説明

押出機用スクリュー

【課題】樹脂温度上昇の抑制と高い混練効果を両立させた押出機用スクリューを提供する。
【解決手段】スクリューの基端側から先端側まで連続的に形成された外径一定な主フライト2と、スクリューの長手方向中間部に形成された、前記主フライト2よりも外径が小さく、リード角が大きい副フライト3とを有するバリアフライトタイプの押出機用スクリューで、前記主フライト2と副フライト3の外径差を基端側よりも先端側の方で大きくすると共に、計量部Mの溝深さを供給部Fの溝深さよりも深くして圧縮比を1.0以下にした。ハロゲンフリー樹脂の押出成形に好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂の押出成形に用いられる押出機用スクリューに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電線・ケーブルの被覆材料等として需要が高まっているハロゲンフリー樹脂は、従来から使用されてきたポリ塩化ビニルに比べて、押出時に発熱しやすく、樹脂温度が上昇すると、低粘度化による樹脂劣化や分解を起こしやすい。したがって、ハロゲンフリー樹脂を押出成形する場合には、樹脂温度の上昇を抑制するため、押出機を低回転数で運転する必要があり、生産性の低下が問題となっている。また押出成形の際に樹脂温度の上昇を抑制しようとすると、混練や着色剤の分散が不十分になったり、未溶融樹脂が押し出されたりする等、良好な成形品を得ることが困難になる。
【0003】
また上記のとおり、樹脂温度上昇の抑制と、混練性・分散性の向上は、背反事項にあたり、両立させることが非常に困難であった。
【0004】
押出機用スクリューの最も一般的なものは、図4に示すように、フライト1が1本で、供給部F、圧縮部C、計量部Mを有するフルフライトタイプのスクリューである。このタイプのスクリューは、圧縮比(供給部Fの1ピッチ分の体積/計量部Mの1ピッチ分の体積)を大きくとることで、十分な混練作用を得ている。そのため、スクリューの先端部分で樹脂に大きな剪断力がかかり、樹脂温度の上昇が発生しやすい。またフルフライトタイプのスクリューによるハロゲンフリー樹脂の押出では、十分な混練作用を得ることが難しい。
【0005】
そこで、より大きな混練効果が得られるスクリューとして、バリアフライトタイプのスクリューが提案されている(特許文献1の図1)。このスクリューは、図5に示すように、基端側から先端側まで連続的に形成された主フライト2と、スクリュー長手方向中間部に形成された副フライト3とを有している。主フライト2の外径(押出機シリンダ内径に相当)は一定であり、副フライト3は主フライト2より外径が小さく、リード角が大きく形成されている。主フライト2と副フライト3の外径差は、一定か、又は基端側よりも先端側の方が小さくなるように設定されている(図5(B)においてX≧X)。また主フライト2と副フライト3の外径差X、Xは、未溶融樹脂が乗り越えることができない大きさに調整され、溶融樹脂のみが副フライト3を乗り越えられるようになっている。上記のような副フライト3を形成することによって主フライト2間の溝部は二つに分割され、溶融樹脂は副フライト3を乗り越えるときに大きな剪断力を受けるため、高い混練効果を得ることができる。
【0006】
【特許文献1】特開2003−266520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記のようなバリアフライトタイプのスクリューを用いても、ハロゲンフリー樹脂の押出では、剪断発熱による樹脂温度の上昇が大きく、発泡などの外観不良が発生するという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、樹脂温度上昇の抑制と高い混練効果を両立させた押出機用スクリューを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため本発明は、スクリューの基端側から先端側まで連続的に形成された外径一定な主フライトと、スクリューの長手方向中間部に形成された、前記主フライトよりも外径が小さく、リード角が大きい副フライトとを有する押出機用スクリューにおいて、前記主フライトと副フライトの外径差を基端側よりも先端側の方で大きくすると共に、圧縮比を1.0以下にしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る押出機用スクリューは、主フライトと副フライトを有するバリアフライトタイプであるため、高い混練効果を得ることができ、しかも主フライトと副フライトの外径差を基端側よりも先端側の方で大きくすると共に、圧縮比を1.0以下にしたので、樹脂の剪断力が弱まり、樹脂温度上昇を抑制することができる。したがって、押出成形品を得るのに必要な混練効果を維持したままで、発熱量を抑制することができるため、安定して良好な押出成形品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本発明の一実施形態を示す。この押出機用スクリューは、基端側から先端側まで連続的に形成された外径一定な主フライト2と、スクリューの長手方向中間部に形成された、前記主フライト2よりも外径が小さく、リード角が大きい副フライト3とを有するバリアフライトタイプのスクリューであるが、前記主フライト2と副フライト3の外径差を基端側よりも先端側の方で大きくする(図1(B)においてX<Xとする)と共に、計量部Mの溝深さを供給部Fの溝深さよりも深くして圧縮比を1.0以下とした点に特徴がある。
