説明

排ガス処理方法および排ガス処理装置

【課題】有害ガスを含有するプロセス排ガスを高い除去効率で、かつ、安価に無害化する排ガス処理方法および排ガス処理装置を提供する。
【解決手段】有害ガスを含有する排ガスを、燃料ガスを用いて加熱処理する工程と、加熱処理された排ガスを湿式スクラバー3内で処理液と反応させて処理する工程と、を有することを特徴とする排ガス処理方法を提供する。また、有害ガスを含有する排ガスを加熱処理可能に構成された燃焼式排ガス処理装置2と、前記燃焼式排ガス処理装置2によって加熱処理された排ガスを導入可能な湿式スクラバー3と、を備えることを特徴とする排ガス処理装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス処理方法および排ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体、LED,太陽電池等の製造工場における生産規模の拡大に伴い、それらの工場で用いられる原料ガス量も増大し、除害処理対象となる未分解で有害な排ガス(以下、「プロセス排ガス」ともいう。)量も増大している。
【0003】
一般に、大流量のプロセス排ガスの処理方法としては、燃焼させることが有効な手段として知られており(燃焼式排ガス処理方法)、排ガス流量に応じて燃料ガスの量を増やしたり、Oを添加したりすることで、排ガスの処理に必要な熱量や火炎温度を確保している(特許文献1)。
【0004】
このような燃焼式排ガス処理方法としては、炭化水素系燃料ガス(CH、C等)を支燃性ガス(Oや空気等)と予め混合し、火口に形成した火炎を用いて排ガスを加熱酸化分解して除害するという方法が知られている。
【0005】
また、プロセス排ガスの処理方法としては、水洗除去し、電熱ヒーターで加熱分解する方法も提案されている(特許文献2)
他にもプロセス排ガス処理方法としては、乾式吸着方式、湿式スクラバー方式、触媒分解方式等も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−280629号公報
【特許文献2】特許第3866412号公報
【特許文献3】特表2008−540990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の燃焼式排ガス処理方法では、火口に形成した火炎を用いて排ガスを燃焼して処理するので、燃料ガスとして使用できる可燃性ガスが排ガス中に含まれる場合であっても、燃料ガスを排ガスと分離して火口に導入していた。
その結果、排ガス中の燃料ガスを十分に利用することができず、燃料ガスの無駄が生じるという不都合があった。
【0008】
特に、NHやHを多量に使用するMOCVD装置等の半導体製造装置から排出される排出ガスは、その製造工程毎にガスの組成や流量が異なるが、従来の燃焼式排ガス処理方法では、一番燃焼が困難な排出ガス(NH等)の流量と組成に合わせた燃焼条件で運転を行っていた。そのため、燃料ガスの無駄が顕著となっていた。
【0009】
また、NHの熱分解に必要な温度は750℃程度であり、この分解温度を確保するためには相応の熱量が必要である。したがって、排出ガス中のNHの流量が増加すると、その分大量の燃料ガスが必要となる。
その結果、燃焼式排ガス処理方法では、必要な熱量を確保するために燃焼式排ガス処理装置を大型化せざるを得なかった。
【0010】
また、特許文献2に示したような方法では、プロセス排ガスを先に水洗することで、廃液や薬液を多量に消費してしまうという不都合があり、その結果、コストが嵩むという問題があった。
【0011】
また、乾式吸着方式では、吸着剤の吸着量に限界があるという不都合があり、また、吸着剤の量も限られることから、吸着剤の交換に要する労力やコストが大きいという問題があった。加えて、廃棄する際の吸着剤の処理方法も課題となっている。
【0012】
また、湿式スクラバー方式は、廃液タンクや薬液タンクの設置が必要であることから、設備が巨大化する上、目標とするガス濃度にまで除害することは容易ではないという不都合があった。加えて、廃液回収費用にかかるコストも大きいという問題もあった。
