説明

振動エネルギー吸収装置を有する建物

【課題】水平方向に間隔を置かれた一対の構造部材と、該構造部材の間に配置された振動エネルギー吸収装置とを有する建物において、地震時に前記振動エネルギー吸収装置が受ける損傷を小さくすること。
【解決手段】建物は、水平方向に間隔を置かれた一対の構造部材と、該構造部材の間に配置され、地震時に生じた振動エネルギーを吸収する振動エネルギー吸収装置とを含み、該振動エネルギー吸収装置は、前記水平方向に隣接する第1部材及び第2部材であって一方の構造部材に固定された第1部材と、他方の構造部材に固定された第2部材と、一端部が前記第1部材の上に配置され、他端部が前記第2部材の上に配置された第3部材と、一端部が前記第1部材の下に配置され、他端部が前記第2部材の下に配置された第4部材と、前記第3部材と前記第4部材とを連結する連結装置とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動エネルギー吸収装置を有する建物に関する。
【背景技術】
【0002】
建物には、水平方向に間隔を置かれた一対の耐震壁と、該耐震壁を連結する梁とを含むものがある。前記梁は、前記耐震壁の間に配置された、コンクリートからなる梁部材を有し、該梁部材は、その一端部が一方の耐震壁に、その他端部が他方の耐震壁にそれぞれ固定されている。前記建物が耐震性を維持できるようにするため、前記一方の耐震壁と前記他方の耐震壁との間の間隔は比較的短い。このため、地震時に各耐震壁が水平力を受けて前記一方の耐震壁が前記他方の耐震壁に対して上下方向に動いているとき、前記梁部材に比較的大きいせん断力が生じる。
【0003】
従来、前記梁部材の内部に、前記梁部材の前記一端部の上端部分と前記他端部の下端部分とを結ぶ第1直線の方向に伸びる第1鉄筋と、前記梁部材の前記一端部の下端部分と前記他端部の上端部分とを結ぶ第2直線の方向に伸びる第2鉄筋とが配置されているものがある(特許文献1参照)。このようにして前記梁になされた配筋はX形配筋と呼ばれている。前記第1鉄筋は、地震時に前記一方の耐震壁が前記他方の耐震壁に対して上方へ動いているときに両耐震壁から引張力を受けて変形し、前記第2鉄筋は、前記一方の耐震壁が前記他方の耐震壁に対して下方へ動いているときに両耐震壁から引張力を受けて変形する。これにより前記梁は、地震時に生じた振動エネルギーを吸収する。
【0004】
地震時における前記一方の耐震壁の前記他方の耐震壁に対する上方への動きは、前記第1鉄筋の前記引張力に対する抵抗により妨げられ、前記一方の耐震壁の前記他方の耐震壁に対する下方への動きは、前記第2鉄筋の前記引張力に対する抵抗により妨げられる。これにより、前記梁部材に生じるせん断力は低減される。しかし、前記水平力の大きさによっては、前記せん断力は比較的大きいものとなり、前記梁部材にひび割れが生じたり、前記梁部材が破壊されたりする恐れがある。このため、地震時に前記梁は損傷を受ける可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−214640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、水平方向に間隔を置かれた一対の構造部材と、該構造部材の間に配置された振動エネルギー吸収装置とを有する建物において、地震時に前記振動エネルギー吸収装置が受ける損傷を小さくすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一方の構造部材に固定された部材と、他方の構造部材に固定された部材とが別個の部材であり、地震時に前記一方の構造部材が前記他方の構造部材に対して動いているときに前記一方の構造部材に固定された部材が前記他方の構造部材に固定された部材に対して移動できるようにする。これにより、前記一方の構造部材に固定された部材及び前記他方の構造部材に固定された部材のそれぞれに生じるせん断力が小さくなるようにし、前記振動エネルギー吸収装置が受ける損傷を小さくする。
【0008】
本発明に係る建物は、水平方向に間隔を置かれた一対の構造部材と、該構造部材の間に配置され、地震時に生じた振動エネルギーを吸収する振動エネルギー吸収装置とを含み、該振動エネルギー吸収装置は、前記水平方向に隣接する第1部材及び第2部材であって一方の構造部材に固定された第1部材と、他方の構造部材に固定された第2部材と、一端部が前記第1部材の上に配置され、他端部が前記第2部材の上に配置された第3部材と、一端部が前記第1部材の下に配置され、他端部が前記第2部材の下に配置された第4部材と、前記第3部材と前記第4部材とを連結する連結装置とを有する。
【0009】
地震時に各構造部材が前記水平方向の力を受けて前記一方の構造部材は前記他方の構造部材に対して上下方向に動く。これにより前記第1部材は前記第2部材に対して移動する。このとき、前記第1部材は前記第3部材の前記一端部及び前記第4部材の前記一端部のそれぞれに対して動き、前記第2部材は前記第3部材の前記他端部及び前記第4部材の前記他端部のそれぞれに対して動く。これにより、前記第3部材は前記第4部材に対して動き、前記連結装置は前記第3部材及び前記第4部材から外力を受けて変形する。前記連結装置の変形により、地震時に生じた振動エネルギーが吸収される。これにより前記建物の振動を低減させることができる。
【0010】
前記一方の構造部材及び前記他方の構造部材にそれぞれ前記第1部材及び前記第2部材という別個の部材が固定されているため、前記一方の構造部材が前記他方の構造部材に対して動いているときに前記第1部材は前記第2部材に対して移動することができ、地震時に前記第1部材及び前記第2部材のそれぞれに生じるせん断力が比較的小さいものとなるようにすることができる。このため、一方の耐震壁及び他方の耐震壁にそれぞれ梁部材という1つの部材の一端部及び他端部が固定されている従来の場合のように前記梁部材に生じるせん断力が比較的大きいものとなることはない。前記第1部材及び前記第2部材のそれぞれに生じるせん断力が比較的小さいため、前記第1部材及び前記第2部材にひび割れが生じたり、前記第1部材及び前記第2部材が破壊されたりするのを防ぐことができ、前記振動エネルギー吸収装置が受ける損傷を小さくすることができる。
【0011】
前記連結装置は、上端部が前記第3部材の前記一端部に固定され、下端部が前記第4部材の前記一端部に固定された少なくとも1本の鋼製の第1棒状部材と、上端部が前記第3部材の前記他端部に固定され、下端部が前記第4部材の前記他端部に固定された少なくとも1本の鋼製の第2棒状部材とを有するものとすることができる。
