説明

振動式圧縮機

【課題】ハウジング(3)内に設けたシリンダ(10)と、該シリンダ(10)内に設けられ、圧縮室(11)を区画形成するピストン(20,21)と、該ピストン(20,21)を往復可能に支持するバネ部材(15)と、該ピストン(20,21)を往復動させるピストン駆動手段(32)とを備えた振動式圧縮機を、騒音が発生せず、耐久性のあるものとする。
【解決手段】吸入弁と吐出弁とのうち、少なくとも一方をスリーブ(40,140)によって構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダ内において圧縮室を区画形成するピストンを往復動させる振動式圧縮機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ハウジング内に設けたシリンダと、該シリンダ内に設けられ、圧縮室を区画形成するピストンと、該ピストンを往復可能に支持するバネ部材と、該ピストンを往復動させるピストン駆動手段とを備えた振動式圧縮機は知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この振動式圧縮機では、ピストン内部の吸入側通路と圧縮室との境界における吸入ポートに吸入弁を設け、吸入側付勢バネによって、この吸入弁を吸入ポートに密着させて遮断する方向に引っ張って、支持している。同様に、シリンダ内の圧縮室に連通する空間と冷媒吐出管路との境界における吐出ポートに吐出弁を設け、吐出側付勢バネによって、この吐出弁を吐出ポートに密着させて遮断する方向に押圧して、支持している。
【特許文献1】特開平11−303734号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の振動式圧縮機では、各弁とそのポート周辺の弁座部とが衝突し、騒音が発生する。また、衝突が繰り返されることにより、弁が疲労して割れが発生するという問題がある。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、圧縮室を開閉する弁の構成に工夫を加えることにより、騒音が発生せず、耐久性のある振動式圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明では、吸入弁及び吐出弁のうち、少なくとも一方をスリーブ化した。
【0007】
具体的には、第1の発明では、ハウジング(3)内に設けたシリンダ(10)と、該シリンダ(10)内に設けられ、圧縮室(11)を区画形成するピストン(20,21)と、該ピストン(20,21)を往復可能に支持するバネ部材(15)と、該ピストン(20,21)を往復動させるピストン駆動手段(32)とを備えた振動式圧縮機を対象とする。
【0008】
そして、吸入弁と吐出弁とのうち、少なくとも一方をスリーブ(40,140)によって構成している。
【0009】
上記の構成によると、圧縮室(11)を開閉する弁をスリーブ化することによって、各弁とポート周辺の弁座部との間で衝突が起こることはない。このため、衝突が繰り返されて弁が疲労して弁に割れが発生することもない。
【0010】
第2の発明では、上記吸入弁と吐出弁とを2つのスリーブ(40,140)によって構成している。この構成によると、2つのスリーブ(40,140)をそれぞれ各ピストン(20,21)と連動させることで、圧縮室(11)への流体の吸入と、圧縮室(11)からの流体の吐出とが行われる。このとき、各スリーブ(40,140)のポートの位置をそれぞれ調節することで、吸入弁又は吐出弁の代用が可能であるため、スリーブ(40)が1つの場合に比べて急激に駆動させる必要がなく、その動きを滑らかにすることができる。よって、いずれの弁においても、衝突音は発生しない。
【0011】
第3の発明では、上記吸入弁と吐出弁とを1つのスリーブ(40)によって構成している。この構成によると、1つのスリーブ(40)を各ピストン(20,21)と連動させるだけで、圧縮室(11)への流体の吸入と、圧縮室(11)からの流体の吐出とが行われる。このとき、いずれの弁においても、衝突音は発生しない。
【0012】