【0013】
また、触媒分解方式では、NOxやCOが発生しないため、クリーンな除害方式と言えるが、電熱ヒーターで消費する電力量が大きいという不都合があった。加えて、触媒剤は、定期的に交換する必要があるので、コストが嵩むという問題もあった。
【0014】
このような背景の下、有害ガスを含有するプロセス排ガスを高い除去効率で、かつ、安価に無害化する方法が要望されていたが、有効適切なものが提供されていないのが実情であった。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、有害ガスを含有する排ガスを、燃料ガスを用いて加熱処理する工程と、加熱処理された排ガスを湿式スクラバー内で処理液と反応させて処理する工程と、を有することを特徴とする排ガス処理方法である。
【0016】
また、請求項2に係る発明は、前記排ガスにHが含まれていることを特徴とする請求項1に記載の排ガス処理方法である。
【0017】
また、請求項3に係る発明は、前記加熱処理する工程が、前記燃料ガスを用いて形成される点火用火炎を用いて、前記排ガスを加熱処理する工程であり、前記点火用火炎の熱量が、0.4kW以上6kW以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の排ガス処理方法。
【0018】
また、請求項4に係る発明は、有害ガスを含有する排ガスを加熱処理可能に構成された燃焼式排ガス処理装置と、前記燃焼式排ガス処理装置によって加熱処理された排ガスを導入可能な湿式スクラバーと、を備えることを特徴とする排ガス処理装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、燃料ガスを用いて有害ガスを含有する排ガスを加熱処理した後に、湿式スクラバーで処理している。
この結果、後段に湿式スクラバーによる処理があることから、加熱処理する工程においては、有害ガスを完全に除去する必要がなくなり、燃料ガスの流量を過剰に供給する必要がなくなった。
また、湿式スクラバーには、既に加熱処理された排ガスが導入されるので、直接排ガスを湿式スクラバーに導入する場合と比較すると、有害ガスの含有量が少ないので、十分に目標とするガス濃度まで有害ガスを分解することができる。加えて、湿式スクラバーに導入される有害ガスの含有量が少ないので、薬液量や廃液量を低減させることができ、排ガス処理のコストを抑えることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本実施形態の排ガス処理装置を示す概念図である。
【図2】図2は、本実施形態の排ガス処理装置の燃焼式排ガス処理装置の燃焼部を拡大した斜視図である。
【図3】図3は、本実施形態の排ガス処理装置の燃焼式排ガス処理装置を示す概念図である。
【図4】図4は、点火用火炎の熱量とNHの分解率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態である排ガス処理方法および排ガス処理装置について、図面を参照して説明する。
【0022】
<排ガス処理装置>
図1は、本発明の一実施形態である排ガス処理装置1の概略を示す図である。
図1に示すように、本実施形態の排ガス処理装置1は、燃焼式排ガス処理装置2と湿式スクラバー3とから概略構成されている。
【0023】
燃焼式排ガス処理装置2は、半導体、LED、または窒化ガリウム半導体等を製造するMOCVD装置等の半導体製造装置4から排出されるプロセス排ガスを燃焼させて、除害処理する装置であり、半導体製造装置4と燃焼式排ガス処理装置2は、配管5を介して接続されている。
また、燃焼式排ガス処理装置2の噴出口6(図2参照)近傍は、燃焼部7となっており、燃焼部7の下流側は冷却部8となっている。
【0024】
