説明

振動モータ

【課題】
ただ一つのコイルとして偏重心を大とした振動モータでも起動不良を生じることなく小型化と大振動発生とを実現できる振動モータを提供する。
【解決手段】
回転部の磁気コア及び駆動コイルを周方向に偏在させて径方向外周に配置した固定磁極部と対向させ,周方向に偏在した回転部磁気コアが最も強く固定磁極部と磁気的に結合する位置で回転部は停止し,且つその位置で最も強い回転力を得られる事を利用して最小限の磁気コア及び駆動コイルでも支障無く動作する振動モータを実現した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話の着信振動発生装置等に使用される振動モータ等に拘わる。
【背景技術】
【0002】
小型の無線電話呼び出し装置や携帯電話等に利用される偏平型振動モータとして,従来より、例えば回転子を偏心構造としたものが知られている(特開平6−205565号)。この振動モータは、環状に配置されて軸方向に着磁された4つの永久磁石からなる固定子と,この固定子の永久磁石と軸方向に対向する電機子を備えた回転子とからなり,回転子の電機子が電流が供給される3つのコイルを周方向に近接配置させて全体が扇状となるように構成することにより,回転子を偏心構造としたものである。
【0003】
これら3つのコイルに整流子を介して電流が供給されると、その電流の向きと永久磁石からの磁力線の向きとによってフレミングの左手の法則により回転子の回転方向が決定される。整流子を介した電流は、2つ以上のコイルに同時に供給され、少なくともそのうちの2つのコイルよる回転力は他のコイルの影響より勝るため,回転子の停止位置に拘わらず再起動が可能となる三相駆動方式である。
【0004】
このように3つのコイルを回転子の一方に偏らせた配置とすることで,回転子が回転すると偏荷重により振動を発生する。このような3コイルモータでは2つのコイルに流れる電流の向きが違う時でも,これらのコイルと相対する磁石の磁力方向が異なるように3つのコイルを配置することで,起動の方向を等しくすることができ,これにより回転子の静止位置に拘わらずモータ起動を可能にすることができる。
【0005】
ところで,携帯電話の普及,小型化に伴い,従来よりも更に小型の振動モータが望まれている。しかし,上述した従来の偏平型振動モータでは,周方向の一箇所に集中させるとは言うものの,三相コイルを周方向に並べて配置するので,回転子は周方向にある程度大きくならざるを得ず,大きな偏心効果が得られないことから小型化にも限界があった。
【0006】
そこで,小型でより高い偏心効果を得るため、回転子の電機子を1又は2個のコイルで構成した偏心振動モータも提案されている(特開平10−336983号)。このモータでは整流子が周方向に4分割され,対向する整流子分割体同士を共通接続すると共に,隣接する整流子分割体にそれぞれコイルの始端と終端とを接続し,90°配列されたブラシを経由して整流子分割体に電流を供給する。回転子が回転すると、回転角度90°毎にコイルに流れる電流の向きが反転し,コイルと対向する永久磁石のN/S極の吸引,反発作用と,コイルの磁気力とで回転子が回転を持続する。
【0007】
しかし,1コイル型のモータでは,コイルに流れる電流の向きが切り換わる点で,隣接する整流子分割体がブラシによって瞬間的に短絡される機構となっており,電源ショートになる。従って,このような電源ショートを生じさせないように,ブラシが何れの整流子にも接続されない無通電デッドポイントを設けるようにしている。ところが,このデッドポイントで回転子が停止した場合,次の回転時にコイルに電流が流れないため,起動不能になる。そこで,このデッドポイントでの回転子の停止を防止して,確実な起動を確保するため,電機子の一部に静止位置を規定する磁性体の鉄ピンを設け,鉄ピンが永久磁石に吸引される事を利用して回転子の停止位置を定め,起動不良を回避しようとしている。
【0008】
しかし,鉄ピンによる起動位置規定を行うとしても,鉄ピンの存在自体が回転負荷となるうえ,ブラシと整流子との間の経年的な接触摩擦抵抗の増加により,この摩擦抵抗が鉄ピンと永久磁石との間の磁気力による正規の静止位置への復帰力に勝ってしまうと,結局回転子はデッドポイントで静止してしまうことになる。また、摩擦力よりも充分大きな磁気力が得られるように鉄ピンを配置すると,今度は回転子を始動させようとするコイルの磁気力が鉄ピンと永久磁石との磁気力を下回り,起動不能という事態を招来する。このため,磁性体のピンにより静止位置へ規定させる方式では磁性体のピンやその配置の設定が難しいという問題がある。
【0009】
この点を改善すべく空間的な位相を同じくして2つのコイルを配置し,2つのコイルには電気的位相を異ならせて電流を供給する事にして電気的無通電区間(デッドポイント)を無くし,起動不良を改善した例がある(特開2002−186902)。
【0010】
しかし,この例では一カ所にコアレスコイルを集中させ,起動不良を改善できたが,整流子の複雑化を招来し,さらには常時コイルに電流を供給しない事で単相バイポーラ駆動に比して効率が悪いとの欠点がある。一方,更なる小型化と大きな振動発生出来る構造の可能性として上記の例のように軸方向に永久磁石とコアレスコイルとを対向させる構造と離れ,径方向にコイルと永久磁石とを対向させる構造例も提案されている(特開2005−199251)。
