説明

振幅偏移変調で符号化された信号を生成するための装置と方法

振幅偏移変調を用いて信号を符号化するための装置が開示される。前記装置はスイッチングトランジスタを備えるE級増幅器を含み、スイッチングトランジスタのゲートには、E級増幅器を作動するための動作周波数を持つ電圧が供給される。E級増幅器の出力信号において振幅偏移変調を実現するために、E級増幅器の、スイッチングトランジスタのゲートに供給される電圧の動作周波数(FT)、または共振周波数(FR)を、第一の値と第二の値の間で切り替える回路が、動作周波数と共振周波数の間の偏移度を第一の値と第二の値の間で切り替えるために備えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振幅偏移変調で符号化された信号を生成するための装置と方法に関し、上記装置を使用して、振幅偏移変調で符号化された信号を誘導伝送(inductive transfer)するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術における振幅偏移変調のための装置はE級増幅器を含み、これは、動作周波数でゲートが作動されるスイッチングトランジスタと、疑似入力信号に依存して切り替えられる少なくとも一つの可変抵抗とを含んでおり、E級増幅器の出力信号の振幅変調をもたらす。
【0003】
そうした装置は、例えば欧州公開出願EP 1480156A2に開示されており、その装置では、いわゆるトライステート回路を介して、動作周波数を持つ電圧がスイッチングトランジスタのゲートに供給される。トライステート回路は可変抵抗回路網であり、入力信号に依存して電圧U1−U4が加算され、スイッチングトランジスタのゲートに供給される。スイッチングトランジスタの可変ゲート電圧に対応して、E級増幅器の出力信号は異なる大きさの振幅を有する。それに伴い、記載されている装置は振幅偏移変調での符号化に適しているものの、トライステート回路とその作動はある程度の複雑性を意味しており、これは避けられるべきである。
【0004】
出願人は、Memosensという商品名で測定装置を製造しており、その装置では、センサーモジュールに電子モジュールが備え付けられ、電子モジュールはセンサーモジュールと固定して結合され、プラグヘッドハウジング内に配置される。プラグヘッドハウジングは、データとエネルギーを伝送するための、誘導結合するプラグコネクタ結合の第二の側面を形成する。プラグコネクタ結合の第一の側面素子は、ケーブルを介して測定変換器を経由して接続され、従来技術の装置を含むが、振幅偏移変調は、E級増幅器内の直列につながれた切り替え可能な負荷として実装される少なくとも一つの可変抵抗を介して起こる。
【0005】
上記の手順は基本的には機能し、測定操作で実証されているが、とは言え、次のような改善の可能性があげられる。
【0006】
第一に、効率損失を伴う負荷電流が変調のために必要である。
【0007】
第二に、変調度は負荷抵抗によって制限される。
【0008】
第三に、回路内で寄生キャパシタンスによるエッジ(立ち上がり)のオーバーシュートが起こる可能性がある。
【0009】
第四に、追加部品、すなわちスイッチングトランジスタ、ダイオード、および三つの抵抗が変調のために必要である。
【発明の概要】
【0010】
従って本発明の目的は、従来技術の欠点を克服する、振幅偏移変調による変調のための装置を提供することである。
【0011】
この目的は、本発明に従って、独立請求項1で規定される装置と、独立請求項8で規定される方法とによって、実現される。
【0012】
本発明の装置は、スイッチングトランジスタを含むE級増幅器を含み、スイッチングトランジスタのゲートには、E級増幅器を作動するための動作周波数を持つ電圧が供給される。E級増幅器の出力信号において振幅偏移変調を実現するために、E級増幅器の、スイッチングトランジスタのゲートに供給される電圧の動作周波数(FT)、または共振周波数(FR)を、第一の値と第二の値の間で切り替える回路が、動作周波数と共振周波数の間の偏移度を第一の値と第二の値の間で切り替えるために備えられる。偏移度は(FT−FR)/FRと定義される。
【0013】
本発明の第一の実施形態では、異なる偏移度間の切り替えが、E級増幅器の二つの動作周波数間での切り替えによって起こり、切り替えはデータ通信のクロック速度で起こる。
【0014】
目下、二つの動作周波数の両方がE級増幅器の共振周波数を上回るか、または、二つの動作周波数の両方がE級増幅器の共振周波数を下回ることが好ましい。これは、共振周波数が変動する場合に、第一の動作周波数と第二の動作周波数の出力電圧の振幅比が反転してしまうことを防ぐために有利である。
【0015】
本発明の第二の実施形態では、スイッチングトランジスタのゲートが一定の動作周波数で作動される。ここで、偏移度を切り替えるために、E級増幅器の共振周波数が、周波数影響部品のオン/オフを切り替えることで変更される。周波数影響部品は、例えば、とりわけスイッチングトランジスタによって切り替えられるキャパシタンスもしくはインダクタンスであり得る。
【0016】
