説明

振動処理装置

【課題】振動モータにより容器を振動させて、容器内に収容した処理対象物に対して、洗浄、滅菌等の処理をする場合に、容器の振動を効率的に処理対象物に伝達することができる振動処理装置を提供すること。
【解決手段】両端部が壁部21A、21Bにより閉塞され、処理対象物を収容する容器20と、前記容器20を振動させる振動モータ50と、前記容器20を支持する支持部材と、洗浄液供給部材60と、蒸気供給部材65と、前記容器20から処理液を排出する処理液排出手段70と、前記処理対象物を排出する処理対象物排出部27とを備えた滅菌装置1であって、前記容器20は、前記処理対象物と接触することで、前記振動モータ50の振動を前記処理対象物に伝達するためのシリコンゴムライニング23を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シリンジのシール材やバイアル等の医薬品容器を密封するゴム栓をはじめとする種々の処理対象物に、洗浄、滅菌等の処理をするための振動処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、シリンジのシール材やバイアルをはじめとする医薬品容器を密封するためのゴム栓等、医療用品の構成部品の生産等において、これら構成部品等に雑菌やウイルス等が付着することにより汚染されるのを防止するために、滅菌後に医療用品として組立て、装着することが一般的に行なわれている。
【0003】
これらシリンジのシール材や医薬品容器のゴム栓等を滅菌する際に、振動モータにより容器を振動し、容器内の処理対象物を振動させることで、効率的に洗浄、滅菌等の処理をするための振動処理装置が開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−75559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示された滅菌装置を用いて、洗浄、滅菌、乾燥をすることで、洗浄、滅菌工程の効率、信頼性は飛躍的に向上したが、効率、信頼性をより向上しようとすると、処理対象物の形状、材質等の条件により、振動周波数、振幅、振動時間等の設定を調整しなければ、斑なく充分な洗浄や滅菌ができない場合があることが判明した。
【0006】
かかる処理条件を、処理対象物ごとに検証、設定することは、多くの労力を要するうえ、振動周波数、振幅、振動時間等の条件を処理対象物ごとに設定変更することは、工数的ロスに加えて装置の処理能力(出来高)にも影響する。
特に、医療分野では、種々の形状、材質の処理対象物があり、種々の処理対象物をできるだけ短時間で効率よく洗浄、滅菌することが、衛生上も好ましい。
【0007】
そこで、振動モータにより容器内の処理対象物を振動させる振動処理装置に関して、処理対象物の形状、材質等に関わらず、効率的に洗浄、滅菌等の処理を可能とする技術に対して、強い要請がある。
【0008】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、振動モータにより容器を振動させて、容器内に収容した処理対象物に対して、洗浄、滅菌等の処理をする場合に、容器の振動を効率的に処理対象物に伝達することができる振動処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。
請求項1に記載の発明は、両端部が壁部により閉塞され略水平に配置可能とされる筒状体からなり、処理対象物を収容する容器と、前記容器を振動させる振動モータと、前記容器を支持する支持部材と、前記容器内に、洗浄液と蒸気の少なくともいずれかを供給する供給手段と、前記供給された洗浄液又は蒸気による液体を、前記容器から排出する処理液排出手段と、前記処理対象物を容器外に排出する処理対象物排出部とを備えた振動処理装置であって、前記容器は、前記処理対象物と接触することで、前記振動モータの振動を前記処理対象物に効率的に伝達するための振動伝達手段を備えることを特徴とする。
【0010】
この発明に係る振動処理装置によれば、処理対象物を振動させる際に、振動伝達手段が処理対象物に充分に接触するので、容器に与えられた振動を、処理対象物に効率的に伝達することができ、処理対象物を効率的に運動させることができる。
その結果、処理対象物を効率的に処理することができ、ひいては処理品質の向上、省エネルギーを実現することができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の振動処理装置であって、前記振動伝達手段は、前記容器の内周面に形成された弾性樹脂材から構成されていることを特徴とする。
【0012】
