説明

排ガス浄化システム

【課題】高電圧の電源を用いる場合であっても、破損が生じにくく、かつ、サイズを小さくすることが可能な排ガスを浄化するための技術を提供する。
【解決手段】排ガスの排気経路に設けられて、排ガスを加熱可能な加熱部と、排気経路において加熱部の下流に設けられて排ガスに含まれる特定物質を低減させる触媒反応を行う触媒部とを備える排ガス浄化システムである。さらに、加熱部1は、セラミックスを主成分として通電により発熱する隔壁7と該隔壁7により区画形成されて排ガスの流路となる複数のセル5とを有するハニカム構造部と、ハニカム構造部に接触して配置されたハニカム構造部の隔壁7を通電させるための陽極4aおよび陰極4bとなる一対の電極部4とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関などから排出される排ガスの浄化に使用する排ガス浄化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関から生じる排ガスには、人体や環境に悪影響を及ぼす有害物質が含まれており、この有害物質を一定の濃度以下までに低減し、浄化した排ガスを環境に放出しなければならない。この有害物質の中には、気体成分として存在するものがある。この有害な気体成分については、触媒反応によって有害性のより少ない別種の気体成分に変えることが可能である。例えば、内燃機関の排ガスには、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)や窒素酸化物(NO)といった有害な気体成分が存在する。これらの気体成分については、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)などの貴金属を触媒とする触媒反応によって、水(HO)や二酸化炭素(CO)や窒素(N)といった人体や環境への影響がより少ない気体成分へと変えることができる。そこで、排ガスを浄化する際には、排ガスの排気経路上に触媒を配置し、触媒反応によって有害な気体成分を浄化する技術が広く用いられている。
【0003】
一般に、この排ガス浄化技術に用いる触媒は、高温になると活性化する性質がある。そこで、排ガスをヒーターで加熱し、高温の排ガスを触媒に接触させることより、触媒の温度を高めるという技術が考案されている。この技術で用いられるヒーターは、物体(発熱体)を通電してジュール熱を発生させるものが主流である。導電率や熱伝導率が高く、かつ破壊や変形が生じにくいという観点からは、金属製の発熱体を用いることが一般的である(例えば、特許文献1〜4)。
【0004】
特に、近年では、ハイブリット自動車に代表されるように、化石燃料から電気へとエネルギーの移行が進んでおり、これに伴ってヒーターに高電圧の電源を用いたいという要望が増えている。この要望に応えるために、金属製の発熱体を通電しにくい構造にするという技術(例えば、金属製の発熱体に穴やスリットを設けるという技術)が提案されている。このように、金属製の発熱体を通電しにくい構造にすると、金属製の発熱体の抵抗が大きくなるので、発熱体のサイズを小さくしても、高電圧の電源を用いるときに十分な発熱量を得ることが可能となる。その結果、自動車などのような設置スペースに制約がある状況下での排ガス浄化技術に適用することができる(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−269682号公報
【特許文献2】特開平8−4521号公報
【特許文献3】特開平11−57490号公報
【特許文献4】特表2006−507108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、提案されている技術では、上述したように高電圧の電源を用いる場合にはサイズを小さくするために金属製の発熱体を通電しにくい構造にしなければならず、通電しにくい構造では耐衝撃性や耐振動性が低下するので、破損が生じやすくなってしまう。
【0007】
上記の問題に鑑みて、本発明の課題は、高電圧の電源を用いる場合であっても、破損が生じにくく、かつ、サイズを小さくすることが可能な排ガスを浄化するための技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した目的を達成するものである。具体的には、本発明は、以下に示す、排ガス浄化システムである。
