説明

排ガス浄化装置

【課題】PMフィルタを強制再生するために必要な燃料消費量を低減させる。
【解決手段】この排ガス浄化装置は、酸化触媒20と、酸化触媒20の排ガス下流側に配設され、排ガス中のパティキュレートを捕集するPMフィルタ触媒30とを備えている。酸化触媒20は、排ガスが直流する複数のストレートセル21と、ストレートセル21同士を区画するストレートセル隔壁22と、ストレートセル隔壁22の表面に形成された酸化触媒層と、ストレートセル21内を通過する排ガス中のPMの一部を捕集可能な構造とされた捕集部としての部分目詰め部24と有している。PMフィルタ触媒30を強制再生する際に酸化触媒20に600℃程度以上の高温の燃料を供給すれば、部分目詰め部24に堆積されたPMが燃焼して発熱するので、この熱をPMフィルタの再生に利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンからの排ガス等、パティキュレートを含む排ガスを浄化する排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンでは、有害成分がパティキュレート(粒子状物質:炭素微粒子、サルフェート等の硫黄系微粒子や高分子量炭化水素微粒子等、以下適宜PMという)として排出される。
【0003】
ディーゼルエンジンからの排ガスを浄化するディーゼルエンジン用排ガス浄化装置として、排ガス中のHC、COやNO等を触媒作用により酸化する酸化触媒と、この酸化触媒の排ガス下流側に配設され、排ガス中のPMを捕集するPMフィルタと、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
この排ガス浄化装置における酸化触媒は、ストレートフロー構造を有するオープン型のもので、排ガスが直流する複数のストレートセルと、ストレートセル同士を区画するストレートセル隔壁と、ストレートセル隔壁の表面に形成され酸化活性を有する酸化触媒層とからなる。この酸化触媒層は、アルミナ等の多孔質酸化物よりなるコート層に白金等の触媒金属を担持してなるもので、ストレートセルを直流する排ガス中のHCやCO等を触媒金属の触媒作用により酸化燃焼させる。
【0005】
また、この排ガス浄化装置におけるPMフィルタは、ウォールフロー構造を有するトラップ型のもので、排ガス下流側の出口部が目詰めされた複数の流入側セルと、この流入側セルに隣接し排ガス上流側の入口部が目詰めされた複数の流出側セルと、流入側セル及び流出側セルを区画しフィルタ機能をもつ多孔質のフィルタ隔壁と、このフィルタ隔壁の表面に形成された触媒層とからなる。このフィルタ機能をもつフィルタ隔壁は所定の平均細孔径の細孔を所定の気孔率で有し、この細孔で排ガスを濾過してPMを捕集する。また、触媒層は、アルミナ等の多孔質酸化物よりなるコート層に白金等の触媒金属を担持してなるもので、セル隔壁に捕集されたPMを触媒金属の触媒反応によって酸化燃焼させる。
【0006】
かかる構成を有する従来の排ガス浄化装置では、PMフィルタにおいて、捕集と同時にあるいは捕集と連続してPMを酸化燃焼させることで連続再生することができる。また、酸化触媒でHC等を酸化燃焼させたときに発生する反応熱を利用して、PMフィルタに堆積したPMを燃焼させることができる。
【特許文献1】特開2005−264866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、PMフィルタに堆積したPMは、600℃程度以上の高温に加熱されると燃焼する。このため、上記従来の排ガス浄化装置では、PMフィルタに堆積したPMを燃焼させてPMフィルタを強制的に再生するために、多量のHC等を含む燃料を酸化触媒に供給することにより、酸化触媒で反応熱を発生させて、酸化触媒から流出する排ガス、すなわちPMフィルタに流入する排ガスの温度を600℃程度以上にしていた。
【0008】
したがって、上記従来の排ガス浄化装置では、PMフィルタを強制再生するために相当の燃料消費量が必要であり、燃費の悪化に繋がっていた。