この発明に係る振動処理装置によれば、振動伝達手段が容器の内周面に形成された弾性樹脂材から構成されているので、振動伝達手段が処理対象物と接触した場合に、摩擦により振動を処理対象物に効率的に伝達することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の振動処理装置であって、前記弾性樹脂材は、シリコンゴムから構成されていることを特徴とする。
【0014】
この発明に係る振動処理装置によれば、弾性樹脂材は、シリコンゴムから構成されているので、粘着的に振動を伝達するとともに、接触における摩耗が小さく、また、蒸気、洗浄液等に対する耐久性を確保することができる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の振動処理装置であって、前記振動伝達手段は、前記容器の内周面側に形成された凹凸形状部を有していることを特徴とする。
【0016】
この発明に係る振動処理装置によれば、振動伝達手段が、容器の内周面側に形成された凹凸形状部を有しているので、振動伝達手段が処理対象物と接触した際に、凹凸形状部との引っかかりによる振動伝達をするので、処理対象物に確実に振動を伝達することができる。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の振動処理装置であって、前記供給手段は、前記容器内に前記洗浄液を噴射する洗浄液供給部材と前記容器内に蒸気を噴射する蒸気供給部材の、少なくともいずれかを備えることを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の振動処理装置であって、前記容器内を減圧する容器内減圧手段を備えることを特徴とする。
【0019】
この発明に係る振動処理装置によれば、容器内を減圧しながら振動させることにより処理対象物間に残留する洗浄液、凝縮した蒸気等を処理対象物から蒸発、除去するので効率的に乾燥させることができる。
また、洗浄、滅菌処理を行なう際に容器内を減圧した場合、堆積した処理対象物間に洗浄液、蒸気を容易に入り込ませることができ、処理の効率及び品質を向上させることができる。
【0020】
請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の振動処理装置であって、前記筒状体の軸線を水平に対して傾斜させる傾動手段を備えることを特徴とする。
【0021】
この発明に係る振動処理装置によれば、容器を水平に対して傾斜させることにより、処理対象物、処理液を効率よく排出することができる。
また、容器を傾動して処理対象物等を排出させることにより、洗浄液、蒸気の供給しながら洗浄、滅菌等の処理をすることが可能となり、作業効率を向上することができる。
また、振動させながら傾斜させた場合には、容器内の位置による洗浄、滅菌、乾燥等の処理品質の偏り(斑)の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る振動処理装置によれば、振動モータにより容器に与えた振動を、効率的に処理対象物に伝達することができるので、処理効率を向上することができ、ひいては処理品質やエネルギー効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る滅菌装置の概略構成を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る滅菌装置の容器を側面視した縦断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る滅菌装置を軸線方向から見た縦断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る滅菌装置の伸縮部部材の詳細を示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る滅菌装置の作用を説明するための軸線方向から見た容器の縦断面図であり、(A)は滅菌装置が静止している状態を、(B)は滅菌装置が振動している状態を示す図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る滅菌装置の作用を説明する概略側面図であり、(A)は装置滅菌の状態を、(B)は洗浄、滅菌において容器を傾動した状態を、(C)は乾燥において容器を水平に維持した状態を、(D)は一連の作業が完了して処理対象物排出部側を下方に傾動した状態を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る要部の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図1から図6を参照し、この発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る滅菌装置の概略を示す図であり、符号1は滅菌装置(振動処理装置)を示している。
