説明

押出ラミネート積層体

【課題】 耐熱性、ガスバリア性、剛性を任意に変更することが可能であり、かつ、厚みムラが少ない積層体を得る。
【解決手段】 下記(1)〜(6)の要件を満たすエチレン系重合体(A)1〜99重量%と、(7)および(8)を満たす低密度ポリエチレン(B)99〜1重量%からなる組成物を少なくとも一層として押出ラミネート成形する。
(1)密度が900〜975kg/m、(2)メルトマスフローレートが0.01〜100g/10分、(3Mw/Mnが3.0以上、(4)(Mz/Mw)−(Mw/Mn)≧0.5の関係を満たす、(5)分子量パターンから分子量100万g/モル以上の分子量成分がポリマー全重量の0.1〜5.0重量%、(6)分子量パターンから半値幅(Log(MH/ML))<1.1の関係を満たす、(7)密度が910〜930kg/m、(8)メルトマスフローレートが0.1〜100g/10分

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子量側に広がりを持った特異な分子量分布パターンを有するエチレン単独重合体またはエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンからなるエチレン・α−オレフィン共重合体と、高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレンからなるポリエチレン系樹脂組成物を少なくとも一層として有する押出ラミネート積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンを一つの層とする積層体は、乾燥食品および飲料品の包装、薬や輸液バッグ等の医薬品包装、シャンプー、化粧品、おむつのバックシートなどのトイレタリー用品、印画紙支持体、紙製容器および蓋、紙皿、離型紙および離型テープ、防湿紙、紙製セミレトルトパックなど広範囲にわたり用いられている。これらの積層体を得るには、その成形方法が容易でありコストパフォーマンスに優れることから、押出ラミネート成形が好んで用いられている。
【0003】
従来までこれらの積層体に用いられるポリエチレン系樹脂は、その優れた成形加工性から分岐状低密度ポリエチレン(LDPE)が主であった。しかしながら、LDPEの密度は一般的に918〜925kg/mであり、密度と共に変化する物性、例えば、耐熱性、剛性、ガスバリア性などを変えることは困難であり、使用に際して制限を生じていた。一方、直鎖状低密度ポリエチレン(L−LDPE)や高密度ポリエチレン(HDPE)などの直鎖状ポリエチレンは、その短鎖分岐数に応じて密度を幅広く変化させることが可能であるが、成形加工性に劣るため押出ラミネート加工による積層体を得ることが困難であった。そこで、直鎖状ポリエチレンとLDPEの混合物を押出ラミネート加工し、積層体を得る方法がしばしば用いられている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平6−65443号公報
【特許文献2】特開平6−322189号公報
【特許文献3】特開平7−92610号公報
【特許文献4】特開2000−73018公報 しかしながら、特許文献1ではLDPEの混合比率が1〜40%であるため、積層体を成形する際の押出負荷が大きく生産速度を高めることができないために、得られる積層体はコストパフォーマンスに劣るという問題があった。特許文献2,4ではLDPEの混合比率が50%以上であるため、耐熱性、剛性、ガスバリア性等に優れた積層体は得られなかった。さらに、特許文献3では、メタロセン触媒により得られるポリエチレン、メタロセン以外の金属触媒により得られるポリエチレン、さらにLDPEの混合が提案されているが、LDPEの比率が少ない場合には成形加工性に劣るため、コストパフォーマンスに優れた積層体を得ることが難しく、LDPEの比率が多い場合には耐熱性、剛性、ガスバリア性等に優れた積層体は得られなかった。
【0005】