【0009】
[1] 排ガスの排気経路に設けられて、前記排ガスを加熱可能な加熱部と、前記排気経路において前記加熱部の下流に設けられて、前記排ガスに含まれる特定物質を低減させる触媒反応に作用する触媒を有する触媒部と、を備え、前記加熱部は、セラミックスを主成分として通電により発熱する隔壁と、該隔壁により区画形成されて前記排ガスの流路となる複数のセルとを有するハニカム構造部と、前記ハニカム構造部に接触して配置された前記ハニカム構造部の前記隔壁を通電させるための陽極および陰極となる一対の電極部と、を有する排ガス浄化システム。
【0010】
[2] 前記触媒部は、前記触媒反応を行う触媒を担持している隔壁と、該隔壁により区画形成されて前記排ガスの流路となる複数のセルと、を有するハニカム構造体を備える前記[1]に記載の排ガス浄化システム。
【0011】
[3] セラミックスを主成分として通電により発熱するとともに排ガスに含まれる特定物質を低減させる触媒反応に作用する触媒を担持している隔壁と、該隔壁により区画形成されて前記排ガスの流路となる複数のセルと、を有するハニカム構造部と、前記ハニカム構造部に接触して配置された前記ハニカム構造部の前記隔壁を通電させるための陽極および陰極となる一対の電極部と、を有する排ガス浄化システム。
【0012】
[4] 前記ハニカム構造部における前記隔壁の比抵抗が0.01〜50Ω・cmである前記[1]〜[3]のいずれかに記載の排ガス浄化システム。
【0013】
[5] 前記ハニカム構造部における前記隔壁は、SiC、金属含浸SiC、およびSiからなる群から選ばれる1種を主成分とする前記[1]〜[4]のいずれかに記載の排ガス浄化システム。
【発明の効果】
【0014】
本発明の排ガス浄化システムは、破損が生じにくく、かつ、高電圧の電源を用いる場合であっても、サイズを小さくすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本願の第一発明の排ガス浄化システムの一実施形態の説明図である。
【図2】図1に示す排ガス浄化システムに備えることが可能なヒーターの一実施形態の斜視図である。
【図3】図2中のA−A’断面の図である。
【図4】図1に示す排ガス浄化システムに備えることが可能なヒーターの他の実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて、変更、修正、改良を加え得るものである。
【0017】
1.第一発明の排ガス浄化システム:
本願の第一発明の排ガス浄化システムは、排ガスの排気経路に設けられて排ガスを加熱可能な加熱部と、排気経路において加熱部の下流に設けられて排ガスに含まれる特定物質を低減させる触媒反応に作用する触媒を有する触媒部とを備える。
【0018】
第一発明の排ガス浄化システムは、加熱部が排ガスを加熱することにより、排ガスの温度を高めることができ、その結果、高温の排ガスを触媒部に送ることが可能になる。このようにして高温の排ガスを触媒部に送ると、排ガスの熱によって触媒を加熱することができ、その結果として、触媒反応が活性化する温度まで触媒の温度を高めることができる。触媒部では、触媒反応によって排ガスに含まれる特定物質から他の物質を生成する。その結果、排ガス中の特定物質を低減することができる。
【0019】
さらに、第一発明の排ガス浄化システムが備える加熱部は、セラミックスを主成分として通電により発熱する隔壁と該隔壁により区画形成されて排ガスの流路となる複数のセルとを有するハニカム構造部と、ハニカム構造部に接触して配置されたハニカム構造部の隔壁を通電させるための陽極および陰極となる一対の電極部とを有する。
【0020】
第一発明の排ガス浄化システムが備える加熱部では、通電によって隔壁そのものがジュール熱を発生するので、この隔壁と接触しながら流れる排ガスを直接加熱することができる。直接加熱という熱損失が極めて少ない加熱態様を用いることにより、加熱部で費やす電力を排ガスの加熱に効率的に利用することができる。また、第一発明の排ガス浄化システムが備える加熱部では、熱損失が少ないので、隔壁の発熱量から排ガスに加わる熱量を容易に見積もることが可能になる。そのため、第一発明の排ガス浄化システムが備える加熱部では、隔壁の発熱量を調節することにより、排ガスを目的の温度にしやすい。