【0025】
滅菌装置1は、図1に示すように、装置架台2と、処理対象物Wを収容する容器20と、容器20を支持する支持部材31、32と、容器20を傾動可能とされる伸縮部材(傾動手段)40と、容器20を振動させる振動モータ50と、容器20内に洗浄液を噴射する洗浄液供給部材(供給手段)60と、容器20内に蒸気を噴射する蒸気供給部材(供給手段)65と、処理液排出手段70と、減圧ユニット(容器内減圧手段)75とを備え、支持部材31、32は装置架台2上に設けられている。
また、この実施形態において、処理対象物Wは、例えば、シリンジのシール材やバイアル等の医薬品容器を密封するためのゴム栓等とされている。
【0026】
容器20は、図2、図3に示すように、外殻及び内壁部21が略円筒形状の円筒体(筒状体)に形成され、筒状体の軸線C方向の一方端側に壁部21Aが、他方端側に壁部21Bが設けられることで円筒体の両端部が閉塞された密閉状態とされ、軸線Cを略水平にして設置されている。
【0027】
容器20内の下側部分には、内壁部21の内径より大きな曲率半径に形成され略平板状とされた底部保持板22が略水平方向に設けられ、処理対象物Wを安定して保持するようになっている。
容器20は、内壁部21及び底部保持板22が、例えば、SUS316Lにより形成されていて、洗浄において用いられる薬剤、蒸気によって錆や腐食が発生するのを抑制することが可能とされている。
【0028】
また、容器20は、内壁部21及び底部保持板22の内周面側の前面(孔部分は除く)に、例えば、弾性を有するシリコンゴムライニング(振動伝達部材)23が設けられている。
また、底部保持板22及びシリコンライニング23には、容器20の内部空間から下方に貫通する複数の水抜孔22Aが形成されており、洗浄液や蒸気が凝縮した処理液を下方に排出することができるようになっている。
【0029】
また、容器20の上部には、軸線C方向に並んで開口部24、25が形成され、開口部24、25には蓋部材24A、25Aが開閉可能に設けられ、蓋部材24A、25Aを閉めることによって開口部24、25が密閉されるようになっている。
【0030】
また、容器20の内側壁部21の外方には、ジャケット26が形成され、容器20外部の図示しない経路からジャケット26に温水又は水蒸気等の加熱媒体又は冷却水等の冷却媒体を流通して、処理対象物W及び洗浄液を加熱又は冷却して洗浄時の処理対象物Wの温度を調節可能とされている。
なお、この実施形態において、ジャケット26は内壁部21の外方に形成されているが、壁部21A、21Bにもジャケットを設けてもよいし、ジャケット26を備えない構成としてもよい。
【0031】
また、壁部21Aには、容器20の内部と外部とを連通させ、スライドバルブ28等により開閉可能とされた処理対象物排出部27が壁部21Aの下端近傍に形成され、処理対象物排出部27が開口されることによって処理対象物Wを容器20の外に排出可能とされている。
【0032】
処理対象物排出部27の下方には、完成品容器Aが配置され、処理対象物排出部27は、例えば伸縮可能なジャバラホースにより完成品容器Aと接続され、処理対象物排出部27から排出された処理対象物Wが完成品容器Aに収容されるようになっている。
なお、完成品容器Aの下方にはタンク29が設けられ、処理液及び蒸気ドレンを一端受けて滅菌装置1の外に排出させることができるようになっている。
【0033】
振動モータ50は、容器20の外方下側部分に、容器20の軸線C方向中央近傍に設けられており、その回転軸に該回転軸の中心から偏心して形成された偏心ウェイトを有し、偏心ウェイトが回転軸とともに回転することにより回転軸と直交する面内に周回振動を発生し、処理対象物Wが容器20にて振動して周回するように構成されている。なお、振動モータ50は、洗浄する処理対象物Wの種類等に合わせて回転数や振動の周波数等を適宜設定して駆動することができる。
【0034】
支持部材31、32は装置架台2の上部に鉛直方向に立設される同一の長さに調整可能とされる4本の柱部材により構成され、振動モータ50を挟んで軸線C方向の両側で容器20に接続され、軸線C方向からみた場合に容器20を左右両側にて下方から支持するようになっている。また、支持部材31、32は伸縮して同一の長さに調整することができるようになっている。
【0035】
支持部材31は、容器20の下部に接続される一対の上支持部材31Aと、上支持部材31Aに対応する下支持部材31Bとを有し、それぞれの上支持部材31Aと下支持部材31Bの間には上下方向に伸縮する伸縮部材(傾動手段)40が設けられており、支持部材31の伸縮部材40が収縮すると一方側の壁部21Aを下方に、伸縮部材40が膨張すると他方側の壁部21Bを下方にして容器20を傾斜することが可能に構成されている。