第4の発明では、上記スリーブ(40,140)を駆動するスリーブ駆動手段(41)を設けた。この構成によると、スリーブ駆動手段(41)によってスリーブ(40,140)が駆動され、各ピストン(20,21)と連動することで流体の吸入及び吐出が行われる。
【0013】
第5の発明では、上記スリーブ駆動手段(41)をリニアモータとした。この構成によると、リニアモータの駆動によってスリーブ(40,140)が往復動する。
【0014】
第6の発明では、上記スリーブ(40,140)の位置及び位相を制御する制御部を設けた。この構成によると、制御部によってリニアモータを制御することにより、スリーブ(40,140)の位置及び位相が制御される。
【0015】
第7の発明では、上記ピストン駆動手段(32)もリニアモータとし、上記スリーブ駆動手段(41)及びピストン駆動手段(32)の固定子(34,37)を共有した。
【0016】
上記の構成によると、各リニアモータの可動子(33,44)に別々の電流を流すことで固定子(34,37)を共有していても、各リニアモータが個々に駆動される。
【0017】
第8の発明では、上記スリーブ(40,140)は、バネ部材(16)によってハウジング(3)に支持されているものとする。
【0018】
上記の構成によると、バネ部材(16)がスリーブ(40,140)を支持することで、スリーブ(40,140)が安定して駆動され、他の部材に接触することはない。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、上記第1の発明によれば、吸入弁及び吐出弁のうち、少なくとも一方をスリーブ(40,140)によって構成している。このため、衝突音の発生しない耐久性の高い振動式圧縮機が得られる。
【0020】
上記第2の発明によれば、2つのスリーブ(40,140)によって吸入弁及び吐出弁の役割を果たしている。このため、それぞれのスリーブ(40,140)の各ポートの位置関係を調節すればよく、各スリーブ(40,140)を滑らかに動かすことができ、騒音及び弁割れの防止効果がさらに顕著に発揮される。
【0021】
上記第3の発明によれば、1つのスリーブ(40)が吸入弁と吐出弁との役割を果たしている。このため、1つのスリーブ(40)が2つの機能を有するため、部品点数を少なくすることができる。
【0022】
上記第4の発明によれば、スリーブ(40,140)をスリーブ駆動手段(41)によって駆動している。上記第5の発明によれば、リニアモータによってスリーブ(40,140)を往復動させている。これらの発明によると、好適な振動式圧縮機が得られる。
【0023】
上記第6の発明によれば、制御部によってリニアモータを制御してスリーブ(40,140)の位置及び位相を制御している。このため、最適な弁の挙動を実現でき、効率のよい振動式圧縮機が得られる。
【0024】
上記第7の発明によれば、上記スリーブ駆動手段(41)及びピストン駆動手段(32)のリニアモータの固定子(34,37)を共有している。このため、部品点数が減ると共に、省スペース化を図ることができる。
【0025】
上記第8の発明によれば、上記スリーブ(40,140)をバネ部材(16)によってハウジング(3)に支持し、他の部材に接触しないようにしている。このため、スリーブ(40,140)は、滑らかに駆動され、騒音が発生することもない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1は、本発明の実施形態1に係る振動型圧縮機(1)を示し、この振動型圧縮機(1)は、例えば、空調機などに冷媒の吸入及び吐出を伴う圧縮機として利用される。
【0027】
上記振動型圧縮機(1)は、略円筒密閉状のハウジング(3)を有している。このハウジング(3)は、中空密閉状に形成され、高圧冷媒を吐出する吐出管路(3a)と、低圧冷媒を吸入する2本の吸入管路(3b)とが接続されている。
【0028】