半導体製造装置4から排出されるプロセス排ガスは、配管5を通った後、噴出口6(火口)を介して燃焼式排ガス処理装置2内に供給されるように構成されており、噴出口6の下流側の燃焼部7において、プロセス排ガスの燃焼火炎Bが形成されるように構成されている。
具体的には、燃焼式排ガス処理装置2の燃焼部7は、図2に示すように、噴出口6近傍に支燃性ガス供給管9と、点火用バーナ10とが形成されている。
【0025】
支燃性ガス供給管9は、配管5の外周を囲うように形成されており、噴出口6と略同一平面上の位置に、複数の供給孔21を有している。したがって、噴出口6に対向する側から見ると、支燃性ガス供給管9は、内側に配管5が配置された、所定幅を有するリング状に形成されており、当該所定幅のリング状の部分に、複数の供給孔21が設けられた形状となっている。
【0026】
支燃性ガス供給管9は、点火用火炎Aによってプロセス排ガスを加熱酸化分解する際に必要とされる、支燃性ガスを供給する機構であり、図示略の支燃性ガス供給装置と配管22を介して接続されており、供給孔21を介して支燃性ガスを供給可能なように構成されている。
また、支燃性ガスとしては、例えば空気(乾燥空気)や酸素を用いることができる。
【0027】
点火用バーナ10は、噴出口6の下流側近傍に設けられており、噴出口6から供給されるプロセス排ガスを加熱酸化分解させるための点火用火炎Aを形成させるためのバーナである。また、点火用バーナ10は、図示略の点火用ガス供給装置と配管23(図1参照)を介して接続することで、燃料ガスが供給可能なように構成されている。
なお、燃料ガスとしては、例えば炭化水素系燃料ガス(CH、C等)やHを用いることができ、Hを用いたバーナについては、特表2008−540990号公報に詳しく記載されている。
【0028】
このように、支燃性ガス供給管9と、噴出口6と、点火用バーナ10を別々に設けているので、支燃性ガスは、プロセス排ガス(および燃料ガス)と、別経路で燃焼部7に供給される。これにより、これらのガスが燃焼直前まで混合することがなく、逆火が起こる可能性が低くなり安全性が高まる。
【0029】
なお、支燃性ガス供給管9や点火用バーナ10の構造、配置位置等は、上記の形態に限定される必要はなく、噴出口6から供給されるプロセス排ガスを燃焼可能であれば、どのような構成でもよい。例えば、点火用バーナ10を用いず、プロセス排ガスに予めHを混合させ、触媒(例えばPd)を用いてHを着火させて、支燃性ガスを供給してプロセス排ガスを燃焼させる方式を採用しても構わない。
【0030】
また、燃焼式排ガス処理装置2には、図3に示すように、燃焼部7において、プロセス排ガスを予備冷却するために、冷却空気等を導入するための冷却空気導入管24が接続されている。この冷却空気導入管24は、図示略の冷却空気供給装置と接続されることで冷却空気を供給可能なように構成されており、冷却空気導入管24から供給される冷却空気によって、プロセス排ガスの燃焼火炎Bは、冷却される。
【0031】
また、燃焼部7の下流側に位置する冷却部8には、燃焼によって高温になったプロセス排ガスを冷却するための冷却機構25が形成されている。冷却機構25は、図示略の冷却流体供給装置によって、配管26(図1参照)を介して冷却流体が供給されるように構成されており、冷却機構25から冷却流体を供給することで、プロセス排ガスを冷却する。冷却流体としては、例えば冷却空気や水などを用いることができる。
【0032】
燃焼式排ガス処理装置2の出口27には配管28が設けられており、配管28は、湿式スクラバー3と接続されている。すなわち、冷却されたプロセス排ガスは、配管28を通って湿式スクラバー3に導入可能なように構成されている。
【0033】
湿式スクラバー3は、燃焼式排ガス処理装置2において加熱酸化分解されなかった、プロセス排ガスに含有される有毒ガスを除去することを目的としている装置であり、主としてNHを除去する装置である。
【0034】
具体的には、湿式スクラバー3は、図1に示すように、本体41と本体41の下部に形成された処理液(薬液)が貯蔵される循環槽42とを有している。