【0011】
特開2005−199251の例では図19に4極の場合の永久磁石,コイルの配置図を示すようにコイル7をコアに巻回し,コイル7を巻回したコアと中心角にして150度の位置に金属体6bを配置する構造である。金属体6bを配置する事でコイル7を巻回したコアがデッドポイントで停止する事を回避して起動不良の改善には成功している。
【0012】
しかしながら,モータとして動作を確実にするには,コイル7を巻回したコア及び金属体6bの永久磁石と対向する長さ及び両者間の距離と永久磁石諸元との関係は満たされるべき条件があるべきだが,それらに関する具体的な記述に欠ける。また,請求項の内容を具体化した図15の例から見ても,回転子の角度位置によりかなりの区間で回転力を発生しない,或いは逆方向の回転力を発生すると思われ,特開2005−199251は技術提案として完成していないと結論づけざるを得ない。
【0013】
またさらに,回転部のコイル7を巻回したコア及び金属体6bはそれらの中心角が図15の例では150度の角度と広過ぎ,重心を偏在させる回転子構造として不十分で振動発生モータとして効率が良いとは考えられない。
【0014】
【特許文献1】特開平06−205565 扁平コアレス振動モータ
【特許文献2】特開平10−336983 偏平モータの電機子構造
【特許文献3】特開2002−186902 直流モータ及びその電機子構造
【特許文献4】特開2005−199251 扁平型振動発生モータ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたもので、より一層の小型化を図りつつ、十分な振動が得られ、しかもデッドポイントによる起動不能が発生することがない振動モータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
請求項1の発明による振動モータは,径方向に延びる磁気コア及び磁気コアに巻回された駆動コイルとより成り,駆動コイルの巻回された磁気コアは一つのみとして大部分の質量を周方向に偏在させた回転部と,回転部の磁気コア端と微小間隙を介して径方向外周側に対向する固定磁極部と,駆動コイルに給電する為の整流子及びブラシとを主要部とする振動モータに於いて,固定磁極部は隣りあう磁極が互いに径方向の磁化が異なる2N個の磁極で構成され,固定磁極部から微小間隙を介して対向する磁気コア端に流入した磁束は駆動コイルより内周側となる磁気コア部分及び或いはその延伸部から空間を介して固定磁極部に環流させる構造とし,整流子及びブラシは回転部が所定の回転位置に達した点で駆動コイルに順次反転する電流を供給して回転部を回転駆動させる事を特徴とする。
【0017】
請求項2の発明による振動モータは,請求項1に於いて,磁気コアに巻回された駆動コイルはただ一つとして,整流子は2N個の分割された導電片を有し,整流子及びブラシは駆動コイルの巻回された磁気コア端が固定磁極部の各磁極とほぼ正対した位置で駆動コイルへの電流方向が反転するよう配置構成された事を特徴とする。
【0018】
駆動コイル及び磁気コアは一つであるが,駆動方式は単相バイポーラ駆動の変形であり,常にコイルを最大限に活用して駆動効率は良い。
【0019】
請求項3の発明による振動モータは,請求項1に於いて,同一の磁気コアに第1及び第2の駆動コイルが巻回され,整流子及びブラシは第1及び第2の駆動コイルに電気的位相を異ならせて電流をそれぞれ供給するよう構成して回転部を回転駆動させる事を特徴とする。
【0020】
請求項2に示す単相バイポーラ駆動では電流切り替え点前後で駆動コイルに電流が供給されない瞬間があり,複数の駆動コイルに分割して無通電の瞬間を回避させる方法である。しかし,請求項2の方式に比して駆動コイルには通電しない区間があるので全体の駆動効率は低下する。
【0021】
請求項4の発明による振動モータは,請求項1に於いて,駆動コイルの巻回された磁気コアの断面積は駆動コイルより内周側で大となる部分或いは磁気コア分枝を有し,磁気コア端より流入した磁束が駆動コイルと鎖交後に固定磁極部に環流する経路の磁気抵抗を小とした事を特徴とする。
【0022】
回転部の磁気コアの大部分を欠いて従来構造のモータのように磁束の経路を磁気コアのみで構成する事無く,軸方向上下の磁性体及び空間を主な磁束環流経路とした。扁平構造の振動モータでは上下の磁性体との間隙が小であるので十分に実用可能な磁束環流路と出来ている。
【0023】
請求項5の発明による振動モータは,請求項1に於いて,主要部を収納支持するハウジングを磁性体で構成し,回転部磁気コア端と固定磁極部間の微小間隙長をdとして固定磁極部とハウジングとは軸方向にd以上の間隙を持つよう配置した事を特徴とする。
【0024】
ハウジングを磁束環流路として磁性体で構成するが,固定磁極部からの磁束を有効に磁気コア端に流入させる為に固定磁極部からの漏洩磁束がハウジングで磁気短絡を生じさせ難いよう軸方向の間隙を規定する。
【0025】
請求項6の発明による振動モータは,請求項1に於いて,固定磁極部は未着磁部と着磁部を周方向に交互に有し,未着磁部を間に置いて隣りあう着磁部が互いに磁化方向が異なるよう構成され,未着磁部の周方向長さgを2d以上として磁束が有効に磁気コア端へ流入できる構成とした事を特徴とする。
【0026】
