説明

振動板及び振動波駆動装置

【課題】引き回し電極を設けるための特殊な装置を不要とし、製造工程及び製造コストの低減を図ることを可能とした振動板及び振動波駆動装置を提供する。
【解決手段】振動板1の一方の短辺側に機械加工により切り欠き部3を形成し、振動板1の短辺側の下面に圧電素子2を接着する。圧電素子2における振動板1との接着面に電極6を形成し、振動板1の切り欠き部3を介して露出させる。圧電素子2における振動板1との接着面とは反対側の面に電極7と取り出し電極8を形成しておく。振動板1の切り欠き部3から露出した圧電素子2の電極6上から圧電素子2の端面及び振動板1の端面を経由し、圧電素子2の電極7と同じ面上にある取り出し電極8まで、導電ペーストにより引き回し電極5を配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気−機械エネルギ変換素子が貼り付けられる振動板に関し、特に電気−機械エネルギ変換素子の電極に導通可能な電極が配設される振動板及び振動波駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気エネルギ(電圧)を機械エネルギ(振動)に変換する電気−機械エネルギ変換素子には、積層型の圧電素子と単板型の圧電素子があり、様々な分野で利用されている。単板型の圧電素子は、圧電セラミックスの板厚方向に対向する両面に電極を形成し、対向する電極間で分極することで圧電性を持たせる。圧電効果を利用して、圧電素子に外部応力や振動変位を与えたり、圧電素子の電極間に電気信号を発生させたり、外部から圧電素子の電極間に電圧を与え圧電素子に機械振動を起こさせたりする。
【0003】
通常、圧電素子を利用して機械振動を発生する例としては、圧電ブザーや超音波モータに組み込まれる振動板(ステータ)などがある。圧電ブザーや超音波モータでは、圧電素子の振動を振動板に伝達するために、圧電素子を振動板に貼り付けて使用する。圧電素子に外部電源と導通を図るためのリード線や電気基板を接続するには、以下のようにしている。即ち、圧電素子の両面の対向する電極にそれぞれリード線を接続するのではなく、圧電素子の一方の電極の形成された面側に2本のリード線を接続するようにしている。この例を図9に示す。
【0004】
図9は、従来例に係る圧電ブザーを示す斜視図である。
【0005】
図9において、圧電ブザー120は、両面に電極を形成した圧電素子121を金属板である振動板123に貼り付けたものである。圧電素子121の一方の面に形成された電極122と振動板123に対して、半田124により2本のリード線125を接続している。
【0006】
しかしながら、このような圧電素子における一方の面側に2本のリード線を接続することで外部電源と導通を図るには、振動板は金属などの導体である必要があった。そこで、図10に示すような圧電素子が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
図10は、従来例(特許文献1)に係る圧電素子を示す図であり、(a)は、上面図、(b)は、下面図、(c)は、(b)の矢視A−A線に沿う断面図である。
【0008】
図10において、圧電素子130は、圧電セラミックス131の両面に対向する電極132、133を形成したものである。一方の電極132と他方の電極133を一方の面(電極133のある面)側に配置するために、以下の構成としている。一方の電極132の一部から圧電セラミックス131の端面を経由して他方の電極133の側まで導通を可能とする引き回し電極134を設けている。
【特許文献1】特開2001−298344号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献1記載の引き回し電極を設けた圧電素子においては、振動板が絶縁体である場合でも簡単に圧電素子の一方の電極のある面側にリード線や基板を接続することができる。しかしながら、このような圧電素子を製造するには、引き回し電極を設けるための特殊な装置が必要となる。更に、圧電素子の製造工程が増加すると共に製造コストが上昇するという問題がある。
【0010】
本発明の目的は、引き回し電極を設けるための特殊な装置を不要とし、製造工程及び製造コストの低減を図ることを可能とした振動板及び振動波駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するために、本発明の振動板は、絶縁体から構成され、両面に電極を有する電気−機械エネルギ変換素子が接着される振動板であって、前記電気−機械エネルギ変換素子の一方の電極が形成されると共に前記振動板に接着された面に対応して形成された切り欠き部と、前記切り欠き部を介して、前記電気−機械エネルギ変換素子の前記一方の電極から前記電気−機械エネルギ変換素子の他方の電極が形成された面まで配設された引き回し電極と、を備えることを特徴とする。
