説明

振動吸収アイソレータ

振動吸収アイソレータは、原動部材と、従動部材と、原動部材に固定して取り付けられ、従動部材と滑り係合して従動部材の原動部材に対する所定の回転運動を可能にする保持部材と、原動部材と従動部材の間に配置され、原動部材と従動部材の間において駆動方向に圧縮されるエネルギー吸収部材とを備え、エネルギー吸収部材の圧縮からの解放により従動部材を原動部材から一時的に切り離すことができ、それにより所定の角度範囲で原動部材から従動部材へと実質的にトルクが伝達されない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動吸収アイソレータに関し、より具体的には、エネルギー吸収部材の圧縮からの解放により原動部材から一時的に切り離すことができ、それにより所定の角度範囲で原動部材から従動部材へと実質的にトルクが伝達されない振動吸収アイソレータに関する。
【背景技術】
【0002】
振動減衰装置は、従来自動車の駆動系において使用され、例えば、エンジンクランクに設けられる。この目的に対する周知の装置は、ゴム状のものやフレキシブルカップリングから構成され、弾性バネとしても知られるスリーブバネカップリングに対応する。
【0003】
このような装置の場合、ディスク状、あるいは環状弾性体が設けられ、一般には、各々の場合において円筒面の間のゴム体が、直接一方は外側、一方は内側の捩り剛体部の間に連結されている。この(ゴム)弾性体は、全ての運転モードにおいて通常接線方向の偶力の下で応力が掛かっている。弾性体(いくつかの部分として構成されていてもよい)は、減衰されるべき部分(本件の場合は通常駆動系)の捩り振動を吸収する。
【0004】
捩り振動の減衰は、リングと内側駆動部として構成されたダンピング質量の間の回転運動にも起因し、ダンピング質量と弾性体の硬さは、要求された振動周波数におけるダンピングを実現するために、互いに適合されていなければならない。
【0005】
捩り振動は、主原動部からのトルクの周期的変動により励起され、例えば、内燃機関の点火に起因する。
【0006】
この技術の代表はダンカン(Duncan)の米国特許第4,355,990号(1982)であり、軸周りに回転可能な捩り弾性力伝達装置を開示する。これは少なくとも2つの突出部が設けられたハブ部材と、捩り駆動されている配置において突出部と嵌め合わせ係合を行なう少なくとも2つの耳部を備えたハブの外側に配置されたリム部材、耳部と突出部の間に介挿され、両者の間で動力を伝達する弾性クッションスプリング手段とを備える。改良は、それぞれの外側および内側周縁部に沿って並列して配置された十分な軸方向寸法を有する複数のラジアルベアリング面を備えるハブとリム部材を利用することに向けられる。利用においては、自動調心により同心を維持する捻り弾性装置のハブとリム部材に、このように大きなラジアルベアリング面が与えられる。
【0007】
必要とされているのは、エネルギー吸収部材の圧縮からの解放により原動部材から一時的に切り離すことができ、それにより所定の角度範囲で原動部材から従動部材へと実質的にトルクが伝達されない振動吸収アイソレータである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の第1の目的は、エネルギー吸収部材の圧縮からの解放により原動部材から一時的に切り離すことができ、それにより所定の角度範囲で原動部材から従動部材へと実質的にトルクが伝達されない振動吸収アイソレータを提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、以下における本発明の詳細な説明と図面とによって指摘され明らかとされる。
【0010】
本発明は、原動部材と、従動部材と、原動部材に固定して取り付けられ、従動部材と滑り係合して従動部材の原動部材に対する所定の回転運動を可能にする保持部材と、原動部材と従動部材の間に配置され、原動部材と従動部材の間において駆動方向に圧縮されるエネルギー吸収部材とを備え、エネルギー吸収部材の圧縮からの解放により従動部材を原動部材から一時的に切り離すことができ、それにより所定の角度範囲で原動部材から従動部材へと実質的にトルクが伝達されない振動吸収アイソレータを含むものである。
