説明

振動乾燥装置及び被乾燥体の乾燥方法

【課題】容器内の被乾燥体を効率よく乾燥処理し、乾燥処理後の排出をスムースに行うことができるとともに、耐久性が向上して長期に亘り安定して乾燥を行うことが可能な振動乾燥装置及び被乾燥体の乾燥方法を提供する。
【解決手段】被乾燥体を収容する容器2と、少なくとも前記容器の一端側に備えられ前記被乾燥体を排出する排出部3と、前記容器2を支持する支持部材と、前記容器2を振動させる振動源6と、を有する振動乾燥装置1であって、前記支持部材は、前記容器2を前記一端側に向かうにつれ下方へと傾斜させるために伸縮する伸縮支持部材7であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被乾燥体を乾燥するための振動乾燥装置及び被乾燥体の乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粉粒体(被乾燥体)の生成工程においては、その粉粒体に含まれる水分を除去する必要があることから、粉粒体を乾燥させるための振動乾燥装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この振動乾燥装置は、内部に粉粒体を収容可能な筒状の筐体(容器)を有しており、この容器がその軸線を略水平方向に配置するようにして横置き状態に設置されている。また該容器はその軸線方向の両端が閉じられた中空密閉状とされている。そして、容器内に粉粒体が送り込まれ、該容器を振動させながら加熱することにより、該粉粒体を互いに分散させつつ個々に含まれる水分を蒸発させて、乾燥するようになっている。また粉粒体の乾燥処理が終了した後は、容器の一端側に設けられる排出口(排出部)から粉粒体を排出するようになっている。
【0004】
一般に、このような振動乾燥装置では、乾燥処理後の粉粒体の排出に時間がかかり、作業性が悪いという共通の課題を有している。すなわち、密閉状の容器を振動させながらその容器の一端側の排出部を介して排出を行うのだが、特に排出途中から終了までの間にかけ該容器内に粉粒体が滞るようになり、排出されにくくなるのである。
【0005】
そこで、特許文献1では、この容器を、一端側に行くに従い下方へ向かうようにして傾斜させて設置している。このように傾斜した状態の容器が振動されることにより、内部に収容される粉粒体が重力に従い一端側の排出部近傍へ集まって、排出がスムースに行われるようになっている。
【特許文献1】特開2005−214532号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このように容器を傾斜させて設置した場合、内部に収容される粉粒体が、重力に従い乾燥処理中においても一端側に集まるため、粉粒体の分布が偏るようになる。このようにして容器内の粉粒体の分布が偏ると、乾燥に斑が生じるとともに、乾燥の効率が低下する。これにより、粉粒体の生産性が妨げられていた。
【0007】
また、このようにして乾燥処理中に容器内の粉粒体の分布が一端側に偏ることにより、装置の重量バランスが偏り、容器を支持する支持部材のうち前記傾斜の下方側に配置される支持部材に対して局部的な荷重がかかり、これに起因して前記支持部材が破損することがあった。
【0008】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたもので、容器内の被乾燥体を効率よく乾燥処理し、乾燥処理後の排出をスムースに行うことができるとともに、耐久性が向上して長期に亘り安定して乾燥を行うことが可能な振動乾燥装置及び被乾燥体の乾燥方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。すなわち本発明に係る振動乾燥装置は、被乾燥体を収容する容器と、少なくとも前記容器の一端側に備えられ前記被乾燥体を排出する排出部と、前記容器を支持する支持部材と、前記容器を振動させる振動源と、を有する振動乾燥装置であって、前記支持部材は、前記容器を前記一端側に向かうにつれ下方へと傾斜させるために伸縮する伸縮支持部材であることを特徴とする。