【0012】
上述の目的を達成するために、本発明の振動板は、絶縁体から構成され、両面に電極を有する電気−機械エネルギ変換素子が接着される振動板であって、前記電気−機械エネルギ変換素子の一方の電極が形成されると共に前記振動板に接着された面に対応して形成された面取り部と、前記面取り部を介して、前記電気−機械エネルギ変換素子の前記一方の電極から前記電気−機械エネルギ変換素子の他方の電極が形成された面まで配設された引き回し電極と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、振動板に形成した切り欠き部又は面取り部を介して、電気−機械エネルギ変換素子の一方の電極から他方の電極が形成された面まで引き回し電極を配設する。これにより、引き回し電極を設けるための特殊な装置が不要となると共に、製造工程及び製造コストの低減を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0015】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る圧電素子を接着した振動板の構成を示す斜視図である。図2は、振動板と引き回し電極の関係を示す図であり、(a)は、正面図、(b)は、右側面図、(c)は、下面図である。
【0016】
図1及び図2において、振動板1は、板状の絶縁体として形成されている。振動板1の一方の短辺側には、機械加工により振動板の上から見た形状が半円形の切り欠き部3が形成されている。振動板1における切り欠き部3が形成された短辺側の下面には、圧電素子2が接着剤により貼り付けられている。圧電素子2は、両面に電極を有する。圧電素子2における振動板1との接着面には、電極6が形成されており、振動板1の切り欠き部3を介して露出している。圧電素子2における振動板1との接着面とは反対側の面には、大きい領域の電極7と、小さい領域の取り出し電極8が形成されている。
【0017】
更に、振動板1の切り欠き部3を介して、圧電素子2における電極6が形成された面から反対側の面にかけて、引き回し電極5が配設されている。即ち、引き回し電極5は、振動板1の切り欠き部3から露出した圧電素子2の電極6上から圧電素子2の端面及び振動板1の端面を経由して、圧電素子2の電極7と同じ面上にある取り出し電極8まで配設されている。この場合、刷毛を使用して導電ペーストを上記経路に引き回すことで、引き回し電極5として形成している。
【0018】
更に、振動板1に接着されている圧電素子2の電極7と取り出し電極8には、不図示の外部電源に接続されたフレキシブル基板9が貼り付けられる。これにより、圧電素子2の両面に形成された板厚方向に対向する電極6と電極7に対して、一方の面(電極7が形成されている面)側から導通を取ることができる。従って、電極6と電極7に外部電源から電圧を印加することができる。
【0019】
上記構成において、外部電源に接続されたフレキシブル基板9を介して圧電素子2に交流電圧を印加すると、圧電素子2の圧電効果に伴う振動が振動板1に伝わる。圧電素子2に印加する交流電圧の周波数を変えることで、様々な振動モードの振動を振動板1に発生させることができる。その結果、振動板1の表面に接する物体を、振動板11に発生させた振動によって移動させることが可能となる。
【0020】
振動板1は、本実施の形態ではセラミックスから形成されている。圧電素子2は、予め圧電セラミックスの両面に銀電極用の導電ペーストを印刷し、設定された温度及び時間(例えば約650℃の温度で10分)で焼き付けて分極したものである。振動板1と圧電素子2の接着は、エポキシ系の接着剤を使用し加圧しながら、設定された温度及び時間(例えば60℃〜120℃で1〜2時間)をかけて熱硬化させることで行う。
【0021】
その後、熱硬化性の接着剤を含有した銀粉末からなる導電ペーストを、振動板1の切り欠き部3を介して圧電素子2の電極6側から取り出し電極8側まで塗布し、設定された温度及び時間(例えば約120℃で1時間)をかけて硬化させる。これにより、引き回し電極5を形成する。
【0022】
本実施の形態では、振動板1の寸法は、縦40mm、横30mm、厚さ0.3mmである。また、振動板1の切り欠き部3は、半径1.5mmの半円状である。また、圧電素子2の寸法は、縦30mm、横7mm、厚さ0.2mmである。
【0023】