【0009】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、PMフィルタを強制再生するために必要な燃料消費量を低減させることを解決すべき技術課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の排ガス浄化装置は、内燃機関の排気系に配設され、該内燃機関の排ガス成分を触媒作用により酸化する酸化触媒と、該酸化触媒の排ガス下流側に配設され、排ガス中のパティキュレートを捕集するパティキュレートフィルタと、を備え、前記酸化触媒は、排ガスが直流する複数のストレートセルと、該ストレートセル同士を区画するストレートセル隔壁と、該ストレートセル隔壁の表面に形成され酸化活性を有する酸化触媒層と、該ストレートセル内を通過する該排ガス中のパティキュレートの一部を捕集可能な構造とされた捕集部と、有していることを特徴とするものである。
【0011】
この排ガス浄化装置では、酸化触媒のストレートセル内を通過する排ガス中のパティキュレートの一部が酸化触媒に設けられた捕集部により捕集される。このため、PMフィルタを強制再生するときに、酸化触媒に600℃程度以上の高温の燃料を供給すれば、この酸化触媒に捕集、堆積されたPMが燃焼して発熱するので、この熱をPMフィルタの再生に利用することができる。したがって、PMフィルタの強制再生に必要な燃料消費量を低減させて、燃費の向上を図ることが可能となる。
【0012】
また、この排ガス浄化装置では、パティキュレートフィルタ以外の酸化触媒に、排ガス中のパティキュレートの一部を捕集、堆積させることができるので、装置全体でのパティキュレートの堆積限界量を増加させることが可能となる。したがって、PMフィルタの再生頻度を少なくすることができ、これによっても燃費の向上を図ることが可能となる。
【0013】
本発明の排ガス浄化装置の好適な態様において、前記ストレートセル隔壁は、隣り合う前記ストレートセル間における気体の流通を可能にする多孔質隔壁よりなり、かつ前記捕集部は、複数の前記ストレートセルのうちの一部を排ガス下流側で目詰めすることで形成された部分目詰め部である。
【0014】
この態様の排ガス浄化装置では、排ガス下流側で目詰めされたストレートセルの部分目詰め部に排ガス中のPMの一部を捕集して、堆積させることができる。また、PMフィルタの強制再生時には、部分目詰め部に堆積したPMが燃焼するが、このときPMの燃焼により加熱された排ガスは多孔質隔壁よりなるストレートセル隔壁の孔内を通過して、目詰めされていない隣のストレートセルから排出される。このため、PMフィルタの強制再生時に、PMの燃焼により加熱された高温の排ガスが酸化触媒から排出されるので、これをPMフィルタの強制再生に利用することができる。
【0015】
前記ストレートセル隔壁が前記多孔質隔壁よりなり、かつ前記捕集部が前記部分目詰め部である前記排ガス浄化装置において、排ガス下流側に前記部分目詰め部を有するストレートセルの割合は、全ストレートセルに対して、10〜60%であることが好ましい。
【0016】
部分目詰め部を有するストレートセルの割合が少なすぎると、部分目詰め部に捕集、堆積されるPM量の不足により、本発明の効果を十分に達成することができなくなる。一方、部分目詰め部を有するストレートセルの割合が多すぎると、酸化触媒を通過する排ガスの圧力損失が増大したり、排ガス中のHC、COやNO等を触媒作用により酸化浄化させるという、酸化触媒としての機能を果たし得なくなったりするおそれがある。かかる観点より、部分目詰めを有するストレートセルの割合は、全ストレートセルに対して、30〜50%であることがより好ましい。
【0017】
前記ストレートセル隔壁が前記多孔質隔壁よりなり、かつ前記捕集部が前記部分目詰め部である前記排ガス浄化装置において、前記ストレートセル隔壁が40〜70%の気孔率を有することが好ましい。
【0018】
ストレートセル隔壁の気孔率が低すぎると、部分目詰め部に堆積したPMが燃焼することにより加熱された排ガスが酸化触媒から排出されにくくなり、酸化触媒に部分的に捕集したPMの燃焼熱を有効に利用することが困難となる。一方、ストレートセル隔壁の気孔率が高すぎると、ストレートセル隔壁として必要な強度を確保することが困難となる。かかる観点より、ストレートセル隔壁の気孔率は、55〜65%とすることがより好ましい。
【0019】
本発明の排ガス浄化装置の好適な態様において、前記捕集部は、前記酸化触媒層において排ガス下流側の層厚を排ガス上流側の層厚よりも厚くすることで形成された触媒層段差部である。
【0020】
この態様の排ガス浄化装置では、触媒層段差部に排ガス中のPMの一部を捕集して、堆積させることができる。また、PMフィルタの強制再生時には、触媒段差部に堆積したPMが燃焼するが、このときPMの燃焼により加熱された排ガスはそのままストレートセルから排出される。このため、PMフィルタの強制再生時に、PMの燃焼により加熱された高温の排ガスが酸化触媒から排出されるので、これをPMフィルタの強制再生に利用することができる。