このように、これまで提案された手法で得られる積層体では、優れたコストパフォーマンスと耐熱性を共に満足することは不可能であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、押出ラミネート加工性に優れ、密度の調整が容易であるポリエチレン系樹脂を少なくとも一つの層とする積層体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、ある特定のエチレン系重合体に高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレンをブレンドすることにより得られるエチレン系樹脂組成物は密度の調整が容易であると共に、押出ラミネート加工時の負荷が小さく、生産速度を高めて積層体を成形できることを見出し、上記の課題を解決するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、下記(1)〜(6)の要件を満たすエチレン単独重合体、または、エチレンおよび炭素数3〜20のα−オレフィンからなるエチレン・α−オレフィン共重合体(A)1〜99重量%と、(7)および(8)を満たす高圧ラジカル重合法で得られる低密度ポリエチレン(B)99〜1重量%からなるポリエチレン系樹脂組成物を少なくとも一層として有する押出ラミネート積層体に関するものである。
(1)密度が900〜975kg/m
(2)メルトマスフローレートが0.01〜100g/10分
(3)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定で求められるMw/Mnが3.0以上
(4)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定で求められる(Mz/Mw)−(Mw/Mn)≧0.5の関係を満たす
(5)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定で得られる分子量パターンから分子量100万g/モル以上の分子量成分がポリマー全重量の0.1〜5.0重量%
(6)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定で得られる分子量パターンから半値幅(Log(MH/ML))<1.1の関係を満たす
(7)密度が910〜930kg/m
(8)メルトマスフローレートが0.1〜100g/10分
以下に本発明を詳細に説明する。
【0009】
本発明に係るエチレン系重合体(A)は、エチレン単独重合体、または、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンを重合することによって得られるエチレン・α−オレフィン共重合体である。
【0010】
炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレンおよびエチリデンノルボルネン等を例示することができる。また、これらのα−オレフィンを2種類以上混合して用いることもできる。
【0011】
本発明に係るエチレン系重合体(A)の密度は、JIS K6922−1(1997年)に準じて密度勾配管法で測定した値であり、900〜975kg/mである。また、耐熱性、防湿性、剛性が求められる用途には、950〜975kg/mであることが好ましい。975kg/mを超える場合、得られる積層体のカールが顕著になる恐れがある。一方、密度が900kg/m未満であると、得られる積層体のべたつきが顕著になる恐れがある。
【0012】
本発明に係るエチレン系重合体(A)のメルトマスフローレート(MFR、荷重2.16kg、温度190℃条件)は、JIS K6922−1(1997年)に準じてメルトインデクサー(東洋精機製作所社製)で測定した値であり、0.01〜100g/10分であり、0.1〜80g/10分であることが好ましく、さらに好ましくは0.5〜60g/10分である。MFRが100g/10分より大きいと、ラミネート加工時の成膜安定性が悪くなるため、得られる積層体に厚みムラを生じる恐れがある。また、0.01g/10分より小さいと積層体のカールが顕著になるため好ましくない。
【0013】
本発明に係るエチレン系重合体(A)の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、Z平均分子量(Mz)およびそれらの比であるMw/MnおよびMz/Mwは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって測定した。GPC装置としては東ソー(株)製 HLC−8121GPC/HTを用い、カラムとしては東ソー(株)製 TSKgel GMHhr−H(20)HTを用い、カラム温度を140℃に設定し、溶離液として1,2,4−トリクロロベンゼン用いて測定した。測定試料は1.0mg/mlの濃度で調製し、0.3ml注入して測定した。分子量の検量線は、ユニバーサルキャリブレーション法により、分子量既知のポリスチレン試料を用いて校正されたものを用いた。本発明のエチレン系重合体のMw/Mnは3.0以上であり、さらに好ましくは3.5以上である。Mw/Mnが3.0未満では成形加工時の高せん断速度下での樹脂にかかるせん断応力が大きくなり、押出負荷が大きくなるなど加工性に問題が生じ、積層体を得られない恐れがある。