【0036】
また、支持部材32は、支持部材31と同様に、容器20の下部に接続される一対の上支持部材32Aと、上支持部材32Aに対応する下支持部材32Bとを有し、それぞれの上支持部材32Aと下支持部材32Bの間には上下方向に伸縮する伸縮部材40が設けられており、支持部材32の伸縮部材40が収縮すると他方側の壁部21Bを下方に、伸縮部材40が膨張すると一方側の壁部21Aを下方にして容器20を傾斜することが可能に構成されている。
【0037】
伸縮部材40は、例えば、図4に示すように、ラバー等の弾性材料からなり内部にエアー等の流体を貯留可能とされるエアー貯留部材44を有し、貯留するエアー量によって伸縮して上支持部材31A、32Aを上下方向に移動させて容器20を傾動することができるようになっている。
【0038】
貯留部材44は、上部及び下部において貯留部材44の外周を囲むように環状の押え部材44Aが設けられて、上側の押え部材44Aは上支持体取付板45に、下側の押え部材44Aは下支持体取付板46にそれぞれボルト47により固定されている。
伸縮部材40は、上支持体取付板45が上支持部材31A、32Aに、下支持体取付板46が下支持部材31B、32Bにそれぞれボルト43で固定されることにより、上支持部材31A、32Aと下支持部材31B、32Bとを接続するように構成されている。
【0039】
上支持体取付板45の略中央部には貫通孔45Aが形成されて上支持部材31A、32Aのボルト41Aの頭部が挿入され、貫通孔45Aの周囲をカバー45Bにより覆うことによりエアー貯留部材44の内部が貫通孔45Aを介して外部と流通するのを抑制してエアー貯留部材44の内部の気密が保持されている。
【0040】
また、下支持体取付板46の略中央部分にはエアー貯留部材44の内部と下支持部材31B、32Bのエアー供給路42Aとを連通するエアー供給孔46Aが形成されている。
【0041】
また、上支持体取付板45と上支持部材31A、32Aの間の外周近傍及び下支持体取付板46と下支持部材31B、32Bの間の外周近傍には環状のパッキン48が設けられ、伸縮部材40は下支持部材31B、32Bのエアー供給路42Aに連通されるとともに、外部空間と気密とされている。
【0042】
また、それぞれの下支持部材31B、32Bのエアー供給路42Aには、圧力センサ(図示せず)が配設されておりエアー貯留部材44内のエアー圧を測定することができるようになっている。
また、伸縮部材40を構成するエアー貯留部材44はエアー供給路42Aを介して図示しないエアーコンプレッサー等のエアー源に接続され、圧力センサにより検出したエアー圧に基づいて制御部が貯留部材44へのエアーの供給・排出を制御して容器20の姿勢を水平状態及び所望の角度に傾斜させることができるようになっている。
【0043】
洗浄液供給部材60は、例えば、上流側が給水源に接続され容器20内部に開口していて、処理対象物Wが振動により弾んで底部保持板22から離間する側の領域の上方に配置されて処理対象物Wに洗浄液を噴射するようになっている。また、洗浄液供給部材60は、洗浄液噴射ノズル62が軸線Cの方向に配列されている。
【0044】
蒸気供給部材65は、蒸気バルブ66を介して上流側が、例えば、クリーン蒸気源に接続されるとともに下流側が蓋部材24Aを介して容器20内に開口していて、蒸気バルブ66を開くことによって容器20内に蒸気を供給するようになっている。
【0045】
処理液排出手段70は、処理液排出管70Aと、蒸気ドレン管70Bを備えており、処理対象物Wを洗浄するために容器20に供給された洗浄液等の処理液及び蒸気のドレンを容器20の外に排出するようになっている。
【0046】
減圧ユニット75は、例えば、真空ポンプ76と、ドレンタンク77と、吸引ホース78とを備え、吸引ホース78は上流側がバルブ79を介して容器20上部の蓋部材25Aを介して容器20内に接続されている。
ドレンタンク77は、真空ポンプ76により吸引された流体(空気、蒸気、洗浄液ミスト等)が排出されるようになっており、吸引した流体に含まれる水分を空気と分離するとともに凝縮した蒸気をドレンとして排出可能とされている。
【0047】
次に、滅菌装置1による処理対象物Wの洗浄、滅菌について説明する。
以下、装置殺菌、洗浄、滅菌、乾燥の順に説明する。なお、この明細書において、一連の滅菌作業とは、装置殺菌、洗浄、滅菌、乾燥の順序で行われる作業の他、洗浄、滅菌を含む必要とされる一連の工程をいい、例えば、乾燥を除く構成としてもよいし、装置殺菌、洗浄、滅菌、乾燥の順序に関して自在に設定することができるものである。