【0012】
地震時に前記第1部材が前記第3部材の前記一端部及び前記第4部材の前記一端部のそれぞれに対して動き、前記第2部材が前記第3部材の前記他端部及び前記第4部材の前記他端部のそれぞれに対して動くことにより、前記第3部材の前記一端部と前記第4部材の前記一端部との間の間隔及び前記第3部材の前記他端部と前記第4部材の前記他端部との間の間隔のそれぞれが僅かに広がる。このとき、前記第1棒状部材は前記第3部材の前記一端部及び前記第4部材の前記一端部から引張力を受けて変形し、前記第2棒状部材は前記第3部材の前記他端部及び前記第4部材の前記他端部から引張力を受けて変形する。これにより前記振動エネルギーが吸収される。
【0013】
前記振動エネルギー吸収装置は、前記第3部材の前記一端部を上下方向に貫く少なくとも1つの一端側貫通穴と、前記第3部材の前記他端部を上下方向に貫く少なくとも1つの他端側貫通穴とを有し、前記第1棒状部材は前記一端側貫通穴を経て伸び、前記第2棒状部材は前記他端側貫通穴を経て伸びる。前記一端側貫通穴及び前記他端側貫通穴のそれぞれは、前記第3部材の上面から下方へ伸びる上方部分と、該上方部分から下方へ伸びる、前記上方部分より径が小さい下方部分とを有するものとすることができ、前記連結装置は、前記第1棒状部材の前記上端部及び前記第2棒状部材の前記上端部のそれぞれに螺合され、前記第3部材の上に配置されたナットと、前記一端側貫通穴及び前記他端側貫通穴のそれぞれの前記上方部分の中に配置され、前記第1棒状部材又は前記第2棒状部材を取り巻くバネとを有するものとすることができる。前記バネは前記上方部分の下方における前記第3部材に反力を取って前記ナットに上向き力を加える。
【0014】
ところで、地震時に前記第1棒状部材及び前記第2棒状部材のそれぞれが引張力を受けたとき、前記第1棒状部材及び前記第2棒状部材のそれぞれは、前記水平方向の力が比較的小さい場合に弾性変形し、前記水平方向の力が比較的大きい場合に塑性変形する。前記第1棒状部材及び前記第2棒状部材のそれぞれが塑性変形した場合、地震後の前記第1棒状部材及び前記第2棒状部材の長さはそれぞれ地震前の前記第1棒状部材及び前記第2棒状部材の長さより長くなる。このため、前記連結装置が前記バネを有しない場合、地震後の前記第4部材の位置が地震前の前記第4部材の位置より低くなる。これに対して、前記連結装置が前記バネを有する場合、前記バネが前記ナットに上向き力を加えることにより、地震後の前記第4部材の位置が地震前の前記第4部材の位置と同じ高さになるようにすることができる。
【0015】
前記連結装置は、上端部が前記第3部材に固定され、下端部が前記第4部材に固定された、厚さ方向が前記水平方向と直交する少なくとも1つの鋼製の板状部材を有するものとすることができる。地震時に前記第3部材が前記第4部材に対して動くことにより、前記板状部材は前記第3部材及び前記第4部材から外力を受けて変形する。これにより前記振動エネルギーが吸収される。
【0016】
前記第1部材の端部は前記第2部材の端部に隣接しており、前記振動エネルギー吸収装置は、前記第1部材の上面に設けられた、前記第1部材の長さ方向に伸びる、前記第1部材の端部において開放された第1溝と、前記第2部材の上面に設けられた、前記第2部材の長さ方向に伸びる、前記第2部材の端部において開放された第2溝と、前記第3部材に固定され、該第3部材から下方へ延びる、前記第3部材の幅方向に垂直な第1板状体であって一端部が前記第1溝に受け入れられ、他端部が前記第2溝に受け入れられた第1板状体と、前記第1溝の中に配置され、前記第1部材及び前記第1板状体の前記一端部のそれぞれに密着する第1密着部材と、前記第2溝の中に配置され、前記第2部材及び前記第1板状体の前記他端部のそれぞれに密着する第2密着部材とを有するものとすることができる。
【0017】
地震時に前記第1部材が前記第3部材の前記一端部及び前記第4部材の前記一端部のそれぞれに対して動いているとき、前記第1密着部材と前記第1板状体の前記一端部との間及び前記第3密着部材と前記第2板状体の前記一端部との間のそれぞれに摩擦抵抗が生じる。このため、前記連結装置の変形に加え、前記摩擦抵抗によっても前記振動エネルギーが吸収される。これにより前記建物の振動をより効果的に低減させることができる。
【0018】
前記振動エネルギー吸収装置は、前記第1部材の下面に設けられた、前記第1部材の長さ方向に伸びる、前記第1部材の端部において開放された第3溝と、前記第2部材の下面に設けられた、前記第2部材の長さ方向に伸びる、前記第2部材の端部において開放された第4溝と、前記第4部材に固定され、該第4部材から上方へ延びる、前記第4部材の幅方向に垂直な第2板状体であって一端部が前記第3溝に受け入れられ、他端部が前記第4溝に受け入れられた第2板状体と、前記第3溝の中に配置され、前記第1部材及び前記第2板状体の前記一端部のそれぞれに密着する第3密着部材と、前記第4溝の中に配置され、前記第2部材及び前記第2板状体の前記他端部のそれぞれに密着する第4密着部材とを有するものとすることができる。
【0019】
地震時に前記第2部材が前記第3部材の前記他端部及び前記第4部材の前記他端部のそれぞれに対して動いているとき、前記第2密着部材と前記第1板状体の前記他端部との間及び前記第4密着部材と前記第2板状体の前記他端部との間のそれぞれに摩擦抵抗が生じる。このため、前記連結装置の変形に加え、前記摩擦抵抗によっても前記振動エネルギーが吸収される。これにより前記建物の振動をより効果的に低減させることができる。
【0020】
本発明に係る建物は、上下方向に間隔を置かれた上方の梁及び下方の梁と、前記上方の梁と前記下方の梁との間に配置され、地震時に生じた振動エネルギーを吸収する振動エネルギー吸収装置とを含み、該振動エネルギー吸収装置は、上下方向に隣接する第1部材及び第2部材であって前記上方の梁に固定された第1部材と、前記下方の梁に固定された第2部材と、一端部が水平方向における前記第1部材の一方の側に配置され、他端部が前記第2部材の一方の側に配置された第3部材と、一端部が前記第1部材の他方の側に配置され、他端部が前記第2部材の他方の側に配置された第4部材と、前記第3部材と前記第4部材とを連結する連結装置とを有するものとすることができる。
【0021】