【0012】
この実施形態では、副フライト3を有する区間をスクリュー基端側と先端側とに分け、基端側の外径差Xよりも先端側の外径差Xを大きくしてある。
【0013】
また、副フライト3の長さの60〜70%を基端側、残りを先端側とし、基端側の副フライト3の高さ(溝底から外周面までの高さ、以下同じ)を主フライト2の高さの85〜90%とすることで、溶融樹脂と未溶融樹脂を分離させる。また先端側の副フライト3の高さは主フライト2の高さの75〜85%とすることで、溶融樹脂が副フライト3を乗り越える際の剪断力を弱め、樹脂温度の上昇を抑制する。
【0014】
さらに、溶融樹脂のスクリュー溝内での剪断発熱を抑制するため、計量部Mの溝深さを供給部Fの溝深さよりも深くして圧縮比を1.0以下としている。
【0015】
以上の構成により、溶融効果、混練効果ともにゆるやかに与えることができ、均一な押出成形品を得ることができる。
【0016】
なお、上記の構成に加え、供給部Fの長さを8〜10D(Dは主フライト外径)として、供給部Fをシリンダからの加熱によって十分に予熱できるようにしておくことが望ましい。
【0017】
図2は、上記のように構成されたスクリュー(本発明品)と、図5のスクリュー(従来品)とを用いて、同じ押出機でハロゲンフリー樹脂を押出成形したときの、スクリュー回転数と樹脂温度上昇値を測定した結果を示す。図2において、樹脂温度上昇値とは、スクリュー回転数10rpmのときの押出機吐出直後の温度を基準とし、その温度からの上昇値をいう。図2によれば、本発明によるスクリューを用いると、スクリュー回転数を上げたときの樹脂温度の上昇を大幅に抑制できることが分かる。したがってハロゲンフリー樹脂を効率よく押出成形することができる。
【0018】
図3は、スクリュー圧縮部基端側での主フライトに対する副フライトの高さが83%のスクリューと、92%のスクリューについて、スクリュー回転数を変化させたときの樹脂温度上昇値を測定した結果を示す。図3によれば、副フライトの高さを低くすることによって樹脂温度上昇を抑制できることが明らかであるが、副フライトの高さが83%のスクリューでは混練効果が不足する。また副フライトの高さが92%のスクリューでは樹脂温度上昇が大きすぎる。このため、主フライトに対する副フライトの高さは85〜90%にすることが好ましい。つまり本発明は、圧縮部の基端側では副フライトの高さを高くして、溶融樹脂と未溶融樹脂を分離すると共に、先端側では副フライトを基端側よりも低くし、剪断発熱を抑えることで、樹脂温度上昇抑制と、混練性・分散性向上の両立を図るものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る押出機用スクリューの一実施形態を示す、(A)は側面図、(B)は(A)のスクリューの副フライト部分の拡大図。
【図2】図1のスクリューと図5のスクリューで樹脂を押出成形したときの、スクリュー回転数と樹脂温度上昇値の測定結果を示すグラフ。
【図3】スクリュー圧縮部基端側の主フライトに対する副フライトの高さを異ならせた場合の、スクリュー回転数と樹脂温度上昇値の測定結果を示すグラフ。
【図4】従来の一般的な押出機用スクリューを示す側面図。
【図5】従来のバリアフライトタイプのスクリューを示す、(A)は側面図、(B)は(A)のスクリューの副フライト部分の拡大図。
【符号の説明】
【0020】
2:主フライト
3:副フライト
F:供給部
M:計量部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スクリューの基端側から先端側まで連続的に形成された外径一定な主フライトと、スクリューの長手方向中間部に形成された、前記主フライトよりも外径が小さく、リード角が大きい副フライトとを有する押出機用スクリューにおいて、前記主フライトと副フライトの外径差を基端側よりも先端側の方で大きくすると共に、圧縮比を1.0以下にしたことを特徴とする押出機用スクリュー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−203711(P2007−203711A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−28685(P2006−28685)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河オートモーティブパーツ株式会社 (571)
【Fターム(参考)】