【0014】
本発明に係るエチレン系重合体(A)は、(Mz/Mw)−(Mw/Mn)≧0.5の関係を示し、GPCのチャートで明らかに高分子量側に分子量分布が広がっていることが特徴である。このことにより溶融時の流動性に特異な効果を醸し出し、良好な成形加工性が得られることから厚みムラの少ない積層体が得られる。
【0015】
本発明に係るエチレン系重合体(A)は、GPCから得られる分子量パターンから分子量100万g/モル以上の分子量成分がポリマー全重量の0.1〜5.0重量%であることを特徴とする。分子量100万g/モル以上の分子量成分がポリマー全重量の0.1重量%未満の場合、得られる積層体に厚みムラが発生し、5.0重量%を越える場合は積層体表面にゲルやワックスが発生するなどの問題が生じる。
【0016】
本発明に係るエチレン系重合体(A)は、GPC測定で得られる分子量パターンから半値幅(Log(MH/ML))<1.1の関係を満たし、さらに好ましくは半値幅(Log(MH/ML))<1.05の関係を満たすことを特徴とする。この関係を満たすことで積層体は優れた表面外観を示す。ここで分子量パターンの半値幅は、GPCにおける分子量分布パターンのうち、最大ピークのピークトップ(最大頻度)周辺におけるスペクトルの広がり(分子量分布の度合い)を示す。すなわち、スペクトル中の強度がピークトップ(最大頻度)の半分となっているところ(それぞれ高分子量側をMH、低分子量側をMLとする)でのGPCスペクトル線の幅を半値幅とする。また、複数のピークが観測される場合は、それぞれのピークのうち、最大のものから算出する。
【0017】
本発明に係るエチレン系重合体(A)のGPCパターンにおいて、分子量分布の極大値の数に特に制限はないが、好ましくは単一の極大値を有するものが挙げられる。複数の極大値を有するものは、積層体の厚み制御が困難になる。
【0018】
本発明に係るエチレン系重合体(A)の製造方法は特に制限はなく、例えばチーグラー触媒、フィリップス触媒またはメタロセン触媒の存在下、エチレン単独で重合もしくはエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンを共重合させる方法が挙げられる。中でも、例えば特開平7−224106号公報、特開平9−59310号公報、特開平10−231312号公報、特開平10−231313号公報等に記載されるメタロセン触媒の存在下で得られるエチレン系重合体は、その重合体に含有される低分子量成分が少ないため、積層体表面のべたつきが低減されることから好ましい。
【0019】
本発明に係るエチレン系重合体(A)は、スラリー重合または気相重合により製造される。該エチレン系重合体は、好ましくは単一の反応器で重合することにより得られる。特に好ましくは連続的に単一の反応器にて製造され、さらに連続的に生成するエチレン系重合体と未反応のモノマー類、重合助剤類、溶媒類とを分離・精製する方法で製造される。スラリー重合の溶媒としては、一般に用いられている有機溶媒であればいずれでもよく、具体的にはベンゼン、トルエン、キシレン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、塩化メチレン等が例示される。
【0020】
本発明に示したオレフィン重合用触媒を用いてエチレン系重合体(A)を製造する上で、重合温度、重合時間、重合圧力、モノマー濃度などの重合条件について特に制限はないが、スラリー重合の場合は、重合温度は−100〜100℃、好ましくは0〜100℃であり、重合時間は10秒〜20時間、重合圧力は常圧〜10MPaの範囲で行うことが好ましい。また、重合時に水素などを用いて分子量の調節を行うことも可能である。気相重合の場合は、重合温度は−100〜120℃、好ましくは0〜110℃であり、重合時間は10秒〜20時間、重合圧力は常圧〜10MPaの範囲で行うことが好ましい。また、重合時に水素などを用いて分子量の調節を行うことも可能である。中でもワックス成分等の除去率を考えるとスラリー重合がより好ましい。
【0021】
本発明に係る高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(B)は、高圧ラジカル重合法により製造されるポリエチレンであり、公知の方法によりエチレンを重合することにより得られる。
【0022】