地震時に前記上方の梁及び前記下方の梁のそれぞれが水平方向の力を受けて前記上方の梁は前記下方の梁に対して動く。これにより前記第1部材は前記第2部材に対して水平方向に移動する。このとき、前記第1部材は前記第3部材の前記一端部及び前記第4部材の前記一端部のそれぞれに対して動き、前記第2部材は前記第3部材の前記他端部及び前記第4部材の前記他端部のそれぞれに対して動く。これにより、前記第3部材は前記第4部材に対して動き、前記連結装置は前記第3部材及び前記第4部材から外力を受けて変形する。前記連結装置の変形により前記振動エネルギーが吸収される。
【0022】
前記上方の梁及び前記下方の梁にそれぞれ前記第1部材及び前記第2部材という別個の部材が固定されているため、前記上方の梁が前記下方の梁に対して動いているときに前記第1部材は前記第2部材に対して移動することができる。このため、地震時に前記第1部材及び前記第2部材のそれぞれに生じるせん断力は比較的小さく、前記振動エネルギー吸収装置は損傷を受けにくい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、水平方向に間隔を置かれた一対の構造部材と、該構造部材の間に配置された振動エネルギー吸収装置とを有する建物において、一方の構造部材及び他方の構造部材にそれぞれ第1部材及び第2部材という別個の部材が固定されているため、地震時に前記一方の構造部材が前記他方の構造部材に対して上下方向に動いているときに前記第1部材は前記第2部材に対して移動することができ、地震時に前記第1部材及び前記第2部材のそれぞれに生じるせん断力を比較的小さいものとすることができる。このため、一方の耐震壁及び他方の耐震壁にそれぞれ梁部材という1つの部材の一端部及び他端部が固定されている従来の場合のように前記梁部材に比較的大きいせん断力が生じることはない。前記第1部材及び前記第2部材のそれぞれに生じるせん断力が比較的小さいため、前記第1部材及び前記第2部材にひび割れが生じたり、前記第1部材及び前記第2部材が破壊されたりするのを防ぐことができ、前記振動エネルギー吸収装置が受ける損傷を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1実施例に係る、地震前における建物の正面図。
【図2】本発明の第1実施例に係る、地震時における建物の正面図。
【図3】本発明の第2実施例に係る、地震前における建物の正面図。
【図4】本発明の第2実施例に係る、地震後における建物の正面図。
【図5】地震後に上方ナットをその下方へ移動させたときの建物の正面図。
【図6】本発明の第3実施例に係る、地震前における連結装置の縦断面図。
【図7】本発明の第3実施例に係る、地震後における連結装置の縦断面図。
【図8】本発明の第4実施例に係る建物の正面図。
【図9】図8の線9における建物の断面図。
【図10】本発明の第5実施例に係る建物の正面図。
【図11】本発明の第6実施例に係る建物の正面図。
【図12】図11の線12における建物の断面図。
【図13】本発明の第7実施例に係る建物の正面図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1に示すように、第1水平方向(図1における左右方向)に間隔を置かれた一対の構造部材10、12と、該構造部材の間に配置された、地震時に生じた振動エネルギーを吸収する振動エネルギー吸収装置14とを含む建物16が存在する。各構造部材10、12は耐震壁である。なお、各構造部材10、12が耐震壁である上記の例に代え、各構造部材10、12が柱でもよいし、一方の構造部材10が耐震壁であり、他方の構造部材12が柱でもよい。
【0026】
振動エネルギー吸収装置14は、前記第1水平方向に隣接する第1部材18及び第2部材20と、一端部22が第1部材18の上に配置され、他端部24が第2部材20の上に配置された第3部材26と、一端部28が第1部材18の下に配置され、他端部30が第2部材20の下に配置された第4部材32と、第3部材26と第4部材32とを連結する連結装置34とを有する。第1部材18は一方の構造部材10に固定されており、第2部材20は他方の構造部材12に固定されている。第2部材20は第1部材18から間隔を置かれている。第1部材18、第2部材20、第3部材26及び第4部材32のそれぞれはコンクリートからなる。
【0027】
第1部材18の一端部36は一方の構造部材10に結合されており、第2部材20の一端部38は他方の構造部材12に結合されており、第1部材18の他端部40は第2部材20の他端部42に隣接している。第1部材18の厚さは該第1部材の一端部36から他端部40に向けて漸減しており、第1部材18の形状は水平面に関して対称である。第2部材20の厚さは該第2部材の一端部38から他端部42に向けて漸減しており、第2部材20の形状は水平面に関して対称である。第3部材26の上面は水平であり、第3部材26の厚さは該第3部材の中央部から各端部22、24に向けて漸減している。第4部材32の下面は水平であり、第4部材32の厚さは該第4部材の中央部から各端部28、30に向けて漸減している。
【0028】
振動エネルギー吸収装置14は、それぞれが第1部材18を上下方向に貫く複数の第1貫通穴44と、それぞれが第2部材20を上下方向に貫く複数の第2貫通穴46とを有する。第1貫通穴44は第1部材18の長さ方向(図1における左右方向)に間隔を置いて第1部材18に設けられ、第2貫通穴46は第2部材20の長さ方向(図1における左右方向)に間隔を置いて第2部材20に設けられている。
【0029】
振動エネルギー吸収装置14は、それぞれが第3部材26の一端部22を上下方向に貫く複数の第3貫通穴(一端側貫通穴)48と、それぞれが第3部材26の他端部24を上下方向に貫く複数の第4貫通穴(他端側貫通穴)50とを有する。第3貫通穴48は第3部材26の長さ方向(図1における左右方向)に間隔を置いて第3部材26の一端部22に設けられ、各第3貫通穴48は第1貫通穴44に整列されている。第4貫通穴50は第3部材26の長さ方向に間隔を置いて第3部材26の他端部24に設けられ、各第4貫通穴50は第2貫通穴46に整列されている。
【0030】
振動エネルギー吸収装置14は、それぞれが第4部材32の一端部28を上下方向に貫く複数の第5貫通穴(一端側貫通穴)52と、それぞれが第4部材32の他端部30を上下方向に貫く複数の第6貫通穴(他端側貫通穴)54とを有する。第5貫通穴52は第4部材32の長さ方向(図1における左右方向)に間隔を置いて第4部材32の一端部28に設けられ、各第5貫通穴52は第1貫通穴44に整列されている。第6貫通穴54は第4部材32の長さ方向に間隔を置いて第4部材32の他端部30に設けられ、各第6貫通穴54は第2貫通穴46に整列されている。
