排ガス浄化装置
【課題】排ガス中に含まれるHC、CO及びNOxを効率よく浄化することができる安価な排ガス浄化装置を提供すること。
【解決手段】排ガス浄化装置1は、内燃機関から排出される排ガスGの流路となる排ガス流路11に設けられ、排ガスG中に含まれる少なくともHC、CO及びNOxを浄化するためのものである。排ガス浄化装置1は、第1酸化触媒を担持してなる第1触媒担持部41と、第2酸化触媒を担持してなる第2触媒担持部42とを有する。第1触媒担持部41は、第1酸化触媒によってCOよりもHCを優先的に酸化させることができるよう構成されており、かつ、第2触媒担持部42よりも排ガス流路11の上流側に配置されている。
【解決手段】排ガス浄化装置1は、内燃機関から排出される排ガスGの流路となる排ガス流路11に設けられ、排ガスG中に含まれる少なくともHC、CO及びNOxを浄化するためのものである。排ガス浄化装置1は、第1酸化触媒を担持してなる第1触媒担持部41と、第2酸化触媒を担持してなる第2触媒担持部42とを有する。第1触媒担持部41は、第1酸化触媒によってCOよりもHCを優先的に酸化させることができるよう構成されており、かつ、第2触媒担持部42よりも排ガス流路11の上流側に配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関から排出される排ガスを浄化するための排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等の内燃機関から排出される排ガス中に含まれる炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)等を浄化するための排ガス浄化用触媒を用いた排ガス浄化装置が知られている。
排ガス浄化用装置としては、例えば、排ガス浄化用触媒として貴金属である白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の三元触媒や、非貴金属である銅(Cu)等の酸化触媒を用いたものがある。また、排ガス浄化効率を高めるために、三元触媒と酸化触媒とを組み合わせて用いたものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−294150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記排ガス浄化装置において、貴金属を用いた三元触媒は、資源の枯渇や高コストといった問題があった。また、非貴金属を用いた酸化触媒は、貴金属を使用しないため安価であるが、酸化雰囲気(高酸素濃度雰囲気)ではCOとNOとの反応が起こり難くなり、NOxの浄化が不十分となってしまうという問題があった。
そのため、従来の三元触媒、酸化触媒等を単独で又は組み合わせて用いても、排ガス中のHC、CO及びNOxを効率よく浄化することができる安価な排ガス浄化装置を構築することはできなかった。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、排ガス中に含まれるHC、CO及びNOxを効率よく浄化することができる安価な排ガス浄化装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、内燃機関から排出される排ガスの流路となる排ガス流路に設けられ、上記排ガス中に含まれる少なくともHC、CO及びNOxを浄化するための排ガス浄化装置であって、
該排ガス浄化装置は、第1酸化触媒を担持してなる第1触媒担持部と、第2酸化触媒を担持してなる第2触媒担持部とを有し、
上記第1触媒担持部は、上記第1酸化触媒によってCOよりもHCを優先的に酸化させることができるよう構成されており、かつ、上記第2触媒担持部よりも上記排ガス流路の上流側に配置されていることを特徴とする排ガス浄化装置にある(請求項1)。
【0007】
第2の発明は、内燃機関から排出される排ガスの流路となる排ガス流路に設けられ、上記排ガス中に含まれる少なくともHC、CO及びNOxを浄化するための排ガス浄化装置であって、
該排ガス浄化装置は、第1酸化触媒及び第2酸化触媒をそれぞれ同一の触媒担体に担持してなる触媒担持体を有し、
上記第1酸化触媒は、COよりもHCを優先的に酸化させることができ、かつ、上記触媒担体上に担持された上記第2酸化触媒上に積層形成されていることを特徴とする排ガス浄化装置にある(請求項14)。
【発明の効果】
【0008】
上記第1の発明の排ガス浄化装置は、上記第1酸化触媒を担持してなる上記第1触媒担持部と、上記第2酸化触媒を担持してなる上記第2触媒担持部とを有する。そして、第1触媒担持部は、第1酸化触媒によってCOよりもHCを優先的に酸化させることができるよう構成されており、かつ、第2触媒担持部よりも排ガス流路の上流側に配置されている。このような構成とすることにより、排ガス中の有害成分であるHC、CO及びNOxを効率よく浄化することができる。
【0009】
すなわち、排ガス流路内を流通する排ガスは、まず、上流側に配置された第1触媒担持部を通過する。ここで、第1触媒担持部に担持された第1酸化触媒は、排ガス中のCOよりもHCを優先的に酸化させる性質を有する。そのため、第1酸化触媒によって排ガス中のHCを優先的かつ選択的に酸化(燃焼)させることができる。これにより、第1触媒担持部において排ガス中のHCを効率よく浄化することができると共に、HCの燃焼によって排ガス中の酸素を消費することができる。
【0010】
次いで、排ガスは、下流側に配置された第2触媒担持部を通過する。このとき、排ガスは、上流側の第1触媒担持部でのHCの燃焼によって酸素が消費されており、酸素濃度が低い状態となっている。そのため、第2触媒担持部に担持された第2酸化触媒によって、排ガス中に残っているCOとNOとを良好に反応させることができる。これにより、第2触媒担持部において排ガス中のCO及びNOを効率よく浄化することができる。
【0011】
よって、上記排ガス浄化装置は、上述のごとく、性質の異なる酸化触媒(第1酸化触媒及び第2酸化触媒)の組み合わせ及び配置によって排ガスを2段階に分けて浄化することにより、排ガス中の有害成分であるHC、CO及びNOxを効率よく浄化することができる。また、従来の三元触媒のような高価な貴金属を用いなくても、排ガス中のHC、CO及びNOxを効率よく浄化することが可能となるため、上記排ガス浄化装置を安価なものとすることができる。
【0012】
上記第2の発明の排ガス浄化装置は、上記第1酸化触媒及び上記第2酸化触媒をそれぞれ同一の触媒担体に担持してなる上記触媒担持体を有する。そして、第1酸化触媒は、COよりもHCを優先的に酸化させることができ、かつ、触媒担体上に担持された第2酸化触媒上に積層形成されている。このような構成とすることにより、排ガス中の有害成分であるHC、CO及びNOxを効率よく浄化することができる。
【0013】
すなわち、排ガス流路内を流通する排ガスは、まず、触媒担持体の触媒担体の表面において上側に配置された第1酸化触媒に接触する。ここで、第1酸化触媒は、排ガス中のCOよりもHCを優先的に酸化させる性質を有する。そのため、第1酸化触媒によって排ガス中のHCを優先的かつ選択的に酸化(燃焼)させることができる。これにより、排ガス中のHCを効率よく浄化することができると共に、HCの燃焼によって排ガス中の酸素を消費することができる。
【0014】
次いで、排ガスは、触媒担持体の触媒担体の表面において下側に配置された、つまり第1酸化触媒の下側に配置された第2酸化触媒まで拡散し、該第2酸化触媒に接触する。このとき、排ガスは、第2酸化触媒上に積層形成された第1酸化触媒に接触して通過してきたものであることから、HCの燃焼によって酸素が消費されており、酸素濃度が低い状態となっている。そのため、第2酸化触媒によって、排ガス中に残っているCOとNOとを良好に反応させることができる。これにより、排ガス中のCO及びNOを効率よく浄化することができる。
【0015】
よって、上記排ガス浄化装置は、上述のごとく、性質の異なる酸化触媒(第1酸化触媒及び第2酸化触媒)の組み合わせ及び積層配置によって排ガスを2段階に分けて浄化することにより、排ガス中の有害成分であるHC、CO及びNOxを効率よく浄化することができる。また、従来の三元触媒のような高価な貴金属を用いなくても、排ガス中のHC、CO及びNOxを効率よく浄化することが可能となるため、上記排ガス浄化装置を安価なものとすることができる。
【0016】
このように、上記第1及び第2の発明によれば、排ガス中に含まれるHC、CO及びNOxを効率よく浄化することができる安価な排ガス浄化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1における、排ガス浄化装置の構成を示す説明図。
【図2】実施例1における、(a)第1触媒担持部を示す説明図、(b)第1触媒担持部の径方向断面を示す説明図。
【図3】実施例1における、(a)第2触媒担持部を示す説明図、(b)第2触媒担持部の径方向断面を示す説明図。
【図4】実施例2における。排ガス浄化装置の構成を示す説明図。
【図5】実施例2における、(a)触媒担持体を示す説明図、(b)触媒担持体の上流側の径方向断面を示す説明図、(c)触媒担持体の下流側の径方向断面を示す説明図。
【図6】実施例3における、排ガス浄化装置の構成を示す説明図。
【図7】実施例3における、(a)触媒担持体を示す説明図、(b)触媒担持体の径方向断面を示す説明図。
【図8】実施例3における、触媒担持体の軸方向断面を示す説明図。
【図9】実施例4における、排ガス浄化装置(装置C1)の温度と三元ガス浄化率及び酸素濃度との関係を示すグラフ。
【図10】実施例4における、排ガス浄化装置(装置E1)の温度と三元ガス浄化率及び酸素濃度との関係を示すグラフ。
【図11】実施例5における、第1酸化触媒における各酸化物粒子の分散状態を示す説明図であって、アルミナ粒子と2種類の酸化物の粒子とからなる様子を示す説明図(a)、アルミナ粒子と固溶体の粒子からなる様子を示す説明図(b)。
【図12】実施例5における、第1酸化触媒を担持したハニカム構造体を排気管内に配置した様子を示す説明図。
【図13】実施例5における、第1酸化触媒(試料e1)の温度と、三元ガスの浄化率との関係を示す説明図。
【図14】実施例5における、第1酸化触媒(試料c1)の温度と、三元ガスの浄化率との関係を示す説明図。
【図15】実施例5における、排ガス浄化装置の温度と三元ガス浄化率及び酸素濃度との関係を示すグラフ。
【図16】実施例6における、第1酸化触媒(試料e2)の温度と、三元ガスの浄化率との関係を示す説明図。
【図17】実施例6における、第1酸化触媒(試料e3)の温度と、三元ガスの浄化率との関係を示す説明図。
【図18】実施例6における、第1酸化触媒(試料e4)の温度と、三元ガスの浄化率との関係を示す説明図。
【図19】実施例7における、第1酸化触媒(試料e5)の温度と、三元ガスの浄化率との関係を示す説明図。
【図20】実施例7における、第1酸化触媒(試料c2)の温度と、三元ガスの浄化率との関係を示す説明図。
【図21】実施例8における、第1酸化触媒における5価又は6価の遷移金属(W)の量と、炭化水素(HC)の浄化率が50%となるときの温度T50との関係を示す説明図。
【図22】実施例8における、第1酸化触媒における5価又は6価の遷移金属(W)の量と、炭化水素(HC)に対する酸化の選択性との関係を示す説明図。
【図23】実施例9における、第1酸化触媒(試料x1〜x5)におけるFeの2P3/2の結合エネルギーと、HCに対する浄化の選択性との関係を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上記第1及び第2の発明において、上記排ガス浄化装置は、自動車等の内燃機関から排出される排ガス中に含まれる有害成分であるHC、CO及びNOxを浄化するためのものである。
【0019】
また、上記第1酸化触媒は、Fe又はCrを主成分とすることが好ましい(請求項2、15)。
この場合には、第1酸化触媒によって排ガス中のHCを優先的かつ選択的に酸化(燃焼)させるという効果を十分に発揮することができる。
【0020】
なお、上記第1酸化触媒としては、例えば、Feを主成分とするものとして酸化鉄(Fe2O3、Fe3O4)や、酸化鉄/酸化タングステン、酸化鉄/酸化モリブデン、酸化鉄/酸化ニオブ、酸化鉄/酸化タンタル等の酸化鉄を含む合金が挙げられる。また、Crを主成分とするものとして酸化クロム(CrO)等が挙げられる。
