関係を示す図である。
【図9】実施例5に係る抵抗制御装置1の構成図である。
【図10】Vinと可変抵抗素子3の抵抗値との関係を示す図である。
【図11】実施例6に係る抵抗制御装置1の構成図である。
【図12】実施例7に係る抵抗制御装置1の構成図である。
【図13】モジュール化された抵抗制御装置1を応用回路50が設けられた基板51上に設置した場合の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本実施形態に係る抵抗制御装置及び抵抗制御方法について説明する。以下の実施例の構成は例示であり、本実施形態に係る抵抗制御装置及び抵抗制御方法は実施例の構成に限定されない。
【実施例1】
【0009】
本実施形態に係る抵抗制御装置1及び抵抗制御方法の第1の実施例を説明する。図1は、実施例1に係る抵抗制御装置1の構成図である。
【0010】
抵抗制御装置1は、基板2と、DXセンタを形成可能な不純物を含む可変抵抗素子3と、可変抵抗素子3に光を照射する光源4と、可変抵抗素子3及び光源4を覆う遮蔽体(シールド)5と、可変抵抗素子3の温度を制御する温度制御装置6と、を備えている。可変抵抗素子3は、抵抗利用回路7と接続されており、光源4は、光源制御回路8と接続されている。
【0011】
基板2は、例えば、セラミック基板である。可変抵抗素子3は、例えば、不純物としてSi(ケイ素)を添加したAlXGa1-XAs混晶半導体である。ただし、これに限らず、可変抵抗素子3に、Te(テルル)等の他の不純物を添加した混晶半導体を用いてもよい。
【0012】
可変抵抗素子3の抵抗値の可変機構としてDXセンタによる持続性光伝導(PPC、Persistent Photo Conductivity)を利用する。DXセンタは、AlXGa1-XAs混晶半導
体等の化合物半導体に不純物を添加したときに形成される深い準位である。可変抵抗素子3を所定温度(例えば、150K)以下に冷却すると、可変抵抗素子3に添加された不純物の一部がDXセンタを形成することにより可変抵抗素子3のキャリア濃度が低下する。可変抵抗素子3のキャリア濃度の低下に応じて、可変抵抗素子3の抵抗は大きくなる。すなわち、可変抵抗素子3は高抵抗の状態となる。
【0013】
可変抵抗素子3を冷却した後、可変抵抗素子3に対して光を照射すると、光の照射に伴いDXセンタの一部がイオン化することで可変抵抗素子3のキャリア濃度が徐々に増加し、可変抵抗素子3の抵抗は小さくなる。すなわち、可変抵抗素子3は低抵抗の状態となる。可変抵抗素子3に対する光の照射を停止しても一度イオン化したキャリアは熱的には再度DXセンタを形成しないため、可変抵抗素子3は低抵抗の状態が維持される。
【0014】
図2は、可変抵抗素子3としてSiを添加したAlXGa1-XAs混晶半導体を用いた場合の光照射後のキャリアの増加率を、AlXGa1-XAs混晶半導体の組成xに対してプロットした図である(N. Chand, T. Henderson, J. Clem, W. T. Masselink, R. Fischer, Y. C. Chang, and H. Morkoc, Phys. Rev. B30, 4481(1984))。
【0015】
図2の縦軸は、AlXGa1-XAs混晶半導体中のキャリアの増加率(キャリア濃度の増加Δn/Si濃度NSi)を示しており、図2の横軸は、AlXGa1-XAs混晶半導体の組成xを示している。AlXGa1-XAs混晶半導体に対するSi濃度NSiは、3×1017
-3である。また、ここでは、AlXGa1-XAs混晶半導体を77Kに冷却している。
【0016】
図2に示すように、x=0.2から0.4の間で、AlXGa1-XAs混晶半導体中のキャリアの増加率が大きい。特に、x=0.32では、AlXGa1-XAs混晶半導体中のSi濃度NSiの約60%を光照射により増減させることができる。
【0017】
本実施形態では、可変抵抗素子3としてSiを添加したAlXGa1-XAs混晶半導体を用いた場合のSi濃度NSiを3×1017cm-3とし、x=0.32とする。ただし、これに限定されず、Si濃度NSiは他の値でもよいし、AlXGa1-XAs混晶半導体の組成xは他の値であってもよい。