【0031】
連結装置34は、それぞれが第1貫通穴44と第3貫通穴48と第5貫通穴52とを経て伸び、第1部材18と第3部材26の一端部22と第4部材32の一端部28とを連結する複数の鋼製の第1棒状部材56と、それぞれが第2貫通穴46と第4貫通穴50と第6貫通穴54とを経て伸び、第2部材20と第3部材26の他端部24と第4部材32の他端部30とを連結する複数の鋼製の第2棒状部材58とを有する。各第1棒状部材56の上端部は第3部材26の一端部22に固定され、各第1棒状部材56の下端部は第4部材32の一端部28に固定されている。各第2棒状部材58の上端部は第3部材26の他端部24に固定され、各第2棒状部材58の下端部は第4部材32の他端部30に固定されている。第1棒状部材56及び第2棒状部材58のそれぞれは、普通鋼からなるものでもよいし、普通鋼より降伏点が低いいわゆる低降伏点鋼からなるものでもよい。
【0032】
第1棒状部材56の前記上端部及び前記下端部のそれぞれにねじ山が形成されている。連結装置34は、第1棒状部材56の前記上端部に螺合され、第3部材26の一端部22の上に配置されたナット(上方ナット)60と、第1棒状部材56の前記下端部に螺合され、第4部材32の一端部28の下に配置されたナット(下方ナット)62とを有する。上方ナット60は第1棒状部材56の前記上端部を第3部材26の一端部22に固定し、下方ナット62は第1棒状部材56の前記下端部を第4部材32の一端部28に固定する。上方ナット60と第3部材26の一端部22との間及び下方ナット62と第4部材32の一端部28との間のそれぞれに座金64が配置されている。
【0033】
第2棒状部材58の前記上端部及び前記下端部のそれぞれにねじ山が形成されている。連結装置34は、第2棒状部材58の前記上端部に螺合され、第3部材26の他端部24の上に配置されたナット(上方ナット)66と、第2棒状部材58の前記下端部に螺合され、第4部材32の他端部30の下に配置されたナット(下方ナット)68とを有する。上方ナット66は第2棒状部材58の前記上端部を第3部材26の他端部24に固定し、下方ナット68は第2棒状部材58の前記下端部を第4部材32の他端部30に固定する。上方ナット66と第3部材26の他端部24との間及び下方ナット68と第4部材32の他端部30との間のそれぞれに座金70が配置されている。
【0034】
第1棒状部材56は、前記上端部及び前記下端部のそれぞれにねじ山が形成されている図1に示した例に代え、頭部と、ねじ山が形成された軸部とを有するボルト(図示せず)からなるものとすることができる。この場合、前記ボルトの前記頭部は第3部材26の一端部22の上又は第4部材32の一端部28の下に配置され、前記ボルトの前記軸部は第1貫通穴44と第3貫通穴48と第5貫通穴52とを経て伸びている。前記ボルトの前記頭部が第3部材26の一端部22の上に配置されている場合、前記ボルトの前記軸部に下方ナット62が螺合されている。前記ボルトの前記頭部が第4部材32の一端部28の下に配置されている場合、前記ボルトの前記軸部に上方ナット60が螺合されている。
【0035】
第2棒状部材58は、前記上端部及び前記下端部のそれぞれにねじ山が形成されている図1に示した例に代え、頭部と、ねじ山が形成された軸部とを有するボルト(図示せず)からなるものとすることができる。この場合、前記ボルトの前記頭部は第3部材26の他端部24の上又は第4部材32の他端部30の下に配置され、前記ボルトの前記軸部は第2貫通穴46と第4貫通穴50と第6貫通穴54とを経て伸びている。前記ボルトの前記頭部が第3部材26の他端部24の上に配置されている場合、前記ボルトの前記軸部に下方ナット68が螺合されている。前記ボルトの前記頭部が第4部材32の他端部30の下に配置されている場合、前記ボルトの前記軸部に上方ナット66が螺合されている。
【0036】
地震時に各構造部材10、12が前記第1水平方向の力を受けて振動することにより、一方の構造部材10は他方の構造部材12に対して上下方向に動く。図2に示すように、一方の構造部材10が他方の構造部材12に対して上方へ動いているとき、第1部材18は第2部材20に対して上方へ移動する。このとき、第1部材18は第3部材26の一端部22及び第4部材32の一端部28のそれぞれに対して動き、第2部材20は第3部材26の他端部24及び第4部材32の他端部30のそれぞれに対して動き、第3部材26の一端部22と第4部材32の一端部28との間の間隔及び第3部材26の他端部24と第4部材32の他端部30との間の間隔のそれぞれが僅かに広がる。これにより、第1棒状部材56は第3部材26の一端部22及び第4部材32の一端部28から引張力を受けて変形し、第2棒状部材58は第3部材26の他端部24及び第4部材32の他端部30から引張力を受けて変形する。第1棒状部材56及び第2棒状部材58のそれぞれの変形により、地震時に生じた振動エネルギーが吸収される。
【0037】
他方、一方の構造部材10が他方の構造部材12に対して下方へ動いているとき、第1部材18は第2部材20に対して下方へ移動する。このとき、第1部材18は第3部材26の一端部22及び第4部材32の一端部28のそれぞれに対して動き、第2部材20は第3部材26の他端部24及び第4部材32の他端部30のそれぞれに対して動き、第3部材26の一端部22と第4部材32の一端部28との間の間隔及び第3部材26の他端部24と第4部材32の他端部30との間の間隔のそれぞれが僅かに広がる。これにより、第1棒状部材56は第3部材26の一端部22及び第4部材32の一端部28から引張力を受けて変形し、第2棒状部材58は第3部材26の他端部24及び第4部材32の他端部30から引張力を受けて変形する。第1棒状部材56及び第2棒状部材58のそれぞれの変形により前記振動エネルギーが吸収される。
【0038】
