説明

排ガス処理システム及び排ガス処理方法

【課題】系外にCO2を除去した処理排ガスを排出する際に、アミン系吸収液の同伴を抑制することができる排ガス処理システム及び方法を提供する。
【解決手段】例えば石炭を燃料とするボイラ11からの排ガス12中の硫黄酸化物を除去する脱硫装置13と、脱硫後の排ガス12中のCO2をアミン吸収液により除去するCO2吸収塔21及びアミン吸収液を再生する吸収液再生塔22を備えたCO2回収装置15とを具備してなると共に、前記CO2吸収塔21の塔頂部側から排出されるCO2が除去された処理排ガス16に、SOxを含む脱硫排ガス14の一部14aを供給し、処理排ガス16中に同伴される残留のミスト状のアミンを硫酸アミンに中和してなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス中のCO2をアミン吸収液で吸収除去するに際し、アミン吸収液のCO2回収装置外への排出がない排ガス処理システム及び排ガス処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球の温暖化現象の原因の一つとして、CO2による温室効果が指摘され、地球環境を守る上で国際的にもその対策が急務となってきた。CO2の発生源としては化石燃料を燃焼させるあらゆる人間の活動分野に及び、その排出抑制への要求が一層強まる傾向にある。これに伴い大量の化石燃料を使用する火力発電所などの動力発生設備を対象に、ボイラやガスタービン等、産業設備の燃焼排ガスをアミン系CO2吸収液と接触させ、燃焼排ガス中のCO2を除去・回収する方法および回収されたCO2を大気へ放出することなく貯蔵する排ガス処理システムが精力的に研究されている。
【0003】
前記のようなCO2吸収液を用い、燃焼排ガスからCO2を除去・回収する工程としては、CO2吸収塔(以下、単に「吸収塔」ともいう。)において燃焼排ガスとCO2吸収液とを接触させる工程と、CO2を吸収したCO2吸収液を吸収液再生塔(以下、単に「再生塔」ともいう。)において加熱し、CO2を放散させると共に、CO2吸収液を再生して再びCO2吸収塔に循環して再利用する工程とを有するCO2回収装置が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
CO2吸収塔では、例えばアルカノールアミン等のアミン系CO2吸収液(以下、「アミン吸収液」という。)を用いて、向流接触し、排ガス中のCO2は、化学反応(発熱反応)によりCO2吸収液に吸収され、CO2が除去された排ガスは系外に放出される。CO2を吸収したCO2吸収液はリッチ溶液とも呼称される。このリッチ溶液はポンプにより昇圧され、再生塔でCO2が放散し再生した高温のCO2吸収液(リーン溶液)により、熱交換器において加熱され、再生塔に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−193116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、排ガス処理システムにおいて、CO2回収装置のCO2を吸収するCO2吸収塔からCO2が除去されて排出される処理排ガス中には、ガス状のアミン吸収液は分析できないレベルまで低減できる。また、ミスト状のアミン吸収液も大幅に低減できるが、一部が同伴して、系外へ放出するおそれがある。
【0007】
この系外へ放出されるアミン吸収液は、大気中に漂う結果、光化学反応により、大気中のNOと反応してニトロソアミンとなることが懸念されている。
【0008】
よって、CO2吸収塔からの残留アミンの放出を抑制した排ガス処理システムの確立が切望されている。
【0009】
本発明は、前記問題に鑑み、系外にCO2を除去した処理排ガスを排出する際に、アミン吸収液の同伴を無くすことができる排ガス処理システム及び方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、ボイラからの排ガス中の硫黄酸化物を除去する脱硫装置と、脱硫後の排ガス中のCO2をアミン吸収液により除去するCO2吸収塔及びアミン吸収液を再生する吸収液再生塔を備えたCO2回収装置とを具備してなると共に、前記CO2吸収塔の塔頂部から排出されるCO2が除去された処理排ガスに、SOxを含むガスを供給し、処理排ガス中に同伴される残留のミスト状のアミンを硫酸アミン及び亜硫酸アミンに中和してなることを特徴とする排ガス処理システムにある。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、前記SOxを含むガスが、前記脱硫装置の前後のいずれかの排ガスの一部であることを特徴とする排ガス処理システムにある。