【0018】
可変抵抗素子3を加熱する(又は冷却を停止する)ことにより、可変抵抗素子3の温度が上昇することで、可変抵抗素子3に形成されたDXセンタの大部分又は全部をイオン化することができる。そして、可変抵抗素子3を加熱し続ける(又は冷却の停止を継続する)ことにより、可変抵抗素子3の温度が更に上昇することで、可変抵抗素子3にDXセンタを形成することができる。そして、再度、可変抵抗素子3に光を照射すれば、可変抵抗素子3に形成されたDXセンタの一部をイオン化させることができる。
【0019】
このように、可変抵抗素子3の温度を調整するとともに、可変抵抗素子3に対して光の照射を行うことにより、可変抵抗素子3の抵抗値を制御することができる。すなわち、可変抵抗素子3の抵抗値を任意に設定変更することが可能となる。
【0020】
図3は、可変抵抗素子3の抵抗値の変化を示した図である。図3の縦軸は、可変抵抗素子3の抵抗値を示しており、図3の横軸は、可変抵抗素子3に対する冷却時間、可変抵抗素子3に対する加熱時間及び可変抵抗素子3に対する光照射時間を示している。
【0021】
図3に示すように、可変抵抗素子3に対して冷却を行うとともに光の照射を行った場合、可変抵抗素子3に対して光を照射している間、可変抵抗素子3の抵抗値が減少する。可変抵抗素子3に対する光の照射を停止していても、可変抵抗素子3の抵抗値は低い状態が維持される。可変抵抗素子3の抵抗値が減少した状態で、可変抵抗素子3に対して加熱を行った場合、可変抵抗素子3の抵抗値は、可変抵抗素子3に対する光の照射を行う前の状態に戻る。すなわち、可変抵抗素子3に対して加熱を行うことにより可変抵抗素子3の抵抗値が初期化される。
【0022】
光源4は、例えば、LED(Light Emitting Diode、発光ダイオード)である。図1に示すように、遮蔽体5は、可変抵抗素子3及び光源4を覆うようにして基板2に設けられている。すなわち、遮蔽体5の内側に可変抵抗素子3及び光源4が設置されている。遮蔽体5は、金属製又はセラミック製の材料を用いることができる。可変抵抗素子3及び光源4は、遮蔽体5で覆われるため、可変抵抗素子3には光源4から照射される光のみが入射することになり、光源4が照射する光以外の周囲からの所定の光は、可変抵抗素子3には入射されない。すなわち、遮蔽体5は、光源4が照射する光以外の周囲からの所定の光を遮蔽する。
【0023】
光源4としてLEDを用いる場合、DXセンタのイオン化が活発になる約0.8eV(P. M. Mooney, G. A. Northrop, T. N. Morgan, and H. G. Grimmeiss, Phys. Rev. B37,
8298(1988))よりも高エネルギーの光を発光するLEDを用いてもよい。また、遮蔽体
5は、0.3eVよりも高エネルギーの光を遮蔽できることが好ましい。0.3eVから0.8eVのエネルギーの光を可変抵抗素子3に照射する場合、持続性ではないが光によるキャリア濃度の変化が報告されている(J. C. M. Henning and J. P. M. Ansems, Phys. Rev. B38, 5772(1988))。したがって、0.3eVから0.8eVのエネルギーの光を
可変抵抗素子3に照射する場合、可変抵抗素子3の抵抗値の安定化に望ましくない場合がある。ただし、これは、0.3eVから0.8eVのエネルギーの光を用いた光センサー等の用途に可変抵抗素子3を用いる場合を除外するものではない。
【0024】
図4は、可変抵抗素子3への光の照射時間に対する可変抵抗素子3の抵抗値の変化を示す図である。図4に示すように、光の照射時間の長さに応じて、可変抵抗素子3の抵抗値が減少している。光の照射時間と、光の照射時間に応じた可変抵抗素子3の抵抗値と、を予め求めておくことで、可変抵抗素子3の抵抗値を所望の値にするための光の照射時間を一意に決定することができる。
【0025】
