説明

排ガス処理方法および処理装置

【課題】半導体製造装置からの排ガスを燃焼式除害装置、集塵装置、ガス洗浄装置に順次送り込んで処理する際に、ガス洗浄装置においてその内部に固形物が付着、堆積することを防止し、ガス洗浄装置の閉塞などの不都合が生じないようする。
【解決手段】半導体製造装置1からの排ガスを燃焼式除害装置3に導入し、ついで集塵装置4に送り、さらにガス洗浄装置に送り込んで処理する際、前記ガス洗浄装置を2段構成とし、第1段ガス洗浄装置6Aで水を洗浄液としてガス洗浄し、ついで、第2段ガス洗浄装置6Bでアルカリ水溶液を洗浄液としてガス洗浄する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半導体製造装置、液晶パネル製造装置、太陽電池製造装置などのCVD反応による薄膜形成装置を備えた製造装置(以下、本発明ではまとめて半導体製造装置と呼ぶ。)から排出される排ガス中の有害成分を除去する排ガス処理方法とその処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図2は、従来のこの種の排ガス処理装置を示すものである。
半導体製造装置1からは、半導体製造装置1が製膜工程にあるときには、残余の原料ガスであるSiHを主に含む排ガスが排出され、半導体製造装置1がクリーニング工程にあるときには、残余のクリーニングガスであるNFとクリーニングによって生成したSiFを主に含む排ガスが排出される。
【0003】
半導体製造装置1は、1基に限らず複数基が設置されている場合もあり、その一部が製膜工程にあり、その一部がクリーニング工程にあることがある。
半導体製造装置1からの排ガスはブロア2により燃焼式除害装置3に送られ、複数の半導体製造装置1からの排ガスはまとめてブロア2により燃焼式除害装置3に送られる。
【0004】
燃焼式除害装置3は、空気バーナ、酸素バーナなどのバーナによって形成された火炎中に前記排ガスを送り込んで、排ガス中の上記有害成分を酸化、分解するものである。
そして、この燃焼式除害装置3では、半導体製造装置1が製膜工程であるときの排ガス中に含まれるSiHはSiOとHOとになり、半導体製造装置1がクリーニング工程であるときの排ガス中に含まれるNFはHFとNになり、SiFはSiOとHFとになる。
【0005】
したがって、燃焼式除害装置3から排出される排ガスには、除去対象物質として、SiOとHFが含まれることになる。この排ガスはついでバグフィルターなどの集塵装置4に送り込まれて固形粒子であるSiOが捕集される。
集塵装置4でのSiOの捕集の際に、固体粒子のSiOはフィルター表面に捕集されて排ガスの流入に伴って堆積してゆく。排ガスにはHFが含まれているので、このHFの一部がSiOと反応して、少量のSiFが再度生成されることになる。
【0006】
集塵装置4からのHFとSiFを含む排ガスは、ブロア5により吸引されてガス洗浄装置6に送り込まれる。このガス洗浄装置6は湿式スクラバーとも呼ばれるものであり、水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ洗浄液と排ガスとを気液接触させて、酸性ガスであるHFとSiFを除去するものである。このガス洗浄装置6は、必要に応じて2段構成として除去を高めるようにすることもできる。
ガス洗浄装置6から排出される排ガスは、有害成分が規制値以下となっていることが確認されて、ブロア7を経て大気中に放散される。
【0007】
ところで、このような処理方法にあっては、ガス洗浄装置6において排ガス中のSiFが加水分解してSiOとHFが生成し、HFはアルカリ洗浄液のナトリウムと反応してNaFとなる。SiOとNaFは固形物であるので、これがガス洗浄装置6内部の充填材、ミストセパレータや洗浄液循環ポンプ内に付着、堆積し、これによりガス洗浄装置6の閉塞の原因、ポンプ故障の原因となる不都合がある。
このため、従来装置では、ガス洗浄装置6本体や循環ポンプを頻繁に分解清掃する必要があった。
【特許文献1】特開2004−188411号公報
