説明

排ガス放射線モニタ

【課題】
排ガス中の放射性ガス濃度を確実に検出し、かつ、排ガス試料採取ラインにおいて排ガスのリークのポテンシャルを最小にし、外部への放射能漏えいを抑制した排ガス放射線モニタを提供することにある。
【解決手段】
排ガス放射能測定容器,排ガス試料流量調節弁の手前に圧力調節弁及び圧力検出器を設置し、圧力検出器により採取配管内の圧力を測定し、その測定した圧力信号を演算装置に伝送し、演算装置にて任意に設定された気圧と採取配管内の圧力とが一致するように、前記演算装置より圧力調節弁へと適切な開度信号を送り、前記圧力調節弁の開度を制御することにより排ガス試料採取ラインの、リークのポテンシャルの高い箇所を負圧とすることにより、外部への放射能漏えいを抑制した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電プラントに設置される放射線監視設備のなかで、排ガス中の放射性ガス濃度を計測する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
排ガス放射線モニタは、排ガス中の放射性ガス濃度を計測する装置である。その計測結果は、例えば、制御室の中央制御装置に送られ、指示計・記録計等によりその計測結果が表示される。また、異常が検知されたときは警報装置によりその旨を知らせる。
【0003】
放射性ガス濃度を計測する方法に特表2008−522137号公報があげられる。前記文献には、原子炉内格納容器内の雰囲気を精度よく計測するために、試料の試料採取管への流入時における絞りによるその負圧の維持によって、採取箇所から原子炉格納容器の外側に配置された分析装置までの移送中も、採取された試料の過熱状態を維持し、放射性ガス濃度を計測する方法について記載されている。
【0004】
【特許文献1】特表2008−522137号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、サンプリング配管に設置される機器の不具合による排ガスのリークを確実に防止し、不具合発生時に外部へのガスの流出を防止する排ガス放射線モニタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、排ガス放射能測定容器,排ガス試料流量調節弁の手前に圧力調節弁及び圧力検出器を設置し、圧力検出器により採取配管内の圧力を測定し、その測定した圧力信号を演算装置に伝送し、演算装置にて任意に設定された気圧と採取配管内の圧力とが一致するように、前記演算装置より圧力調節弁へと適切な開度信号を送り、前記圧力調節弁の開度を制御することにより、試料採取管及び機器の内部を設定した負圧に維持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の排ガス放射線モニタは、圧力調節弁を用いて、サンプル配管内を負圧とすることにより、機密構造のサンプリングラックを用いることなく排ガスのリークを防ぐことが可能となる。
【0008】
また、本発明により当該システムを収容するサンプリングラックを機密構造とする必要がなく、ラック内に排ガスが留まらない。そのため、サンプリングラック内へのアクセスが容易となり、メンテナンス性が飛躍的に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の実施例を示す。なお、実施例はこれに限られるものではない。
【実施例1】
【0010】
図1に実施例1を示す。本装置は、主復水器から抽出した気体廃棄物を処理する排ガス系主配管11(本実施例では気体廃棄物処理装置内の排ガス除湿冷却器出口主配管)から排ガスを採取する試料採取管9と、管内の圧力を調節する圧力調節弁13と、管内の圧力を測定する圧力検出器14と、放射性ガスを保持する排ガス放射能測定容器8と、放射性ガスを測定する排ガス放射線検出器1と、検出器からの信号を増幅するプリアンプ3と、管内の流量を調節する排ガス試料流量調節弁6と、採取した試料を空気抽出器12の手前の低圧力部に戻す試料回収配管10と、圧力検出器14からの信号を処理し圧力調節弁13・排ガス試料流量調節弁6を制御し、プリアンプ3からの信号を演算処理する演算装置4と、これらの信号を接続するケーブル2から構成されている。また、採取管入口15を排ガス系主配管の正圧となる箇所に、採取管出口16を排ガス系主配管の負圧となる箇所にそれぞれ設けている。なお、本実施例の設置場所はこれに限られるものではない。
【0011】
図2に従来から用いられてきたサンプリングラックによる、リーク防止方法について示す。排ガス試料流量調節弁以降の配管内の圧力は負圧となるが、それ以前の圧力は正圧となる。また、排ガス試料流量調節弁及び排ガス放射能測定容器は、試料採取管にネジ止めされており、これらの継手及び機器の不具合により万が一ガスがリークした場合については、気密構造となっているサンプリングラック内より排気ダクトへと排気し、適宜処理する設計としている。
