説明

抵抗素子の製造方法および抵抗素子

【課題】 加熱環境下に置かれた場合であっても高い電気抵抗特性を発現し、かつ小さなサイズで高精度に形成できる抵抗素子の製造方法および抵抗素子を提供する。
【解決手段】 素子電極および抵抗層を具備する抵抗素子の製造方法において、(a)ニッケル塩、還元剤およびアミノ基含有化合物(ただしアミノ基は、−NHおよび/または>NH)である錯化剤を含有する無電解ニッケル・リンめっき液を用いて無電解めっき法により基板上に抵抗層を成膜する無電解めっき工程、(b)前記抵抗層に酸処理を施す酸処理工程、を具備することを特徴とする抵抗素子の製造方法を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗素子の製造方法および抵抗素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話やデジタルカメラなどの機器の小型化と軽量化が進むにつれて、プリント配線板に実装する素子においては、素子の小型化や素子同士の間隔の削減といった従来の実装技術では対応が難しくなり、これら素子を内蔵したプリント配線板への期待が高まっている。素子を内蔵した基板が厚くならないようにするため、薄い部品や膜素子で十分に特性を満たすことができる方法の開発などが急がれている。
プリント配線板に抵抗素子を形成する方法としては、銅箔上に金属薄膜で抵抗層を形成する方法、基板上に抵抗層を無電解めっきで形成する方法、抵抗性の厚膜ポリマーを印刷する方法などがある。抵抗値、精度、形状、価格などから用途に応じて形成方法を選択していく必要がある。厚膜ポリマーを印刷する方法では、高抵抗なものを形成できるが、微細な寸法になると形成が困難である。金属材料を用いた薄膜タイプは、厚膜タイプに比べ、抵抗値範囲が低抵抗に制約されるが、小さなサイズで高精度に形成できる。
銅箔上に金属薄膜で抵抗素子を形成する方法には、米国Ohmega Technologies社のOhmega−Plyがある。これは、銅箔上に電解ニッケル・リンめっきにより薄膜抵抗層を形成したものを基板上に積層形成し、それぞれを抵抗素子電極および抵抗皮膜として抵抗素子となすものである(例えば、特許文献1参照)。
基板上にめっきで抵抗素子を形成する方法には、米国Macdermid社のM−Passがある。これは、基板上に配線の一部が分離している配線パターンを形成した後に、この一部分離している配線間に無電解ニッケル・リンめっきによって抵抗層を形成して抵抗素子となすものである(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】米国特許第4808967号明細書
【特許文献2】特開平10−190183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の無電解めっきによって形成されたニッケル・リン薄膜からなる抵抗素子では、加熱環境下に置かれた場合であっても高い電気抵抗特性(シート抵抗値等)を維持することが難しかった。このため、加熱環境下に置かれる種々の用途においても安定した電気抵抗特性を発現し、かつ小さなサイズで高精度に形成できる抵抗素子の開発が望まれている。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、加熱環境下に置かれた場合であっても高い電気抵抗特性を発現し、かつ小さなサイズで高精度に形成できる抵抗素子が得られる製造方法および抵抗素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、素子電極および抵抗層を具備する抵抗素子の製造方法において、
(a)ニッケル塩、還元剤およびアミノ基含有化合物(ただしアミノ基は、−NHおよび/または>NH)である錯化剤を含有する無電解ニッケル・リンめっき液を用いて無電解めっき法により基板上に抵抗層を成膜する無電解めっき工程、
(b)前記抵抗層に酸処理を施す酸処理工程、
を具備することを特徴とする抵抗素子の製造方法である。
【0006】
請求項2に係る発明は、前記酸処理工程(b)の後に、(c)前記抵抗層に加熱処理を施す加熱処理工程を行うことを特徴とする請求項1に記載の抵抗素子の製造方法である。
【0007】
請求項3に係る発明は、前記加熱処理(c)は、100〜850℃の範囲内で行うことを特徴とする請求項2に記載の抵抗素子の製造方法である。
【0008】
請求項4に係る発明は、前記抵抗層の200℃におけるシート抵抗値が20Ω/□以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の抵抗素子の製造方法である。
【0009】
請求項5に係る発明は、素子電極および抵抗層を具備する抵抗素子の製造方法において、
(A−1)基板の全面に抵抗層をめっきによって形成する工程、
(B−1)前記基板上に導体層を形成した後に前記抵抗層および導体層からなる配線パターンを形成する工程、
(C−1)前記導体層の所定の部分をエッチングし、該導体層の下の抵抗層を露出させる工程、
を具備し、前記抵抗層の形成工程が、
(a)ニッケル塩、還元剤およびアミノ基含有化合物(ただしアミノ基は、−NHおよび/または>NH)である錯化剤を含有する無電解ニッケル・リンめっき液を用いて無電解めっき法により基板上に抵抗層を成膜する無電解めっき工程、