磁気コアを固定磁極部に微小間隙で対向させた場合には固定磁極部の着磁部,未着磁部,磁気コアの対向部の形状寸法は駆動回転動作に大きな影響を及ぼし,厳密な規定が必要である。請求項6では磁束が有効に磁気コア端へ流入できるように未着磁部の寸法を規定する。
【0027】
請求項6に規定する着磁部及び未着磁部の本来な意味は磁気コアの対向する内周面に於いて,着磁部とは面磁荷が現れて磁束が漏洩する領域であり,未着磁部とは面磁荷が現れずに磁束漏洩が少ない領域を示す。着磁方法による構成の固定磁極部例は図8を用いて例示している。
【0028】
請求項7の発明による振動モータは,請求項1に於いて,駆動コイルの巻回された磁気コアが固定磁極部と微小間隙を介して対向する部分である磁気コア端の周方向角度長は固定磁極部着磁部の周方向角度長Mとほぼ等しく設定し,駆動コイルへの電流切り替え点近傍に於いて回転力が小となる区間を短くする事を特徴とする。
【0029】
請求項8の発明による振動モータは,請求項1に於いて,固定磁極部着磁部の周方向角度長をM,未着磁部の周方向角度長をGとして,駆動コイルの巻回された磁気コア端の周方向角度長はほぼM+2Gとなるよう設定する事を特徴とする。
【0030】
請求項9の発明による振動モータは,請求項1に於いて,駆動コイルの巻回された磁気コア端の形状を周方向に非対称に構成し,前記磁気コア端と固定磁極部との間の磁気抵抗を周方向に非対称とした事を特徴とする。
【0031】
磁気コア端と固定磁極部との間の磁気抵抗を周方向に非対称とするには磁気コア側端の厚みを径方向或いは軸方向に変える,磁気コア端と固定磁極部間の間隙が周方向に変わるよう磁気コア端を周方向にリセスさせる等の手段がある。磁気コア端の磁気的な中心をずらす事により電流切り替え直後でも回転力を得る,或いは停止位置を制御する目的がある。
【0032】
請求項10の発明による振動モータは,請求項1に於いて,ハウジング,回転軸,軸受を磁性体で構成し,さらに軸受部の潤滑オイルを磁性流体オイルとし,磁気コア端から流入した磁束の一部を回転軸,軸受,ハウジングを介して駆動用マグネットに環流させる構成とし,軸受及び回転軸間間隙を流れる磁束により軸受内に磁性流体オイルを保持させて軸受寿命を大にした事を特徴とする。
【0033】
請求項11の発明による振動モータは,請求項1に於いて,駆動コイルの巻回された磁気コアは第1磁気コアとして駆動コイルより内周側で分岐して外径方向に向かう第2磁気コアを有し,第2磁気コア端は固定磁極部と径方向に微小間隙を介して対向すると共に第2磁気コア端の周方向角度長は第1磁気コア端の周方向角度長以下に構成した事を特徴とする。
【0034】
回転部を磁気的に大きく非対称に構成する為に第2磁気コアを設ける。第2磁気コアが回転力発生に寄与する事は期待しないが,ハウジングと対向する面積を大として磁束環流を容易にする事は期待できる。
【0035】
請求項12の発明による振動モータは,請求項11に於いて,固定磁極部と径方向に対向する第1磁気コア端及び第2磁気コア端の占める周方向角度長を2M+G以下として偏重心を大にした事を特徴とする。
【0036】
第1磁気コア端及び第2磁気コア端の占める周方向角度長を2M+Gした場合には単相バイポーラ駆動で第2磁気コア端は回転力発生に最大限の寄与を期待できる。その半面で回転部を磁気的に非対称とさせる本来の目的は損なわれるので停止位置は定まりにくくなる。第2磁気コア端を最小限の大きさとして偏重心の度合いも大として実現させる。
【0037】
請求項13の発明による振動モータは,請求項11に於いて,第1磁気コア端の周方向角度長を固定磁極部着磁部の周方向角度長Mとほぼ等しくし,第1磁気コア端と第2磁気コア端間空隙の周方向角度長を固定磁極部未着磁部の周方向角度長Gとほぼ等しくなるよう構成した事を特徴とする。
【0038】
電流切り替え前後に於ける回転力不発生区間を最小にし,第2磁気コア端を回転力発生に寄与させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
以下、図面に示した実施例を参照して、本発明の振動モータを詳細に説明する。
【実施例1】
【0040】
本発明による第一実施例を図1から図8までを用いて説明する。図1は第一実施例に係る偏平型振動モータを示す分解斜視図,図2は固定磁極部と回転部の諸元を示す平面図,図3は磁束分布の例を示す平面図,図4及び図5は回転部の停止位置を説明する為の平面図,図6及び図7は回転部の回転駆動原理を説明する為の平面図,図8は固定磁極部の構成例を示す平面図である。
【0041】
図1に於いて,番号19は固定軸,番号18は磁性体より成るベースを示して固定軸19はベース18に固定される。番号1bはブラシ16及びリード1aが固定されたブラシ板でベース18に固定される。番号11は駆動用マグネットが配置された固定磁極部でカバー17に固定される。カバー17は最終的にはベース18に固定され,振動モータの固定部を構成する。番号14は駆動コイル,番号12は駆動コイルの巻回された磁気コアの固定磁極部11と対向する部分である磁気コア端,番号13は磁気コアの内周部分から分岐した磁気コア分枝をそれぞれ示す。さらに番号15は整流子を,番号1cは固定軸19が挿通する軸受部をそれぞれ示す。番号14,12,13,15,1cとで回転部を構成している。
【0042】