振動板1の切り欠き部3は、ダイヤモンド砥石で機械加工(研削加工)することで形成している。切り欠き部3の形状は、機械加工を考えると半円状が望ましいが、レーザ加工などで三角形や四角形など任意の形状に形成することも可能である。更に、切り欠き部3は、振動板1の外周縁の任意の位置に複数設けることが可能である。例えば、振動板1の両方の短辺に切り欠き部を形成すると共に、両方の短辺の下面(或いは上下両面)に圧電素子を接着する構成としてもよい。
【0024】
以上説明したように、本実施の形態によれば、絶縁体である振動板1に機械加工により切り欠き部3を形成する。更に、振動板1の切り欠き部3を介して、圧電素子2における振動板1との接着面側の電極6からこれと対向する反対側の面の取り出し電極8まで、引き回し電極5を配設する。
【0025】
このような構成の振動板1を用いることで、従来どおりの圧電素子をそのまま使用することができる。これにより、引き回し電極を設けるための特殊な装置が不要となると共に、製造工程及び製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0026】
[第2の実施の形態]
図3は、本発明の第2の実施の形態に係る圧電素子を接着した振動板の構成を示す斜視図である。図4は、振動板と引き回し電極の関係を示す図であり、(a)は、正面図、(b)は、右側面図、(c)は、下面図である。
【0027】
図3及び図4において、振動板11は、板状の絶縁体(本実施の形態ではセラミックス)として形成されている。振動板11の4つの角部のうち1つの角部には、機械加工により面取り部14が形成されている。振動板11における面取り部14が形成された短辺側の下面には、圧電素子2が接着剤により貼り付けられている。圧電素子2における振動板11との接着面には、電極6が形成されており、振動板11の面取り部14の前面側で露出している。圧電素子2における振動板11との接着面とは反対側の面には、電極7と取り出し電極8が形成されている。
【0028】
更に、振動板11の面取り部14を介して、圧電素子2における電極6が形成された面から反対側の面にかけて、引き回し電極15が配設されている。即ち、引き回し電極15は、振動板11の面取り部14の前面側に露出した圧電素子2の電極6上から圧電素子2の端面を経由して、圧電素子2の電極7と同じ面上にある取り出し電極8まで配設されている。この場合、刷毛を使用して導電ペーストを上記経路に引き回すことで、引き回し電極15として形成している。
【0029】
更に、振動板1に接着されている圧電素子2の電極7と取り出し電極8には、不図示の外部電源に接続されたフレキシブル基板9が貼り付けられる。これにより、圧電素子2の両面に形成された板厚方向に対向する電極6と電極7に対して、一方の面(電極7が形成されている面)側から導通を取ることができる。従って、電極6と電極7に外部電源から電圧を印加することができる。
【0030】
上記構成において、第1の実施の形態と同様に、外部電源に接続されたフレキシブル基板9を介して圧電素子2に交流電圧を印加すると、圧電素子2の圧電効果に伴う振動が振動板11に伝わる。圧電素子2に印加する交流電圧の周波数を変えることで、様々な振動モードの振動を振動板11に発生させることができる。その結果、振動板11に接する物体を、振動板11に発生させた振動によって移動させることが可能となる。
【0031】
振動板11及び圧電素子2の寸法(縦、横、厚さ)、振動板11と圧電素子2の接着に用いる接着剤、導電ペーストなどは、基本的に上記第1の実施の形態と同様であり、説明を省略する。
【0032】
振動板11における面取り部14が形成された角部の形状は、2mm×2mmの直角三角形である。ここで、振動板11の材料となるセラミックスは硬くて脆く割れ易い。そのため、上記第1の実施の形態のように振動板1に切り欠き部3を加工する場合と比較し、振動板11に面取り部14を加工する場合の方が無理な応力もかからず短時間で加工しやすい利点がある。但し、面取り部14を形成可能な箇所は振動板11の4個所の角部しかないため、切り欠き部3のように任意の位置に任意の個数設けることができないという側面がある。
【0033】
以上説明したように、本実施の形態によれば、絶縁体である振動板11に機械加工により面取り部14を形成する。更に、振動板11の面取り部14を介して、圧電素子2における振動板11との接着面側の電極6からこれと対向する反対側の面の取り出し電極8まで、引き回し電極15を配設する。
【0034】
このような構成の振動板11を用いることで、従来どおりの圧電素子をそのまま使用することができる。これにより、引き回し電極を設けるための特殊な装置が不要となると共に、製造工程及び製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0035】
