説明

押下ヘッド

【課題】上方付勢状態で押し込み可能に起立したステム21の上端部に嵌着させた装着筒部材A1に対して、弁部材A3を内蔵する本体A2を摺動下降可能に嵌合し、常時安定した液の噴出を行え、液切れが良く、液噴出の際の押し下げが容易である押下ヘッドの改良であり、上記効果を発揮しつつポンプの背丈を低くコンパクトに形成できる押下ヘッドを提案する。
【解決手段】装着筒部材をステム外周上端部に嵌着させた装着筒30上部より環状摺動片31を突設する形態としてシリンダ筒がステムの外方において摺動できるようにした。また、弁部材の後端部を後方斜め下方へ案内する案内機構を設けて弁部材の引き出しを行う如く構成した。その結果従来の梃部材を省くことができるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は押下ヘッドに関し、詳しくは、ポンプ等のディスペンサーの一部を構成し、装着したディスペンサーの液噴出後の液切れが良く,押下ヘッド内での液詰まり等がなく、液噴出の際の押し下げが容易であり、しかも、取り扱い容易な押下ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴出ポンプとして、口頸部に装着キャップを嵌合して容器体に装着するとともに、装着キャップ上方に上方付勢状態で押し込み可能に突出したステムの上端に押下ヘッドを嵌着したものが知られている。また、これらのポンプの押下ヘッドとして、ステム内と連通する摺動筒を立設した装着筒部材と、摺動筒外周に嵌合させたシリンダ上方に、先端に噴出口を開口した弁室を備えるとともに、装着筒部材に対して押下げ可能に設けた本体と、前方付勢状態で噴出口を閉塞し、シリンダ内より噴出口に至る流路を画成した弁部材と、弁部材と連繋させてヘッドの押下げにより開弁させる特殊構成の梃部材とを備えたものが提案されている。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
この様な押下ヘッドを備えた液体噴出ポンプは常時安定した液の噴出を行えるとともに、液切れが良く、噴出口の密閉性に優れ、しかもヘッドの押下げを容易に行え、また、長期の使用にも安定した液の噴出を行える優れたものである。
【特許文献1】特開2002−326044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この様な押下ヘッドを備えた液体噴出ポンプは上記した特有の効果を発揮するものであるが、ステム内と連通する摺動筒をステム上に横設した頂板上方へ立設した形態としているため頭部を大きくなり、特に高さが高くなる傾向がある。従って、例えば容器体を掴んで人差指等により押下ヘッド上面を押圧する操作が行い難くなる傾向があり、また、背の低さ、コンパクトさを要求されるポンプへ適応し難く、全体的なデザインも制約を受ける傾向がある。
【0005】
本発明は上記した特殊形態の押下ヘッドを更に改良したものであって、ポンプ等のディスペンサーをコンパクトに形成でき、取り扱い操作も容易で、デザインの制約も少なく、また、構造をより簡素化して組み付け操作が容易となり、しかも従来のこの種のポンプが備える、常時安定した液の噴出、液切れの良さ、噴出口の良好を密閉性、ヘッドの容易な押下げ、耐久性等の効果を併せて発揮することができる優れたポンプの押下ヘッドを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の押下ヘッドは、上端より上方付勢状態で押し下げ可能にステムを突設した形態のディスペンサーに採用し、ステム上端に嵌着して使用する。ディスペンサーの形態は、ステムを押下げることにより収納液がステムより噴出する如く構成したものであれば採用でき、例えば、シリンダとピストンとを備えた一般的なポンプ構造を備えたもの、或いはエアゾールタイプのもの等を採用できる。
【0007】
本発明の押下ヘッドは、装着筒部材と、本体と、弁部材とを備えている。
【0008】