上記ハウジング(3)の中央部には、中空密閉状のシリンダ(10)が固定されている。このシリンダ(10)は、該シリンダ(10)内での往復動作により流体を圧縮する一対のピストン(20,21)を備えている。この一対のピストン(20,21)の周りには、シリンダ(10)内を往復動可能な円筒状のスリーブ(40)が設けられている。すなわち、シリンダ(10)内には、スリーブ(40)に囲まれた状態で第1及び第2ピストン(20,21)が対向するように装填されていて、その間に圧縮室(11)が形成されるようになっている。
【0029】
上記ハウジング(3)には、上記シリンダ(10)の両側に一対の第1及び第2内部空間(30,31)が設けられている。ハウジング(3)の両端部には、上記吸入管路(3b)がそれぞれ接続されている。また、シリンダ(10)には、第1及び第2内部空間(30,31)を連通させるように、シリンダ内冷媒通路(12)が形成されている。
【0030】
上記第1及び第2内部空間(30,31)には、各ピストン(20,21)を個別に駆動するピストン駆動手段としてのピストン側リニアモータ(32)が設けられている。さらに、第1内部空間(30)には、上記スリーブを駆動するスリーブ駆動手段としてのスリーブ側リニアモータ(41)が設けられている。これらの2つのピストン側リニアモータ(32)及びスリーブ側リニアモータ(41)には、制御部(図示せず)によって制御された電流がそれぞれ送られる。なお、2つのピストン側リニアモータ(32)は直列に結線されているのが望ましいが、必ずしも直列でなくてもよい。
【0031】
上記各ピストン(20,21)は、棒状のピストン軸(22)の先端に設けられ、該ピストン軸(22)の中央部には、大径円板状のピストン側フランジ(23)が設けられている。このピストン側フランジ(23)からピストン(20,21)と反対側に延びる円筒状のピストン側ボビン(24)が設けられている。ピストン側ボビン(24)の先端部には、コイルを備えた上記ピストン側リニアモータ(32)のピストン側可動子(33)が設けられている。
【0032】
一方、上記スリーブ(40)は、上記第1ピストン(20)と反対側に向かって延び、その端部には、大径円板状のスリーブ側フランジ(42)が設けられている。このスリーブ側フランジ(42)から第1ピストン(20)と反対側に延びる円筒状のスリーブ側ボビン(43)が設けられている。スリーブ側ボビン(43)の先端部には、コイルを備えた上記スリーブ側リニアモータ(41)のスリーブ側可動子(44)が設けられている。
【0033】
上記第1及び第2内部空間(30,31)には、それぞれ円筒状のヨーク(34)が固定されている。これらのヨーク(34)には、中心部の中心孔(35)を囲むようにピストン(20,21)側が開口した凹陥溝(36)が設けられている。この凹陥溝(36)の中心側内面に磁石(37)が嵌め込まれている。第1内部空間(30)側のヨーク(34)及び磁石(37)は、ピストン側リニアモータ(32)及びスリーブ側リニアモータ(41)の共通の固定子を構成している。一方、第2内部空間(31)側のヨーク(34)及び磁石(37)は、ピストン側リニアモータ(32)単体の固定子を構成している。各凹陥溝(36)には、そのピストン(20,21)と反対側の底部に流体の流通路(38)が開口されている。
【0034】
上記ハウジング(3)には、上記第1及び第2ピストン(20,21)をそれぞれ往復可能に支持するバネ部材としてのピストン用フレクシャースプリング(15)が設けられている。具体的には、ピストン用フレクシャースプリング(15)は、第1及び第2内部空間(30,31)におけるハウジング(3)両端部に固定された基端側スプリング(15a)、及びヨーク(34)とピストン側フランジ(23)との間に設けられ、ヨーク(34)に固定されたピストン側スプリング(15b)からなる。そして、上記ヨーク(34)の中心孔(35)にピストン軸(22)が挿通され、ピストン軸(22)の基端部が上記基端側スプリング(15a)に支持され、中央部が上記ピストン側スプリング(15b)によって支持されることで、ピストン軸(22)が軸方向に変位可能に弾性的に支持されている。
【0035】