[第3の実施の形態]
図5は、本発明の第3の実施の形態に係る圧電素子を接着した振動板の構成を示す斜視図である。
【0036】
図5において、振動板21は、板状の絶縁体(本実施の形態ではセラミックス)として形成されている。振動板21の4つの角部のうち1つの角部には、機械加工により面取り部24が形成されている。振動板21における面取り部24が形成された短辺側の上下両面には、圧電素子2がそれぞれ接着剤により貼り付けられている。
【0037】
更に、振動板21の面取り部24を介して、上下対向する2つの圧電素子2の間に引き回し電極25が配設されている。即ち、引き回し電極25は、上側の圧電素子2及び下側の圧電素子2における振動板21との接着面側の電極にそれぞれ導通され、下側の圧電素子2における振動板21との接着面とは反対側の面に形成された電極(不図示)まで配設されている。
【0038】
振動板21及び圧電素子2の寸法(縦、横、厚さ)、振動板21と圧電素子2の接着に用いる接着剤、導電ペーストなどは、基本的に上記第1の実施の形態と同様であり、説明を省略する。また、振動板21における面取り部24が形成された角部の形状は、基本的に上記第2の実施の形態と同様であり、説明を省略する。
【0039】
以上説明したように、本実施の形態によれば、絶縁体である振動板21に機械加工により面取り部24を形成する。更に、振動板21の面取り部24を介して、上側及び下側の圧電素子2における振動板21との接着面側の電極にそれぞれ導通し、下側の圧電素子2における振動板21との接着面とは反対側の面の電極まで、引き回し電極25を配設する。
【0040】
このような構成の振動板21を用いることで、従来どおりの圧電素子をそのまま使用することができる。これにより、引き回し電極を設けるための特殊な装置が不要となると共に、製造工程及び製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0041】
[第4の実施の形態]
図6は、本発明の第4の実施の形態に係る圧電素子を接着した振動板の構成を示す斜視図である。
【0042】
図6において、振動板31は、板状の絶縁体(本実施の形態ではセラミックス)として形成されている。振動板31の4つの角部のうち2つの角部には、機械加工により面取り部34がそれぞれ形成されている。振動板31における面取り部34が形成された両方の短辺側の下面には、圧電素子2がそれぞれ接着剤により貼り付けられている。
【0043】
更に、振動板31の2箇所の面取り部34を介して、圧電素子2における振動板31との接着側の面から反対側の面にかけて、引き回し電極35がそれぞれ配設されている。即ち、2つの引き回し電極35は、それぞれ、振動板31の面取り部34の前面側に露出した圧電素子2の電極上から圧電素子2の端面を経由して、圧電素子2の裏面側の電極まで配設されている。
【0044】
振動板31及び圧電素子2の寸法(縦、横、厚さ)、振動板31と圧電素子2の接着に用いる接着剤、導電ペーストなどは、基本的に上記第1の実施の形態と同様であり、説明を省略する。また、振動板31における面取り部34が形成された角部の形状は、基本的に上記第2の実施の形態と同様であり、説明を省略する。
【0045】
以上説明したように、本実施の形態によれば、絶縁体である振動板31に機械加工により2箇所の面取り部34を形成する。更に、振動板31の2箇所の面取り部34を介して、圧電素子2における振動板31との接着面側の電極に導通し、圧電素子2における振動板31との接着面とは反対側の面の電極まで、2つの引き回し電極35を配設する。
【0046】
このような構成の振動板31を用いることで、従来どおりの圧電素子をそのまま使用することができる。これにより、引き回し電極を設けるための特殊な装置が不要となると共に、製造工程及び製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0047】
[第5の実施の形態]
図7は、本発明の第5の実施の形態に係る圧電素子を接着した振動板の構成を示す斜視図である。
【0048】
図7において、振動板41は、板状の絶縁体(本実施の形態ではセラミックス)として形成されている。振動板41の4つの角部のうち2つの角部には、機械加工により面取り部44がそれぞれ形成されている。振動板41における面取り部44が形成された両方の短辺側の上下両面には、圧電素子2がそれぞれ接着剤により貼り付けられている。
【0049】