(b)前記抵抗層に酸処理を施す酸処理工程、
を具備することを特徴とする抵抗素子の製造方法である。
【0010】
請求項6に係る発明は、前記酸処理工程(b)の後に、(c)前記抵抗層に加熱処理を施す加熱処理工程を行うことを特徴とする請求項5に記載の抵抗素子の製造方法である。
【0011】
請求項7に係る発明は、素子電極および抵抗層を具備する抵抗素子の製造方法において、
(A−2)基板上にパターニングされた抵抗層を形成する工程、
(B−2)前記基板上に導体層を形成する工程、
を具備し、前記抵抗層の形成工程が、
(a)ニッケル塩、還元剤およびアミノ基含有化合物(ただしアミノ基は、−NHおよび/または>NH)である錯化剤を含有する無電解ニッケル・リンめっき液を用いて無電解めっき法により基板上に抵抗層を成膜する無電解めっき工程、
(b)前記抵抗層に酸処理を施す酸処理工程、
を具備することを特徴とする抵抗素子の製造方法である。
【0012】
請求項8に係る発明は、前記酸処理工程(b)の後に、(c)前記抵抗層に加熱処理を施す加熱処理工程を行うことを特徴とする請求項7に記載の抵抗素子の製造方法である。
【0013】
請求項9に係る発明は、素子電極および抵抗層を具備する抵抗素子の製造方法において、
(a)ニッケル塩、還元剤およびアミノ基含有化合物(ただしアミノ基は、−NHおよび/または>NH)である錯化剤を含有する無電解ニッケル・リンめっき液を用いて無電解めっき法により基板上に抵抗層を成膜する無電解めっき工程、
(b)前記抵抗層に酸処理を施す酸処理工程、
を具備する工程によって形成されたことを特徴とする抵抗素子である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ニッケル塩、還元剤およびアミノ基含有化合物(ただしアミノ基は、−NHおよび/または>NH)である錯化剤を含有する無電解ニッケル・リンめっき液を用いて無電解めっき法により形成され、酸処理を施されたニッケル・リン薄膜を抵抗層とする抵抗素子であるので、クロムの共析を伴わないにもかかわらず、従来の無電解めっき法により形成されたニッケル・リン薄膜よりもはるかに高い電気抵抗特性を有するとともに、熱による電気抵抗特性の低下を防止することができる。
さらに、前記抵抗層に加熱処理を施すことによって、抵抗層の電気抵抗特性の熱安定性が向上し、加熱環境下に置かれる種々の用途においても安定した電気抵抗特性を発現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の抵抗素子の製造方法は、ニッケル塩、還元剤およびアミノ基含有化合物である錯化剤を含有する無電解ニッケル・リンめっき液を用いて無電解めっき法により基板上に抵抗層を成膜(a)したのち、酸処理(b)および必要に応じて加熱処理(c)を施すものであり、200℃において20Ω/□以上のシート抵抗値を具備する抵抗素子を製造することができる。
【0016】
本発明の抵抗素子を形成する基板としては、特に限定されず、各種の合成樹脂からなる板や可撓性シート、ガラス板、セラミックス板、表面に絶縁層を有する金属製基板の中から、用途などに応じて適宜選択して用いることができる。あらかじめ内層に配線回路や他の受動素子が形成されているものであってもよい。
【0017】
前記無電解ニッケル・リンめっき液を構成するアミノ基含有化合物である錯化剤としては、例えば、α−アラニン、β−アラニン、ジエチレントリアミン、L−グルタミン酸塩、グリシン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアミノ基(−NH、>NH)を含有するアミノ酸、アミンなどを挙げることができる。とりわけ、α−アラニン、β−アラニン、ジエチレントリアミン、L−グルタミン酸塩およびグリシンからなる群から選ばれるアミノ基含有化合物を錯化剤として用いることが好ましい。
このような錯化剤のめっき液中における濃度は、0.1〜2.0mol/L程度、好ましくは、0.5〜1.5mol/L程度とすることができる。錯化剤の濃度が0.1mol/L未満であると、浴安定性が低下し、また、2.0mol/Lを超えると析出速度が遅くなり好ましくない。また、めっき液中の錯化剤とニッケルの濃度(mol/L)の比は、1:1〜20:1の範囲が好ましい。錯化剤の割合が上記の範囲よりも少ないと、形成されるニッケル・リン薄膜のシート抵抗が不十分となり、好ましくない。
【0018】
本発明で使用するニッケル・リンめっき液を構成するニッケル塩は、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、次亜リン酸ニッケル、炭酸ニッケル等を使用することができる。めっき液中のニッケル塩の濃度は0.01〜1.0mol/L程度、好ましくは0.05〜0.2mol/L程度とすることができる。ニッケル塩の濃度が0.01mol/L未満であると析出速度が遅くなり、また1.0mol/Lを超えると浴安定性が低下して好ましくない。
【0019】
本発明で使用するニッケル・リンめっき液を構成する還元剤は、次亜リン酸ナトリウム、ジメチルボランアミン、ヒドラジン等を使用することができる。めっき液中の還元剤の濃度は0.05〜1.0mol/L程度、好ましくは0.1〜0.3mol/L程度とすることができる。還元剤の濃度が0.05mol/L未満であると析出速度が遅くなり、また1.0mol/Lを超えると浴安定性が低下して好ましくない。