【0012】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記処理排ガス中にガス状アミンを含まないことを特徴とする排ガス処理システムにある。
【0013】
第4の発明は、第1乃至3のいずれか一つの発明において、前記残留のミスト状のアミンを計測する計測手段を有することを特徴とする排ガス処理システムにある。
【0014】
第5の発明は、第1乃至3のいずれか一つの発明において、前記残留のミスト状のアミンを計測する計測手段を有すると共に、前記計測手段の計測により求めた残留のミスト状のアミン濃度に対して、中和するのに十分なSOx量を供給することを特徴とする排ガス処理システムにある。
【0015】
第6の発明は、第1乃至5のいずれか一つの発明において、前記CO2吸収塔が、アミン吸収液と排ガスとを対向接触させてCO2を除去するCO2吸収部と、前記CO2吸収部のガス流れ後流側に設けられ、排ガス中の残留アミンを除去する少なくとも1以上の水洗部とを有することを特徴とする排ガス処理システムにある。
【0016】
第7の発明は、第1乃至6のいずれか一つの発明において、前記CO2吸収塔の前流側に設けられ、排ガスを冷却する冷却塔を有することを特徴とする排ガス処理システムにある。
【0017】
第8の発明は、第7の発明において、前記冷却塔の前流側に湿式電気集塵機を有することを特徴とする排ガス処理システムにある。
【0018】
第9の発明は、第7の発明において、前記冷却塔の下部に、仕上げ脱硫部を有することを特徴とする排ガス処理システムにある。
【0019】
第10の発明は、第7の発明において、前記冷却塔の下部に、仕上げ脱硫部と湿式電気集塵機とを有することを特徴とする排ガス処理システムにある。
【0020】
第11の発明は、第1乃至10のいずれか一つの発明において、排ガス中の窒素酸化物を除去する脱硝装置と、排ガス中の煤塵を除去する乾式電気集塵機とを有することを特徴とする排ガス処理システムにある。
【0021】
第12の発明は、ボイラからのCO2を含む排ガス中の硫黄酸化物を脱硫装置で除去した後、脱硫後の排ガス中のCO2を、アミン吸収液を用いてCO2吸収塔内で除去する排ガス処理方法であって、前記CO2吸収塔の塔頂部から排出されるCO2が除去された処理排ガスに、SOxを含むガスを供給し、処理排ガス中に同伴される残留のミスト状のアミンを硫酸アミン及び亜硫酸アミンに中和することを特徴とする排ガス処理方法にある。
【0022】
第13の発明は、第12の発明において、前記SOxを含むガスが、前記脱硫装置の前後のいずれかの排ガスの一部であることを特徴とする排ガス処理方法にある。
【0023】
第14の発明は、第12又は13の発明において、前記処理排ガス中にガス状アミンを含まないことを特徴とする排ガス処理方法にある。
【0024】
第15の発明は、第12乃至14のいずれか一つの発明において、前記残留のミスト状のアミンを計測手段で計測すると共に、前記計測手段の計測により求めた残留のミスト状のアミン濃度に対して、中和するのに十分なSOx量を供給することを特徴とする排ガス処理方法にある。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、排ガス中のCO2をアミン吸収液で吸収・除去するCO2吸収塔から排出される処理排ガス中に同伴される残留アミンに、SOxを含むガスを供給して中和することで、アミン吸収液の系外への放出を抑制することができる。この結果、大気中にアミン吸収液の放出が無くなり、アミン吸収液に起因するニトロソアミンの発生を阻止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、実施例1に係る排ガス処理システムの概略図である。
【図2】図2は、実施例2に係る排ガス処理システムの概略図である。
【図3】図3は、実施例3に係る排ガス処理システムの概略図である。
【図4】図4は、ミスト状のアミン吸収液中へのSO2、NO2ガスの各pHにおける吸収率を示す図である。
【図5】図5は、ミスト状のアミン吸収液中に吸収されるSO2とNO2によるアミンの中和率(%)を示す図である。
【図6】図6は、実施例4に係る排ガス処理システムのCO2回収装置の一例を示す図である。