【0011】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付図面は、本発明の好ましい実施形態を図解し、説明とともに本発明の原理を説明するために用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の振動吸収アイソレータ(decoupling vibration isolator)は、アイドル回転数において第1共振周波数がエンジン点火周波数よりも低くなるようにエンジンのベルト伝導システムを調整する。それゆえ、ベルト伝動における角振動の共振は、エンジン運転の全てのRPM領域において存在しない。しかし、エンジン始動の間、つまりエンジンが0rpmから加速し、低減された(調整された)システムの周波数を通過するとき、ベルト伝動において過渡的な共振があり、スリップ音「異音(chirp)」が発生し得る。従来の技術の場合、オルタネータの一方向クラッチ(OWC)のようなデカップリング装置を装備する必要がある。本発明では、一対のエラストマ要素間の各々に所定の隙間が設けられる。
【0013】
図1は、プーリの正面斜視図である。本発明の振動吸収アイソレータはプーリ10を備える。プーリ10は外側ベルト係合面11を備える。ベルト係合面11は、マルチリブ形状を有する。プーリ10は更に内側環状空間12を備える。環状空間12は外側部15、内側部16、放射状ウェブ14により形成される。略平らなタブ13a、13b、13c、13dは放射状ウェブ14に取り付けられ、環状空間12に突き出ている。内側部16により穴17が形成される。
【0014】
図2は、エラストマ部材を含むプーリの正面斜視図である。エラストマ部材20、21、22、23は、環状空間14内に配置される。エラストマ部材20、21、22、23は環状空間14の曲率にほぼ適合した円弧形状を有する。
【0015】
エラストマ部材20、21、22、23は、EPDM、HNBR、CR、天然ゴム、合成ゴム、又はこれらの複数の組み合わせなど、この技術分野で知られている素材から成る。それぞれ圧縮性がある。それぞれ略線形のバネ定数を備える。また各エラストマ部材は、周知の減衰特性、すなわち減衰率(μ)を有する。
【0016】
各エラストマ部材20、21、22、23は、それぞれ端部200、210、220、230を有し、それぞれのタブ13a、13b、13c、13dに各々係合する。本実施形態では、エラストマ部材20、21、22、23は、タブ13a、13b、13c、13d相互間の間隔よりも短い長さを有する。
【0017】
各エラストマ部材20、21、22、23は、約70°の円周長さを有する円弧形状をなす。この円周長さは限定されるものではなく、一例として示されるにすぎない。タブ13a、13b、13c、13dの間の円周間隔は約90°である。したがって、約20°の隙間130、131、132、133が、それぞれのタブと隣接するエラストマ部材の端部との間に生じる。例えば、隙間130は端部221とタブ13aの間に配置される。同様に隙間131は端部201とタブ13bの間に配置される。隙間132は端部231とタブ13cの間に配置される。隙間133は端部211とタブ13dの間に配置される。
【0018】
それぞれの隙間により、原動クランクフランジ50が減速している間、従動プーリ10を原動クランクフランジ50から一時的に切り離すことが可能になる。このような非連結状態は、それぞれの隙間によって生じた10と50の間の相対運動によって、その一部が達成される。すなわち、クランクフランジ50がプーリ10に動力を伝達しているとき、それぞれのエラストマ部材は圧縮され、それに対応して長さが僅かに減少する。クランクフランジ50がプーリ10に動力を伝達していないとき、それぞれのエラストマ部材は、圧縮力から解放され、僅かに長い非圧縮状態の長さまで伸張あるいは減圧される。この伸張は、プーリ10のクランクフランジ50に対する相対的な回転運動を可能にする各隙間130、131、132、133によって容易になる。それぞれのエネルギー吸収部材には負荷が掛からず、したがって全く圧縮されず、非連結状態とされる。