図1に示すように、温度制御装置6は、可変抵抗素子3及び光源4が設置された基板2の下面に設けられている。温度制御装置6は、例えば、ペルチェ素子である。温度制御装置6としてペルチェ素子を用いた場合の例を説明する。ペルチェ素子は、電源(図示せず)に接続されている。ペルチェ素子が吸熱反応を起こす方向に電流をペルチェ素子に供給し、ペルチェ素子が吸熱することにより可変抵抗素子3の温度を降下させる。すなわち、ペルチェ素子が吸熱することで可変抵抗素子3が冷却される。また、ペルチェ素子が発熱反応を起こす方向に電流をペルチェ素子に供給し、ペルチェ素子が発熱することで可変抵抗素子3が加熱される。
【0026】
また、温度制御装置6は、液体窒素を用いた装置であってもよい。例えば、液体窒素を用いた装置である場合、液体窒素が充填された充填槽に可変抵抗素子3を浸漬することにより可変抵抗素子3の温度を降下させる。すなわち、液体窒素が充填された充填槽に可変抵抗素子3を浸漬することで可変抵抗素子3が冷却される。また、液体窒素が充填された充填槽から可変抵抗素子3を取り出すことにより可変抵抗素子3の温度を上昇させる。すなわち、液体窒素が充填された充填槽から可変抵抗素子3を取り出すことで可変抵抗素子3が加熱される。更に、温度制御装置6は、ペルチェ素子と液体窒素を用いた装置とを組み合わせた装置であってもよい。
【実施例2】
【0027】
本実施形態に係る抵抗制御装置1及び抵抗制御方法の第2の実施例を説明する。図5は、実施例2に係る抵抗制御装置1の構成図である。抵抗制御装置1は、基板2、抵抗分圧回路10、LED11、遮蔽体5及び温度制御装置6を備えている。図5では、遮蔽体5の図示を省略しているが、遮蔽体5は、抵抗分圧回路10及びLED11を覆うようにして基板2に設けられている。すなわち、遮蔽体5の内側に抵抗分圧回路10及びLED11が設置されている。また、図5では、温度制御装置6の図示を省略しているが、温度制御装置6は、基板2の下面に設けられている。実施例2に係る基板2、可変抵抗素子3、LED11、遮蔽体5及び温度制御装置6は、実施例1と同様である。LED11は、VLEDから順方向の電圧が印加されている。
【0028】
抵抗分圧回路10は、入力端子12とグラウンド(GND)との間に直列に接続した固定抵抗素子13及び可変抵抗素子3を有している。入力電圧をVin、出力電圧をVout、可変抵抗素子3の抵抗値をR1、固定抵抗素子13の抵抗値R2とする場合、VinとVoutとの関係は、Vout=Vin×R1/(R1+R2)となる。従って、Vinを一定とした状態でR1を増減させることで、出力端子14のVoutを変化させることができる。
【0029】
実施例2では、遮蔽体5の内側に抵抗分圧回路10及びLED11を設置する例を示したが、遮蔽体5の内側に可変抵抗素子3及びLED11を設置し、遮蔽体5の外側に固定抵抗素子13を設置するようにしてもよい。
【実施例3】
【0030】
本実施形態に係る抵抗制御装置1及び抵抗制御方法の第3の実施例を説明する。図6は、実施例3に係る抵抗制御装置1の構成図である。抵抗制御装置1は、基板2、抵抗分圧回路10、LED11、初期化回路15、遮蔽体5及び温度制御装置6を備えている。図6では、遮蔽体5の図示を省略しているが、遮蔽体5は、抵抗分圧回路10、LED11及び初期化回路15を覆うようにして基板2に設けられている。すなわち、遮蔽体5の内側に抵抗分圧回路10、LED11及び初期化回路15が設置されている。また、図6では、温度制御装置6の図示を省略しているが、温度制御装置6は、基板2の下面に設けられている。実施例3に係る基板2、可変抵抗素子3、遮蔽体5及び温度制御装置6は、実施例1と同様であり、実施例3に係る抵抗分圧回路10は、実施例2と同様である。
【0031】
初期化回路15は、入力端子12と出力端子14との間に設けられたFET(Field Effect Transistor、電界効果型トランジスタ)16及び17を有している。入力信号Vr
stがONの場合、FET16がONになり、FET16のソースとドレインとの間に電流が流れる。入力信号VrstがONの場合、FET17がOFFになり、FET17のソースとドレインとの間に電流が流れない。入力信号VrstがOFFの場合、FET16がOFFになり、FET16のソースとドレインとの間に電流が流れない。入力信号VrstがOFFの場合、FET17がONになり、FET17のソースとドレインとの間に電流が流れる。FET16は、例えば、ノーマリオン型FETであり、FET17は、例えば、ノーマリオフ型FETである。