一方の構造部材10及び他方の構造部材12にそれぞれ第1部材18及び第2部材20という別個の部材が固定されているため、一方の構造部材10が他方の構造部材12に対して上下方向に動いているときに第1部材18は第2部材20に対して移動することができ、地震時に第1部材18及び第2部材20のそれぞれに生じるせん断力を比較的小さいものとすることができる。このため、一方の耐震壁及び他方の耐震壁にそれぞれ梁部材という1つの部材の一端部及び他端部が固定されている従来の場合のように前記梁部材に生じるせん断力が比較的大きいものとなることはない。第1部材18及び第2部材20のそれぞれに生じるせん断力が比較的小さいため、第1部材18及び第2部材20にひび割れが生じたり、第1部材18及び第2部材20が破壊されたりするのを防ぐことができ、振動エネルギー吸収装置14が受ける損傷を小さくすることができる。
【0039】
第1貫通穴44が第1部材18の長さ方向に間隔を置かれ、第2貫通穴46が第2部材20の長さ方向に間隔を置かれている図1に示した例に代え、第1貫通穴44が第1部材18の幅方向(図1における奥行き方向)に間隔を置かれ、第2貫通穴46が第2部材20の幅方向(図1における奥行き方向)に間隔を置かれていてもよい。この場合、第3貫通穴48及び第4貫通穴50のそれぞれは第3部材26の幅方向(図1における奥行き方向)に間隔を置かれており、第5貫通穴52及び第6貫通穴54のそれぞれは第4部材32の幅方向(図1における奥行き方向)に間隔を置かれている。
【0040】
第1部材18及び第2部材20にそれぞれ複数の第1貫通穴44及び複数の第2貫通穴46が設けられている図1に示した例に代え、第1部材18及び第2部材20にそれぞれ1つの第1貫通穴44及び1つの第2貫通穴46が設けられていてもよい。この場合、第3部材26の一端部22及び他端部24にそれぞれ1つの第3貫通穴48及び1つの第4貫通穴50が設けられており、第4部材32の一端部28及び他端部30にそれぞれ1つの第5貫通穴52及び1つの第6貫通穴54が設けられており、連結装置34は、1つの第1棒状部材56と、1つの第2棒状部材58とを有する。なお、第1部材18と第2部材20との間の間隔は、地震時に第1部材18が第2部材20に対して移動しているときに第1部材18が第2部材20に接触しない程度の間隔であればよい。
【0041】
図3に示す例では、第3貫通穴48及び第4貫通穴50のそれぞれは、第3部材26の上面から下方へ伸びる上方部分72と、該上方部分から下方へ伸びる、上方部分72より径が小さい下方部分74とを有し、連結装置34は、第3貫通穴48及び第4貫通穴50のそれぞれの上方部分72の中に配置された、第1棒状部材56又は第2棒状部材58を取り巻くバネ76を有する。バネ76は上方部分72の下方における第3部材26に反力を取って上方ナット60、66に上向き力を加える。
【0042】
ところで、地震時に第1棒状部材56及び第2棒状部材58のそれぞれが引張力を受けたとき、第1棒状部材56及び第2棒状部材58のそれぞれは、前記第1水平方向の力が比較的小さい場合に弾性変形し、前記第1水平方向の力が比較的大きい場合に塑性変形する。第1棒状部材56及び第2棒状部材58のそれぞれが塑性変形した場合、地震後の第1棒状部材56及び第2棒状部材58の長さはそれぞれ地震前の第1棒状部材56及び第2棒状部材58の長さより長くなる。このため、上方部分72の中にバネ76が配置されていない場合、地震後の第4部材32の位置が地震前の第4部材32の位置より低くなる。この場合、第1棒状部材56及び第2棒状部材58のそれぞれが第3部材26に対して上方へ移動するように上方ナット60、66を回転させる。これにより地震前の第4部材32の高さまで第4部材32を持ち上げる。
【0043】
これに対して、上方部分72の中にバネ76が配置されている場合、バネ76が上方ナット60、66に上向き力を加えることにより、図4に示すように、地震後の第4部材32の位置が地震前の第4部材32の位置と同じ高さになるようにすることができる。この場合、図5に示すように、地震後、上方ナット60、66を第1棒状部材56又は第2棒状部材58に対して回転させることにより、上方ナット60、66をその下方へ移動させて、第1棒状部材56の前記上端部を第3部材26の一端部22に、第2棒状部材58の前記上端部を第3部材26の他端部24に、それぞれ固定する。なお、上方ナット60、66の下方への移動前、図4に示したように、上方ナット60、66が第3部材26から上方へ間隔を置かれた状態になるため、第1棒状部材56及び第2棒状部材58が塑性変形したことを目視により容易に確認することができる。
【0044】
図6、7に示す例では、連結装置34は、第1棒状部材56及び第2棒状部材58のそれぞれに取り付けられ、第3部材26の上方に配置された第1歯状部材118と、該第1歯状部材と第3部材26との間に配置され、該第3部材に反力を取って第1歯状部材118に上向き力を加える第1バネ120と、該第1バネ及び第1歯状部材118を取り囲む、第3部材26に固定されたケーシング122と、該ケーシングの内部に配置され、第1歯状部材118と噛み合う第2歯状部材124と、該第2歯状部材とケーシング122との間に配置され、該ケーシングに反力を取って第2歯状部材124を第1歯状部材118に押し付ける第2バネ126とを有する。
【0045】
この場合、地震時に第1棒状部材56及び第2棒状部材58のそれぞれが塑性変形したとき、第1バネ120が第3部材26に反力を取って第1歯状部材118に上向き力を加えることにより、第1棒状部材56及び第2棒状部材58のそれぞれは第3部材26に対して上方へ移動される。これにより第4部材32は持ち上げられ、地震後の第4部材32の位置は地震前の第4部材32の位置と同じ高さになる。このとき、第1歯状部材118は第2バネ126の押付け力に抵抗して第2歯状部材124に対して上方へ移動する(図7)。第2歯状部材124は、第1歯状部材118が第2歯状部材124に対して上方へ移動することを許すが、第1歯状部材118が第2歯状部材124に対して下方へ移動することを阻止する。このため、地震時に第1棒状部材56及び第2棒状部材58のそれぞれが第3部材26を介して引張力を受けることができるため、図5に示した例における、地震後の上方ナット60、66の下方への移動を要しない。
【0046】
第1歯状部材118は、図6に示した例では、筒状であり、第1歯状部材118の外面に、上下方向に隣接する複数の歯118aが設けられている。各歯118aは、第1歯状部材118の上端部から下端部に向けて第1歯状部材118の厚さが漸増するように第1歯状部材118の軸線に対して傾斜する第1面118bと、該第1面の下端部分と交差する、前記軸線に垂直な第2面118cとにより形成されている。第2歯状部材124は、第1歯状部材118の歯118aの形状と対応する形状を有する複数の歯を有する。