本発明に係る高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(B)の密度は910〜930kg/mであり、915〜928kg/mが好ましく、さらに好ましくは917〜925kg/mである。密度が930kg/mを超える場合は、積層体に厚みムラが生じる。一方、密度が910kg/m未満の場合、積層体の自己粘着性が増し、ブロッキングを生じる恐れがあるため好ましくない。
【0023】
本発明に係る高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(B)のメルトマスフローレート(MFR、荷重2.16kg、温度190℃条件)は0.1〜100g/10分であり、好ましくは0.5〜70g/10分、さらに好ましくは1.0〜50g/10分である。MFRが0.1g/10分未満の場合、積層体の外観が悪化するため好ましくない。一方、MFRが100g/10分を超える場合は、積層体を得る際の歩留まりが悪化するためコストパフォーマンスに優れた積層体を得ることができない。
【0024】
なお、本発明に係る高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(B)は、本発明の目的を損なわない範囲であれば、他のα−オレフィン、酢酸ビニル、アクリル酸エステル等の重合性単量体との共重合体であってもよい。
【0025】
本発明の積層体を構成する少なくとも一層として用いられるポリエチレン系樹脂組成物は、前記エチレン系重合体(A)と高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(B)からなる。その混合比率は、エチレン系重合体(A)と高圧ラジカル重合法低密度ポリエチレン(B)の重量比((A):(B))で99:1〜1:99の範囲であり、より好ましくは99:1〜10:90の範囲であり、さらに好ましくは99:1〜30:70の範囲であり、特に好ましくは99:1〜70:30の範囲であり、これによって力学的性質に優れた積層体が得られる。
【0026】
本発明の積層体を構成する少なくとも一層として用いられるポリエチレン系樹脂組成物は、JIS K6922−1(1997年)により測定された密度が950〜975kg/mであることが望ましく、これによって耐熱性、剛性、防湿性に優れた積層体が得られる。
【0027】
本発明の積層体を構成する少なくとも一層として用いられるポリエチレン系樹脂組成物は、JIS K6922−1(1997年)により測定されたメルトマスフローレートが1〜100g/10分であることが、積層体の厚みムラ低減のため望ましい。
【0028】
本発明の積層体を構成する少なくとも一層として用いられるポリエチレン系樹脂組成物は、160℃、ダイのL/D=8/2.095(mm)、シリンダー径9.55mm、ピストン降下速度10mm/分で測定したスウェル比が1.2以上3.0以下であることが、積層体の歩留まり低減のため望ましい。
【0029】
本発明の積層体を構成する少なくとも一層として用いられるポリエチレン系樹脂組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、酸化防止剤、老化防止剤、耐熱安定剤、耐候性安定剤、紫外線吸収剤、塩素吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、スリップ剤、滑剤、アンチブロッキング剤、核剤、顔料、染料、可塑剤、難燃剤、無機充填剤、有機充填剤等の添加剤を必要に応じて配合することができる。また、他の熱可塑性樹脂と混合することもできる。これらの例として、粘着付与樹脂、ワックス、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリスチレン、エチレン・メチルメタクリレート共重合体、アイオノマー、またはこれらの無水マレイン酸グラフト物などを例示することができる。
【0030】
本発明の積層体を構成する少なくとも一層として用いられるポリエチレン系樹脂組成物は、公知の方法を利用して製造することができる。例えば、各成分をバンバリーミキサー、ロールミキサー、ニーダー、高速回転ミキサー、押出機等の各種混練機、好ましくは単軸もしくは二軸押出機を用いて混合・混練する方法を用いることができる。また、ドライブレンドにより混合されたペレットを押出ラミネート成形加工時に混練し、用いることができる。ただし、品質の安定を求める場合には、押出ラミネート加工前にあらかじめ溶融混合しておくことが好ましい。
【0031】