本体41は、上部に配管28が接続されており、この配管28を介してプロセス排ガスが本体41内に導入されるように構成されている。
【0035】
また、本体41内には、上側に処理液を散布可能なノズル43が設けられている。ノズル43は、配管44を介して循環槽42と接続されており、配管44に設けられたポンプ45によって、循環槽42内に貯蔵されている処理液が供給されるように構成されている。
【0036】
また、本体41の下側には、配管46が設けられており、湿式スクラバー3内において処理液と反応した後のプロセス排ガスは、配管46を介して、外部に放出される。
ここで循環槽42に貯蔵される処理液としては、例えば硫酸を挙げることができる。
【0037】
なお、プロセス排ガスを加熱処理する際に、NOが副生することがある。そこで、NOを除去するために、湿式スクラバー3に図示略のNO除去塔を別途設けてもよい。
本実施形態の排ガス処理装置1は、以上のような構成をしている。
【0038】
<排ガス処理方法>
次に、上記した排ガス処理装置1を用いたプロセス排ガスの処理方法について説明する。
本実施形態の排ガス処理方法は、概略すると、燃焼式排ガス処理装置2内において、プロセス排ガスを加熱処理する工程と、湿式スクラバー3内において、加熱処理されたプロセス排ガスを処理液と反応させて処理する工程と、から概略構成されている。
【0039】
<<燃焼式排ガス処理装置内での工程>>
まず、半導体製造装置4から排出されたプロセス排ガスを、配管5を介して噴出口6から燃焼式排ガス処理装置2内に供給する。このプロセス排ガスには、例えばNH等の除害対象成分や、H等が含まれている。
【0040】
次に、燃焼式排ガス処理装置2内に導入されたプロセス排ガスを、噴出口6の近傍に設けられた点火用バーナ10に形成された点火用火炎Aと、支燃性ガス供給管9の供給孔21から供給される支燃性ガスを用いて燃焼させ、燃焼火炎Bを形成し、加熱処理する。これにより、プロセス排ガスに含有されている有害ガスが加熱酸化分解する。
【0041】
この際、点火用バーナ10に供給する燃料ガスとしては、例えば炭化水素系燃料ガスやHを用いることができる。Hは炭素源を含まないので、プロセス排ガス処理に起因して発生するCO以外は、燃焼時にCOが発生しない。したがって、燃料としてHを用いた場合、炭化水素系燃料ガスを用いるよりも環境負荷を低減させることができる。
【0042】
なお、一般にHは、他のプロセス排ガス(NH等)と比較して燃焼速度が大きく、加えて、火炎を延伸させることが知られている。
したがって、プロセス排ガスにHが含まれる場合は、そのHと共に燃焼させると燃焼速度が小さいガスでも、より短時間で燃焼させることができる。加えて、加熱酸化分解するために必要な高温場を大きくすることができ、プロセス排ガスの燃焼を大きく促進させることができる。
【0043】
また、点火用バーナ10に形成する点火用火炎Aの熱量は、0.4kW以上であることが好ましく、0.6kW以上であることが更に好ましく、0.9kW以上であることが最も好ましい。また、点火用火炎Aの熱量は、6kW以下であることが好ましく、4kW以下であることが更に好ましく、3kW以下であることが最も好ましい。
【0044】
詳しく説明すると、例えばNHに対してHを10倍量含む排ガスを点火用火炎で加熱酸化分解した際のNHの分解率は、図4に示すグラフのようになる。この図4から明らかなように、点火用火炎Aの熱量は、0.4kW以上6kW以下の範囲(領域M)にあることが好ましいことが認められる。
点火用火炎Aの熱量は、少なすぎると点火できず(領域L)、多すぎると燃焼するのに過剰な熱量(領域N)となってしまう。
【0045】
なお、本実施形態の排ガス処理方法では、必ずしも、燃焼式排ガス処理装置2において、プロセス排ガスに含まれる有害ガスを全て除害する必要はなく、燃焼式排ガス処理装置2の出口27でのNHの濃度が、許容濃度値(TLV)以下に加熱分解されていなくても構わない。すなわち、燃料ガスによって形成される点火用火炎Aの熱量では、十分にプロセス排ガスを加熱分解することができなくても構わない。