【0021】
さらに、第一発明の排ガス浄化システムが備える加熱部では、排ガスを複数のセル内へと振り分けて流す。すなわち、排ガスを小分けし、これら小分けした排ガスのそれぞれを各セルに流す。このように排ガスを小分けして流すと、排ガスと隔壁との接触面積が大きくなり、これに伴って隔壁と排ガスとの接触による伝熱量も多くなる。このような伝熱態様を用いると、隔壁から排ガスへの伝熱量が排ガス内での熱拡散によって散逸してしまう熱量よりも大きくなるので、排ガスの温度を速やかに上げることができ、また、排ガスを目的の温度にしやすくなる。
【0022】
第一発明の排ガス浄化システムが備える加熱部では、サイズが小さな場合であってもハニカム構造部のセル密度を大きくすることにより、排ガスと隔壁との接触面積を大きくすることが可能であり、その結果、排ガスの温度を速やかに上げることができる。また、セル密度を大きくすることによって排ガスと隔壁との接触面積が十分に大きくなっている場合には、セルの長さを短くしても、すなわち、加熱部のサイズを小さくしても、排ガスを十分に加熱することが可能である。
【0023】
第一発明の排ガス浄化システムが備える加熱部では、排ガスの温度を速やかに上げるという効果を高める観点からは、ハニカム構造部は、隔壁の厚さが0.1〜0.51mmかつセル密度が15〜280セル/cmであることが好ましい。さらに、ハニカム構造部内に排ガスを流す際の圧力損失を小さくできるという観点からは、隔壁の厚さが0.25〜0.51mmかつセル密度が15〜62セル/cmであることがより好ましく、さらに、隔壁の厚さが0.30〜0.44mmかつセル密度が15〜47セル/cmであることがより一層好ましい。
【0024】
本明細書にいうセラミックスを主成分とするとは、セラミックスを50質量%以上含むことをいう。すなわちセラミックスを主成分とする隔壁とは、セラミックスを50質量%以上含んだ隔壁のことを意味する。また、第一発明に適用可能な通電により発熱するセラミックスとしては、SiC、金属含浸SiC、Siなどを挙げることができる。
【0025】
第一発明の排ガス浄化システムが備える加熱部のような、セラミックスを主成分とする隔壁を有するハニカム構造部では、外部からの振動を受けて共振現象を発生する時の固有振動数は、金属製の部材が持つ固有振動数よりも高いことが多い。そのため、例えば、第一発明の排ガス浄化システムを振動を生じやすい自動車に搭載する場合であっても、共振現象が起こりにくく、その結果として、加熱部に破損が生じにくくなる。
【0026】
また、第一発明に適用可能な通電により発熱するセラミックスとしての金属含浸SiCには、Si含浸SiC、金属Siとその他の種類の金属(例えば、Al、Ni、Cu,Ag、Be、Mg、Ti、Niなど)とを含浸させたSiCなどを挙げることができる。第一発明のヒーターでは、隔壁がSi含浸SiCや金属Siとその他の種類の金属とを含浸させたSiCを主成分とする場合には、耐熱性、耐熱衝撃性、耐酸化性、酸やアルカリなどに対する耐蝕性が優れたものになる。
【0027】
本明細書にいうSi含浸SiCとは、金属SiとSiCとを構成成分として含む焼結体のことの総称である。このSi含浸SiCは、SiC粒子の表面を金属Si(金属珪素)の凝固物が取り囲むことにより、金属Siを介してSiC粒子同士が接合した構造を有している。
【0028】
また、本明細書にいう金属Siとその他の種類の金属とを含浸させたSiCとは、金属Siとその他の種類の金属とSiCとを構成成分として含む焼結体のことを総称である。金属Siとその他の種類の金属とを含浸させたSiCは、SiC粒子の表面を金属Si(金属珪素)やその他の種類の金属の凝固物が取り囲むことにより、金属Siやその他の種類の金属を介してSiC粒子同士が接合した構造を有している。
【0029】