本発明の積層体は、少なくとも一層を形成するポリエチレン系樹脂組成物を押出ラミネート成形法により各種基材にラミネートおよび/またはコーティングすることで得られる。押出ラミネート成形法は、シングルラミネート、タンデムラミネート、共押出ラミネート、サンドイッチラミネートのいずれでもよく、特に制限を受けない。また、押出ラミネート加工を行う際、基材とポリエチレン層との接着性が良好な積層体を得るため、250〜350℃の温度でダイより押出すことが好ましい。また、ポリエチレン系樹脂組成物の溶融フィルムの少なくとも基材と接する面は、空気もしくはオゾンガスにより酸化されていてもよい。空気による酸化反応を進行させる場合、270℃以上の温度でダイより押出すことが好ましく、また、オゾンガスによる酸化反応を進行させる場合は、250℃以上で押出すことが好ましい。なお、オゾンガスの処理量としては、ダイより押出されたフィルム1m当たり0.5mg以上であることが好ましい。また、基材との接着性を高めるため、基材の接着面に対してアンカーコート剤処理、コロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理などの公知の表面処理を施してもよい。基材としては、合成高分子重合体フィルムおよびシート、織布、不織布、金属箔、紙類、セロファン等が挙げられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸などのポリエステル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン・エチルアクリレート共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・ビニルアルコール共重合体、アイオノマー等のポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブテン、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリウレタン、セルロース系樹脂など合成高分子重合体からなるフィルムおよびシート等が挙げられる。また、これらの高分子重合体フィルムおよびシートはさらにアルミ蒸着、アルミナ蒸着、二酸化珪素蒸着されたものでもよい。また、これらの高分子重合体フィルムおよびシートはさらにウレタン系インキやアクリル系インキ等を用い印刷されたものでもよい。金属箔としては、アルミ箔、銅箔などが例示でき、また、紙類としてはクラフト紙、伸張紙、上質紙、グラシン紙、カップ原紙や印画紙原紙等の板紙などが挙げられる。
【0032】
本発明の積層体の厚さは特に制限はないが、経済性や加工性等の点から押出ラミネート層の厚みが3〜200μmの範囲であることが好ましい。
【0033】
本発明の積層体は、スナック菓子、インスタントラーメン等の乾燥食品、スープ、味噌、漬物、ソース、飲料等の水物飲食品包装、薬、輸液バッグ等の医薬品包装、シャンプー、化粧品、おむつのバックシートなどのトイレタリー用品、印画紙支持体、紙製容器および蓋、紙皿、離型紙および離型テープ、防湿紙、紙製セミレトルトパックなど広範囲にわたりフィルム、容器、テープ、支持体として用いることができる。特に、密度が950〜980kg/mのポリエチレン系樹脂組成物を押出ラミネート加工して得られた積層体は、耐熱容器、ガスバリア性容器、離型紙および離型テープ、印画紙支持体、防湿紙に好んで用いられる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の積層体は、用いるポリエチレン系樹脂の密度を変更するだけで、耐熱性、ガスバリア性、剛性を任意に変更することが可能であり、かつ、厚みムラが少なく優れたものとなる。
【実施例】
【0035】
以下実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0036】
本発明において、物性評価は、以下のように実施した。
【0037】
〜密度〜
JIS K6922−1(1997年)に準拠し、測定した。
【0038】
〜メルトマスフローレート(MFR)〜
JIS K6922−1(1997年)に準拠し、測定した。
【0039】
〜平均分子量、分子量分布〜
重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、Z平均分子量(Mz)およびそれらの比であるMw/MnおよびMz/Mwは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)によって測定した。GPC装置としては東ソー(株)製 HLC−8121GPC/HTを用い、カラムとしては東ソー(株)製 TSKgel GMHhr−H(20)HTを用い、カラム温度を140℃に設定し、溶離液として1,2,4−トリクロロベンゼン用いて測定した。測定試料は1.0mg/mlの濃度で調製し、0.3ml注入して測定した。分子量の検量線は、ユニバーサルキャリブレーション法により、分子量既知のポリスチレン試料を用いて校正されたものを用いた。
