説明

拡底バケット

【課題】硬い地盤であっても杭の拡底部を容易に形成できる拡底バケットを提供する。
【解決手段】杭の底部となる部分に軸部60aよりも直径を拡大させた拡底部60bを形成するための拡底バケット1である。
そして、円筒形の本体部11と、その本体部11の直径を拡大させるように開放可能に形成された拡幅翼部12とを備え、拡幅翼部12の側端部には回転自在のローラビット121,・・・がその側端部の延設方向に間隔を置いて複数設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭の底部となる部分に軸部よりも拡大させた拡底部を形成するための拡底バケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、杭の底部となる部分に軸部よりも拡大させた拡底部が設けられる場所打ちコンクリート杭としての拡底杭が知られている(特許文献1,2など参照)。
【0003】
この拡底杭は、地面にスタンドパイプを建て込み、その内側を掘削機によって掘削して軸部となる部分を形成し、その下方に軸部の直径を拡底バケットによって徐々に広げて切削した拡底部となる部分を形成することによって構築する。
【0004】
この拡底部は、直径が下方に向けて徐々に広がる截頭円錐状の拡幅傾斜部とその下方に設けられる円筒状の垂直部とによって構成される。
【特許文献1】特開2001−164867号公報
【特許文献2】特開昭59−489号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、拡底部を形成する地盤は、杭の支持層となる地盤であるため硬い地盤が多く、従来の拡底バケットでは切削が困難な場合があった。
【0006】
そこで、本発明は、硬い地盤であっても杭の拡底部を容易に形成できる拡底バケットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明の拡底バケットは、杭の底部となる部分に軸部よりも直径を拡大させた拡底部を形成するための拡底バケットであって、円筒状の本体部と、その本体部の直径を拡大させるように開放可能に形成された拡幅翼部とを備え、該拡幅翼部の側端部には回転自在のローラビットがその側端部の延設方向に間隔を置いて複数設けられていることを特徴とする。
【0008】
ここで、前記拡幅翼部の側端部の前記ローラビットとローラビットとの間には、固定ビットが固着されている。
【0009】
また、前記拡幅翼部よりも下方の前記本体部の下端には突出部が形成されていることが好ましい。ここで、この突出部には、その直径を調整する円環状のスタビライザーを着脱自在に設けることもできる。
【0010】
さらに、前記拡幅翼部は、下端付近に幅が略一定の等幅部が形成されるとともにそれより上方が先細りする形状に形成されており、その等幅部の側端部に前記ローラビットと板状の切削板刃部とを切替可能に構成することもできる。
【0011】
また、前記本体部の内部には、アースドリルのケリーバからの力を受ける伝達軸部が前記本体部の上下方向に移動可能に配設されるとともに、その伝達軸部に屈曲自在に連結された連結部材の下端が前記拡幅翼部に接続されており、前記ケリーバ下端と前記伝達軸部との間には減速装置が介在されるように構成することができる。
【0012】
ここで、前記伝達軸部は、前記本体部の内部に取り付けられたガイド筒にスライド自在に収容されており、そのガイド筒の上端に着脱自在に装着される開度調整プレートの高さによって前記伝達軸部の下方への移動量が設定されるように構成することができる。
【0013】
さらに、前記伝達軸部は前記本体部の内部に取り付けられたガイド筒にスライド自在に収容されるとともに、前記ガイド筒の周面には軸方向と交差する方向に傾いたスライド溝が形成されており、前記伝達軸部と前記連結部材との連結部を前記スライド溝から突出させてそれをガイドに前記伝達軸部を上下方向に移動させることもできる。
【発明の効果】
【0014】
このように構成された本発明の拡底バケットは、拡幅翼部の側端部に回転自在のローラビットが複数設けられており、このローラビットを地盤に食い込ませて溝状に切削することができ、その溝間に挟まれた地盤が脆くなって切削し易くなる。このため、硬い地盤であっても容易に広げていくことができる。
【0015】
また、ローラビット間に固定ビットを固着しておくことで、ローラビットによって形成された溝と溝との間の地盤を、固定ビットによって効率的に掻き落としていくことができる。
【0016】
さらに、拡幅翼部よりも下方の本体部の下端に突出部を形成することで、突出部を地盤に支持させることができる。
【0017】