すなわち、それぞれのエネルギー吸収部材は作動中に軸荷重を受けない。なお、非連結状態は、原動部材の全ての減速で発生するわけではない。従動部材付属コンポーネントのフリーオーバーラン(非連結状態)は、反転方向の慣性トルクが伝達トルクと等しいときに発生する。言い換えれば、非連結状態は、二つの要因に依存している。1)伝達されている従動部材の負荷トルク、2)全ての従動部材コンポーネントの慣性モーメント、である。もし従動部材コンポーネントの負荷トルクが小さく、従動部材の慣性が大きい場合には、非連結状態は低いレートの減速においても起こる可能性があり、この逆の場合も同様に起こり得る。
【0019】
ここで与えられた数値、寸法の情報は例示のためだけのものであり、具体的なアプリケーションに対して振動吸収アイソレータを提供するのに必要とされる可能性がある寸法について限定することを意図するものではない。
【0020】
図3は、クランクフランジの正面斜視図である。クランクフランジ50は通常エンジンクランク(図示せず)に接続されている。クランクフランジ50は放射状ウェブ部51と外側部52を備える。略平らなタブ1300a、1300b、1300c、1300dが放射状ウェブ部分51に取り付けられ、環状空間120に突き出ている。穴53はウェブ部分51に配置される。タブ1300a、1300b、1300c、1300dの間隔は略90°である。
【0021】
低摩擦表面54は外側部52の径方向内側部に配置される。低摩擦表面54は、エラストマ部材20、21、22、23の摺動を許容する。表面54の摩擦係数は、プーリ10とクランクフランジ50の間の相対運動の減衰を変化させるように、すなわち調整するように適合される。
【0022】
図4は、エラストマ部材を備えるクランクフランジの正面斜視図である。それぞれのタブ1300a、1300b、1300c、1300dは、それぞれの隙間130、131、132、133に配置される。各エラストマ部材は更にリブを備え、例えばリブ20a、20b、20c、20dがエラストマ部材20に備わっており、低摩擦表面54とエラストマ部材との間の面接触全体を低減する。リブはまた、環状空間14内での圧縮状態において、エラストマ部材が多少膨らめるようにする。
【0023】
図5は、組み立てられた振動吸収アイソレータの一部切り取り正面斜視図である。プーリ10はクランクフランジ50を覆うようにクランクフランジ50に係合される。クランクフランジ50はプーリ10の環状空間12の中に入れ子状態にされる。
【0024】
キャップ1400dは、タブ1300dを覆うように係合される。キャップ1400cはタブ1300cを覆うように係合される。キャップ1400bはタブ1300bを覆うように係合される。キャップ1400a(図示せず)はタブ1300a(図示せず)を覆うように係合される。
【0025】
組み立てられると、エラストマ部材20はタブ13aとキャップ1400bの間に拘束される。エラストマ部材22はタブ13cとキャップ1400aの間に拘束される。どのエラストマ部材の両端にも隙間は配置されない。したがって、それぞれの隙間は、プーリ10とクランクフランジ50から突き出す隣接したタブの間に配置される。すなわち、隙間130はタブ13aとタブ1300aの間に配置される。隙間131はタブ13bとタブ1300bの間に配置される。隙間132はタブ13cとタブ1300cの間に配置される。隙間133はタブ13dとタブ1300dの間に配置される。
【0026】
キャップ1400a、1400b、1400c、1400dは、本技術分野で知られている適切などのエラストマ材料でもよく、EPDM、HNBR、CR、天然ゴム、合成ゴム又はそれらの複数の組み合わせなどが含まれる。それぞれの隙間130、131、132、133の幅は、それぞれのキャップ1400a、1400b、1400c、1400dの各厚さによってそれぞれ狭くなる。例えば、隙間130はタブ13aとエラストマ部材22の端部221との間に配置されるが、上記隙間は、タブ1300aに設けられたキャップ1400aの円弧長さ(すなわち厚さ)より短くなった円弧長さ(すなわち幅)をもつことになる。したがって、隙間130、および隙間131、132、133の円弧長さは、全て略同じサイズのため、約5度から約10度の範囲にある。隙間130、131、132、133の幅は、運転中の瞬間的な角減速を吸収するための約3°から約5°のプーリ10のフランジ50に対する相対的な回転を許容すれば十分であることが理解されるであろう。