装着筒部材はステムの上端に嵌着固定してステム内と本体のシリンダ筒内とを液密に連通させるもので、合成樹脂等により形成される。具体的にはステムの外周に嵌着させた装着筒上部より突設した環状摺動片を本体のシリンダ筒内周に摺動可能に嵌合させることにより行う。環状摺動片はその上端がステムから上方へ若干突出した状態、或いはステムの上端と同じか或いはステムの上端より下方位置にある状態で突設される。環状摺動片の形状としては上方へ広がるテーパ状、所謂逆スカート状であっても或いは外方へ突出する環状突部の形態を採っても良い。
【0009】
装着筒の外周下部からは支持壁を延設すると良く、その外周縁部を本体の周壁内周を案内する案内縁部として構成すると良い。案内縁部の具体的構成として、その外周面を本体周壁内周面と僅かに隙間をあけた状態とすれば良く、外周縁部を筒状に形成しても良い。
【0010】
また、装着筒部材には、弁部材の後端部を後方斜め下方へ案内する案内機構を設けて本体の押し下げ時に弁部材を後方へ引き出す如く構成している。案内機構は上記要件を満たせば種々の形態をとることができるが、例えば、上記支持壁後部の弁部材後端部両側位置に一対の支柱を立設し、各支柱の上面をそれぞれ後方へ下る傾斜面とし、弁部材後端部の両側下部を各傾斜面の縁部上に摺動可能に当接する。その際弁部材の後端部は各摺動面間を下降する。また、弁部材の外面より突設した一対の突部を各傾斜面上に摺動可能に当接しても良い。更に、弁部材の両側に突設した一対の突部を、各支柱の対向面に凹設した傾斜溝に摺動可能に嵌合させても良い。
【0011】
本体は下端部にシリンダ筒を備え、また、先端に噴出口を開口した弁室をシリンダ筒上に備えており、弁部材を内蔵している。更に、ステムに対し装着筒部材を介して押し下げ可能に装着しており、合成樹脂等により形成される。
【0012】
弁部材は、弁室内において前方付勢状態で噴出口を閉塞し、また、シリンダ筒内より噴出口に至る流路を画成したもので、合成樹脂、エラストマー等により形成される。
【0013】
第1の手段として、上方付勢状態で押し込み可能に起立したステム21に装着する押下ヘッドであって、ステム21外周に嵌着させた装着筒30上部より環状摺動片31を突設するとともに、装着筒30下部より外方へフランジ状の支持壁32を延設してなる装着筒部材A1と、環状摺動片31外周に摺動下降可能に嵌合させたシリンダ筒43上方に、先端に噴出口50を開口した弁室を備え、且つ、装着筒部材A1に対して押下げ可能に設けた本体A2と、弁室内に於いて前方付勢状態で噴出口50を閉塞し、且つ、シリンダ筒43内より噴出口50に至る流路を画成してなる弁部材A3とを備え、弁部材A3の後端部を後方斜め下方へ案内する案内機構を装着筒部材A1に設けて本体A2の押し下げ時に弁部材A3を後方へ引き出す如く構成し、ステム21に対する本体A2の押下抗力がステム21自体の押下げ抗力より小である如く構成した。
【0014】
第2の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段に於いて、前記案内機構として、前記装着筒30下部より延設したフランジ状の支持壁32後部に、上面が後方へ下る傾斜面fをなす一対の支柱36を立設し、各傾斜面f縁部間に弁部材A3の後端部外周を摺動下降可能に当接した。
【発明の効果】
【0015】
本発明の押下ヘッドは、従来のこの種の押下ヘッドと比較して、その装着筒部材A1を、ステム21上端から殆ど突出しない或いは全く突出しない状態でセットすることができ、押下ヘッドAの高さを低くできて全体的にコンパクトな液体噴出器を得られる。また、従来品の様な梃部材を省いて部材数を減らすことができ、その組み付けも容易に行える利点がある。更に、従来のこの種のポンプが備える液切れの良さ、噴出口50の良好な密閉性、ヘッドの容易な押下げ、耐久性等の効果を併せて発揮するものである。
【0016】
案内機構として、装着筒30下部より延設したフランジ状の支持壁32後部に、上面が後方へ下る傾斜面fをなす一対の支柱36を形成し、各傾斜面f縁部間に弁部材A3の後端部外周を摺動下降可能に当接した場合には、弁部材A3と各傾斜面f縁部との接触が略線接触となりこの部分の摩擦力を極力減らすことができる。その結果、その部分の摩擦力が作動に関与することが少なく、ステム21の下降前に本体A2が下降し、ステム21の上昇後に本体が上昇するという本発明の押下ヘッドの作用をより確実に発揮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施例の形態を図面を参照して説明する。