【0046】
具体的に述べると、MOCVD装置等の半導体製造装置4のプロセス排ガスは、その工程によって、プロセス排ガスに含まれるHが少ないこともある。その場合は、ほぼ点火用火炎Aによる熱量のみによってプロセス排ガスを燃焼させることになるため、十分にNH等を分解処理することができなくなる。
【0047】
逆に、プロセス排ガスに含まれるHが多い場合は、点火用火炎Aだけでなく、Hを燃焼させて生じる熱量によって、プロセス排ガスを燃焼させることになるので、十分にNH等を分解処理することができる。
【0048】
また、本実施形態の排ガス処理方法においては、冷却空気導入管24から冷却空気を燃焼式排ガス処理装置2内に供給することで、燃焼部7において、一定程度プロセス排ガスを予備的に冷却する。
【0049】
その後、燃焼したプロセス排ガスを、燃焼式排ガス処理装置2の下流側に位置する冷却部8において、冷却機構25から供給される冷却流体によって冷却する。冷却流体としては、例えば冷却空気や水を用いることができ、両方を用いても構わない。
【0050】
特に、冷却流体として水を用い、例えばスプレー水噴霧などによって、プロセス排ガスを冷却すれば、冷却空気を用いた場合と比較して、燃焼式排ガス処理装置2の後段で処理するガスの流量が減る。その結果、湿式スクラバー3や、後段に設置する図示略の排気ダクトのサイズを小さくすることができ、コストを抑制することができる。
【0051】
このようにプロセス排ガスを、冷却空気等で予備冷却した後に、冷却流体で冷却することで、十分に温度を低下させることができ、後段の装置への負荷を低減することができる。
もっとも、プロセス排ガスの冷却方法は、上記態様に限定されるものではなく、プロセス排ガスの温度や、冷却機構25の冷却能力等によっては、予備的に冷却することなく、冷却部8のみでプロセス排ガスを冷却しても構わない。
【0052】
<<湿式スクラバーでの処理工程>>
燃焼式排ガス処理装置2において加熱処理した後は、プロセス排ガスを、出口27を通して、配管28を介して湿式スクラバー3に導入する。
そして、湿式スクラバー3内において、プロセス排ガスを、本体41内の上側に設けられたノズル43から散布される処理液と気液接触させ、反応させることで有害成分を除害する。
【0053】
なお、ノズル43は、配管44と接続されており、配管44に設けられたポンプ45によって、湿式スクラバー3の本体41の下部に設けられた循環槽42内に貯蔵された処理液が供給されるように構成されている。これにより、ノズル43から散布された処理液は、プロセス排ガスと接触した後に循環槽42に一端貯蔵され、貯蔵された処理液は、ポンプ45によって配管44を介して、ノズル43に供給されて循環することとなる。
なお、処理液としては、例えば硫酸を用いることが好ましい。
【0054】
プロセス排ガスは、処理液と反応して、有害成分が除害され許容濃度以下になった後に、本体41内の下側に設けられた配管46を介して大気に放出される。
以上のようにして、プロセス排ガスを処理する。
【0055】
本実施形態では、燃料ガスを用いて有害ガスを含有するプロセス排ガスを加熱処理した後に、湿式スクラバー3で処理している。すなわち、わずかな量の燃料ガスによる燃焼で前処理し、後段の湿式スクラバー3で残留した有害成分を処理している。
この結果、後段に湿式スクラバー3による処理があることから、燃焼式排ガス処理装置2での加熱処理においては、有害ガスを完全に除去する必要がなくなり、燃料ガスの流量を過剰に供給する必要がなくなった。
特に、プロセス排ガスにHが含まれる場合、これを燃料ガスとして利用することができるが、従来はこれを利用することなく、燃料ガスだけで十分な熱量を与えるように設計してきたため、燃料ガスの無駄が生じていた。
本実施形態では、燃料ガスだけではプロセス排ガスの有害成分を除害するのに十分な熱量を与えないので、加熱処理する際に、プロセス排ガスに含まれるHを燃料ガスの代替として十分に利用することができ、無駄がなくなった。