隔壁が金属含浸SiCを主成分とする場合には、含浸させる金属の量を調整することにより、隔壁の比抵抗を大きくしたり、小さくしたりすることができる。隔壁が金属含浸SiCを主成分とする場合には、一般に、含浸させる金属の量が多くなるにつれて、隔壁の比抵抗がより小さくなる。
【0030】
また、第一発明の排ガス浄化システムが備える加熱部では、隔壁の気孔率を調整することにより、隔壁の比抵抗を大きくしたり、小さくしたりすることができる。一般に、隔壁の気孔率が小さくなるほど、比抵抗がより小さくなり、その結果、隔壁に電気が流れやすくなる。
【0031】
また、第一発明の排ガス浄化システムが備える加熱部では、原料として使用するSiCの種類(α−SiC、β−SiC)やこれらの原料の混合割合によっても隔壁の比抵抗を調整することができる。
【0032】
隔壁の比抵抗の大きさの調整は、原料として使用するSiC粒子の平均粒径を大きくしたり、小さくしたりすることによっても可能である。例えば、粒径が大きな原料を用いると、粒径が小さな原料を用いた場合よりも粒界が少なくなるため、電気伝導し易くなり、その結果、比抵抗が小さくなる。
【0033】
第一発明の排ガス浄化システムが備える加熱部では、一般に、ハニカム構造部の長さ(セルの長さ)を大きくする場合には、隔壁の比抵抗を小さくしても、排ガスを十分に加熱することが可能になり、その結果、排ガスの温度を速やかに上げることができる。また、ハニカム構造部の長さ(セルの長さ)が小さい場合であっても、セル数を増やす(例えば、セル密度を増やす)ことにより、排ガスを十分に加熱することが可能になり、その結果、排ガスの温度を速やかに上げることができる。
【0034】
特に、第一発明の排ガス浄化システムが備える加熱部では、隔壁の比抵抗が0.01〜50Ω・cmであることが望ましく、さらに、排ガスを十分に加熱可能な状態のままでハニカム構造部を小型化できるという観点からは、低電圧(10〜60V)の場合、隔壁の比抵抗が0.01〜7Ω・cmであることが好ましく、高電圧(100〜600V)の場合、隔壁の比抵抗が0.5〜50Ω・cmであることが好ましい。第一発明の排ガス浄化システムが備える加熱部では、低電圧(10〜60V)で使用する際に隔壁の比抵抗が0.01Ω・cm以上である場合、あるいは、高電圧(100〜600V)で使用する際に隔壁の比抵抗が0.5Ω・cm以上である場合には、隔壁を十分な厚さにしたときでも、隔壁の発熱量が小さくなり過ぎずかつ大きくなり過ぎずという具合に、適度な発熱量にできる。すなわち、触媒の活性状態を最も高められる温度となるように、排ガスを加熱することができる。
【0035】
第一発明の排ガス浄化システムが備える加熱部によれば、形状やサイズに予め1つの規格に決められており、用途によって通電する際の電圧が異なる場合であっても、上述した各種の手法によって隔壁の比抵抗の大きさが異なったものを用意することにより、容易に対処することができる。具体的には、形状やサイズの規格による制約がある場合、同一電圧条件では隔壁の比抵抗をより小さくしていくという手法によって小型化が可能である。こうした比抵抗の調節によって、第一発明の排ガス浄化システムが備える加熱部は電圧10〜600Vまでの幅広い電圧に適用することができる。
【0036】
また、第一発明の排ガス浄化システムが備える加熱部では、上述したように隔壁の材質を変更するのみで、加熱部、特にハニカム構造部の構造上の変更を加えなくても、電圧の変更に対処できる。例えば、第一発明の排ガス浄化システムが備える加熱部では、加熱部の抵抗値を調整するために、隔壁に穴やスリットを設けるというような、加熱部の構造的強度を低下させてしまう変更を加えなくてもよい。そのため、第一発明の排ガス浄化システムが備える加熱部には、電圧の仕様を変更した場合であっても、構造的強度を保持させやすいという利点がある。
【0037】
また、第一発明の排ガス浄化システムは備える加熱部は、上述したような隔壁に穴やスリットを設けるというような、隔壁を通電ににくい構造に加工しなくてもよいので、こうした加工のためのコストがかからない点においても利点がある。
【0038】