このため、拡幅翼部を開いていく際に地盤の反力が本体部に作用しても、突出部によって地盤に拘束されて下端の位置がぶれないので、一方に片寄ることなく正確な形状に拡底部を形成していくことができる。
【0018】
また、拡底バケットの直径より拡底前の掘削孔の直径が大きい場合には、この突出部の直径を円環状のスタビライザーを装着して調整することで、中心位置をぶれさせることなく正確な形状に拡底部を形成することができる。
【0019】
また、拡幅翼部の等幅部の側端部を切削板刃部に切り替えできるように構成しておくことで、ローラビットで溝状に形成された拡底部の掘削壁面を凹凸のないきれいな壁面に成形することができる。
【0020】
さらに、回転力を付加するアースドリルのケリーバと、その回転力が伝達される伝達軸部との間に減速装置を介在させることで、アースドリルがトルクの小さい比較的小型な機械であっても硬い地盤を拡底することができる。
【0021】
また、伝達軸部をスライドさせるガイド筒の上端に開度調整プレートを装着し、その高さで伝達軸部の下方への移動量を設定できれば、拡底部を所望する大きさに正確かつ効率的に形成することができる。
【0022】
さらに、ガイド筒に斜めにスライド溝を設け、それに沿って伝達軸部を上下させるようにすれば、滑らかに拡幅翼部を開閉させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の最良の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0024】
図1は、杭の底部を軸部の直径よりも拡大させた拡底杭を構築する際に使用する本実施の形態の拡底バケット1の構成を示した斜視図である。
【0025】
まず、構成から説明すると、本実施の形態の拡底バケット1は、円筒状の本体部11と、その本体部11の直径を拡大させるように開放可能に形成された二枚の拡幅翼部12,12とを備えている。
【0026】
この拡底バケット1は、アースドリル(図示せず)に取り付けられる装置であって、詳細には旋回体、ブーム、ケリーロープ、ケリーバ2などを備えたアースドリルのケリーバ2の下端に、ピンなどを介して着脱自在に取り付けられる。
【0027】
この拡底バケット1の本体部11は、図示しない掘削用バケットによって掘削された図6(a)に示すような掘削孔60に挿入できる程度の直径に形成されており、上部に円環状のスタビライザー4が配置されている。
【0028】
また、拡幅翼部12,12は、拡底バケット1を吊り上げた際には閉鎖されて円筒状の本体部11の側面の一部を形成し、図6(b)に示すように掘削孔60に挿入されたときに開放されて掘削孔60の壁面を切削して拡幅する。
【0029】
この拡幅翼部12は、図2に示すように下端付近に幅が略一定の等幅部12aが形成されるとともに、それより上方は先細りする三角形状の三角状部12bが形成されて、図4に示すように平面視円弧状に形成されている。
【0030】
この等幅部12aは、例えば500mm程度の高さに形成され、この等幅部12aによって切削された部分が厚さ500mm程度の拡底杭の底板となる。
【0031】
また、この拡幅翼部12の側端部には、図1に示すように側端部の延設方向に間隔を置いて複数のローラビット121,・・・が設けられている。
【0032】
このローラビット121は、図5(a)に示すように、算盤の珠状のビット部121aが側端部に固定された軸121bを中心に回転するように取り付けられている。
【0033】
また、このローラビット121とローラビット121との間には、ローラビット121よりも側方への突出量の少ない固定ビット122が複数固着されている。
【0034】
すなわち、このローラビット121は固定ビット122よりも外側に突出しており、ローラビット121が掘削壁面6に先に当接して地盤が溝状に切削される。
【0035】
また、このローラビット121は、軸121bを中心に回転するので、硬い地盤に当接した際には回転することによって過大な応力の発生を抑えることができる。
【0036】
なお、本体部11には、拡幅翼部12,12を閉じた際にローラビット121,・・・や固定ビット122,・・・を収容できるような切欠部11aが形成されている。
【0037】
そして、この拡幅翼部12の下方の内側面には、連結部材141の下端が固定されており、その連結部材141を介して作用する力によって拡幅翼部12が開閉する。
【0038】
すなわち、本体部11の内部には、図1,2に示すようにアースドリルのケリーバ2の下端が接続される伝達軸部14が収容されていて、この伝達軸部14の下端に連結部材141の上端がユニバーサルジョイント構造で屈曲自在に連結される。
【0039】