【0020】
上記の無電解ニッケル・リンめっき液を用いた無電解めっき法によるニッケル・リン薄膜の形成は、例えば、浴温度60〜90℃、浴pH4〜7の条件で行うことができる。浴温度が60℃未満であると析出温度が遅くなり、90℃を超えると浴安定性が低下して好ましくない。また、浴pHが上記の範囲から外れると、成膜速度とシート抵抗が不十分なものとなり好ましくない。
上記の無電解ニッケル・リンめっき液を用いて無電解めっき法により成膜されたニッケル・リン薄膜は、クロムの共析を伴わないにもかかわらず、従来の無電解めっき法により形成されたニッケル・リン薄膜よりもはるかに高い電気抵抗特性を有するものとなる。
【0021】
本発明の抵抗素子は、上記の無電解ニッケル・リンめっき液を用いて成膜した抵抗層に酸処理および加熱処理を施すことにより、該抵抗層の電気抵抗特性を更に向上させるとともに、熱安定性を向上させ、熱による電気抵抗特性の低下を防止したものである。上記処理による電気抵抗特性の熱安定化の機構は不明であるが、酸処理により、酸処理後はもちろん、200℃において20Ω/□以上のシート抵抗値を具備する抵抗層が得られる。このため、本発明の抵抗素子は、加熱環境下に置かれる種々の用途に使用しても、安定した電気抵抗特性を発現することが可能である。
なお、本発明において、抵抗層の200℃におけるシート抵抗値とは、抵抗層を200℃雰囲気中に30分間放置した後、4端針法(三菱化学株式会社製 Loresta MPMCP−T350)を用いて測定したものを意味する。
【0022】
酸処理に使用する酸としては、硝酸、硫酸、ホウ酸、炭酸、亜硝酸、ケイ酸、ホウケイ酸、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、亜硫酸、過硫酸、硫化水素水、フッ化水素酸、ホウフッ化水素酸、塩酸、亜塩素酸、次亜塩素酸、過塩素酸、臭化水素酸、次亜臭素酸、臭素酸、ヨウ化水素酸、次亜ヨウ素酸、ヨウ素酸などの無機酸;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプチル酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、アクリル酸、クロトン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、カプリン酸、アラキン酸、ワクセン酸、エルカ酸、リチノール酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等の有機酸等を挙げることができる。酸処理の方法は、酸水溶液への浸漬、酸水溶液の噴霧等を用いることができる。酸水溶液の濃度(例えば、硝酸根濃度、硫酸根濃度)は1〜900g/L、酸水溶液の温度は0〜100℃の範囲で設定することができる。また、浸漬による酸処理の場合、酸水溶液を撹拌してもよい。このように酸処理を施すことにより、酸処理後の抵抗層のシート抵抗値が無電解めっき直後のシート抵抗に比べて上昇する。酸処理工程は、硝酸溶液への基板の浸漬によって行うことが好ましい。
【0023】
また、本発明の抵抗素子は、無電解ニッケル・リンめっき液を構成する錯化剤の種類により、加熱処理を施すことによってシート抵抗値を更に高くするという効果もある。例えば錯化剤としてジエチレンジアミンを用いた場合、酸処理後に加熱処理を施すことによってシート抵抗値が驚異的に高くなる。一方、錯化剤としてL−グルタミン酸塩を用いた場合には、加熱処理を施してもシート抵抗値は安定している。従って、本発明の抵抗素子は、無電解ニッケル・リンめっき液に用いる錯化剤を適宜選択することにより、加熱処理後に具備するシート抵抗値を任意に設定することができる。上記の加熱処理は、例えば、100〜850℃の範囲内で行うことができる。
【0024】
次に、本発明の抵抗素子をプリント配線板に内蔵する方法について説明する。本発明の抵抗素子をプリント配線板に内蔵するには、所定の抵抗素子形成領域に形成された抵抗層と、この抵抗層に接する2つの導体層を形成する。2つの導体層は互いに分離されており、抵抗素子の素子電極として用いることができる。導体層の材料としては、金、銀、銅、ニッケル、アルミニウムなど、導電性の良好な金属材料が好ましい。
【0025】
以下、基板上に抵抗素子を形成する方法を例示して説明する。ここで、下記に示す領域を基板上に設定して説明の便宜を図るものとする。
抵抗素子が完成した状態において抵抗層が形成される領域・・・抵抗素子形成領域、
素子電極となる導体層が形成される領域・・・・・・・・・・・素子電極形成領域、
2つの導体層を分離するために抵抗層が露出される領域・・・・素子電極分離領域。
【0026】
抵抗素子をプリント配線板に内蔵するための第1の方法は、下記の(A−1)〜(C−1)の工程を具備する(図1参照)。
(A−1)基板1の全面に抵抗層2をめっきによって形成する工程[図1(a)参照]。
(B−1)前記基板1上に導体層3を形成した後に、前記抵抗層2および導体層3からなる配線パターン4を形成する工程[図1(b)〜図1(d)参照]。
(C−1)前記導体層3の所定の部分をエッチングし、該導体層3の下の抵抗層2を露出させる工程[図1(e)〜図1(f)参照]。