【0056】
また、湿式スクラバー3には、既に加熱処理された排ガスが導入されるので、直接排ガスを湿式スクラバー3に導入する場合と比較すると、有害ガスの含有量が少ないので、十分に目標とするガス濃度まで有害ガスを分解することができる。
【0057】
加えて、湿式スクラバー3に導入される有害ガスの含有量が少ないので、処理液量や廃液量を低減させることができ、排ガス処理のコストを抑えることもできる。更に、処理液量を減らすことができるので、従来と比較して湿式スクラバー3を小型化することもできる。
【0058】
なお、一般的に、プロセス排ガス中にHが含まれている場合には、プロセス排ガスが配管内で爆発する危険性がある。特に、プロセス排ガス中のH含有量が4〜75%の範囲にあるときは、爆発の危険性が高い。
従来の湿式スクラバーのみでプロセス排ガスを処理する場合には、湿式スクラバーを生産設備から離れた屋外エリアに設置するケースが多いので、生産設備から排ガス処理装置までの配管距離が長くなる。その長い排気配管にリーク等があり、外気が配管内部に混入すると、プロセス排ガス中にはHが含まれているので、配管内での爆発の危険性が高まる。
【0059】
これに対し、本実施形態では、Hガスが4%以上含まれているプロセス排ガスが、燃焼式排ガス処理装置2に導入されると、プロセス排ガス中のHは加熱酸化分解されるので、燃焼式排ガス処理装置2の出口27での濃度は4%以下となる。特に、プロセス排ガス中のH濃度が高く、75%以上の場合であっても、加熱酸化分解されることで、燃焼式排ガス処理装置2の出口27での濃度は4%以下となる。
したがって、燃焼式排ガス処理装置2の出口27以降の配管内は、H濃度が十分薄いため、Hに起因する爆発の危険性は少ない。
【0060】
以上、本発明を実施形態に基づき説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、プロセス排ガスにHを予め混入させた上で、燃焼式排ガス処理装置2に導入させて、点火用火炎Aによって燃焼させても構わない。
また、複数のMOCVD装置等の半導体製造装置を用いる場合は、半導体製造装置毎に燃焼式排ガス処理装置を設けて、当該装置からのプロセス排ガスをそれぞれ加熱処理するようにし、その加熱処理されたプロセス排ガスを排気ダクトに集約させて1台の汎用の湿式スクラバーで処理するように設計してもよい。このように設計することでコストを抑制することができる。また、半導体製造装置台数に合わせて燃焼式排ガス処理装置や湿式スクラバーを自由に増やすことが可能になるので、量産工場に好適となる。
【0061】
以下、実施例により、本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記実施例に何ら制限されるものではない。
【0062】
(実施例1)
実施例1では、上記した実施形態と同様な方法で、プロセス排ガスを燃焼式排ガス処理装置で加熱処理した後に、湿式スクラバーで処理した場合の、CO排出量と、ランニングコストについてシミュレーションを行った。なお、点火用バーナに供給する燃料ガスとしては、Hを用いた。
【0063】
(実施例2)
実施例2では、実施例1とほぼ同様の条件のもと、点火用バーナに供給する燃料ガスをHの代わりにLNGを用いた場合について、CO排出量とランニングコストについてシミュレーションを行った。
【0064】
(実施例3)
実施例3では、プロセス排ガスに予めHを混入させておき、そのHを触媒(Pd)を介して着火させ、支燃性ガスを供給してプロセス排ガスを燃焼させて加熱処理を行い、その後、加熱処理されたプロセス排ガスを湿式スクラバーで処理した場合のCO排出量と、ランニングコストについてシミュレーションを行った。
【0065】
(比較例1)
比較例1では、乾式吸着によって、プロセス排ガスを前処理した後に、一般的な燃焼式排ガス処理装置内で加熱処理した場合のCO排出量と、ランニングコストについてシミュレーションを行った。
【0066】
(比較例2)