図2にはカバー17,駆動用マグネットが配置された固定磁極部11,回転部を示している。固定磁極部11は径方向に磁化された着磁部21と未着磁部22とで構成され,未着磁部22を間に挟んで互いに異なる方向に磁化された着磁部21が周方向に並ぶ構造である。駆動用マグネットは着磁部21と同意味で,図中のN,Sは固定磁極部11の内周側表面に現れた着磁部21の磁化方向を示す。着磁部21の周方向角度長はM,未着磁部22の周方向角度長はG,未着磁部22の周方向長さをgとしている。
【0043】
磁気コア端12は微小間隙dだけ離れて固定磁極部11に対向し,磁気コア端12の周方向角度長をLとして本実施例では着磁部21の周方向角度長Mとほぼ等しい値としている。磁気コア分枝13は磁気コアの内周側より分岐しているが,その先端は磁気コア端12より内周側にリセスしている。磁気コア分枝13の先端を固定磁極部11と微小間隙dに等しくなる程度に近接させると磁気コア端12との間隔,磁気コア分枝13の先端形状がモータの回転動作に影響を及ぼし,厳密に規定しなければならないが,磁気コア分枝13の先端を内周側にリセスさせる事で磁気コア分枝13の先端形状の規定を緩やかにしている。
【0044】
番号14は磁気コアに巻回された駆動コイルを示し,駆動コイル及び磁気コアは判りやすいように断面図で示している。さらに番号15は整流子を示し,これも判りやすいように平面的に示している。
【0045】
駆動コイル14を巻回した磁気コアに於いて,固定磁極部11と対向する磁気コア端12の形状寸法選定は効率の良くモータを駆動する為に重要であるが,駆動コイル14を巻回する部分は磁気的に飽和をしない程度に断面積を小にしている。これは磁気コアの質量の大きい部分である磁気コア端12を最外周部に配置して偏重心の度合いを大きくし,大きな振動を得る結果となっている。
【0046】
図3は着磁部21をN極32,33,S極31と区分して表し,磁気コア端12及び磁気コア分枝13に着磁部21から流入する磁束34をモデル的に示す。磁束34はS極31から対向している磁気コア端12に微小間隙dを越えて流入し,磁気コア分枝13からN極32,33,未着磁部22を通ってS極31の外周側に環流する。また,図1で示したように軸方向の上下にはカバー17,ベース18が存在し,磁気コア分枝13からカバー17,ベース18を介しても磁束がS極31の外周側に環流する。
【0047】
固定磁極部11を周方向に互いに異なる方向に磁化して着磁部21を形成すると,異なる方向に磁化された着磁部21間には中間状態を含む未着磁部22が現れる。図3で容易に判明するように着磁部21からの磁束を有効に磁気コア端12に流入させる事がモータ動作の効率確保の為に重要であるが,第一の実施例では未着磁部22の周方向長さgを2d以上として未着磁部22に於ける磁気抵抗を着磁部21−磁気コア端−着磁部21の磁気抵抗より大に設定をする。また,固定磁極部11と上下のカバー17,ベース18との間隔はd以上に設定して着磁部21からの磁束がカバー17,ベース18により短絡し難い構造とする。
【0048】
図4及び図5を用いて回転部の停止位置を説明する。図4に於いて,整流子15は4個の導体片より構成され,2本のブラシ16は周方向に90度の角度分離れた位置で整流子15に接触する様子を示す。整流子15の隣接する導体片にコイル14の始端,終端それぞれが接続される。
【0049】
磁気コア端12が異極の磁極間に跨って磁気的に短絡させる条件が最も安定な停止位置であり,図4ではS極31とN極32間に磁気コア端12が跨って磁気的に短絡している様子を示す。番号43はN極32からS極31への磁束を示す。
【0050】
磁気コア端12端形状が左右対称である場合にS極31,N極32の中間位置44が磁気コア端12中心の停止位置である。本実施例では磁気コア端12の両側端41,42の径方向厚みが異なり,側端41からS極31への磁気抵抗が側端42よりN極32への磁気抵抗より大であるので前記位置44より僅かにずれた位置45が安定な停止位置となる。
【0051】
図5は磁気コア端12がS極31に正対して停止する可能性を示す。磁気コア端12がS極31に正対した位置52では磁束51が磁気コア端12及び磁気コア分枝13に左右対称に分布して磁気的な安定点となる。ただ,図4の場合に比して安定条件はクリティカルで実際に停止位置となる可能性は殆ど無い。本実施例ではさらに磁気コア端12の左右側端41,42の形状を変える事で左右側端41,42とS極31へとの間の磁気抵抗を変え,磁気的な安定点を位置52から位置53にずらし,図4で示す停止位置に誘導している。本実施例では磁気コア端12の両側端41,42の径方向厚みを変えたが,磁気コア端12の周方向左右で軸方向厚みを変える,或いは固定磁極11との微小間隙を変える事でも同様な効果を得る事が出来る。
【0052】
図6,図7を用いて回転部の回転駆動原理を説明する。図6は図4に示した停止位置からの回転起動を示し,この位置で整流子15からコイル14には磁気コア端12がN極に磁化される方向の電流を供給する。N極に磁化された磁気コア端12はN極32とは反発し,S極31とは引き合って回転子を矢印61の方向に回転起動する。磁気コア分枝13はS極となるが,S極31とは距離が大であり,大部分の磁束は他の経路例えば上下のカバー17,ベース18へ向かうので回転力を損なう事は無い。
【0053】