【0027】
ベルトBはベルト係合面11に係合する。ベルトBはVリブベルトもしくはVベルトであり、どちらも周知である。
【0028】
図6は、振動吸収アイソレータの正面斜視図である。クランクフランジ50はプーリ10の環状空間12の中に入れ子状態とされる。低摩擦ストリップ71は、プーリ10のキャップ70に対する相対的な回転運動を可能にする(図9参照)。
【0029】
図7は、組み立てられた振動吸収アイソレータの一部切り取り側面斜視図である。キャップ1400b、1400c、及び1400dは、エラストマ部材20、22を除いた状態で示される。ハブ60は、エンジンクランクシャフト(図示せず)に係合する。キャップ70はプーリ10をクランクフランジ50内に保持する。
【0030】
図8は、ベルトが係合された状態での振動吸収アイソレータの一部切り取り正面斜視図である。ベルトBは、プーリ10と係合した状態で示される。タブ13dとキャップ1400dの間の隙間133が明確に示されている。エラストマ部材21は、キャップ1400dとともに、タブ13bとタブ1300dの間に配置される。エラストマ部材23は、キャップ1400cとともに、タブ13dとタブ1300cの間に配置される。
【0031】
図9は、図8に示される本発明の減衰アイソレータの断面図である。プーリ10をフランジ50に対して適切な位置に固定するために、キャップ70はフランジ50にスポット溶接される。つまり、プーリ10は、キャップ70とフランジ50の間に拘束される。プーリ10のフランジ50に対する相対的な回転運動が可能なように、キャップ70はプーリ10と滑り係合される。低摩擦ストリップ71は、キャップ70とプーリ10の間の摩擦を減らすことにより、それらのパーツ間の相対的な回転運動を容易にする(図6も参照)。
【0032】
図10は本振動吸収アイソレータのトルクと角変位の間の関係を表したグラフである。座標(0,0)において、エラストマ部材20、21、22、23のそれぞれの端部は、キャップ1400b、1400d、1400a、1400c及びタブ13a、13b、13c、13dに全て係合される。本振動吸収アイソレータは、図4に示されるように、‘R’方向に駆動される。ベルト伝動システムにおいて伝達トルクが増加するに従い、角変位、つまりプーリ10のフランジ50に対する相対的な角度が増加する。つまり、エラストマ部材20、21、22、23がわずかに圧縮され、クランクフランジ50がプーリ10に対して進角することを可能にする。この様子が4分円曲線‘A’で示される。
【0033】
エンジンのクランクシャフトが瞬間的に大幅な角減速を行なう場合、隙間によりエラストマ部材がタブから離れる。それにより、従動される全てのベルト駆動エンジン補機の慣性は、クランクから分離された状態とされ、これによりシステムの振動が低減される。隙間の効果は、トルクの反転とともに4分円‘B’で示される。隙間は、クランクフランジ50に対し相対的に拘束されていないプーリ10のクランクフランジ50の瞬間的な角減速の間における相対的な回転に相当する。つまり、隙間は、クランクフランジ50とプーリ10の間で実質的にトルクが伝達されない所定の角度範囲での運動を可能にし、これにより、原動系を一時的に従動系から切り離す。角減速が非常に大きいときには、極度な衝撃によるあらゆる影響を軽減あるいは除去するように、過度な回転の衝撃を緩和するようにプーリタブがエラストマキャップに係合する。
【0034】
運転期間中、すなわち、フランジがプーリを駆動している加速時、エラストマ部材20、21、22、23は、点火により生じる衝撃を減衰するエネルギー吸収部材として機能し、これにより減衰する衝撃のエンジン補機への伝達を最小にする。これはまた、減速期間中の場合も同様である。すなわち、エラストマ部材はその圧縮性によって、衝撃を吸収し、さもなければベルト伝動システムを通して伝達されるであろう衝撃の大きさや持続時間を最小にする。