比較例2では、乾式吸着によって、プロセス排ガスを前処理した後に、一般的な触媒酸化式の処理を行った場合のCO排出量と、ランニングコストについてシミュレーションを行った。
【0067】
実施例および比較例の結果を表1に示す。なお、比較例1によって放出されたCO排出量、ランニングコストを基準として、各実施例、比較例の値を表1に示した。
【0068】
【表1】

【0069】
表1から明らかなように、比較例1では、プロセス排ガス中に含まれるHを燃料ガスの代替として考慮していないため、過剰に燃料ガスが消費されている。また、過剰に炭化水素系ガスを消費するため、CO排出量も多い。更に、吸着剤の交換費用もかかるため、ランニングコストが高い。
【0070】
また、比較例2では、電熱ヒーターにかかる消費電力が大きいことと、吸着剤や触媒剤の交換費用がかかることから、ランニングコストが高い。また、消費電力量が多いため、CO排出量が大きくなっている。
【0071】
これに対し、実施例1,2では、いずれもプロセス排ガスに含まれているHを燃料ガスとして利用しており、点火用火炎に供給される燃料ガスが無駄に消費されることがなく、ランニングコストを低減させることができる。
また、Hは炭素源を含まないので、プロセス排ガス処理に起因して発生するCO以外は、燃焼時にCOが発生しない。したがって、燃料としてHを用いた場合、COの排出量が少ない。LNGを用いた場合(実施例2)であっても、燃料ガスが過剰に消費されることがないので、CO排出量を抑制することができる。
更に、プロセス排ガスを燃焼式排ガス処理装置内において加熱処理した後に、湿式スクラバーに導入しているので、湿式スクラバーにおいて処理するNH量が減少しており、少ない処理液(薬液)を用いるだけでよいことから、ランニングコストは従来よりも低減する。
【0072】
また、実施例3では、炭化水素系燃料ガスを用いていないことから、CO排出量は低減されている。もっとも、Hを多量に用いることから、実施例1、2と比較するとややランニングコストが高い。
【符号の説明】
【0073】
1・・・排ガス処理装置、2・・・燃焼式排ガス処理装置、3・・・湿式スクラバー、4・・・半導体製造装置、5,22,23,26,28,44,46・・・配管、6・・・噴出口、7・・・燃焼部、8・・・冷却部、9・・・支燃性ガス供給管、10・・・点火用バーナ、21・・・供給孔、24・・・冷却空気導入管、25・・・冷却機構、27・・・燃焼式排ガス処理装置の出口、41・・・本体、42・・・循環槽、43・・・ノズル、45・・・ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有害ガスを含有する排ガスを、燃料ガスを用いて加熱処理する工程と、
加熱処理された排ガスを湿式スクラバー内で処理液と反応させて処理する工程と、
を有することを特徴とする排ガス処理方法。
【請求項2】
前記排ガスにHが含まれていることを特徴とする請求項1に記載の排ガス処理方法。
【請求項3】
前記加熱処理する工程が、前記燃料ガスを用いて形成される点火用火炎を用いて、前記排ガスを加熱処理する工程であり、
前記点火用火炎の熱量が、0.4kW以上6kW以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の排ガス処理方法。
【請求項4】
有害ガスを含有する排ガスを加熱処理可能に構成された燃焼式排ガス処理装置と、
前記燃焼式排ガス処理装置によって加熱処理された排ガスを導入可能な湿式スクラバーと、
を備えることを特徴とする排ガス処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−63384(P2013−63384A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203033(P2011−203033)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【Fターム(参考)】