【0047】
図8に示す例では、第1棒状部材56及び第2棒状部材58のそれぞれを変形させることのみにより前記振動エネルギーを吸収する図1に示した例に代え、第1棒状部材56及び第2棒状部材58のそれぞれを変形させることに加え、摩擦抵抗を生じさせることにより前記振動エネルギーを吸収する。この場合、振動エネルギー吸収装置14は、図9に示すように、第3部材26の幅方向に間隔を置いて第3部材26に取り付けられた複数の第1板状体78と、第4部材32の幅方向に間隔を置いて第4部材32に取り付けられた複数の第2板状体80とを有する。各第1板状体78は、第3部材26の幅方向に垂直であり、第3部材26から下方へ延びている。各第2板状体80は、第4部材32の幅方向に垂直であり、第4部材32から上方へ延びている。第1板状体78及び第2板状体80のそれぞれは、例えば、鋼板である。
【0048】
振動エネルギー吸収装置14は、第1部材18の幅方向に間隔を置いて第1部材18の上面に設けられた複数の第1溝82と、第2部材20の幅方向に間隔を置いて第2部材20の上面に設けられた複数の第2溝84(図8)とを有する。各第1溝82は、第1部材18の長さ方向に伸びており、第1部材18の他端部40において開放されている。各第2溝84は、第2部材20の長さ方向に伸びており、第2部材20の他端部42において開放されている。第1板状体78の一端部は第1溝82に受け入れられ、第1板状体78の他端部は第2溝84に受け入れられている。
【0049】
振動エネルギー吸収装置14は、第1部材18の幅方向に間隔を置いて第1部材18の下面に設けられた複数の第3溝86と、第2部材20の幅方向に間隔を置いて第2部材20の下面に設けられた複数の第4溝88(図8)とを有する。各第3溝86は、第1部材18の長さ方向に伸びており、第1部材18の他端部40において開放されている。各第4溝88は、第2部材20の長さ方向に伸びており、第2部材20の他端部42において開放されている。第2板状体80の一端部は第3溝86に受け入れられ、第2板状体80の他端部は第4溝88に受け入れられている。
【0050】
振動エネルギー吸収装置14は、各第1溝82の中に配置された、第1部材18及び第1板状体78の前記一端部のそれぞれに密着する第1密着部材90と、各第2溝84の中に配置された、第2部材20及び第1板状体78の前記他端部のそれぞれに密着する第2密着部材92と、各第3溝86の中に配置された、第1部材18及び第2板状体80の前記一端部のそれぞれに密着する第3密着部材94と、各第4溝88の中に配置された、第2部材20及び第2板状体80の前記他端部のそれぞれに密着する第4密着部材96とを有する。
【0051】
第1密着部材90、第2密着部材92、第3密着部材94及び第4密着部材96のそれぞれは、弾性体又は粘弾性体からなる。第1密着部材90、第2密着部材92、第3密着部材94及び第4密着部材96のそれぞれは、例えば、天然ゴムやイソプレンゴムにカーボンブラックやシリカを配合することにより製造されたいわゆる高減衰ゴムからなるものとすることができ、また、アクリル高分子を含む粘弾性体からなるものとすることができる。第1密着部材90、第2密着部材92、第3密着部材94及び第4密着部材96のそれぞれは、弾性体又は粘弾性体からなる上記の例に代え、鋼材のような非弾性体からなるものでもよい。
【0052】
地震時に第1部材18が第3部材26の一端部22及び第4部材32の一端部28のそれぞれに対して動いているとき、第1密着部材90と第1板状体78の前記一端部との間及び第3密着部材94と第2板状体80の前記一端部との間のそれぞれに摩擦抵抗が生じる。また、第2部材20が第3部材26の他端部24及び第4部材32の他端部30のそれぞれに対して動いているとき、第2密着部材92と第1板状体78の前記他端部との間及び第4密着部材96と第2板状体80の前記他端部との間のそれぞれに摩擦抵抗が生じる。これにより前記振動エネルギーが吸収される。このため、振動エネルギー吸収装置14による前記振動エネルギーの吸収効果を高めることができる。
【0053】
なお、第3密着部材94及び第4密着部材96のそれぞれが弾性体又は粘弾性体からなる場合、地震時に第1部材18が第3部材26の一端部22及び第4部材32の一端部28のそれぞれに対して動くことにより、第1密着部材90及び第3密着部材94はそれぞれ第3部材26の一端部22及び第4部材32の一端部28から外力を受けて弾性変形する。また、第2部材20が第3部材26の他端部24及び第4部材32の他端部30のそれぞれに対して動くことにより、第2密着部材92及び第4密着部材96はそれぞれ第3部材26の他端部24及び第4部材32の他端部30から外力を受けて弾性変形する。このため、第1密着部材90、第2密着部材92、第3密着部材94及び第4密着部材96のそれぞれの弾性変形によっても前記振動エネルギーが吸収される。
【0054】
第3部材26及び第4部材32にそれぞれ複数の第1板状体78及び複数の第2板状体80が取り付けられている図9に示した例に代え、第3部材26及び第4部材32にそれぞれ1つの第1板状体78及び1つの第2板状体80が取り付けられていてもよい。この場合、第1部材18の前記上面及び第2部材20の前記上面にそれぞれ1つの第1溝82及び1つの第2溝84が設けられ、第1部材18の前記下面及び第2部材20の前記下面にそれぞれ1つの第3溝86及び1つの第4溝88が設けられている。
【0055】
第3部材26及び第4部材32にそれぞれ少なくとも1つの第1板状体78及び少なくとも1つの第2板状体80が取り付けられている上記の例に代え、第3部材26に少なくとも1つの第1板状体78が取り付けられ、第4部材32に第2板状体80が取り付けられていなくてもよい。この場合、第1部材18の前記上面及び第2部材20の前記上面にそれぞれ少なくとも1つの第1溝82及び少なくとも1つの第2溝84が設けられており、第1部材18の前記下面及び第2部材20の前記下面にそれぞれ第3溝86及び第4溝88が設けられていない。
【0056】
第3部材26に少なくとも1つの第1板状体78が取り付けられ、第4部材32に第2板状体80が取り付けられていない上記の例に代え、第3部材26に第1板状体78が取り付けられておらず、第4部材32に少なくとも1つの第2板状体80が取り付けられていてもよい。この場合、第1部材18の前記上面及び第2部材20の前記上面にそれぞれ第1溝82及び第2溝84が設けられておらず、第1部材18の前記下面及び第2部材20の前記下面にそれぞれ少なくとも1つの第3溝86及び少なくとも1つの第4溝88が設けられている。