また、第一発明の排ガス浄化システムが備える加熱部では、ハニカム構造部全体が通電により発熱する性質を持ったセラミックスを主成分として作られている場合には、ハニカム構造部が電極部以外の部材と接触すると、短絡などの不具合が生じてしまうことがある。このような不具合を防ぐためには、ハニカム構造部の表面のうちで、電極部以外の部材と接触する部分に絶縁層を設けておくことが望ましい。この絶縁層は、絶縁破壊強度が10〜30V/μmであることが望ましい。
【0039】
第一発明の備える加熱部のハニカム構造部全体が通電により発熱する性質を持ったセラミックスを主成分として作られている場合、上述した絶縁層としては、ハニカム構造部を作り上げているセラミックス成分が酸化して形成される酸化膜を挙げることができる。このような酸化膜は、酸化雰囲気下で高温処理することにより形成することができる。
【0040】
あるいは、ハニカム構造部の表面を絶縁性樹脂によってコーティングすることにより、絶縁層を設けることも可能である。このように絶縁層が絶縁性樹脂からなる場合、絶縁性樹脂としては、例えば、EPDM、エチレンプロピレン共重合体、ポリイミド、ポリアミドイミドなどの一般的に用いられている樹脂を用いることができる。
【0041】
また、第一発明の排ガス浄化システムでは、対象となる特定物質や触媒の種類などにより、適当な形態の触媒部を用いるとよい。
【0042】
特に、第一発明が備える触媒部は、触媒反応の反応物となる特定物質と触媒の接触頻度を増やすことにより、特定物質を確実に低減することができるという観点からは、触媒反応を行う触媒を担持した隔壁と、該隔壁により区画形成されて排ガスの流路となる複数のセルとを有するハニカム構造体を備えることが好ましい。
【0043】
また、第一発明の排ガス浄化システムを排ガス中の一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)や窒素酸化物(NO)を低減するために使用する場合には、触媒部に用いる触媒としては、例えば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)を含む触媒を挙げることができる。これらの触媒の作用により、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)や窒素酸化物(NO)を反応物として、水(HO)や二酸化炭素(CO)や窒素(N)を生成することができ、その結果、排ガスに含まれる一酸化炭素などの濃度を低減することができる。
【0044】
以下、第一発明の排ガス浄化システムの具体的な実施形態を参照しつつ、その内容を詳しく説明する。
【0045】
図1は、第一発明の排ガス浄化システムの一実施形態を説明するための図である。図示されるように、本排ガス浄化システム30は、エンジン31から排出される排ガスの排気管37内に装備されている。本排ガス浄化システム30は、ヒーター33(加熱部)と触媒体35(触媒部)とを備えている。これらヒーター33と触媒体35は、排ガスが流れる方向に沿って、ヒーター33、触媒体35の順に配置されている。この配置により、エンジン31から排出された排ガスを、ヒーター33、触媒体35という順番に通り抜けさせることができる。ここで、ヒーター33を作動させておくと、排ガスを目的の温度まで高めておいて、触媒体35へと送ることが可能になる。
【0046】
続いて、所定の温度の排ガスが触媒体35に来ると、排ガスの熱によって触媒体35に担持した触媒の温度を上げることでき、その結果、触媒反応を活性化させることができる。例えば、排ガスに含まれる炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NO)といった有害物質を、水(HO)、二酸化炭素(CO)、窒素(N)といった環境への影響がより少ない物質に変えたい場合には、触媒体35に白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)など貴金属を担持させておくとよい。一般に、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)による触媒反応は、これら貴金属の温度が200〜500℃になると、活性化した状態になる。
【0047】