なお、本実施の形態では、この伝達軸部14とケリーバ2の下端との間には、減速装置3が介在されていて、減速装置3の下部と伝達軸部14の上端が連結フランジ5によって連結されている。また、このフランジ5の上部及び下部は、図7に示すような補強板5a,5bによって補強されている。
【0040】
この減速装置3は、回転によって拡底バケット1に負荷がかかった時点で作動し、拡底バケット1の回転を遅くすることでトルクを増大させる装置である。すなわち、減速装置3の内部で組み合わされるギア数によって減速及びトルクの増大が図れるので、比較的小規模のアースドリルであっても大口径の拡底部を有する拡底杭を構築することができるようになる。
【0041】
また、伝達軸部14は、上端が開口された筒状のガイド筒15に収容され、本体部11の上下方向(軸方向)に移動可能となるように構成されている。
【0042】
このガイド筒15の外周面の上部及び下部には、取付板151,・・・の一側がそれぞれ溶接などで固着され、取付板151,・・・の他側は本体部11の内側面に固着されている。
【0043】
また、このガイド筒15の対向する周面部には、長円状のスライド溝152,152がガイド筒15の長手方向に延設されており、そのスライド溝152,152から伝達軸部14と連結部材141とを連結させる連結部としての連結バー142が突出される。
【0044】
この連結バー142は、図3(図2のA−A断面)に示すように、円筒管状の伝達軸部14の下端付近の軸直交方向に貫通させた孔に嵌め込まれた補強管14aに挿通される。
【0045】
この連結バー142の両端は、スライド溝152,152から突出されて、その突出した両端部には円筒状の補強カバー142a,142aがそれぞれ装着される。
【0046】
そして、ケリーバ2を図3のR方向に回転させると減速装置3を介して伝達軸部14に回転力が伝達されて伝達軸部14が回転し、それに伴って回転する連結バー142に取り付けられた補強カバー142a,142aがガイド筒15を押し動かして回転させ、ガイド筒15に取り付けられた取付板151,・・・を介して伝達された回転力によって本体部11が回転する。
【0047】
この補強カバー142a,142aには、反対方向に延設された連結部材141,141の上端がそれぞれ屈曲自在に固定されている。
【0048】
また、連結部材141の下端は、図2に示すように拡幅翼部12の内側面に取り付けられた固定部141aに屈曲自在に連結されている。
【0049】
このように構成された拡底バケット1は、図2の二点鎖線で示すように本体部11に対して伝達軸部14が引き上げられた状態のときには、連結バー142の補強カバー142aがスライド溝152の上端に位置し、連結部材141が起立して拡幅翼部12,12が閉じられている。
【0050】
この状態から伝達軸部14が下方に移動すると、補強カバー142aがスライド溝152に沿って下降するとともに、連結部材141の上下のユニバーサルジョイントが屈曲することによって連結部材141が傾斜して、拡幅翼部12,12が側方に押し出されて開くことになる(図2の実線及び破線参照)。
【0051】
図4は、拡幅翼部12,12の動きを説明するために、一方の拡幅翼部12が開き、他方の拡幅翼部12が閉じた状態を平面図に示したものであるが、実際にはこのような状態になることはなく、拡幅翼部12,12は同時に開閉する。
【0052】
この図4に示されているように、拡幅翼部12によって拡幅前の直径と略同程度の幅の環状の拡幅部、言い換えれば3倍近い直径の最大拡底部120を形成することができる。
【0053】
また、本体部11の内部には、拡幅翼部12を閉じた際に内部に入り込み過ぎないように、閉翼ストッパ125が設けられており、この閉翼ストッパ125に拡幅翼部12の側端部付近の内周面を当接させることで所定の位置に拡幅翼部12を停止させる。
【0054】
さらに、拡幅翼部12の内周面に取り付けられた固定部141aには、屈曲自在に連結部材141の下端が連結されることになるが、図4に示すように拡幅翼部12が開いているときと閉じているときとでは連結部材141の延伸方向が変わることになる。
【0055】
また、本体部11の下端には、図1,2に示すように拡幅翼部12,12よりも下方に突出部13が形成されている。例えば、3m程度の高さの拡底バケット1に対して200〜600mm程度の高さの突出部13を設ける。
【0056】
さらに、この突出部13には円錐状の蓋部131が開閉自在に取り付けられ、図7に示すようにこの蓋部131を開くことによって本体部11の内部に溜まった掘削土砂を排出する。
【0057】
次に、本実施の形態の拡底杭の構築方法について説明するとともにその作用について説明する。
【0058】