<装置殺菌>
1)まず、処理対象物Wを投入する前に、開口部24,25を蓋部材24A、25Aにより閉じて容器20内を密閉状態とする。
2)次に、蒸気供給部材65から蒸気を供給して、容器20内を加熱して滅菌する。
3)このとき、支持部材32側の伸縮部材40を膨張させて、図6(A)に示すように容器20の処理対象物排出部27側を下方に傾斜させるとともに、スライドバルブ28を開き、供給された蒸気を処理対象物排出部27経由で完成品容器A内に蒸気、蒸気ドレンSとして流通、排出し、製品排出部27及び完成品容器Aを滅菌する。
なお、処理対象物排出部27を経由した完成品容器Aへの蒸気の排出を容器20内への蒸気の供給が完了した後に行ってもよい。
<洗浄>
1)まず、図5(A)に示すように開口部24、25から処理対象物Wを投入する。処理対象物Wを投入したら開口部24,25を蓋部材24A、25Aにより閉じて容器20内を密閉状態とする。
2)次に、振動モータ50を駆動して、例えば、矢印T方向に回転軸を回転させて容器20を振動させる。
このときの振動モータ50による振動は、例えば、図5(B)に示すように処理対象物Wが底部保持板22の洗浄液供給部材60の下方で跳ね上がり軸線Cを挟んで洗浄液供給部材60と反対側に周回移動するように振動することが好ましい。
このとき、容器20の内周面に設けられたシリコンゴムライニング23が処理対象物Wと接触して、粘着的な摩擦により処理対象物Wに効率的に振動が伝達される。
また、例えば、処理対象物Wに微細な凹部又は空孔が形成されていてこの凹部又は空孔内に洗浄液を入り込みやすくする必要がある場合には、振動モータ50の駆動に先立って、又は振動モータ50の駆動とともに減圧ユニット75を駆動して容器20内を所定圧力まで減圧して凹部、空孔内の空気を取り除いてもよい。
また、必要に応じて、洗浄液供給部材60から容器20内に洗浄液を供給して所定の液位まで洗浄液を貯留させてもよい。
3)処理対象物Wを洗浄している間、洗浄液供給部材60のノズルからは必要に応じて洗浄液を噴射する。
なお、蒸気供給部材65から蒸気を供給してもよい。
4)洗浄にあたっては、必要に応じて支持部材31側の伸縮部材40を膨張させて、図6(B)に示すように処理液排出手段70の側が下方となるように容器20を水平に対して傾斜するとともにバルブ71A、71Cを開いて処理液排出管70Aを流通可能として処理液を容器20の外に排出させる。蒸気を使用する場合は、必要に応じてバルブ71Bを開いて蒸気ドレンを排出する。
5)処理対象物Wの洗浄が終了したら、処理液排出管70Aから処理液を容器20の外に充分に排出する。
【0048】
<滅菌>
殺菌は、洗浄した処理対象物Wを容器20内に収納したまま移行する。
1)まず、蒸気供給部材65から蒸気を供給する。
このときの蒸気は、例えば、容器20内に供給された状態で0.15MPa(125℃)とされ、容器20内及び処理対象物Wを加圧するとともに加熱する。
2)次いで、振動モータ50を駆動して、例えば、図5(B)に示すように矢印T方向に回転軸を回転させて容器20を振動させる。
3)振動モータ50による振動及び蒸気供給部材65から容器20内への蒸気の供給はタイマにより所定時間(例えば、20分)行なう。
4)滅菌にあたっては、必要に応じて支持部材31側の伸縮部材40を膨張させて、図6(B)に示すように処理液排出手段70の側が下方となるように容器20を水平に対して傾斜するとともにバルブ71A,71B、71Cを開いて処理液排出管70Aを流通可能として蒸気ドレンを容器20の外に排出させる。
このとき、必要に応じて支持部材32側の伸縮部材40を膨張させて、図6(A)に示すように容器20を処理対象物排出部27側を下方に傾斜させて完成品容器A内に蒸気ドレンを流通させ、完成品容器A等を再び滅菌してもよい。
この処理液及び蒸気ドレンの排出は、処理液排出手段70に配置された図示しない背圧弁を介し、又はバルブ71A,71B、71Cを間欠で開放することにより容器20内の圧力を維持しながら行なわれる。
5)処理対象物Wの殺菌が終了したら、処理液排出管70A、蒸気ドレン管70Bを開いて、蒸気ドレンを容器20の外に充分に排出する。
【0049】
<乾燥>
乾燥は、殺菌に引き続いて行われ、殺菌した処理対象物Wを容器20内に収納したまま移行する。
1)それぞれの伸縮部材40を、例えば、同一圧力に制御して容器20の軸線Cを6(C)に示すように水平にする。
2)次いで、減圧ユニット75を駆動して容器20内を所定圧力まで減圧する。
3)次いで、振動モータ50を駆動して容器20内の処理対象物Wを振動させる。