【0021】
本発明の排ガス浄化装置の好適な態様において、前記ストレートセル隔壁はメタル箔よりなり、かつ前記捕集部は、該メタル箔を部分的に切り起こして前記ストレートセル内に突出させることで形成された切り起こし片である。
【0022】
この態様の排ガス浄化装置では、ストレートセル内に突出した切り起こし片に排ガス中のPMの一部を捕集して、堆積させることができる。また、PMフィルタの強制再生時には、切り起こし片に堆積したPMが燃焼するが、このときPMの燃焼により加熱された排ガスの一部はそのまま該切り起こし片が突出したストレートセルから排出され、また残りの排ガスは切り起こし片を形成する際にできた孔を介して隣のストレートセルから排出される。このため、PMフィルタの強制再生時に、PMの燃焼により加熱された高温の排ガスが酸化触媒から排出されるので、これをPMフィルタの強制再生に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の具体的に実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0024】
(実施形態1)
実施形態1は、請求項1乃至4に記載の発明を具現化したものである。
【0025】
図1に模式的に示される実施形態1の排ガス浄化装置は、ディーゼルエンジンの排気経路に配設される、タンデム型の装置であって、ケース本体10と、このケース本体10内の排ガス上流側に配設された、排ガス成分を触媒作用により酸化する酸化触媒20と、ケース本体10内の排ガス下流側であって、酸化触媒20よりも排ガス下流側に直列に配設された、排ガス中のPMを捕集するPMフィルタ触媒(DPF)30とを備えている。
【0026】
ケース本体(コンバータ)10は、金属製で略円筒状をなし、小径の流入口部11及び流出口部12と、流入口部11及び流出口部12よりも大径で両者を一体に連結し、酸化触媒20及びPMフィルタ触媒30が配設される本体部13とを有している。なお、酸化触媒20は、アルミナ製のマット材14によりケース本体10の本体部13に保持されている。また、PMフィルタ触媒30は、ワイヤメッシュ15によりケース本体10の本体部13に保持されている。
【0027】
酸化触媒20は、図2に示されるように、軸方向に延びて排ガスが直流する複数のストレートセル21と、ストレートセル21同士を区画するストレートフロー型ハニカム構造体よりなるストレートセル隔壁22と、ストレートセル隔壁22の表面に形成され酸化活性を有する酸化触媒層23と、を有している。
【0028】
実施形態1に係る酸化触媒20のストレートセル隔壁22は、隣り合うストレートセル21間における気体の流通を可能にする、所定の気孔率及び平均細孔径を有する多孔質隔壁よりなる。この多孔質隔壁よりなるストレートセル隔壁22における細孔は、例えば、ストレートセル隔壁22を製造する際、スラリー中に所定粒径のカーボン粉末、木粉、澱粉や樹脂粉末等の可燃物粉末を所定量混合しておき、成形後の焼成時に可燃物粉末を消失させることによって形成することができる。
【0029】
このストレートセル隔壁22における気孔率は、前述のとおり、40〜70%とすることが好ましく、55〜65%とすることがより好ましい。また、このスレートセル隔壁22における平均細孔径は、2〜50mmとすることが好ましく、10〜45mmとすることがより好ましい。ストレート隔壁22における平均細孔径が小さすぎると、強制再生時に、酸化触媒20に部分的に堆積したPMが燃焼することにより加熱された排ガスが酸化触媒20から排出されにくくなる。一方、ストレートセル隔壁20における平均細孔径が大きすぎると、ストレートセル隔壁20として必要な強度を確保することが困難となる。
【0030】
酸化触媒20のストレートセル隔壁22の材質は特に限定されず、例えば、コーディエライト、炭化珪素や窒化珪素等の耐熱性セラミックスとすることができる。ストレートセル隔壁22は、例えば、コーディエライト粉末を主成分とする粘土状のスラリーを調製し、それを押出成形等で所定形状に成形した後、焼成することにより製造することができる。
【0031】