【0021】
また、上記第1酸化触媒は、3d遷移金属の酸化物と5価又は6価の遷移金属の酸化物、又は3d遷移金属の酸化物の3d遷移金属の一部に5価又は6価の遷移金属が置換固溶してなる固溶体を含有することが好ましい(請求項3、16)。即ち、上記第1酸化触媒は、酸化鉄、酸化銅等の遷移金属酸化物(3d遷移金属酸化物)と、酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化タンタル等の遷移金属酸化物(5価又は6価の遷移金属酸化物)とを少なくとも含有するか、又は、酸化鉄、酸化銅等の遷移金属酸化物(3d遷移金属酸化物)における遷移金属の一部にニオブ、タングステン、モリブデン、タンタル等の5価又は6価の遷移金属が置換固溶した固溶体を少なくとも含有することが好ましい。
この場合には、上記第1酸化触媒は、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、及び窒素酸化物(NOx)を少なくとも含む例えば自動車の排気ガスなどの混合ガスにおいて、一酸化炭素及び窒素酸化物をほとんど酸化することなく、炭化水素を選択的に酸化するという効果をより十分に発揮することができる。なお、上記第1酸化触媒は、3d遷移金属の酸化物と5価又は6価の遷移金属の酸化物、又は上記固溶体のいずれか一方を含有してもよいが、3d遷移金属の酸化物と5価又は6価の遷移金属の酸化物、及び上記固溶体の両方を含有していてもよい。
【0022】
上記第1酸化触媒は、上記5価又は6価の遷移金属を、上記3d遷移金属に対して2.5atm〜100atm%含有することができる(請求項4、17)。
5価又は6価の遷移金属が上記3d遷移金属に対して2.5atm未満の場合には、炭化水素に対する選択的な酸化特性が低下するおそれがある。一方、100atm%を超える場合には、炭化水素に対する酸化特性自体が低下し、より高温での酸化が必要になるおそれがある。より好ましくは50atm%以下がよい。
【0023】
より具体的には、上記3d遷移金属が例えば後述のCuの場合には、上記5価又は6価の遷移金属を、上記3d遷移金属に対して2.5atm〜100atm%含有することができる。また、上記3d遷移金属が例えばFe、Co、Mn、Ni、又はTi等の場合には、上記5価又は6価の遷移金属を、上記3d遷移金属に対して2.5atm〜75atm%含有することが好ましい。
【0024】
また、上記第1酸化触媒において、上記3d遷移金属としては、例えばFe、Cu、Co、Mn、Ni、及びTi等から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
好ましくは、上記3d遷移金属は、Fe及び/又はCuであることがよい(請求項5、18)。
この場合には、炭化水素に対する選択的な酸化特性をより向上させることができる。より好ましくは、3d遷移金属は、Feであることがよい。
【0025】
また、上記5価又は6価の遷移金属は、W、Mo、Nb、及びTaから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい(請求項6、19)。
この場合には、上記第1酸化触媒の炭化水素に対する選択的な酸化特性をより向上させることができる。
【0026】
また、上記第1酸化触媒は、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、及び二酸化珪素から選ばれる少なくとも1種をさらに含有することが好ましい(請求項7、20)。
この場合には、上記第1酸化触媒を担持させ易くなる。
【0027】
上記第1酸化触媒中に含まれる上記3d遷移金属の酸化物、5価又は6価の遷移金属の酸化物、及び3d遷移金属の酸化物の3d遷移金属の一部に5価又は6価の遷移金属が置換固溶してなる固溶体の含有量は、10〜60質量%であることが好ましい(請求項8、21)。
上記3d遷移金属の酸化物、5価又は6価の遷移金属の酸化物、及び3d遷移金属の酸化物の3d遷移金属の一部に5価又は6価の遷移金属が置換固溶してなる固溶体の含有量が10質量%未満の場合には、上記第1酸化触媒がHCを十分に酸化して浄化させることが困難になるおそれがある。一方、60質量%を超える場合には、3d遷移金属の酸化物、5価又は6価の遷移金属の酸化物、及び上記固溶体が凝集し、性能が低下するおそれがある。
【0028】
上記のように、3d遷移金属の酸化物と5価又は6価の遷移金属の酸化物、又は3d遷移金属の酸化物の3d遷移金属の一部に5価又は6価の遷移金属が置換固溶してなる固溶体を含有する第1酸化触媒は、溶解工程と乾燥焼成工程とを行うことにより製造することができる。
上記溶解工程においては、3d遷移金属の塩と、5価又は6価の遷移金属の塩とを水に溶解させて遷移金属水溶液を得る。これにより、3d遷移金属(イオン)と5価又は6価の遷移金属(イオン)が均一に混じりあって水に溶解した遷移金属水溶液を得ることができる。
また、上記乾燥焼成工程においては、上記遷移金属水溶液を乾燥させ、焼成する。これにより、上記遷移金属水溶液中の3d遷移金属及び5価又は6価の遷移金属を酸化させ、3d遷移金属の酸化物と5価又は6価の遷移金属の酸化物、又は上記固溶体を少なくとも含有する第1酸化触媒を得ることができる。
【0029】
上記溶解工程において、3d遷移金属の塩及び5価又は6価の遷移金属の塩としては、水溶液中で3d遷移金属のイオン、5価又は6価の遷移金属のイオンを生成するものを採用することができる。また、後工程の乾燥焼成工程において、3d遷移金属、及び5価又は6価の遷移金属以外の成分(塩の陰イオン)は焼失するものであることが好ましい。
具体的には、3d遷移金属の塩、5価又は6価の遷移金属の塩としては、それぞれ、塩化物塩、硝酸塩、水酸化物、及びアンモニウム塩等を用いることができる。
【0030】
また、上記溶解工程においては、上記3d遷移金属に対する上記5価又は6価の遷移金属の量が2.5atm〜100atm%となるように上記3d遷移金属の塩と上記5価又は6価の遷移金属の塩とを水に溶解させることができる。
この場合には、炭化水素に対する選択的な酸化特性により優れると共に、より低温で炭化水素の酸化が可能な上記第1酸化触媒を製造することができる。より好ましくは上記3d遷移金属に対する上記5価又は6価の遷移金属の量は50atm%以下がよい。
【0031】
また、上記溶解工程において、上記3d遷移金属としては、上述のごとく例えばFe、Cu、Co、Mn、Ni、及びTi等から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。また、上記3d遷移金属は、Fe及び/又はCuであることがよく、上記5価又は6価の遷移金属は、W、Mo、Nb、及びTaから選ばれる少なくとも1種であることがよい。
これらの場合には、炭化水素に対する選択的な酸化特性をより向上させることができる。
【0032】
また、上記溶解工程においては、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、及び二酸化珪素から選ばれる少なくとも1種を水に添加することが好ましい。
この場合には、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、及び二酸化珪素から選ばれる少なくとも1種をさらに含有する上記第1酸化触媒を製造することができる。かかる第1酸化触媒は、例えばコージェライト等からなるハニカム体に担持させ易くなる。そのため、上記第1酸化触媒は、排ガス浄化装置に適用し易くなる。
【0033】
次に、乾燥焼成工程においては、上記遷移金属水溶液を乾燥させ、焼成する。
上記遷移金属水溶液の乾燥は、例えば温度80〜180℃で行うことができる。この乾燥により、水分を蒸発させることができる。上記乾燥焼成工程においては、乾燥後に得られる固形物を焼成する。焼成温度は、例えば温度300〜1050℃にすることができる。この焼成により、上記第1酸化触媒を得ることができる。
【0034】
また、3d遷移金属の酸化物と5価又は6価の遷移金属の酸化物、又は3d遷移金属の酸化物の3d遷移金属の一部に5価又は6価の遷移金属が置換固溶してなる固溶体を含有する上記第1酸化触媒は、上記溶解工程と上記乾燥焼成工程を行う方法の他に、次のようにして作製することもできる。
即ち、3d遷移金属の酸化物と、5価又は6価の遷移金属の酸化物とを混合して混合物を得る混合工程と、上記混合物を焼成する焼成工程とを行うことによって、上記第1酸化触媒を得ることができる。上記混合工程は、例えば水等の溶媒中で行うことができる。この場合には、上記焼成工程の前に溶媒を蒸発させる乾燥工程を行うことにより、乾燥後の固形分として上記混合物を得ることができる。
【0035】
また、上記第1酸化触媒は、次のようにして作製することもできる。
即ち、3d遷移金属の酸化物と5価又は6価の遷移金属の塩、又は3d遷移金属の塩と5価又は6価の遷移金属の酸化物を水中で混合し、酸化物と塩との混合液を得る混合工程と、上記混合液を乾燥させ、焼成する乾燥焼成工程とを行うことによって、上記第1酸化触媒を得ることができる。上記混合工程後に上記混合液を乾燥させると、3d遷移金属の酸化物の表面に5価又は6価の遷移金属の塩が析出した複合体、又は5価又は6価の遷移金属の酸化物の表面に3d遷移金属の塩が析出した複合体を得ることができる。この複合体を焼成することにより、上記第1酸化触媒を得ることができる。
【0036】
また、上記第2酸化触媒は、Cuを主成分とすることが好ましい(請求項9、22)。
この場合には、第2酸化触媒によって排ガス中のCOとNOとを良好に反応させるという効果を十分に発揮することができる。
【0037】
なお、上記第2酸化触媒としては、例えば、Cuを主成分とするものとして酸化銅(CuO)等が挙げられる。また、それ以外のものとしてコバルト・ランタン・マンガン系ペロブスカイト等が挙げられる。
【0038】
また、上記第1酸化触媒及び上記第2酸化触媒は、貴金属であるRu、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Ag、Auを含有していてもよい。
この場合には、排ガス中に含まれるHC、CO及びNOxをより一層効率よく浄化することができる。
【0039】
ただし、これらの貴金属は高価であるため、担持量が多いと高コストとなってしまい、安価な排ガス浄化装置を提供するという目的を達成することができない。そのため、これらの貴金属を用いる場合には、例えば、後述する触媒担体等に対する担持量を0.1μg/L以下と非常に少量とすることが望ましい。
【0040】
上記第1の発明において、上記第1触媒担持部及び上記第2触媒担持部は、上記第1酸化触媒及び上記第2酸化触媒をそれぞれ別々の触媒担体に担持してなる構成とすることができる(請求項10)。
この場合には、第1酸化触媒及び第2酸化触媒を担持させる触媒担体が別々となることから、第1酸化触媒及び第2酸化触媒を触媒担体に担持させる作業が容易となる。
【0041】
また、上記第1酸化触媒を担持させる触媒担体と上記第2酸化触媒を担持させる触媒担体とは、同じ材料からなる触媒担体を採用することもできるし、異なる材料からなる触媒担体を採用することもできる。
【0042】
また、上記第1触媒担持部及び上記第2触媒担持部は、上記第1酸化触媒及び上記第2酸化触媒をそれぞれ同一の触媒担体に担持してなる構成とすることができる(請求項11)。
この場合には、第1酸化触媒及び第2酸化触媒を担持させる触媒担体が1つとなることから、排ガス浄化装置の小型化を図ることができる。
【0043】
また、上記排ガス浄化装置では、上記排ガス流路の上流側に配置された上記第1触媒担持部に担持された上記第1酸化触媒によって、排ガス中のHCを優先的かつ選択的に酸化(燃焼)させる。これを良好に行うためには、例えば、上記第1触媒担持部を通過する排ガスの空燃比(A/F)がストイキ(A/F=14.6)を含む14.0〜15.0の範囲内であることが好ましい。
【0044】
また、上記排ガス浄化装置では、上記排ガス流路の下流側に配置された上記第2触媒担持部に担持された上記第2酸化触媒によって、排ガス中に残っているCOとNOとを良好に反応させることができる。これを良好に行うためには、例えば、上記第2触媒担持部における酸素濃度をできる限り低くすることが好ましく、具体的には、0.1%未満であることが好ましい。
【0045】
上記第1及び第2の発明において、上記触媒担体としては、例えば、コージェライト、SiC、ゼオライト、シリカ、アルミナ等のセラミックスからなる触媒担体を採用することができる。