また本発明に係る被乾燥体の乾燥方法は、前述の振動乾燥装置を用い、複数の支持部材に支持される容器に被乾燥体を収容し、振動源を用いて前記容器を振動させ前記被乾燥体を乾燥させた後、少なくとも前記容器の一端側に備えられる排出部から該被乾燥体を排出させる被乾燥体の乾燥方法であって、前記容器を水平状態に配置して乾燥処理を行った後、前記容器を傾斜状態に配置して、前記排出部から前記被乾燥体を排出させることを特徴とする。
【0010】
この発明に係る振動乾燥装置及び被乾燥体の乾燥方法によれば、容器を支持する支持部材が、伸縮する伸縮支持部材とされており、その鉛直方向に伸縮可能とされている。すなわち、この伸縮支持部材が、乾燥処理中には容器を水平状態に保つようにして支持し、乾燥処理後の被乾燥体の排出時には、該容器を、排出部を配置する一端側へ向かうにつれ下方へと傾斜させた状態で支持するように、該容器を傾動させる。
【0011】
従って、乾燥処理中には、容器の内部に収容される被乾燥体が該容器全体に満遍なく分布するようにして乾燥が斑なく効率よく行われるとともに、乾燥処理後の被乾燥体の排出時には、被乾燥体の排出が短時間で作業性よく行われる。
【0012】
また、乾燥処理中に容器が水平状態で振動されるため、該容器を支持する支持部材のいずれかに対して荷重が偏るようなことがなく、荷重が略均等に振り分けられるようになっている。よって従来のように、容器を常時傾斜状態として設置して振動させ、その傾斜の下方側に配置される支持部材に対し局部的に荷重による負荷をかけてしまうようなことがなく、前記支持部材の破損が防止される。すなわち、装置の耐久性が向上し、長期に亘り安定して被乾燥体の乾燥処理を行うことができる。
【0013】
また本発明の振動乾燥装置において、前記排出部が、前記容器の他端側にも備えられ、前記伸縮支持部材が、前記容器を前記一端側又は前記他端側のいずれか一方に向かうにつれ下方へと傾斜させることとしてもよい。
また本発明の被乾燥体の乾燥方法において、前記排出部を前記容器の他端側にも設け、前記一端側又は前記他端側から前記被乾燥体を排出させることとしてもよい。
【0014】
本発明の振動乾燥装置及び被乾燥体の乾燥方法によれば、被乾燥体を排出する排出部が容器の一端側及び他端側に各々備えられているので、例えばまず容器を一端側に向かうにつれ下方へと傾斜させて、被乾燥体を一端側の排出部から排出した後、次いで該容器を他端側に向かうにつれ下方へと傾斜させて、容器内に残る被乾燥体を他端側の排出部から排出することができる。従って、乾燥処理後の被乾燥体の排出作業がより短時間に効率よく行える。
【0015】
また本発明の振動乾燥装置において、前記伸縮支持部材は、少なくとも前記一端側近傍又は前記容器の他端側近傍のいずれか一方に設けられていることとしてもよい。
【0016】
本発明によれば、容器を支持するとともに伸縮可能な伸縮支持部材が、少なくとも排出部の配置される容器の一端側近傍又は容器の他端側近傍のいずれか一方に設けられている。そして、伸縮支持部材が容器の一端側近傍に設けられた場合、被乾燥体の乾燥処理中には、伸縮支持部材が自身の鉛直方向の外形を伸長させ、容器を水平状態に保つようにして支持する。また、被乾燥体の乾燥処理後には、伸縮支持部材が自身の鉛直方向の外形を収縮させ、容器を排出部の設けられる一端側へ向かうにつれ下方へと傾斜させた状態で支持するようになっている。
【0017】
また、伸縮支持部材が容器の他端側近傍に設けられた場合、被乾燥体の乾燥処理中には、伸縮支持部材が自身の鉛直方向の外形を収縮させ、容器を水平状態に保つようにして支持する。また、被乾燥体の乾燥処理後には、伸縮支持部材が自身の鉛直方向の外形を伸長させ、容器を排出部の設けられる一端側へ向かうにつれ下方へと傾斜させた状態で支持するようになっている。
すなわち、伸縮支持部材の伸縮によって、その支持する容器を傾動させることができる。
【0018】
また本発明の振動乾燥装置において、前記伸縮支持部材は、内部に貯留した流体により伸縮する流体貯留部を有し、前記流体貯留部に前記流体を供給する流体供給手段と、前記流体貯留部の前記流体を排出する流体排出手段と、を備えることとしてもよい。
【0019】
本発明によれば、伸縮支持部材は、例えばエアー等の流体を中空状の内部に貯留可能な流体貯留部を有しており、該流体貯留部は、その内部に貯留される流体量によって伸縮するようになっている。すなわち、流体供給手段及び流体排出手段を用いて流体の供給・排出を行い、流体貯留部を伸縮させるとともに、伸縮支持部材の鉛直方向の外形を伸縮させることができる。従って、容器の傾斜状態の調整をより簡便かつ確実に行うことができる。