なお、容器20内の減圧に代えて又は減圧とともに容器20内に熱風を容器20内に供給して処理対象物Wを乾燥させてもよい。このとき、熱風は、例えば、乾燥された処理対象物Wの温度が70℃となる程度の温度のものが用いられる。
4)乾燥が終了したら、壁部21A側の処理対象物排出部27をスライドバルブ28のハンドルを回すことにより開口し、支持部材32側の伸縮部材40を膨らませて容器20の軸線Cを図6(D)に示すように傾斜させて容器20から処理対象物Wを完成品容器Aに排出させる。このとき、処理対象物Wは自重により又は振動を与えて排出させてもよい。
なお、一連の滅菌作業において、ジャケット26に温水又は水蒸気等の加熱用熱媒体又は冷水等の冷却用熱媒体を流通させて容器20内の処理対象物Wを材料の特性に適合させてもよい。
【0050】
以上、説明したように、滅菌装置1によれば、容器20内に収容された処理対象物Wが、シリコンゴムライニング23と接触して、処理対象物Wに効率的に振動が伝達される。その結果、処理対象物Wが、容器20内で充分に攪拌されて処理対象物W同士間に隙間が形成されやすいので、滅菌の品質を向上させるとともに一連の滅菌作業を効率的に行なうことができる。
【0051】
また、滅菌装置1によれば、処理対象物Wを一連の滅菌作業において人手により取り扱うことなくできるので、滅菌作業を効率的に行なうことができる。
また、滅菌作業中に人手が介在しないので、処理対象物Wが破損しにくく、また、処理対象物Wが汚染されることが抑制される。
また、容器20を軸線Cが処理液排出手段70の側が下方になるように水平に対して傾斜させることにより処理液、蒸気ドレン等を一連の滅菌作業を実施しながら容易に容器20の外に効率的に排出することができる。
【0052】
また、容器20を処理対象物排出部27側が下方になるように水平に対して傾斜させて、処理対象物排出部27を経由して完成品容器Aに高温の蒸気ドレンを容易に排出することができるので、処理対象物排出部27及び完成品容器Aを効率的に滅菌することができる。
【0053】
また、容器20を支持する支持部材31、32のそれぞれに伸縮部材40が設けられているので、容器20から床部への振動の伝播の抑制及び支持部材31、32の衝撃に起因する支持部材31、32の破損が防止される。
【0054】
次に、図6を参照して、この発明の第2の実施形態について説明する。
第2実施形態が、第1実施形態と異なるのは、振動伝達手段が、シリコンゴムライニング23に代えて、容器20の内壁部21及び底部保持板22の内周側に貼着され、容器20の中空部側が凹凸形状部とされた凹凸ライニング23Aとされている点である。なお、図1と共通する部分は説明を同じ符号を付して、説明を省略する。凹凸ライニング23Aは、SUS材のような硬質の材質やシリコンゴムのような弾性を有する材質を適宜選択して用いることができる。
【0055】
第2の実施形態に係る滅菌装置によれば、容器20の内壁部21及び底部保持板22の内周側に形成された凹凸形状部が、処理対象物Wと接触した際に、凹凸形状部との引っかかりにより振動を伝達するので、処理対象物Wに効率的に振動を伝達し、ひいては、処理対象物Wの品質及びエネルギー効率を向上することができる。
【0056】
なお、上記の実施形態において記載した技術的事項については、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えることが可能である。
上記実施の形態においては、振動伝達手段(シリコンゴムライニング23、凹凸ライニング23Aが、容器20の内壁部21及び底部保持板22の内周面全体に取付けられる場合について説明したが、内壁部21及び底部保持板22の内周面全体ではなく、例えば、内壁部21と底部保持板22のいずれか一方の内周面、又は内壁部21及び底部保持板22の内周面の一部のみに振動伝達手段を施してもよい。また、振動伝達手段を、壁部21A、21Bの内面に施すかどうかは、適宜設定することができる。
【0057】
また、振動モータ50の回転軸を容器20の軸線Cに沿う方向に配置して振動させる場合について説明したが、例えば、回転軸を容器20の両端部を結ぶ方向に容器20の軸線Cと交差するような方向に配置してもよい。
【0058】
また、上記実施の形態においては、供給手段が洗浄液供給部材60と蒸気供給部材65を備える場合について説明したが、例えば、洗浄液供給部材60と蒸気供給部材65のいずれか一方を備える構成としてもよい。
【0059】
また、減圧ユニット75による容器20内の減圧、処理液排出手段70、ジャケット26への熱媒体の供給に関しては実施の有無及びタイミングを自在に設定することができる。
【0060】