【特許文献2】特開2005−334755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
よって、本発明における課題は、半導体製造装置からの排ガスを燃焼式除害装置、集塵装置、ガス洗浄装置に順次送り込んで処理する際に、ガス洗浄装置においてその内部に固形物が付着、堆積することを防止し、ガス洗浄装置の閉塞などの不都合が生じないようすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するため、
請求項1にかかる発明は、半導体製造装置からの排ガスを燃焼式除害装置に導入し、ついで集塵装置に送り、さらにガス洗浄装置に送り込んで処理する方法であって、
前記ガス洗浄装置を2段構成とし、第1段目で水を洗浄液としてガス洗浄し、ついで、第2段目でアルカリ水溶液を洗浄液としてガス洗浄することを特徴とする排ガス処理方法である。
【0010】
請求項2にかかる発明は、半導体製造装置からの排ガスを燃焼して除害する燃焼式除害装置と、この燃焼式除害装置からの排ガス中の固形分を除去する集塵装置と、この集塵装置からの排ガスを洗浄するガス洗浄装置を備え、
前記ガス洗浄装置が2段構成とされ、第1段目の洗浄液が水であり、第2段目の洗浄液がアルカリ水溶液であることを特徴とする排ガス処理装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1段目のガス洗浄装置に導入される排ガス中のHF、SiFは水溶性であるので、水からなる洗浄液によく溶解する。洗浄液はHFが溶解することでpH1以下の強酸性となる。このため、SiFが加水分解されて生成するSiOは強酸性の洗浄液に溶解し、固形物として残ることがない。
【0012】
第1段目のガス洗浄装置から排出されて第2段目のガス洗浄装置に導入される排ガスは、水分(水蒸気)が飽和状態で同伴されており、この水分には微量のHFが含まれている。このHFは第2段目のガス洗浄装置におけるアルカリ水溶液からなる洗浄液と接触して中和され、微量のNaFとなるがその生成量はわずかなものとなる。
したがって、第1段目あるいは第2段目のガス洗浄装置内部や循環ポンプ内部に固形物が付着、堆積して、これらが閉塞することが少なくなり、分解清掃の回数を減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、この発明のガス処理装置の例を示すもので、図2に示した従来のガス処理装置と同一構成部分には同一符号を付してその説明を省略する。
この例のガス処理装置にあっては、ガス洗浄装置が第1段ガス洗浄装置6Aとこれに直列に接続された第2段ガス洗浄装置6Bとの2段直列構成となっており、第1段ガス洗浄装置6Aの洗浄液が水であり、第2段ガス洗浄装置6Bの洗浄液がアルカリ水溶液である点が従来装置と異なるところである。
【0014】
第1段ガス洗浄装置6Aおよび第2段ガス洗浄装置6Bには、筒状の洗浄塔本体内に充填材が充填され、充填材上部のシャワーから循環ポンプにより送液された洗浄液を噴霧、流下させ、充填材下部から送風機により排ガスを充填材に向けて送り、充填材において両者を向流気液接触させる形式などのものが用いられる。
【0015】
第1段ガス洗浄装置6Aの洗浄液には、常温の水道水、井戸水などの水が用いられる。
第2段ガス洗浄装置6Bの洗浄液には、濃度20〜30wt%の水酸化ナトリウム水溶液などの常温のアルカリ水溶液が用いられる。
洗浄液の循環流量は、導入される排ガス流量、排ガス中のHF濃度、SiF4濃度に応じて適宜決められる。
【0016】
集塵装置4からの排ガスはブロア5を介して第1段ガス洗浄装置6Aに導入され、ここで水からなる洗浄液により洗浄され、ついで第1段ガス洗浄装置6Aに対して直列に配された第2段ガス洗浄装置6Bに導入され、ここでアルカリ水溶液からなる洗浄液により洗浄されたのち、ブロア7を経て大気に放散される。
【0017】