まず、アースドリルのケリーバ2の下端に掘削用バケット(図示せず)を取り付けて、図6(a)に示すような円筒状の掘削孔60を構築する。
【0059】
そして、一旦、掘削用バケットを掘削孔60から引き上げてケリーバ2から外し、代わりに拡底バケット1をケリーバ2の下端に取り付ける。
【0060】
この状態で掘削孔60に拡底バケット1を降下させ、拡底バケット1の下面を掘削孔60の底部に当接させて図6(a)に示した状態にする。
【0061】
続いてアースドリルを駆動させてケリーバ2を回転させると、減速装置3によって減速して伝達された回転力によって拡底バケット1が回転を始める。この減速装置3を介在させることで、拡底バケット1の回転に対する抵抗力が大きい場合でも小さなケリーバ2のトルクで回転させることができる。
【0062】
また、この減速装置3は、本体部11の内部に収容することができるので、拡底バケット1をケリーバ2に取り付けるために必要な高さを低くすることができ、比較的小規模のアースドリルにも取り付けることができる。
【0063】
このように掘削孔60の底部に拡底バケット1の下面を当接させた状態では、これ以上拡底バケット1の本体部11が下がることがない。これに対してケリーバ2の自重などが伝達される伝達軸部14は、ガイド筒15に沿って下がることになる。
【0064】
そして、本体部11が下降しない状態で伝達軸部14だけが下がると、その下端に屈曲自在に連結された連結部材141の下端が外側に広がって拡幅翼部12,12が少し開くことになる。
【0065】
この拡幅翼部12,12の側端部には、複数のローラビット121,・・・と固定ビット122,・・・が設けられており、図5(a)に示すようにローラビット121,・・・によって溝状に掘削壁面6が切削されるとともに、その間の地盤が固定ビット122,・・・によって掻き削れられる。
【0066】
すなわち、ローラビット121は外側に向けて鋭角形状となっているため、硬い地盤にも食い込み易く、また、食い込ませた地盤が固すぎて抵抗が大きい場合は回転して過大な応力の発生を避けることができるので、ビット部121aが破損したり短期間に磨耗したりすることがほとんど起きない。
【0067】
また、ローラビット121,・・・によって先行して溝状に地盤を切削することで、その溝間の地盤は上下の拘束力が小さくなって崩れ易くなるので、固定ビット122,・・・によって効率的に掻き落とすことができ、固定ビット122,・・・に作用する負荷を低減できる。
【0068】
そして、掘削壁面6が切削されると、さらに拡幅翼部12,12が外側に広がり易くなるので、ケリーバ2の回転に伴って拡底バケット1が回転するとともに徐々に拡幅翼部12,12の開度が大きくなって、最終的には図6(b)に示すような円筒形の上に截頭円錐形を結合させたような拡底部60bが形成される。
【0069】
また、拡幅翼部12,12が開き始めると、図6(b)に示すように突出部13が埋設されたような状態になって地盤に拘束されるようになるので、拡幅時の抵抗が大きくなっても拡底バケット1の下端の位置がずれることがなく、拡幅翼部12,12の左右の開度が均等になって正確な位置に正確な形状の拡底部60bを形成することができる。
【0070】
このような拡底杭は、例えば直径900mm程度の軸部60aに対して拡底部60bを2000mm程度まで広げることができる。
【0071】
一方、この拡幅掘削時に発生した掘削土砂は、回転する拡幅翼部12,12によって本体部11の内部に掻き集められる。
【0072】
そして、ケリーバ2を吊り上げると、伝達軸部14がガイド筒15に沿って上昇し、その伝達軸部14に連結された連結部材141が起き上がるとともに拡幅翼部12,12が閉じていく。
【0073】
この状態で更にケリーバ2の吊り上げを続けると、連結バー142の補強カバー142aがスライド溝152の上端に当接し、本体部11が持ち上げられることになる。
【0074】
このようにして掘削土砂を内部に収容させた拡底バケット1を土捨て場まで移動させ、図7に示すように蓋部131を開放すると、掘削土砂が拡底バケット1から排出される。
【0075】
また、このようなローラビット121,・・・と固定ビット122とによって切削された掘削壁面6は、図5(a)に示すように凹凸となる場合があるので、掘削壁面6を面一に形成したい場合は、一旦、拡底バケット1を引き上げてローラビット121,・・・が固定された掘削刃を着脱部124から外し、代わりに図5(b)に示すような板状の切削板刃部123を着脱部124を介して拡幅翼部12の側端部に固定する。
【0076】
そして、再び掘削孔60に拡底バケット1を挿入してケリーバ2を回転させるとともに拡幅翼部12,12を広げ、掘削壁面6に切削板刃部123を当接させることで面一のきれいな掘削壁面6を形成することができる。