【0057】
図10に示す例では、連結装置34は、第1棒状部材56と、第2棒状部材58とを有する図1に示した例に代え、板状部材(第1板状部材)98を有する。第1板状部材98の上端部は第3部材26に固定され、第1板状部材98の下端部は第4部材32に固定されている。第1板状部材98の厚さ方向は前記第1水平方向と直交している。第1板状部材98は、普通鋼からなるものでもよいし、普通鋼より降伏点が低いいわゆる低降伏点鋼からなるものでもよい。
【0058】
第1部材18の端面102及び第2部材20の端面104は相対している。振動エネルギー吸収装置14は、第1部材18の端面102に設けられた、上下方向に伸びる溝(第5溝)106と、第2部材20の端面104に設けられた、上下方向に伸びる溝(第6溝)108とを有する。第5溝106は第1部材18の上端部及び下端部のそれぞれにおいて開放され、第6溝108は第2部材20の上端部及び下端部のそれぞれにおいて開放されている。前記第1水平方向における第1板状部材98の一端部は第5溝106に受け入れられ、第1板状部材98の他端部は第6溝108に受け入れられている。
【0059】
地震時に第1部材18が第3部材26の一端部22及び第4部材32の一端部28のそれぞれに対して動き、第2部材20が第3部材26の他端部24及び第4部材32の他端部30のそれぞれに対して動くことにより、第3部材26は第4部材32に対して動く。このとき、第1板状部材98は第3部材26及び第4部材32から外力を受けて変形する。これにより前記振動エネルギーが吸収される。なお、連結装置34が第1板状部材98を有する場合において、第1板状部材98を変形させることに加え、図8に示したように、摩擦抵抗を生じさせることにより前記振動エネルギーが吸収されるようにしてもよい。
【0060】
図11、12に示す例では、連結装置34は、1つの板状部材98を有する図10に示した例に代え、相対する2つの板状部材(第2板状部材110及び第3板状部材112)を有する。第2板状部材110の上端部は、第3部材26の幅方向における第3部材26の一方の側に配置され、第3部材26に固定され、第2板状部材110の下端部は、第4部材32の幅方向における第4部材32の一方の側に配置され、第4部材32に固定されている。第3板状部材112の上端部は、第3部材26の幅方向における第3部材26の他方の側に配置され、第3部材26に固定され、第3板状部材112の下端部は、第4部材32の幅方向における第4部材32の他方の側に配置され、第4部材32に固定されている。第1部材18の他端部40及び第2部材20の他端部42のそれぞれは第2板状部材110と第3板状部材112との間に位置する。
【0061】
地震時に第1部材18が第3部材26の一端部22及び第4部材32の一端部28のそれぞれに対して動き、第2部材20が第3部材26の他端部24及び第4部材32の他端部30のそれぞれに対して動くことにより、第3部材26は第4部材32に対して動く。このとき、第2板状部材110及び第3板状部材112のそれぞれは第3部材26及び第4部材32から外力を受けて変形する。これにより前記振動エネルギーが吸収される。
【0062】
第2板状部材110の前記上端部及び前記下端部がそれぞれ第3部材26の前記一方の側及び第4部材32の前記一方の側に配置され、第3板状部材112の前記上端部及び前記下端部がそれぞれ第3部材26の前記他方の側及び第4部材32の前記他方の側に配置されているため、第2板状部材110及び第3板状部材112のそれぞれについて、目視による点検が容易であり、交換時の作業性に優れる。このため、振動エネルギー吸収装置14の維持管理がしやすい。なお、連結装置34は、第2板状部材110と第3板状部材112とを有し、第1板状部材98を有しない図11に示した例に代え、第2板状部材110と第3板状部材112とに加えて、第1板状部材98を有するものでもよい。また、連結装置34は、少なくとも1枚の板状部材98、110、112に加えて、第1棒状部材56及び第2棒状部材58を有するものでもよい。
【0063】
図13に示す例では、振動エネルギー吸収装置14は、前記第1水平方向に間隔を置かれた一対の構造部材10、12の間に配置されている図1に示した例に代え、前記上下方向に間隔を置かれた一対の構造部材(上方の梁114及び下方の梁116)の間に配置されている。
【0064】
この場合、第1部材18及び第2部材20は上下方向に隣接しており、第1部材18は上方の梁114に固定され、第2部材20は下方の梁116に固定されている。第3部材26の一端部22は水平方向における第1部材18の一方の側に配置され、第3部材26の他端部24は水平方向における第2部材20の一方の側に配置され、第4部材32の一端部28は水平方向における第1部材18の他方の側に配置され、第4部材32の他端部30は水平方向における第2部材20の他方の側に配置されている。第1貫通穴44及び第2貫通穴46はそれぞれ第1部材18及び第2部材20を水平方向に貫き、第3貫通穴48及び第4貫通穴50はそれぞれ第3部材26の一端部22及び他端部24を水平方向に貫き、第5貫通穴52及び第6貫通穴54はそれぞれ第4部材32の一端部28及び他端部30を水平方向に貫いている。
【0065】
地震時に上方の梁114及び下方の梁116のそれぞれが水平方向の力を受けて上方の梁114は下方の梁116に対して動いているとき、第1部材18は第2部材20に対して水平方向に移動する。このとき、第1部材18は第3部材26の一端部22及び第4部材32の一端部28のそれぞれに対して動き、第2部材20は第3部材26の他端部24及び第4部材32の他端部30のそれぞれに対して動き、第3部材26の一端部22と第4部材32の一端部28との間の間隔及び第3部材26の他端部24と第4部材32の他端部30との間の間隔のそれぞれは僅かに広がる。これにより、第1棒状部材56は第3部材26の一端部22及び第4部材32の一端部28から引張力を受けて変形し、第2棒状部材58は第3部材26の他端部24及び第4部材32の他端部30から引張力を受けて変形する。これにより、地震時に生じた振動エネルギーが吸収される。
【0066】
