説明

排ガス再循環装置および内燃機関システム

【課題】高い応答性で計測が可能であり、排ガスの供給量を適切に調整することができる排ガス再循環装置および内燃機関システムを提供することにある。
【解決手段】再循環配管と、流量調整弁と、流量測定装置と、制御装置と、を有し、流量測定装置は、計測セルと、計測セルの第1パージガス供給管にパージガスを供給するパージガス供給部と、入射管にレーザ光を入射させる発光部と、入射管から入射され、前記計測セルを通過し、出射管から出射されたレーザ光を受光し、受光した光量を受光信号として出力する受光部と、受光部から出力される受光信号に基づいて、計測セルを流れる排ガスの流量を算出する算出部と、各部の動作を制御する計測制御部と、を有することで上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気の一部を吸気に循環させる排ガス再循環装置および内燃機関システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関を有する内燃機関システムには、燃焼機関から排出される排ガスの一部を再度内燃機関に供給する排ガス再循環装置(Exhaust Gas Recirculation)を備えるものがある。このように排ガス再循環装置を設けることで、燃焼効率を向上させたり、排ガスに含まれる窒素酸化物を低減したりすることができる。
【0003】
このような排ガス再循環装置では、燃焼機関に供給する排ガスの流量を計測する計測装置が設けられている。流量を計測する装置としては、例えば、オリフィス等を設け、オリフィスの前後の差圧を検出することで流量を計測する装置がある。また、特許文献1および特許文献2には、発熱抵抗体を用い、これは発熱抵抗体の奪われる熱量が流入流量に対し単調に増加する関係が有ることを利用した発熱抵抗体式の空気流量測定装置が記載されている。
【0004】
また、排ガス再循環装置は、計測した空気流量に基づいて駆動の制御を行う。例えば、特許文献2には、内燃機関に供給する吸入空気の質量流量と再循環排気ガス質量流量計で計測した再循環排気ガスの質量流量と内燃機関の運転状態に対応した燃料噴射量を指令する指令燃料噴射量とに基づいて再循環排気ガスの酸素濃度を演算し、演算した再循環排気ガスの酸素濃度に基づいて排気ガスを構成する成分の濃度比を演算し、演算した排気ガス成分の濃度比に基づいて排気ガス全体の物性値を演算し、演算した物性値に基づいて再循環排気ガス質量流量計の出力を補正し、補正した再循環排気ガス質量流量計の出力に基づいて再循環排気ガスの流量若しくは燃料噴射量を制御する排気還流制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−175150号公報
【特許文献2】特開2006−97597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、オリフィス等を設け差圧で排ガスの流量または流速を計測する差圧式の計測装置は、計測精度が低い、具体的にはフルスケールの2〜3%の誤差が生じる、配管に排ガスの流れ方向に長い直管部が必要となる、オリフィス等で排ガスの流れの一部を堰き止めるため、圧力損失が大きいという問題がある。また、特許文献1および特許文献2のように、発熱抵抗体式の空気流量測定装置では、応答時間に制約がある。つまり、計測に一定の時間が必要となる。このため、排ガスの状態の変化に迅速対応できない場合がある。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、高い応答性で計測が可能であり、排ガスの供給量を適切に調整することができる排ガス再循環装置および内燃機関システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、内燃機関から排出された排ガスを、前記内燃機関の吸気管に供給する排ガス再循環装置であって、前記内燃機関から排出された排ガスを前記吸気管に案内する再循環配管と、前記再循環配管を流れる排ガスの流量を調整する流量調整弁と、前記再循環配管の前記流量調整弁よりも上流側の流量を計測する流量測定装置と、流量測定装置の計測結果に基づいて前記流量調整弁を制御する制御装置と、を有し、前記流量測定装置は、前記再循環配管の経路中に前記再循環配管の一部として配置され排ガスが流れる主管、前記主管に連結し、前記主管と連結している側と反対側の端部に光が通過可能な窓部が形成された入射管、前記主管に連結し、前記主管と連結している側と反対側の端部に光が通過可能な窓部が形成された出射管、前記入射管と連結された第1パージガス供給管とで構成された計測セルと、前記計測セルの前記第1パージガス供給管にパージガスを供給するパージガス供給部と、前記入射管にレーザ光を入射させる発光部と、前記入射管から入射され、前記計測セルを通過し、前記出射管から出射された前記レーザ光を受光し、受光した光量を受光信号として出力する受光部と、前記受光部から出力される受光信号に基づいて、前記計測セルを流れる排ガスの流量を算出する算出部と、各部の動作を制御する計測制御部と、を有することを特徴とする。上記構成の排ガス再循環装置は、より高精度かつ高い応答性で排ガスの流量を計測することができる。これにより、排ガスの供給量を好適に調整することができ、内燃機関を効率よく運転することができ、かつ、窒素酸化物の排出量を低減することができる。
【0009】
ここで、前記吸気管の前記再循環配管との連結部よりも上流側の空気の流量を計測する吸引空気流量測定装置をさらに有し、前記制御装置は、前記吸引空気流量測定装置での計測結果にも基づいて前記流量調整弁を制御することが好ましい。これにより、吸引空気の流量にも基づいて、排ガスの供給量を調整することができ、内燃機関をより効率よく運転することができ、かつ、窒素酸化物の排出量をより低減することができる。
【0010】
また、前記吸引空気流量測定装置は、前記吸気管の経路中に前記吸気管の一部として配置され空気が流れる主管、前記主管に連結し、前記主管と連結している側と反対側の端部に光が通過可能な窓部が形成された入射管、前記主管に連結し、前記主管と連結している側と反対側の端部に光が通過可能な窓部が形成された出射管、前記入射管と連結された第1パージガス供給管とで構成された計測セルと、前記計測セルの前記第1パージガス供給管にパージガスを供給するパージガス供給部と、前記入射管にレーザ光を入射させる発光部と、前記入射管から入射され、前記計測セルを通過し、前記出射管から出射された前記レーザ光を受光し、受光した光量を受光信号として出力する受光部と、前記受光部から出力される受光信号に基づいて、前記計測セルを流れる排ガスの流量を算出する算出部と、各部の動作を制御する計測制御部と、を有することが好ましい。これにより、吸引空気の流量をより高精度かつ高い応答性で計測することができる。
【0011】
また、前記制御装置は、前記内燃機関で燃焼される燃料の流量にも基づいて前記流量調整弁を制御することが好ましい。これにより、内燃機関をより効率よく運転することができ、かつ、窒素酸化物の排出量をより低減することができる。
【0012】
また、前記パージガス供給部は、前記吸気管を流れる空気を案内する配管と、前記配管を流れる空気の圧力を調整するパージガス圧力調整弁とを有し、前記吸気管を流れる空気を前記パージガスとして前記第1パージガス供給管に供給することが好ましい。これにより、ポンプ等を設けることなく、パージガスを供給することができ、装置構成を簡単にすることができる。
【0013】
また、前記流量測定装置は、前記計測セルを流れる流体の流れ方向を検出する流れ方向検出部をさらに有することが好ましい。これにより、排ガスの流量をより正確に検出することができる。
【0014】
また、前記算出部は、前記受光部で受光した受光信号を1つの周波数で復調し、復調した信号の変動の大きさに基づいて、前記排ガスの流量を算出することが好ましい。これにより、流量をより正確に検出することができる。
【0015】
また、前記算出部は、前記受光部で受光した受光信号を異なる2つの周波数でそれぞれ復調し、復調した2つの周波数における信号の変動の大きさに基づいて、前記排ガスの流量を算出することが好ましい。これにより、流量をより正確に検出することができる。
【0016】
また、前記算出部は、前記受光部で受光した受光信号を複数の異なる周波数でそれぞれ復調し、復調した複数の周波数における信号の変動の大きさに基づいて、前記排ガスの流量を算出することが好ましい。これにより、流量をより正確に検出することができる。
【0017】
また、前記算出部は、予め算出した変動と流量との関係を記憶しており、前記関係と前記変動の大きさとに基づいて前記排ガスの流量を算出することが好ましい。これにより、流量をより正確に検出することができる。
【0018】
また、前記算出部は、前記入射管に流れるパージガスの流量毎に、前記変動と前記排ガスの流量との関係を記憶しており、前記入射管に流れるパージガスの流量と前記変動に基づいて前記排ガスの流量を算出することが好ましい。これにより、流量をより正確に検出することができる。
【0019】
また、前記制御部は、前記算出部で算出した前記排ガスの流量を含む領域で変動の変化量の大きくなる前記パージガスの流量を算出し、算出結果に基づいて、前記パージガス供給部から前記第1パージガス供給管に供給するパージガスの流量を調整することが好ましい。これにより、流量をより正確に検出することができる。
【0020】
また、前記算出部は、さらに、前記発光部から出力したレーザ光の強度と、前記受光部で受光したレーザ光の強度とに基づいて、前記計測セルを流れる排ガスの測定対象の物質の濃度も算出することが好ましい。これにより、排ガスに含まれる特定の物質の濃度を計測することができ、排ガスの供給量を好適に調整することができる。
【0021】
また、前記受光部は、隣接して配置された複数の受光素子を有し、各受光素子で受光した光量を受光信号として出力し、前記算出部は、各受光素子から送られた受光信号の強度の比較に基づいて、前記流体の流量を算出することが好ましい。これにより、流量をより正確に検出することができる。
【0022】
また、前記算出部は、各受光素子から送られた受光信号の強度の比較に基づいて、前記レーザ光の到達位置を算出し、前記到達位置と基準位置とのずれに基づいて、前記流体の流量を算出することが好ましい。これにより、流量をより正確に検出することができる。
【0023】
また、前記算出部は、各受光素子から送られた受光信号の強度の総量と、前記受光部で受光したレーザ光の強度とに基づいて、前記計測セルを流れる排ガスの測定対象の物質の濃度も算出することが好ましい。これにより、流量をより正確に検出することができる。
【0024】
また、前記計測セルは、前記主管の、前記排ガスの流れ方向において前記入射管の上流側、かつ、前記入射管の近傍に、前記入射管の近傍の空気の流れを乱流にする乱流発生部を有することが好ましい。これにより、流量をより正確に検出することができる。
【0025】