【0077】
このようにして掘削された掘削孔60には、鉄筋籠を挿入し、コンクリートを打設することによって場所打ちコンクリートからなる拡底杭を完成させる。
【実施例1】
【0078】
以下、前記した実施の形態の実施例1について説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0079】
図8は、伝達軸部14の下降量を調整するためにガイド筒15の上面に開度調整プレート7を配置した状態を示した図である。
【0080】
すなわち、前記実施の形態では、連結バー142の補強カバー142aをスライド溝152の下端に当接させて拡幅翼部12,12を最大限まで広げたが、拡底杭によっては拡底部60bを最大拡底部120になるまで拡幅する必要がない場合もある。
【0081】
そこで、ガイド筒15の上面に伝達軸部14の直径より大きな貫通孔を備えた板状の開度調整プレート7を配置して、伝達軸部14が下がり過ぎないように調整することができる。この伝達軸部14の移動量は、開度調整プレート7の高さで調整することができ、この高さは一枚当たりの高さや枚数で調整する。
【0082】
また、この開度調整プレート7は、半割りにして蝶番で開閉自在に接続しておくことで、伝達軸部14の側面側から容易に装着させることができる。
【0083】
なお、この実施例1では前記実施の形態で配置した減速装置3は取り付けずに、ケリーバ2の下端を伝達軸部14の上端に連結フランジ5によって連結している。
【0084】
また、連結フランジ5の下面には補強板5a,・・・が取り付けられており、開度調整プレート7に衝突しても変形しないように補強されている。
【0085】
そして、伝達軸部14が所定の位置まで降下すると、この連結フランジ5の下面が開度調整プレート7に当接して、それよりも下方に伝達軸部14が降下しなくなる。
【0086】
このように伝達軸部14の降下が途中で止まると、拡幅翼部12,12も途中まで開いた状態で止まり、所望する拡底部60bの大きさに留めることができる。
【0087】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態と略同様であるので説明を省略する。
【実施例2】
【0088】
以下、前記した実施の形態の実施例2について説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0089】
この実施例2では、図9に示すように、周面に斜めにスライド溝152Aを設けたガイド筒15Aを使用する場合について説明する。
【0090】
このガイド筒15Aは、少なくとも上方が開放された円筒状の管材であって、外周面の上部及び下部に固着された取付板151A,151Bを介して本体部11Aの内側面に固定される。
【0091】
また、このガイド筒15Aの周面には、図9(a),(b)に示すように軸方向と交差する方向に傾いたスライド溝152Aが形成されている。ここで、図9(a)は図9(b)のC−C断面図、図9(b)は図9(a)のB−B方向から見た側面図である。
【0092】
このスライド溝152Aの両側には、円筒状の補強管153,153が配設されて補強されている。
【0093】
このようなガイド筒15Aには、伝達軸部14の下端に設けられた連結バー142の補強カバー142aがスライド溝152Aから突出されるようにして伝達軸部14が収容される。
【0094】
そして、伝達軸部14が回転しながら上下方向に移動すると、突出した補強カバー142aが向きを変えながら上下に移動することになる。すなわち、図9(b)に示すように、補強カバー142aは、スライド溝152Aの上端に当接しているときは図の左側に突出し、下端に当接しているときは紙面垂直方向に突出する。
【0095】
このように連結部材141に連結させる補強カバー142aが、ガイド筒15Aの周囲を回りながら上下に移動するように構成することで、拡幅翼部12,12の開閉時に発生するねじれを相殺させることができ、連結部材141やユニバーサルジョイントなどに過剰な応力を発生させることなく、滑らかに拡幅翼部12,12を開閉させることができる。
【0096】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は実施例1と略同様であるので説明を省略する。
【実施例3】
【0097】
以下、前記した実施の形態の実施例3について説明する。なお、前記実施の形態で説明した内容と同一乃至均等な部分の説明については同一符号を付して説明する。
【0098】
この実施例3では、本体部11よりも直径の大きな軸部60aが掘削された掘削孔60に拡底部60bを形成する場合について説明する。