【0027】
ここで、工程(A−1)は、上述の無電解ニッケル・リンめっき液を用いて抵抗層2となるニッケル・リン薄膜を形成する無電解めっき工程(a)として行われる。
酸処理工程(b)は、酸処理に用いる酸が導体層3に影響のないものであれば、抵抗層2が露出された状態であればいずれの段階でも行うことができ、工程(A−1)と工程(B−1)の間に行ってもよいし、工程(B−1)と工程(C−1)の間に行ってもよいし、工程(C−1)の後に行ってもよい。酸処理工程(b)を工程(A−1)と工程(B−1)との間に行えば、この段階では導体層3が未形成であるので、導体層3の材料に関係なく酸処理に用いる酸を自由に選択でき、好ましい。図1(a)に示す段階と図1(b)に示す段階との間に行うと、抵抗層2の全面が露出しているため、均一に処理を施すことができ、かつ導体層3への影響を考慮しなくても良いので最も好ましい。
酸処理工程は、トリミングを行う場合は抵抗値が安定した状態で調整できるので、トリミング工程の前が好ましい。
加熱処理工程(c)を行う場合は、酸処理工程(b)の後であればいつの段階で行ってもよく、工程(A−1)と工程(B−1)の間に行ってもよいし、工程(B−1)と工程(C−1)の間に行ってもよいし、工程(C−1)の後に行ってもよい。トリミングを行う場合、トリミング時に発生する熱の影響を抑えるために、加熱処理工程(c)をトリミング工程より前に行うことが好ましい。
【0028】
工程(B−1)では、抵抗素子形成領域5に、抵抗層2と導体層3が積層されてなる配線パターン4を形成する。抵抗素子形成領域5は、所望の抵抗値が得られるように、長方形やミアンダ構造などの適宜形状に設定する。工程(B−1)の完了後、抵抗素子形成領域5以外では、抵抗層2と導体層3が除去されて基板1が露出された状態となる[図1(d)参照]。
工程(B−1)は、例えば以下の手順(1)〜(3)を順に行うことによって実施することができる。
(1)抵抗層2の上の全面に導体層3を形成する[図1(b)参照]。
(2)導体層3上、抵抗素子形成領域5にレジスト11を形成する[図1(c),図1(c′)参照]。
(3)レジスト11非形成部分12の導体層3および抵抗層2を一括エッチングによって除去した後、用済みのレジスト11を除去する[図1(d),図1(d′)参照]。
【0029】
工程(C−1)では、導体層3の所定の部分をエッチングし、該導体層3の下の抵抗層2を露出させる。つまり、素子電極形成領域6の導体層3を残して素子電極となすとともに、素子電極分離領域7の導体層3を除去する。
工程(C−1)は、例えば以下の手順(1)〜(2)を順に行うことによって実施することができる。
(1)配線パターン4および基板1の上にレジスト13を形成した後、パターニングにより素子電極分離領域7のレジスト13を除去してレジスト13非形成部分14とする[図1(e),図1(e′)参照]。
(2)レジスト13非形成部分14の導体層3をエッチングしたのち、用済みのレジスト13を除去する[図1(f),図1(f′)参照]。導体層3をエッチングする場合には、抵抗層2をエッチングしにくいエッチング液を用いることが望ましい。
以上、工程(A−1)、(B−1)、(C−1)を行うことにより、素子電極となる導体層3および抵抗層2を具備する抵抗素子8が基板1上に形成される。
【0030】
抵抗素子をプリント配線板に内蔵するための第2の方法は、下記の(A−2)〜(B−2)の工程を具備する(図2〜図5参照)。
(A−2)基板21上にパターニングされた抵抗層22を形成する工程。
(B−2)前記基板21上に導体層23を形成する工程。
【0031】
ここで工程(A−2)では、基板21上に設定した抵抗素子形成領域25の上に抵抗層22が形成されるようにする。抵抗素子形成領域25は、所望の抵抗値が得られるように、長方形やミアンダ構造などの適宜形状に設定する。抵抗素子形成領域25以外では基板21が露出された状態とする。
工程(A−2)で抵抗層22を形成するときには、上述の無電解ニッケル・リンめっき液を用いて抵抗層となるニッケル・リン薄膜を形成する無電解めっき工程(a)として行われる。パターニングされた抵抗層22の形成は、基板21の全面に抵抗層22をめっき形成してからエッチングなどによって不要部を除去する方法でもよいし、基板21上の必要部分にのみ抵抗層22をめっき形成する方法でもよい。
【0032】
酸処理工程(b)は、酸処理に用いる酸が導体層23に影響のないものであれば、抵抗層22が形成された後のいつの段階で行ってもよい。基板21上の全面に抵抗層22をめっき形成してからエッチングなどによって不要部を除去する方法の場合は、全面に抵抗層22がめっきされた状態で酸処理を施すと均一に処理ができて好ましい。必要部分にのみ抵抗層22をめっき形成する方法の場合は、導体層23を形成する前の方が、導体層23の材料に関係なく酸処理に用いる酸を自由に選択でき、好ましい。
加熱処理工程(c)を行う場合は、酸処理工程(b)の後であればいつの段階で行ってもよく、工程(B−2)の前に行ってもよいし、工程(B−2)の後に行ってもよい。トリミングを行う場合、トリミング時に発生する熱の影響を抑えるために、加熱処理工程(c)をトリミング工程より前に行うことが好ましい。
【0033】