図7では磁気コア端12がS極31に正対し,コイル14に流れる電流は反転して磁気コア端12の磁化はN極からS極に変化する。この位置は磁気的な中性点に近く回転力は得られ難いが,既に回転運動を始めているので回転は継続する。本実施例では磁気的な中性点は図5で示した53であるので電流反転直後でも若干の回転力は得られる構成である。
【0054】
本実施例で固定磁極部11は円環状の永久磁石素材を軸方向に着磁した図8(a)に示す構造を用いた。番号81,82で示すように径方向に逆方向となる磁化が着磁部21に形成され,互いに逆方向の磁化を有する着磁部21間に未着磁部22が存在している。点線83は漏洩磁束を示す。
【0055】
本発明で用いた固定磁極構造とは異なった磁化方向を持つ構造もまた使用可能であり,図8(b)にその例を示す。円環状の永久磁石素材を内周面側から着磁の為の強磁界を印可し,番号86,87で示すように周方向に交互に方向を変えて磁化した構造である。磁化方向が反転する領域84で内周面に磁荷が現れ,この領域84が第一の実施例で着磁部21とした領域に相当し,周方向に磁化されて内周面に磁荷が現れない領域85が第一の実施例での未着磁部22に相当する。点線88は漏洩磁束を示す。
【0056】
本発明を第一の実施例を用いて具体的な構成及び動作原理を説明した。本実施例では磁気コアを有するので固定磁極と磁気的に最も結合が強い位置で常に停止し,しかもその点での回転駆動力は最大となるのでコアを有する駆動コイルを一つ有するだけのシンプルな構造で起動不良を起こすことなく回転させる事が出来る。固定磁極部として4極の例を挙げたが,回転子の周方向に占める角度は90度以下に,6極なら更にその値を60度以下に設定出来,回転子の偏芯度合いを大として小径の振動モータでも大きな振動を得る事が出来る。
【0057】
第一の実施例に於いて,磁気コア端12より流入した磁束に関しては駆動コイル14より内径側での磁気コア部分に磁気コア分枝13を設け,空中を介して着磁部21の外周側に環流させる構造とし,固定磁極部11には磁気コア端12のみが対向するとして荷重の偏芯度合いを最大限に確保できた。この構成では磁気コア分枝13から固定磁極11への磁束環流路に於ける磁気抵抗を可能な限り小にする事が重要である。本実施例で左右に磁気コア分枝13を広げて磁束を拡散しやすくする構成したが,さらに磁気コア分枝13の軸方向への厚みを大にしてカバー17及びベース18との間隙を小にする事も効果がある。
【実施例2】
【0058】
図9及び図10を用いて本発明の第二の実施例を説明する。第一の実施例で駆動コイルは磁気コアに巻回され,磁気コアと固定磁極部11の着磁部21との間の磁気的結合は強固で停止位置は常に図4に示した位置となり,起動不良の懸念は無い。ただ,第一の実施例に於けるモータ駆動方式は単相バイポーラ駆動の変形であり,駆動コイルへの電流切り替え時には無通電区間が現れ,回転に不要な振動が現れる可能性もある。第二の実施例では第一の実施例に於ける駆動コイルを2つに分割して常に何れかの駆動コイルには電流が供給される実施例を説明する。
【0059】
図9に於いて,図2に示した駆動コイル14を2つの駆動コイル91,92で置き換える。同図では2つのコイルを並べて示したが,磁気コア状上の内径部及び外径部に分かれて発生力への寄与の差が懸念される場合にはバイファイラー巻きとして空間上の位置を全く同一に出来る。整流子93は6個の導体片より構成し,ブラシ16は第一の実施例と同様に周方向に90度の間隔を持って整流子93に接触する構成としている。
【0060】
図10(a)は二つの駆動用コイル91,92と整流子93の各導体片との間の結線方法を示す。整流子93に於いて対角に位置する導体片同士はそれぞれ接続され,駆動コイル91,92それぞれの一端は共に整流子93の一つの導体片に接続され,駆動コイル91,92の他端は整流子93の他の導体片にそれぞれ接続される。
【0061】
図10(b)は磁気コア端12が回転移動して固定磁極部11の各部と対向した位置に於いて駆動コイル91,92に供給されるそれぞれ電流波形101,102を示す。横軸は磁気コア端12の中心の位置を示す。同図に於いては,固定磁極部11のほぼ半周分を示すが,半周分を6分割して駆動コイル91,92それぞれに位相の異なる電流が供給される。未着磁部22に磁気コア端12が対向した位置近傍では2つの駆動コイル91,92双方に電流が供給されて最大の回転力を得,着磁部であるS極31.N極32と正対した位置では駆動用コイル91,92の何れかにのみ電流が供給される。
【実施例3】
【0062】
図11は本発明の第三の実施例を示す図である。第一の実施例とは磁気コア端寸法が異なるのみであるので磁気コア端の形状寸法を中心に説明する。同図に示すよう磁気コア端12’の周方向角度長は,着磁部21(S極31)の周方向角度長をM,未着磁部22の周方向角度長をGとしてM+2Gにほぼ等しい値とし,さらに磁気コア端12’の両側端111,112の径方向厚みを変えてある。
【0063】
このように磁気コア端12’の寸法を設定する事で磁気コア端12’は着磁部21に正対した位置でもその両側の未着磁部22を超えて他の着磁部21に近接しており,停止直前で回転子の回転エネルギーが小さくなると未着磁部22両側の着磁部21を磁気コア端12’が磁気的に短絡する位置で停止する事になる。
【0064】