図2は、上述した排ガス浄化システム30に備えることが可能なヒーター33の一実施形態の斜視図である。本ヒーター1は、ハニカム構造体6と、このハニカム構造体6の外周壁3に接合する一対の電極4とを有する。ハニカム構造体6は、一方の端部9aおよびもう一方の端部9bで共に開口する円筒状の外周壁3を有し、この外周壁3の筒の内部が隔壁7によって区画されており、外周壁3が抜けている方向(端部9aと端部9bとを結ぶ方向:Z方向)に対して垂直な断面からみると、互いに直交する隔壁7によって、外周壁3に囲まれた内部が方眼紙のます目のように四角形に区画されている。その結果、外周壁3の内部の各区画にはセル5が形成されている。
【0048】
なお、本ヒーター1では、ハニカム構造体6の外周壁3の断面形状(貫通する方向に垂直な断面の形状)が円であるが、円以外にも、楕円や四角などであってもよい。また、セル5の断面形状についても、四角形の他に、六角形や円など任意の形状を適用できる。
【0049】
さらに、本ヒーター1では、このハニカム構造体6の外周壁3に一対の電極4(陽極4a、陰極4b)が接合している。本ヒーター1では、陽極4aと陰極4bとによってハニカム構造体6が側方から挟み込まれており、ハニカム構造体6に通電すると、隔壁7からジュール熱を発生させることができる。
【0050】
本ヒーター1では、ハニカム構造体6は、外周壁3および隔壁7がSi含浸SiCを主成分としており、比抵抗が0.01〜50Ω・cmである。このハニカム構造体6は、SiC粉体、金属Si粉体、水、有機バインダーなどを混ぜ合わせ、混練して坏土を作製し、この坏土をハニカム形状に成形してハニカム成形体を作製した後、ハニカム成形体を不活性ガス雰囲気中において焼成することにより製造することができる。
【0051】
ここで、ハニカム構造体6については、外周壁3や隔壁7の強度を保ちながら比抵抗を適当な大きさにできる観点からは、金属Siの含有量/(Siの含有量+SiCの含有量)の値が5〜50であることが好ましく、さらに、金属Siの含有量/(Siの含有量+SiCの含有量)の値が10〜40であることがより好ましい。
【0052】
さらに、本ヒーター1では、外周壁3の表面のうち、電極4と接触しない部分には、SiCを酸化させてSiOを生成させることにより、酸化膜が形成されている。外周壁3の表面に酸化膜を形成する際には、大気などの酸化雰囲気下で高温処理を施すとよい。本ヒーター1が備えるハニカム構造体6のように、外周壁3の主成分がSi含浸SiCである場合には、例えば、大気中で1200℃、6時間高温処理することにより、外周壁3の表面に酸化膜を形成することができる。
【0053】
図3は、図2中のA−A’断面の図である。図示されるように、複数のセル5は、外周壁3に囲まれた内部を端部9aから端部9bまで貫いている。ここで、ハニカム構造体6の端部9aに向かって排ガスを流すと、排ガスが複数のセル5に振り分けられ、各セル5の内部を流れていく。このとき、ハニカム構造体6を通電させておくと、各セル5を区画する隔壁7を発熱させておくことができ、その結果、排ガスがセル5内を通過する際、排ガスを加熱しつづけることができる。
【0054】
図4は、上述した排ガス浄化システム30に備えることが可能なヒーター33の他の実施形態の斜視図である。本ヒーター21では、ハニカム構造体26と、一対の電極24(陽極24aと陰極24b)とを備えている。ハニカム構造体26は、中空の四角柱状の外周壁23の内部が、隔壁27によって区画されており、外周壁23が抜けている方向(端部29aと端部29bとを結ぶ方向、長さLの方向)に対して垂直な断面からみると、互いに直交する隔壁27によって、外周壁23に囲まれた内部が方眼紙のます目のように四角形に区画されている。その結果、外周壁23の内部には、複数のセル25が形成され、これら複数のセル25は、外周壁23に囲まれた内部を端部29aから端部29bまで貫いている。また、本ヒーター21を長さLの方向に垂直な断面からみると、外周壁23は幅Wを一辺の長さとした正方形になっている。そして、ハニカム構造体26の外周壁23の4面のうち、対向した一対の面のそれぞれに、電極24(陽極24aまたは陰極24b)が接合している。これら陽極24aおよび陰極42bは、接合している外周壁23の面と同じ幅と長さである(幅W×長さL)。
【0055】