【図7】図7は、実施例5に係る排ガス処理システムのCO2回収装置の一例を示す図である。
【図8】図8は、実施例6に係る排ガス処理システムのCO2回収装置の一例を示す図である。
【図9】図9は、実施例7に係る排ガス処理システムのCO2回収装置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例により本発明が限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0028】
本発明による実施例1に係る排ガス処理システムについて、図面を参照して説明する。図1は、本実施例に係る排ガス処理システムの概略図である。図1に示すように、本実施例に係る排ガス処理システム10Aは、例えば石炭を燃料とするボイラ11からの排ガス12中の硫黄酸化物を除去する脱硫装置13と、脱硫後の排ガス12中のCO2をアミン吸収液により除去するCO2吸収塔21及びアミン吸収液を再生する吸収液再生塔22を備えたCO2回収装置15とを具備してなると共に、前記CO2吸収塔21の塔頂部側から排出されるCO2が除去された処理排ガス16に、SOxを含む脱硫排ガス14の一部14aを供給し、処理排ガス16中に同伴される残留のミスト状のアミンを硫酸アミン及び亜硫酸アミンに中和してなるものである。
図1中、符号L1はリッチ溶液供給ライン、L2はリーン溶液供給ライン、L11はボイラ11からの排ガス12を供給する排ガス供給ライン、L12は脱硫排ガス14を脱硫排ガス用煙突18に供給する脱硫排ガス供給ライン、L13はCO2回収用分岐ガスライン、L14はCO2吸収塔21から処理排ガス用煙突17へ排出される処理排ガス16の排出ライン、L15は中和用脱硫排ガス供給ライン、を各々図示する。
【0029】
一般に、CO2回収装置15は、吸収液としてアミン吸収液を用いる場合、CO2吸収塔21内において該アミン吸収液に脱硫排ガス14中に含まれるCO2を吸収させて、脱硫排ガス14から除去し、CO2を吸収したアミン吸収液は、吸収液再生塔22において、再生され、再度CO2吸収塔21にて再利用する閉鎖系ラインを構築している。
【0030】
CO2吸収塔21内においては、アミン吸収液は、脱硫排ガス14と例えば対向接触させることで、CO2をアミン吸収液内に取り込むようにしている。
【0031】
ところで、CO2吸収塔21内において、アミン吸収液が脱硫排ガス14と接触する結果、アミン吸収液が液体状に留まらず、ガス状のアミン吸収液と、ミスト状のアミン吸収液とが発生し、これらが処理排ガス16と共にCO2吸収塔21の塔頂部から系外に同伴しつつ排出される場合がある。
【0032】
アミン吸収液が液状である場合には、閉鎖系ラインの内部を循環しているので、CO2吸収塔21の系外への放出はないものの、ガス状とミスト状のアミン吸収液が、CO2吸収塔21から系外へ放出される場合、紫外線による光化学反応により大気中のNO2と反応して酸化されてニトロソアミンとなるおそれがある。
【0033】
そこで、ガス状とミスト状のアミン吸収液の系外への放出を抑制するために、CO2吸収塔21内の塔頂部側に、水洗処理する水洗部等を設け、処理排ガス16を洗浄処理することで、処理排ガス16中のガス状のアミン吸収液は検出されない程度に除去することができる。しかし、ミスト状のアミン吸収液は約1〜10ppm程度残留して、処理排ガス16と共に系外へ放出される場合がある。
【0034】
本発明では、このような系外に放出されるミスト状のアミン吸収液の濃度は、極微量ではあるが、このミスト状のアミン吸収液に対して、SOxガスを供給することで、処理排ガス用煙突17に至るまでに中和処理するものである。
【0035】
図1に示す排ガス処理システム10Aは、ボイラ11からの排ガス12中のSOxを脱硫装置13で除去した脱硫排ガス14の一部14aの排ガス中のCO2を部分的に回収するシステムである。
ボイラプラントにおいては、ボイラ11からの全量のガス中のCO2を回収せずに、その一部のCO2だけを回収する場合もあるので、このような一部のCO2回収システムに適用するものである。
【0036】
本実施例では、このようなCO2を一部回収する場合における排ガス処理において、CO2吸収塔21の塔頂部から系外に排出される処理排ガス16に、脱硫装置13からの脱硫排ガス14の一部14aを中和用脱硫排ガス供給ラインL15により供給することで、該処理排ガス16中に同伴されるミスト状のアミン吸収液を中和して硫酸アミン(無機塩)または亜硫酸アミンの形態とすることで、ミスト状のアミン吸収液のままでの系外への放出を無くすようにしている。