【0046】
また、上記触媒担体は、多孔質のコージェライトセラミックスよりなることが好ましい(請求項12、23)。
この場合には、上記触媒担体は、熱膨張係数が低く、耐熱衝撃性に優れたものとなる。そのため、上記排ガス浄化装置は、高温下での使用においても、優れた耐久性を示すことができる。
【0047】
また、上記触媒担体は、ハニカム構造体よりなることが好ましい(請求項13、24)。
ここで、上記ハニカム構造体とは、例えば、ハニカム(蜂の巣)状のセル壁と該セル壁に囲まれた多数のセルとを有する構造のものである。この場合には、触媒担体の表面積を増やすことが可能であり、排ガスと触媒担体に担持されている第1酸化触媒及び第2酸化触媒との接触機会を増やすことができ、排ガスを効果的に浄化することができる。
【0048】
なお、上記ハニカム構造体の形状としては、種々の形状を採用することができるが、例えば円筒形状等とすることができる。また、上記セルの断面形状としては、種々の形状を採用することができるが、例えば三角形、四角形、六角形等とすることができる。
【実施例】
【0049】
(実施例1)
上記第1の発明の実施例にかかる排ガス浄化装置について説明する。
本例の排ガス浄化装置1は、図1〜図3に示すごとく、内燃機関から排出される排ガスGの流路となる排ガス流路11に設けられ、排ガスG中に含まれる少なくともHC、CO及びNOxを浄化するための排ガス浄化装置である。
排ガス浄化装置1は、第1酸化触媒21を担持してなる第1触媒担持部41と、第2酸化触媒22を担持してなる第2触媒担持部42とを有する。第1触媒担持部41は、第1酸化触媒21によってCOよりもHCを優先的に酸化させることができるよう構成されており、かつ、第2触媒担持部42よりも排ガス流路11の上流側に配置されている。
以下、これを詳説する。
【0050】
図1に示すごとく、排ガス浄化装置1は、自動車の内燃機関(エンジン)の排気管10内に形成された排ガス流路11に設けられている。
排ガス浄化装置1は、第1酸化触媒21(図2(b))を触媒担体31に担持してなる第1触媒担持部41と、第2酸化触媒22(図3(b))を触媒担体32に担持してなる第2触媒担持部42とを有する。そして、第1触媒担持部41は、第2触媒担持部42よりも排ガス流路11の上流側に配置されている。
【0051】
図2(a)、(b)に示すごとく、第1触媒担持部41は、第1酸化触媒21を触媒担体31に担持してなる触媒担持体により構成されている。
図3(a)、(b)に示すごとく、第2触媒担持部42は、第2酸化触媒22を第1酸化触媒21とは別の触媒担体32に担持してなる触媒担持体により構成されている。
すなわち、第1触媒担持部41及び第2触媒担持部42は、第1酸化触媒21及び第2酸化触媒22をそれぞれ別々の触媒担体31、32に担持してなる。
【0052】
図2(a)、図3(a)に示すごとく、触媒担体31、32は、コージェライトセラミックスからなる円筒形状のハニカム構造体により構成されている。触媒担体31、32は、四角形格子状に配された多孔質のセル壁311、321と、このセル壁311、321に囲まれた四角形状の多数のセル312、322とを有する。
【0053】
図2(b)、図3(b)に示すごとく、第1酸化触媒21及び第2酸化触媒22は、それぞれ触媒担体31、32のセル壁311、321の表面に担持されている。
第1酸化触媒21としては、COよりもHCを優先的に酸化させる性質を有する酸化触媒を用いる。本例では、第1酸化触媒21として、Feを主成分とする酸化鉄(Fe2O3、Fe3O4)を用いた。
第2酸化触媒22としては、従来から公知の酸化触媒を用いることができる。本例では、第2酸化触媒22として、Cuを主成分とする酸化銅(CuO)を用いた。
【0054】
次に、本例の排ガス浄化装置1の製造方法について説明する。
まず、排ガス浄化装置1における第1触媒担持部41(図2)及び第2触媒担持部42(図3)を作製する。
【0055】
第1触媒担持部41を作製するに当たっては、第1酸化触媒21の成分である酸化鉄を溶媒である水に分散させ、第1酸化触媒スラリーを作製する。次いで、第1酸化触媒スラリー中にハニカム構造体である触媒担体31を浸漬し、引き上げる。そして、触媒担体31に塗布された第1酸化触媒スラリーを乾燥させ、加熱する。
これにより、第1酸化触媒21を触媒担体31に担持してなる触媒担持体である第1触媒担持部41(図2)を得る。
【0056】
第2触媒担持部42を作製するに当たっては、第2酸化触媒22の成分である酸化銅を溶媒である水に分散させ、第2酸化触媒スラリーを作製する。次いで、第2酸化触媒スラリー中にハニカム構造体である触媒担体32を浸漬し、引き上げる。そして、触媒担体32に塗布された第2酸化触媒スラリーを乾燥させ、加熱する。
これにより、第2酸化触媒22を触媒担体32に担持してなる触媒担持体である第2触媒担持部42(図3)を得る。
【0057】
最後に、排ガス流路11において、第1触媒担持部41を上流側に配置し、第2触媒担持部42を下流側に配置する。
これにより、本例の排ガス浄化装置1(図1)を構築する。
【0058】
次に、本例の排ガス浄化装置1における作用効果について説明する。
本例の排ガス浄化装置1は、第1酸化触媒21を担持してなる第1触媒担持部41と、第2酸化触媒22を担持してなる第2触媒担持部42とを有する。そして、第1触媒担持部41は、第1酸化触媒21によってCOよりもHCを優先的に酸化させることができるよう構成されており、かつ、第2触媒担持部42よりも排ガス流路11の上流側に配置されている。このような構成とすることにより、排ガスG中の有害成分であるHC、CO及びNOxを効率よく浄化することができる。
【0059】
すなわち、排ガス流路11内を流通する排ガスGは、まず、上流側に配置された第1触媒担持部41を通過する。ここで、第1触媒担持部41に担持された第1酸化触媒21は、排ガスG中のCOよりもHCを優先的に酸化させる性質を有する。そのため、第1酸化触媒21によって排ガスG中のHCを優先的かつ選択的に酸化(燃焼)させることができる。これにより、第1触媒担持部41において排ガスG中のHCを効率よく浄化することができると共に、HCの燃焼によって排ガスG中の酸素を消費することができる。
【0060】
次いで、排ガスGは、下流側に配置された第2触媒担持部42を通過する。このとき、排ガスGは、上流側の第1触媒担持部41でのHCの燃焼によって酸素が消費されており、酸素濃度が低い状態となっている。そのため、第2触媒担持部42に担持された第2酸化触媒22によって、排ガスG中に残っているCOとNOとを良好に反応させることができる。これにより、第2触媒担持部42において排ガスG中のCO及びNOを効率よく浄化することができる。
【0061】
よって、排ガス浄化装置1は、上述のごとく、性質の異なる酸化触媒(第1酸化触媒21及び第2酸化触媒22)の組み合わせ及び配置によって排ガスGを2段階に分けて浄化することにより、排ガスG中の有害成分であるHC、CO及びNOxを効率よく浄化することができる。また、従来の三元触媒のような高価な貴金属を用いなくても、排ガスG中のHC、CO及びNOxを効率よく浄化することが可能となるため、排ガス浄化装置1を安価なものとすることができる。
【0062】
また、本例では、第1触媒担持部41及び第2触媒担持部42は、第1酸化触媒21及び第2酸化触媒22をそれぞれ別々の触媒担体31、32に担持してなる。つまり、第1酸化触媒21及び第2酸化触媒22を担持させる触媒担体が別々となることから、第1酸化触媒21及び第2酸化触媒22を触媒担体31、32に担持させる作業が容易となる。
【0063】
また、第1酸化触媒21は、Feを主成分とする酸化鉄である。そのため、第1酸化触媒21によって排ガスG中のHCを優先的かつ選択的に酸化(燃焼)させるという効果を十分に発揮することができる。
【0064】
また、第2酸化触媒22は、Cuを主成分とする酸化銅である。そのため、第2酸化触媒22によって排ガスG中のCOとNOとを良好に反応させるという効果を十分に発揮することができる。
【0065】
また、触媒担体31、32は、多孔質のコージェライトセラミックスよりなる。そのため、触媒担体31、32は、熱膨張係数が低く、耐熱衝撃性に優れたものとなる。これにより、排ガス浄化装置1は、高温下での使用においても、優れた耐久性を示すことができる。
【0066】
また、触媒担体31、32は、ハニカム構造体よりなる。そのため、触媒担体31、32の表面積を増やすことが可能であり、排ガスGと触媒担体31、32に担持されている第1酸化触媒21及び第2酸化触媒22との接触機会を増やすことができ、排ガスGを効果的に浄化することができる。
【0067】
このように、本例によれば、排ガスG中に含まれるHC、CO及びNOxを効率よく浄化することができる安価な排ガス浄化装置1を提供することができる。
【0068】
(実施例2)
本例は、図4、図5に示すごとく、実施例1の排ガス浄化装置1の構成を変更した例である。
本例の排ガス浄化装置1は、図4に示すごとく、第1酸化触媒21(図5(b))を触媒担体33に担持してなる第1触媒担持部41と、第2酸化触媒22(図5(c))を触媒担体33に担持してなる第2触媒担持部42とを有する触媒担持体4を備えている。
【0069】
図5(a)、(b)に示すごとく、第1触媒担持部41は、触媒担持体4において、第1酸化触媒21を触媒担体33の上流側に担持して形成されている。
図5(a)、(c)に示すごとく、第2触媒担持部42は、触媒担持体4において、第2酸化触媒22を触媒担体33の下流側に担持して形成されている。
すなわち、第1触媒担持部41及び第2触媒担持部42は、第1酸化触媒21及び第2酸化触媒22をそれぞれ同一の触媒担体33の上流側及び下流側に担持してなる。
【0070】
図5(a)に示すごとく、触媒担体33は、コージェライトセラミックスからなる円筒形状のハニカム構造体により構成されている。触媒担体33は、四角形格子状に配された多孔質のセル壁331と、このセル壁331に囲まれた四角形状の多数のセル332とを有する。
【0071】
図5(b)、(c)に示すごとく、第1酸化触媒21及び第2酸化触媒22は、それぞれ触媒担体33の上流側及び下流側において、セル壁331の表面に担持されている。
なお、第1酸化触媒21及び第2酸化触媒22としては、実施例1と同様のものを用いた。
その他は、実施例1と同様の構成である。
【0072】
次に、本例の排ガス浄化装置1の製造方法について説明する。
排ガス浄化装置1を製造するに当たっては、まず、触媒担持体4(図5)を作製する。
触媒担持体4を作製するに当たっては、第1酸化触媒21の成分である酸化鉄を溶媒である水に分散させ、第1酸化触媒スラリーを作製する。また、第2酸化触媒22の成分である酸化銅を溶媒である水に分散させ、第2酸化触媒スラリーを作製する。
【0073】
次いで、第1酸化触媒スラリー中にハニカム構造体である触媒担体33の上流側となる部分を浸漬し、引き上げる。そして、触媒担体33に塗布された第1酸化触媒スラリーを乾燥させる。
次いで、第2酸化触媒スラリー中に触媒担体33の下流側となる部分を浸漬し、引き上げる。そして、触媒担体33に塗布された第2触媒スラリーを乾燥させる。
【0074】
次いで、触媒担体33の上流側となる部分及び下流側となる部分に塗布された第1触媒スラリー及び第2触媒スラリーを加熱する。
これにより、触媒担体33の上流側に第1酸化触媒21が担持され、下流側に第2酸化触媒22が担持された触媒担持体4(図5)を得る。
【0075】
最後に、排ガス流路11において、第1触媒担持部41が上流側、第2触媒担持部42が下流側となるように触媒担持体4に配置する。
これにより、本例の排ガス浄化装置1(図4)を構築する。
【0076】
本例の場合には、第1触媒担持部41及び第2触媒担持部42は、第1酸化触媒21及び第2酸化触媒22をそれぞれ同一の触媒担体33に担持してなる。そのため、第1酸化触媒21及び第2酸化触媒22を担持させる触媒担体が1つとなることから、排ガス浄化装置1の小型化を図ることができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0077】
(実施例3)
上記第2の発明の実施例にかかる排ガス浄化装置について、図を用いて説明する。
本例の排ガス浄化装置1は、図6、図7に示すごとく、内燃機関から排出される排ガスGの流路となる排ガス流路11に設けられ、排ガスG中に含まれる少なくともHC、CO及びNOxを浄化するための排ガス浄化装置である。