【0020】
また本発明の振動乾燥装置において、前記流体貯留部の前記流体の圧力を測定する圧力センサーと、前記圧力センサーの測定結果に基づき前記流体供給手段により前記流体を供給させ前記流体排出手段により前記流体を排出させる制御部と、を備えることとしてもよい。
【0021】
本発明によれば、流体貯留部の流体の圧力を測定する圧力センサーが制御部に電気的に接続されている。また、流体供給手段及び流体排出手段も各々前記制御部に電気的に接続されている。そして、圧力センサーの測定結果に基づいて、これら流体供給手段及び流体排出手段により流体貯留部に流体を供給・排出するようになっている。すなわち、流体貯留部の流体の圧力が設定した圧力値となるように監視し自動的に制御可能として装置を構成することができるので、より簡便に作業性よく被乾燥体の乾燥処理及び排出を行うことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る振動乾燥装置及び被乾燥体の乾燥方法によれば、容器内の被乾燥体を効率よく乾燥処理し、乾燥処理後の排出をスムースに行うことができるとともに、耐久性が向上して長期に亘り安定して乾燥を行うことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照し、この発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る振動乾燥装置の乾燥処理中の状態を示す概略正面図、図2は本発明の一実施形態に係る振動乾燥装置の乾燥処理後の被乾燥体の排出時の状態を示す概略正面図、図3は本発明の一実施形態に係る振動乾燥装置の伸縮支持部材の概略構成を示す縦断面図、図4は本発明の一実施形態に係る振動乾燥装置の変形例を示す概略正面図である。
【0024】
図1、図2に示すように、本実施形態の振動乾燥装置1は、内部に粉粒体(被乾燥体)を収容可能な筒状の容器2を有している。容器2は、その軸線Cを水平方向に配置するようにして横置き状態に設置されていて、その軸線C方向の両端を閉じられた中空密閉状とされている。また容器2の内部は、軸線Cと平行な周壁で形成されている。また容器2の軸線C方向の一端側(図1における右側)の端面2aには、該端面2aの下端近傍に配置されるとともに、該容器2の内部と外部とを連通させ、バルブ等により開閉可能とされる排出口(排出部)3が、その端部3aを下方へと向けて配設されている。
【0025】
また容器2の上部には、粉粒体を投入するための投入口4と、排気口5とが設けられている。投入口4は開閉可能とされており、また排気口5は、容器2内を減圧するための減圧手段(不図示)に接続されてこれら容器2と減圧手段とを気密に繋いでいる。また容器2の外周にはジャケット(不図示)が配設されており、該ジャケットはその内部に温水又は水蒸気からなる熱媒体を流通させることにより、粉粒体を加熱可能としている。
【0026】
また、容器2の下端部分の軸線C方向の中央近傍には、振動モータ(振動源)6が設けられている。振動モータ6は、その回転軸に備えられるとともに該回転軸に対し重心をずらすようにして形成される偏心ウェイトを有しており、該回転軸が偏心ウェイトとともに回転することによって振動を発生するようになっている。振動モータ6は、乾燥する粉粒体の種類等に合わせて、その回転軸の回転数や振動の周波数を適宜設定して駆動される。
【0027】
また、容器2の下部には、該容器2を支持する4本の支持部材が設けられており、これら支持部材は、すべて伸縮可能な伸縮支持部材7,8とされている。そして、容器2の軸線C方向の一端側に伸縮支持部材7が、他端側に伸縮支持部材8が各々設けられており、これら伸縮支持部材7,8が、振動モータ6を軸線C方向の両側から挟むようにして配置されている。
【0028】
これら伸縮支持部材7,8は、鉛直方向に延在する柱状に形成されており、各々の延在方向の外形寸法が同一とされている。また伸縮支持部材7,8は、その上端部分を各々容器2の下部に接続しており、またその下端部分を各々床部9に固定している。また、伸縮支持部材7,8は各々2本ずつ設けられており、伸縮支持部材7同士及び伸縮支持部材8同士が、容器2の軸線Cを挟んで水平方向に各々離間するようにして配置されている。