【0012】
実施例1では圧力調節弁13を排ガス放射能測定容器8の手前に設置し、圧力検出器14の信号を演算装置4に入力し、サンプル配管内が常に負圧となるよう圧力調節弁13に開度指示する信号を送り、圧力調節弁13の開度を調節することにより、圧力調節弁13以降の圧力を負圧に保つ。これにより、サンプル配管内を負圧とすることにより、機密構造のサンプリングラックを用いることなく排ガスのリークを防ぐことが可能である。
【0013】
また、本実施例では、演算装置により測定値に対して圧力補正係数を乗じ、放射能濃度を求めることができるため、排ガス系主配管が高圧となる計測点においては、圧力補正により計測範囲の上限を大きくすることが可能となる。これにより、設置場所による圧力条件が異なる場合でも、圧力条件による制限が無くなるため、より適用範囲が広がる。
【実施例2】
【0014】
図3に実施例2を示す。なお、実施例はこれに限られるものではない。
【0015】
図2は圧力と水の沸点の関係を示した図である。原子炉等で発生した排ガス中には水蒸気が含まれている。そのため、排ガス中の放射性濃度を測定するときには、排ガスの温度が下がったときに結露が発生し、排ガス中の放射性濃度を正確に測定するこが困難である。また結露により、機器等の損傷にもつながる。前記課題を解決するため実施例2では、図2に示すように資料採取管,排ガス放射能測定容器等を負圧にすることで、水の沸点を下げ、乾燥した排ガスが得られる。
【0016】
本構成により、水蒸気の影響を減少させた排ガスが得られるため、より正確な放射性濃度の測定が可能になる。また、サプリング配管内の圧力を低下させることで、図3に示す通り配管内の水の沸点を下げることが可能であり、配管内のサンプルガスが湿り気を帯びたガスである場合にも、結露を防止することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は発電プラントに設置される放射線監視設備のなかで、排ガスの放射性ガス濃度を計測する装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】排ガス中の放射性ガス濃度を計測する装置(本発明)。
【図2】排ガス中の放射性ガス濃度を計測する装置(従来例)。
【図3】圧力に対する水の沸点の推移を示す説明図。
【符号の説明】
【0019】
1 放射線検出器
2 ケーブル
3 プリアンプ
4 演算装置
5 排ガス試料採取元弁
6 排ガス試料流量調節弁
7 排ガス試料回収弁
8 排ガス放射能測定容器
9 試料採取管
10 試料回収配管
11 排ガス系主配管
12 空気抽出器
13 圧力調節弁
14 圧力検出器
15 採取管入口
16 採取管出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力発電所の排ガスに含まれるガス放射能濃度を測定するガス放射能濃度監視装置において、
排ガス系主配管の正圧となる箇所に設けられた採取管入口と、
前記排ガス系主配管の負圧となる箇所に設けられた採取管出口と、
前記採取管入口に設けられた試料採取管と、
前記採取管出口に設けられた試料回収管と、
前記試料採取管の他方と前記試料回収管の他方の間に設けられた、圧力計測機構及び圧力調節機構と、
前記圧力計測機構により前記試料採取管の圧力を計測し、前記圧力に応じて前記圧力調節機構により前記採取管を負圧制御することを特徴とするガス放射能濃度監視装置。
【請求項2】
請求項1に記載のガス放射能濃度監視装置において、
前記試料採取管のもう一方を前記圧力計測機構に設け、
前記試料回収管のもう一方を前記圧力調節機構に設け、
前記圧力計測機構と前記圧力調節機構とを接続したことを特徴とするガス放射能濃度監視装置。
【請求項3】
請求項1に記載のガス放射能濃度監視装置において、
前記圧力計測機構は圧力検出器であり、
前記圧力調節機構は圧力調節弁であることを特徴とするガス放射能濃度監視装置。
【請求項4】
前記負圧は、水の沸点が大気温度より低くなる圧力まで減少させることを特徴とした請求項1に記載のガス放射能濃度監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−145303(P2010−145303A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324893(P2008−324893)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】