【0018】
図1は液体噴出容器を示し、該液体噴出容器1は、容器体2と、液体噴出ポンプ3とから構成している。容器体2は、胴部10より口頸部11を起立した合成樹脂製のものを使用している。液体噴出ポンプ3は、口頸部11に装着キャップ20を嵌合して容器体2に装着するとともに、装着キャップ20上方に上方付勢状態で押し込み可能にステム21を突設し、ステム21の上端に押下ヘッドAを嵌着している。ステム21内上部には吐出弁22を設けている。
【0019】
押下ヘッドAは、装着筒部材A1と、本体A2と、弁部材A3とを備えている。
【0020】
装着筒部材A1は、ステム21の外周上部に嵌着させた装着筒30の上端より上方へ環状摺動片31を突設するとともに、装着筒30下部より外方へフランジ状の支持壁32を延設している。更に、支持壁32外周縁部からは案内筒33を立設している。環状摺動片31は、上方へ拡開するテーパ筒状をなす所謂逆スカート状で、上端縁をステム21上端と同レベルに形成している。また、案内筒33の下部には抜け出し防止に寄与する下向き段部34を周設し、更に、案内筒33前部には位置決め用の縦凹溝35を縦設している。また、支持壁32の後部両側にはそれぞれ上面が後方へ下る傾斜面fに形成した一対の支柱36,36を立設している。
【0021】
本体A2は、ケーシングA2a と噴出口部材A2b とで構成している。ケーシングA2a は周壁40上端縁より頂壁41を延設してなる下端開口の有頂筒状をなし、周壁40前部に前端を開口した横筒42を後方へ一体に延設し、更に横筒42下面よりシリンダ筒43を垂設しており、上記環状摺動片31外周に摺動下降可能にシリンダ筒43を嵌合させて装着している。上記横筒42は前後端を開口した筒状をなし、後方に前記各支柱36の上部を収納できるスペースをあけており、各支柱36の上端部が横筒42の後端開口位置で、弁部材A3の後端部が各支柱36間に当接する位置となる如く構成している。また、シリンダ筒43内の横筒42下部にはシリンダ筒43内と横筒42内とが連通する連通孔44を穿設している。更に、周壁40内面後部にはコイルスプリングを係合するための筒状突起45を突設している。また、周壁40内面前部には縦凹溝35に上下動可能に係合する位置決め突起46を突設し、周壁40内周下部には下向き段部34と係合して本体A2の抜け出しを防止する係合突条47を周設している。更に、本体A2外周は装飾用の金属カバー48を被覆している。
【0022】
噴出口部材A2b は横筒42の前端より嵌着させて横筒とともに弁室を形成するもので、横筒42前端より突設した先端部をテーパ状に窄めてその先端に噴出口50を開口している。また、後部の前記連通孔44の該当位置に、連通孔44と噴出口部材A2b 内とを連通する連絡路を形成している。連絡路は、筒壁外周に周設した帯状凹部51と、帯状凹部51の周方向等間隔の四箇所に穿設した透孔52とから構成している。また、内面前部に周方向複数のリブ53を突設している。
【0023】
弁部材A3は横棒状をなし、外周前後方向中間部より斜め前方へ突設した環状のスカート部60を各透孔52後方の噴出口部材A2b 内周に液密摺動可能に嵌合させている。また、横筒42から後方へ突出した後端部は筒状に形成し、後端部の凹部61とケーシング周壁40の筒状突起45とに両端を係合させたコイルスプリングsにより前方へ付勢させ、先端を噴出口50に圧接して閉塞している。そして、シリンダ筒43から連通孔44、連絡路を通り弁部材A3外周から噴出口50に至る流路を形成している。また、外周後端部に突設した環状突部62の下部両側をそれぞれ傾斜面fの縁部に当接させている。環状突部62と各傾斜面f縁部との接触は、略線接触となる如く構成しており、本体A2の押し下げ時に当接部分が傾斜面f縁部を摺動して弁部材A3を後方へ引き出す如く構成している。
【0024】