そして、実施形態1に係る酸化触媒20は、ストレートセル21内を通過する排ガス中のPMの一部を捕集可能な構造とされた捕集部として、複数のストレートセル21のうちの一部を排ガス下流側で目詰めすることで形成された部分目詰め部24を有している。この部分目詰め部24を有するストレートセル21の割合は、前述のとおり、ストレートセル21の全数に対して、10〜60%であることが好ましく、30〜50%であることがより好ましい。
【0032】
部分目詰め部24の形成方法は特に限定されず、例えば、粘土状のスラリーなどで特定のストレートセル21の開口端を目封じしてから、焼成することにより行うことができる。 部分目詰め部24の形成位置は特に限定されないが、強制再生時に酸化触媒20に部分目詰め部24に堆積したPMが燃焼することにより加熱された排ガスが酸化触媒20から排出され易くする観点より、部分目詰め部24を有するストレートセル21に隣接するストレートセル21には部分目詰め部24を形成しない方が好ましい。また、ストレートセル21の軸方向における部分目詰め部24の形成位置も特に限定されないが、部分目詰め部24が設けられるストレートセル21の酸化触媒層23による触媒活性を有効利用する観点より、ストレートセル21の排ガス下流側の端部とすることが好ましい。
【0033】
PMフィルタ触媒30は、軸方向に延びて排ガスが流通する複数のセル31と、各セル31を区画するウォールフロー型ハニカム構造体よりなるフィルタ隔壁32と、フィルタ隔壁32の表面に形成され酸化活性を有する酸化触媒層(図示せず)と、を有している。
【0034】
PMフィルタ触媒30におけるフィルタ隔壁32は、所定の気孔率及び平均細孔径をもつ多孔質隔壁よりなり、後述する流入側セル31aからフィルタ隔壁32を介して流出側セル31bに流れる排ガス中からPMを濾過して捕集するフィルタ機能を有している。この多孔質隔壁よりなるフィルタ隔壁32における細孔は、前記ストレートセル隔壁22と同様、例えば、フィルタ隔壁32を製造する際、スラリー中に所定粒径のカーボン粉末、木粉、澱粉や樹脂粉末等の可燃物粉末を所定量混合しておき、成形後の焼成時に可燃物粉末を消失させることによって形成することができる。
【0035】
PMフィルタ触媒30のフィルタ隔壁32の材質は特に限定されず、前記ストレート隔壁22と同様、例えば、コーディエライト、炭化珪素や窒化珪素等の耐熱性セラミックスとすることができる。また、このフィルタ隔壁32は、例えば、コーディエライト粉末を主成分とする粘土状のスラリーを調製し、それを押出成形等で所定形状に成形した後、焼成することにより製造することができる。
【0036】
このPMフィルタ触媒30におけるセル31は、排ガス出口側で目詰め詮33により目詰めされた複数の流入側セル31aと、流入側セル31aに隣接し排ガス入口側で目詰め詮33により目詰めされた複数の流出側セル31bとからなる。このPMフィルタ触媒30における目詰めは、例えば、粘土状のスラリーなどでセル31の開口部の両端を例えば交互に市松状に目封じしてから、焼成することにより行うことができる。
【0037】
酸化触媒20のストレートセル隔壁22の表面に形成される酸化触媒層23及びPMフィルタ触媒30のフィルタ隔壁32の表面に形成される酸化触媒層は、例えば多孔質酸化物粉末よりなるコート層と、このコート層に担持された触媒金属とから構成することができる。多孔質酸化物としては、Al、ZrO、CeO、TiOやSiO等の酸化物あるいはこれらの複数種からなる複合酸化物を好適に用いることができる。また、触媒金属としては、Pt、RhやPd等の白金属の貴金属から選ばれた一種あるいは複数種を好適に用いることができる。なお、貴金属に加えて、Fe、W、CoやNi等の遷移金属を用いることもできる。また、触媒金属の担持量は適宜設定可能である。
【0038】
酸化触媒層の形成は、例えば、酸化物粉末又は複合酸化物粉末をアルミナゾル等のバインダ成分及び水とともにスラリーとし、そのスラリーをストレートセル隔壁22やフィルタ隔壁32に付着させた後に焼成してコート層を形成し、その後に所定の触媒金属を担持することにより行うことができる。スラリーをストレートセル隔壁22やフィルタ隔壁32に付着させるには通常の浸漬法を用いることができるが、エアブローあるいは吸引によって細孔内に入ったスラリーの余分なものを除去することが望ましい。触媒金属を担持するには、貴金属等の硝酸塩等を溶解した溶液を用い、吸着担持法や吸水担持法等によってコート層に担持すればよい。また、酸化物粉末あるいは複合酸化物粉末に予め貴金属等を担持しておき、その触媒粉末からコート層を形成してそのまま酸化触媒層とすることもできる。なお、酸化触媒層は、多孔質隔壁よりなるストレートセル隔壁22やフィルタ隔壁32の内部の細孔の表面にも形成することが望ましい。