本ヒーター21では、例えば、ヒーター21の長さLが10〜30mm、外周壁23の幅Wが90mm、外周壁23の厚さが1mm、隔壁27の厚さが0.30〜0.45mm、セル密度が15〜61セル/cm、隔壁27および外周壁23の比抵抗が5〜30Ω・cm、という形態にすることができる。この形態において、電圧600V、ヒーター出力4kWで運転する場合、150℃の排ガスをヒーター21内に流入させると、排ガスがヒーターから排出されるときには排ガスの温度を初期の150℃から200〜400℃まで上げることが可能である。すなわち、上述した形態と使用態様の下では、本ヒーター21は、600Vという高電圧で使用した場合であっても、90×90×20mmという小型化が可能であり、また、この小型化したヒーターによって排ガスの温度を触媒の活性化に適した温度まで速やかに上げることができる。
【0056】
また、上述した排ガス浄化システム30に備えることが可能な触媒体35としては、例えば、上述したハニカム構造体6やハニカム構造体26と同様な形状に作られたハニカム構造体を触媒担体として用いることができる。このようなハニカム構造の触媒体の隔壁に白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)などの触媒を担持させておき、排ガスをセル内に流すと、排ガス中の一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NO)といった有害物質を、水(HO)、二酸化炭素(CO)、窒素(N)といった環境への影響がより少ない物質に変えることができる。
【0057】
2.第二発明の排ガス浄化システム:
本願の第二発明の排ガス浄化システムは、セラミックスを主成分として通電により発熱するとともに排ガスに含まれる特定物質を低減させる触媒反応に作用する触媒を担持している隔壁と、隔壁により区画形成されて排ガスの流路となる複数のセルとを有するハニカム構造部と、ハニカム構造部に接触して配置されたハニカム構造部の隔壁を通電させるための陽極および陰極となる一対の電極部と、を有する。
【0058】
第二発明の排ガス浄化システムでは、ハニカム構造部については、上述した第一発明が備える加熱部と同様な作用効果を発揮することができる。
【0059】
これに加えて、第二発明の排ガス浄化システムは、ハニカム構造部の隔壁に触媒を担持しているので、上述した第一発明における加熱部と触媒部とを一体化させた形態となっている。そのため、第二発明の排ガス浄化システムは、第一発明の排ガス浄化システムと比べ、システム全体のサイズを小さくすることができる。
【0060】
また、第二発明の排ガス浄化システムでは、発熱する隔壁によって触媒を直接加熱することができるので、排ガスによって間接的に触媒を加熱する第一発明と比べ、触媒の温度を効率良く高めることが可能である。
【0061】
第二発明の排ガス浄化システムでは、ハニカム構造部における隔壁の比抵抗が0.01〜50Ω・cmであることが望ましく、さらに、排ガスおよび触媒を十分に加熱可能な状態のままでハニカム構造部を小型化できるという観点からは、低電圧(10〜60V)の場合、隔壁の比抵抗が0.01〜7Ω・cmであることが好ましく、高電圧(100〜600V)の場合、隔壁の比抵抗が0.5〜50Ω・cmであることが好ましい。
【0062】
また、第二発明に適用可能な通電により発熱するセラミックスとしては、SiC、金属含浸SiC、Siなどを挙げることができる。第二発明の排ガス浄化システムが備えるハニカム構造部のように、セラミックスを主成分とする隔壁を有する場合には、固有振動数は、金属製の部材が持つ固有振動数よりも高いことが多い。そのため、例えば、第二発明の排ガス浄化システムを振動の生じやすい自動車に搭載する場合であっても、共振現象が起こりにくく、その結果として、ハニカム構造部に破損が生じにくくなる。
【0063】
また、第二発明の排ガス浄化システムでは、ハニカム構造部全体が通電により発熱する性質を持ったセラミックスを主成分として作られている場合には、ハニカム構造部が電極部以外の部材と接触すると、短絡などの不具合が生じてしまうことがある。このような不具合を防ぐためには、ハニカム構造部の表面のうちで、電極部以外の部材と接触する部分に絶縁層を設けておくことが望ましい。この絶縁層は、絶縁破壊強度が10〜30V/μmであることが望ましい。