【0037】
図4は、ミスト状のアミン吸収液中へのSO2、NO2ガスの各pHにおける吸収率を示す図である。図4中、横軸は接触時間(秒)、縦軸は吸収率(%)を示している。
図4の結果より、ミスト状のアミン吸収液のpHが7の場合には、ミスト状のアミン吸収液へのSO2の吸収率は、20%を少し超えているに過ぎない。
これに対し、pHが8以上の場合には、ミスト状のアミン吸収液へのSO2の吸収率は、大幅に増大し、pHが9以上では約5秒以内で、pHが8のものでも約8秒程度で、吸収率が60%を超えることとなった。
【0038】
このSO2ガスの吸収率に対し、NO2ガスの吸収率は、図4に示すように、pHが変化しても、数%以下であり、ほとんど吸収されていないことが判明した。
【0039】
図5は、ミスト状のアミン吸収液中に吸収されるSO2とNO2によるアミンの中和率(%)を示す。図5中、横軸は接触時間(秒)、縦軸は中和率(%)を示している。
ミスト状のアミン吸収液に吸収されたSO2が残留アミンを中和する際の反応速度は、図5に示すように、pHが8以上の場合、2秒で100%の中和反応が完結されることが判明した。
【0040】
ここで、処理排ガス16がCO2吸収塔21の塔頂部から処理排ガス用煙突17を経由して外部に排出されるまでは、その流速にも左右されるが、約3〜10秒程度であるので、処理排ガス16中に同伴されるミスト状のアミンに対して、SOx(SO2)を供給して、中和するに至るには、吸収時間及び中和時間共十分である。
【0041】
ここで、処理排ガス16中に残留するミスト状のアミン吸収液は、処理排ガス16の排出ラインL14中に介装されたアミン濃度計19により所定時間ごとの監視を必要に応じて行うことで、外部へのベーパー状及びミスト状のアミンの濃度を測定している。
【0042】
よって、このアミン濃度計19で計測された濃度をもとにして、ミスト状のアミン吸収液を除去するに十分な量のSOxを供給するようにしている。
なお、ボイラ11の運転条件に変動がない安定状態の場合には、過去の蓄積データを用いて、放出されるミスト状のアミン吸収液を予測して、SOxガスをやや過剰に供給することで、中和処理を行うようにしてもよい。
【0043】
また、脱硫装置13での脱硫性能の向上により脱硫排ガス14中に所望量のSOxが濃度に達していない場合には、脱硫装置13に導入する前の排ガス12の一部12a(SOx濃度:300〜2,000ppm)を供給するようにしてもよい。すなわち、脱硫装置13をバイパスさせるラインL16により、SOxが多量に存在する脱硫前の排ガス12の一部12aを供給して中和を行うようにすればよい。
【0044】
ここで、残留アミンを中和するには、2molのアミンに対して、1molのSOxを供給すれば足りる。
よって、例えば10ppmのミスト状のアミンを中和する場合には、少なくとも5ppm以上のSOxを供給すればよいこととなる。
【0045】
本実施例によれば、CO2を一部回収する排ガス処理システムにおいて、CO2吸収塔21から排出される処理排ガス16中に、脱硫排ガス14の一部14aを供給することで、処理排ガス用煙突17に至るまで、若しくは該煙突17内部において、処理排ガス16に同伴するミスト状のアミン吸収液が中和処理される。よって、処理排ガス用煙突17から排出される処理排ガス16が大気中に飛散された場合でも、ミスト状のアミン吸収液が中和処理されているので、大気中で酸化されてニトロソアミンとなることが防止される。
【0046】
本実施例では、CO2吸収塔21から排出される処理排ガス16中のミスト状のアミンの濃度が少ない場合について説明しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、
CO2吸収塔21から排出される処理排ガス16中のミスト状のアミンの濃度が多い場合においても、その濃度に応じて、該ミスト状のアミン吸収液を除去するに十分な量のSOxを脱硫排ガス14の一部14a又はボイラ11からの排ガス12の一部12aを供給することで、中和することができる。なお、中和処理に発生した硫酸アミンに対しては、煙突から排出する以前において、別途除去するようにしてもよい。
【実施例2】
【0047】
