説明

押出機先端圧力測定方法及び装置

【課題】本発明は、スクリュを内設したシリンダの後部に設けられた減速機のスラストベアリングを介して受けるスクリュのスラスト荷重を荷重変換器で受けることにより、樹脂材料の種類を問わずスラスト荷重値の測定を可能とすることを目的とする。
【解決手段】本発明による押出機先端圧力測定方法及び装置は、スクリュ(22)を有するシリンダ(2A)の後部に減速ギア機構(23)を設け、このスクリュ(22)に減速歯車群(24)を介して設けられた直動軸(25)にスラストベアリング(27)を介して荷重変換器(28)を配設し、前記スクリュ(22)にかかるスラスト荷重(S)を荷重変換器(28)で測定する方法と構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出機先端圧力測定方法及び装置に関し、特に、スクリュを内設したシリンダの後部に設けられた減速機のスラストベアリングを介して受けるスクリュのスラスト荷重を荷重変換器で受けることにより、樹脂材料の種類を問わずスラスト荷重値の測定を可能とするための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられいたこの種の押出機先端圧力測定方法としては、例えば、特許文献1及び2の構成を挙げることができ、ここでは、特許文献1の構成を図2及び図3と共に説明する。
【0003】
図3において、符号1で示されるものは押出装置であり、この押出装置1はスクリュ式押出機2、ダイバータバルブ3、連結管4、ギアポンプ5、濾過装置6及び造粒装置7を上流から下流へ順次連結して構成されている。
【0004】
前記スクリュ式押出機2はシリンダ2A内にスクリュ片端支持で構成され、図示しないスクリュが減速機2aを介して駆動モータ2bに連結されている。このシリンダ2Aの上流側端部には、シリンダ2A内へ合成樹脂原料を供給するホッパ2cが設けられている。前記ギアポンプ5には図示しないギアポンプ用駆動装置、前記造粒装置7には図示しない造粒装置用駆動装置がそれぞれ独立して回転駆動可能に設けられ、前記濾過装置6には濾過用スクリーンを交換するための図示しない駆動装置が設けられている。また、スクリュ式押出機2の先端の吐出端10には第1圧力計測点Aとして、シリンダ先端内の流路圧力を計測して計測値を図示しない制御装置へ伝送可能な第1圧力伝送器8が設けられ、前記連結管4にはギアポンプ5の吸入端11すなわちギアポンプ5のギア5Aの直前の第2圧力計測点Bとして、連結管4内の流路圧力を計測して計測値を図示しない制御装置へ伝送可能な第2圧力伝送器9が設けられている。
【0005】
以上のように構成された押出装置1において、合成樹脂原料は以下のように加工処理される。すなわち、スクリュ式押出機2のスクリュが減速機2aを介して駆動モータ2bにより回転駆動され、ギアポンプ5が駆動され、造粒装置7がそれぞれ所定条件により運転されている状態で、スクリュ式押出機2において、その上流部のホッパ2cからシリンダ2A内へ合成樹脂原料が連続的に供給される。この合成樹脂原料は、スクリュ式押出機2により溶融混練され、ダイバータバルブ3および連結管4を経てギアポンプ5へ押出され、ギアポンプ5により昇圧され、濾過装置6により不純物を除去され、造粒装置7によりペレット状の樹脂材料に加工される。
【0006】
このような押出装置1の連続した工程による加工処理において、第1圧力伝送器8及び第2圧力伝送器9により、それぞれ第1圧力計測点A及び第2圧力計測点Bにおける流路内の溶融樹脂圧力Pa及びPbが計測され、この計測圧力が図示しない制御装置へ伝送され、図4に示すように、ギアポンプ5の直前の圧力予測点Sの圧力が予測され、予測圧力がギア5A直前を溶融樹脂原料で充満させるためのギア直前設定樹脂圧力Psになるように、ギアポンプ5の運転が制御され、ギアポンプ5の回転数が制御される。また、図4では3つの測定結果が樹脂圧力勾配として示されているが、何れの場合も、ギア直前設定樹脂圧力Psとなるように前記制御装置によって制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−35457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の押出機先端圧力測定方法及び装置は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、通常の硬度を有する樹脂材料を混練して押出した場合には、圧力伝送器の測定部は樹脂圧力を正常に測定することができるが、非常に硬度の高い材料を押出機により混練した場合、圧力伝送器の測定部が直接材料に接触するため、摩耗してしまい、測定が不可能となってしまうことがあった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による押出機先端圧力測定方法は、シリンダ内に回転自在に設けられたスクリュと、前記シリンダの後端に設けられ前記スクリュを回転駆動するための減速ギア機構と、前記減速ギア機構に接続され前記減速ギア機構を駆動するためのモータと、前記減速ギア機構の後部に設けられると共に前記スクリュに直接又は間接的に接して軸方向に直動する直動軸と、前記減速ギア機構の後部に設けられ前記直動軸を直動自在に支持するためのスラストベアリングと、前記スラストベアリングの後部に配設され前記直動軸の端部と接する荷重変換器と、を用い、前記スクリュに付加されるスラスト荷重を前記直動軸を介