基板21の全面に抵抗層22をめっき形成してからエッチングなどによって不要部を除去する方法としては、例えば以下の手順(1a)〜(4a)を順に行うことによって実施することができる(図2参照)。
(1a)基板21の上の全面に抵抗層22を形成する[図2(a)参照]。
(2a)抵抗層22上、抵抗素子形成領域25にレジスト31を形成する[図2(b),図2(b′)参照]。
(3a)レジスト31非形成部分32の抵抗層22をエッチングによって除去する[図2(c),図2(c′)参照]。
(4a)用済みのレジスト31を除去する[図2(d),図2(d′)参照]。
【0034】
基板上の必要部分にのみ抵抗層をめっき形成する第1の方法としては、例えば以下の手順(1b)〜(4b)を順に行うことによって実施することができる(図3参照)。
(1b)基板21の全面にPd触媒処理(図示せず)を施す[図3(a)参照]。
(2b)抵抗素子形成領域25を除く基板21の全面にレジスト33を形成する[図3(b),図3(b′)参照]。
(3b)基板21のレジスト33非形成部分34(すなわち抵抗素子形成領域25)に抵抗層22をめっきにより形成する[図3(c),図3(c′)参照]。
(4b)用済みのレジスト33を除去して、抵抗素子形成領域25以外の部分に基板21を露出させる[図3(d),図3(d′)参照]。
【0035】
基板上の必要部分にのみ抵抗層をめっき形成する第2の方法としては、以下の手順(1c)〜(3c)を順に行う方法がある(図示略)。この方法は、Pd触媒が除去された部分にはめっきが析出しない効果を利用したものである。
(1c)基板全面にPd触媒処理を施した後、抵抗素子形成領域にレジストを形成する。
(2c)基板のレジスト非形成部分のPd触媒をPd除去液によって除去した後、用済みのレジストを除去する。この処理により、抵抗素子形成領域にのみPd触媒が残された状態となる。
(3c)基板上に抵抗層をめっきする。この際、基板上のPd触媒除去部分には抵抗層が析出しないので、Pd触媒が残された部分である抵抗素子形成領域にのみ抵抗層がめっき形成される。
【0036】
工程(B−2)は、工程(A−2)においてパターニング形成された抵抗層22に接するように設定された素子電極形成領域26に、2つの導体層23を形成する工程である。2つの導体層23を分離するため、抵抗素子形成領域25と重なるように素子電極分離領域27を設定する。
工程(B−2)は、例えば以下の手順(1d)〜(5d)を順に行うことによって実施することができる(図4参照)。
(1d)パターニングされた抵抗層22および露出された基板21の上の全面にPd触媒処理(図示せず)を施す[図4(a)参照]。
(2d)抵抗層22上、素子電極分離領域27にレジスト41を形成する。このとき、基板21が露出された部分および抵抗層22上であって導体層23(素子電極)が形成される部分をレジスト41非形成部分42とする[図4(b),図4(b′)参照]。
(3d)基板21上のレジスト41非形成部分42に導体層23をめっきした後、用済みのレジスト41を除去する[図4(c),図4(c′)参照]。
(4d)素子電極形成領域26上の導体層23および素子電極分離領域27上の抵抗層22の上にレジスト43を形成する[図4(d),図4(d′)参照]。
(5d)レジスト43非形成部分44の導体層23をエッチングなどにより除去したのち、用済みのレジスト43を除去する[図4(e),図4(e′)参照]。
以上により、抵抗素子形成領域25に設けられた抵抗層22と、素子電極形成領域26に設けられた導体層23(素子電極)とからなる抵抗素子28が基板21上に形成される。
なお、図4に示す方法では、導体層23の形成後にレジスト41を除去しているが、その代わりに、このレジスト41を残し、手順(4d)では導体層23およびレジスト41(めっきレジスト)の上にレジスト43(エッチングレジスト)を形成することもできる。この場合、手順(3d)の工程を省略することができる。
【0037】
工程(B−2)を行う第2の方法としては、以下の手順(1e)〜(5e)を順に行う方法がある(図5参照)。
(1e)パターニングされた抵抗層22および露出された基板21の上の全面にシード層24を形成する。このシード層24は、導電性材料であればよく、無電解めっきで形成される銅、銀、ニッケルなどが好ましい[図5(a)参照]。
(2e)素子電極形成領域26を除き、シード層24の上にレジスト51を形成する[図5(b),図5(b′)参照]。
(3e)レジスト51非形成部分52に導体層23をめっき形成する[図5(c),図5(c′)参照]。
(4e)用済みのレジスト51を除去する。これにより、素子電極形成領域26にのみ導体層23を形成することができる[図5(d),図5(d′)参照]。
(5e)導体層23の下に保護されたシード層24を除き、余分なシード層24をエッチングで除去する[図5(e),図5(e′)参照]。シード層24は導電性材料からなるので、導体層23と一体化して素子電極となる。また、素子電極分離領域27において抵抗層22上の余分なシード層24が除去されるので、シード層24による導体層23間の短絡は起こらない。
以上により、抵抗素子形成領域25に設けられた抵抗層22と、素子電極形成領域26に設けられた導体層23(素子電極)とからなる抵抗素子28が基板21上に形成される。
【0038】