振幅偏移変調によって信号を符号化するための本発明の方法は、次のステップを含む。
【0017】
E級増幅器のスイッチングトランジスタのゲートを、少なくとも一つの動作周波数FTで作動するステップ。ここで、E級増幅器は少なくとも一つの共振周波数FRを持つ。
【0018】
データ通信のクロック速度で、動作周波数FTと共振周波数FRの間の第一の偏移度と第二の偏移度を切り替えるステップ。ここで、
【0019】
偏移度を切り替えるステップは、E級増幅器の、二つの異なる動作周波数間を切り替えるステップ、および/または、二つの異なる共振周波数間を切り替えるステップによって起こり得る。
【0020】
最後に、本発明は、第一の側面プラグコネクタ素子と第二の側面プラグコネクタ素子を持つプラグコネクタ結合の、第一の側面プラグコネクタ素子を含み、第一の側面プラグコネクタ素子は、第二の側面プラグコネクタ素子へデータとエネルギーを伝送するための誘導変圧器を含み、エネルギー伝送は、データ伝送のために振幅偏移変調で符号化されたAC信号を用いて起こる。振幅偏移変調のために、振幅偏移変調で符号化された信号を生成するための本発明の装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
ここで本発明を、図示された一実施形態例に基づいて説明していく。図面中の各図は以下を示す。
【図1】本発明の変調装置の回路図。
【図2】動作周波数FTの変動による振幅変調を図示する、本発明の装置のE級増幅器の周波数応答の図。
【図3】共振周波数FRの切り替えによる振幅偏移変調を図示する、本発明の装置の一実施形態の第二の実施例のE級増幅器の周波数応答の図。
【図4a】E級増幅器に負荷を接続することによる、従来技術に従う振幅偏移変調のオシロスコープ記録図。
【図4b】E級増幅器の動作周波数を切り替えることによる、本発明の振幅偏移変調のオシロスコープ記録図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1に示す装置は、スイッチングトランジスタX1を介して作動されるE級増幅器を含み、スイッチングトランジスタX1はとりわけ電界効果トランジスタである。電界効果トランジスタX1のソース接続Sは接地され、キャパシタンスC1を介してドレイン接続Dに接続される。ここで供給電圧V1がコイルL2を介してドレイン接続Dに接続される。E級増幅器はさらにコイルL1を含み、コイルL1はキャパシタンスC2を介して電界効果トランジスタX1のドレイン接続Dに接続され、コイルL1の他方は接地される。コイルL1は同時に、振幅偏移変調で変調される信号を減結合するための送信アンテナとして機能する。
【0023】
E級増幅器を作動するために、電界効果トランジスタX1のゲート接続Gが動作周波数FTで作動される。振幅偏移変調を実施するために、データ通信のクロック速度で、FT=F0とFT=F1の間で周波数偏移が行われる。図2に示すように、これにより、減結合された低下電圧UAの振幅偏移変調ΔUがもたらされる。動作周波数は、例えば次の値:F0=250kHz、F1=285kHzと想定できる。つまりF0とF1の両方とも、E級増幅器の共振周波数FRを上回る。従ってFT=F0の場合の偏移度は(F0−FR)/FRであり、(F1−FR)/FRであるFT=F1の場合の偏移度よりも十分に小さい。
【0024】
図3は、E級増幅器の共振周波数の変化による偏移度の切り替えによる、振幅偏移変調の原理を示す。これについて、キャパシタンスC2を例えば二つの並列接続キャパシタンスを用いて切り替え可能なように具体化することができ、キャパシタンスのうちの一方はスイッチングトランジスタを介してオン/オフに切り換えることができる。これにより、FR0とFR1の間で切り替え可能なE級増幅器の共振周波数がもたらされ、それに伴い、動作周波数FTが変化しない場合には、(FT−FR0)/FR0と(FT−FR1)/FR1の間で切り替え可能な偏移度がもたらされる。
【0025】
締めくくりに、従来技術と比較した本発明に従う振幅偏移変調の利点を、図4aと4bの測定データに基づいて再度あらわす。
【0026】
図4aは、従来技術に従う振幅偏移変調の、E級増幅器の出力電圧UAの曲線を示す。この場合、E級増幅器内の負荷のオン/オフを切り替えることができる。変調度は約10%にしか達せず、信号はおそらくは寄生キャパシタンスによるエッジ(立ち上がり)のオーバーシュートを含む。
【0027】
最後に図4bは、E級増幅器の動作周波数の周波数偏移による、本発明の振幅偏移変調の出力信号を示し、変調度は約23%に達する。
【0028】
要約すると、本発明の最も重要な利点は以下の通りである。負荷電流もしくは負荷抵抗が必要ないこと;変調度が動作周波数または偏移度に依存し、それゆえ最適に選択可能であること;データ符号化がソフトウェアを用いてより早く変更されること;振幅偏移変調によって得られる出力信号のエッジ(立ち上がり)の勾配が急で、オーバーシュートがないこと。さらに、周波数を適合させることで、E級増幅器の部品の公差とその温度ドリフトを相殺することができる。結果として、特に変調に使用される部品にとって、部品の複雑性を軽減することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振幅偏移変調を用いて信号を符号化するための装置であって、