【0099】
このように本体部11よりも直径の大きな掘削孔60に拡底バケット1を挿入した場合、本体部11と掘削孔60の壁面との間に隙間が開くので、図10に示すように本体部11の上部と下部にスタビライザー4と下部スタビライザー部133とを張り出させて、拡底時に本体部11が中心位置からずれないようにする。
【0100】
すなわち、上部のスタビライザー4は、1/4円弧状のスライド板4a,・・・が直径方向に押し出されて本体部11と掘削孔60の壁面との間を埋める。また、下部スタビライザー部133は、図11に示すように、本体部11と同径である胴体部132の外周に円環状に配設されて、胴体部132と掘削孔60の壁面との間を埋める。
【0101】
このように実施例3の突出部13Aは、円筒状の胴体部132と、その外周に配設される円環状の下部スタビライザー部133と、胴体部132の下面を塞ぐ円錐状の蓋部131とによって主に構成されている。
【0102】
また、この下部スタビライザー部133は、例えば1/4円弧状の鋼製函体である円弧部133a,・・・を4体繋ぎ合わせて形成されるもので、この円弧部133aの周方向端部には直径方向に延設される凸条133bと凹条133cがそれぞれ形成されている。
【0103】
そして、円弧部133aの凸条133b及び凹条133cを、その両側の円弧部133a,133aの凹条133c及び凸条133bに差し込み、図11に示すようにボルト133e,・・・によって隣接する円弧部133a,・・・間を接合する。
【0104】
また、この円弧部133aの内周面の略中央には、図11に示すように凸部133dが形成されており、この凸部133dを嵌合させる凹部132aが胴体部132の外周面に形成されている(図10参照)。
【0105】
そして、円弧部133aの内周面を胴体部132の外周面に当接させることによって凸部133dを凹部132aに嵌合させ、図11に示すようにボルト134によって両者を接合する。
【0106】
このように下部スタビライザー部133の外周面が面一に連続して形成されていれば、拡底バケット1を回転させて拡幅翼部12,12を開く際に、一時的に偏心した荷重が突出部13Aに作用しても、下部スタビライザー部133が掘削壁面6に食い込んで拡底バケット1の回転の支障となることがない。
【0107】
また、下部スタビライザー部133は、それ自体が凸条133bを凹条133cに差し込むことによって強固に一体化されるとともに、凸部133dと凹部132aの嵌合によって胴体部132とも強固に一体化されている。
【0108】
このため、拡底バケット1を回転させたときに胴体部132と下部スタビライザー部133との間に発生するせん断力や円弧部133a,・・・間に発生するせん断力に対して、充分に抵抗させることができる。
【0109】
このような拡幅翼部12,12を開く際に地盤から受ける抵抗は、拡底バケット1の上部に比べて下部の方が大きくなるため、この実施例3では下部スタビライザー部133のみを円環状の構成にしたが、これに限定されるものではなく、上部のスタビライザー4も下部スタビライザー部133と同様の構成にすることができる。
【0110】
なお、他の構成及び作用効果については、前記実施の形態又は他の実施例と略同様であるので説明を省略する。
【0111】
以上、図面を参照して、本発明の最良の実施の形態及び実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態及び実施例に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
【0112】
例えば、本実施の形態では、拡幅翼部12,12の上方までローラビット121,・・・を設けたが、これに限定されるものではなく、ローラビット121,・・・を着脱式に構成して、掘削する地盤が軟らかい場合は上方のローラビット121,・・・を外すなどして調整をおこなうことができる。
【0113】
また、前記実施の形態では円弧板状の拡幅翼部12について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば三角状部12bは骨組み構造であってもよい。さらに、本体部11についても等幅部12a,12a間を塞ぐ部分が円弧板状に形成されていればよく、それよりも上方は骨組み構造にしたり上方に向けて広がる三角形状の部分を省略したりすることができる。
【0114】
そして、前記実施の形態では、拡底バケット1の内部に減速装置3が収容される構成について説明したが、これに限定されるものではなく、例えば減速装置3とスタビライザー4が一体に構成されたものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】本発明の最良の実施の形態の拡底バケットの概略構成を説明する斜視図である。