更に、振動板41の2箇所の面取り部24を介して、それぞれ、上下対向する2つの圧電素子2の間に引き回し電極45が配設されている。即ち、2つの引き回し電極45は、上側の圧電素子2及び下側の圧電素子2における振動板41との接着面側の電極にそれぞれ導通され、下側の圧電素子2における振動板41との接着面とは反対側の面に形成された電極まで配設されている。
【0050】
振動板41及び圧電素子2の寸法(縦、横、厚さ)、振動板41と圧電素子2の接着に用いる接着剤、導電ペーストなどは、基本的に上記第1の実施の形態と同様であり、説明を省略する。また、振動板41における面取り部44が形成された角部の形状は、基本的に上記第2の実施の形態と同様であり、説明を省略する。
【0051】
以上説明したように、本実施の形態によれば、絶縁体である振動板41に機械加工により2箇所の面取り部44を形成する。更に、振動板41の2箇所の面取り部44を介して、上側及び下側の圧電素子2における振動板41との接着面側の電極にそれぞれ導通し、下側の圧電素子2における振動板41との接着面とは反対側の面の電極まで、引き回し電極45を配設する。
【0052】
このような構成の振動板41を用いることで、従来どおりの圧電素子をそのまま使用することができる。これにより、引き回し電極を設けるための特殊な装置が不要となると共に、製造工程及び製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0053】
[第6の実施の形態]
図8は、本発明の第6の実施の形態に係る圧電素子を接着した振動板の構成を示す斜視図である。
【0054】
図8において、振動板51は、板状の絶縁体(本実施の形態ではセラミックス)として形成されている。振動板51の4つの角部には、機械加工により面取り部54がそれぞれ形成されている。振動板51における面取り部54が形成された両方の短辺側の下面には、上述した圧電素子2の長さが半分の形状の圧電素子52−1〜52−4が接着剤によりそれぞれ貼り付けられている。圧電素子52−1と圧電素子52−2は、接着剤により接着され、圧電素子52−3と圧電素子52−4は、接着剤により接着されている。
【0055】
更に、振動板51の4箇所の面取り部54を介して、それぞれ、圧電素子2における振動板51との接着側の面から反対側の面にかけて、引き回し電極55が配設されている。即ち、4つの引き回し電極55は、それぞれ、振動板51の面取り部54の前面側に露出した圧電素子52−1〜52−4の電極上から圧電素子52−1〜52−4の端面を経由して、圧電素子52−1〜52−4の裏面側の電極まで配設されている。
【0056】
振動板51及び圧電素子2の寸法(縦、横、厚さ)、振動板51と圧電素子2の接着に用いる接着剤、導電ペーストなどは、基本的に上記第1の実施の形態と同様であり、説明を省略する。また、振動板51における面取り部54が形成された角部の形状は、基本的に上記第2の実施の形態と同様であり、説明を省略する。
【0057】
以上説明したように、本実施の形態によれば、絶縁体である振動板51に機械加工により4箇所の面取り部54を形成する。更に、振動板51の4箇所の面取り部54を介して、圧電素子における振動板51との接着面側の電極にそれぞれ導通し、圧電素子における振動板51との接着面とは反対側の面の電極まで、引き回し電極55を配設する。
【0058】
このような構成の振動板51を用いることで、従来どおりの圧電素子をそのまま使用することができる。これにより、引き回し電極を設けるための特殊な装置が不要となると共に、製造工程及び製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0059】
[他の実施の形態]
上記第1乃至第6の実施の形態では、振動板を形成する材料としてセラミックスを用いたが、これに限定されるものではない。振動板を形成する材料としては、絶縁体であればよく、例えばガラスなどを用いてもよい。振動板としては振動の減衰の少ない材料が好ましく、特にガラスは振動の減衰が少なく適している。
【0060】
上記第1乃至第6の実施の形態では、圧電素子の辺や角部を振動板の辺や角部と一致させる構成としたが、これに限定されるものではない。圧電素子の辺や角部は、圧電素子に振動板との接着面があれば、振動板の辺や角部と一致させる必要はなく振動板からはみ出していても、振動板の辺の内側に接着してあっても構わない。
【0061】
上記第1乃至第6の実施の形態では、圧電素子を振動板の短辺に沿って貼り付ける構成としたが、これに限定されるものではない。圧電素子を振動板の長辺に沿って貼り付ける構成としてもよい。
【0062】