スイッチングトランジスタを含むE級増幅器を含み、前記スイッチングトランジスタのゲートには、前記E級増幅器を作動するための動作周波数を持つ電圧が供給され、
前記E級増幅器の出力信号において振幅偏移変調を実現するために、前記E級増幅器の、前記スイッチングトランジスタの前記ゲートに供給される前記電圧の前記動作周波数(FT)、または共振周波数(FR)を、第一の値と第二の値の間で切り替える回路が、前記動作周波数と前記共振周波数の間の偏移度を第一の値と第二の値の間で切り替えるために備えられる、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
第一の偏移度と第二の偏移度の間で切り替えることが、前記E級増幅器の一つの動作周波数と第二の動作周波数の間で切り替えることを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記切り替えがデータ通信のクロック速度で起こることを特徴とする、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
両方の動作周波数が前記E級増幅器の前記共振周波数を上回るか、または、両方の動作周波数が前記E級増幅器の前記共振周波数を下回ることを特徴とする、請求項2または3に記載の装置。
【請求項5】
前記スイッチングトランジスタの前記ゲートが一定の動作周波数で作動され、かつ、前記偏移度を切り替えるために、前記E級増幅器の前記共振周波数が周波数影響部品のオン/オフを切り替えることで変更されることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記周波数影響部品はキャパシタを含む、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記周波数影響部品はコイルを含む、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
E級増幅器のスイッチングトランジスタのゲートを、少なくとも一つの動作周波数FTで作動するステップであって、前記E級増幅器は少なくとも一つの共振周波数FRを持つ、ステップと、
データ通信のクロック速度で、前記動作周波数FTと前記共振周波数FRの間の第一の偏移度と第二の偏移度を切り替えるステップと、を含み、
前記偏移度を切り替えるステップは、前記E級増幅器の、二つの異なる動作周波数間を切り替えるステップ、および/または、二つの異なる共振周波数間を切り替えるステップによって起こり得る、
振幅偏移変調によって信号を符号化するための方法。
【請求項9】
前記偏移度を切り替えるステップが、二つの異なる動作周波数間を切り替えるステップによって起こることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記偏移度を切り替えるステップが、前記E級増幅器の二つの異なる共振周波数間を切り替えることによって起こることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
第一の側面プラグコネクタ素子と第二の側面プラグコネクタ素子を含むプラグコネクタ結合の、第一の側面プラグコネクタ素子であって、前記第二の側面プラグコネクタ素子へデータとエネルギーを伝送するための誘導変圧器を含み、前記エネルギー伝送は、データ伝送のために振幅偏移変調で符号化されたAC信号を用いて起こり、振幅偏移変調のために、振幅偏移変調で符号化された信号を生成するための本発明の装置が備えられ、前記E級増幅器の前記動作周波数は前記AC信号の周波数であることを特徴とする、第一の側面プラグコネクタ素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【公表番号】特表2010−534419(P2010−534419A)
【公表日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504694(P2010−504694)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際出願番号】PCT/EP2008/055019
【国際公開番号】WO2008/135402
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(504001369)エンドレス ウント ハウザー コンダクタ ゲゼルシャフト フューア メス‐ ウント レーゲルテヒニック エムベーハー ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (8)
【氏名又は名称原語表記】ENDRESS + HAUSER CONDUCTA GESELLSCHAFT FUR MESS‐ UND REGELTECHNIK MBH + CO.KG
【Fターム(参考)】