【0040】
〜スウェル比〜
スウェル比は、バレル直径9.55mmの毛管粘度計(東洋精機製作所、商品名:キャピログラフ)に、長さ(L)が8mm,直径(D)が2.095mm、流入角が90°のダイを装着し測定した。溶融押出物の径を備えつきのレーザー光線にて測定し、ダイの径(2.095mm)で除すことにより求めた。
【0041】
〜積層体の厚みムラ〜
積層体中央部の厚みを10cmごとに30点、マイクロメーターを用いて測定した。もっとも厚い点ともっとも薄い点の差を求め、厚みムラの指標とした。
【0042】
〜耐熱ピンホール性〜
積層体を135℃に設定した小型オーブン(Werner Mathis AG社製)中へ5秒間放置した後、取り出した。熱処理した積層体にメチレンブルー液を塗布し、これをふき取った後の状態を目視にて観察し、発生したピンホール数を数えた。
【0043】
参考例1 高密度ポリエチレン(A1)の製造
重合操作、反応および溶媒精製は、すべて不活性ガス雰囲気下で行った。また、反応に用いた溶媒等は、すべて予め公知の方法で精製、乾燥、脱酸素を行ったものを用いた。さらに、反応に用いた化合物は、公知の方法により合成、同定したものを用いた。
【0044】
[変性粘土化合物の調製]
メチルジオクタデシルアミン;(C1837(CH)N 536g、水4.8L、エタノール3.2Lの混合液に、37%塩酸83.3mLを加え、メチルジオクタデシルアミン塩酸塩溶液を調製した。この溶液に合成ヘクトライト1000gを加え、60℃にて3時間反応させた。反応液をろ別し、固体成分を水洗した。該固体成分を60℃で12時間乾燥・粉砕させることで1250gの有機変性粘土化合物を得た。
【0045】
[固体触媒の調製]
5Lのフラスコに、[変性粘土化合物の調製]に従って合成した有機変性粘土化合物450gをヘキサン1.4kgに懸濁し、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン20重量%溶液1.78kg(1.8モル)、ビス(n−ブチル−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライド7.32g(18ミリモル)を加え、60℃に加熱して1時間撹拌した。次に上澄液を除去し、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン20重量%溶液0.45kg(0.45モル)を加え、ヘキサンで再希釈して4.5Lとした。この反応溶液に、ジフェニルメチレン(シクロペンタジエニル−9−フルオレニル)ジルコニウムジクロライド 0.56g(0.9ミリモル)を加え、一晩室温にて攪拌し、固体触媒を得た。
【0046】
[重合]
内容積300Lの重合器に、ヘキサンを105kg/時、エチレンを30.0kg/時、水素95NL/時および得られた固体触媒を連続的に供給した。また、液中のトリイソブチルアルミニウムの濃度を0.93ミリモル/kgヘキサンとなるように、それぞれ連続的に供給し、重合温度85℃で重合した。得られたポリマーのMFRは4.8g/10分であった。この時、MFRの測定の際に押し出されるストランド表面は滑らかであり、良加工性を示した。得られた高密度ポリエチレン(A1)は、MFR4.8g/10分、密度960kg/m、Mw/Mn=5.5、(Mz/Mw)−(Mw/Mn)=1.5、半値巾(Log(MH/ML))=1.07、分子量100万g/モル以上の分子量成分は0.93重量%であった。高密度ポリエチレン(A1)は、実施例1、2で使用した。
【0047】
実施例1
エチレン系重合体(A)として高密度ポリエチレン(A1)を85重量%、高圧法低密度ポリエチレン(B)としてMFRが8.0g/10分、密度が920kg/mである高圧法低密度ポリエチレン(東ソー(株)製 商品名ペトロセン214)(B1)を15重量%配合し、50mm単軸押出機(プラコー社製)にて180℃で溶融混練してペレットを得た。
【0048】
得られたペレットのスウェル比、密度、MFRを測定すると共に、また、25mm小型単軸ラミネーター(プラコー社製)を用いて、樹脂温度320℃、厚み20μmで押出ラミネート成形を行った。基材はクラフト紙、ライン速度は20m/分、エアーギャップは80mmとした。また、コーティングしたクラフト紙の裏面にも同様の方法でポリエチレンをコートした。裏面のポリエチレン厚みは50μmとした。
【0049】