【0039】
また、PMフィルタ触媒30における酸化触媒層には、K、Na、CsやLi等のアルカリ金属、Ba、Ca、MgやSr等のアルカリ土類金属及びSc、Y、PrやNd等の希土類金属から選ばれるNOx吸蔵材をさらに担持させてもよい。こうした場合は、酸化触媒層による酸化によって生成したNO等をNOx吸蔵材に吸蔵させることができるので、NOxの浄化活性を向上させることが可能となる。
【0040】
上記構成を有する実施形態1の排ガス浄化装置では、酸化触媒20のストレートセル21内を通過する排ガス中のPMの一部が酸化触媒20に設けられた捕集部としての部分目詰め部24の上流側に捕集、堆積される。このため、PMフィルタ触媒30を強制再生するときに、酸化触媒20に600℃程度以上の高温の燃料を供給すれば、この酸化触媒20の部分目詰め部24に捕集、堆積されたPMが燃焼して発熱する。そして、PMの燃焼により加熱された排ガスは、多孔質隔壁よりなるストレートセル隔壁22の孔内を通過して、目詰めされていない隣のストレートセル21から排出されて、PMフィルタ触媒30に流入する。こうして、酸化触媒20の部分目詰め部24に捕集、堆積されたPMの燃焼熱をPMフィルタ触媒30の強制再生に利用することができる。したがって、PMフィルタ触媒30の強制再生に必要な燃料消費量を低減させて、燃費の向上を図ることが可能となる。
【0041】
また、実施形態1の排ガス浄化装置では、PMフィルタ触媒30以外の酸化触媒20に、排ガス中のPMの一部を捕集、堆積させることができるので、装置全体でのPM堆積限界量を増加させることが可能となる。したがって、PMフィルタ触媒30の再生頻度を少なくすることができ、これによっても燃費の向上を図ることが可能となる。
【0042】
さらに、酸化触媒20においては、酸化触媒層23により、ストレートセル21内を流通する排ガス中のHCやCO等を酸化浄化することができる。
【0043】
(実施形態2)
実施形態2は、請求項1又は5に記載の発明を具現化したものである。
【0044】
すなわち、図3に示される実施形態2の排ガス浄化装置では、前記捕集部として、実施形態1の排ガス浄化装置に係る部分目詰め部24の代わりに、触媒層段差部25を設けている。
【0045】
この触媒層段差部25は、酸化触媒20の全部のストレートセル21において、酸化触媒層23における排ガス下流側の層厚を排ガス上流側の層厚よりも厚くすることで形成されている。より具体的には、酸化触媒層23は、排ガス上流側の略半分の領域に設けられた薄層部23aと、排ガス下流側の略半分の領域に設けられた厚層部23bとからなり、薄層部23aと厚層部23bとの境界部分に触媒層段差部25が形成されている。なお、薄層部23aと厚層部23bとの厚さの差は、特に限定されず、厚層部23bにおける触媒コート量を薄層部23aにおける触媒コート量の0.25〜2倍程度とすることができる。
【0046】
薄層部23a、厚層部23b及び触媒層段差部25の形成方法は特に限定されない。例えば、図3に示されるように、酸化触媒20の全部のストレートセル21において、所定厚さの下層231をストレート隔壁22の表面に形成した後、排ガス下流側の所定領域の下層231上に所定厚さの上層232を形成することにより、薄層部23a、厚層部23b及び触媒層段差部25を形成することができる。
【0047】
なお、前記捕集部としての触媒段差部25は、必ずしも酸化触媒20の全部のストレートセル21に設けなくてもよい。
【0048】
その他の構成は前記実施形態1の排ガス浄化装置と同様である。
【0049】
したがって、実施形態2の排ガス浄化装置では、触媒層段差部25に排ガス中のPMの一部を捕集して、堆積させることができる。また、PMフィルタ触媒30の強制再生時には、触媒段差部25に堆積したPMが燃焼するが、このときPMの燃焼により加熱された排ガスはそのままストレートセル21から排出される。このため、PMフィルタ触媒30の強制再生時に、PMの燃焼により加熱された高温の排ガスが酸化触媒から排出されるので、これをPMフィルタ触媒30の強制再生に利用することができる。
【0050】
(実施形態3)
実施形態3は、請求項1又は6に記載の発明を具現化したものである。
【0051】