以上説明したような抵抗素子の製造方法によれば、加熱環境下に置かれた場合であっても高い電気抵抗特性を発現し、かつ小さなサイズで高精度に形成できる抵抗素子を得ることができる。
なお、図5に示す方法では、手順(5e)におけるシード層24の除去の際に、シード層24は除去されるが抵抗層22は侵されない条件で処理(エッチング)をしなくてはならない。図5に示す方法は、図4に示す方法よりも工程は少なくて済むが、シード層24を除去するための条件設定が難しいので、導体層23のエッチングの際に抵抗層22をレジスト43で覆って保護する図4に示す方法の方が好ましい。なお、図5に示す方法では、図4に示す方法よりも微細な配線の形成に対応することができる。
【実施例】
【0039】
以下、本発明の実施例および比較例を説明する。
下記の実施例および比較例において、抵抗層のシート抵抗値は、4端針法(三菱化学株式会社製 Loresta MPMCP−T350)により測定したものである。
【0040】
[実施例1]
下記の組成の無電解ニッケル・リンめっき液を調製した。
・硫酸ニッケル六水和物 26g/L
・ジエチレントリアミン(錯化剤) 0.27mol/L
・次亜リン酸ナトリウム一水和物 30g/L
・硝酸鉛 1mg/L
・イオン交換水 残量
【0041】
上記のめっき液を用いて浴温度80℃、pH6.0の条件でビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)からなる厚さ0.4mmの基板1上に厚さ0.5μmのニッケル・リン薄膜からなる抵抗層2を全面に形成した[工程(A−1)および図1(a)参照]。
得られた抵抗層2の無電解めっき直後のシート抵抗値を測定したところ、200Ω/□であった。
【0042】
試薬1級硝酸を用いて濃度5体積%の硝酸水溶液を調製した。前記抵抗層2を全面に有するBT樹脂基板1を前記硝酸水溶液に室温で10分間浸漬し、酸処理を行った。
酸処理後の抵抗層2のシート抵抗値を測定したところ、50467Ω/□であった。
【0043】
酸処理後、めっき膜を安定化させるために、抵抗層2に200℃、30分間の加熱処理を施した。加熱処理後の抵抗層2のシート抵抗値を測定したところ、170383Ω/□であった。
酸処理および加熱処理を施した抵抗層2上に、無電解銅プロセス(シプレイ・ファーイースト CU POSIT)で0.3μmほどめっきし、さらに電解銅めっきで10μmほどめっきし、導体層3を形成した[工程(B−1)の手順(1)および図1(b)参照]。
【0044】
導体層3の上にネガ型ドライフィルムレジスト11(日立化成工業株式会社製、RY−3215)をラミネートした。次に、ネガパターン(図示略)を通してレジスト11に露光を与え、紫外線により選択的に露光した。ネガパターンは、抵抗素子形成領域5のレジスト11が露光されるようにデザインした。レジスト11の非露光部は、現像液(1%炭酸ナトリウム水溶液)を用いて温度30℃で除去した[工程(B−1)の手順(2)および図1(c),図1(c′)参照]。
【0045】
レジスト11非形成部分12に露出した導体層3を、塩化鉄(III)溶液を用いて65℃でエッチング除去した後に、露出した抵抗層2を硫酸銅―硫酸溶液(硫酸銅250g/L、硫酸5ml/L)を用いて90℃でエッチング除去した。次に、剥離液(5%水酸化ナトリウム水溶液)を用いて用済みのレジスト11を除去した。これにより、導体層3および抵抗層2からなる配線パターン4を抵抗素子形成領域5に形成した[工程(B−1)の手順(3)および図1(d),図1(d′)参照]。
【0046】
導体層3および露出した基板1の上にネガ型ドライフィルムレジスト13(日立化成工業株式会社製、RY−3215)をラミネートした。次に、ネガパターン(図示略)を通してレジスト13に露光を与え、紫外線により選択的に露光した。ネガパターンは、素子電極分離領域7を除く領域でレジスト13が露光されるようにデザインした。レジスト13の非露光部は、現像液(1%炭酸ナトリウム水溶液)を用いて温度30℃で除去した[工程(C−1)の手順(1)および図1(e),図1(e′)参照]。
【0047】
アルカリ性エッチング液(メルテックス株式会社製「Aプロセス」)を用いてレジスト13非形成部分14(すなわち素子電極分離領域7)の導体層3をエッチング除去した。次に、剥離液(5%水酸化ナトリウム水溶液)を用いて用済みのレジスト13を除去した[工程(C−1)の手順(2)および図1(f),図1(f′)参照]。
以上により、抵抗層2とこの抵抗層2に接して形成された2つの導体層3(素子電極)を有する抵抗素子8を基板1上に製造した。
得られた抵抗素子8は、加熱環境下に置かれた場合であっても高い電気抵抗特性を発現し、熱安定性の優れるものであった。
【0048】
[実施例2]
下記の組成の無電解ニッケル・リンめっき液を調製した。
・硫酸ニッケル六水和物 26g/L
・L−グルタミン酸ナトリウム(錯化剤) 0.4mol/L
・次亜リン酸ナトリウム一水和物 30g/L
・硝酸鉛 1mg/L
・イオン交換水 残量
【0049】
上記のめっき液を用いて浴温度90℃、pH5.8の条件でビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)からなる厚さ0.4mmの基板21上に厚さ1.0μmのニッケル・リン薄膜からなる抵抗層22を全面に形成した[工程(A−2)の手順(1a)および図2(a)参照]。