さらに、第1内部空間(30)内には、スリーブ(40)をその軸方向に変位可能に弾性的に支持するためのスリーブ用フレクシャースプリング(16)が設けられている。具体的には、このスリーブ用フレクシャースプリング(16)は、上記シリンダ(10)とスリーブ側フランジ(42)との間のハウジング(3)内周面に固定され、スリーブ(40)の第1ピストン(20)と反対側の端部を支持している。
【0036】
上記シリンダ(10)中央部には、圧縮室(11)と吐出管路(3a)とを接続するための吐出側通路(13)が形成されている一方、吐出側通路(13)と反対側には、上記シリンダ内冷媒通路(12)と圧縮室(11)とを接続する吸入側通路(14)が形成されている。
【0037】
一方、上記スリーブ(40)には、上記シリンダ(10)の吐出側通路(13)及び吸入側通路(14)にそれぞれ対応するように、吐出ポート(40a)と吸入ポート(40b)とが開口されている。すなわち、スリーブ(40)をスリーブ側リニアモータ(41)でシリンダ(10)内において往復動させ、その吐出ポート(40a)をシリンダ(10)の吐出側通路(13)と連通させたときには、圧縮室(11)内の冷媒が吐出側通路(13)から吐出される。一方、その吸入ポート(40b)をシリンダ(10)の吸入側通路(14)と連通させたときには、圧縮室(11)内に吸入側通路(14)及びシリンダ内冷媒通路(12)から冷媒が吸入されるようになっている。そして、スリーブ(40)によって圧縮室(11)と吐出側通路(13)及び吸入側通路(14)とが遮断された状態で第1及び第2ピストン(20,21)が互いに近付くことで圧縮室(11)内で冷媒が所定の圧力まで圧縮されるようになっている。すなわち、このスリーブ(40)が吸入弁及び吐出弁の役割を果たしている。
【0038】
−運転動作−
次に実施形態1に係る振動型圧縮機(1)の運転動作について説明する。
【0039】
まず、制御部によって、各ピストン側リニアモータ(32)のピストン側可動子(33)及びスリーブ側リニアモータ(41)のスリーブ側可動子(44)にそれぞれ個別に電流が流れる。
【0040】
このとき、各ピストン側リニアモータ(32)は直列に結線されているので、それぞれのピストン側可動子(33)のコイルには、同じ量の電流が流れる。このことで、ピストン用フレクシャースプリング(15)を変形させながら、第1及び第2ピストン(20,21)がシリンダ(10)内を同じタイミングで往復動する。
【0041】
また、スリーブ側可動子(44)が磁石(37)に対して往復動することで、スリーブ用フレクシャースプリング(16)を変形させながら、スリーブ(40)がシリンダ(10)内を往復動する。
【0042】
具体的に、図2及び図3を用いて各工程毎の第1及び第2ピストン(20,21)とスリーブ(40)との関係を説明する。なお、図2における実線はシリンダ(10)内の圧力を示し、一点鎖線はピストン(20,21)の変位を示し、破線はスリーブ(40)の変位を示している。図2の(A),(B),(C)は、図3の(A),(B),(C)にそれぞれ対応している。
【0043】
まず、圧縮工程において、図2(A)及び図3(A)に示すように、スリーブ(40)は、吐出ポート(40a)が閉の状態で、かつ吸入ポート(40b)が開の状態から閉の状態に移動する。そして、圧縮室(11)内の冷媒は、第1及び第2ピストン(20,21)が互いに近付く方向に移動することで、圧縮室(11)内で所定の圧力まで圧縮される。
【0044】
次に、吐出工程において、図2(B)及び図3(B)に示すように、スリーブ(40)は、吸入ポート(40b)が閉の状態で、かつ吐出ポート(40a)が開の状態となる。一方、第1及び第2ピストン(20,21)は互いに最も近付いた状態にある。そして、圧縮されて高圧となった冷媒がシリンダ(10)の吐出側通路(13)及び吐出管路(3a)を通ってハウジング(3)外に吐出される。
【0045】