本発明による実施例2に係る排ガス処理システムについて、図面を参照して説明する。図2は、本実施例に係る排ガス処理システムの概略図である。なお、図1に示す排ガス処理システムの構成と同一部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図2に示すように、本実施例に係る排ガス処理システム10Bは、脱硫装置13で脱硫された脱硫排ガス14の全量のガスをCO2回収装置15で処理して、CO2を全量吸収除去するものである。
【0048】
本実施例では、CO2吸収塔21から排出される処理排ガス16中のミスト状のアミンの濃度に応じて、脱硫排ガス14の一部14a又はボイラ11からのSOxを多量に含む排ガス12の一部12aを、処理排ガス16に供給するようにしている。
【0049】
本実施例によれば、CO2を全量回収する排ガス処理システムにおいて、CO2吸収塔21から排出される処理排ガス16中に、脱硫排ガス14の一部14a又はボイラ11からのSOxを多量に含む排ガス12の一部12aを供給することで、処理排ガス用煙突17に至るまで、若しくは該煙突17内部において、処理排ガス16に同伴するミスト状のアミン吸収液が中和処理される。
よって、処理排ガス用煙突17から排出される処理排ガス16が大気中に飛散された場合でも、ミスト状のアミン吸収液が中和処理されているので、大気中で酸化されてニトロソアミンとなるおそれが防止される。
【実施例3】
【0050】
本発明による実施例3に係る排ガス処理システムについて、図面を参照して説明する。図3は、本実施例に係る排ガス処理システムの概略図である。なお、図1に示す排ガス処理システムの構成と同一部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図3に示すように、本実施例に係る排ガス処理システム10Cは、ボイラ11の燃焼燃料の種類によって、排ガス12中のSOxが少ない場合において、処理排ガス16に同伴されるミスト状のアミン吸収液を中和できない場合がある。このような場合には、別途SOx供給手段(図示せず)からSOxガス20を処理排ガス16に直接供給し、処理排ガス16中に同伴されるミスト状のアミンを中和処理するようにしている。
【0051】
本実施例によれば、CO2を全量回収する排ガス処理システムにおいて、排ガス12中のSOxが少ない場合、SOxガス20を処理排ガス16に直接供給することで、処理排ガス用煙突17に至るまで、若しくは該煙突17内部において、処理排ガス16に同伴するミスト状のアミン吸収液が中和処理される。
よって、処理排ガス用煙突17から排出される処理排ガス16が大気中に飛散された場合でも、ミスト状のアミン吸収液が中和処理されているので、大気中で酸化されてニトロソアミンとなることが防止される。
【実施例4】
【0052】
本発明による実施例4に係る排ガス処理システムのCO2回収装置について、図面を参照して説明する。図6は、実施例4に係る排ガス処理システムのCO2回収装置の一例を示す図である。
前述した実施例1乃至3において説明したCO2吸収塔21から排出される処理排ガス16中のミスト状のアミンの濃度が少ないCO回収装置15の具体例について説明する。なお、本発明は以後説明する実施例に限定されるものではない。
図6に示すように、本実施例に係るCO回収装置15Aは、脱硫後のCO2を含有する脱硫排ガス14を冷却する冷却部50aを有する冷却塔50と、冷却後の脱硫排ガス14を導入し、導入された脱硫排ガス14とCO2吸収液であるアミン吸収液(リーン溶液)30とを接触させてCO2を除去するCO2吸収塔(以下、「吸収塔」ともいう。)21と、CO2を吸収したアミン吸収液(リッチ溶液30a)を再生する吸収液再生塔(以下、「再生塔」ともいう。)22と、前記吸収液再生塔22でCO2が除去されたリーン溶液30をCO2吸収塔21で再利用するCO2回収装置であって、前記CO2吸収塔21が、アミン吸収液(リーン溶液)30で脱硫排ガス14中のCO2を吸収するCO2吸収部21aと、前記CO2吸収部21aの上部(ガス流れ後流)側に設けられ、CO2除去排ガスを冷却すると共に、同伴するCO2吸収液を回収する水洗部21bとを具備するものである。
【0053】
前記吸収塔21では、CO2含有する脱硫排ガス14は、CO2吸収塔21の下部側に設けられたCO2吸収部21aにおいて、例えばアルカノールアミンをベースとするアミン吸収液30と対向流接触し、脱硫排ガス14中のCO2は、化学反応(R−NH2+H2O+CO2→R−NH3HCO3)によりアミン吸収液30に吸収される。
【0054】
