説明

振動装置

【課題】より小さくより軽い振動装置を提供する。
【解決手段】振動装置は、それぞれが1以上の磁性部材を有する固定子と回転子を持つ。回転子と固定子とのうちの少なくとも一方の磁性部材は電磁石を有し、その電磁石は電流を供給されることにより、回転子と固定子とのうちの他方の磁性部材と相互作用して回転子の固定子に対する回転を引き起こすことができ、回転子の1以上の磁性部材は、磁性部材を全体として考えたときの重心が回転子の回転軸からずれている。回転子と固定子は、液体を収容する空洞内に配置されているか、あるいは液体を収容する空洞を共同して形態している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
振動装置は、ポケベルや携帯電話などの用途(「無音」呼び出しなどのため)や、コンピュータゲームのハンドヘルドコントローラ(ゲームのプレイヤーに触覚によるフィードバックを与えるため)に用いられている。
【0003】
これまでに提案された振動装置の1つのタイプは、重心が回転軸から変位した偏心質量やカムなどを駆動する従来の回転モータを有するものである。モータがそのような片寄った質量を回転駆動すると、モータが取り付けられているケーシングや他の部材に振動が伝達される。
【0004】
これまでに提案された別の振動装置は、可動質量を備えたソレノイドを有し、その可動質量(例えば、ソレノイド内の金属コアに接続されている)は、ソレノイドの磁界の影響下にある。ソレノイドには適切な交流供給電流が提供され、その結果、可動質量が往復して振動が生成される。
【0005】
より小さくより軽い振動装置に対する必要は常に存在しており、携帯電話の用途に関しては特にそうである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、それぞれが1以上の磁性部材を有する固定子と回転子を持つモータを有する振動装置であって、
前記回転子および前記固定子の少なくとも一方のものの磁性部材は電磁石を有し、前記電磁石は電流を供給されることにより前記回転子および前記固定子の他方のものの磁性部材と相互作用して回転子の固定子に対する回転を引き起こすことができ、
前記回転子の前記1以上の磁性部材は、該磁性部材を全体として考えたときの重心が回転子の回転軸からずれており、
前記回転子および前記固定子は、液体を収容する空洞内に配置されているか、あるいは液体を収容する空洞を共同して形成している、
ことを特徴とする振動装置を提供する。
【0007】
本発明の実施態様は、振動を引き起こすように片寄ったあるいは偏心した質量としてモータ自体の磁性部材(永久磁石、電気的に励磁された磁石、あるいはその組合せ)を使用することにより、より小さくより軽い振動装置に対する必要に取り組むことができる。その結果、付加的な質量は必要とされない。
【0008】
本発明は、固定子の内側で回転するように回転子が配置された装置や、あるいは少なくとも部分的には固定子の外側で回転するように回転子が配置された装置に適用される。
【0009】
振動装置が、回転方向に互いに変位した2以上の電磁石と、それぞれの駆動電流を前記電磁石に供給することにより、前記電磁石の回転方向の変位ならびにそれぞれの駆動電流の相対的なタイミングが前記固定子に対する前記回転子の回転を促進するように構成された駆動回路と、を有することを特徴とする装置であるのは好ましい。この構成の場合、駆動回路はモータにステップ的な動作あるいはギクシャクした動作をさせることができ、振動効果が大きくなる。
【0010】
回転子および固定子は、オイルのような液体を収容する空洞内に配置されているか、あるいはそのような液体を収容する空洞を共同して形成している。これには様々な潜在的な利点がある。例えば、液体は振動運動が回転子からケーシングに伝達するのを助け、潤滑を提供し、および/または駆動電流が除かれた場合に、モータをより迅速に停止させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本発明の実施形態は添付図面を参照して説明されるが、それは例示のためだけである。
【図1】固定子の内側に配置された回転子を有する電気モータを示す略図である。
【図2】固定子の周囲に配置された回転子を有する電気モータを示す略図である。
【図3】非対称の回転子を有する電気モータを示す略図(その1)である。
【図4】非対称の回転子を有する電気モータを示す略図(その2)である。
【図5A】ブラシレスモータの動作を示す略図(その1)である。
【図5B】ブラシレスモータの動作を示す略図(その2)である。
【図5C】ブラシレスモータの動作を示す略図(その3)である。
【図5D】ブラシレスモータの動作を示す略図(その4)である。
【図6】ブラシレスモータへの電気的な接続を示す略図である。
【図7A】ブラシレスモータの回転子を示す略図(その1)である。
【図7B】ブラシレスモータの回転子を示す略図(その2)である。
【図7C】ブラシレスモータの回転子を示す略図(その3)である。
【図8】ゲームコントローラを示す略図である。
【図9】ポケベルを示す略図である。
【図10】携帯電話を示す略図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
ここで図面を参照すると、図1は、固定子20,30の内側に配置された回転子10を有する電気モータを概略的に示したものである。
【0013】
この例における回転子は、軸の周りに回転するように構成された3つの電気巻き線で形成されており、図1に示されているのは、勿論、軸に直交する平面における断面図である。
【0014】