さらに、前記出射管と連結された第2パージガス供給管を有し、前記パージガス供給部は、前記第2パージガス供給管にもパージガスを供給することが好ましい。これにより、流量をより正確に検出することができる。
【0026】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、内燃機関システムであって、内燃機関と、前記内燃機関に空気を供給する吸気管と、前記内燃機関で発生した排ガスを案内する排気管と、排気管から排出される排ガスが通過することで回転するタービン、前記タービンと共に回転し前記吸気管に空気を供給するコンプレッサを備える過給機と、前記排気管に案内された排ガスの一部を前記吸気管に案内する上記のいずれかに記載の排ガス再循環装置と、を有することを特徴とする。上記構成の内燃機関ユニットは、より高精度かつ高い応答性で排ガスの流量を計測することができる。これにより、排ガスの供給量を好適に調整することができ、内燃機関を効率よく運転することができ、かつ、窒素酸化物の排出量を低減することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明にかかる排ガス再循環装置および内燃機関システムは、高い応答性で流量の計測が可能であり、排ガスの供給量を適切に調整することができるという効果を奏する。これにより、内燃機関を効率よく運転することができ、かつ、窒素酸化物の排出量を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、排ガス再循環装置を備える内燃機関システムの一実施形態の概略構成を示す模式図である。
【図2】図2は、排ガス再循環装置の動作の一例を示すフロー図である。
【図3】図3は、図1に示す流量測定装置の概略構成を示す模式図である。
【図4】図4は、図3に示す流量測定装置の計測セルの一部を拡大して示す拡大模式図である。
【図5】図5は、図3に示す流れ方向検出手段の概略構成を示す模式図である。
【図6】図6は、レーザ光の経路を説明するための説明図である。
【図7】図7は、周波数とノイズとの関係を示すグラフである。
【図8】図8は、排ガス流量とノイズとの関係を示すグラフである。
【図9】図9は、排ガス流量とノイズとの関係を示すグラフである。
【図10】図10は、周波数とノイズとの関係を示すグラフである。
【図11】図11は、排ガス再循環装置を備える内燃機関システムの他の実施形態の概略構成を示す模式図である。
【図12】図12は、図11に示す流量測定装置の概略構成を示す模式図である。
【図13】図13は、排ガス再循環装置を備える内燃機関システムの他の実施形態の概略構成を示す模式図である。
【図14】図14は、流れ方向検出手段の他の例の概略構成を示す模式図である。
【図15】図15は、図14のZ方向から流れ方向検出手段を見た模式図である。
【図16】図16は、流量測定装置の他の実施形態の一部の概略構成を示す模式図である。
【図17】図17は、図16の部分拡大図である。
【図18】図18は、流量測定装置の他の実施形態の受光部の概略構成を示す模式図である。
【図19】図19は、図18に示す流量測定装置の動作を説明するための説明図である。
【図20】図20は、図18に示す流量測定装置の動作を説明するための説明図である。
【図21】図21は、受光部の他の一例の概略構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に、本発明にかかる排ガス再循環装置および内燃機関システムの一実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。なお、以下の実施形態では、排ガスを排出する内燃機関にディーゼルエンジンを用いた例で説明するがこれに限定されず、ガソリンエンジンや、ガスエンジン等種々の内燃機関に用いることができる。また、内燃機関システムを有する装置としては、車両、船舶、発電機等種々の装置が例示される。
【0030】
図1は、排ガス再循環装置を備える内燃機関システムの一実施形態の概略構成を示す模式図である。図1に示す内燃機関システム200は、エンジン202と、吸気管204と、排気管205と、空気冷却器206と、流量調整弁207と、過給機208と、排ガス再循環装置210と、制御装置220と、配管242と、配管244と、を有する。なお、配管242は、システム外部から供給される空気をシステム内部に案内する配管である。配管244は、システム内部で発生した排ガスをシステム外部に案内する配管である。なお、配管242、244が連結するシステム外部の部分は、他の配管でもよいが他の部品と繋がっていない、つまり大気に開放されていてもよい。
【0031】
エンジン202は、内燃機関であり吸気管204ら供給された空気232を用いて燃料を燃焼させ、燃料の燃焼時に発生するエネルギーでピストン等を駆動させる。エンジン202は、燃料の燃焼時に発生する排ガス234を排気管205に排出する。
【0032】
吸気管204は、エンジン202と過給機208とを繋げる配管である。吸気管204は、過給機208から供給された空気232をエンジン202に供給する。また、吸気管204の経路中には、空気冷却器206と流量調整弁207とが配置されており、排ガス再循環装置210の配管212も連結されている。排気管205は、過給機208とエンジン202とを繋げる配管である。排気管205は、エンジン202から排出された排ガス234を過給機208に供給する。
【0033】
空気冷却器206は、吸気管204の経路中に配置されており、過給機208から供給され吸気管204を流れる空気232を冷却する。流量調整弁207は、開度を調整可能な電磁弁であり、吸気管204を流れる空気232の流量を調整する。流量調整弁207は、吸気管204の空気冷却器206よりも下流側に配置されている。これにより、吸気管204を流れる空気232は、空気冷却器206を通過した後、流量調整弁207を通過する。なお、流量調整弁207は、開度を調整する電磁弁に限定されず、吸気管204の流量を調整することができる弁であればよい。例えば、流量調整弁207として開状態と閉状態とを切り換える弁を用い、単位時間当たりの開状態の時間と閉状態の時間を調整することでも吸気管204を流れる空気232の流量を調整することができる。
【0034】
過給機208は、ターボチャージャであり、コンプレッサ208aとタービン208bと支持軸208cとを有する。コンプレッサ208aは、吸気管204と配管242とに連結されている。タービン208bは、排気管205と配管244とに連結されている。支持軸208cは、コンプレッサ208aとタービン208bとを支持し、コンプレッサ208aとタービン208bとを一体で回転させる。過給機208は、タービン208bが排気管205を流れ配管244から排出される排ガス234により回転される。過給機208は、タービン208bが回転すると、支持軸208cで連結しているコンプレッサ208aも回転する。過給機208は、コンプレッサ208aが回転することで、配管242を流れる空気232を吸気管204に供給する。このように過給機208は、排気管205を流れる排ガス234により駆動され、吸気管204に空気232を供給する。
【0035】
排ガス再循環装置210は、エンジン202から排出される排ガス234の一部を吸気管204に供給する装置であり、再循環配管212と排ガス冷却器214とEGR弁216と再循環ガス流量測定装置(単に「流量測定装置」ともいう。)10と吸入空気流量測定装置(単に「流量測定装置」ともいう。)10Aとを有する。再循環配管212は、一方の端部が排気管205と連結されており、他方の端部が吸気管204と連結されている。より具体的には、再循環配管212は、一方の端部が排気管205のエンジン202とタービン208bとの間の部分と連結しており、他方の短部が吸気管204の流量調整弁207とエンジン202との間の部分と連結している。また、再循環配管212の経路中には、排ガス冷却器214とEGR弁216と再循環ガス流量測定装置10とが配置されている。
【0036】
排ガス冷却器214は、再循環配管212の経路中に配置されており、エンジン202から排出され再循環配管212を流れる排ガス234を冷却する。EGR弁216は、開度を調整可能な電磁弁であり、再循環配管212を流れる排ガス234の流量を調整する。EGR弁216は、再循環配管212の排ガス冷却器214よりも下流側に配置されている。これにより、再循環配管212を流れる排ガス234は、排ガス冷却器214を通過した後、EGR弁216を通過する。なお、EGR弁216は、開度を調整する電磁弁に限定されず、再循環配管212の流量を調整することができる弁であればよい。例えば、EGR弁216として開状態と閉状態とを切り換える弁を用い、単位時間当たりの開状態の時間と閉状態の時間を調整することでも再循環配管212を流れる排ガス234の流量を調整することができる。
【0037】
再循環ガス流量測定装置(以下単に「流量測定装置」という。)10は、再循環配管212を流れる排ガスの流量を計測するセンサである。流量測定装置10は、再循環配管212の排気管205との連結部と排ガス冷却器214との間となる部分に配置されている。つまり、流量測定装置10は、排気管205から再循環配管212に流入しかつ排ガス冷却器214に流入する前の排ガス234の流量を計測する。吸入空気流量測定装置10Aは、吸気管204を流れる排ガスの流量を計測するセンサである。吸入空気流量測定装置10Aは、吸気管204のコンプレッサ208aと空気冷却器206との間となる部分に配置されている。つまり、吸入空気流量測定装置10Aは、コンプレッサ208aから吸気管204に流入しかつ空気冷却器206に流入する前の空気232の流量を計測する。流量測定装置10および吸入空気流量測定装置10Aは、流量の計測結果を制御装置220に送る。なお、流量測定装置10および吸入空気流量測定装置10Aの構成および流量の計測方法については後述する。
【0038】
制御装置220は、内燃機関システム200の各部の動作を制御する制御装置である。制御装置220は、エンジン202や、空気冷却器206、過給機208の動作を制御する。また、制御装置220は、排ガス再循環装置210の制御装置でもある。制御装置220は、流量測定装置10で計測した再循環配管212を流れる排ガス234の流量である再循環ガス流量、吸入空気流量測定装置10Aで計測した吸気管204を流れる空気232の流量である吸引空気流量、エンジン202の駆動条件等を取得し、その取得結果の情報に基づいてEGR弁216の目標開度を算出し、その算出した目標開度に基づいてEGR弁216の動作を制御する。
【0039】
以下、図2を用いて、制御装置220によるEGR弁216の制御について説明する。ここで、図2は、排ガス再循環装置の動作の一例を示すフロー図である。制御装置220は、ステップS12として、吸引空気流量と再循環ガス流量を取得する。つまり、制御装置220は、流量測定装置10の計測結果と吸入空気流量測定装置10Aの計測結果の情報を取得する。制御装置220は、ステップS12で吸引空気流量と再循環ガス流量を取得したら、ステップS14として、取得した吸引空気流量と再循環ガス流量とからEGR率を算出する。ここで、EGR率とは、再循環ガス流量/(吸引空気流量+再循環ガス流量)で算出される値である。