【0029】
また、伸縮支持部材7,8の延在する鉛直方向の略中央部分には、各々の伸縮部10が配設されている。そして、これら伸縮部10の上端は各々の上支持体11に接続されていて、該伸縮部10が上支持体11を支持した状態となっている。また伸縮部10の下端は、各々の下支持体12に接続されて、支持されている。
【0030】
図3に示すように、伸縮部10は、中空状のエアー貯留部(流体貯留部)14を備えている。エアー貯留部14は、例えばラバー等で形成されて弾性を有しており、内部にエアー(流体)を貯留可能なようになっていて、貯留されるエアー量によって自身の外形を膨張・収縮して伸縮可能とされている。また、伸縮部10は、このようにして自身の外形を伸縮させることによって、その上端に支持する上支持体11を上下(図3における上下)方向に移動させるとともに、該上支持体11の上端に固定される容器2を上下方向に移動可能としている。
【0031】
また、伸縮部10は、エアー貯留部14の上端に設けられるとともに上支持体11の下端にボルト13で固定される上支持体取付板15と、エアー貯留部14の下端に設けられるとともに下支持体12の上端にボルト13で固定される下支持体取付板16とを有している。また、エアー貯留部14の上端及び下端には、各々金属等からなる環状の押さえ部材14aが設けられている。そして、上端の押さえ部材14aが上支持体取付板15にボルト17で固定されており、また下端の押さえ部材14aも下支持体取付板16にボルト17で固定されている。
【0032】
また、上支持体取付板15の略中央部分には、ボルト逃し孔15aが上下に貫通して形成されており、このボルト逃し孔15aに上支持体11のボルト11aの頭部が挿入されている。また、ボルト逃し孔15aの孔周囲から垂下するようにしてカバー15bが形成されており、このカバー15bは、ボルト逃し孔15aとエアー貯留部14の内部空間とを気密に区画するようにして、該ボルト逃し孔15aを覆っている。
【0033】
また、下支持体取付板16の略中央部分には、エアー供給孔16aが上下に貫通して形成されており、下支持体12の内部空間のエアー供給路12aに開口するとともに、これら下支持体12のエアー供給路12aとエアー貯留部14の内部空間とを連通している。
【0034】
また、上支持体取付板15は、その上支持体11の下端と対向する上面の外方部分に環状のパッキン18を備えている。また下支持体取付板16も、その下支持体12の上端と対向する下面の外方部分に環状のパッキン18を備えている。
このようにして、伸縮部10のエアー貯留部14は、その内部空間を下支持体12のエアー供給路12aに連通させるとともに、外部空間とは区画された気密状態とされている。
【0035】
また下支持体12のエアー供給路12aは、該下支持体12の下端から床部9を通るようにして配設される配管等によって、エアーを供給又は排出するためのエアーコンプレッサー等(不図示)に接続されている。そして、この配管等及びエアーコンプレッサー等によって、伸縮部10のエアー貯留部14にエアーを供給したり排出したりするためのエアー供給・排出手段(流体供給手段・流体排出手段)が構成されている。
【0036】
また、下支持体12のエアー供給路12aには、その路内のエアー圧を測定するための圧力センサー(不図示)が配設されており、該圧力センサーによって、エアー供給路12aに連通するエアー貯留部14の圧力を測定可能としている。また、圧力センサーは制御部(不図示)に電気的に接続されている。また制御部は、前記エアー供給・排出手段に電気的に接続されている。
【0037】
また、伸縮支持部材7の下支持体12のエアー供給路12aと、伸縮支持部材8の下支持体12のエアー供給路12aとは、各々が別経路で形成されており、すなわちこれら伸縮支持部材7と伸縮支持部材8とは、別々のエアー供給・排出手段を備えている。そして、伸縮支持部材7,8の各々の伸縮部10に、各々のエアー供給・排出手段からエアーを供給又は排出することができるよう構成されている。
また、圧力センサーも、伸縮支持部材7と伸縮支持部材8とで各々圧力を測定可能なように、別々に設けられている。
【0038】
次に、本実施形態の振動乾燥装置1を用いた粉粒体の乾燥処理及び排出について説明する。