固定子は磁性部材20,30で形成されており、それらはコイル巻き線(回転子)10が生成する磁界と相互作用する磁界を生成する。モータはハウジング50に収容されている。
【0015】
このタイプの単純な電気モータの動作は良く知られており、他の箇所で十分に説明されているが、簡単に要約すれば、例えば整流子およびそれに組み合わされるブラシを介して、コイル巻き線10に電流が選択的に供給され、その結果、モータの回転に伴い各巻き線に対する供給電流の極性が変化する。コイル巻き線10により生成される磁界は固定子20、30により生じる磁界と相互作用し、軸40の周りの回転運動を生じさせる。
【0016】
固定子は、永久磁石、電磁石、あるいはそれらの組合せで形成することができる。
【0017】
図2は、別の単純な電気モータとして、固定子70の周囲に配置された回転子を有するものを概略的に示している。この場合、固定子70は、ケーシング50に対して固定している永久磁石あるいは電気的に励磁された磁石で形成することができる。同様に、回転子60は、永久磁石あるいは適切な極性で励磁された電磁石で形成することができ、それにより軸40の周りの回転運動を引き起こす。
【0018】
非常に多くの異なる構成の電気モータが知られている。電気モータに永久磁石を用いることは可能であるが、磁石部材の少なくとも幾らか、すなわち回転子、固定子あるいはその両方は一部が、電磁石であることが必要である。
【0019】
図1および図2を参照して説明したモータは、これまでに提案されてきた設計のものである。それらは、共通の特徴として、回転子の重心が軸40に一致あるいは実質的に一致している。それは、そのようなモータが振動の少ない動作を提供するために望ましい特徴と考えられている。
【0020】
それとは反対に、以下に本発明の実施形態にしたがって説明するモータの場合、その目的は振動の大きな運転を提供することである。実際のところ、多くの場合、これらのモータの唯一の用途あるいは目的は振動を生じさせることである。
【0021】
図3は、図1のモータと同様の動作のモータを図示しているが、非対称的な回転子を備えたものである。特に、回転子は、1つの大きなセクション80と2つの小さなセクション90から形成されており、それらが共になって重心を軸40から変位させており、例えば重心は概念的な位置100に存在している。
【0022】
図3においては、セクション80,90を形成する磁石の中心の角変位は120°のままなので、モータの動作は信頼できるものとしている。しかし、モータが回転すると、重心が変位しているために、全体としての構成の振動が引き起こされる。
【0023】
同様に、図4は図2と同様のモータを概略的に示したものであるが、回転子が2つの軽いセグメント120と1つの重いセグメント110から形成されている点が異なっており、それによってやはり重心が変位されている(例えば、モータの現在の方位の場合、概念的な位置130に存在している)。やはり、モータが回転すると、変位した重心が回転し、全体としての構成の全面的な振動を引き起こす。
【0024】
他の実施形態では、各回転子セクションの大きさは実質的に同じであるが、例えば少なくとも部分的に異なる材料で作られているために、それぞれのセクションの質量が異なっている。
【0025】
図3および図4のモータにおいては(そして、実際のところ、以下に説明されるモータにおいても)、ケーシング50はオイルなどの液体で全体があるいは一部が満たされている。ブラシなどの電気的な接続の働きを妨げないために、その液体が導電性でないことが好ましい。液体は、モータの潤滑や、通電をやめた場合のモータの制動や、回転子からケーシング50の振動あるいは運動の伝達を助けることができる。
【0026】
ケーシングは、少なくとも部分的には、それ自体幾つかの磁性部材で実現することができる。例えば、図3において、ケーシングの少なくとも一部は固定子部材20,30によって形成することができ、円周におけるそれら固定子部材間の隙間は非磁性の液密な材料によってふさぐことができる。
【0027】
以上説明した実施形態はブラシを備えたモータである。更に他の例として、以下、ブラシレスモータを説明する。図5Aないし図5Dの図は、そのようなブラシレスモータの動作を概略的に示した図である。これらもまた、モータ軸に直交する平面に沿った概略断面図である。明瞭さのため、上記の液体を収容するケーシングは図示されていないが、本発明の実施形態を提供するためには、ケーシングを備えることができるし、あるいはケーシングを(少なくとも部分的には)固定子の外部によって形成することもできる。
【0028】
図5Aに戻ると、固定子は6つの極あるいは「歯」を有する表面構造として示されている。これらはペア毎に配列されており、A,B,Cと名づけられている。固定子の内側には軟鋼の回転子210が存在しており、軸220の周りを回転する。回転子は4つの極を有している。
【0029】
上記の通り、固定子極の周りの巻き線は、ペアA,B,Cとして配列されている。各ペアは、直列に接続された2つのコイルを有している。そのような巻き線のセットは、「相」と呼ばれており、従って、図5Aに示された例は3相モータである。相には、それぞれのスイッチを介して電流が供給され、それらスイッチも、相の名称に対応して、A,B,Cと名づけられている。
【0030】
図5Aないし図5Dにおいては、明瞭さのために、回転子は対称構造を有するものとして示されている。本発明の実施形態によれば非対称的な構造が用いられ、そのような構造の例が、後に、図7Aないし図7Cを参照して示されている。
【0031】