【0040】
制御装置220は、ステップS14でEGR率を算出したら、ステップS16として、EGR率が目標範囲内であるかを判定する。ここで、目標範囲は、種々の方法で設定することができる。例えば、予め設定した固有の範囲を目標範囲として設定してもよく、制御装置220が燃料の使用量、排ガスの成分、空気の成分、エンジンの回転量、過給機208の運転状態等、運転時の各種条件を取得し取得した条件に基づいて目標範囲を算出し設定してもよい。
【0041】
制御装置220は、ステップS16でEGR率が目標範囲内ではない(No)と判定したら、ステップS18としてEGR弁216の開度を調整する。具体的には、EGR率が目標範囲よりも低いと判定したら、開度をより大きくし、EGR率が目標範囲よりも高いと判定したら、開度をより小さくする。なお、開度の変更分は、算出結果に基づいて算出した分変化させても、予め設定された一定開度分変化させてもよい。制御装置220は、ステップS18の処理を行ったら、ステップS20に進む。
【0042】
また、制御装置220は、ステップS16でEGR率が目標範囲内である(Yes)と判定したらステップS20に進む。制御装置220は、ステップS16でYesと判定したら、またはステップS18の処理を行ったら、ステップS20として処理終了かを判定する。つまり、制御装置220は、排ガス再循環装置210の駆動を終了するかを判定する。制御装置220は、ステップS20で処理終了ではない(No)と判定したらステップS12に進む。このように、制御装置220は、処理終了である、つまり、排ガス再循環装置210の駆動を終了すると判定するまで、上記のEGR弁216の開度を調整する処理を繰り返し行う。制御装置220は、ステップS20で処理終了である(Yes)と判定したら本処理を終了する。
【0043】
このように、内燃機関システム200および排ガス再循環装置210は、流量測定装置10および吸入空気流量測定装置10Aの計測結果に基づいてEGR弁216の開度を調整することで、空気232に適切な割合の排ガス234を混合した混合気体をエンジン202に供給することができる。
【0044】
次に、図3から図10を用いて流量測定装置10および吸入空気流量測定装置10Aについて説明する。なお、流量測定装置10と吸入空気流量測定装置10Aとは、配置位置が異なるのみで装置構成は同様であるので、以下代表して流量測定装置10について説明する。図3は、図1に示す流量測定装置の概略構成を示す模式図である。また、図4は、図3に示す流量測定装置の計測セルの一部を拡大して示す拡大模式図である。図3に示すように流量測定装置10は、計測セル12と、計測手段14と、パージガス供給手段16と、流れ方向検出手段18と、を有する。ここで、流量測定装置10は、排ガス234が流れる再循環配管212の経路中に設けられている。なお、図3では、流量測定装置10の上流側の再循環配管212を再循環配管212aとし、流量測定装置10の下流側の再循環配管212を再循環配管212bとする。また、排ガス234は、再循環配管212aの上流側の排気管205から供給され、再循環配管212a、流量測定装置10、再循環配管212bを通過し、再循環配管212bよりも下流側の吸気管204に排出される。
【0045】
計測セル12は、基本的に主管20と、入射管22と、出射管24とを有する。また、入射管22には、窓26と、パージガス供給管30とが設けられており、出射管24には、窓28と、パージガス供給管32が設けられている。主管20は、筒状の管状部材であり、一方の端部が再循環配管212aと連結され、他方の端部が再循環配管212bと連結されている。つまり、主管20は、排ガス234が流れる流路の一部となる位置に配置されている。これにより、排ガス234は、再循環配管212a、主管20、再循環配管212bの順に流れる。また、再循環配管212を流れる排ガス234は、基本的に全て主管20を流れる。
【0046】
入射管22は、管状部材であり、一方の端部が主管20に連結されている。また、主管20は、入射管22との連結部が、入射管22の開口(端部の開口)と略同一形状の開口となっている。つまり、入射管22は、主管20と、空気の流通が可能な状態で連結されている。また、入射管22の他方の端部には、窓26が設けられており、窓26により封止されている。なお、窓26は、光を透過する部材、例えば、透明なガラス、樹脂等で構成されている。これにより、入射管22は、窓26が設けられている端部が、空気が流通しない状態で、かつ、光が透過できる状態となる。
【0047】
入射管22は、図3および図4に示すように、窓26側の端部の開口(つまり、窓26により塞がれている開口)の面積と、主管20側の端部(つまり、主管20と連結している部分の開口)の面積とが実質的に同一の円筒形状である。なお、入射管22の形状は円筒形状に限定されず、空気および光を通過させる筒型の形状であればよく、種々の形状とすることができる。例えば、断面が四角、多角形、楕円、非対称曲面となる形状としてもよい。また筒形状の断面の形状、径が位置によって変化する形状でもよい。なお、入射管22は、後述するパージガスが安定して流れる形状とすることが好ましい。
【0048】
また、入射管22には、さらにパージガス供給管30が連結されている。パージガス供給管30は、図4に示すように、窓26が封止されている端部と主管20と連結されている端部との間に配置されている。パージガス供給管30は、パージガス供給手段16から供給されたパージガスを入射管22に案内する。また、パージガス供給管30は、パージガスの噴出し口となる部分が窓26側に向けて傾斜している。
【0049】
出射管24は、入射管22と略同一形状の管状部材であり、一方の端部が主管20に連結され、出射管24の他方の端部には、窓28が設けられている。出射管24も、主管20と空気が流通可能な状態で、窓28が設けられている端部が、空気が流通しない状態で、かつ、光が透過できる状態となる。また、出射管24は、中心軸が入射管22の中心軸と略同一となる位置に配置されている。つまり、入射管22と出射管24とは、主管20の対向する位置に配置されている。
【0050】
また、出射管24も、窓28側の端部の開口(つまり、窓28により塞がれている開口)の面積と、主管20側の端部(つまり、主管20と連結している部分の開口)の面積とが実質的に同一の円筒形状である。なお、出射管24も形状は円筒形状に限定されず、空気および光を通過させる筒型の形状であればよく、種々の形状とすることができる。例えば、断面が四角、多角形、楕円、非対称曲面となる形状としてもよい。また筒形状の断面の形状、径が位置によって変化する形状でもよい。なお、出射管24も、後述するパージガスが安定して流れる形状とすることが好ましい。
【0051】
また、出射管24の、窓28が封止されている端部と主管20と連結されている端部との間には、パージガス供給管32が連結されている。パージガス供給管32は、パージガス供給手段16から供給されたパージガスを出射管24に案内する。また、パージガス供給管32も吹出し口が窓28側を向いた形状である。なお、出射管24には、後述する流れ方向検出手段18の一部が配置されている。
【0052】
次に、計測手段14は、発光部40と、光ファイバ42と、受光部44と、光源ドライバ46と、算出部48と、計測制御部50とを有する。
【0053】
発光部40は、所定波長のレーザ光を発光させる発光素子である。光ファイバ42は、発光部40から出力されたレーザ光を案内し、窓26から計測セル12内に入射させる。
【0054】
受光部44は、計測セル12の主管20の内部を通過し、出射管24の窓28から出力されたレーザ光を受光する受光部である。なお、受光部44は、例えば、フォトダイオード(PD、Photodiode)等の光検出器を備え、光検出器によってレーザ光を受光し、その光の強度を検出する。受光部44は、受光したレーザ光の強度(光量)を受光信号として、算出部48に送る。
【0055】
光源ドライバ46は、発光部40の駆動を制御する機能を有し、発光部40に供給する電流、電圧を調整することで、発光部40から出力されるレーザ光の波長、強度を調整する。また、光源ドライバ46は、計測制御部50により制御される。
【0056】
算出部48は、受光部44で受光したレーザ光の強度の信号(受光信号)に基づいて、計測セル12を流れる排ガスの流量を算出する。なお、算出方法については、後述する。
【0057】
計測制御部50は、各部の動作を制御する制御機能を有し、必要に応じて、各部の動作を制御する。なお、計測制御部50は、計測手段14の制御のみならず、流量測定装置10の全体の動作を制御する。つまり、計測制御部50は、流量測定装置10の動作を制御する制御部である。
【0058】
パージガス供給手段16は、配管51と、ポンプ52と、ドライヤ54と、流量計56と、を有し、計測セル12のパージガス供給管30、32に所定流量の空気を供給する。なお、本実施形態では、空気を供給しているが、ボンベ等を使用してパージガスとして窒素などを供給する構成としてもよい。
【0059】
配管51は、パージガス供給管30、32と連結している。また、配管51には、パージガス供給管30、32から最も遠い側(空気の流れの上流)から順に、ポンプ52、ドライヤ54、流量計56が配置されている。ポンプ52は、配管51に空気を供給することで、パージガス供給管30、32に空気を供給する。また、ポンプ52は、計測制御部50により動作が制御される。
【0060】
ドライヤ54は、配管51を流れる空気を乾燥させる乾燥機構である。ドライヤ54として、空気中に含まれる水分を低減することができればよく、種々の吸湿機構、吸湿材料を用いることができる。また、ドライヤ54は、計測制御部50により動作が制御される。
【0061】
流量計56は、配管51を流れる空気の量、つまり、流量を計測する。流量計56は、計測した流量の情報を計測制御部50に送る。なお、配管51には、基本的にポンプ52から送られる空気が通過するため、流量が安定している。このため、通常用いる種々の流量計を使用することができる。
【0062】
パージガス供給手段16は、計測制御部50が、流量計56での計測結果に基づいてパージガスの流量を制御することで、配管51を流れる空気の量を制御することができ、パージガス供給管30から入射管22に供給する空気の量、流速、また、パージガス供給管32から出射管24に供給する空気の量を所定の量とすることができる。また、ドライヤ54で空気を乾燥させることで、流量計56に水分が付着する可能性を低減することができる。流量測定装置10は、以上のような構成である。
【0063】