そしてCO2除去後の処理排ガス16は、チムニートレイ31を介して水洗部21b側へ上昇し、水洗部21bの塔頂部21c側から供給される洗浄水32と気液接触して、処理排ガス16に同伴する液状のアミン吸収液30及びガス状のアミン吸収液30を回収する。なお、符号52は循環ポンプ、53は冷却器、L6は洗浄液循環ラインを図示する。
そして、液状及びガス状のアミン吸収液30が除去された処理排ガス16は、CO2吸収塔21の塔頂部21cから外部(処理排ガス用煙突側17、図1参照)へ排出される。
【0055】
また、図示しないが、CO2吸収塔21の塔頂部21c内には、処理排ガス16中のミストを捕捉するミストエリミネータを配置し、ミスト状のアミン吸収液を更に除去するようにしてもよい。
【0056】
CO2を吸収したリッチ溶液30aは、リッチ溶液供給ラインL1に介装されたリッチソルベントポンプ33により昇圧され、リッチ・リーン溶液熱交換器34において、吸収液再生塔22で再生されたリーン溶液30により加熱され、吸収液再生塔22の塔頂部22a側に供給される。
【0057】
前記再生塔22の塔頂部22a側から塔内部に放出されたリッチ溶液30aは、再生塔22の塔底部からの水蒸気による加熱により、大部分のCO2を放出する。再生塔22内で一部または大部分のCO2を放出したCO2吸収液は「セミリーン溶液」と呼称される。この図示しないセミリーン溶液は、再生塔22の塔底部に流下する頃には、ほぼ全てのCO2が除去されたリーン溶液(アミン吸収液30)となる。このリーン溶液30はその一部は循環ラインL3に介装された再生加熱器35で飽和水蒸気36により加熱される。加熱後の飽和水蒸気は凝縮水37となる。
【0058】
一方、再生塔22の塔頂部22aからは塔内においてリッチ溶液及び図示しないセミリーン溶液から水蒸気を伴ったCO2ガス41が放出される。
そして、水蒸気を伴ったCO2ガス41がガス排出ラインL4により導出され、ガス排出ラインL4に介装されたコンデンサ42により水蒸気が凝縮され、分離ドラム43にて凝縮水44が分離され、CO2ガスが系外に放出されて、別途圧縮回収等の後処理がなされる回収CO245となる。
分離ドラム43にて分離された凝縮水44は凝縮水ラインL5に介装された凝縮水循環ポンプ46にて吸収液再生塔22の上部に供給される。
なお、図示していないが、一部の凝縮水44はCO2吸収液の洗浄水32として水洗部21b側に供給され、処理排ガス16に同伴するアミン吸収液30の吸収に用いている。
【0059】
再生されたアミン吸収液(リーン溶液)はリーン溶液供給ラインL2を介してリーン溶液ポンプ38によりCO2吸収塔21側に送られ、アミン吸収液30として循環利用される。
よって、アミン吸収液30は、CO2吸収塔21と吸収液再生塔22とを循環する閉鎖経路を形成し、CO2吸収塔21のCO2吸収部21aで再利用される。なお、必要に応じて図示しない補給ラインによりアミン吸収液30は供給され、また必要に応じて図示しないリクレーマによりアミン吸収液中の熱安定性塩を除去している。
【0060】
また、CO2吸収塔21に供給される脱硫排ガス14は、その前段側に設けられた冷却塔50において、冷却水51により冷却され、その後CO2吸収塔21内に導入される。なお、符号L7は冷却水循環ラインを図示する。
【0061】
これは、脱硫排ガス14中のSO3ミストは、CO2吸収塔21にそのまま導入されると、ミスト状のアミン吸収液の核となるので、吸収塔21に導入する以前において、除去することで、結果としてミスト状のアミン吸収液の発生量の低減を図ることができることになるからである。
【0062】
このように、CO2吸収塔21と吸収液再生塔22とを循環利用されるアミン吸収液30は、2段以上設けた水洗部21bにおいて、COが除去された処理排ガス16と、洗浄水32とを向流接触させ、処理排ガス16に同伴された液状及びガス状のアミン吸収液30を洗浄水32で吸収除去し、CO2吸収塔21の外部へのガス状態での放散を防止している。
【0063】
本実施例では、水洗部21bはCO2吸収部21aのガス流れ後流側(図中、頂部側)に2段設けているが、3段以上設置するようにしてもよい。
また、塔頂部21c側の水洗部の洗浄液として、酸を添加するようにしてもよい。
【実施例5】
【0064】
本発明による実施例5に係る排ガス処理システムのCO2回収装置について、図面を参照して説明する。図7は、実施例5に係る排ガス処理システムのCO2回収装置の一例を示す図である。
図7に示すように、本実施例に係るCO回収装置15Bは、実施例4に係るCO回収装置15Aにおいて、冷却塔50の前流側に、湿式電気集塵機60を設けている。