【0032】
入力信号VrstをOFFとした場合、FET16がOFFとなり、FET17がONとなる。入力信号VrstをOFFとし、Vinを一定とした状態で可変抵抗素子3の抵抗値R1を増減させることで、出力端子14のVoutを変化させることができる。
【0033】
一方、入力信号VrstをONとした場合、FET16がONとなり、FET17がOFFとなる。可変抵抗素子3の抵抗値R1が減少した状態で、入力信号VrstをONとした場合、可変抵抗素子3に高電界が印加され、可変抵抗素子3の抵抗値R1が上昇し、可変抵抗素子3の抵抗値R1は元の状態に戻る。このように、可変抵抗素子3に高電界を印加することにより可変抵抗素子3の抵抗値が初期化される。
【0034】
実施例3においては、可変抵抗素子3及び固定抵抗素子13の抵抗値、入力端子12と可変抵抗素子3の端子との距離を予め調整することで、入力信号VrstをONとした場合にのみ可変抵抗素子3に1×106V/m以上の電界が印加されるようにしている。可
変抵抗素子3に1×106V/m以上の電界を印加すると、キャリアが再度DXセンタを
形成し、可変抵抗素子3の有効なキャリア濃度が低下する(P. M. Mooney, J. Appl. Phys. 67, R1(1990))。
【0035】
実施例3では、遮蔽体5の内側に抵抗分圧回路10、初期化回路15及びLED11を設置する例を示した。これに限らず、遮蔽体5の内側に可変抵抗素子3及びLED11を設置し、遮蔽体5の外側に固定抵抗素子13及び初期化回路15を設置するようにしてもよい。また、遮蔽体5の内側に抵抗分圧回路10及びLED11を設置し、遮蔽体5の外側に初期化回路15を設置するようにしてもよい。
【0036】
また、実施例3では、抵抗制御装置1が初期化回路15を備える例を示した。これに限らず、初期化回路15を外部装置とすることにより、初期化回路15を抵抗制御装置1から切り離してもよい。
【実施例4】
【0037】
本実施形態に係る抵抗制御装置1及び抵抗制御方法の第4の実施例を説明する。図7は
、実施例4に係る抵抗制御装置1の構成図である。抵抗制御装置1は、基板2、抵抗分圧回路10、LED11、パルス発生回路20、遮蔽体5及び温度制御装置6を備えている。図7では、遮蔽体5の図示を省略しているが、遮蔽体5は、抵抗分圧回路10、LED11及びパルス発生回路20を覆うようにして基板2に設けられている。すなわち、遮蔽体5の内側に抵抗分圧回路10、LED11及びパルス発生回路20が設置されている。また、図7では、温度制御装置6の図示を省略しているが、温度制御装置6は、基板2の下面に設けられている。
【0038】
実施例4に係る基板2、可変抵抗素子3、遮蔽体5及び温度制御装置6は、実施例1と同様であり、実施例4に係る抵抗分圧回路10は、実施例2と同様である。
【0039】
図7に示すように、パルス発生回路20とLED11とが接続されている。パルス発生回路20は、LED11に所定間隔で電圧を印加する。所定間隔でLED11に電圧が印加されることにより、LED11は所定間隔で発光し、可変抵抗素子3に対して所定間隔で光を照射する。
【0040】
持続性光伝導は、DXセンタの再形成が徐々に起こることにより可変抵抗素子3の抵抗値が上昇する可能性がある。可変抵抗素子3の抵抗値を一定の範囲内に長時間固定したい場合、可変抵抗素子3のキャリアを定期的に補充する必要がある。可変抵抗素子3のキャリアの減少率を予め調べておき、パルス発生回路20にパルス発生源の周期を設定する。パルス発生回路20からLED11に所定間隔で電圧が印加されることによりLED11が所定間隔で発光する。
【0041】
図8は、LED11による光パルスの出力時間と、可変抵抗素子3の抵抗値の変化との関係を示す図である。図8に示すように、所定間隔でLED11を繰り返し発光させることにより、可変抵抗素子3の抵抗値の増減幅を一定の範囲内に抑えることができる。すなわち、可変抵抗素子3に所定間隔で光を繰り返し照射することにより、可変抵抗素子3の抵抗値を所定範囲内に維持することができる。
【0042】