次に、図5を用いて流れ方向検出手段18について説明する。ここで、図5は、図3に示す流れ方向検出手段の概略構成を示す模式図である。流れ方向検出手段18は、主管20における排ガス234の流れ方向を検出する検出手段であり、図5に示すように、検出素子62と、検出素子64と、差圧検出器(差圧変換器)66とを有する。検出素子62は、主管20の軸方向に平行な方向(排ガス234の流れ方向に平行な方向)のうち、一方の方向(本実施形態では、配管8の出口から排ガスの発生装置に向かう向き、基本的な流れ方向において下流から上流に向かう方向)の排ガス234の圧力を検出するピトー管である。検出素子62は、U字形状であり、一方の端部が主管20の内部に露出しており、配管8の出口に向けて開口している。
【0064】
また、検出素子64は、主管20の軸方向に平行な方向のうち、他方の方向(本実施形態では、排ガスの発生装置から配管8の出口に向かう向き、基本的な流れ方向において上流から下流に向かう方向)の排ガス234の圧力を検出するピトー管である。検出素子64は、U字形状であり、一方の端部が主管20の内部に露出しており、排ガスの発生装置に向けて開口している。
【0065】
また、検出素子62と検出素子64は、それぞれ、主管20と出射管24との接続部に配置されている。また、排ガス234の基本的な流れ方向において、検出素子62は、検出素子64よりも下流側、つまり、配管8の出口側に配置されている。このように、検出素子62と検出素子64とは、排ガス234の流れ方向に直交する面を対象面として、対称に配置されている。なお、本実施形態では、検出素子62、64として、ピトー管を用いたが、排ガスの所定方向の圧力を検出することができればよく、ピトー管に限定されない。
【0066】
差圧検出器66は、検出素子62で検出された検出値と、検出素子64で検出された検出値を受け取り、検出値を圧力値に変換し、圧力差を算出する検出器である。差圧検出器66は、さらに、検出した圧力値に基づいて、排ガス234の流れ方向を検出する。具体的には、流れ方向検出手段18は、配管8の出口から排ガスの発生装置に向かう排ガス234の圧力を検出素子62で検出し、排ガスの発生装置から配管8の出口に向かう排ガス234の圧力を検出素子64で検出する。その後、差圧検出器66は、検出値(検出した圧力)から圧力差を算出し、検出素子62で検出される圧力と、検出素子64で検出される圧力のどちらがより大きいかを算出する。差圧検出器66は、検出結果に基づいて、より大きい圧力を検出した検出素子が、検出している排ガスの流れ方向を、排ガス234の流れ方向として検出する。つまり、流れ方向検出手段18は、検出素子62で検出した圧力が大きい場合は、排ガスが下流から上流、配管8の出口から排ガスの発生装置に向かって流れていると検出し、検出素子64で検出した圧力が大きい場合は、排ガス234が上流から下流、排ガス234の発生装置から配管8の出口に向かって流れていると検出する。差圧検出器66は、検出した排ガスの流れ方向の情報を計測制御部50に送る。なお、差圧検出器66で行った計算の一部は、計測制御部50で行うようにしてもよい。
【0067】
次に、流量測定装置10による流量の計測方法について説明する。まず、流量測定装置10の計測手段14は、発光部40からレーザ光Lを出射させると、出射されたレーザ光Lは、光ファイバ42、窓26、入射管22、主管20、出射管24、窓28の順に通過し、受光部44に入射する。このとき、流量測定装置10は、パージガス供給手段16により、パージガス供給管30から入射管22にパージガスGを供給し、パージガス供給管32から出射管24にもパージガスGを供給する。これにより、入射管22と出射管24内に排ガス234が進入することを抑制し、排ガス234に含まれる微粒子等が、窓26、28に付着することを抑制することができる。
【0068】
ここで、パージガス供給手段16により供給されるパージガスGと、主管20を流れる排ガス234とは、異なる性質の空気、具体的には、ガスの温度が異なる。このため、図4に示すように、パージガス供給手段16から供給され入射管22を通り主管20に到達するパージガスGと、主管20を流れる排ガス234とが混合される領域に温度境界層80が形成されることを、本発明者らは知見した。また、温度境界層80を境界としてパージガスGと排ガス234との温度が異なることで、屈折率が異なる値となる。
【0069】
このため、図6に示すように、レーザ光Lは、温度境界層80を通過することで、屈折する。ここで、図6は、レーザ光の経路を説明するための説明図である。例えば、図6に示すように、温度境界層80がレーザ光Lの進行方向に対して、θ1傾斜していると仮定できる場合、温度境界層80を通過することにより、温度境界層80とのなす角がθ2のレーザ光Lとなる。これにより、θ1とθ2との差分だけ、光の進行方向が変化し、到達位置が変化する。
【0070】
ここで、この温度境界層80は、不安定である。そのため、温度境界層80とみなすことができる層の角度は時間によって変化し、レーザ光Lの到達位置も、時間によって変化する。このように到達位置が変化すると、受光部44がレーザ光Lを受光する位置が変化する。つまり計測している条件が変化する。このレーザ光Lの到達位置の変化は、受光部44の受光信号を復調した結果にノイズ(信号の変動)として現れる。なお、この信号の変動は、他の物性値を計測する場合はノイズとなるが、本発明では、この信号の変動が流量を求めるための測定対象の値となる。なお、本実施形態の説明では、便宜上、信号の変動をノイズという。
【0071】
ここで、本発明者らは、このノイズについて鋭意検討した結果、ノイズと主管20を流れる流量との間に相関関係があることを見出した。流量測定装置10は、その関係に基づいて流量を算出する。以下、詳細に説明する。
【0072】
まず、排ガス流量を種々の値に変化させ、それぞれの排ガス流量の場合について、受光信号を種々の周波数で復調し、復調した周波数と復調した結果のノイズとの関係を計測した。また、本計測では、排ガス234の流量を0(つまり排ガスを流さない場合)とした場合、61m/hとした場合、116m/hとした場合、160m/hとした場合、199m/hとした場合、258m/hとした場合について復調した周波数とノイズとの関係を計測した。なお、これらの計測は、排ガスの流量を変化させた点以外は、同一の条件で計測を行った。計測した結果を、図7に示す。図7は、周波数とノイズとの関係を示すグラフである。図7は、縦軸をノイズ(dB)とし、横軸を周波数(kHz)とした。なお、周波数とは、受光部44で検出した受光信号を復調した周波数である。図7に示すように、発生するノイズの大きさは、排ガス234の流量によって変化することがわかる。また、基本的に、排ガス234の流量が大きくなれば、ノイズも大きくなることがわかる。
【0073】
次に、この計測結果に基づいて、復調周波数200kHzの場合のノイズと排ガス流量との関係を算出した。算出結果を図8に示す。ここで、図8は、排ガス流量とノイズとの関係を示すグラフである。また、図8は、縦軸をノイズ(σ(A)/I(×10−6/m))とし、横軸を排ガス流量(Nm/h)とした。図8に示すように、復調周波数200kHzでは、排ガス流量に応じて、ノイズの大きさが変化する。
【0074】
流量測定装置10は、上記関係を用いて、ノイズの大きさから流量を算出する。具体的には、予め実験、計測により、図8に示すようなノイズの大きさと排ガス流量との関係を算出し、算出部48に記憶させておく。算出部48は、受光部44から送られてくる受光信号を周波数200kHzで復調し、復調した結果(信号)のノイズの大きさを検出する。その後検出したノイズの大きさと、記憶しているノイズの大きさと排ガス流量との関係とに基づいて、排ガス流量を算出する。
【0075】
このように、流量測定装置10は、発光部から発光されたレーザ光を受光した受光部の受光信号の復調の際に発生するノイズから配管の流量を算出することができる。また、測定にレーザ光を用いているため、短時間で測定することができる。具体的には、光を用いていることで、発光から受光までの時間を音波等よりも短くすることができる。また、ノイズを算出するために必要な測定時間、算出時間も短くすることができる。これにより、応答性を高くすること、具体的には応答速度100msレベルの高い応答性で流量を計測することができる。また、連続的に流量を算出することもできる。
【0076】
さらに、光は、光ファイバ等で案内することができるため、発光部、受光部を直接配管に設ける必要がない。そのため、電子部品(回路等)を厳しい条件におく必要がなくなり、種々の環境下で使用することができる。例えば高温になる配管を流れる排ガスの流量も計測することができる。
【0077】
このように、内燃機関システム200および排ガス再循環装置210は、流量測定装置10および流量測定装置10Aを用いて短時間で迅速に流量を計測できる。内燃機関システム200および排ガス再循環装置210は、高い応答性で計測した流量に基づいて再循環させる排ガス234の制御を行うことができる。つまり、より高い応答性で再循環させる排ガスの流量、つまりEGR率を調整することができる。これにより、エンジン202の駆動が過渡時で排ガス234の流量の変動が大きく予測困難な場合でも、その排ガス234の量に応じてEGR弁216の開度を調整することができ、EGR率を目標範囲内に維持しやすくすることができる。内燃機関システム200および排ガス再循環装置210は、EGR率を目標範囲内に維持できることで、エンジン202での効率をより高くすることができる。またエンジン202での燃料の燃焼をより適切な条件で実行できるため、窒素酸化物の排出量も低減することができる。
【0078】
ここで、上記実施形態では、一例として、受光信号を200kHzで復調したが、本発明はこれに限定されず、復調する周波数には、任意の周波数を用いることができる。また、算出部が、受光信号を復調する方法としては、種々の構成を用いることができる。例えば、特定の周波数成分のみを通過させるバンドパスフィルタを用いて、対象となる周波数成分を抽出することで、受光信号を所定の周波数成分で復調することができる。なお、バンドパスフィルタを用いた場合は、装置構成を簡単にすることができ、装置を安価にすることができる。また流量算出のために行う演算を少なくすることができる。また、FFT(Fast Fourier Transform、高速フーリエ変換)演算装置や、スペクトラムアナライザ(Spectrum analyzer)を用いることでも復号することができる。なお、FFT演算装置や、スペクトラムアナライザを用いた場合は、受光信号を一定周波数領域に渡って復調することができる。
【0079】