さらに、吸入工程では、図2(C)及び図3(C)に示すように、スリーブ(40)は、吐出ポート(40a)が閉の状態で、かつ吸入ポート(40b)が開の状態にある。一方、上記第1及び第2ピストン(20,21)が互いに離れる方向に駆動される。圧縮室(11)内の圧力は最低値まで低下する。そして、第1及び第2内部空間(30,31)内の冷媒がシリンダ(10)のシリンダ内冷媒通路(12)、吸入側通路(14)及び吸入ポート(40b)を通って圧縮室(11)内に吸入される。同時に第1及び第2内部空間(30,31)内には、吸入管路(3b)から新たな冷媒が吸入される。この冷媒は、ピストン側リニアモータ(32)のヨーク(34)に形成した冷媒の流通路(38)を通ってシリンダ(10)側へ流入する。
【0046】
このようにして、上記圧縮行程、吐出工程及び吸入工程が繰り返されることで圧縮された冷媒が吐出管路(3a)から吐出される。
【0047】
−実施形態1の効果−
したがって、本発明の実施形態1に係る振動型圧縮機(1)によると、吸入弁及び吐出弁のうち、少なくとも一方をスリーブ(40)によって構成している。このため、衝突音の発生しない耐久性の高い振動式圧縮機が得られる。
【0048】
また、吸入弁と吐出弁とを1つのスリーブ(40)によって構成している。このため、1つのスリーブ(40)が2つの機能を有しているので、部品点数が少なくなる。
【0049】
また、制御部によってスリーブ側リニアモータ(41)を制御してスリーブ(40)の位置及び位相を制御している。このため、最適な弁の挙動を実現でき、効率のよい振動式圧縮機が得られる。
【0050】
さらに、第1内部空間(30)内では、スリーブ側リニアモータ(41)及びピストン側リニアモータ(32)のヨーク(34)及び磁石(37)を共有している。このため、部品点数が減ると共に、省スペース化を図ることができる。
【0051】
また、上記スリーブ(40,140)をスリーブ用フレクシャースプリング(16)によってハウジング(3)に支持している。このため、スリーブ(40,140)は他の部材に接触することなく滑らかに駆動され、騒音が発生することもない。
【0052】
(実施形態2)
図4は本発明の実施形態2を示し、主にスリーブ(40)の構成が異なる点で上記実施形態1と異なる。なお、以下の各実施形態では、図1と同じ部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0053】
本実施形態の振動型圧縮機(1)は、第1及び第2スリーブ(40,140)を有している。第1スリーブ(40)は、上記実施形態1のスリーブ(40)と同様のものである。第2スリーブ(140)は、第1スリーブ(40)の外周側に該第1スリーブ(40)を覆うように設けられ、第1スリーブ(40)とは異なる位置に第2吐出ポート(140a)及び第2吸入ポート(140b)を有している。
【0054】
上記第2スリーブ(140)を駆動するために、第2内部空間(31)にも、スリーブ側リニアモータ(41)が配置され、第2スリーブ(140)は、スリーブ用フレクシャースプリング(16)によってハウジング(3)に支持されている。
【0055】
すなわち、第1及び第2スリーブ(40,140)を各スリーブ側リニアモータ(41)でシリンダ(10)内においてそれぞれ往復動させ、その両方の吐出ポート(40a,140a)を一致させてシリンダ(10)の吐出側通路(13)と連通させたときには、圧縮室(11)内の冷媒が吐出側通路(13)から吐出される一方、その両方の吸入ポート(40b,140b)を一致させてシリンダ(10)の吸入側通路(14)と連通させたときには、圧縮室(11)内に吸入側通路(14)及びシリンダ内冷媒通路(12)から冷媒が吸入されるようになっている。そして、第1及び第2スリーブ(40,140)によって圧縮室(11)と吐出側通路(13)及び吸入側通路(14)とが遮断された状態で第1及び第2ピストン(20,21)が互いに近付くことで圧縮室(11)内で冷媒が所定の圧力まで圧縮されるようになっている。すなわち、これら2つのスリーブ(40,140)が吸入弁及び吐出弁の役割を果たしている。
【0056】
−運転動作−
次に実施形態2に係る振動型圧縮機(1)の運転動作について説明する。
【0057】
まず、制御部によって、各ピストン側リニアモータ(32)のピストン側可動子(33)及びスリーブ側リニアモータ(41)のスリーブ側可動子(44)にそれぞれ個別に電流が流れる。
【0058】