すなわち、図4に示される実施形態3の排ガス浄化装置では、ストレートセル隔壁22がメタル箔よりなり、かつ前記捕集部は、メタル箔を部分的に切り起こしてストレートセル21内に突出させることで形成された切り起こし片26により構成されている。この切り起こし片26は、各ストレートセル21内に、軸方向に間隔を隔てて2個ずつ直列に配設されている。また、ストレートセル隔壁22には、切り起こし片26を形成する際にできた通孔27が貫設されている。さらに、ストレートセル隔壁22の表面には実施形態1と同様の酸化触媒層(図示せず)が形成されている。
【0052】
なお、前記捕集部としての切り起こし片26は、必ずしも酸化触媒20の全部のストレートセル21に設けなくてもよく、また、各ストレートセル21内に設ける数も特に限定されず、1個でも複数個でもよい。
【0053】
その他の構成は前記実施形態1の排ガス浄化装置と同様である。
【0054】
したがって、実施形態2の排ガス浄化装置では、ストレートセル21内に突出した切り起こし片26に排ガス中のPMの一部を捕集して、堆積させることができる。また、PMフィルタ触媒30の強制再生時には、切り起こし片26に堆積したPMが燃焼するが、このときPMの燃焼により加熱された排ガスの一部はそのまま該切り起こし片26が突出したストレートセル21から排出され、また残りの排ガスは通孔27を介して隣のストレートセル21から排出される。このため、PMフィルタ触媒30の強制再生時に、PMの燃焼により加熱された高温の排ガスが酸化触媒20から排出されるので、これをPMフィルタ触媒30の強制再生に利用することができる。
【0055】
なお、前述の実施形態1〜3では、酸化触媒20の排ガス下流側に、触媒作用を有するPMフィルタ触媒30を配設する例について説明したが、触媒作用を有しない単なるPMフィルタを酸化触媒20の排ガス下流側に配設してもよい。
【実施例】
【0056】
以下、実施例により、本発明を更に詳しく説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0057】
[第1実施例]
(実施例1)
実施例1では、前記実施形態1の排ガス浄化装置を以下のようにして製造した。
【0058】
直径:160mm、容積:2リットル、ストレートセル数:300cpsi(セル/inch)の四角形セルをもち、気孔率が65%で平均細孔径が25mmである、コーディエライトよりなるストレートフロー型ハニカム構造体を準備した。
【0059】
そして、このストレートフロー型ハニカム構造体に対して、アルミナ粉末を主とするスラリーをウォッシュコートし、110℃で乾燥後、450℃で焼成してコート層を形成した。次いで、含浸担持法により前記コート層にPtを担持して、ストレートセル隔壁22の表面に酸化触媒層23を形成した。このとき、ハニカム構造体1リットル当たりのコート量は150gとし、同様にハニカム構造体1リットル当たりのPt担持量は3gとした。
【0060】
その後、コーディエライト組成の粉末に所定量の有機バインダと水を混合し、安定した保形性のあるクリーム状のペーストを調製し、ペースト注入機(ディスペンサ)を用いて、ストレート形状のハニカム構造体に対して、特定のストレートセル21の軸方向一端部にペーストを目詰めして部分目詰め部24を形成した。このとき、部分目詰め部24を有するストレートセル21の割合は、ストレートセル21の全数に対して、15%とした。
【0061】
こうして、酸化触媒20を製造した。
【0062】
一方、直径:160mm、容積:3リットル、セル数:300cpsiの四角形セルをもち、気孔率が65%である、コーディエライトよりなるストレート形状のハニカム構造体を準備した。
【0063】
そして、アルミナ,タルク,カオリン,シリカからなるコーディエライト組成の粉末に所定量の有機バインダと水を混合し、安定した保形性のあるクリーム状のペーストを調製した。このペーストを用い、ペースト注入機(ディスペンサ)を用いて、ストレート形状のハニカム構造体に対して、軸方向一端部において一舛ずつ交互に目詰めして目詰め詮33を形成するとともに、軸方向他端部において、目詰め詮33をもたないセルを目詰めして目詰め詮33を形成した。その後1400℃で焼成して流入側セル31aと流出側セル31bを形成して、ウォールフロー型ハニカム構造体とした。
【0064】