ここで、上記実施形態では、1つの周波数(200kHz)で復調した受光信号(つまり、受光信号の復調した結果の1つの周波数成分)のノイズに基づいて、流量を算出したが、本発明はこれに限定されない。流量測定装置は、異なる2つの周波数で復調した受光信号(つまり、受光信号の復調した結果の2つの周波数成分)のノイズに基づいて、流量を算出してもよい。以下、図9を用いて説明する。なお、図9に示す例では、200kHzで受光信号を復調した際のノイズと、排ガス流量との関係と、20kHzで受光信号を復調した際のノイズと排ガス流量との関係を用いる。ここで、図9は、排ガス流量とノイズとの関係を示すグラフである。また、図9は、縦軸を200kHzで復号した場合のノイズ(σ(A)/I(×10−6/m))、20kHzで復号した場合のノイズ(10kHzσ(A)/I(×10−6/m))とし、横軸を排ガス流量(Nm/h)とした。なお、図9に示すノイズと排ガスの流量との関係も図7に示す計測結果に基づいて算出することができる。
【0080】
流量測定装置10は、予め実験、計測により、図9に示すようなノイズの大きさと排ガス流量との関係を算出し、算出部48に記憶させておく。算出部48は、受光部44から送られてくる受光信号を周波数200kHzと周波数20kHzで復調し、それぞれの周波数について、復調した結果(信号)のノイズの大きさを検出する。その後検出した2つのノイズの大きさと、記憶しているノイズの大きさと排ガス流量との関係とに基づいて、排ガス流量を算出する。このように、2つの周波数成分を用いても、排ガス流量を計測することができる。
【0081】
また、図9に示すように、ノイズの大きさが大きく変化する流量は、復調する周波数によって異なる。具体的には、周波数200kHzで復調した場合は、排ガス流量が、流量40Nm/h以下では、ノイズの大きさの大きさが変化しないが、流量50Nm/hから90Nm/hの範囲では、ノイズが大きく変化する。また、周波数20kHzで復調した場合は、排ガス流量が、流量60Nm/h以下では、ノイズの大きさが大きく変化するが、流量60Nm/hから100Nm/hの範囲では、ノイズの大きさがほとんど変化しない。このように、周波数によって、検出しやすい流量の範囲が異なる。これにより複数の周波数で復調させ、その検出結果を用いて流量を算出することでより高い精度で流量を算出することができる。なお、流量測定装置10は、排ガス流量に応じて、算出結果を算出する復調周波数を切り替えるようにしてもよい。
【0082】
例えば、200kHzでのノイズから算出した排ガス流量と、20kHzでのノイズから算出した排ガス流量とで、算出した流量が異なる場合は、流量の大きさに応じて、優先度を判定して、優先順位の高い計測結果を、排ガス流量とする。具体的には、算出結果の流量が60Nm/h以下のときは、20kHzで復調した結果のノイズから算出された流量を用い、算出結果の流量が60Nm/hより大きいときは、200kHzで復調した結果のノイズから算出された流量を用いる。なお、2つの算出結果の相関関係を用いて算出してもよい。また、平均値を算出値としてもよい。
【0083】
また、流量測定装置10は、流れ方向検出手段18により、排ガス234の流れ方向を検出することができる。これにより、排ガス234が脈動する場合も、排ガス234がいずれの方向に移動しているかを正確に把握することができる。これにより、流量測定装置10は、排ガス234の流量に加え、排ガス234の流れ方向も算出することができ、主管20内での排ガスの流れをより正確に判定することができる。
【0084】
なお、本実施形態では、検出素子62の一部と検出素子64の一部とを、出射管24の管内に配置したが、本発明はこれに限定されない。検出素子62と、検出素子64は、周方向において、入射管22、出射管24とは異なる位置に配置することが好ましい。このように、検出素子62、64を入射管22、出射管24とは異なる位置に配置することで、計測手段14による計測に、検出素子62、64が与える影響を少なくすることができる。なお、検出素子62、64は、主管20の軸方向において、入射管22、出射管24と同一位置とすることが好ましい。これにより、流れ方向検出手段18の計測位置を、計測手段14の計測位置と、同じ位置とすることができる。
【0085】
また、受光信号を2つの周波数で復調させる場合は、例えばバンドパスフィルタを2つ設ければよい。
【0086】
また、復調する周波数は、2つにも限定されず、その数は限定されない。また、周波数で復調した結果を2つ以上用いる場合は、計測結果の相関関係に基づいて、排ガスの流量を算出すればよい。つまり、予め、各周波数で復調した場合について、ノイズと流量との関係を算出しておき、複数の算出結果を相対的に比較することで、排ガス流量を算出する。このように、復調する周波数を多くすることで、より高い精度で排ガス流量を算出することができる。なお、このように複数の周波数で復号する場合は、復号する周波数毎にバンドパスフィルタを設けてもよいが、上述したFFT変換装置や、スペクトラムアナライザにより受光波長を一定波長域において解析することで、復調してもよい。なお、復調する周波数を切り替え(調整)できる場合は、排ガスの流量が少ない(低流量)時には、パージ流量を多くし、排ガスの流量が多い(高流量)ときには、パージ流量を少なくすることが好ましい。これにより、計測感度を高くすることができる。なお、判定するための流量は、直前の流量を用いてもよいし、概算で算出した流量を用いてもよい。
【0087】
ここで、流量測定装置10は、さらに、入射管22を流れるパージガスGの流量にも基づいて、排ガス流量を算出することが好ましい。具体的には、上述したノイズの大きさと排ガス流量との関係をパージガスの流量毎に計測し、計測した関係を記憶しておき、入射管22を流れるパージガスの流量を計測し、計測結果に基づいて、使用するノイズの大きさと排ガス流量との関係を選択するようにすることが好ましい。
【0088】
以下、図10を用いて説明する。ここで、図10は、周波数とノイズとの関係を示すグラフである。図10は、縦軸をノイズ(dB)とし、横軸を周波数(kHz)とした。なお、周波数は、受光部44で検出した受光信号を復調した周波数である。図10には、パージ流量を1l/min、5l/min、10l/minとした場合について、周波数とノイズとの関係を計測した結果を示している。なお、測定は、パージ流量以外は、同じ条件で行った。図10に示すように、パージ流量が変化すると、周波数とノイズとの関係も変化する。つまり、同一周波数で復調しても、パージ流量が変化するとノイズの大きさが変化する。
【0089】
これに対して、入射管22を流れるパージガスの流量にも基づいて、排ガス流量を算出することで、高い精度で排ガスの流量を計測することが可能となる。つまり、パージ流量の変化により、排ガス流量の計測結果に誤差が生じることを抑制することができる。なお、パージ流量が変化しない構成の場合は、パージガスの流量に応じて、使用するノイズの大きさと排ガス流量との関係を切り替えなくとも高い精度で計測を行うことが可能となる。
【0090】
また、上述では、パージ流量に応じて、使用するノイズの大きさと排ガス流量との関係を選択するようにしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、検出されるノイズが、所定の範囲となるように、パージ流量を調整するようにしても良い。つまり、ノイズが計測を行いやすい範囲となるように積極的にパージ流量を調整するようにしてもよい。例えば、排ガスの流量が少ない(低流量)である場合には、パージ流量を多くすることで計測感度を高くすることができる。また、排ガスの流量が多い(高流量)である場合には、パージ流量を少なくすることで計測感度を高くすることができる。
【0091】
次に、図11および図12を用いて、内燃機関システムおよび排ガス再循環装置の他の実施形態について説明する。図11は、排ガス再循環装置を備える内燃機関システムの他の実施形態の概略構成を示す模式図である。図12は、図11に示す流量測定装置の概略構成を示す模式図である。なお、図11および図12に示す内燃機関システム300は、排ガス再循環装置301の再循環ガス流量測定装置310のパージガスに吸気管204を流れる空気を用いる点を除いて他の構成は、内燃機関システム200と同様である。以下、内燃機関システム300のうち、内燃機関システム200と同様の構成については、同一の符号を付して詳細な説明は省略し、内燃機関システム300に特有の点を説明する。
【0092】
内燃機関システム300は、エンジン202と、吸気管204と、排気管205と、空気冷却器206と、流量調整弁207と、過給機208と、排ガス再循環装置310と、制御装置220と、を有する。排ガス再循環装置310は、再循環配管212と排ガス冷却器214とEGR弁216と再循環ガス流量測定装置310と吸入空気流量測定装置10Aと連結配管302とを有する。連結配管302は、吸気管204と再循環ガス流量測定装置310を繋げる配管であり、吸気管204を流れる空気232の一部を再循環ガス流量測定装置310に供給する。
【0093】
次に、図12に示すように流量測定装置310は、計測セル12と、計測手段14と、パージガス供給手段316と、流れ方向検出手段18と、を有する。パージガス供給手段316は、配管51と、圧力調整弁320と、ドライヤ54と、流量計56と、を有し、計測セル12のパージガス供給管30、32に所定流量の空気を供給する。配管51は、一方の端部がパージガス供給管30、32と連結しており、他方の端部が連結配管302と連結している。また、配管51には、パージガス供給管30、32から最も遠い側(空気の流れの上流)から順に、圧力調整弁320、ドライヤ54、流量計56が配置されている。
【0094】
圧力調整弁320は、配管204で分岐して連結配管302に供給され連結配管302から配管51に供給される空気の圧力を調整する機構である。圧力調整弁320は、連結配管302から供給される空気の圧力を調整することで配管51を流れパージガス供給管30、32に供給されるパージガスの圧力を調整する。圧力調整弁320は、パージガスの圧力を調整することでパージガスの流量も調整できる。
【0095】
このように、パージガス供給手段316は、吸気管204で分岐して連結配管302に供給される空気をパージガスとしてパージガス供給管30、32に供給する。排ガス再循環装置310および内燃機関システム300は、パージガスとして吸気管204を流れる空気232を用いることで、パージガスを供給するためのポンプ等を用いることなくパージガスを供給することができる。これにより、装置構成をより簡単にすることができる。また、パージガスは、パージガス供給管30、32から排出された後、排ガスとともに再循環配管212を流れエンジン202に供給される。このため、吸気管204を流れエンジン202に供給される空気をパージガスとして用いることで、エンジン202に供給される空気、排ガスのみをエンジン202に供給することができる。これにより、エンジン202での燃料の燃焼を効率よく行うことができる。また、パージガスと空気232とが同一成分の気体となるため、EGR率の制御もより簡単かつ適切に行うことができる。
【0096】