して前記荷重変換器により測定する方法であり、また、前記減速ギア機構の減速ギア機構ケーシングと一体に形成されて突出する筒状又はカップ状のケース体内に、前記スラストベアリング及び荷重変換器が設けられている方法であり、また、本発明による押出機先端圧力測定装置は、シリンダ内に回転自在に設けられたスクリュと、前記シリンダの後端に設けられ前記スクリュを回転駆動するための減速ギア機構と、前記減速ギア機構に接続され前記減速ギア機構を駆動するためのモータと、前記減速ギア機構の後部に設けられると共に前記スクリュに直接又は間接的に接して軸方向に直動する直動軸と、前記減速ギア機構の後部に設けられ前記直動軸を直動自在に支持するためのスラストベアリングと、前記スラストベアリングの後部に配設され前記直動軸の端部と接する荷重変換器と、よりなり、
前記スクリュに付加されるスラスト荷重を前記直動軸を介して前記荷重変換器により測定する構成であり、また、前記減速ギア機構の減速ギア機構ケーシングと一体に形成されて突出する筒状又はカップ状のケース体内に、前記スラストベアリング及び荷重変換器が設けられている構成である。
【発明の効果】
【0010】
本発明による押出機先端圧力測定方法及び装置は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、シリンダ内に回転自在に設けられたスクリュと、前記シリンダの後端に設けられ前記スクリュを回転駆動するための減速ギア機構と、前記減速ギア機構に接続され前記減速ギア機構を駆動するためのモータと、前記減速ギア機構の後部に設けられると共に前記スクリュに直接又は間接的に接して軸方向に直動する直動軸と、前記減速ギア機構の後部に設けられ前記直動軸を直動自在に支持するためのスラストベアリングと、前記スラストベアリングの後部に配設され前記直動軸の端部と接する荷重変換器と、を用い、前記スクリュに付加されるスラスト荷重を前記直動軸を介して前記荷重変換器により測定することにより、従来用いていたシリンダの先端内の圧力測定装置をなくすことができると共に、減速装置に設けた荷重変換器によってスクリュのスラスト荷重を測定し、得られた測定荷重値により樹脂圧力を換算することができ、従来は不可能となっていた硬度の高い樹脂材料についても、荷重変換器が直接樹脂材料に接することがないため、樹脂の硬軟及び種類に関係なく樹脂圧力を正確に測定することができる。
さらに、減速ギア機構の減速ギア機構ケーシングと一体に形成されて突出する筒状又はカップ状のケース体内に、前記スラストベアリング及び荷重変換器が設けられていることにより、荷重変換器は外部との接触を極めて少なくすることができ、耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による押出機先端圧力測定方法及び装置を示す概略平面構成図である。
【図2】図1の下面から見た場合の概略拡大断面図である。
【図3】従来の押出機先端圧力測定方法及び装置を示す構成図である。
【図4】図3における溶融合成樹脂原料圧力線図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、スクリュを内設したシリンダの後部に設けられた減速機のスラストベアリングを介して受けるスクリュのスラスト荷重をロードセルで受けることにより、樹脂材料の種類を問わずスラスト荷重値の測定を可能とする押出機先端圧力測定方法及び装置を提供することを目的とする。
【実施例】
【0013】
以下、図面と共に本発明による押出機先端圧力測定方法及び装置の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分については、同一符号を用いて説明する。
図1及び図2において、符号1で示されるものは、押出機1を構成するためのシリンダ2Aであり、このシリンダ2Aには樹脂原料を供給するためのホッパー20が設けられている。
【0014】
前記シリンダ2A内の内腔21内には、一対のスクリュ22が互いに噛み合い又は非噛み合い状態で内設され、前述の二軸の構成のみに限らず、図示しない一軸構成も適用することができる。
前記シリンダ2Aの後端2B側には、周知の減速ギア機構23を有する減速装置2aが設けられ、この減速ギア機構23の減速ギア機構ケーシング23Aが前記後端2Bに接続されている。
【0015】
前記減速ギア機構23内には前記モータ2bの回転を減速してスクリュ22を回転するための減速歯車群24が設けられており、この減速ギア機構23の後部23Aから後方へ突出する直動軸25が直動自在に設けられている。
【0016】
前記スクリュ22の後端は、前記減速歯車群24を介して回転されると共に、図示しない周知の接続部材(例えば、回転を伝達せずにストロークのみを伝えるジョイント等からなる)を介して前記直動軸25に接し、スクリュ22が溶融樹脂によるスラスト荷重を受けた場合に前記直動軸25をスクリュ22が付勢して直動させるように構成されている。尚、この場合、スクリュ22の直動を許容できるように、減速歯車群24の歯車は、周知のように、軸方向に長い歯を用いる必要がある。
従って、前記スクリュ22の後端と直動軸25とは、前記接続部材を用いた間接的な構成と、この接続部材を用いないでグリス等によりスクリュ22の端面と直動軸25の端面とを直接接触させることも可能である。
尚、前述の直動軸25は、図示した一対の二軸スクリュ構成に限らず、一軸の単軸スクリュ構成として一軸の直動軸25を用いる構成とすることもできる。
【0017】