図5Aから始めると、A相が励磁され、回転子の4つの歯のうち2つが固定子とA相に対して整列している。次いで、図5Bにおいて、B相に対するスイッチが閉じられ、B相に対応する歯の間での磁力によって反時計回りのトルクが回転子に作用する。図5Cを見ると、これは回転子を反時計回りの方向に回転させる。図5Dを参照すると、A相に対する歯への電流供給が廃止され、回転子はB相に対する歯に整列する。この過程が繰り返され、C相が励磁されてB相は解除され、以下同様である。
【0032】
図6は、図5Aないし図5Dのモータに対する電気的接続を概略的に示したものである。各相に対するコイルのペアが、A1,A2などと名づけられており、電流は、駆動回路230から供給されるが、駆動回路230はしばしば単一の集積回路装置として実現される。
【0033】
「正常」運転においては、駆動回路はそれぞれのコイルを適切な順番ならびに周波数で駆動することにより、実質的に一定の速度での運転を提供する。しかし、駆動回路がモータの異なる相の励磁に異なる時間間隔を適用する場合、粗運転モードすなわち「ギクシャク」運転モードを実現することができる。以下に説明する非対称的な回転子と組み合わせることにより、これは一層の振動効果を与えることができる。
【0034】
図7Aないし図7Cは、上記のタイプのブラシレスモータのためのモータを概略的に示したものである。回転子は軸220に対して断面図で示されており、例えば軟鋼で形成することができる。各回転子は重心が軸から変位しており、従って、回転子が回転するとある程度の振動をもたらすことが分かる。他の実施形態では、回転子の全体的な断面は均一であるが、回転子上の歯の少なくとも幾つかが軸方向に異なる長さで伸びでおり、それによって重心が片寄っている。
【0035】
最後に、上記のタイプのモータの使用例を以下に示す。図8は、(ソニー(登録商標)のプレイステーション2(商標)ファミリーコンピュータエンターテインメントシステムなどの)ファミリーコンピュータエンターテインメントシステム310に付随するゲームコントローラ300を概略的に示したものである。ゲームコントローラ上の様々なコントロールボタン320が制御信号を生成し、その制御信号が制御線330を介してゲームプロセッサ310へ伝達され、使用されている特定のゲームの動作を制御する。ゲーム動作の適切な時点で信号が制御線240を介してハンドヘルドコントローラ内の振動装置350へと送信される。それによって振動装置350が振動し、ユーザに一層の感動を与える。
【0036】
図9は、メッセージ画面410と警報音装置420と振動装置430とを有するポケベル400を概略的に示したものである。ポケベルが、いわゆる「サイレント」モードに設定されていると、警報音装置420はスイッチが切られ、メッセージが届いたことをユーザに知らせるために振動装置430だけが用いられる。同様に、図10は表示画面500とイヤホーン兼警報装置510とキーボード520とマイク530とを有する携帯電話を概略的に示したものである。「サイレント」モードで使用するために、上記のようなタイプの振動装置540が設けられており、その結果、ユーザは振動(そして多分フラッシュライト)だけで、呼び出しあるいはメッセージをいつ受信したかを知ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが1以上の磁性部材を有する固定子と回転子を持つモータを有する振動装置であって、
前記回転子と前記固定子とのうちの少なくとも一方の磁性部材は電磁石を有し、前記電磁石は電流を供給されることにより、前記回転子と前記固定子とのうちの他方の磁性部材と相互作用して該回転子の該固定子に対する回転を引き起こすことができ、
前記回転子の1以上の前記磁性部材は、該磁性部材を全体として考えたときの重心が回転子の回転軸からずれており、
前記回転子および前記固定子は、液体を収容する空洞内に配置されているか、あるいは液体を収容する空洞を共同して形成している、
ことを特徴とする振動装置。
【請求項2】
請求項1記載の振動装置であって、
前記回転子が前記固定子の内側で回転するように配置されている、
ことを特徴とする振動装置。
【請求項3】
請求項1記載の振動装置であって、
前記回転子が、少なくとも部分的にも前記固定子の外側において、回転するように配置されている、
ことを特徴とする振動装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の振動装置であって、
回転方向に互いに変位した2以上の電磁石と、
それぞれの駆動電流を前記電磁石に供給することにより、前記電磁石の回転方向の変位ならびにそれぞれの駆動電流の相対的なタイミングが前記固定子に対する前記回転子の回転を促進するように構成された駆動回路と、
を有することを特徴とする振動装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の振動装置であって、
前記液体がオイルであることを特徴とする振動装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の振動装置を有する移動通信装置。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか一項に記載の振動装置を有するゲームコントローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−341247(P2006−341247A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−130830(P2006−130830)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【出願人】(502070679)ソニー コンピュータ エンタテインメント ヨーロッパ リミテッド (40)
【Fターム(参考)】