本発明では、この様な押下ヘッドに於いて、ステム21に対する本体A2の押下げ抗力がステム自体の押下げ抗力より小になる様に構成している。この様に構成するために、基本的には装着するポンプのステムを上方付勢させるための弾性材の弾発力よりも、弁部材A3を前方へ付勢させるためのコイルスプリングsの弾発力を小さく選択すれば良く、その他環状摺動片31とシリンダ筒43との摩擦力、弁部材A3の摺動時の摩擦力等を考慮してこれらを選択すれば良い。
【0025】
上記の如く構成した液体噴出ポンプ3は、図1の状態から押下ヘッドAを押し下げると、ステム自体の押下げ抗力の方が本体A2のステム21に対する押下げ抗力より大きいため、最初はステム21は下がらず、装着筒部材A1に対して本体A2が下降する。この際、弁部材A3の環状突部62が各傾斜面f縁部を摺動して弁部材A3をコイルスプリングsの弾発力に抗して後方へ移行させ、噴出口50が開く。次いでステム21が下降し、ステム21の下降によりポンプ1内の液がステム21よりシリンダ筒43を通り、連通孔44から流路を介して噴出口50より外部へ噴出する。
【0026】
次に押下ヘッドAの押圧を解除すると、最初ステム21の上方付勢力により押下ヘッドAが上昇する。この際、例えば押下ヘッドA上面を押圧した手が離れないうちにステム21の上昇が行われ、噴出口50は開いたままの状態で行われる。従って、この時点で横筒42内は負圧状態となる。次いで手を離す余地ができ、コイルスプリングsの弾発力により弁部材A3が前方へ移行して噴出口50を閉塞し、それに伴い環状突部62が傾斜面f縁部を上昇するため本体A2が装着筒部材A1に対して上昇し、元の状態に戻る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明押下ヘッドの縦断面図である。(実施例1)
【図2】本発明押下ヘッドの横断面図である。(実施例1)
【符号の説明】
【0028】
1…液体噴出容器
2…容器体
10…胴部,11…口頸部
3…液体噴出ポンプ
20…装着キャップ,21…ステム,22…吐出弁
A…押下ヘッド
A1…装着筒部材
30…装着筒,31…環状摺動片,32…支持壁,33…案内筒、34…下向き段部,
35…縦凹溝,36…支柱,f…傾斜面
A2…本体
A2a …ケーシング
40…周壁,41…頂壁,42…横筒,43…シリンダ筒,44…連通孔,
45…筒状突起,46…位置決め突起,47…係合突条,48…金属カバー
A2b …噴出口部材
50…噴出口,51…帯状凹部,52…透孔,53…リブ
A3…弁部材
60…スカート部,61…凹部,62…凹部,s…コイルスプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方付勢状態で押し込み可能に起立したステム21に装着する押下ヘッドであって、ステム21外周に嵌着させた装着筒30上部より環状摺動片31を突設するとともに、装着筒30下部より外方へフランジ状の支持壁32を延設してなる装着筒部材A1と、環状摺動片31外周に摺動下降可能に嵌合させたシリンダ筒43上方に、先端に噴出口50を開口した弁室を備え、且つ、装着筒部材A1に対して押下げ可能に設けた本体A2と、弁室内に於いて前方付勢状態で噴出口50を閉塞し、且つ、シリンダ筒43内より噴出口50に至る流路を画成してなる弁部材A3とを備え、弁部材A3の後端部を後方斜め下方へ案内する案内機構を装着筒部材A1に設けて本体A2の押し下げ時に弁部材A3を後方へ引き出す如く構成し、ステム21に対する本体A2の押下抗力がステム21自体の押下げ抗力より小である如く構成したことを特徴とする押下ヘッド。
【請求項2】
前記案内機構として、前記装着筒30下部より延設したフランジ状の支持壁32後部に、上面が後方へ下る傾斜面fをなす一対の支柱36を立設し、各傾斜面f縁部間に弁部材A3の後端部外周を摺動下降可能に当接してなる請求項1記載の押下ヘッド。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−8213(P2008−8213A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−179977(P2006−179977)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】