また、上記実施の形態においては、容器20の軸線Cが傾斜可能に構成される場合について説明したが容器20を傾動させない構成としてもよいし、容器20を傾動させる場合に、支持部材31、32の各々に設けられた伸縮部材40により容器20を傾斜するのに代えて、支持部材31、32のいずれか一方のみに伸縮部材40を設けて容器20を傾斜する構成としてもよい。
【0061】
また、上記実施の形態においては、圧力センサが検出した圧力に基づいて伸縮部材40のエアー圧を制御する場合について説明したが、例えば、圧力センサを備えない構成や、圧力センサの測定値を所望の圧力値とする手動による設定や、圧力センサの代わりに光センサやリミットスイッチ等のセンサを用いて、容器20を傾斜させてもよい。
【0062】
また、上記実施の形態においては、伸縮部材40へのエアーの供給及び排出を、エアー供給路42Aを経由してエアー供給・排出手段を用いて行う場合について説明したが、伸縮部材40を制御しない構成としてもよいし、エアーの供給経路及び排出経路とを各々別々の経路として構成してもよい。
【0063】
また、支持部材31、32にエアー貯留部材44を配置するのに代えて、例えばエアシリンダ等の駆動源を用いてもよい。
【0064】
また、上記実施の形態においては、内壁部21及び底部保持板22等がSUS316Lである場合について説明したが、例えば、SUS304等、洗浄に耐えられる周知の材料を適用可能なことはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明に係る振動処理装置によれば、振動モータの振動を、処理対象物に効率的に伝達できるので産業上利用可能である。
【符号の説明】
【0066】
C 容器の軸線
1 滅菌装置(振動処理装置)
20 容器
21A、21B 壁部
27 処理対象物排出部
30、31、32 支持部材
40 伸縮部材(傾動手段)
50 振動モータ
60 洗浄液供給部材(供給手段)
65 蒸気供給部材(供給手段)
70 処理液排出手段
75 減圧ユニット(容器内減圧手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部が壁部により閉塞され略水平に配置可能とされる筒状体からなり、処理対象物を収容する容器と、
前記容器を振動させる振動モータと、
前記容器を支持する支持部材と、
前記容器内に、洗浄液と蒸気の少なくともいずれかを供給する供給手段と、
前記供給された洗浄液又は蒸気による液体を、前記容器から排出する処理液排出手段と、
前記処理対象物を容器外に排出する処理対象物排出部と、を備えた振動処理装置であって、
前記容器は、
前記処理対象物と接触することで、前記振動モータの振動を前記処理対象物に効率的に伝達するための振動伝達手段を備えることを特徴とする振動処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の振動処理装置であって、
前記振動伝達手段は、
前記容器の内周面に形成された弾性樹脂材から構成されていることを特徴とする振動処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の振動処理装置であって、
前記弾性樹脂材は、シリコンゴムから構成されていることを特徴とする振動処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の振動処理装置であって、
前記振動伝達手段は、
前記容器の内周面側に形成された凹凸形状部を有していることを特徴とする振動処理装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の振動処理装置であって、
前記供給手段は、
前記容器内に前記洗浄液を噴射する洗浄液供給部材と前記容器内に蒸気を噴射する蒸気供給部材の、少なくともいずれかを備えることを特徴とする振動処理装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の振動処理装置であって、
前記容器内を減圧する容器内減圧手段を備えることを特徴とする振動処理装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の振動処理装置であって、
前記筒状体の軸線を水平に対して傾斜させる傾動手段を備えることを特徴とする振動処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−143674(P2012−143674A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−2121(P2011−2121)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【出願人】(390004879)三菱マテリアルテクノ株式会社 (201)
【Fターム(参考)】