このような処理方法によれば、第1段ガス洗浄装置6Aに導入された排ガス中のHF、SiFは水溶性であるので、水の洗浄液によく溶解する。洗浄液はHFが溶解することでpH1以下の強酸性となる。このため、SiFが加水分解されて生成するSiOは強酸性の洗浄液に溶解し、固形物として残ることがない。
【0018】
第1段ガス洗浄装置6Aから排出されて第2段ガス洗浄装置6Bに導入された排ガスは、水分が飽和状態で同伴されており、この水分には微量のHFが含まれている。このHFは第2段ガス洗浄装置6Bにおけるアルカリ洗浄液と接触して中和され、微量のNaFとなるがその生成量はわずかなものとなる。
したがって、第1段あるいは第2段ガス洗浄装置6A、6b内部や循環ポンプ内部に固形物が付着、堆積して、これらが閉塞することが少なくなり、分解清掃の回数を減らすことができる。
【0019】
以下、具体例を示す。
図1に示した排ガス処理装置を用いて、半導体製造装置1からの排ガスを処理した。
半導体製造装置1が製膜工程にある場合、半導体製造装置1にSiHを流量10リットル/分で導入して製膜操作を実施し、半導体製造装置1がクリーニング工程にある場合、半導体製造装置1にNFを流量15リットル/分で導入してクリーニング操作を実施した。
半導体製造装置1からの排ガスを順次燃焼式除害装置3、集塵装置4に導入して処理を行い、さらに第1段ガス洗浄装置6Aから第2段ガス洗浄装置6Bに導入した。
【0020】
第1段ガス洗浄装置6Aおよび第2段ガス洗浄装置6Bのそれぞれの処理風量は200m/分とした。第1段ガス洗浄装置6Aの洗浄液には常温の水道水を循環使用し、第2段ガス洗浄装置6Bの洗浄液には常温の濃度25wt%水酸化ナトリウム水溶液を循環使用した。
第1段ガス洗浄装置6AではpH管理によるバッチ処理を行い、第2段ガス洗浄装置6Bでは洗浄液の使用量によるバッチ処理を行った。
【0021】
以上の操作条件によって排ガス処理装置の運転を行った。
その結果、第1段ガス洗浄装置6Aの分解清掃の頻度は12ヶ月に1回であった。
これに対して、図2に示した従来のガス処理装置では、ガス洗浄装置6の洗浄液として濃度 wt%の水酸化ナトリウム水溶液を使用して、同様の操作条件にてガス処理を行った。その結果、ガス洗浄装置6の分解清掃の頻度は1ヶ月に1回であった。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の排ガス処理装置の例を示す概略構成図である。
【図2】従来の排ガス処理装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0023】
1・・半導体製造装置、3・・燃焼式除害装置、4・・集塵装置、6A・・第1段ガス洗浄装置、6B・・第2段ガス洗浄装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体製造装置からの排ガスを燃焼式除害装置に導入し、ついで集塵装置に送り、さらにガス洗浄装置に送り込んで処理する方法であって、
前記ガス洗浄装置を2段構成とし、第1段目で水を洗浄液としてガス洗浄し、ついで、第2段目でアルカリ水溶液を洗浄液としてガス洗浄することを特徴とする排ガス処理方法。
【請求項2】
半導体製造装置からの排ガスを燃焼して除害する燃焼式除害装置と、この燃焼式除害装置からの排ガス中の固形分を除去する集塵装置と、この集塵装置からの排ガスを洗浄するガス洗浄装置を備え、
前記ガス洗浄装置が2段構成とされ、第1段目の洗浄液が水であり、第2段目の洗浄液がアルカリ水溶液であることを特徴とする排ガス処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−63951(P2010−63951A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−230093(P2008−230093)
【出願日】平成20年9月8日(2008.9.8)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【Fターム(参考)】