排ガス浄化装置1は、第1酸化触媒21及び第2酸化触媒22をそれぞれ同一の触媒担体34に担持してなる触媒担持体5を有する。第1酸化触媒21は、COよりもHCを優先的に酸化させることができ、かつ、触媒担体34上に担持された第2酸化触媒22上に積層形成されている。
以下、これを詳説する。
【0078】
図6に示すごとく、排ガス浄化装置1は、自動車の内燃機関(エンジン)の排気管10内に形成された排ガス流路11に設けられている。
排ガス浄化装置1は、第1酸化触媒21(図7(b))及び第2酸化触媒22(図7(b))を触媒担体34に担持してなる触媒担持体5を備えている。
【0079】
図7(a)に示すごとく、触媒担体34は、コージェライトセラミックスからなる円筒形状のハニカム構造体により構成されている。触媒担体34は、四角形格子状に配された多孔質のセル壁341と、このセル壁341に囲まれた四角形状の多数のセル342とを有する。
【0080】
図7(b)に示すごとく、第1酸化触媒21及び第2酸化触媒22は、触媒担体34のセル壁341の表面において、互いに積層した状態で担持されている。すなわち、触媒担体34のセル壁341の表面上には、第2酸化触媒22が形成されている。また、第2酸化触媒22上には、第1酸化触媒21が形成されている。
【0081】
第1酸化触媒21としては、COよりもHCを優先的に酸化させる性質を有する酸化触媒を用いる。本例では、第1酸化触媒21として、Feを主成分とする酸化鉄(Fe2O3、Fe3O4)を用いた。
第2酸化触媒22としては、従来から公知の酸化触媒を用いることができる。本例では、第2酸化触媒22として、Cuを主成分とする酸化銅(CuO)を用いた。
【0082】
次に、本例の排ガス浄化装置1の製造方法について説明する。
まず、排ガス浄化装置1における触媒担持体5(図7)を作製する。
触媒担持体5を作製するに当たっては、第1酸化触媒21の成分である酸化鉄を溶媒である水に分散させ、第1酸化触媒スラリーを作製する。また、第2酸化触媒22の成分である酸化銅を溶媒である水に分散させ、第2酸化触媒スラリーを作製する。
【0083】
次いで、第2酸化触媒スラリー中にハニカム構造体である触媒担体34全体を浸漬し、引き上げる。そして、触媒担体34に塗布された第2酸化触媒スラリーを乾燥させる。
次いで、第1酸化触媒スラリー中に触媒担体34全体を浸漬し、引き上げる。そして、触媒担体34に塗布された第1触媒スラリーを乾燥させる。
【0084】
次いで、触媒担体34に積層して塗布された第1触媒スラリー及び第2触媒スラリーを加熱する。
これにより、触媒担体34上に第1酸化触媒21及び第2酸化触媒22が積層状態で担持された触媒担持体5(図7)を得る。
【0085】
最後に、排ガス流路11において、触媒担持体5を配置する。
これにより、本例の排ガス浄化装置1(図6)を構築する。
【0086】
次に、本例の排ガス浄化装置1における作用効果について説明する。
本例の排ガス浄化装置1は、第1酸化触媒21及び第2酸化触媒22をそれぞれ同一の触媒担体34に担持してなる触媒担持体5を有する。そして、第1酸化触媒21は、COよりもHCを優先的に酸化させることができ、かつ、触媒担体34上に担持された第2酸化触媒22上に積層形成されている。このような構成とすることにより、排ガスG中の有害成分であるHC、CO及びNOxを効率よく浄化することができる。
【0087】
すなわち、排ガス流路11内を流通する排ガスGは、まず、図8に示すごとく、触媒担持体5の触媒担体34の表面において上側に配置された第1酸化触媒21に接触する(図中の排ガスG1)。ここで、第1酸化触媒21は、排ガスG中のCOよりもHCを優先的に酸化させる性質を有する。そのため、第1酸化触媒21によって排ガスG中のHCを優先的かつ選択的に酸化(燃焼)させることができる。これにより、排ガスG中のHCを効率よく浄化することができると共に、HCの燃焼によって排ガスG中の酸素を消費することができる。
【0088】
次いで、排ガスGは、同図に示すごとく、触媒担持体5の触媒担体34の表面において下側に配置された、つまり第1酸化触媒21の下側に配置された第2酸化触媒22まで拡散し、その第2酸化触媒22に接触する(図中の排ガスG2)。このとき、排ガスGは、第2酸化触媒22上に積層形成された第1酸化触媒21に接触して通過してきたものであることから、HCの燃焼によって酸素が消費されており、酸素濃度が低い状態となっている。そのため、第2酸化触媒22によって、排ガスG中に残っているCOとNOとを良好に反応させることができる。これにより、排ガスG中のCO及びNOを効率よく浄化することができる。
【0089】
よって、排ガス浄化装置1は、上述のごとく、性質の異なる酸化触媒(第1酸化触媒21及び第2酸化触媒22)の組み合わせ及び積層配置によって排ガスGを2段階に分けて浄化することにより、排ガスG中の有害成分であるHC、CO及びNOxを効率よく浄化することができる。また、従来の三元触媒のような高価な貴金属を用いなくても、排ガスG中のHC、CO及びNOxを効率よく浄化することが可能となるため、排ガス浄化装置1を安価なものとすることができる。
【0090】
また、本例では、第1酸化触媒21は、Feを主成分とする酸化鉄である。そのため、第1酸化触媒21によって排ガスG中のHCを優先的かつ選択的に酸化(燃焼)させるという効果を十分に発揮することができる。
【0091】
また、第2酸化触媒22は、Cuを主成分とする酸化銅である。そのため、第2酸化触媒22によって排ガスG中のCOとNOとを良好に反応させるという効果を十分に発揮することができる。
【0092】
また、触媒担体34は、多孔質のコージェライトセラミックスよりなる。そのため、触媒担体34は、熱膨張係数が低く、耐熱衝撃性に優れたものとなる。これにより、排ガス浄化装置1は、高温下での使用においても、優れた耐久性を示すことができる。
【0093】
また、触媒担体34は、ハニカム構造体よりなる。そのため、触媒担体34の表面積を増やすことが可能であり、排ガスGと触媒担体34に担持されている第1酸化触媒21及び第2酸化触媒22との接触機会を増やすことができ、排ガスGを効果的に浄化することができる。
【0094】
このように、本例によれば、排ガスG中に含まれるHC、CO及びNOxを効率よく浄化することができる安価な排ガス浄化装置1を提供することができる。
【0095】
(実施例4)
本例は、本発明の排ガス浄化装置の効果を示す実験例である。
本例では、本発明の排ガス浄化装置(E1)と、比較としての従来の排ガス浄化装置(C1)を準備し、それぞれに対して排ガス浄化性能を評価した。
【0096】
排ガス浄化装置E1は、実施例1と同様の排ガス浄化装置である。すなわち、排ガス浄化装置E1は、上流側に第1酸化触媒(COよりもHCを優先的に酸化させる性質を有する)としての酸化鉄を触媒担体に担持した触媒担持体(第1触媒担持部)を配置し、下流側に第2酸化触媒としての酸化銅を触媒担体に担持した触媒担持体(第2触媒担持部)を配置したものである(図1〜図3参照)。
【0097】
排ガス浄化装置C1は、酸化触媒としての酸化銅を触媒担体に担持した触媒担持体のみを配置したものである。つまり、排ガス浄化装置E1から上流側に配置した触媒担持体(第1触媒担持部)を除いたものと同様である。
【0098】
なお、排ガス浄化装置E1、C1において、触媒担体としては、多孔質のコージェライトセラミックスよりなるハニカム構造体を用いた。ハニカム構造体は、外径30mm、長さ50mmの大きさのものを用いた。また、ハニカム構造体に対する触媒の担持量は、100g/Lとした。
【0099】
次に、排ガス浄化性能の評価方法について説明する。
まず、準備した排ガス浄化装置E1、C1に対して、排気管内に排ガスを20L/分の流量で流通させる。排ガス中の三元ガス濃度は、CO:4600ppm、HC:1700ppm、NO:2500ppmとした。
【0100】
次いで、排ガス浄化装置E1、C1に流入させる排ガスの温度を昇温速度20℃/分の条件で室温から徐々に温度を上げていく。そして、排ガス浄化装置E1、C1を通過した後の排ガス中に含まれる三元ガス(CO、HC、NO)の浄化率を測定すると共に、排ガス浄化装置E1、C1を通過した後の排ガスの酸素濃度を測定した。
【0101】
次に、測定結果を図9、図10に示す。同図は、排ガス浄化装置E1、C1に流入させる排ガスの温度(℃)と、排ガス浄化装置E1、C1を通過した後の排ガスの三元ガスの浄化率(%)及び酸素濃度(%)との関係を示したものである。
図9に示すごとく、従来の排ガス浄化装置C1は、酸素濃度が0.1%となった時点の温度が約439℃であり、NOの浄化率が10%となった時点の温度T10もほぼ同様の温度である。
【0102】
一方、図10に示すごとく、本発明の排ガス浄化装置E1は、酸素濃度が0.1%となった時点の温度が約406℃であり、NOの浄化率が10%となった時点の温度T10もほぼ同様の温度である。どちらも従来の排ガス浄化装置C1に比べて温度が低くなっている。
このことから、本発明の排ガス浄化装置E1は、上流側の第1酸化触媒によって排ガス中のHCを優先的かつ選択的に酸化(燃焼)させ、より低い温度で酸素濃度が低い状態を作り出していることがわかる。そして、下流側の第2酸化触媒によって排ガス中のCOとNOとを良好に反応させ、これらを効率よく浄化していることがわかる。特に、排ガス中のNOをより低い温度で効率よく浄化することができ、NOの浄化性能が高いことがわかる。
【0103】
以上の結果から、本発明の排ガス浄化装置は、排ガス流路の上流側及び下流側に2段階で酸化触媒を配置し、その上流側の酸化触媒としてCOよりもHCを優先的に酸化させる性質を有するものを用いることにより、排ガス中に含まれるHC、CO及びNOx(特にNOx)を効率よく浄化することができることがわかった。
【0104】
(実施例5)
本例は、実施例1の排ガス浄化装置における第1酸化触媒を変更した例である。
図11(a)及び(b)に示すごとく、本例の第1酸化触媒21は、3d遷移金属の酸化物211と5価又は6価の遷移金属の酸化物212、又は3d遷移金属の酸化物の3d遷移金属の一部に5価又は6価の遷移金属が置換固溶してなる固溶体213を少なくとも含有する。本例においては、3d遷移金属がFe、5価又は6価の遷移金属がWである第1酸化触媒21を用いる。
また、本例の第1酸化触媒21は、酸化アルミニウム210をさらに含有する。
【0105】
本例の第1酸化触媒の製造にあたっては、溶解工程と乾燥焼成工程とを行う。
本例の溶解工程においては、3d遷移金属の塩と、5価又は6価の遷移金属の塩とを水に溶解させて遷移金属水溶液を得る。
また、乾燥焼成工程においては、遷移金属水溶液を乾燥させ、焼成する。
【0106】
以下、本例の第1酸化触媒の製造方法につき、詳細に説明する。
まず、Feに対するWの量が50atm%となる配合割合で、硝酸鉄とタングステン酸アンモニウムパラ5水和物とを水に溶解させた。得られた水溶液に、水に酸化アルミニウムを分散させたアルミナ分散液を添加した。ここで添加する酸化アルミニウム量は、焼成後に得られる酸化鉄と酸化アルミニウムとの重量比が1:3となるような配合割合に調整した。
【0107】
次いで、水溶液を温度120℃で乾燥させ、水分を除去して固形物を得た。この固形物を温度600℃で焼成し、第1酸化触媒の粉末を得た。これを試料e1とする。
X線回折(XRD)による分析結果から、本例の第1酸化触媒1(試料e1)は、酸化鉄(3d遷移金属の酸化物211)と酸化タングステン(5価又は6価の遷移金属の酸化物212)とを含有すると共に、酸化鉄の一部は、その鉄の一部にタングステンが固溶した固溶体213を形成していると考えられる(図1(a)及び(b))。
【0108】
次に、本例において作製した第1酸化触媒21を、実施例1と同様に触媒担体31に担持して第1触媒担持部41を構成し、その排ガスに対する浄化性能を評価する(図2(a)及び(b)参照)。
第1触媒担持部41は、本例で作製した第1酸化触媒21を用いた点を除いては、実施例1と同様にして作製することができる。
即ち、図2(a)及び(b)に示すごとく、第1触媒担持部41は、第1酸化触媒21を触媒担体31に担持してなる触媒担持体により構成されている。そして、触媒担体31は、コージェライトセラミックスからなる円筒形状のハニカム構造体により構成されている。触媒担体31は、四角形格子状に配された多孔質のセル壁311と、このセル壁311に囲まれた四角形状の多数のセル312とを有する。