湿式電気集塵機60を冷却塔50の前流側に設けることにより、脱硫排ガス14のSO3ミストを荷電して除去することができる。
【0065】
本実施例により、実施例4以上に、脱硫排ガス14中のSO3ミストを除去することができ、吸収塔21に導入する以前において、除去することで、結果としてミスト状のアミン吸収液の発生量の低減を図ることができる。
【実施例6】
【0066】
本発明による実施例6に係る排ガス処理システムのCO2回収装置について、図面を参照して説明する。図8は、実施例6に係る排ガス処理システムのCO2回収装置の一例を示す図である。
【0067】
図8は、実施例5の変形例の排ガス処理システムのCO2回収装置の概略図である。図7に示す冷却塔50では脱硫排ガス14を単に冷却しているが、図8に示す排ガス処理システムのCO2回収装置15Cに示すように、冷却塔50の下部において、仕上げ脱硫部61を設けている。そしてこの仕上げ脱硫部61に、脱硫用吸収液として石灰石(CaCO3)62aと酸化用空気62bを供給し、石灰・石膏法により石膏62cとしている。これにより、脱硫装置13からの脱硫排ガス14に残存している硫黄酸化物を除去するようにして、更に脱硫効率を向上させている。なお、石灰石と共に水酸化ナトリウム(NaOH)等の強アルカリ剤を添加するようにしてもよい。
なお、符号、L8は脱硫吸収液循環ラインを図示する。
本実施例では、仕上げ脱硫部61において、脱硫用吸収液の供給方法として、液柱式を用いているが、本発明はこれに限定されず、散水式、噴流式、充填式のいずれも用いることができる。
【0068】
ここで、仕上げ脱硫部61で用いる脱硫用吸収液としては、石灰石(CaCO3)以外には、NaOH、Na2CO3、NaHCO3、Ca(OH)2、Mg(OH)2等の強アルカリ剤を例示することができる。強アルカリ剤を用いることで、脱硫性能の向上をさらに図ることができ、特に、硫黄酸化物の濃度が高いような脱硫排ガス14を導入する場合には有効となり、CO2回収装置15Cに導入する脱硫排ガス14中の硫黄酸化物の濃度を極低濃度とすることができる。石灰・石膏法に較べて、脱硫性能も高くなり、導入する脱硫排ガス14中の硫黄酸化物の濃度が高いような場合であっても、良好な脱硫性能を発揮するので好ましい。
【0069】
なお、本実施例では、湿式電気集塵機60を冷却塔50の前流側に設置しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、冷却塔50の後流側に設置するようにしてもよい。
【0070】
また、以下の実施例7に示すように、冷却塔の内部に湿式電気集塵部を一体に有するようにしてもよい。
【実施例7】
【0071】
本発明による実施例7に係る排ガス処理システムのCO2回収装置について、図面を参照して説明する。図9は、実施例7に係る排ガス処理システムのCO2回収装置の一例を示す図である。
図9に示すように、実施例7に係る本実施例に係るCO回収装置15Dは、実施例6に示す湿式電気集塵機能を冷却塔の内部に有するものである。
これにより、脱硫の仕上げを行う仕上げ脱硫部61と湿式電気集塵部71とを備えた湿式電気集塵機一体型冷却塔70を構築することとなる。
なお、符号、L9は湿式集塵部71の洗浄液循環ラインを図示する。
本実施例に係る湿式電気集塵部71が、ミスト発生物質を除去する機能を奏している。実施例6のシステムに較べて、独立して湿式電気集塵機を設置することが不要となるので、その設置スペースを確保する必要がなくなる。
【0072】
本実施例では、脱硫排ガス14中のミスト発生物質であるSO3をミスト状態で除去する結果、CO2回収装置15DへのSO3ミストの導入量の低減を図ることとなる。よって、ミストに起因する吸収塔21から排出する処理排ガス16に同伴されるミスト状のアミン吸収液の同伴量が大幅に抑制されることとなる。
【0073】
以上、実施例と共に説明したように、本発明によれば、CO2吸収塔21から排出される処理排ガス16に対して、脱硫排ガス、排ガス等のSOxを含むガスを供給することで、中和させ、外部への残留アミンの放出を防止し、大気中に飛散することが無くなり、ニトロソアミンとなることを防止する。
【符号の説明】
【0074】
10A〜10C 排ガス処理システム
11 ボイラ
12 排ガス
13 脱硫装置
14 脱硫排ガス
15 CO2回収装置
16 処理排ガス
17 処理排ガス用煙突
18 脱硫排ガス用煙突
19 アミン濃度計
21 CO2吸収塔