LED11による光パルスの出力間隔を制御することで、可変抵抗素子3の抵抗値の増減幅を決定することができる。例えば、LED11による光パルスの出力間隔を短くすることで、可変抵抗素子3の抵抗値の増減幅を小さくすることができる。
【0043】
実施例4では、遮蔽体5の内側に抵抗分圧回路10、LED11及びパルス発生回路20を設置する例を示した。これに限らず、遮蔽体5の内側に可変抵抗素子3及びLED11を設置し、遮蔽体5の外側に固定抵抗素子13及びパルス発生回路20を設置するようにしてもよい。また、遮蔽体5の内側に抵抗分圧回路10及びLED11を設置し、遮蔽体5の外側にパルス発生回路20を設置するようにしてもよい。
【0044】
また、実施例4では、抵抗制御装置1がパルス発生回路20を備える例を示した。これに限らず、パルス発生回路20を外部装置とすることにより、パルス発生回路20を抵抗制御装置1から切り離してもよい。
【実施例5】
【0045】
本実施形態に係る抵抗制御装置1及び抵抗制御方法の第5の実施例を説明する。図9は、実施例5に係る抵抗制御装置1の構成図である。抵抗制御装置1は、基板2、抵抗分圧回路10、LED11、遮蔽体5及び温度制御装置6を備えている。図9では、遮蔽体5の図示を省略しているが、遮蔽体5は、抵抗分圧回路10及びLED11を覆うようにして基板2に設けられている。すなわち、遮蔽体5の内側に抵抗分圧回路10及びLED11が設置されている。また、図9では、温度制御装置6の図示を省略しているが、温度制
御装置6は、基板2の下面に設けられている。実施例5に係る基板2、可変抵抗素子3、遮蔽体5及び温度制御装置6は、実施例1と同様であり、実施例5に係る抵抗分圧回路10は、実施例2と同様である。
【0046】
LED11は、入力端子12とグラウンド(GND)との間で抵抗分圧回路10と並列に接続されている。また、Vinが抵抗分圧回路10を利用する電圧(プラスの電圧)の場合、LED11に逆方向の電圧が印加されるように、入力端子12にLED11が接続されている。したがって、Vinが抵抗分圧回路10を利用する電圧(プラスの電圧)の場合、LED11は発光せず、Vinが抵抗分圧回路10を利用する電圧と逆方向の電圧(マイナスの電圧)の場合、LED11は発光する。
【0047】
図10は、Vinと可変抵抗素子3の抵抗値との関係を示す図である。図10に示すように、Vinがプラスの電圧の場合、LED11は発光しないため、可変抵抗素子3に光が照射されず、可変抵抗素子3の抵抗値は変化しない。図10に示すように、Vinがマイナスの電圧の場合、LED11が発光するため、可変抵抗素子3に光が照射され、可変抵抗素子3の抵抗値が減少する。
【0048】
実施例5に係る抵抗制御装置1では、入力端子12にLED11を接続することにより、実施例2に係る抵抗制御装置1と比較して、外部への配線数を減らすことができる。
【0049】
実施例5では、遮蔽体5の内側に抵抗分圧回路10及びLED11を設置する例を示したが、遮蔽体5の内側に可変抵抗素子3及びLED11を設置し、遮蔽体5の外側に固定抵抗素子13を設置するようにしてもよい。
【実施例6】
【0050】
本実施形態に係る抵抗制御装置1及び抵抗制御方法の第6の実施例を説明する。図11は、実施例6に係る抵抗制御装置1の構成図である。抵抗制御装置1は、基板2、抵抗分圧回路10、LED11、Detector30、FET31、キャパシタ(積分回路)32及びスイッチ33を備えている。図11では、遮蔽体5の図示を省略しているが、遮蔽体5は、抵抗分圧回路10及びLED11を覆うようにして基板2に設けられている。すなわち、遮蔽体5の内側に抵抗分圧回路10及びLED11が設置されている。また、図11では、温度制御装置6の図示を省略しているが、温度制御装置6は、基板2の下面に設けられている。実施例6に係る基板2、可変抵抗素子3、遮蔽体5及び温度制御装置6は、実施例1と同様であり、実施例6に係る抵抗分圧回路10は、実施例2と同様である。
【0051】
Detector30は、例えば、赤外線イメージセンサーである量子井戸型赤外線検知器(Q
WIP:Quantum Well Infrared Photo-detector)である。Detector30に赤外線等の特