【0109】
次に、第1触媒担持部41の排ガスに対する浄化性能を評価するために、図12に示すごとく、第1触媒担持部41を単独で排気管10内に配置し、排気管10内に流量20L/分で排ガスGを流通させた。第1触媒担持部41に流入させる排ガスG(G0)中の三元ガス(CO、HC、NO)の濃度は、それぞれCO:4600ppm、HC:1700ppm、NO:2500ppmとした。
【0110】
次いで、第1触媒担持部41に流入させる排ガスGの温度を昇温速度20℃/分で室温から徐々に上昇させた。そして、第1触媒担持部41を通過した後の排ガスG(G1)中に含まれる各三元ガスの浄化率(%)を測定した。
各三元ガスの浄化率は、第1触媒担持部41を通過する前の排ガスG(G0)中における各三元ガスの濃度と第1触媒担持部41を通過した後の排ガスG(G1)中における各三元ガスの濃度との差を求めると共に、この差を、第1触媒担持部41を通過する前の排ガスG(G0)中における各三元ガスの濃度で除し、100分率で表すことにより算出することができる。その結果を図13に示す。図13において、横軸は排ガスの温度(℃)を示し、縦軸は浄化率(%)を示す。なお、排ガスG中に含まれる各三元ガスの濃度は、HORIBA製のMEXA1500Dにより測定した。
【0111】
また、本例においては試料e1の比較用として、酸化鉄からなる酸化触媒を準備した。
かかる酸化触媒は、酸化鉄と酸化アルミニウムとを重量比が1:3となるような配合割合で水中に混合し、乾燥し温度600℃で加熱して得られたものである。これを試料c1とする。
試料c1についても、試料e1と同様にしてこれをハニカム構造体からなる触媒担体に担持し、排ガス(三元ガス)に対する浄化性能を評価した。その結果を図14に示す。図14において、横軸は排ガスの温度(℃)を示し、縦軸は浄化率(%)を示す。
【0112】
図13及び図14より知られるごとく、試料e1及び試料c1は、排ガス中のHCを酸化して浄化できることがわかる。
試料c1においては、比較的低温領域において、HCを選択的に酸化し、浄化できるものの、温度450℃を超えたあたりからCOも浄化され、さらに温度550℃を超えたあたりからNOも浄化されている(図14参照)。これに対し、図13に示すごとく、試料e1においては、広い温度領域においてHCを酸化して浄化する一方、CO及びNOについてはほとんど浄化していない。
したがって、試料e1の第1酸化触媒は、炭化水素(HC)をより選択的に酸化して浄化できることがわかる。
【0113】
次に、第1酸化触媒として上記試料e1を用いた点を除いては、実施例1と同様にして、第1酸化触媒を担持してなる第1触媒担持部と、第2酸化触媒を担持してなる第2触媒担持部とを有する排ガス浄化装置を構築した。
本例の排ガス浄化装置は、上流側に第1酸化触媒(試料e1)を触媒担体に担持した触媒担持体(第1触媒担持部)を配置し、下流側に第2酸化触媒としての酸化銅を触媒担体に担持した触媒担持体(第2触媒担持部)を配置したものである(図1〜図3参照)。触媒担体としては、多孔質のコージェライトセラミックスよりなるハニカム構造体を用いた。ハニカム構造体は、外径30mm、長さ50mmの大きさのものを用いた。また、ハニカム構造体に対する触媒の担持量は、100g/Lとした。
【0114】
次に、本例の排ガス浄化装置について、実施例4と同様にして排ガス浄化性能の評価を行った。
具体的には、まず、排ガス浄化装置に対して、排気管内に排ガスを20L/分の流量で流通させる。排ガス中の三元ガス濃度は、CO:4600ppm、HC:1700ppm、NO:2500ppmとした。次いで、排ガス浄化装置に流入させる排ガスの温度を昇温速度20℃/分の条件で室温から徐々に温度を上げていく。そして、排ガス浄化装置を通過した後の排ガス中に含まれる三元ガス(CO、HC、NO)の浄化率を測定すると共に、排ガス浄化装置を通過した後の排ガスの酸素濃度を測定した。その測定結果を図15に示す。同図は、排ガス浄化装置に流入させる排ガスの温度(℃)と、排ガス浄化装置通過した後の排ガスの三元ガスの浄化率(%)及び酸素濃度(%)との関係を示したものである。
【0115】
図15に示すごとく、本例において作製した試料e1を第1酸化触媒として用いた排ガス浄化装置は、酸素濃度が0.1%となった時点の温度が約400℃であり、NOの浄化率が10%となった時点の温度T10もほぼ同様の温度であった。この結果は、第1酸化触媒として酸化鉄を用いた場合(図10参照)に比べてもさらに低くなっている。
【0116】
このことから、試料e1、即ち、3d遷移金属の酸化物と5価又は6価の遷移金属の酸化物、又は3d遷移金属の酸化物の3d遷移金属の一部に5価又は6価の遷移金属が置換固溶してなる固溶体を含有する第1酸化触媒を用いた排ガス浄化装置は、上流側の第1酸化触媒によって排ガス中のHCをより一層優先的かつ選択的に酸化(燃焼)させ、より低い温度で酸素濃度が低い状態を作り出していることがわかる。そして、下流側の第2酸化触媒によって排ガス中のCOとNOとを良好に反応させ、これらを効率よく浄化していることがわかる。特に、排ガス中のNOをより低い温度で効率よく浄化することができ、NOの浄化性能が高いことがわかる。
【0117】
また、本例の第1酸化触媒(試料e1)を用いて、実施例1だけでなく、実施例2及び3に示す各排ガス浄化装置を構築することもできる。この場合にも、排ガスG中に含まれるHC、CO及びNOxを効率よく浄化することができる安価な排ガス浄化装置を提供することができる。
【0118】
(実施例6)
実施例5においては、3d遷移金属がFeで、5価又は6価の遷移金属がWである第1酸化触媒を製造したが、本例においては、3d遷移金属がFeで、5価又は6価の遷移金属がMo、Nb、又はTaである3種類の第1酸化触媒(試料e2〜e4)をそれぞれ作製する。
本例において、試料e2が5価又は6価の遷移金属としてMoを用いた第1酸化触媒であり、試料e3が5価又は6価の遷移金属としてNbを用いた第1酸化触媒であり、試料e4が5価又は6価の遷移金属としてTaを用いた第1酸化触媒である。
【0119】
各試料e2〜試料e4は、実施例5における塩化タングステンの代わりに、それぞれ塩化モリブデン、塩化ニオブ、塩化タンタルを用いた点を除いては、実施例5の試料e1と同様にして作製した。
XRDによる分析結果から、各第1酸化触媒(試料e2〜試料e4)は、酸化鉄と、それぞれ酸化モリブデン、酸化ニオブ、又は酸化タンタルとを含有すると共に、酸化鉄の一部は、その鉄の一部にそれぞれモリブデン、ニオブ、又はタンタルが固溶した固溶体を形成していると考えられる。
【0120】
次に、実施例5の試料e1と同様に、各試料e2〜試料e4の第1酸化触媒を触媒担体に担持し、排ガス(三元ガス)に対する浄化性能の評価を行った。その結果を図16〜図18に示す。図16が試料e2の結果、図17が試料e3の結果、図18が試料e4の結果である。図16〜図18において、横軸は排ガスの温度(℃)を示し、縦軸は浄化率(%)を示す。
【0121】
図16〜図18より知られるごとく、試料e2〜試料e4の第1酸化触媒は、実施例5の試料e1と同様に、HCを酸化して浄化する一方、CO及びNOについてはほとんど浄化していないことがわかる。
【0122】
したがって、本例によれば、実施例1のWだけでなく、Mo、Nb、及びTa等の5価又は6価の遷移金属を用いても、炭化水素をより選択的に酸化して浄化できる第1酸化触媒を製造できることがわかる。
そして、本例の第1酸化触媒(試料e2〜試料e4)を用いて、実施例1〜3に示す各排ガス浄化装置を構築することにより、排ガスG中に含まれるHC、CO及びNOxを効率よく浄化することができる安価な排ガス浄化装置を提供することができる。
【0123】
(実施例7)
実施例5においては、3d遷移金属としてFeを用いて第1酸化触媒を製造したが、本例は、3d遷移金属としてCuを用いて第1酸化触媒(試料e5)を製造する例である。
【0124】
本例の第1酸化触媒は、実施例5の硝酸鉄の代わりに、硝酸銅を用いた点を除いては、実施例5の試料e1と同様にして作製した。これを試料e5とする。
XRDによる分析結果から、本例の第1酸化触媒(試料e5)は、酸化銅と、それぞれ酸化タングステンとを含有すると共に、酸化銅の一部は、その銅原子の一部にタングステンが固溶した固溶体を形成していると考えられる。
【0125】
次に、実施例5の試料e1と同様に、試料e5の第1酸化触媒を触媒担体に担持し、排ガス(三元ガス)に対する浄化性能の評価を行った。その結果を図19に示す。図19において、横軸は排ガスの温度(℃)を示し、縦軸は浄化率(%)を示す。
【0126】
また、本例においては、試料e5の比較用として、酸化銅からなる酸化触媒(試料c2)を準備した。
かかる酸化触媒は、酸化銅と酸化アルミニウムとを重量比が1:3となるような配合割合で水中に混合し、乾燥し温度600℃で加熱して得られたものである。これを試料c2とする。
試料c2についても、触媒担体に担持し、排ガス(三元ガス)に対する浄化性能を評価した。その結果を図20に示す。図20において、横軸は排ガスの温度(℃)を示し、縦軸は浄化率(%)を示す。
【0127】
図19及び図20より知られるごとく、試料e5及び試料c2は、排ガス中のHCを酸化して浄化できることがわかる。また、試料c2においては、HCだけでなくCO及びNOも浄化されている(図20参照)。これに対し、図19に示すごとく、試料e5においては、試料c2よりも優れた浄化性能でHCを浄化する一方、試料c2比べてCO及びNOに対する浄化が抑制されている。
【0128】
したがって、本例によれば、実施例5のようにFeだけでなく、Cu等の3d遷移金属を用いても、炭化水素を選択的に酸化して浄化できる第1酸化触媒を製造できることがわかる。
そして、本例の第1酸化触媒(試料e5)を用いて、実施例1〜3に示す各排ガス浄化装置を構築することにより、排ガスG中に含まれるHC、CO及びNOxを効率よく浄化することができる安価な排ガス浄化装置を提供することができる。
【0129】
(実施例8)
本例は、実施例5の試料e1とは、5価又は6価の遷移金属(W)の量の異なる複数の第1酸化触媒を作製し、そのHCに対する選択的な浄化性能を評価する例である。
具体的には、まず、Feに対するWの量を変えて異なる配合割合で硝酸鉄と塩化タングステンとを水に溶解させた。次いで、実施例5と同様に、水溶液にアルミナ分散液を添加し、乾燥後焼成してW量が異なる複数の第1酸化触媒を作製した。
【0130】
次に、実施例5と同様にして、各第1酸化触媒を触媒担体にそれぞれ担持し、排ガス(三元ガス)に対する浄化性能の評価を行った。そして、本例においては、各第1酸化触媒について、HCの変化量(浄化率)が50%になるときの温度T50(℃)を求めた。その結果を図21に示す。同図において、横軸はFeに対するWの添加量(atm%)を示し、縦軸はHCのT50(℃)を示す。
【0131】
また、本例においては、各第1酸化触媒について、HCに対する浄化の選択性を評価した。
選択性(%)は、次のようにして算出した。
具体的には、まず、実施例5の浄化性能の評価と同様に、本例の各第1酸化触媒をそれぞれ担持した各第1触媒担持部をそれぞれ排気管内に配置し、排気管内に流量20L/分で排ガスを流通させた。排ガス中の三元ガス(CO、HC、NO)の濃度は、CO:4600ppm、HC:1700ppm、NO:2500ppmとした。次いで、第1触媒担持部に流入させる排ガスの温度を600℃まで上昇させた。そして、温度600℃の条件下において、第1触媒担持部に担持された各第1酸化触媒による酸化によって浄化されたCO及びHCの浄化濃度を求めた。
CO及びHCの各浄化濃度は、第1触媒担持部を通過する前の排ガス中のCO及びHCの濃度と第1触媒担持部を通過した後の排ガス中のCO及びHCの濃度との差から求めることができる。
そして、COの浄化濃度をCCO(ppm)、HCの浄化濃度をCHC(ppm)とすると、選択性S(%)は、S=CHC/(CCO+CHC)×100という式から算出することができる。
その結果を図22に示す。同図において、横軸は各第1酸化触媒におけるFeに対するWの添加量(atm%)を示し、縦軸はHCの選択性(%)を示す。
【0132】
図21より知られるごとく、3d遷移金属であるFeに対する5価又は6価の遷移金属であるWの添加量が増大すると、HCを酸化して浄化するために必要な温度が高くなる傾向にあり、HCに対する酸化性能が低下することがわかる。図21より、W等の5価又は6価の遷移金属の添加量は、Feなどの3d遷移金属に対して100atm%以下が好ましいことがわかる。より好ましくは75atm%以下、さらにより好ましくは50atm%以下がよい。