22 吸収液再生塔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラからの排ガス中の硫黄酸化物を除去する脱硫装置と、
脱硫後の排ガス中のCO2をアミン吸収液により除去するCO2吸収塔及びアミン吸収液を再生する吸収液再生塔を備えたCO2回収装置とを具備してなると共に、
前記CO2吸収塔の塔頂部から排出されるCO2が除去された処理排ガスに、SOxを含むガスを供給し、処理排ガス中に同伴される残留のミスト状のアミンを硫酸アミン及び亜硫酸アミンに中和してなることを特徴とする排ガス処理システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記SOxを含むガスが、前記脱硫装置の前後のいずれかの排ガスの一部であることを特徴とする排ガス処理システム。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記処理排ガス中にガス状アミンを含まないことを特徴とする排ガス処理システム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一つにおいて、
前記残留のミスト状のアミンを計測する計測手段を有することを特徴とする排ガス処理システム。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか一つにおいて、
前記残留のミスト状のアミンを計測する計測手段を有すると共に、
前記計測手段の計測により求めた残留のミスト状のアミン濃度に対して、中和するのに十分なSOx量を供給することを特徴とする排ガス処理システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一つにおいて、
前記CO2吸収塔が、アミン吸収液と排ガスとを対向接触させてCO2を除去するCO2吸収部と、
前記CO2吸収部のガス流れ後流側に設けられ、排ガス中の残留アミンを除去する少なくとも1以上の水洗部とを有することを特徴とする排ガス処理システム。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一つにおいて、
前記CO2吸収塔の前流側に設けられ、排ガスを冷却する冷却塔を有することを特徴とする排ガス処理システム。
【請求項8】
請求項7において、
前記冷却塔の前流側に湿式電気集塵機を有することを特徴とする排ガス処理システム。
【請求項9】
請求項7において、
前記冷却塔の下部に、仕上げ脱硫部を有することを特徴とする排ガス処理システム。
【請求項10】
請求項7において、
前記冷却塔の下部に、仕上げ脱硫部と湿式電気集塵機とを有することを特徴とする排ガス処理システム。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一つにおいて、
排ガス中の窒素酸化物を除去する脱硝装置と、排ガス中の煤塵を除去する乾式電気集塵機とを有することを特徴とする排ガス処理システム。
【請求項12】
ボイラからのCO2を含む排ガス中の硫黄酸化物を脱硫装置で除去した後、
脱硫後の排ガス中のCO2を、アミン吸収液を用いてCO2吸収塔内で除去する排ガス処理方法であって、
前記CO2吸収塔の塔頂部から排出されるCO2が除去された処理排ガスに、SOxを含むガスを供給し、処理排ガス中に同伴される残留のミスト状のアミンを硫酸アミン及び亜硫酸アミンに中和することを特徴とする排ガス処理方法。
【請求項13】
請求項12において、
前記SOxを含むガスが、前記脱硫装置の前後のいずれかの排ガスの一部であることを特徴とする排ガス処理方法。
【請求項14】
請求項12又は13において、
前記処理排ガス中にガス状アミンを含まないことを特徴とする排ガス処理方法。
【請求項15】
請求項12乃至14のいずれか一つにおいて、
前記残留のミスト状のアミンを計測手段で計測すると共に、
前記計測手段の計測により求めた残留のミスト状のアミン濃度に対して、中和するのに十分なSOx量を供給することを特徴とする排ガス処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−6129(P2013−6129A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138724(P2011−138724)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】