なお、本実施形態では再循環ガス流量測定装置310に供給するパージガスに供給管を流れる空気232を用いる場合としたが、吸入空気流量測定装置10Aに供給するパージガスも同様に、系内を流れる空気232を供給してもよい。なお、この場合は、吸気管204を流れる空気のうち、空気冷却器206を通過した空気をパージガスとして用いることが好ましい。つまり、空気232を供給する配管を吸気管204の空気冷却器206と流量調整弁207との間の部分と連結する構成とすることが好ましい。これにより、パージガスと主管20をながれる空気232との温度境界層を好適に設けることができる。
【0097】
図13は、排ガス再循環装置を備える内燃機関システムの他の実施形態の概略構成を示す模式図である。なお、図13に示す内燃機関システム400は、排ガス再循環装置410の配置位置を除いて他の構成は内燃機関システム200と同様である。以下、内燃機関システム400のうち、内燃機関システム200と同様の構成については、同一の符号を付して詳細な説明は省略し、内燃機関システム400に特有の点を説明する。
【0098】
図13に示す内燃機関システム400は、エンジン202と、吸気管204と、排気管205と、空気冷却器206と、過給機208と、排ガス再循環装置410と、制御装置220と、配管242と、配管244と、を有する。この内燃機関システム400は、配管242と配管244との間に排ガス再循環装置410が配置されている。
【0099】
排ガス再循環装置410は、再循環配管412と排ガス冷却器414とEGR弁416と再循環ガス流量測定装置420とを有する。再循環配管412は、一方の端部が配管244と連結されており、他方の端部が配管242と連結されている。また、再循環配管412の経路中には、排ガス冷却器414とEGR弁416と再循環ガス流量測定装置420とが配置されている。なお、排ガス冷却器414とEGR弁416と再循環ガス流量測定装置420は、排ガス冷却器214とEGR弁216と再循環ガス流量測定装置10と同様の装置である。
【0100】
排ガス再循環装置410は、タービン208bを通過して配管244に排出された排ガス234の一部を配管242に供給する。また、排ガス再循環装置410は、排ガス再循環装置210と同様に再循環ガス流量測定装置420で算出した排ガス234の流量に基づいてEGR弁416の開度を調整する。これにより、エンジン202に適切な割合で混合した気体を供給することができる。このように、排ガス再循環装置410を過給機208よりも上流側の配管242と、下流側の配管244に設けても上記と同様の効果を得ることができる。なお、本実施形態では、吸入空気流量測定装置の図示を省略したが空気232の流量は、配管242の再循環配管412との接続部よりも上流側となる部分で測定すればよい。
【0101】
また、図1および図11に示す実施形態では、再循環ガス流量測定装置と同様の構成の吸入空気流量測定装置を用いてエンジン202に供給する空気の量を計測したがこれに限定されない。エンジン202に供給する空気の量は、種々の計測装置を用いることができる。また、コンプレッサ208bの回転数から流入空気量を算出してもよい。
【0102】
また、再循環ガス流量測定装置の計測結果に基づいてEGR弁(流量調整弁)を制御する方法は、図2に示す制御に限定されず、フィードバック制御、フィードフォワード制御等、各種制御方法を用いることができる。
【0103】
以下、流量測定装置の他の実施形態について説明する。流量測定装置10では、排ガスの流れ方向の排ガスの圧力を検出し、その圧力差に基づいて排ガスの流れ方向を算出する流れ方向検出手段18を用いたが、本発明はこれに限定されない。以下、図14および図15を用いて、流れ方向検出手段の他の例を説明する。
【0104】
図14および図15を用いて、流れ方向検出手段の他の例を説明する。ここで、図14は、流れ方向検出手段の他の例の概略構成を示す模式図であり、図15は、図14のZ方向から流れ方向検出手段を見た模式図である。図14に示す流れ方向検出手段150は、薄膜リング152と、4つの歪ゲージ154と、歪ゲージアンプ156とを有する。薄膜リング152は、外径が主管20の内径よりも大きい円環、つまりリング状の部材であり、一面が入射管22および出射管24の内面と主管20に接続されている。薄膜リング152は、内径側の一部が主管20の内径よりも小さく、一部が主管20の内径側に露出している。また、薄膜リング152は、薄い板状の部材であり、主管20内を排ガスが流れることにより、変形する(撓む)。
【0105】
歪ゲージ(ひずみゲージ)154は、図15に示すように、薄膜リング152の表面に配置されており、薄膜リング152とともに変形することで、薄膜リング152の変形を検出する。なお、歪ゲージ154は、変形を電気抵抗の変化で検出する。なお、本実施形態では、歪ゲージ154を4箇所に設けたが、歪ゲージ154の数、配置位置は特に限定されない。歪ゲージ154は、検出した変形を電気信号として、歪ゲージアンプ156に送る。
【0106】
歪ゲージアンプ156は、歪ゲージ154から送られてきた電気信号を増幅して、検出値として検出する。さらに、歪ゲージアンプ156は、歪ゲージ154の検出値から薄膜リング152の変形方向を検出する。つまり、歪ゲージアンプ156は、薄膜リング152が、配管8の出口から排ガスの発生装置に向かう方向に変形したか、排ガスの発生装置から配管8の出口に向かう方向に変形したかを検出する。歪ゲージアンプ156は、歪ゲージ154および薄膜リング152の変形方向を検出したら、その方向に基づいて、排ガスの流れ方向を検出する。具体的には、歪ゲージアンプ156は、薄膜リング152が、配管8の出口から排ガスの発生装置に向かう方向に変形している場合は、排ガスが、配管8の出口から排ガスの発生装置に向かう方向に流れていると検出し、薄膜リング152が、排ガスの発生装置から配管8の出口に向かう方向に変形している場合は、排ガスが排ガスの発生装置から配管8の出口に向かう方向に流れていると検出する。
【0107】
このように、流れ方向検出手段150を、主管20の排ガスが流れる領域に変形する部材(薄膜リング152)と、この変形する部材の変形および変形方向を検出する歪ゲージ154とを組み合わせた構成とすることでも、排ガスの流れ方向を検出することができる。このように、排ガスの流れ方向を検出できることで、主管20内の排ガスの流れ、流量をより適切に算出することができる。
【0108】
なお、上記実施形態では、薄膜リング152を周方向の全周に設けたが本発明はこれに限定されない。例えば、入射管22、出射管24に対応する領域は切り欠きとしてもよい。また、排ガスが流れることで変形する部材は、薄膜リング152のようなリング形状に限定されない。例えば、排ガスが流れることで変形する部材を、歪ゲージを配置する測定位置のみ主管20から突出した形状としてもよい。このように、主管20の内部に突出した部分を少なくすることで、流れ方向検出手段150が排ガスの流れに与える影響をより少なくすることができる。
【0109】
流れ方向検出手段の他の例としては、排ガス(空気)の流れ方向において、異なる2つの位置(上流と下流)にそれぞれ流量を計測する機構を設け、2つの流量計で算出される流量の変化に基づいて、排ガスの流れ方向を判定してもよい。具体的には、それぞれで流量を算出しつつ流量が変化する場合に発生する一定の時間遅れ、つまり計測する流量の位相差を検出し、その時間遅れが生じる方向に基づいて、排ガスの流れ方向を算出することもできる。
【0110】
このように、排ガスの流量を計測する手段を複数備え、かつ、排ガスの流れ方向において異なる位置に配置されている場合は、その計測値の時間遅れに基づいて、排ガスの長柄方向を検出することができる。また、排ガスの流量から排ガスの流れ方向を検出できるため、演算機能を設けるのみで、他の構成を追加することなく、排ガスの流れ方向を検出することが可能となる。なお、2つの流量を計測する機構は、同じ入射管、出射管に設けても、別々の入射管、出射管に設けてもよい。
【0111】
また、排ガスの流量を計測する手段を複数備える構成にする場合は、レーザ光が照射される角度を異なる角度として、夫々の流量に基づいて方向を検出してもよい。具体的には、流れ方向検出部は、排ガスの流れ方向によって、流量計のいずれか一方で計測される流量が大きくなる。これは、入射管と主管のなす角が異なることで、形成される温度境界層が変化するためと考えられる。方向検出部は、この検出値の差およびどちらの検出値の方が大きいかを判定して、その判定結果に基づいて排ガスの流れ方向を検出する。
【0112】
また、方向判定部としては、排ガスの流れ方向に対して傾斜した方向に超音波検出器を設け、受信した超音波の周波数(波長)に基づいて、排ガスの流れ方向を検出する。具体的には、基準値よりも、超音波の周波数が大きく(波長が短くなった)と判定したら、排ガスは、超音波の出力方向と同一方向に向かって流れていると判定する。また、方向判定部196は、基準値よりも、超音波の周波数が小さく(波長が長くなった)と判定したら、排ガスは、超音波の出力方向と反対方向に向かって流れていると判定する。流れ方向検出手段90のように超音波を用いることでも排ガスの流れ方向を検出することができる。
【0113】
ここで、流量測定装置は、温度境界層の周辺に乱流を発生させる乱流発生部を設けることが好ましい。以下、図16および図17を用いて説明する。図16は、流量測定装置の他の実施形態の一部の概略構成を示す模式図であり、図17は、図16の部分拡大図である。
【0114】
図16に示す計測セル90は、乱流発生部となる突起部92を有する。突起部92は、主管20の、排ガス流れ方向において入射管22よりも上流側で、かつ、入射管22の近傍、つまり、主管20と入射管22との接続部の近傍に配置されている。突起部92は、排ガス流れ方向の上流側に凸であり、図17に示すように、突起部92よりも下流側に乱流を発生させる。
【0115】
このように乱流発生部となる突起部92を設けることで、レーザ光の通過経路に乱流(カルマン渦等)を発生させることができ、温度境界層より乱れるため、ノイズをより大きくすることができる。このように、ノイズを大きくできることで、計測しやすくできる。これにより、計測感度をより高くすることができる。このように、ノイズを計測しやすくできることで、流量も算出しやすくすることができる。また、検出値となるノイズが大きくなることで、より高い感度で計測を行うことができる。つまり、乱流発生部を設けることで、排ガスの流量の変化に対するノイズの大きさ(受光信号の特性)の変化をより大きくすることができる、これにより、より高い精度で流量を計測することができる。
【0116】
ここで、流量測定装置10は、排ガスの流量に加え、排ガスに含まれる特定の物質の濃度も測定するようにしてもよい。なお、流量測定装置10は、基本的に新たな装置を設けることなく、検出値に基づいて算出部で計算を行うことで濃度を計測することができる。
【0117】