得られた抵抗層22の無電解めっき直後のシート抵抗値を測定したところ、31Ω/□であった。
【0050】
試薬1級硝酸を用いて濃度5体積%の硝酸水溶液を調製した。前記抵抗層22が全面に形成されたBT樹脂基板21を前記硝酸水溶液に室温で10分間浸漬し、酸処理を行った。
酸処理後の抵抗層22のシート抵抗値を測定したところ、88640Ω/□であった。
酸処理後、めっき膜を安定化させるために、抵抗層22に200℃、30分間の加熱処理を施した。加熱処理後の抵抗層22のシート抵抗値を測定したところ、70300Ω/□であった。
【0051】
酸処理および加熱処理を施した抵抗層22の上に、ネガ型ドライフィルムレジスト31(日立化成工業株式会社製、RY−3215)をラミネートした。次いで、ネガパターン(図示略)を通して紫外線を照射し、前記レジスト31を選択的に露光した。ネガパターンは所望の抵抗素子形成領域25を除くレジスト31が露光されるようにデザインした。露光後、現像液(1%炭酸ナトリウム水溶液)を用いて温度30℃、60秒ディップにてレジスト31の非露光部を除去した。露光部にレジスト31が残り、抵抗素子形成領域25を覆うパターン状のレジスト31を得た[工程(A−2)の手順(2a)および図2(b),図2(b′)参照]。
【0052】
レジスト31非形成部分32の抵抗層22を硫酸銅―硫酸溶液(硫酸銅250g/L、硫酸5ml/L)を用いて90℃でエッチング除去し、抵抗素子形成領域25の外側に基板21を露出させた[工程(A−2)の手順(3a)および図2(c),図2(c′)参照]。
次に、剥離液(5%水酸化ナトリウム水溶液)を用いて用済みのレジスト31を除去した。以上により、基板21上の抵抗素子形成領域25にパターニングされた抵抗層22を形成した[工程(A−2)の手順(4a)および図2(d),図2(d′)参照]。
【0053】
パターニングされた抵抗層22を有する基板21の全面にPd触媒(図示略)を付与した[工程(B−2)の手順(1d)および図4(a)参照]。この上に、ネガ型ドライフィルムレジスト41(日立化成工業株式会社製、RY−3215)をラミネートした。次いで、ネガパターン(図示略)を通して紫外線を照射し、前記レジスト41を選択的に露光した。ネガパターンは、前記パターニングされた抵抗層22の上のレジスト41が露光されるようにデザインした。露光後、現像液(1%炭酸ナトリウム水溶液)を用いて温度30℃、60秒ディップにてレジスト41の非露光部を除去した。露光部にレジストが残り、素子電極分離領域27を覆うパターン状のレジスト41を得た[工程(B−2)の手順(2d)および図4(b)参照]。
【0054】
レジスト41非形成部分42に無電解銅めっき液(メルテックス株式会社製、CU−390)を用いて0.3μmほどめっきし、さらに電解銅めっきで10μmほどめっきして、導体層23とした。剥離液(5%水酸化ナトリウム水溶液)を用いて用済みのレジスト41を除去した[工程(B−2)の手順(3d)および図4(c)参照]。
【0055】
抵抗層22および導体層23の上にネガ型ドライフィルムレジスト43(日立化成工業株式会社製、RY−3215)をラミネートした。次いで、ネガパターン(図示略)を通して紫外線を照射し、前記レジスト43を選択的に露光した。抵抗層22に接して導体層23が2箇所に分離されるように素子電極形成領域26を設定し、ネガパターンは、素子電極形成領域26および素子電極分離領域27上のレジスト43が露光されるようにデザインした。露光後、温度30℃にて現像液(1%炭酸ナトリウム水溶液)を用いてレジスト43の非露光部を除去した。これにより、素子電極分離領域27に露出された抵抗層22ならびに素子電極形成領域26の導体層23を保護するようにレジスト43をパターニングした[工程(B−2)の手順(4d)および図4(d)参照]。
【0056】
レジスト43非形成部分44の導体層23を塩化鉄(III)溶液を用いて65℃でエッチング除去し、素子電極形成領域26に残した導体層23により素子電極を形成した。次に、剥離液(5%水酸化ナトリウム水溶液)を用いて用済みのレジスト43を除去した[工程(B−2)の手順(5d)および図4(e)参照]。
以上により、抵抗層22とこの抵抗層22に接して形成された2つの導体層23(素子電極)を有する抵抗素子28を基板21上に製造した。
得られた抵抗素子は、加熱環境下に置かれた場合であっても高い電気抵抗特性を発現し、熱安定性の優れるものであった。
【0057】
[比較例1]
下記の組成の無電解ニッケル・リンめっき液を調製した。
・硫酸ニッケル六水和物 26g/L
・クエン酸ナトリウム(錯化剤) 0.2mol/L
・次亜リン酸ナトリウム一水和物 30g/L
・硝酸鉛 1mg/L
・イオン交換水 残量
【0058】
上記のめっき液を用いて浴温度85℃、pH6.0の条件でビスマレイミドトリアジン樹脂(BT樹脂)からなる厚さ0.4mmの基板上に厚さ1.0μmのニッケル・リン薄膜からなる抵抗層を全面に形成した。
得られた抵抗層の無電解めっき直後のシート抵抗値を測定したところ、4.5Ω/□であった。
【0059】
試薬1級硝酸を用いて濃度5体積%の硝酸水溶液を調製した。前記抵抗層を全面に有するBT樹脂基板を前記硝酸水溶液に室温で10分間浸漬し、酸処理を行った。