まず乾燥処理を行うにあたって、予め図1に示すように、容器2を、その軸線Cを水平状態にするようにして配置する。すなわち、エアー供給・排出手段から伸縮支持部材7,8の各々の伸縮部10に略同一圧力となるようにエアーを供給するとともに、これら伸縮部10が膨張し伸長して、その各々の支持する上支持体11の上端を同一水平面上に配置するようにしておく。
【0039】
このようにして容器2の軸線Cを水平方向に配置した状態で、排出口3を閉じ、投入口4から粉粒体を投入して、投入後は、該投入口4も閉じて容器2を密閉状態とする。そして、排気口5に接続される減圧手段を作動させるとともに、容器2内の圧力を所定の圧力となるまで減少させていく。また、ジャケットには温水又は水蒸気からなる熱媒体を流通させておき、粉粒体を加熱可能な状態としておく。そして、振動モータ6を駆動させ、容器2を振動させるとともに、粉粒体の乾燥処理を行う。
【0040】
次いで、乾燥処理が終了した後の粉粒体の排出について説明する。
粉粒体の排出にあたっては、まず、図2に示すようにして、エアー供給・排出手段により伸縮支持部材7のエアー貯留部14からエアーを排出させて、容器2を、その軸線C(C1)が水平状態の軸線Cに対して傾斜角Dとなるように傾斜させる。尚、傾斜角Dは、粉粒体の種類等に合わせて適宜設定される。
【0041】
また、排出口3の端部3aの下方には、粉粒体回収容器Aを用意しておく。そして、排出口3を開け、粉粒体回収容器Aへと粉粒体を排出して、回収を行う。
【0042】
以上説明したように、本実施形態の振動乾燥装置1によれば、容器2を支持する各々の伸縮支持部材7,8の伸縮部10には、エアーを供給・排出することにより膨張・収縮するエアー貯留部14が設けられている。そして伸縮支持部材7,8は、該伸縮部10の伸縮によって、その延在する鉛直方向に伸縮可能とされている。そして伸縮支持部材7,8が、粉粒体の乾燥処理中には容器2の軸線Cを水平状態に保つようにして支持し、乾燥処理後の粉粒体の排出時には、容器2の軸線C1を、排出口3の配置される一端側を下方へと傾斜させるようにして、傾斜角Dとなるように支持する。
【0043】
従って、乾燥処理中には、容器2の内部に収容される粉粒体が容器2全体に満遍なく分布するようにして乾燥が斑なく効率よく行われる。また、乾燥処理後には、粉粒体の排出が短時間で作業性よく行われるようになっている。
【0044】
また、乾燥処理中には容器2が水平状態で振動されるため、容器2を支持する伸縮支持部材7,8のいずれかに対して荷重が偏るようなことがなく、荷重が略均等に振り分けられるようになっている。よって従来のように、容器2を常時傾斜状態として振動させ、その傾斜の下方側に配置される支持部材に対して局部的に荷重による負荷をかけてしまうようなことがなく、伸縮支持部材7の破損が防止される。従って、装置の耐久性が向上し、長期に亘り安定して粉粒体の乾燥処理を行うことができる。
【0045】
また、圧力センサーを用いてエアー貯留部14のエアー圧を測定し、この測定結果に基づいて、制御部がエアー供給・排出手段によりエアー貯留部にエアーを供給・排出して、前記エアー圧を自動的に制御することができる。すなわち、例えば容器2の水平状態におけるエアー貯留部14のエアーの圧力値と、容器2の軸線C1が前記傾斜角Dに傾斜された状態のエアーの圧力値とを予め各々測定しておき、乾燥処理時及び排出時において各々の圧力値となるように制御することができる。
【0046】
従って、エアー貯留部14を自動的に伸縮させるとともに、伸縮支持部材7,8の鉛直方向の外形を伸縮することができるので、容器2の傾斜状態の調整を、より簡便に精度よく確実に行うことができる。
【0047】
また、伸縮支持部材7,8のすべてに伸縮部10のエアー貯留部14が設けられることにより、振動乾燥装置1を設置した床部9に対する容器2の振動の伝播をより確実に減衰することができるとともに、より精度よく容器2の軸線C1を傾斜角Dに傾斜させることが可能となっている。
【0048】
また、容器2を支持する4本の支持部材が、すべて伸縮可能な伸縮支持部材7,8とされていることによって、容器2の軸線Cの傾斜する向きや角度を種々様々に設定することができ、よって多種多様な粉粒体の乾燥に柔軟に対応することが可能である。すなわち、容器2の軸線Cを例えば傾斜角Dの向きとは逆向きに傾斜させることも可能であり、また容器2を該容器2の周方向に僅かに揺動させるようにして傾斜させることもできる。そして、これら各傾斜を時系列的に組み合わせることによって、さらに多種多様な粉粒体の乾燥処理を行うことが可能である。