【図2】拡底バケットの構成を説明する側面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】拡幅翼部の拡幅範囲を説明するための説明図である。
【図5】(a)はローラビットの掘削形状を説明するための拡大詳細図、(b)は切削板刃部の掘削形状を説明するための拡大詳細図である。
【図6】(a)は拡幅前の掘削孔に拡底バケットを配置した状態を示した説明図、(b)は拡幅時の拡底部と拡底バケットの状態を示した説明図である。
【図7】拡底バケットの排土方法を説明する斜視図である。
【図8】実施例1の開度調整プレートを配置した拡底バケットの構成を示した断面図である。
【図9】実施例2のガイド筒の構成を説明する図であって、(a)は(b)のC−C断面図、(b)は(a)のB−B線方向から見た側面図である。
【図10】実施例3の下部スタビライザー部を設けた拡底バケットの概略構成を説明する斜視図である。
【図11】実施例3の突出部の構成を上から見た平面図である。
【符号の説明】
【0116】
1 拡底バケット
11,11A 本体部
12 拡幅翼部
12a 等幅部
12b 三角状部
121 ローラビット
122 固定ビット
123 切削板刃部
124 着脱部
13,13A 突出部
133 下部スタビライザー部(スタビライザー)
14 伝達軸部
142 連結バー(連結部)
142a 補強カバー(連結部)
141 連結部材
15,15A ガイド筒
152,152A スライド溝
2 ケリーバ
3 減速装置
60a 軸部
60b 拡底部
7 開度調整プレート


【特許請求の範囲】
【請求項1】
杭の底部となる部分に軸部よりも直径を拡大させた拡底部を形成するための拡底バケットであって、
円筒状の本体部と、その本体部の直径を拡大させるように開放可能に形成された拡幅翼部とを備え、該拡幅翼部の側端部には回転自在のローラビットがその側端部の延設方向に間隔を置いて複数設けられていることを特徴とする拡底バケット。
【請求項2】
前記拡幅翼部の側端部の前記ローラビットとローラビットとの間には、固定ビットが固着されていることを特徴とする請求項1に記載の拡底バケット。
【請求項3】
前記拡幅翼部よりも下方の前記本体部の下端には突出部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の拡底バケット。
【請求項4】
前記拡幅翼部は、下端付近に幅が略一定の等幅部が形成されるとともにそれより上方が先細りする形状に形成されており、その等幅部の側端部は前記ローラビットと板状の切削板刃部とが切替可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の拡底バケット。
【請求項5】
前記本体部の内部には、アースドリルのケリーバからの力を受ける伝達軸部が前記本体部の上下方向に移動可能に配設されるとともに、その伝達軸部に屈曲自在に連結された連結部材の下端が前記拡幅翼部に接続されており、前記ケリーバ下端と前記伝達軸部との間には減速装置が介在されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の拡底バケット。
【請求項6】
前記伝達軸部は、前記本体部の内部に取り付けられたガイド筒にスライド自在に収容されており、そのガイド筒の上端に着脱自在に装着される開度調整プレートの高さによって前記伝達軸部の下方への移動量が設定されることを特徴とする請求項5に記載の拡底バケット。
【請求項7】
前記伝達軸部は前記本体部の内部に取り付けられたガイド筒にスライド自在に収容されるとともに、前記ガイド筒の周面には軸方向と交差する方向に傾いたスライド溝が形成されており、前記伝達軸部と前記連結部材との連結部を前記スライド溝から突出させてそれをガイドに前記伝達軸部を上下方向に移動させることを特徴とする請求項5又は6に記載の拡底バケット。
【請求項8】
前記突出部には、その直径を調整する円環状のスタビライザーが着脱自在に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の拡底バケット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−14007(P2008−14007A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−185902(P2006−185902)
【出願日】平成18年7月5日(2006.7.5)
【出願人】(595067442)システム計測株式会社 (27)
【Fターム(参考)】