まず、濃度を計測する場合は、発光部40を、測定対象の物質が吸収する近赤外波長域のレーザ光を発光させる発光素子とする。例えば、計測対象が一酸化窒素の場合、発光部40は、一酸化窒素を吸収する近赤外波長域のレーザ光を発光させる発光素子を有する。また、計測対象が二酸化窒素の場合、発光部40は、二酸化窒素を吸収する近赤外波長域のレーザ光を発光させる発光素子を有する。また、計測対象が亜酸化窒素の場合、発光部40は、亜酸化窒素を吸収する近赤外波長域のレーザ光を発光させる発光素子を有する。なお、測定対象が複数の物質である場合、発光部40は、夫々の物質が吸収する波長域の光を出射する発光素子を複数備えるようにしてもよい。また光源ドライバ46、計測制御部50は、算出部48に、発光部40から出力しているレーザ光の強度の情報を出力する。
【0118】
算出部48は、受光部44から送られた信号(受光信号)と、計測制御部50により光源ドライバ46を駆動させている条件とに基づいて、計測対象の物質の濃度を算出する。具体的には、算出部48は、計測制御部50により光源ドライバ46を駆動させている条件に基づいて、発光部40から出力されるレーザ光の強度を算出し、受光部44から送られた受光信号に基づいて、受光したレーザ光の強度を算出する。算出部48は、この発光したレーザ光の強度と受光したレーザ光の強度と比較し、排ガス234に含まれる測定対象の物質の濃度を算出する。
【0119】
具体的には、発光部40から出力された近赤外波長域のレーザ光Lは、光ファイバ42から計測セル12の所定経路、具体的には、窓26、入射管22、主管20、出射管24、窓28を通過した後、受光部44に到達する。このとき、計測セル12内の排ガス234中に測定対象の物質が含まれていると、計測セル12を通過するレーザ光が吸収される。そのため、レーザ光Lは、排ガス234中の測定対象の物質の濃度によって、受光部44に到達するレーザ光の出力が変化する。受光部44は、受光したレーザ光を受光信号に変換し、算出部48に出力する。また、計測制御部50および光源ドライバ46は、発光部40から出力したレーザ光Lの強度を算出部48に出力する。算出部48は、発光部40から出力した光の強度と、受光信号から算出される強度とを比較し、その減少割合から計測セル12内を流れる排ガス234の測定対象物の濃度を算出する。このように計測手段14は、いわゆるTDLAS方式(Tunable Diode Laser Absorption Spectroscopy:可変波長ダイオードレーザー分光法)を用いることで、出力したレーザ光の強度と、受光部44で検出した受光信号とに基づいて主管20内の所定位置、つまり、測定位置を通過する排ガス234中の測定対象物質の濃度を、算出および/または計測することができる。また、計測手段14は、連続的に測定対象物質の濃度を、算出および/または計測することができる。
【0120】
なお、流量測定装置は、ガスに含まれる特定物質の濃度も計測する場合は、装置を調整することで、具体的には、出力するレーザ光の波長を調整することで、種々の物質の濃度を計測することができる。測定対象としては種々の物質としては、窒素酸化物、硫化酸化物、一酸化炭素、二酸化炭素等が例示される。
【0121】
このように、流量測定装置は、基本的に装置構成を増加させることなく、排ガスの流量と特定物質の排ガス中の濃度を同時に計測することができる。なお、上記実施形態では、より高い精度で、かつ所望の物質のみを選択して計測できるため、TDLAS方式により濃度を計測したが、本発明はこれに限定されず、主管内を通過したレーザ光を受光して濃度を計測する種々の方法を用いることができる。
【0122】
このように、エンジンユニット200および排ガス再循環装置210は、流量測定装置10および吸入空気流量測定装置10Aで排ガスおよび空気に含まれる特定物質の濃度を計測することで排ガスの成分、空気の成分に基づいて上述した目標範囲を設定することができる。これにより、エンジン202に供給する混合気体をより適切な成分比の気体とすることができ、エンジン202の効率をより向上させることができ、窒素酸化物を低減することができる。
【0123】
次に、図18から図20を用いて、流量測定装置の他の実施形態を説明する。ここで、図18は、流量測定装置の他の実施形態の受光部の概略構成を示す模式図である。図19および図20は、図18に示す流量測定装置の動作を説明するための説明図である。なお、図18に示す受光部を有する流量測定装置は、受光部の形状を除いて他の構成は、上述した流量測定装置10と同様である。
【0124】
図18に示す受光部100は、4つの受光素子102、104、106、108を有する。ここで、受光素子102、104、106、108は、それぞれフォトダイオード(PD、Photodiode)等の光検出器であり、受光したレーザ光の強度(光量)を受光信号として算出部48に送る。また、4つの受光素子102、104、106、108は、同一形状であり、隣接して配置されている。具体的には、受光素子102は、一辺が受光素子104と接し、該一辺に接する他の一辺が受光素子106と接している。また、受光素子104は、一辺が受光素子102と接し、該一辺に接する他の一辺が受光素子108と接している。また、受光素子106は、一辺が受光素子102と接し、該一辺に接する他の一辺が受光素子108と接している。また、受光素子108は、一辺が受光素子106と接し、該一辺に接する他の一辺が受光素子104と接している。つまり、受光部100は、中心を原点とし各素子の境界の辺をx軸、y軸としたxy平面とすると、第1象限に受光素子102が配置され、第2象限に受光素子106が配置され、第3象限に受光素子108が配置され、第4象限に受光素子104が配置された構成となる。
【0125】
この受光部100は、例えば、温度境界層の通過時にレーザ光が屈折しなかったら、図19に示すように、上述した原点部分にレーザ光110が到達し、4つの受光素子102、104、106、108に均等に光が到達する。これに対して、レーザ光が温度境界層の通過時に屈折すると、例えば、図20に示すように、レーザ光110の到達位置が受光素子104側に移動し、受光素子106には、レーザ光が受光しない状態となる。このように受光部100は、レーザ光の到達位置がずれると、各受光素子が受光する光が増減し、受光信号が変動する。また、各受光素子の受光光量は、変動するが、4つの受光素子が受光した光の強度を合計することで、到達したレーザ光の総量を算出することができる。
【0126】
これにより、受光部100を有する流量測定装置は、1つの受光素子が受光した受光信号のノイズから排ガス流量を算出することができる。また、4つの受光素子が受光した受光信号の総量から測定対象の排ガス濃度を計測することができる。これにより、レーザ光の到達位置が変化した場合でも、到達した光を全て受光し、その受光した強度から測定対象の濃度を計測できるため、より高い精度で測定対象の濃度を計測することができる。
【0127】
また、上記実施形態では、1つの受光素子で検出した受光信号のノイズにより上述した方法で流量を算出したが、これには限定されない。例えば、各受光素子の受光量を比較して流量を算出するようにしてもよい。つまり、ノイズとして、4つの受光素子102、104、106、108の相対変化を算出するようにしてもよい。具体的には、受光量の増減から、レーザ光の揺らぎ、変動、また、移動量を算出し、その結果から流量を算出するようにしてもよい。
【0128】
例えば、パージ流量と排ガス流量との相対関係が変化すると、温度境界層の形状も変化する。これにより、レーザ光の揺らぎの周波数は、変動速度、また、原点からの最大移動距離が変化する。算出部は、予め実験等で算出したこれらの関係を記憶しておき、受光信号に基づいて、算出した結果(各受光素子の受光量の比、変化の周波数等)と記憶している関係とから、流量を算出する。
【0129】
また、算出部48は、4つの受光素子102、104、106、108の相対関係から、レーザ光の到達位置を算出し、その到達位置と原点との距離から、排ガス流量を算出するようにしてもよい。つまり、上述したように、レーザ光の最大移動距離(原点からの変位量)は、パージ流量と排ガス流量との相対関係から算出することができる。これにより、レーザ光の移動距離を算出することでも排ガスの流量を算出することができる。
【0130】
なお、上記実施形態では、レーザ光の到達位置を4つの受光素子の受光量のバランスに基づいて算出したが、本発明はこれに限定されない。図21を用いて、受光部の他の一例について説明する。ここで、図21は、受光部の他の一例の概略構成を示す模式図である。図21に示す受光部130は、受光素子132がマトリックス状に配置されている。具体的には、64個の受光素子132が縦8個、横8個ずつの行列で配置されている。受光部130の64個の受光素子132は、それぞれ受光信号を算出部48に送る。
【0131】
このように、受光素子をマトリックス状に配置することで、受光した受光素子の位置に基づいて、レーザ光の到達位置を算出することもできる。例えば、8×8の中心にレーザ光140が到達した場合は、中央の4つの受光素子が光を検出する。この場合は、4つの受光素子の中心を到達位置とすればよい。また、レーザ光が移動し、レーザ光の到達位置が位置142となったときも、受光した4つの受光素子の中心を到達位置とすればよい。また、さらにレーザ光が移動して、レーザ光の到達位置が位置144となったときは、光を受光する受光素子は、1つとなる。この場合は、その1つの受光素子の位置を到達位置とすればよい。
【0132】
このように、多数の受光素子をマトリックス状に配置することで、受光量のバランスを検出しなくとも、レーザ光の到達位置を検出することができる。また、流量測定装置は、到達位置の情報から流量を算出することができる。なお、受光素子の配置順序は、本実施形態には限定されない。例えば、中心部付近は、受光素子を光に配置し、中心から離れるに従って疎になるように配置してもよい。
【0133】
なお、流量測定装置は、上記実施形態にも限定されない。流量測定装置は、排ガスの流量とパージガスの流量との相対関係によりレーザ光の到達位置変動の特性が変化することを利用し、受光部の受光信号に基づいて排ガス流量を算出する種々の方法を用いることができる。つまり、本発明の流量測定装置は、受光部から送られる受光信号に基づいて、レーザ光の到達位置変動の種々の特性(ノイズ、変動位置、移動距離)を算出することで、また、必要に応じて、パージガスの流量も加味することで、排ガスの流量を算出する。
【0134】
なお、上述したように、パージガス供給管30、32の吹出し口を窓26、28側に向けて配置することで、窓26、28周辺に効率よくパージガスを供給することができ、窓26、28が汚れることをより確実に防止することができる。このため、パージガス供給管30、32の吹出し口を窓26、28側に向けて配置することが好ましいが、本発明は、これに限定されない。例えば、入射管、出射管の軸に垂直な方向にパージガスを排出するようにしてもよい。
【0135】