このとき、各ピストン側リニアモータ(32)は直列に結線されているので、それぞれのピストン側可動子(33)のコイルには、同じ量の電流が流れる。このことで、ピストン用フレクシャースプリング(15)を変形させながら、第1及び第2ピストン(20,21)がシリンダ(10)内を同じタイミングで往復動する。
【0059】
一方、2つのスリーブ側リニアモータ(41)のスリーブ側可動子(44)のコイルには、別々のタイミングで電流が流れる。それぞれのスリーブ側可動子(44)が磁石(37)に対して往復動することで、スリーブ用フレクシャースプリング(16)を変形させながら、第1及び第2スリーブ(40,140)がシリンダ(10)内をそれぞれ往復動する。
【0060】
具体的に、図5及び図6を用いて各工程毎に第1及び第2ピストン(20,21)と第1及び第2スリーブ(40,140)との関係を説明する。なお、図5における実線はシリンダ(10)内の圧力を示し、一点鎖線はピストン(20,21)の変位を示し、破線は第1スリーブ(40)の変位を示し、二点差線は第2スリーブ(140)の変位を示している。図5の(A),(B),(C)は、図6の(A),(B),(C)にそれぞれ対応している。
【0061】
まず、圧縮工程において、図5(A)及び図6(A)に示すように、第1及び第2スリーブ(40,140)は、各吐出ポート(40a,140a)が閉の状態で、かつ各吸入ポート(40b,140b)が開の状態から閉の状態に移動する。そして、圧縮室(11)内の冷媒は、第1及び第2ピストン(20,21)が互いに近付く方向に移動することで、圧縮室(11)内で所定の圧力まで圧縮される。
【0062】
次に、吐出工程において、図5(B)及び図6(B)に示すように、第1及び第2スリーブ(40,140)は、各吸入ポート(40b,140b)が閉の状態で、かつ各吐出ポート(40a,140a)が一致して開の状態となる。一方、第1及び第2ピストン(20,21)は互いに最も近付いた状態にある。そして、圧縮されて高圧となった冷媒がシリンダ(10)の吐出側通路(13)及び吐出管路(3a)を通ってハウジング(3)外に吐出される。
【0063】
さらに、吸入工程では、図5(C)及び図6(C)に示すように、第1及び第2スリーブ(40,140)は、各吐出ポート(40a,140a)が閉の状態で、かつ各吸入ポート(40b)が一致して開の状態にある。一方、上記第1及び第2ピストン(20,21)が互いに離れる方向に駆動される。圧縮室(11)内の圧力は最低値まで低下する。そして、第1及び第2内部空間(30,31)内の冷媒がシリンダ(10)のシリンダ内冷媒通路(12)、吸入側通路(14)及び吸入ポート(40b,140b)を通って圧縮室(11)内に吸入される。同時に第1及び第2内部空間(30,31)内には、吸入管路(3b)から新たな冷媒が吸入される。この冷媒は、ピストン側リニアモータ(32)のヨーク(34)に形成した冷媒の流通路(38)を通ってシリンダ(10)側へ流入する。
【0064】
このようにして、上記圧縮行程、吐出工程及び吸入工程が繰り返されることで圧縮された冷媒が吐出管路(3a)から吐出される。
【0065】
−実施形態2の効果−
したがって、本発明の実施形態2に係る振動型圧縮機(1)によると、吸入弁と吐出弁とを2つのスリーブ(40,140)によって構成している。このため、図5に正弦曲線で示されるように、上記実施形態1に比べて滑らかに各スリーブ(40,140)を動かすことができ、騒音及び弁割れの防止効果がさらに顕著に発揮される。
【0066】
さらに、第1及び第2内部空間(30,31)内でスリーブ側リニアモータ(41)及びピストン側リニアモータ(32)のヨーク(34)と磁石(37)とを共有している。このため、部品点数が減ると共に、省スペース化を図ることができる。
【0067】
(その他の実施形態)
本発明は、上記各実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0068】
すなわち、上記実施形態1では、吸入弁及び吐出弁をいずれもスリーブ(40)によって構成しているが、いずれか一方のみをスリーブ(40)によって構成してもよい。