上方の梁114及び下方の梁116にそれぞれ第1部材18及び第2部材20という別個の部材が固定されているため、上方の梁114が下方の梁116に対して動いているときに第1部材18は第2部材20に対して移動することができる。このため、地震時に第1部材18及び第2部材20のそれぞれに生じるせん断力は比較的小さく、振動エネルギー吸収装置14は損傷を受けにくい。
【符号の説明】
【0067】
10、12 構造部材
14 振動エネルギー吸収装置
16 建物
18 第1部材
20 第2部材
26 第3部材
32 第4部材
34 連結装置
48 一端側貫通穴(第3貫通穴)
50 他端側貫通穴(第4貫通穴)
56 第1棒状部材
58 第2棒状部材
60、66 ナット(上方ナット)
72 上方部分
74 下方部分
76 バネ
78 第1板状体
80 第2板状体
82 第1溝
84 第2溝
86 第3溝
88 第4溝
90 第1密着部材
92 第2密着部材
94 第3密着部材
96 第4密着部材
98、110、112 板状部材
114 上方の梁
116 下方の梁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に間隔を置かれた一対の構造部材と、該構造部材の間に配置され、地震時に生じた振動エネルギーを吸収する振動エネルギー吸収装置とを含み、
前記振動エネルギー吸収装置は、前記水平方向に隣接する第1部材及び第2部材であって一方の構造部材に固定された第1部材と、他方の構造部材に固定された第2部材と、
一端部が前記第1部材の上に配置され、他端部が前記第2部材の上に配置された第3部材と、
一端部が前記第1部材の下に配置され、他端部が前記第2部材の下に配置された第4部材と、
前記第3部材と前記第4部材とを連結する連結装置とを有する、建物。
【請求項2】
前記連結装置は、上端部が前記第3部材の前記一端部に固定され、下端部が前記第4部材の前記一端部に固定された少なくとも1本の鋼製の第1棒状部材と、上端部が前記第3部材の前記他端部に固定され、下端部が前記第4部材の前記他端部に固定された少なくとも1本の鋼製の第2棒状部材とを有する、請求項1に記載の建物。
【請求項3】
前記振動エネルギー吸収装置は、前記第3部材の前記一端部を上下方向に貫く少なくとも1つの一端側貫通穴と、前記第3部材の前記他端部を上下方向に貫く少なくとも1つの他端側貫通穴とを有し、
前記一端側貫通穴及び前記他端側貫通穴のそれぞれは、前記第3部材の上面から下方へ伸びる上方部分と、該上方部分から下方へ伸びる、前記上方部分より径が小さい下方部分とを有し、
前記第1棒状部材は前記一端側貫通穴を経て伸び、
前記第2棒状部材は前記他端側貫通穴を経て伸び、
前記連結装置は、前記第1棒状部材の前記上端部及び前記第2棒状部材の前記上端部のそれぞれに螺合され、前記第3部材の上に配置されたナットと、前記一端側貫通穴及び前記他端側貫通穴のそれぞれの前記上方部分の中に配置され、前記第1棒状部材又は前記第2棒状部材を取り巻くバネとを有し、
前記バネは前記上方部分の下方における前記第3部材に反力を取って前記ナットに上向き力を加える、請求項2に記載の建物。
【請求項4】
前記連結装置は、上端部が前記第3部材に固定され、下端部が前記第4部材に固定された、厚さ方向が前記水平方向と直交する少なくとも1つの鋼製の板状部材を有する、請求項1に記載の建物。
【請求項5】
前記第1部材の端部は前記第2部材の端部に隣接しており、
前記振動エネルギー吸収装置は、前記第1部材の上面に設けられた、前記第1部材の長さ方向に伸びる、前記第1部材の端部において開放された第1溝と、前記第2部材の上面に設けられた、前記第2部材の長さ方向に伸びる、前記第2部材の端部において開放された第2溝と、
前記第3部材に固定され、該第3部材から下方へ延びる、前記第3部材の幅方向に垂直な第1板状体であって一端部が前記第1溝に受け入れられ、他端部が前記第2溝に受け入れられた第1板状体と、
前記第1溝の中に配置され、前記第1部材及び前記第1板状体の前記一端部のそれぞれに密着する第1密着部材と、前記第2溝の中に配置され、前記第2部材及び前記第1板状体の前記他端部のそれぞれに密着する第2密着部材とを有する、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の建物。
【請求項6】
前記第1部材の端部は前記第2部材の端部に隣接しており、
前記振動エネルギー吸収装置は、前記第1部材の下面に設けられた、前記第1部材の長さ方向に伸びる、前記第1部材の端部において開放された第3溝と、前記第2部材の下面に設けられた、前記第2部材の長さ方向に伸びる、前記第2部材の端部において開放された第4溝と、
前記第4部材に固定され、該第4部材から上方へ延びる、前記第4部材の幅方向に垂直な第2板状体であって一端部が前記第3溝に受け入れられ、他端部が前記第4溝に受け入れられた第2板状体と、
前記第3溝の中に配置され、前記第1部材及び前記第2板状体の前記一端部のそれぞれに密着する第3密着部材と、前記第4溝の中に配置され、前記第2部材及び前記第2板状体の前記他端部のそれぞれに密着する第4密着部材とを有する、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の建物。
【請求項7】
上下方向に間隔を置かれた上方の梁及び下方の梁と、前記上方の梁と前記下方の梁との間に配置され、地震時に生じた振動エネルギーを吸収する振動エネルギー吸収装置とを含み、
前記振動エネルギー吸収装置は、上下方向に隣接する第1部材及び第2部材であって前記上方の梁に固定された第1部材と、前記下方の梁に固定された第2部材と、
一端部が水平方向における前記第1部材の一方の側に配置され、他端部が前記第2部材の一方の側に配置された第3部材と、
一端部が前記第1部材の他方の側に配置され、他端部が前記第2部材の他方の側に配置された第4部材と、
前記第3部材と前記第4部材とを連結する連結装置とを有する、建物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−6867(P2011−6867A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−149542(P2009−149542)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(000001317)株式会社熊谷組 (551)
【Fターム(参考)】