【0133】
また、図22より知られるごとく、3d遷移金属であるFeに対する5価又は6価の遷移金属であるWの添加量が少なくなると、HCに対する選択的な浄化性能(選択性)が低下する傾向にあることがわかる。図22より、W等の5価又は6価の遷移金属の添加量は、Feなどの3d遷移金属に対して2.5atm%以上が好ましいことがわかる。
【0134】
このように、本例によれば、第1酸化触媒においては、5価又は6価の遷移金属の添加量を3d遷移金属に対して2.5atm〜100atm%にすることにより、3d遷移金属が本来有するHCに対する酸化性能を損ねることなく、HCに対する選択的な酸化性能を向上できることがわかる。
【0135】
(実施例9)
本例は、実施例5の試料e1とは、5価又は6価の遷移金属(W)の量の異なる複数の第1酸化触媒を作製し、Feの2P3/2の結合エネルギーとHCに対する浄化の選択性との関係を調べる例である。
具体的には、まず、Feに対するWの量を変えて異なる配合割合で硝酸鉄と塩化タングステンとを水に溶解させた。次いで、実施例5と同様に、水溶液にアルミナ分散液を添加し、乾燥後焼成してW量が異なる複数の第1酸化触媒を作製した。
本例においては、Feに対するWの添加量が0atm%、1.25atm%、2.5atm%、12.5atm%、25atm%の第1酸化触媒を作製した。これらをそれぞれ試料x1〜試料x5とする。
【0136】
このようにして作製した各第1酸化触媒(試料x1〜x5)においては、Feに固溶したW量が異なるため、Feの価数が異なる。
このFeの価数を調べるために、X線光電子分光分析装置(XPS)により、試料x1〜x5におけるFeの2P3/2の結合エネルギーを求めた。
【0137】
次に、実施例8と同様にして、各第1酸化触媒(試料x1〜x5)について、HCに対する浄化の選択性を評価した。
そして、各第1酸化触媒(試料x1〜x5)におけるFeの2P3/2の結合エネルギーと、HCに対する浄化の選択性との関係を図23に示す。同図において、横軸はFeの2P3/2の結合エネルギー(eV)を示し、縦軸はHCの選択性(選択率)(%)を示す。
【0138】
図23より知られるごとく、Feの2P3/2電子の結合エネルギーとHCに対する浄化の選択性には相関があることがわかる。即ち、Feの2P3/2電子の結合エネルギーの増大、即ちFeの高価数化により、HCに対する浄化の選択性が向上することがわかる。
したがって、Fe等の3d遷移金属に対するW等の5価又は6価の遷移金属の固溶量が増大することにより、HCに対する浄化の選択性をより向上できることがわかる。
【符号の説明】
【0139】
1 排ガス浄化装置
11 排ガス流路
41 第1触媒担持部
42 第2触媒担持部
G 排ガス
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関から排出される排ガスを浄化するための排ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等の内燃機関から排出される排ガス中に含まれる炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)等を浄化するための排ガス浄化用触媒を用いた排ガス浄化装置が知られている。
排ガス浄化用装置としては、例えば、排ガス浄化用触媒として貴金属である白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の三元触媒や、非貴金属である銅(Cu)等の酸化触媒を用いたものがある。また、排ガス浄化効率を高めるために、三元触媒と酸化触媒とを組み合わせて用いたものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−294150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記排ガス浄化装置において、貴金属を用いた三元触媒は、資源の枯渇や高コストといった問題があった。また、非貴金属を用いた酸化触媒は、貴金属を使用しないため安価であるが、酸化雰囲気(高酸素濃度雰囲気)ではCOとNOとの反応が起こり難くなり、NOxの浄化が不十分となってしまうという問題があった。
そのため、従来の三元触媒、酸化触媒等を単独で又は組み合わせて用いても、排ガス中のHC、CO及びNOxを効率よく浄化することができる安価な排ガス浄化装置を構築することはできなかった。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、排ガス中に含まれるHC、CO及びNOxを効率よく浄化することができる安価な排ガス浄化装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、内燃機関から排出される排ガスの流路となる排ガス流路に設けられ、上記排ガス中に含まれる少なくともHC、CO及びNOxを浄化するための排ガス浄化装置であって、
該排ガス浄化装置は、第1酸化触媒を担持してなる第1触媒担持部と、第2酸化触媒を担持してなる第2触媒担持部とを有し、
上記第1触媒担持部は、上記第1酸化触媒によってCOよりもHCを優先的に酸化させることができるよう構成されており、かつ、上記第2触媒担持部よりも上記排ガス流路の上流側に配置されていることを特徴とする排ガス浄化装置にある(請求項1)。
【0007】
第2の発明は、内燃機関から排出される排ガスの流路となる排ガス流路に設けられ、上記排ガス中に含まれる少なくともHC、CO及びNOxを浄化するための排ガス浄化装置であって、
該排ガス浄化装置は、第1酸化触媒及び第2酸化触媒をそれぞれ同一の触媒担体に担持してなる触媒担持体を有し、
上記第1酸化触媒は、COよりもHCを優先的に酸化させることができ、かつ、上記触媒担体上に担持された上記第2酸化触媒上に積層形成されていることを特徴とする排ガス浄化装置にある(請求項14)。
【発明の効果】
【0008】
上記第1の発明の排ガス浄化装置は、上記第1酸化触媒を担持してなる上記第1触媒担持部と、上記第2酸化触媒を担持してなる上記第2触媒担持部とを有する。そして、第1触媒担持部は、第1酸化触媒によってCOよりもHCを優先的に酸化させることができるよう構成されており、かつ、第2触媒担持部よりも排ガス流路の上流側に配置されている。このような構成とすることにより、排ガス中の有害成分であるHC、CO及びNOxを効率よく浄化することができる。
【0009】
すなわち、排ガス流路内を流通する排ガスは、まず、上流側に配置された第1触媒担持部を通過する。ここで、第1触媒担持部に担持された第1酸化触媒は、排ガス中のCOよりもHCを優先的に酸化させる性質を有する。そのため、第1酸化触媒によって排ガス中のHCを優先的かつ選択的に酸化(燃焼)させることができる。これにより、第1触媒担持部において排ガス中のHCを効率よく浄化することができると共に、HCの燃焼によって排ガス中の酸素を消費することができる。
【0010】
次いで、排ガスは、下流側に配置された第2触媒担持部を通過する。このとき、排ガスは、上流側の第1触媒担持部でのHCの燃焼によって酸素が消費されており、酸素濃度が低い状態となっている。そのため、第2触媒担持部に担持された第2酸化触媒によって、排ガス中に残っているCOとNOとを良好に反応させることができる。これにより、第2触媒担持部において排ガス中のCO及びNOを効率よく浄化することができる。
【0011】
よって、上記排ガス浄化装置は、上述のごとく、性質の異なる酸化触媒(第1酸化触媒及び第2酸化触媒)の組み合わせ及び配置によって排ガスを2段階に分けて浄化することにより、排ガス中の有害成分であるHC、CO及びNOxを効率よく浄化することができる。また、従来の三元触媒のような高価な貴金属を用いなくても、排ガス中のHC、CO及びNOxを効率よく浄化することが可能となるため、上記排ガス浄化装置を安価なものとすることができる。
【0012】
上記第2の発明の排ガス浄化装置は、上記第1酸化触媒及び上記第2酸化触媒をそれぞれ同一の触媒担体に担持してなる上記触媒担持体を有する。そして、第1酸化触媒は、COよりもHCを優先的に酸化させることができ、かつ、触媒担体上に担持された第2酸化触媒上に積層形成されている。このような構成とすることにより、排ガス中の有害成分であるHC、CO及びNOxを効率よく浄化することができる。
【0013】
すなわち、排ガス流路内を流通する排ガスは、まず、触媒担持体の触媒担体の表面において上側に配置された第1酸化触媒に接触する。ここで、第1酸化触媒は、排ガス中のCOよりもHCを優先的に酸化させる性質を有する。そのため、第1酸化触媒によって排ガス中のHCを優先的かつ選択的に酸化(燃焼)させることができる。これにより、排ガス中のHCを効率よく浄化することができると共に、HCの燃焼によって排ガス中の酸素を消費することができる。
【0014】
次いで、排ガスは、触媒担持体の触媒担体の表面において下側に配置された、つまり第1酸化触媒の下側に配置された第2酸化触媒まで拡散し、該第2酸化触媒に接触する。このとき、排ガスは、第2酸化触媒上に積層形成された第1酸化触媒に接触して通過してきたものであることから、HCの燃焼によって酸素が消費されており、酸素濃度が低い状態となっている。そのため、第2酸化触媒によって、排ガス中に残っているCOとNOとを良好に反応させることができる。これにより、排ガス中のCO及びNOを効率よく浄化することができる。
【0015】
よって、上記排ガス浄化装置は、上述のごとく、性質の異なる酸化触媒(第1酸化触媒及び第2酸化触媒)の組み合わせ及び積層配置によって排ガスを2段階に分けて浄化することにより、排ガス中の有害成分であるHC、CO及びNOxを効率よく浄化することができる。また、従来の三元触媒のような高価な貴金属を用いなくても、排ガス中のHC、CO及びNOxを効率よく浄化することが可能となるため、上記排ガス浄化装置を安価なものとすることができる。
【0016】
このように、上記第1及び第2の発明によれば、排ガス中に含まれるHC、CO及びNOxを効率よく浄化することができる安価な排ガス浄化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1における、排ガス浄化装置の構成を示す説明図。
【図2】実施例1における、(a)第1触媒担持部を示す説明図、(b)第1触媒担持部の径方向断面を示す説明図。
【図3】実施例1における、(a)第2触媒担持部を示す説明図、(b)第2触媒担持部の径方向断面を示す説明図。
【図4】実施例2における。排ガス浄化装置の構成を示す説明図。
【図5】実施例2における、(a)触媒担持体を示す説明図、(b)触媒担持体の上流側の径方向断面を示す説明図、(c)触媒担持体の下流側の径方向断面を示す説明図。
【図6】実施例3における、排ガス浄化装置の構成を示す説明図。
【図7】実施例3における、(a)触媒担持体を示す説明図、(b)触媒担持体の径方向断面を示す説明図。
【図8】実施例3における、触媒担持体の軸方向断面を示す説明図。
【図9】実施例4における、排ガス浄化装置(装置C1)の温度と三元ガス浄化率及び酸素濃度との関係を示すグラフ。
【図10】実施例4における、排ガス浄化装置(装置E1)の温度と三元ガス浄化率及び酸素濃度との関係を示すグラフ。
【図11】実施例5における、第1酸化触媒における各酸化物粒子の分散状態を示す説明図であって、アルミナ粒子と2種類の酸化物の粒子とからなる様子を示す説明図(a)、アルミナ粒子と固溶体の粒子からなる様子を示す説明図(b)。
【図12】実施例5における、第1酸化触媒を担持したハニカム構造体を排気管内に配置した様子を示す説明図。
【図13】実施例5における、第1酸化触媒(試料e1)の温度と、三元ガスの浄化率との関係を示す説明図。
【図14】実施例5における、第1酸化触媒(試料c1)の温度と、三元ガスの浄化率との関係を示す説明図。
【図15】実施例5における、排ガス浄化装置の温度と三元ガス浄化率及び酸素濃度との関係を示すグラフ。
【図16】実施例6における、第1酸化触媒(試料e2)の温度と、三元ガスの浄化率との関係を示す説明図。
【図17】実施例6における、第1酸化触媒(試料e3)の温度と、三元ガスの浄化率との関係を示す説明図。
【図18】実施例6における、第1酸化触媒(試料e4)の温度と、三元ガスの浄化率との関係を示す説明図。