続いて、このウォールフロー型ハニカム構造体に対して、アルミナ粉末を主とするスラリーをウォッシュコートし、110℃で乾燥後、450℃で焼成してコート層を形成した。次いで、含浸担持法により前記コート層にPtを担持して、フィルタ隔壁32の表面に酸化触媒層を形成した。このとき、ウォールフロー型ハニカム構造体1リットル当たりのPt担持量は2gとした。
【0065】
こうして、PMフィルタ触媒30を製造した。
【0066】
そして、ケース本体10の本体部12に対して、排ガス上流側にアルミナ製マット材14を介して酸化触媒20を配設するとともに、その排ガス下流側にワイヤーメッシュ15を介してPMフィルタ触媒30を配設して、実施例1の排ガス浄化装置を完成した。
【0067】
(実施例2)
実施例2では、部分目詰め部24を有するストレートセル21の割合を、ストレートセル21の全数に対して、30%とすること以外は、前記実施例1と同様にして、排ガス浄化装置を製造した。
【0068】
(実施例3)
実施例3では、部分目詰め部24を有するストレートセル21の割合を、ストレートセル21の全数に対して、50%とすること以外は、前記実施例1と同様にして、排ガス浄化装置を製造した。
【0069】
(実施例4)
実施例4では、前記実施形態3の排ガス浄化装置を以下のようにして製造した。
【0070】
直径:160mm、容積:2リットル、ストレートセル数:300cpsi(セル/inch)の四角形セルをもつメタル担体を準備した。
【0071】
このメタル担体は、メタル箔を部分的に切り起こしてストレートセル21内に突出させることで形成された複数の切り起こし片26と、切り起こし片26を形成する際にできた複数の通孔27とを有している。また、このメタル担体は、排ガス中のPMを25%程度捕集可能となるように、切り起こし片26の数が設定されている。
【0072】
そして、このメタル担体に対して、実施例1と同様の方法により、メタル担体1リットル当たりのコート量が150gで、メタル担体1リットル当たりのPt担持量が3gの酸化触媒層23を形成して、酸化触媒20とした。
【0073】
その他は、前記実施例1と同様にして、排ガス浄化装置を製造した。
【0074】
(比較例)
直径:160mm、容積:2リットル、ストレートセル数:300cpsi(セル/inch)の四角形セルをもち、気孔率が27%である、コーディエライトよりなるストレートフロー型ハニカム構造体を準備した。
【0075】
そして、このストレートフロー型ハニカム構造体に対して、実施例1と同様の方法により、ハニカム構造体1リットル当たりのコート量が150gで、ハニカム構造体1リットル当たりのPt担持量が3gの酸化触媒層23を形成して、酸化触媒20とした。
【0076】
その他は、前記実施例1と同様にして、排ガス浄化装置を製造した。
【0077】
(評価試験)
前記実施例1〜4及び比較例の排ガス浄化装置について、以下の評価試験を行った。
【0078】
各排ガス浄化触媒をディーゼルエンジンの排気管に装着し、定常運転により、排ガス浄化装置の酸化触媒20及びPMフィルタ触媒30にPMを12g堆積させた。このとき、排ガス浄化装置内に堆積されるPMの堆積量に対する、酸化触媒20に堆積されるPM堆積割合を調べた。その結果を表1に示す。
【0079】
そして、排ガス装置内に堆積されたPMを燃焼してPMフィルタ触媒30等を強制再生するために、燃料を流入口部11に供給し、酸化触媒20の出ガス温度が600℃になるように、燃料供給量を制御しながら5分間運転した。このときの燃料供給制御では、酸化触媒20の出ガス温度が600℃を超えた場合に燃料供給量を抑えるようにした。この燃料供給制御における燃料消費量を調べた、その結果を表1に併せて示す。
【0080】
【表1】

【0081】
表1から明らかなように、実施例1〜4の排ガス浄化装置では、比較例の排ガス浄化装置と比較して、PMフィルタ触媒30の強制再生に必要な燃料消費量を格段と低減させることができた。
【0082】
[第2実施例]
(実施例5)
実施例5では、前記実施形態2の排ガス浄化装置を以下のようにして製造した。
【0083】
直径:160mm、容積:2リットル、ストレートセル数:300cpsi(セル/inch)の四角形セルをもち、気孔率が27%である、コーディエライトよりなるストレートフロー型ハニカム構造体を準備した。
【0084】