前記減速ギア機構23の減速ギア機構ケーシング23Aの後部23Aaには、この減速ギア機構ケーシング23Aと一体でかつ筒状又はカップ状に突出して形成されたケース体26が形成され、このケース体26内には、スラストベアリング27及びロードセンサである荷重変換器28が直列状に内設されており、前記直動軸25の径小軸25aがスラストベアリング27を貫通して前記荷重変換器28に当接して軸方向に付勢するように構成されている。
【0018】
次に、動作について述べる。前述の構成において、前記シリンダ2Aを図示しないヒータによって予め加熱し、所定の温度に到達した段階で前記ホッパー20からシリンダ2A内に樹脂原料を供給すると、すでに、モータ2b及び減速装置2aを介してスクリュ22が回転状態であるため、シリンダ2A内の樹脂原料は溶融攪拌されつつ、シリンダ2Aの先端に設けられたダイス(図示せず)側に搬送されて、このダイスから造粒機(図示せず)側へストランドとして吐出されるが、この際、スクリュ22は混練しシリンダ2A内に滞留している溶融樹脂によって圧力すなわちスラスト荷重Sを受け、同時に減速装置2aすなわち減速ギア機構にこのスラスト荷重Sが加わる。
【0019】
前述の場合、このスラスト荷重Sは、前記直動軸25を経てスラストベアリング27に伝わり、このスラストベアリング27の直動側に結合している前記径小軸25aが荷重変換器28を付勢するため、この荷重変換器28からスラスト荷重Sに応じた荷重値28aが出力される。
前記荷重値28aを圧力に変換することにより、シリンダ2A内の溶融樹脂の樹脂圧力の値を得ることができ、この圧力の値を用いてモータ2bの回転を制御し、溶融混練の状態を制御することができる。
従って、本発明による押出機先端圧力測定方法においては、溶融混練するための樹脂の種類に関係なくスラスト荷重Sに基づく圧力測定を確実に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明による押出機先端圧力測定方法及び装置は、単軸、二軸押出機の他に、射出及び中空成形機のシリンダにも適用が可能である。
【符号の説明】
【0021】
1 押出機
S スラスト荷重
2A シリンダ
2B 後端
2a 減速装置
2b モータ
20 ホッパー
21 内腔
22 スクリュ
23 減速ギア機構
23A 減速ギア機構ケーシング
23Aa 後部
24 減速歯車群
25 直動軸
25a 径小軸
26 ケース体
27 スラストベアリング
28 荷重変換器
28a 荷重値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダ(2A)内に回転自在に設けられたスクリュ(22)と、前記シリンダ(2A)の後端(2B)に設けられ前記スクリュ(22)を回転駆動するための減速ギア機構(23)と、前記減速ギア機構(23)に接続され前記減速ギア機構(23)を駆動するためのモータ(2b)と、前記減速ギア機構(23)の後部(23Aa)に設けられると共に前記スクリュ(22)に直接又は間接的に接して軸方向に直動する直動軸(25)と、前記減速ギア機構(23)の後部(23Aa)に設けられ前記直動軸(25)を直動自在に支持するためのスラストベアリング(27)と、前記スラストベアリング(27)の後部に配設され前記直動軸(25)の端部と接する荷重変換器(28)と、を用い、
前記スクリュ(22)に付加されるスラスト荷重(S)を前記直動軸(25)を介して前記荷重変換器(28)により測定することを特徴とする押出機先端圧力測定方法。
【請求項2】
前記減速ギア機構(23)の減速器ギア機構ケーシング(23A)と一体に形成されて突出する筒状又はカップ状のケース体(26)内に、前記スラストベアリング(27)及び荷重変換器(28)が設けられていることを特徴とする請求項1記載の押出機先端圧力測定方法。
【請求項3】
シリンダ(2A)内に回転自在に設けられたスクリュ(22)と、前記シリンダ(2A)の後端(2B)に設けられ前記スクリュ(22)を回転駆動するための減速ギア機構(23)と、前記減速ギア機構(23)に接続され前記減速ギア機構(23)を駆動するためのモータ(2b)と、前記減速ギア機構(23)の後部(23Aa)に設けられると共に前記スクリュ(22)に直接又は間接的に接して軸方向に直動する直動軸(25)と、前記減速ギア機構(23)の後部(23Aa)に設けられ前記直動軸(25)を直動自在に支持するためのスラストベアリング(27)と、前記スラストベアリング(27)の後部に配設され前記直動軸(25)の端部と接する荷重変換器(28)と、よりなり、
前記スクリュ(22)に付加されるスラスト荷重(S)を前記直動軸(25)を介して前記荷重変換器(28)により測定することを特徴とする押出機先端圧力測定装置。
【請求項4】
前記減速ギア機構(23)の減速器ギア機構ケーシング(23A)と一体に形成されて突出する筒状又はカップ状のケース体(26)内に、前記スラストベアリング(27)及び荷重変換器(28)が設けられていることを特徴とする請求項3記載の押出機先端圧力測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−148205(P2011−148205A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−11838(P2010−11838)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】