【図19】実施例7における、第1酸化触媒(試料e5)の温度と、三元ガスの浄化率との関係を示す説明図。
【図20】実施例7における、第1酸化触媒(試料c2)の温度と、三元ガスの浄化率との関係を示す説明図。
【図21】実施例8における、第1酸化触媒における5価又は6価の遷移金属(W)の量と、炭化水素(HC)の浄化率が50%となるときの温度T50との関係を示す説明図。
【図22】実施例8における、第1酸化触媒における5価又は6価の遷移金属(W)の量と、炭化水素(HC)に対する酸化の選択性との関係を示す説明図。
【図23】実施例9における、第1酸化触媒(試料x1〜x5)におけるFeの2P3/2の結合エネルギーと、HCに対する浄化の選択性との関係を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上記第1及び第2の発明において、上記排ガス浄化装置は、自動車等の内燃機関から排出される排ガス中に含まれる有害成分であるHC、CO及びNOxを浄化するためのものである。
【0019】
また、上記第1酸化触媒は、Fe又はCrを主成分とすることが好ましい(請求項2、15)。
この場合には、第1酸化触媒によって排ガス中のHCを優先的かつ選択的に酸化(燃焼)させるという効果を十分に発揮することができる。
【0020】
なお、上記第1酸化触媒としては、例えば、Feを主成分とするものとして酸化鉄(Fe2O3、Fe3O4)や、酸化鉄/酸化タングステン、酸化鉄/酸化モリブデン、酸化鉄/酸化ニオブ、酸化鉄/酸化タンタル等の酸化鉄を含む合金が挙げられる。また、Crを主成分とするものとして酸化クロム(CrO)等が挙げられる。
【0021】
また、上記第1酸化触媒は、3d遷移金属の酸化物と5価又は6価の遷移金属の酸化物、又は3d遷移金属の酸化物の3d遷移金属の一部に5価又は6価の遷移金属が置換固溶してなる固溶体を含有することが好ましい(請求項3、16)。即ち、上記第1酸化触媒は、酸化鉄、酸化銅等の遷移金属酸化物(3d遷移金属酸化物)と、酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化タンタル等の遷移金属酸化物(5価又は6価の遷移金属酸化物)とを少なくとも含有するか、又は、酸化鉄、酸化銅等の遷移金属酸化物(3d遷移金属酸化物)における遷移金属の一部にニオブ、タングステン、モリブデン、タンタル等の5価又は6価の遷移金属が置換固溶した固溶体を少なくとも含有することが好ましい。
この場合には、上記第1酸化触媒は、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、及び窒素酸化物(NOx)を少なくとも含む例えば自動車の排気ガスなどの混合ガスにおいて、一酸化炭素及び窒素酸化物をほとんど酸化することなく、炭化水素を選択的に酸化するという効果をより十分に発揮することができる。なお、上記第1酸化触媒は、3d遷移金属の酸化物と5価又は6価の遷移金属の酸化物、又は上記固溶体のいずれか一方を含有してもよいが、3d遷移金属の酸化物と5価又は6価の遷移金属の酸化物、及び上記固溶体の両方を含有していてもよい。
【0022】
上記第1酸化触媒は、上記5価又は6価の遷移金属を、上記3d遷移金属に対して2.5atm〜100atm%含有することができる(請求項4、17)。
5価又は6価の遷移金属が上記3d遷移金属に対して2.5atm未満の場合には、炭化水素に対する選択的な酸化特性が低下するおそれがある。一方、100atm%を超える場合には、炭化水素に対する酸化特性自体が低下し、より高温での酸化が必要になるおそれがある。より好ましくは50atm%以下がよい。
【0023】
より具体的には、上記3d遷移金属が例えば後述のCuの場合には、上記5価又は6価の遷移金属を、上記3d遷移金属に対して2.5atm〜100atm%含有することができる。また、上記3d遷移金属が例えばFe、Co、Mn、Ni、又はTi等の場合には、上記5価又は6価の遷移金属を、上記3d遷移金属に対して2.5atm〜75atm%含有することが好ましい。
【0024】
また、上記第1酸化触媒において、上記3d遷移金属としては、例えばFe、Cu、Co、Mn、Ni、及びTi等から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。
好ましくは、上記3d遷移金属は、Fe及び/又はCuであることがよい(請求項5、18)。
この場合には、炭化水素に対する選択的な酸化特性をより向上させることができる。より好ましくは、3d遷移金属は、Feであることがよい。
【0025】
また、上記5価又は6価の遷移金属は、W、Mo、Nb、及びTaから選ばれる少なくとも1種であることが好ましい(請求項6、19)。
この場合には、上記第1酸化触媒の炭化水素に対する選択的な酸化特性をより向上させることができる。
【0026】
また、上記第1酸化触媒は、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、及び二酸化珪素から選ばれる少なくとも1種をさらに含有することが好ましい(請求項7、20)。
この場合には、上記第1酸化触媒を担持させ易くなる。
【0027】
上記第1酸化触媒中に含まれる上記3d遷移金属の酸化物、5価又は6価の遷移金属の酸化物、及び3d遷移金属の酸化物の3d遷移金属の一部に5価又は6価の遷移金属が置換固溶してなる固溶体の含有量は、10〜60質量%であることが好ましい(請求項8、21)。
上記3d遷移金属の酸化物、5価又は6価の遷移金属の酸化物、及び3d遷移金属の酸化物の3d遷移金属の一部に5価又は6価の遷移金属が置換固溶してなる固溶体の含有量が10質量%未満の場合には、上記第1酸化触媒がHCを十分に酸化して浄化させることが困難になるおそれがある。一方、60質量%を超える場合には、3d遷移金属の酸化物、5価又は6価の遷移金属の酸化物、及び上記固溶体が凝集し、性能が低下するおそれがある。
【0028】
上記のように、3d遷移金属の酸化物と5価又は6価の遷移金属の酸化物、又は3d遷移金属の酸化物の3d遷移金属の一部に5価又は6価の遷移金属が置換固溶してなる固溶体を含有する第1酸化触媒は、溶解工程と乾燥焼成工程とを行うことにより製造することができる。
上記溶解工程においては、3d遷移金属の塩と、5価又は6価の遷移金属の塩とを水に溶解させて遷移金属水溶液を得る。これにより、3d遷移金属(イオン)と5価又は6価の遷移金属(イオン)が均一に混じりあって水に溶解した遷移金属水溶液を得ることができる。
また、上記乾燥焼成工程においては、上記遷移金属水溶液を乾燥させ、焼成する。これにより、上記遷移金属水溶液中の3d遷移金属及び5価又は6価の遷移金属を酸化させ、3d遷移金属の酸化物と5価又は6価の遷移金属の酸化物、又は上記固溶体を少なくとも含有する第1酸化触媒を得ることができる。
【0029】
上記溶解工程において、3d遷移金属の塩及び5価又は6価の遷移金属の塩としては、水溶液中で3d遷移金属のイオン、5価又は6価の遷移金属のイオンを生成するものを採用することができる。また、後工程の乾燥焼成工程において、3d遷移金属、及び5価又は6価の遷移金属以外の成分(塩の陰イオン)は焼失するものであることが好ましい。
具体的には、3d遷移金属の塩、5価又は6価の遷移金属の塩としては、それぞれ、塩化物塩、硝酸塩、水酸化物、及びアンモニウム塩等を用いることができる。
【0030】
また、上記溶解工程においては、上記3d遷移金属に対する上記5価又は6価の遷移金属の量が2.5atm〜100atm%となるように上記3d遷移金属の塩と上記5価又は6価の遷移金属の塩とを水に溶解させることができる。
この場合には、炭化水素に対する選択的な酸化特性により優れると共に、より低温で炭化水素の酸化が可能な上記第1酸化触媒を製造することができる。より好ましくは上記3d遷移金属に対する上記5価又は6価の遷移金属の量は50atm%以下がよい。
【0031】
また、上記溶解工程において、上記3d遷移金属としては、上述のごとく例えばFe、Cu、Co、Mn、Ni、及びTi等から選ばれる少なくとも1種を用いることができる。また、上記3d遷移金属は、Fe及び/又はCuであることがよく、上記5価又は6価の遷移金属は、W、Mo、Nb、及びTaから選ばれる少なくとも1種であることがよい。
これらの場合には、炭化水素に対する選択的な酸化特性をより向上させることができる。
【0032】
また、上記溶解工程においては、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、及び二酸化珪素から選ばれる少なくとも1種を水に添加することが好ましい。
この場合には、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、及び二酸化珪素から選ばれる少なくとも1種をさらに含有する上記第1酸化触媒を製造することができる。かかる第1酸化触媒は、例えばコージェライト等からなるハニカム体に担持させ易くなる。そのため、上記第1酸化触媒は、排ガス浄化装置に適用し易くなる。
【0033】
次に、乾燥焼成工程においては、上記遷移金属水溶液を乾燥させ、焼成する。
上記遷移金属水溶液の乾燥は、例えば温度80〜180℃で行うことができる。この乾燥により、水分を蒸発させることができる。上記乾燥焼成工程においては、乾燥後に得られる固形物を焼成する。焼成温度は、例えば温度300〜1050℃にすることができる。この焼成により、上記第1酸化触媒を得ることができる。
【0034】
また、3d遷移金属の酸化物と5価又は6価の遷移金属の酸化物、又は3d遷移金属の酸化物の3d遷移金属の一部に5価又は6価の遷移金属が置換固溶してなる固溶体を含有する上記第1酸化触媒は、上記溶解工程と上記乾燥焼成工程を行う方法の他に、次のようにして作製することもできる。
即ち、3d遷移金属の酸化物と、5価又は6価の遷移金属の酸化物とを混合して混合物を得る混合工程と、上記混合物を焼成する焼成工程とを行うことによって、上記第1酸化触媒を得ることができる。上記混合工程は、例えば水等の溶媒中で行うことができる。この場合には、上記焼成工程の前に溶媒を蒸発させる乾燥工程を行うことにより、乾燥後の固形分として上記混合物を得ることができる。
【0035】
また、上記第1酸化触媒は、次のようにして作製することもできる。
即ち、3d遷移金属の酸化物と5価又は6価の遷移金属の塩、又は3d遷移金属の塩と5価又は6価の遷移金属の酸化物を水中で混合し、酸化物と塩との混合液を得る混合工程と、上記混合液を乾燥させ、焼成する乾燥焼成工程とを行うことによって、上記第1酸化触媒を得ることができる。上記混合工程後に上記混合液を乾燥させると、3d遷移金属の酸化物の表面に5価又は6価の遷移金属の塩が析出した複合体、又は5価又は6価の遷移金属の酸化物の表面に3d遷移金属の塩が析出した複合体を得ることができる。この複合体を焼成することにより、上記第1酸化触媒を得ることができる。
【0036】
また、上記第2酸化触媒は、Cuを主成分とすることが好ましい(請求項9、22)。
この場合には、第2酸化触媒によって排ガス中のCOとNOとを良好に反応させるという効果を十分に発揮することができる。
【0037】
なお、上記第2酸化触媒としては、例えば、Cuを主成分とするものとして酸化銅(CuO)等が挙げられる。また、それ以外のものとしてコバルト・ランタン・マンガン系ペロブスカイト等が挙げられる。
【0038】
また、上記第1酸化触媒及び上記第2酸化触媒は、貴金属であるRu、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Ag、Auを含有していてもよい。
この場合には、排ガス中に含まれるHC、CO及びNOxをより一層効率よく浄化することができる。
【0039】
ただし、これらの貴金属は高価であるため、担持量が多いと高コストとなってしまい、安価な排ガス浄化装置を提供するという目的を達成することができない。そのため、これらの貴金属を用いる場合には、例えば、後述する触媒担体等に対する担持量を0.1μg/L以下と非常に少量とすることが望ましい。
【0040】
上記第1の発明において、上記第1触媒担持部及び上記第2触媒担持部は、上記第1酸化触媒及び上記第2酸化触媒をそれぞれ別々の触媒担体に担持してなる構成とすることができる(請求項10)。
この場合には、第1酸化触媒及び第2酸化触媒を担持させる触媒担体が別々となることから、第1酸化触媒及び第2酸化触媒を触媒担体に担持させる作業が容易となる。