【0035】
図11は、クランクにおける回転速度と時間との間の関係のグラフである。本発明は内燃機関で使用されるため、それぞれの点火はクランクシャフトを介してベルト伝動により駆動される補機に伝達される衝撃を引き起こす。それぞれのパルスは、クランクシャフトを加速させ、そして減速させる。これらのパルスは本発明の振動吸収アイソレータにより吸収され、補機伝動ベルト補機へ伝達されるパルスの強さや持続時間を最小にする。これはベルトとともに補機の運転寿命を延ばす。
【0036】
図12は、他の実施形態の斜視図である。内燃機関の場合、クランクシャフトの端部は補機ベルト伝動システムに動力を伝達する。クランクシャフトは、エンジンシリンダの点火によって発生する250ヘルツから500ヘルツの周波数の捩り振動を通常起こす。もし捩り振動の振幅が大きければ(約0.5度よりも大きいとき)、クランクシャフトの捩り振動の振動エネルギーを吸収するためにクランクダンパが用いられるであろう。もしそうでなければ、クランクシャフトは疲労により破損する可能性がある。ノイズも発生するであろう。加えて、シリンダの点火が不連続かつ断続的なプロセスであるという事実のため、クランクシャフト内に角振動も発生する。角振動は比較的エンジンrpmが低いときによく発生し、約20から30ヘルツというかなりの低周波数で、振幅が約1度以上の角振動が発生する。この振動は減衰させることができるが、ダンピングにはかなり大きな質量の慣性部材が必要となるが、質量増大の要求はエンジンデザインの観点から実用的ではない。故にエンジン補機の角振動による悪影響を防ぐために、クランクシャフトダンパを用いて角振動を補機伝動から絶縁する。
【0037】
ダンパハブ80は、穴85を通して装着されたボルト83を含む既知の方法で、フランジ50に連結される。またダンパハブ80は、フランジ50にスポット溶接されてもよい。ダンパハブ80は、外側円周面81を備える。面81は軸方向に広がる幅を有している。
【0038】
エラストマ部材84は、面81と慣性部材82の間に配置される。エラストマ部材84は、面84と慣性部材82の間で圧縮され、圧縮厚さは非圧縮時の厚さの70%から90%である。慣性部材82は、エラストマ部材84と結合されたときに、捩り方向及び横方向のクランク振動を減衰するのに十分な質量を備える。本発明の振動吸収アイソレータは、図12に示される慣性質量82やエラストマ部材84を用いても、用いなくともよい。
【0039】
エラストマ部材84は、減衰特性(μ)を有する。減衰特性(μ)は、部材84が振動及びハブ80と慣性部材82の間の他のあらゆる相対運動を利用上の必要に合わせて減衰するように選択される。ボルト83はまた、この装置をエンジンクランクシャフト(図示せず)に取り付けるために使用される。
【0040】
エラストマ部材84には、この分野で知られているEPDM、HNBR、CR、天然及び合成ゴム、およびそれらを複数組み合わせたものを含む素材からなる。
【0041】
図13は、図12の別の実施形態の断面図である。図13は、図12に示される減衰部がクランクフランジ50に取り付けられていることを除いて、図9に示される装置を示している。
【0042】
図14は、別の実施形態の分解斜視図である。この別の実施形態では、エラストマ部材20、21、22、23は、対応する対となるバネ部材で置き換えられる。バネ部材は、2001、2002、2101、2102、2201、2202、2301、2302であり、それぞれ環状空間14の中に略一定の半径で配置される。バネ部材の対は2001、2002、2101、2102、2201、2202、2301、2302である。
【0043】
バネ部材のそれぞれの対の間に配置されるのは、それぞれ部材1502、1505、1508、1511である。それぞれの部材1502、1505、1508、1511は、環状空間14の中の互いに隣接したバネの端部を適切に整列し、適正な位置に保つように作用する。例えば、バネ2101と2102の端部は、部材1502に係合する。この交互に‘詰め合わせた(stacked)’配列は、余分な長さをもたないバネの使用を可能にし、そうでなければ、圧縮荷重がかかった状態でバネを環状空間内で曲げたり歪めたりする必要があるであろう。