また、上記実施形態では、入射管と出射管を同軸上に設けたがこれには限定されない。例えば、計測セル内に光学ミラーを設け、入射管の窓から入射されたレーザ光を計測セル内の光学ミラーで多重反射させた後、出射管の窓に到達させるようにしてもよい。このようにレーザ光を多重反射させることで、計測セル内のより多くの領域を通過させることができる。これにより、計測セル内を流れる排ガスの濃度の分布(排ガスの流量や密度のばらつき、排ガス内の濃度分布のばらつき)の影響を小さくすることができ、正確に濃度を検出することができる。
【0136】
また、上記実施形態では、いずれも計測セルの主管と、排ガスを流す配管とを別部材としたが、一体としてもよい。例えば、計測セルの主管が排ガスを排出する装置に直接連結してもよい。
【0137】
また、計測セルの主管の管形状は、レーザ光が通過できればよく、断面が円となる管としても、断面が多角形になる管としても、断面が楕円形となる管としてもよい。また、管の内周の断面と外周の断面が異なる形状となってもよい。また、入射管、出射管も上述したように形状は限定されない。
【0138】
また、上記実施形態では、配管を流れるガスの流量を計測したが、本発明はこれに限定されず、流速の計測も可能である。例えば、上述した受光信号と流量との関係と、流量と流速との関係を用いることで流速を算出することができる。つまり、配管の径は一定であるので、算出した流量を配管の径で割ることにより流速を算出することができる。また、受光信号と流量との関係のように、予め関係を算出しておくことで、受光信号の計測値から流速を算出することができる。つまり、算出部による算出方法、算出式を変更することで、流量測定装置を流速測定装置として用いることができる。また、流量測定装置に流速測定機能を持たせることもできる。このように、流速を計測する場合も上述したように、高い応答性で計測ができ、かつ、厳しい環境での計測ができる。このように、算出値として流速を算出しその結果に基づいて制御を行っても、流量に基づいた制御を行うことができる。
【符号の説明】
【0139】
6、8 配管
10 流量測定装置
12 計測セル
14 計測手段
16 パージガス供給手段
18 流れ方向検出手段
20 主管
22 入射管
24 出射管
26、28 窓
30、32 パージガス供給管
40 発光部
42 光ファイバ
44 受光部
46 光源ドライバ
48 算出部
50 計測制御部
52 ポンプ
54 ドライヤ
56 流量計
62、64 検出素子
66 差圧検出器
200 内燃機関システム
202 エンジン
204 吸気管
205 排気管
206 空気冷却器
208 過給機
208a コンプレッサ
208b タービン
208c 支持軸
209 流量調整弁
210 排ガス再循環装置
212 再循環配管
214 排ガス冷却器
216 EGR弁
220 制御装置
232 空気
234 排ガス
242、244 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出された排ガスを、前記内燃機関の吸気管に供給する排ガス再循環装置であって、
前記内燃機関から排出された排ガスを前記吸気管に案内する再循環配管と、
前記再循環配管を流れる排ガスの流量を調整する流量調整弁と、
前記再循環配管の前記流量調整弁よりも上流側の流量を計測する流量測定装置と、
流量測定装置の計測結果に基づいて前記流量調整弁を制御する制御装置と、を有し、
前記流量測定装置は、前記再循環配管の経路中に前記再循環配管の一部として配置され排ガスが流れる主管、前記主管に連結し、前記主管と連結している側と反対側の端部に光が通過可能な窓部が形成された入射管、前記主管に連結し、前記主管と連結している側と反対側の端部に光が通過可能な窓部が形成された出射管、前記入射管と連結された第1パージガス供給管とで構成された計測セルと、
前記計測セルの前記第1パージガス供給管にパージガスを供給するパージガス供給部と、
前記入射管にレーザ光を入射させる発光部と、
前記入射管から入射され、前記計測セルを通過し、前記出射管から出射された前記レーザ光を受光し、受光した光量を受光信号として出力する受光部と、
前記受光部から出力される受光信号に基づいて、前記計測セルを流れる排ガスの流量を算出する算出部と、
各部の動作を制御する計測制御部と、を有することを特徴とする排ガス再循環装置。
【請求項2】
前記吸気管の前記再循環配管との連結部よりも上流側の空気の流量を計測する吸引空気流量測定装置をさらに有し、
前記制御装置は、前記吸引空気流量測定装置での計測結果にも基づいて前記流量調整弁を制御することを特徴とする請求項1に記載の排ガス再循環装置。
【請求項3】
前記吸引空気流量測定装置は、前記吸気管の経路中に前記吸気管の一部として配置され空気が流れる主管、前記主管に連結し、前記主管と連結している側と反対側の端部に光が通過可能な窓部が形成された入射管、前記主管に連結し、前記主管と連結している側と反対側の端部に光が通過可能な窓部が形成された出射管、前記入射管と連結された第1パージガス供給管とで構成された計測セルと、
前記計測セルの前記第1パージガス供給管にパージガスを供給するパージガス供給部と、
前記入射管にレーザ光を入射させる発光部と、
前記入射管から入射され、前記計測セルを通過し、前記出射管から出射された前記レーザ光を受光し、受光した光量を受光信号として出力する受光部と、
前記受光部から出力される受光信号に基づいて、前記計測セルを流れる排ガスの流量を算出する算出部と、
各部の動作を制御する計測制御部と、を有することを特徴とする請求項2に記載の排ガス再循環装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記内燃機関で燃焼される燃料の流量にも基づいて前記流量調整弁を制御することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の排ガス再循環装置。
【請求項5】
前記パージガス供給部は、前記吸気管を流れる空気を案内する配管と、前記配管を流れる空気の圧力を調整するパージガス圧力調整弁とを有し、前記吸気管を流れる空気を前記パージガスとして前記第1パージガス供給管に供給することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の排ガス再循環装置。
【請求項6】
前記流量測定装置は、前記計測セルを流れる流体の流れ方向を検出する流れ方向検出部をさらに有することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の排ガス再循環装置。
【請求項7】
前記算出部は、前記受光部で受光した受光信号を1つの周波数で復調し、復調した信号の変動の大きさに基づいて、前記排ガスの流量を算出することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の排ガス再循環装置。
【請求項8】
前記算出部は、前記受光部で受光した受光信号を異なる2つの周波数でそれぞれ復調し、復調した2つの周波数における信号の変動の大きさに基づいて、前記排ガスの流量を算出することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の排ガス再循環装置。
【請求項9】
前記算出部は、前記受光部で受光した受光信号を複数の異なる周波数でそれぞれ復調し、復調した複数の周波数における信号の変動の大きさに基づいて、前記排ガスの流量を算出することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の排ガス再循環装置。
【請求項10】
前記算出部は、予め算出した変動と流量との関係を記憶しており、前記関係と前記変動の大きさとに基づいて前記排ガスの流量を算出することを特徴とする請求項7から9のいずれか一項に記載の排ガス再循環装置。
【請求項11】
前記算出部は、前記入射管に流れるパージガスの流量毎に、前記変動と前記排ガスの流量との関係を記憶しており、
前記入射管に流れるパージガスの流量と前記変動に基づいて前記排ガスの流量を算出することを特徴とする請求項7から9のいずれか一項に記載の排ガス再循環装置。
【請求項12】
前記制御部は、前記算出部で算出した前記排ガスの流量を含む領域で変動の変化量の大きくなる前記パージガスの流量を算出し、算出結果に基づいて、前記パージガス供給部から前記第1パージガス供給管に供給するパージガスの流量を調整することを特徴とする請求項11に記載の排ガス再循環装置。
【請求項13】
前記算出部は、さらに、前記発光部から出力したレーザ光の強度と、前記受光部で受光したレーザ光の強度とに基づいて、前記計測セルを流れる排ガスの測定対象の物質の濃度も算出することを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の排ガス再循環装置。
【請求項14】
前記受光部は、隣接して配置された複数の受光素子を有し、各受光素子で受光した光量を受光信号として出力し、
前記算出部は、各受光素子から送られた受光信号の強度の比較に基づいて、前記流体の流量を算出することを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の排ガス再循環装置。
【請求項15】
前記算出部は、各受光素子から送られた受光信号の強度の比較に基づいて、前記レーザ光の到達位置を算出し、前記到達位置と基準位置とのずれに基づいて、前記流体の流量を算出することを特徴とする請求項14に記載の排ガス再循環装置。
【請求項16】
前記算出部は、各受光素子から送られた受光信号の強度の総量と、前記受光部で受光したレーザ光の強度とに基づいて、前記計測セルを流れる排ガスの測定対象の物質の濃度も算出することを特徴とする請求項14または15に記載の排ガス再循環装置。
【請求項17】
前記計測セルは、前記主管の、前記排ガスの流れ方向において前記入射管の上流側、かつ、前記入射管の近傍に、前記入射管の近傍の空気の流れを乱流にする乱流発生部を有することを特徴とする請求項1から16のいずれか一項に記載の排ガス再循環装置。
【請求項18】
さらに、前記出射管と連結された第2パージガス供給管を有し、
前記パージガス供給部は、前記第2パージガス供給管にもパージガスを供給することを特徴とする請求項1から17のいずれか一項に記載の排ガス再循環装置。
【請求項19】
内燃機関と、
前記内燃機関に空気を供給する吸気管と、
前記内燃機関で発生した排ガスを案内する排気管と、
排気管から排出される排ガスが通過することで回転するタービン、前記タービンと共に回転し前記吸気管に空気を供給するコンプレッサを備える過給機と、
前記排気管に案内された排ガスの一部を前記吸気管に案内する請求項1から18のいずれか一項に記載の排ガス再循環装置と、を有することを特徴とする内燃機関システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−167652(P2012−167652A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−31335(P2011−31335)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】