上記第1乃至第6の実施の形態では、圧電素子を接着した振動板について説明したが、振動板のみの適用に限定されるものではない。振動板を備えると共に該振動板上の物体を移動させる振動波駆動装置にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る圧電素子を接着した振動板の構成を示す斜視図である。
【図2】図1の振動板と引き回し電極の関係を示す図であり、(a)は、正面図、(b)は、右側面図、(c)は、下面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る圧電素子を接着した振動板の構成を示す斜視図である。
【図4】図3の振動板と引き回し電極の関係を示す図であり、(a)は、正面図、(b)は、右側面図、(c)は、下面図である。
【図5】本発明の第3の実施の形態に係る圧電素子を接着した振動板の構成を示す斜視図である。
【図6】本発明の第4の実施の形態に係る圧電素子を接着した振動板の構成を示す斜視図である。
【図7】本発明の第5の実施の形態に係る圧電素子を接着した振動板の構成を示す斜視図である。
【図8】本発明の第6の実施の形態に係る圧電素子を接着した振動板の構成を示す斜視図である。
【図9】従来例に係る圧電ブザーを示す斜視図である。
【図10】従来例に係る圧電素子を示す図であり、(a)は、上面図、(b)は、下面図、(c)は、(b)の矢視A−A線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0064】
1、11、21、31、41、51 振動板
2、52−1〜52−4 圧電素子(電気−機械エネルギ変換素子)
3 切り欠き部
4、14、24、34、44、54 面取り部
5、15、25、35、45、55 引き回し電極
6 電極(一方の電極)
7 電極(他方の電極)
8 取り出し電極(他方の電極)
9 フレキシブル基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体から構成され、両面に電極を有する電気−機械エネルギ変換素子が接着される振動板であって、
前記電気−機械エネルギ変換素子の一方の電極が形成されると共に前記振動板に接着された面に対応して形成された切り欠き部と、
前記切り欠き部を介して、前記電気−機械エネルギ変換素子の前記一方の電極から前記電気−機械エネルギ変換素子の他方の電極が形成された面まで配設された引き回し電極と、
を備えることを特徴とする振動板。
【請求項2】
絶縁体から構成され、両面に電極を有する電気−機械エネルギ変換素子が接着される振動板であって、
前記電気−機械エネルギ変換素子の一方の電極が形成されると共に前記振動板に接着された面に対応して形成された面取り部と、
前記面取り部を介して、前記電気−機械エネルギ変換素子の前記一方の電極から前記電気−機械エネルギ変換素子の他方の電極が形成された面まで配設された引き回し電極と、
を備えることを特徴とする振動板。
【請求項3】
前記切り欠き部は、前記振動板の外周部に少なくとも1つ形成されることを特徴とする請求項1記載の振動板。
【請求項4】
前記面取り部は、前記振動板の少なくとも1つの角部に形成されることを特徴とする請求項2記載の振動板。
【請求項5】
前記電気−機械エネルギ変換素子は、前記振動板の1つの辺に沿って前記振動板の片面に接着される圧電素子であることを特徴とする請求項1又は2記載の振動板。
【請求項6】
前記電気−機械エネルギ変換素子は、前記振動板の1つの辺に沿って前記振動板の両面に接着される圧電素子であることを特徴とする請求項1又は2記載の振動板。
【請求項7】
前記電気−機械エネルギ変換素子は、前記振動板の対向する両側の辺に沿って前記振動板の片面に接着される圧電素子であることを特徴とする請求項1又は2記載の振動板。
【請求項8】
前記電気−機械エネルギ変換素子は、前記振動板の対向する両側の辺に沿って前記振動板の両面に接着される圧電素子であることを特徴とする請求項1又は2記載の振動板。
【請求項9】
前記振動板は、セラミックス、ガラスを含む群から選択されることを特徴とする請求項1乃至8の何れかに記載の振動板。
【請求項10】
前記請求項1乃至9の何れかに記載の振動板を備え、前記振動板に接する物体を移動させることを特徴とする振動波駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−264095(P2007−264095A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−86060(P2006−86060)
【出願日】平成18年3月27日(2006.3.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】