【0044】
故に、2101、2102、1501、1502、1503を備える組立品が、本実施形態においてエラストマ部材21の代わりに使用される。2001、2002、1504、1505、1506を備える組立品が、本実施形態においてエラストマ部材20の代わりに使用される。2201、2202、1507、1508、1509を備える組立品が、本実施形態においてエラストマ部材22の代わりに使用される。2301、2302、1510、1511、1512を備える組立品が、本実施形態においてエラストマ部材23の代わりに使用される。
【0045】
図15は、図14の他の実施形態の分解斜視図である。それぞれのバネは円筒状の螺旋状のコイルバネであり、バネ定数(k)を有する。それぞれのバネのバネ定数は、周知のように略線形または可変である。それぞれのバネの組立体は図示されるように2つのバネを備え、直列されるバネの全体のバネ定数は例えば、
Total=(1/k2001+1/k2002−1
である。ダンパー全体のバネ定数は、並列された4つのバネ組立体のそれぞれの関数として決定され、全体のバネ定数は、
Total=k1(total)+k2(total)+k3(total)+k4(total)
である。それぞれのバネの大きさとバネ定数は、減衰されるべきパルスの振幅と周波数に基づいて選択される。
【0046】
各バネの対における各バネの長さは、エラストマ部材に対して他で説明されたのと同様に、それぞれのバネ組立体が(図に示されるように)プーリ10のタブとクランクフランジ50の間の空間を埋めるように選択される(図8参照)。
【0047】
図16は、図14の実施形態の断面図である。バネ2001と2002は、環状空間14の中に配置された状態で示される。それぞれのバネが圧縮されたときに各バネの左右の変位を最小にするために、全てのバネの直径は環状空間の幅よりもわずかに小さい。
【0048】
図17は、別の実施形態の分解斜視図である。図17に示される実施形態は、図14と図15に描かれるものと同様であるが、以下の点で異なっている。本実施形態では、図15におけるバネの対の代わりに、単独のバネを用いる。例えば、バネ2102と部材1501は、単一部材1502aにより置き換えられる。同様に、ばね2001と部材1504は単一部材1505aにより置き換えられる。同様に、バネ2201と部材1507は単一部材1508aにより置き換えられる。バネ2302と部材1510は単一部材1511aにより置き換えられる。バネ2101、2002、2202、及び2301は、それぞれ動作条件に従って所定のバネ定数を有する。
【0049】
まだ別の代替的な実施形態では、全体のバネ定数を変動させるために、それぞれのバネに他のバネと異なるバネ定数を与えることも可能である。この代替的な実施形態は、これまでのどの実施形態にも適用することができる。本実施形態において、バネは、与えられたトルクに対応してバネ力を発生するが、変動方式では、原動部材により与えられるトルクに対応して、トルクプーリ10とクランクフランジ50間の所定の角回転は変動する。
【0050】
本実施形態は、更に別のバネの組み合わせ、すなわち別のバネ定数の組み合わせ可能にすることにより、この装置に更に高いレベルの適応能力を与える。
【0051】
ここでは、本発明の複数の形態について説明されたが、当業者にとっては、ここで示され発明の精神や範囲から逸脱することなく、その構成や部品同士の間の関係を様々に変形できることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】プーリの正面斜視図である。
【図2】エラストマ部材を含むプーリの正面斜視図である。
【図3】クランクフランジの正面斜視図である。
【図4】エラストマ部材を含むクランクフランジの正面斜視図である。
【図5】組み立てられた振動吸収アイソレータの一部切り取り正面斜視図である。
【図6】振動吸収アイソレータの正面斜視図である。
【図7】組み立てられた振動吸収アイソレータの一部切り取り側面斜視図である。