【0049】
尚、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
例えば、本実施形態では、伸縮支持部材7,8には、伸縮可能なエアー貯留部14を備える伸縮部10が各々設けられ、すべての伸縮支持部材7,8がその鉛直方向に伸縮可能とされていることとして説明したが、これに限られるものではない。
【0050】
すなわち、乾燥処理中に容器2の軸線Cを水平状態に配置し、乾燥処理後の粉粒体の排出時に容器2の軸線C1を傾斜角Dとなるように傾斜させられればよく、伸縮部10を伸縮支持部材7のみに配設して伸縮支持部材8には設けず、伸縮支持部材7のみが鉛直方向の外形を伸縮するようにして装置を構成しても構わない。
【0051】
また逆に、伸縮部10を伸縮支持部材8のみに配設して伸縮支持部材7には設けず、伸縮支持部材8のみが伸縮可能なようにして装置を構成してもよく、この場合には、伸縮支持部材8の収縮時に容器2の軸線Cを水平状態とし、伸縮支持部材8の伸長時に容器2の軸線C1が傾斜して傾斜角Dとなるように設定すればよい。
すなわち、容器2を支持する複数の支持部材のうち、少なくとも1つ以上が伸縮可能な伸縮支持部材とされていれば構わない。
ただし、本実施形態のようにして伸縮部10のエアー貯留部14をすべての伸縮支持部材7,8に各々設けることにより、振動乾燥装置1を設置する床部9に対する振動の伝播をより確実に減衰できるとともに、精度よく容器2の軸線C1を傾斜角Dに傾斜させることができるので好ましい。
【0052】
また本実施形態では、伸縮支持部材7及び伸縮支持部材8を各々2本ずつ計4本設けることとして説明したが、伸縮支持部材7及び伸縮支持部材8の各数量はこれに限られるものではなく、増減可能である。すなわち、例えば伸縮支持部材7を2本とし、伸縮支持部材8を1本として装置を構成してもよく、また、これら伸縮支持部材7,8を各々3本以上として装置を構成しても構わない。
【0053】
また本実施形態では、伸縮部10のエアー貯留部14へのエアーの供給及び排出を、エアー供給・排出手段を用いて行うこととして説明したが、これに限らず、エアーの供給経路とエアーの排出経路とを、各々別々の経路として構成してもよい。すなわち、エアーの供給にはエアー供給手段(流体供給手段)を用いることとし、エアーの排出にはエアー排出手段(流体排出手段)を用いることとしても構わない。ただし、本実施形態のようにエアー供給手段とエアー排出手段とを兼ね備えたエアー供給・排出手段とすれば、装置をより簡便に構成することができる。
【0054】
また本実施形態では、圧力センサーを制御部に電気的に接続するとともに、エアー供給・排出手段を該制御部に電気的に接続して、エアー貯留部14のエアー圧を監視し自動的に制御することとして説明したが、これに限られるものではない。
すなわち、制御部を用いずに、圧力センサーの測定値を所望の圧力値とするように手動でエアーを供給・排出させても構わない。また、圧力センサーの代わりに光センサーやリミットスイッチ、或いはそれ以外のセンサー等を用いて、容器2の傾斜状態を検出することとしても構わない。さらに、圧力センサー及び制御部を用いずに装置を構成することとしても構わない。
【0055】
また、本実施形態では、伸縮部10のエアー貯留部14にエアーを供給・排出することによって伸縮支持部材7,8を伸縮させることとして説明したが、伸縮支持部材7,8を伸縮させる構成であればこれに限られるものではない。すなわち、伸縮支持部材7,8の伸縮を、例えば油圧シリンダや電動アクチュエータ等を用いた構成により行うようにして、装置を形成しても構わない。また、それ以外の伸縮可能なリンク機構等を用いて伸縮支持部材を形成しても構わない。
【0056】
また、図4に示すものは、本実施形態の変形例であり、排出口3を容器2の軸線C方向の他方側(図4における左側)の端面2bの下端近傍にも設け、その端部3aを下方へと向けて配している。