酸処理後の抵抗層のシート抵抗値を測定したところ、4.2Ω/□であった。
【0060】
酸処理後、抵抗層に200℃、30分間の加熱処理を施した。
加熱処理後の抵抗層のシート抵抗値を測定したところ、4.1Ω/□であった。
実施例1と同様にして、抵抗層および2つの導体層(素子電極)を有する抵抗素子を製造した。アミノ基含有化合物でない錯化剤を用いて製造した抵抗素子は、電気抵抗特性に劣るものであった。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、例えばプリント配線板に内蔵される抵抗素子として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の抵抗素子の製造方法において、工程(A−1)、(B−1)、(C−1)を実施する方法の一例を説明する工程図である。
【図2】本発明の抵抗素子の製造方法において、工程(A−2)を行う方法の一例を説明する工程図である。
【図3】本発明の抵抗素子の製造方法において、工程(A−2)を行う方法の他の例を説明する工程図である。
【図4】本発明の抵抗素子の製造方法において、工程(B−2)を行う方法の一例を説明する工程図である。
【図5】本発明の抵抗素子の製造方法において、工程(B−2)を行う方法の他の例を説明する工程図である。
【符号の説明】
【0063】
1,21…基板、2,22…抵抗層、3,23…導体層、4…配線パターン、8,28…抵抗素子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
素子電極および抵抗層を具備する抵抗素子の製造方法において、
(a)ニッケル塩、還元剤およびアミノ基含有化合物(ただしアミノ基は、−NHおよび/または>NH)である錯化剤を含有する無電解ニッケル・リンめっき液を用いて無電解めっき法により基板上に抵抗層を成膜する無電解めっき工程、
(b)前記抵抗層に酸処理を施す酸処理工程、
を具備することを特徴とする抵抗素子の製造方法。
【請求項2】
前記酸処理工程(b)の後に、(c)前記抵抗層に加熱処理を施す加熱処理工程を行うことを特徴とする請求項1に記載の抵抗素子の製造方法。
【請求項3】
前記加熱処理(c)は、100〜850℃の範囲内で行うことを特徴とする請求項2に記載の抵抗素子の製造方法。
【請求項4】
前記抵抗層の200℃におけるシート抵抗値が20Ω/□以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の抵抗素子の製造方法。
【請求項5】
素子電極および抵抗層を具備する抵抗素子の製造方法において、
(A−1)基板の全面に抵抗層をめっきによって形成する工程、
(B−1)前記基板上に導体層を形成した後に前記抵抗層および導体層からなる配線パターンを形成する工程、
(C−1)前記導体層の所定の部分をエッチングし、該導体層の下の抵抗層を露出させる工程、
を具備し、前記抵抗層の形成工程が、
(a)ニッケル塩、還元剤およびアミノ基含有化合物(ただしアミノ基は、−NHおよび/または>NH)である錯化剤を含有する無電解ニッケル・リンめっき液を用いて無電解めっき法により基板上に抵抗層を成膜する無電解めっき工程、
(b)前記抵抗層に酸処理を施す酸処理工程、
を具備することを特徴とする抵抗素子の製造方法。
【請求項6】
前記酸処理工程(b)の後に、(c)前記抵抗層に加熱処理を施す加熱処理工程を行うことを特徴とする請求項5に記載の抵抗素子の製造方法。
【請求項7】
素子電極および抵抗層を具備する抵抗素子の製造方法において、
(A−2)基板上にパターニングされた抵抗層を形成する工程、
(B−2)前記基板上に導体層を形成する工程、
を具備し、前記抵抗層の形成工程が、
(a)ニッケル塩、還元剤およびアミノ基含有化合物(ただしアミノ基は、−NHおよび/または>NH)である錯化剤を含有する無電解ニッケル・リンめっき液を用いて無電解めっき法により基板上に抵抗層を成膜する無電解めっき工程、
(b)前記抵抗層に酸処理を施す酸処理工程、
を具備することを特徴とする抵抗素子の製造方法。
【請求項8】
前記酸処理工程(b)の後に、(c)前記抵抗層に加熱処理を施す加熱処理工程を行うことを特徴とする請求項7に記載の抵抗素子の製造方法。
【請求項9】
素子電極および抵抗層を具備する抵抗素子の製造方法において、
(a)ニッケル塩、還元剤およびアミノ基含有化合物(ただしアミノ基は、−NHおよび/または>NH)である錯化剤を含有する無電解ニッケル・リンめっき液を用いて無電解めっき法により基板上に抵抗層を成膜する無電解めっき工程、
(b)前記抵抗層に酸処理を施す酸処理工程、
を具備する工程によって形成されたことを特徴とする抵抗素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−120942(P2006−120942A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−308539(P2004−308539)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【出願人】(593174641)メルテックス株式会社 (28)
【Fターム(参考)】