定の光が入射されると、Detector30に流れる電流の値が変化する。Detector30には、FET31を介してキャパシタ32が接続されている。キャパシタ32に所定量の電荷が蓄積された時点で、スイッチ33を切り替え、キャパシタ32に蓄積された電荷を読み取ることで、Detector30に流れる電流の変化を検出する。Detector30に流れる電流の変化を検出することによって、Detector30は光の検知器として機能する。
【0052】
FET31に所定の電圧を印加すると、FET31のソースとドレインとの間が導通し、キャパシタ32に電荷が蓄積される。抵抗分圧回路10とFET31のゲート電極とが接続しており、FET31のゲート電極にかかる電圧値を抵抗分圧回路10によって制御することができる。すなわち、可変抵抗素子3の抵抗値を制御することにより、FET31のゲート電極にかかる電圧値を制御することができる。したがって、抵抗制御装置1は、Detector30の駆動装置として機能する。
【0053】
例えば、可変抵抗素子3としてSiを添加したAlXGa1-XAs混晶半導体を用い、Si濃度を1×1018cm-3、x=0.2とし、可変抵抗素子3の厚さを3μmとして、可変抵抗素子3を500μm角の直方体に形成する。そして、可変抵抗素子3の上下をTi/
Pt/Auの積層構造体等で形成すると、可変抵抗素子3の抵抗値は、約400kΩから約200kΩの範囲で変化可能となる。入力電圧Vinを4Vとし、固定抵抗素子13の抵抗値を500kΩとすると、FET31に1.77V(4V×400kΩ/(400kΩ+500kΩ)から1.14V(4V×200kΩ/(200kΩ+500kΩ)の範囲の電圧を印加することができる。
【0054】
実施例6では、遮蔽体5の内側に抵抗分圧回路10及びLED11を設置する例を示したが、遮蔽体5の内側に可変抵抗素子3及びLED11を設置し、遮蔽体5の外側に固定抵抗素子13を設置するようにしてもよい。
【0055】
また、実施例6では、抵抗制御装置1がDetector30、FET31、キャパシタ32及びスイッチ33を備える例を示した。これに限らず、Detector30、FET31、キャパシタ32及びスイッチ33を外部装置とすることにより、Detector30、FET31、キャパシタ32及びスイッチ33を抵抗制御装置1から切り離してもよい。
【実施例7】
【0056】
本実施形態に係る抵抗制御装置1及び抵抗制御方法の第7の実施例を説明する。図12は、抵抗制御装置1をMCM(multi chip module)によってモジュール化した場合の構
成図である。図12に示すように、セラミック基板40上に高ドープ層41Aが形成され、高ドープ層41A上に可変抵抗素子3及びコンタクト金属層42Aが形成されている。また、セラミック基板40上に高ドープ層41Bが形成され、高ドープ層41B上にLED11及びコンタクト金属層42Bが形成されている。図12では図示していないが、可変抵抗素子3の下方に温度制御装置6が設置される。
【0057】
コンタクト金属層42A及び42Bは、Ti/Pt/Auの積層構造である。コンタクト金属層42A及び42Bは、セラミック基板40上に形成された金属配線43Aに接続されている。
【0058】
可変抵抗素子3上に高ドープ層41Cが形成され、高ドープ層41C上にコンタクト金属層42Cが形成されている。LED11上に高ドープ層41Dが形成され、高ドープ層41D上にコンタクト金属層42Dが形成されている。コンタクト金属層42C及び42Dは、金属配線43Bに接続されている。
【0059】
セラミック基板40、可変抵抗素子3及びLED11を覆うように遮蔽体5が形成されている。セラミック基板40の上方に形成されている遮蔽体5とセラミック基板40との間には絶縁層44が形成されている。絶縁層44は、例えば、SiO2である。実施例7
に係る可変抵抗素子3、遮蔽体5及び温度制御装置6は、実施例1と同様である。
【0060】