第三の実施例では回転子の周方向に占める角度が第一の実施例に比して若干大となって偏芯度合いを損なうが,より確実に回転部の停止位置を図4に示す位置に出来る効果がある。
【実施例4】
【0065】
図12は本発明の第四の実施例を示す。第四の実施例は磁気コア端12から流入した磁束の一部を軸受部,固定軸を介して環流させ,磁性流体オイルを軸受部に保持させる事で軸受部の信頼性を高めた振動モータである。第一の実施例とは軸受部の構造のみが異なり,他の部分は同じであるので軸受部近傍のみを示して説明する。
【0066】
同図に於いて,固定軸19は磁性体,例えば鉄を主体或いは磁性を持つステンレススチールで構成し,軸受部122は磁性体粉を一部の成分として混入した焼結合金と磁性流体オイル123とで構成する。
【0067】
磁気コアの内周部分121から流入した磁束の経路は軸受部122から固定軸19に点線124で示すような経路である。軸受部122から固定軸19間の磁束の経路に磁性流体オイル123は引きつけられて保持され,固定軸19の上方或いは下方へ流出し難くなる。
【0068】
軸受部122の潤滑オイルは時間経過につれて蒸発或いは流出等で減少し,軸受部の摩耗が進行して軸受としての機能が損なわれる。本実施例では図12に示すように軸受部122と固定軸19との間に間隙大の部分125と間隙小の部分126を有する構造としてあるので,磁束124の経路は間隙小の部分126に集中し,磁性流体オイル123は磁束124の経路である間隙小部分126に集中させて軸受の機能を持続させる。
【実施例5】
【0069】
図13から図18を用いて本発明の第五の実施例を説明する。第一の実施例では磁気コア端12の周方向角度長Lを着磁部21の周方向角度長Mとほぼ等しくしたが,図5に示すような停止位置の可能性を回避する為に磁気コア端12の両側端の形状を非対称とした。第五の実施例は第一の実施例に於いて磁気コア分枝を延伸させて固定磁極部11と微小間隙dで対向させた構造で,起動不良対策を更に完全にする。第五の実施例は第一の実施例とは回転部構成が異なるのみであるので異なる部分に集中して説明する。
【0070】
図13に於いて,駆動コイル14の巻回された磁気コアを第1磁気コアとしてその内周側から第2磁気コア131が分岐されて固定磁極部11と微小間隙dで対向する。第1磁気コア端12の周方向角度長は着磁部21の周方向角度長Mに,第1磁気コア端12と第2磁気コア端131間の磁気的な空隙の周方向角度長Cは未着磁部22の周方向角度長Gにそれぞれほぼ等しく設定する。第2磁気コア端131の周方向角度長KはM以下の適当な値とする。本実施例ではKをGより若干小さめの値に設定しているが,第2磁気コア端131が磁気的に飽和しない程度に小さな値が荷重の偏芯度を高めるに効果がある。第2磁気コア端131の周方向角度長Kは着磁部21の周方向角度長M以下に設定するのが望ましく,KをMに近い値に設定すれば第2磁気コア端131の回転力への寄与を大に出来る。しかし,荷重の偏芯度合いは小となるので目標仕様に合わせてKの値を選定する。
【0071】
図14及び図15を用いて第五の実施例に於ける回転部の停止位置を説明する。図14は第1磁気コア端12がS極31に正対する位置近傍での安定点を示す。第2磁気コア端131が存在しない場合には番号141で示すS極31中心がクリティカルではあるが,安定点と成り得る。第2磁気コア端131が存在する場合には番号141で示す位置よりずれた番号142で示す位置がS極31近傍に於ける停止点になり得る。しかし,第2磁気コア端131による非対称性が大である為,番号142で示す位置は番号141で示す位置から大きく離れ,第1磁気コア端12がN極32に近づくので図15に示す停止位置に移行する。
【0072】
図15に於いて,第1磁気コア端12及び第2磁気コア端131の磁気的な中心点は第2磁気コア端131方向にずれるので,第1磁気コア端12中心がS極31,N極32間の中心151よりずれた位置152が停止位置となる。S極31,N極32間を第1磁気コア端12,第2磁気コア端131で磁気的に短絡するので安定な停止位置となる。磁気的に安定な停止位置はまた最も強い回転力が得られる位置となり,大きな回転起動力が得られる。
【0073】
図16及び図17及び図18を用いて回転部の回転駆動原理を説明する。図16は図15に示した停止位置からの回転起動を示し,この位置で整流子15からコイル14には第1磁気コア端12がN極に磁化される方向の電流を供給する。N極に磁化された第1磁気コア端12はN極32とは反発し,S極31とは引き合って回転子を矢印161の方向に回転起動する。第2磁気コア端131はS極となるが,第2磁気コア端131はS極31と正対して微小移動してもS極31と重なり合う面積は一定であるので回転力に寄与しない。第1磁気コア端12から流入した大部分の磁束は上下のカバー17,ベース18を介して環流するので回転力を損なう事は無い。
【0074】
図17は図16から回転方向161に回転部が回転し,第1磁気コア端12がS極31と正対して電流が反転する直前の様子を示す。第1磁気コア端12はN極に,第2磁気コア端131はS極に磁化され,第1磁気コア端12はS極31と,第2磁気コア端131はN極33と引き合って回転駆動力に寄与する。
【0075】