得られた積層体を用いて、厚みムラ、耐熱ピンホール性を測定した。結果を表1に示すが、発生ピンホール数は少なく耐熱性に優れ、厚みムラも少ないことがわかる。
【0050】
実施例2
MFRが13.0g/10分、密度が919kg/mである高圧法低密度ポリエチレン(東ソー(株)製 商品名ペトロセン212)(B2)を用いた以外は実施例1と同様の方法で積層体を得、厚みムラ、耐熱ピンホール性を測定した。結果を表1に示すが、発生ピンホール数は少なく耐熱性に優れ、厚みムラも少ないことがわかる。
【0051】
比較例1
高密度ポリエチレン(A1)の代わりに高密度ポリエチレン(A2)(東ソー(株)製 ニポロンハード#5110)を用いた以外は実施例1と同様方法で積層体を得、厚みムラ、耐熱ピンホール性を測定した。(A2)のMFRは0.9g/10分、密度は961kg/m、Mw/Mn=7.8、(Mz/Mw)−(Mw/Mn)=1.7、半値巾(Log(MH/ML))=1.3、分子量100万g/モル以上の分子量成分は1.5重量%である。結果を表1に示すが、発生ピンホールの数は少ないものの、厚みムラが大きいことがわかる。
【0052】
比較例2
高圧法低密度ポリエチレン(B1)を混合せずに、高密度ポリエチレン(A1)のみで押出ラミネート加工を試みたが、製膜性が悪く、積層体を得ることができなかった。
【0053】
比較例3
高密度ポリエチレン(A1)を混合せずに、高圧法低密度ポリエチレン(B1)のみで押出ラミネート加工を行い、積層体を得た。結果を表1に示すが、厚みムラが少ないものの、発生ピンホールの数が大きすぎることがわかる。
【0054】
比較例4
高密度ポリエチレン(A1)を混合せずに、高圧法低密度ポリエチレン(B2)のみで押出ラミネート加工を行い、積層体を得た。結果を表1に示すが、厚みムラが少ないものの、発生ピンホールの数が大きすぎることがわかる。
【0055】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)〜(6)の要件を満たすエチレン単独重合体、または、エチレンおよび炭素数3〜20のα−オレフィンからなるエチレン・α−オレフィン共重合体(A)1〜99重量%と、(7)および(8)を満たす高圧ラジカル重合法で得られる低密度ポリエチレン(B)99〜1重量%からなるポリエチレン系樹脂組成物を少なくとも一層として有する押出ラミネート積層体。
(1)密度が900〜975kg/m
(2)メルトマスフローレートが0.01〜100g/10分
(3)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定で求められるMw/Mnが3.0以上
(4)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定で求められる(Mz/Mw)−(Mw/Mn)≧0.5の関係を満たす
(5)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定で得られる分子量パターンから分子量100万g/モル以上の分子量成分がポリマー全重量の0.1〜5.0重量%
(6)ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)測定で得られる分子量パターンから半値幅(Log(MH/ML))<1.1の関係を満たす
(7)密度が910〜930kg/m
(8)メルトマスフローレートが0.1〜100g/10分
【請求項2】
エチレン単独重合体、または、エチレンおよび炭素数3〜20のα−オレフィンからなるエチレン・α−オレフィン共重合体(A)1〜99重量%と低密度ポリエチレン(B)99〜1重量%からなるポリエチレン系樹脂組成物が下記(9)〜(11)を満たすことを特徴とする請求項1に記載の押出ラミネート積層体。
(9)密度が950〜975kg/m
(10)メルトマスフローレートが1〜100g/10分
(11)160℃、ダイのL/D=8/2.095(mm)、シリンダー径9.55mm、ピストン降下速度10mm/分で測定したスウェル比が1.2以上3.0以下
【請求項3】
請求項1〜2に記載の押出ラミネート積層体からなる耐熱容器、ガスバリア性容器、離型テープおよび離型紙、印画紙支持体、防湿性包装紙。

【公開番号】特開2006−272587(P2006−272587A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−91102(P2005−91102)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】