【0064】
第二発明の備えるハニカム構造部全体が通電により発熱する性質を持ったセラミックスを主成分として作られている場合、上述した絶縁層としては、ハニカム構造部を作り上げているセラミックス成分が酸化して形成される酸化膜を挙げることができる。このような酸化膜は、酸化雰囲気下で高温処理することにより形成することができる。
【0065】
あるいは、ハニカム構造部の表面を絶縁性樹脂によってコーティングすることにより、絶縁層を設けることも可能である。このように絶縁層が絶縁性樹脂からなる場合、絶縁性樹脂としては、例えば、EPDM、エチレンプロピレン共重合体、ポリイミド、ポリアミドイミドなどの一般的に用いられている樹脂を用いることができる。
【0066】
第二発明の排ガス浄化システムの備えるハニカム構造部の具体例としては、上述したヒーター1の隔壁7に触媒を担持させたものや、ヒーター21の隔壁27に触媒を担持したものを挙げることができる。ここで用いる触媒についても、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)を採用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、内燃機関などから排出される排ガスの浄化に使用する排ガス浄化システムとして利用できる。
【符号の説明】
【0068】
1:ヒーター(加熱部)、3:外周壁、4:電極、4a:陽極、4b:陰極、5:セル、6:ハニカム構造体、7:隔壁、9,9a,9b:端部、21:ヒーター、23:外周壁、24:電極、24a:陽極、24b:陰極、25:セル、26:ハニカム構造体、27:隔壁、29,29a,29b:端部、30:排ガス浄化システム、31:エンジン、33:ヒーター(加熱部)、35:触媒体(触媒部)、37:排気管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスの排気経路に設けられて、前記排ガスを加熱可能な加熱部と、
前記排気経路において前記加熱部の下流に設けられて、前記排ガスに含まれる特定物質を低減させる触媒反応に作用する触媒を有する触媒部と、を備え、
前記加熱部は、
セラミックスを主成分として通電により発熱する隔壁と、該隔壁により区画形成されて前記排ガスの流路となる複数のセルと、を有するハニカム構造部と、
前記ハニカム構造部に接触して配置された前記ハニカム構造部の前記隔壁を通電させるための陽極および陰極となる一対の電極部と、を有する排ガス浄化システム。
【請求項2】
前記触媒部は、前記触媒反応を行う触媒を担持している隔壁と、該隔壁により区画形成されて前記排ガスの流路となる複数のセルと、を有するハニカム構造体を備える請求項1に記載の排ガス浄化システム。
【請求項3】
セラミックスを主成分として通電により発熱するとともに排ガスに含まれる特定物質を低減させる触媒反応に作用する触媒を担持している隔壁と、該隔壁により区画形成されて前記排ガスの流路となる複数のセルと、を有するハニカム構造部と、
前記ハニカム構造部に接触して配置された前記ハニカム構造部の前記隔壁を通電させるための陽極および陰極となる一対の電極部と、を有する排ガス浄化システム。
【請求項4】
前記ハニカム構造部における前記隔壁の比抵抗が0.01〜50Ω・cmである請求項1〜3のいずれか一項に記載の排ガス浄化システム。
【請求項5】
前記ハニカム構造部における前記隔壁は、SiC、金属含浸SiC、およびSiからなる群から選ばれる1種を主成分とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の排ガス浄化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−233443(P2012−233443A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−102945(P2011−102945)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【Fターム(参考)】