【0069】
また、図7に示すように、ピストンを1つのみ有するいわゆるワンシリンダの振動式圧縮機においても、本発明が適用できる。この場合にも、上記実施形態1と同様の運転動作が行われ、同様の効果が発揮される。
【産業上の利用可能性】
【0070】
以上説明したように、本発明は、空調機などに利用され、冷媒の吸入及び吐出を伴う振動型圧縮機について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の実施形態1に係る振動式圧縮機を示す側面断面図である。
【図2】スリーブの動きとピストンの変位を示すタイミングチャートである。
【図3】スリーブの動きとピストンの変位を示す要部拡大断面図であり、(A)が圧縮工程を、(B)が吐出工程を、また(C)が吸入工程をそれぞれ示している。
【図4】本発明の実施形態2に係る振動式圧縮機を示す側面断面図である。
【図5】本発明の実施形態2に係る図2相当図である。
【図6】本発明の実施形態2に係る図3相当図である。
【図7】その他の実施形態に係る振動式圧縮機を示す側面断面図である。
【符号の説明】
【0072】
3 ハウジング
10 シリンダ
11 圧縮室
15 ピストン用フレクシャースプリング(バネ部材)
16 スリーブ用フレクシャースプリング(バネ部材)
32 ピストン側リニアモータ(ピストン駆動手段)
34 ヨーク(固定子)
37 磁石(固定子)
40,140 スリーブ
41 スリーブ側リニアモータ(スリーブ駆動手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(3)内に設けたシリンダ(10)と、該シリンダ(10)内に設けられ、圧縮室(11)を区画形成するピストン(20,21)と、該ピストン(20,21)を往復可能に支持するバネ部材(15)と、該ピストン(20,21)を往復動させるピストン駆動手段(32)とを備えた振動式圧縮機であって、
吸入弁と吐出弁とのうち、少なくとも一方をスリーブ(40,140)によって構成したことを特徴とする振動式圧縮機。
【請求項2】
請求項1に記載の振動式圧縮機において、
上記吸入弁と吐出弁とを2つのスリーブ(40,140)によって構成したことを特徴とする振動式圧縮機。
【請求項3】
請求項1に記載の振動式圧縮機において、
上記吸入弁と吐出弁とを1つのスリーブ(40)によって構成したことを特徴とする振動式圧縮機。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の振動式圧縮機において、
上記スリーブ(40,140)を駆動するスリーブ駆動手段(41)を設けたことを特徴とする振動式圧縮機。
【請求項5】
請求項4に記載の振動式圧縮機において、
上記スリーブ駆動手段(41)をリニアモータとしたことを特徴とする振動式圧縮機。
【請求項6】
請求項5に記載の振動式圧縮機において、
上記スリーブ(40,140)の位置及び位相を制御する制御部を設けたことを特徴とする振動式圧縮機。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の振動式圧縮機において、
上記ピストン駆動手段(32)もリニアモータとし、
上記スリーブ駆動手段(41)及びピストン駆動手段(32)の固定子(34,37)を共有したことを特徴とする振動式圧縮機。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1つに記載の振動式圧縮機において、
上記スリーブ(40,140)は、バネ部材(16)によってハウジング(3)に支持されていることを特徴とする振動式圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−2708(P2006−2708A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−181676(P2004−181676)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】