図13に示すように、MCMによってモジュール化された抵抗制御装置1を、応用回路50が設けられた基板51上に設置することによって、応用回路50の温度制御装置52を利用することができる。図13の(A)は、MCMによってモジュール化された抵抗制御装置1を、応用回路50が設けられた基板51上に設置した場合の上面図である。図13の(B)は、MCMによってモジュール化された抵抗制御装置1を、応用回路50が設けられた基板51上に設置した場合の正面図である。抵抗制御装置1は、MCMごとに光遮蔽がされているため、複数の抵抗制御装置1を隣接して基板51上に設置することができる。
【0061】
実施例1から実施例7では、温度制御装置6を基板2の下面又は可変抵抗素子3の下方
に設ける例を説明した。これに限らず、可変抵抗素子3の温度制御が可能な位置に温度制御装置6を設けるようにしてもよい。この場合、遮蔽体5の内側又は外側に温度制御装置6を設けるようにしてもよい。
【0062】
本実施形態に係る抵抗制御装置1及び抵抗制御方法によれば、可変抵抗素子3の温度制御及び可変抵抗素子3に対する光照射を行うことにより、可変抵抗素子3の抵抗値を簡易に制御することができる。
【符号の説明】
【0063】
1 抵抗制御装置
2 基板
3 可変抵抗素子
4 光源
5 遮蔽体
6 温度制御装置
7 抵抗利用回路
8 光源制御回路
10 抵抗分圧回路
11 LED
12 入力端子
13 固定抵抗素子
14 出力端子
15 初期化回路
16、17、31 FET
20 パルス発生回路
30 Detector
32 キャパシタ
33 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
DXセンタを形成可能な不純物を含む可変抵抗素子と、
前記可変抵抗素子の温度を制御する温度制御装置と、
前記可変抵抗素子に光を照射する光源と、
前記光源以外からの前記可変抵抗素子への光の照射を遮蔽する遮蔽体と、を備え、
前記不純物がDXセンタを形成可能となる温度以下に前記可変抵抗素子を冷却するとともに、前記可変抵抗素子に光を照射して前記DXセンタをイオン化させることにより前記可変抵抗素子の抵抗値を制御することを特徴とする抵抗制御装置。
【請求項2】
前記可変抵抗素子の温度を上昇させた後降下させることにより前記可変抵抗素子の抵抗値を変化させることを特徴とする請求項1に記載の抵抗制御装置。
【請求項3】
前記可変抵抗素子に所定の電界を印加することにより前記可変抵抗素子の抵抗値を上昇させることを特徴とする請求項1又は2に記載の抵抗制御装置。
【請求項4】
前記可変抵抗素子への光の照射を所定間隔で繰り返し行うことにより、前記可変抵抗素子の抵抗値を所定範囲に維持することを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の抵抗制御装置。
【請求項5】
前記光源は、発光ダイオードであり、
前記可変抵抗素子と前記発光ダイオードとが並列に接続され、
前記発光ダイオードに順方向の電圧が印加される場合、前記発光ダイオードから前記可変抵抗素子に光が照射され、
前記発光ダイオードに逆方向の電圧が印加される場合、前記可変抵抗素子の抵抗値を利用することを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の抵抗制御装置。
【請求項6】
DXセンタを形成可能な不純物を含む可変抵抗素子と、前記可変抵抗素子の温度を制御する温度制御装置と、前記可変抵抗素子に光を照射する光源と、前記光源以外からの前記可変抵抗素子への光の照射を遮蔽する遮蔽体と、を有する抵抗制御装置は、
前記不純物がDXセンタを形成可能となる温度以下に前記可変抵抗素子を冷却するとともに、前記可変抵抗素子に光を照射して前記DXセンタをイオン化させることにより前記可変抵抗素子の抵抗値を制御する工程を備えることを特徴とする抵抗制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−129642(P2011−129642A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285502(P2009−285502)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】