図18は第1磁気コア端12がS極31と正対して電流が切り替わり,第1磁気コア端12はN極からS極に変わる。第1磁気コア端12及び第2磁気コア端131は電流切り替え直後は回転力を発生しないが,既に回転中で少し回転移動した点でS極31と第1磁気コア端12とは反発力を生じ回転力に寄与する。第2磁気コア端131は微小移動してもN極33と重なり合う面積は変わらないので回転力発生に寄与しない。
【0076】
本実施例で設けた第2磁気コア端は回転力に寄与する点は僅かな区間に過ぎないが,第1磁気コア端12との位置を規定した事で回転力を損なう事は無く,回転部を磁気的に非対称とするに効果があって確実に停止位置を確定させて起動不良を回避させる。また周方向に占める角度範囲も110度程度と小さく,回転部の重心の偏在に寄与して小径モータでも大きな振動を発生できる。
【0077】
本発明の実施例に於いて,第一,第五の実施例で磁気コア端12の周方向角度長は着磁部21の周方向角度長Mに,第三の実施例で磁気コア端12’の周方向角度長はさらに未着磁部22の周方向角度長をGとしてM+2Gにそれぞれ設定した。これらの設定条件は駆動コイル14への電流切り替え前後で現れる可能性のある回転力を発生しない区間を最小限にする為の設定である。本発明の振動モータでは最も回転起動力の大きな位置で回転部を停止させる構造であり,回転起動後の電流切り替え点前後で若干の回転力不発生区間が存在しても大きな問題とはならない。これらの設定を中心とすることが望ましいが,量産段階での関連する寸法諸元のばらつきが動作に大きな支障を及ぼす事はない。
【0078】
以上に実施例を挙げて説明したように本発明の振動モータは固定磁極を径方向外周に配置して回転部の磁気コアと径方向に対向させ,回転部の磁気コア及び駆動コイルを周方向に偏在させて構成した。周方向に偏在した回転部磁気コアが最も強く固定磁極部と磁気的に結合する位置で回転部は停止し,またその位置で最も強い回転力を得られる事を利用して最小限の磁気コア及び駆動コイルでも支障無く動作する振動モータを実現した。
【0079】
また本発明による振動モータは質量が大であるコアを有し,しかもそのコアは最外周部に大きな質点を持っているので偏重心の度合いを大にして小径の振動モータでも大きな振動を発生できる。この点で従来の磁気コアを用いない振動モータより小型化には有利となる。更にまた本発明の振動モータに依れば,固定磁極部を4極とした場合には回転部の周方向に占める角度長を110度程度以下,磁気コア中心間の角度にして50度程度以下と小さくでき,特開2005−199251で示された磁気コア中心間の角度150度と比しても偏重心の度合いを大として効果的に振動を発生できる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】第一実施例に係る偏平型振動モータを示す分解斜視図を示す。
【図2】第一実施例に於ける固定磁極部と回転部の諸元を示す平面図である。
【図3】第一実施例に於ける磁束分布の例を示す平面図である。
【図4】第一実施例に係る回転部の停止位置を説明する為の平面図である。
【図5】第一実施例に係る回転部の停止位置を説明する為の平面図である。
【図6】第一実施例に係る回転駆動原理を説明する為の平面図である。
【図7】第一実施例に係る回転駆動原理を説明する為の平面図である。
【図8】固定磁極部の構成例を示す平面図である。
【図9】第二の実施例の回転部構成を示す平面図である。
【図10】コイルと整流子との間の結線方法及びコイルへの電流波形とを示す。
【図11】第三実施例に於ける固定磁極部と回転部の諸元を示す平面図である。
【図12】第四実施例に於ける軸受部及び近傍の断面図を示す。
【図13】第五実施例に於ける固定磁極部と回転部の諸元を示す平面図である。
【図14】第五実施例に係る回転部の停止位置を説明する為の平面図である。
【図15】第五実施例に係る回転部の停止位置を説明する為の平面図である。
【図16】第五実施例に係る回転駆動原理を説明する為の平面図である。
【図17】第五実施例に係る回転駆動原理を説明する為の平面図である。
【図18】第五実施例に係る回転駆動原理を説明する為の平面図である。
【図19】特開2005−199251の実施例の平面図を示す。
【符号の説明】
【0081】
6b・・・金属体, 7・・・コイル,
11・・・固定磁極部, 12・・・磁気コア端,
13・・・磁気コア分枝, 14・・・駆動コイル,
15・・・整流子, 16・・・ブラシ,
17・・・カバー, 18・・・ベース,
19・・・固定軸, 1a・・・リード,
1b・・・ブラシ板, 1c・・・軸受部,
21・・・着磁部, 22・・・未着磁部,
31・・・S極, 32,33・・N極,
34・・・磁束,
41,42・・側端, 43・・・磁束,
44・・・S極31,N極32の中間位置,
45・・・停止位置,
51・・・磁束, 52・・・S極31の中心位置,
53・・・磁気コア端12の磁気的な安定点,
61・・・矢印,
81,82・・磁化, 83・・・漏洩磁束,
84・・・磁化方向が反転する領域, 85・・・磁化領域,
86,87・・磁化, 88・・・漏洩磁束,
91,92・・駆動コイル, 93・・・整流子,
101,102・・電流波形,
111,112・・側端,
121・・・磁気コアの内周部分, 122・・・軸受部,
123・・・磁性流体オイル, 124・・・磁束の経路,
125・・・軸受の間隙大の部分, 126・・・軸受の間隙小の部分,