これによれば、粉粒体を排出する排出口3が容器2の一端側及び他端側に各々備えられているので、例えばまず容器2を一端側に向かうにつれ下方へと傾斜させて、粉粒体を一端側の排出口3から排出した後、次いで容器2を他端側に向かうにつれ下方へと傾斜させて、容器2内に残る粉粒体を他端側の排出口3から排出することができる。従って、乾燥処理後の粉粒体の排出作業がより短時間に効率よく行える。さらに、これら傾斜状態を交互に繰り返し行うこととすれば、より確実に粉粒体を排出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施形態に係る振動乾燥装置の乾燥処理中の状態を示す概略正面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る振動乾燥装置の乾燥処理後の被乾燥体の排出時の状態を示す概略正面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る振動乾燥装置の伸縮支持部材の伸縮部の概略構成を示す縦断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る振動乾燥装置の変形例を示す概略正面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 振動乾燥装置
2 容器
3 排出口(排出部)
6 振動モータ(振動源)
7,8 伸縮支持部材
14 エアー貯留部(流体貯留部)
C 容器の軸線(水平状態)
C1 容器の軸線(傾斜状態)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被乾燥体を収容する容器と、少なくとも前記容器の一端側に備えられ前記被乾燥体を排出する排出部と、前記容器を支持する支持部材と、前記容器を振動させる振動源と、を有する振動乾燥装置であって、
前記支持部材は、前記容器を前記一端側に向かうにつれ下方へと傾斜させるために伸縮する伸縮支持部材であることを特徴とする振動乾燥装置。
【請求項2】
請求項1に記載の振動乾燥装置であって、
前記排出部が、前記容器の他端側にも備えられ、
前記伸縮支持部材が、前記容器を前記一端側又は前記他端側のいずれか一方に向かうにつれ下方へと傾斜させることを特徴とする振動乾燥装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の振動乾燥装置であって、
前記伸縮支持部材は、少なくとも前記一端側近傍又は前記容器の他端側近傍のいずれか一方に設けられていることを特徴とする振動乾燥装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の振動乾燥装置であって、
前記伸縮支持部材は、内部に貯留した流体により伸縮する流体貯留部を有し、
前記流体貯留部に前記流体を供給する流体供給手段と、
前記流体貯留部の前記流体を排出する流体排出手段と、を備えることを特徴とする振動乾燥装置。
【請求項5】
請求項4に記載の振動乾燥装置であって、
前記流体貯留部の前記流体の圧力を測定する圧力センサーと、
前記圧力センサーの測定結果に基づき前記流体供給手段により前記流体を供給させ前記流体排出手段により前記流体を排出させる制御部と、を備えることを特徴とする振動乾燥装置。
【請求項6】
複数の支持部材に支持される容器に被乾燥体を収容し、振動源を用いて前記容器を振動させ前記被乾燥体を乾燥させた後、少なくとも前記容器の一端側に備えられる排出部から該被乾燥体を排出させる被乾燥体の乾燥方法であって、
前記容器を水平状態に配置して乾燥処理を行った後、
前記容器を傾斜状態に配置して、前記排出部から前記被乾燥体を排出させることを特徴とする被乾燥体の乾燥方法。
【請求項7】
請求項6に記載の被乾燥体の乾燥方法であって、
前記排出部を前記容器の他端側にも設け、前記一端側又は前記他端側から前記被乾燥体を排出させることを特徴とする被乾燥体の乾燥方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−264652(P2009−264652A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113911(P2008−113911)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(390004879)三菱マテリアルテクノ株式会社 (201)
【Fターム(参考)】