【図8】ベルトと係合した振動吸収アイソレータの一部切り取り正面斜視図である。
【図9】図8に示される本発明の減衰アイソレータの断面図である。
【図10】振動吸収アイソレータに対するトルクと角変位との間の関係を示すグラフである。
【図11】クランクにおける回転速度と時間の間の関係を示すグラフである。
【図12】別の実施形態の斜視図である。
【図13】図12に示される別の実施形態の断面図である。
【図14】別の実施形態の分解斜視図である。
【図15】図14に示される別の実施形態の分解斜視図である。
【図16】図14に示される実施形態の断面図である。
【図17】別の実施形態の分解斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動部材と、
従動部材と、
前記原動部材に固定して取り付けられ、前記従動部材と滑り係合して前記従動部材の前記原動部材に対する所定の回転運動を可能にする保持部材と、
前記原動部材と前記従動部材の間に配置され、前記原動部材と前記従動部材の間において駆動方向に圧縮されるエネルギー吸収部材と、
前記原動部材が減速するとき、前記原動部材と前記従動部材との間の相対的な回転運動を可能にする前記原動部材と前記従動部材の間に配置される隙間とを備え、
前記エネルギー吸収部材の圧縮からの解放により前記従動部材を前記原動部材から一時的に切り離すことができ、それにより所定の角度範囲で前記原動部材から前記従動部材へと実質的にトルクが伝達されない
ことを特徴とする振動吸収アイソレータ。
【請求項2】
更に、前記従動部材と前記保持部材の間に配置された摩擦部材を備えることを特徴とする請求項1に記載の振動吸収アイソレータ。
【請求項3】
前記エネルギー吸収部材が、エラストマ材料を含み
前記エネルギー吸収部材が、前記従動部材に設けられた環状空間内に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の振動吸収アイソレータ。
【請求項4】
前記エネルギー吸収部材が、前記エネルギー吸収部材の外側面の周りに配置される複数のリブを備えることを特徴とする請求項1に記載の振動吸収アイソレータ。
【請求項5】
前記原動部材は、前記従動部材に第1回転方向に向けてトルクを伝達し、
前記原動部材の一時的に減速するとき、前記原動部材と前記従動部材の間で実質的にトルクが伝達されない
ことを特徴とする請求項1に記載の振動吸収アイソレータ。
【請求項6】
更に、原動部材に係合された慣性部材と、前記慣性部材と前記原動部材の間に配置されるエラストマ部材とを備えることを特徴とする請求項1に記載の振動吸収アイソレータ。
【請求項7】
前記慣性部材が、ハブにより前記原動部材に係合されることを特徴とする請求項6に記載の振動吸収アイソレータ。
【請求項8】
前記エネルギー吸収部材が、バネを備えることを特徴とする請求項1に記載の振動吸収アイソレータ。
【請求項9】
前記エネルギー吸収部材が、並列な複数のバネを備えることを特徴とする請求項1に記載の振動吸収アイソレータ。
【請求項10】
前記エネルギー吸収部材が、直列に連結された少なくとも一対のバネを備えることを特徴とする請求項1に記載の振動吸収アイソレータ。
【請求項11】
前記従動部材が、リブ形状を備えることを特徴とする請求項1に記載の振動吸収アイソレータ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公表番号】特表2009−529628(P2009−529628A)
【公表日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−558289(P2008−558289)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【国際出願番号】PCT/US2007/004625
【国際公開番号】WO2007/102996
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(504005091)ザ ゲイツ コーポレイション (103)
【Fターム(参考)】