131・・・第2磁気コア端,
141・・・S極31中心, 142・・・停止点,
143・・・磁束,
151・・・S極31,N極32間の中心,
152・・・停止位置, 153・・・磁束,
161・・・矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向に延びる磁気コア及び磁気コアに巻回された駆動コイルとより成り,駆動コイルの巻回された磁気コアは一つのみとして大部分の質量を周方向に偏在させた回転部と,回転部の磁気コア端と微小間隙を介して径方向外周側に対向する固定磁極部と,駆動コイルに給電する為の整流子及びブラシとを主要部とする振動モータに於いて,固定磁極部は隣りあう磁極が互いに径方向の磁化が異なる2N個の磁極で構成され,固定磁極部から微小間隙を介して対向する磁気コア端に流入した磁束は駆動コイルより内周側となる磁気コア部分及び或いはその延伸部から空間を介して固定磁極部に環流させる構造とし,整流子及びブラシは回転部が所定の回転位置に達した点で駆動コイルに順次反転する電流を供給して回転部を回転駆動させる事を特徴とする振動モータ
【請求項2】
請求項1記載の振動モータに於いて,磁気コアに巻回された駆動コイルはただ一つとして,整流子は2N個の分割された導電片を有し,整流子及びブラシは駆動コイルの巻回された磁気コア端が固定磁極部の各磁極とほぼ正対した位置で駆動コイルへの電流方向が反転するよう配置構成された事を特徴とする振動モータ
【請求項3】
請求項1記載の振動モータに於いて,同一の磁気コアに第1及び第2の駆動コイルが巻回され,整流子及びブラシは第1及び第2の駆動コイルに電気的位相を異ならせて電流をそれぞれ供給するよう構成して回転部を回転駆動させる事を特徴とする振動モータ
【請求項4】
請求項1記載の振動モータに於いて,駆動コイルの巻回された磁気コアの断面積は駆動コイルより内周側で大となる部分或いは磁気コア分枝を有し,磁気コア端より流入した磁束が駆動コイルと鎖交後に固定磁極部に環流する経路の磁気抵抗を小とした事を特徴とする振動モータ
【請求項5】
請求項1記載の振動モータに於いて,主要部を収納支持するハウジングを磁性体で構成し,回転部磁気コア端と固定磁極部間の微小間隙長をdとして固定磁極部とハウジングとは軸方向にd以上の間隙を持つよう配置した事を特徴とする振動モータ
【請求項6】
請求項1記載の振動モータに於いて,固定磁極部は未着磁部と着磁部を周方向に交互に有し,未着磁部を間に置いて隣りあう着磁部が互いに磁化方向が異なるよう構成され,未着磁部の周方向長さgを2d以上として磁束が有効に磁気コア端へ流入できる構成とした事を特徴とする振動モータ
【請求項7】
請求項1記載の振動モータに於いて,駆動コイルの巻回された磁気コアが固定磁極部と微小間隙を介して対向する部分である磁気コア端の周方向角度長は固定磁極部着磁部の周方向角度長Mとほぼ等しく設定し,駆動コイルへの電流切り替え点近傍に於いて回転力が小となる区間を短くする事を特徴とする振動モータ
【請求項8】
請求項1記載の振動モータに於いて,固定磁極部着磁部の周方向角度長をM,未着磁部の周方向角度長をGとして,駆動コイルの巻回された磁気コア端の周方向角度長はほぼM+2Gとなるよう設定する事を特徴とする振動モータ
【請求項9】
請求項1記載の振動モータに於いて,駆動コイルの巻回された磁気コア端の形状を周方向に非対称に構成し,前記磁気コア端と固定磁極部との間の磁気抵抗を周方向に非対称とした事を特徴とする振動モータ
【請求項10】
請求項1記載の振動モータに於いて,ハウジング,回転軸,軸受を磁性体で構成し,さらに軸受部の潤滑オイルを磁性流体オイルとし,磁気コア端から流入した磁束の一部を回転軸,軸受,ハウジングを介して駆動用マグネットに環流させる構成とし,軸受及び回転軸間間隙を流れる磁束により軸受内に磁性流体オイルを保持させて軸受寿命を大にした事を特徴とする振動モータ
【請求項11】
請求項1記載の振動モータに於いて,駆動コイルの巻回された磁気コアは第1磁気コアとして駆動コイルより内周側で分岐して外径方向に向かう第2磁気コアを有し,第2磁気コア端は固定磁極部と径方向に微小間隙を介して対向すると共に第2磁気コア端の周方向角度長は第1磁気コア端の周方向角度長以下に構成した事を特徴とする振動モータ
【請求項12】
請求項11記載の振動モータに於いて,固定磁極部と径方向に対向する第1磁気コア端及び第2磁気コア端の占める周方向角度長を2M+G以下として偏重心を大にした事を特徴とする振動モータ
【請求項13】
請求項11記載の振動モータに於いて,第1磁気コア端の周方向角度長を固定磁極部着磁部の周方向角度長Mとほぼ等しくし,第1磁気コア端と第2磁気コア端間空隙の周方向角度長を固定磁極部未着磁部の周方向角度長Gとほぼ等しくなるよう構成した事を特徴とする振動モータ

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−175579(P2007−175579A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−374723(P2005−374723)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(302014011)有限会社クラ技術研究所 (29)
【Fターム(参考)】