そして、このストレートフロー型ハニカム構造体に対して、アルミナ粉末を主とするスラリーをウォッシュコートし、110℃で乾燥後、450℃で焼成して第1コート層を形成して、ストレートセル隔壁22の表面に下層231を形成した。この下層231におけるコート量は、ハニカム構造体1リットル当たり100gとした。次いで、同様の方法により、排ガス下流側の半分の領域に第2コート層を形成して、排ガス下流側の半分の領域において下層231の上に上層232を形成した。この、上層231におけるコート量は、ハニカム構造体1リットル当たり50gとした。そして、含浸担持法により前記第1及び第2コート層にPtを担持した。このとき、ハニカム構造体1リットル当たりのPt担持量は3gとした。
【0085】
こうして、排ガス上流側の半分の領域に設けられた薄層部23aと、排ガス下流側の半分の領域に設けられた厚層部23bと、薄層部23aと厚層部23bとの境界部分に形成された触媒層段差部25とを有する、酸化触媒層23をストレートセル隔壁22の表面に形成して酸化触媒20を製造した。
【0086】
その他は、前記実施例1と同様にして、排ガス浄化装置を製造した。
【0087】
(実施例6)
実施例6では、排ガス下流側の半分の領域に形成した上層231におけるコート量を、ハニカム構造体1リットル当たり100gとすること以外は、前記実施例5と同様にして、排ガス浄化装置を製造した。
【0088】
(評価試験)
前記実施例5、6及び比較例の排ガス浄化装置について、前述の評価試験と同様の評価試験を行った結果を表2に示す。
【0089】
【表2】

【0090】
表2から明らかなように、実施例5及び6の排ガス浄化装置では、比較例の排ガス浄化装置と比較して、PMフィルタ触媒30の強制再生に必要な燃料消費量を格段と低減させることができた。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】実施形態1の排ガス浄化装置を模式的に示す断面図である。
【図2】実施形態1の排ガス浄化装置における酸化触媒の要部断面図である。
【図3】実施形態2の排ガス浄化装置における酸化触媒の要部断面図である。
【図4】実施形態3の排ガス浄化装置における酸化触媒の要部断面図である。
【符号の説明】
【0092】
20…酸化触媒
21…ストレートセル 22…ストレートセル隔壁
23…酸化触媒層 24…部分目詰め部
25…触媒層段差部 26…切り起こし片
30…PMフィルタ触媒
31…セル 32…フィルタ隔壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気系に配設され、該内燃機関の排ガス成分を触媒作用により酸化する酸化触媒と、該酸化触媒の排ガス下流側に配設され、排ガス中のパティキュレートを捕集するパティキュレートフィルタと、を備え、
前記酸化触媒は、排ガスが直流する複数のストレートセルと、該ストレートセル同士を区画するストレートセル隔壁と、該ストレートセル隔壁の表面に形成され酸化活性を有する酸化触媒層と、該ストレートセル内を通過する該排ガス中のパティキュレートの一部を捕集可能な構造とされた捕集部と、有していることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項2】
前記ストレートセル隔壁は、隣り合う前記ストレートセル間における気体の流通を可能にする多孔質隔壁よりなり、かつ前記捕集部は、複数の前記ストレートセルのうちの一部を排ガス下流側で目詰めすることで形成された部分目詰め部である請求項1に記載の排ガス浄化装置。
【請求項3】
排ガス下流側に前記部分目詰め部を有する前記ストレートセルの割合は、全ストレートセルに対して、10〜60%である請求項2に記載の排ガス浄化装置。
【請求項4】
前記ストレートセル隔壁が40〜70%の気孔率を有する請求項2又は3に記載の排ガス浄化装置。
【請求項5】
前記捕集部は、前記酸化触媒層において排ガス下流側の層厚を排ガス上流側の層厚よりも厚くすることで形成された触媒層段差部である請求項1に記載の排ガス浄化装置。
【請求項6】
前記ストレートセル隔壁はメタル箔よりなり、かつ前記捕集部は、該メタル箔を部分的に切り起こして前記ストレートセル内に突出させることで形成された切り起こし片である請求項1に記載の排ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−115717(P2008−115717A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−297903(P2006−297903)
【出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】