【0041】
また、上記第1酸化触媒を担持させる触媒担体と上記第2酸化触媒を担持させる触媒担体とは、同じ材料からなる触媒担体を採用することもできるし、異なる材料からなる触媒担体を採用することもできる。
【0042】
また、上記第1触媒担持部及び上記第2触媒担持部は、上記第1酸化触媒及び上記第2酸化触媒をそれぞれ同一の触媒担体に担持してなる構成とすることができる(請求項11)。
この場合には、第1酸化触媒及び第2酸化触媒を担持させる触媒担体が1つとなることから、排ガス浄化装置の小型化を図ることができる。
【0043】
また、上記排ガス浄化装置では、上記排ガス流路の上流側に配置された上記第1触媒担持部に担持された上記第1酸化触媒によって、排ガス中のHCを優先的かつ選択的に酸化(燃焼)させる。これを良好に行うためには、例えば、上記第1触媒担持部を通過する排ガスの空燃比(A/F)がストイキ(A/F=14.6)を含む14.0〜15.0の範囲内であることが好ましい。
【0044】
また、上記排ガス浄化装置では、上記排ガス流路の下流側に配置された上記第2触媒担持部に担持された上記第2酸化触媒によって、排ガス中に残っているCOとNOとを良好に反応させることができる。これを良好に行うためには、例えば、上記第2触媒担持部における酸素濃度をできる限り低くすることが好ましく、具体的には、0.1%未満であることが好ましい。
【0045】
上記第1及び第2の発明において、上記触媒担体としては、例えば、コージェライト、SiC、ゼオライト、シリカ、アルミナ等のセラミックスからなる触媒担体を採用することができる。
【0046】
また、上記触媒担体は、多孔質のコージェライトセラミックスよりなることが好ましい(請求項12、23)。
この場合には、上記触媒担体は、熱膨張係数が低く、耐熱衝撃性に優れたものとなる。そのため、上記排ガス浄化装置は、高温下での使用においても、優れた耐久性を示すことができる。
【0047】
また、上記触媒担体は、ハニカム構造体よりなることが好ましい(請求項13、24)。
ここで、上記ハニカム構造体とは、例えば、ハニカム(蜂の巣)状のセル壁と該セル壁に囲まれた多数のセルとを有する構造のものである。この場合には、触媒担体の表面積を増やすことが可能であり、排ガスと触媒担体に担持されている第1酸化触媒及び第2酸化触媒との接触機会を増やすことができ、排ガスを効果的に浄化することができる。
【0048】
なお、上記ハニカム構造体の形状としては、種々の形状を採用することができるが、例えば円筒形状等とすることができる。また、上記セルの断面形状としては、種々の形状を採用することができるが、例えば三角形、四角形、六角形等とすることができる。
【実施例】
【0049】
(実施例1)
上記第1の発明の実施例にかかる排ガス浄化装置について説明する。
本例の排ガス浄化装置1は、図1〜図3に示すごとく、内燃機関から排出される排ガスGの流路となる排ガス流路11に設けられ、排ガスG中に含まれる少なくともHC、CO及びNOxを浄化するための排ガス浄化装置である。
排ガス浄化装置1は、第1酸化触媒21を担持してなる第1触媒担持部41と、第2酸化触媒22を担持してなる第2触媒担持部42とを有する。第1触媒担持部41は、第1酸化触媒21によってCOよりもHCを優先的に酸化させることができるよう構成されており、かつ、第2触媒担持部42よりも排ガス流路11の上流側に配置されている。
以下、これを詳説する。
【0050】
図1に示すごとく、排ガス浄化装置1は、自動車の内燃機関(エンジン)の排気管10内に形成された排ガス流路11に設けられている。
排ガス浄化装置1は、第1酸化触媒21(図2(b))を触媒担体31に担持してなる第1触媒担持部41と、第2酸化触媒22(図3(b))を触媒担体32に担持してなる第2触媒担持部42とを有する。そして、第1触媒担持部41は、第2触媒担持部42よりも排ガス流路11の上流側に配置されている。
【0051】
図2(a)、(b)に示すごとく、第1触媒担持部41は、第1酸化触媒21を触媒担体31に担持してなる触媒担持体により構成されている。
図3(a)、(b)に示すごとく、第2触媒担持部42は、第2酸化触媒22を第1酸化触媒21とは別の触媒担体32に担持してなる触媒担持体により構成されている。
すなわち、第1触媒担持部41及び第2触媒担持部42は、第1酸化触媒21及び第2酸化触媒22をそれぞれ別々の触媒担体31、32に担持してなる。
【0052】
図2(a)、図3(a)に示すごとく、触媒担体31、32は、コージェライトセラミックスからなる円筒形状のハニカム構造体により構成されている。触媒担体31、32は、四角形格子状に配された多孔質のセル壁311、321と、このセル壁311、321に囲まれた四角形状の多数のセル312、322とを有する。
【0053】
図2(b)、図3(b)に示すごとく、第1酸化触媒21及び第2酸化触媒22は、それぞれ触媒担体31、32のセル壁311、321の表面に担持されている。
第1酸化触媒21としては、COよりもHCを優先的に酸化させる性質を有する酸化触媒を用いる。本例では、第1酸化触媒21として、Feを主成分とする酸化鉄(Fe2O3、Fe3O4)を用いた。
第2酸化触媒22としては、従来から公知の酸化触媒を用いることができる。本例では、第2酸化触媒22として、Cuを主成分とする酸化銅(CuO)を用いた。
【0054】
次に、本例の排ガス浄化装置1の製造方法について説明する。
まず、排ガス浄化装置1における第1触媒担持部41(図2)及び第2触媒担持部42(図3)を作製する。
【0055】
第1触媒担持部41を作製するに当たっては、第1酸化触媒21の成分である酸化鉄を溶媒である水に分散させ、第1酸化触媒スラリーを作製する。次いで、第1酸化触媒スラリー中にハニカム構造体である触媒担体31を浸漬し、引き上げる。そして、触媒担体31に塗布された第1酸化触媒スラリーを乾燥させ、加熱する。
これにより、第1酸化触媒21を触媒担体31に担持してなる触媒担持体である第1触媒担持部41(図2)を得る。
【0056】
第2触媒担持部42を作製するに当たっては、第2酸化触媒22の成分である酸化銅を溶媒である水に分散させ、第2酸化触媒スラリーを作製する。次いで、第2酸化触媒スラリー中にハニカム構造体である触媒担体32を浸漬し、引き上げる。そして、触媒担体32に塗布された第2酸化触媒スラリーを乾燥させ、加熱する。
これにより、第2酸化触媒22を触媒担体32に担持してなる触媒担持体である第2触媒担持部42(図3)を得る。
【0057】
最後に、排ガス流路11において、第1触媒担持部41を上流側に配置し、第2触媒担持部42を下流側に配置する。
これにより、本例の排ガス浄化装置1(図1)を構築する。
【0058】
次に、本例の排ガス浄化装置1における作用効果について説明する。
本例の排ガス浄化装置1は、第1酸化触媒21を担持してなる第1触媒担持部41と、第2酸化触媒22を担持してなる第2触媒担持部42とを有する。そして、第1触媒担持部41は、第1酸化触媒21によってCOよりもHCを優先的に酸化させることができるよう構成されており、かつ、第2触媒担持部42よりも排ガス流路11の上流側に配置されている。このような構成とすることにより、排ガスG中の有害成分であるHC、CO及びNOxを効率よく浄化することができる。
【0059】
すなわち、排ガス流路11内を流通する排ガスGは、まず、上流側に配置された第1触媒担持部41を通過する。ここで、第1触媒担持部41に担持された第1酸化触媒21は、排ガスG中のCOよりもHCを優先的に酸化させる性質を有する。そのため、第1酸化触媒21によって排ガスG中のHCを優先的かつ選択的に酸化(燃焼)させることができる。これにより、第1触媒担持部41において排ガスG中のHCを効率よく浄化することができると共に、HCの燃焼によって排ガスG中の酸素を消費することができる。
【0060】
次いで、排ガスGは、下流側に配置された第2触媒担持部42を通過する。このとき、排ガスGは、上流側の第1触媒担持部41でのHCの燃焼によって酸素が消費されており、酸素濃度が低い状態となっている。そのため、第2触媒担持部42に担持された第2酸化触媒22によって、排ガスG中に残っているCOとNOとを良好に反応させることができる。これにより、第2触媒担持部42において排ガスG中のCO及びNOを効率よく浄化することができる。
【0061】
よって、排ガス浄化装置1は、上述のごとく、性質の異なる酸化触媒(第1酸化触媒21及び第2酸化触媒22)の組み合わせ及び配置によって排ガスGを2段階に分けて浄化することにより、排ガスG中の有害成分であるHC、CO及びNOxを効率よく浄化することができる。また、従来の三元触媒のような高価な貴金属を用いなくても、排ガスG中のHC、CO及びNOxを効率よく浄化することが可能となるため、排ガス浄化装置1を安価なものとすることができる。
【0062】
また、本例では、第1触媒担持部41及び第2触媒担持部42は、第1酸化触媒21及び第2酸化触媒22をそれぞれ別々の触媒担体31、32に担持してなる。つまり、第1酸化触媒21及び第2酸化触媒22を担持させる触媒担体が別々となることから、第1酸化触媒21及び第2酸化触媒22を触媒担体31、32に担持させる作業が容易となる。
【0063】
また、第1酸化触媒21は、Feを主成分とする酸化鉄である。そのため、第1酸化触媒21によって排ガスG中のHCを優先的かつ選択的に酸化(燃焼)させるという効果を十分に発揮することができる。
【0064】
また、第2酸化触媒22は、Cuを主成分とする酸化銅である。そのため、第2酸化触媒22によって排ガスG中のCOとNOとを良好に反応させるという効果を十分に発揮することができる。
【0065】
また、触媒担体31、32は、多孔質のコージェライトセラミックスよりなる。そのため、触媒担体31、32は、熱膨張係数が低く、耐熱衝撃性に優れたものとなる。これにより、排ガス浄化装置1は、高温下での使用においても、優れた耐久性を示すことができる。
【0066】
また、触媒担体31、32は、ハニカム構造体よりなる。そのため、触媒担体31、32の表面積を増やすことが可能であり、排ガスGと触媒担体31、32に担持されている第1酸化触媒21及び第2酸化触媒22との接触機会を増やすことができ、排ガスGを効果的に浄化することができる。
【0067】
このように、本例によれば、排ガスG中に含まれるHC、CO及びNOxを効率よく浄化することができる安価な排ガス浄化装置1を提供することができる。
【0068】
(実施例2)
本例は、図4、図5に示すごとく、実施例1の排ガス浄化装置1の構成を変更した例である。
本例の排ガス浄化装置1は、図4に示すごとく、第1酸化触媒21(図5(b))を触媒担体33に担持してなる第1触媒担持部41と、第2酸化触媒22(図5(c))を触媒担体33に担持してなる第2触媒担持部42とを有する触媒担持体4を備えている。
【0069】
図5(a)、(b)に示すごとく、第1触媒担持部41は、触媒担持体4において、第1酸化触媒21を触媒担体33の上流側に担持して形成されている。
図5(a)、(c)に示すごとく、第2触媒担持部42は、触媒担持体4において、第2酸化触媒22を触媒担体33の下流側に担持して形成されている。
すなわち、第1触媒担持部41及び第2触媒担持部42は、第1酸化触媒21及び第2酸化触媒22をそれぞれ同一の触媒担体33の上流側及び下流側に担持してなる。
【0070】
図5(a)に示すごとく、触媒担体33は、コージェライトセラミックスからなる円筒形状のハニカム構造体により構成されている。触媒担体33は、四角形格子状に配された多孔質のセル壁331と、このセル壁331に囲まれた四角形状の多数のセル332とを有する。
【0071】
図5(b)、(c)に示すごとく、第1酸化触媒21及び第2酸化触媒22は、それぞれ触媒担体33の上流側及び下流側において、セル壁331の表面に担持されている。
なお、第1酸化触媒21及び第2酸化触媒22としては、実施例1と同様のものを用いた。
その他は、実施例1と同様の構成である。
【0072】
次に、本例の排ガス浄化装置1の製造方法について説明する。
排ガス浄化装置1を製造するに当たっては、まず、触媒担持体4(図5)を作製する。
触媒担持体4を作製するに当たっては、第1酸化触媒21の成分である酸化鉄を溶媒である水に分散させ、第1酸化触媒スラリーを作製する。また、第2酸化触媒22の成分である酸化銅を溶媒である水に分散させ、第2酸化触媒スラリーを作製する。
【0073】
次いで、第1酸化触媒スラリー中にハニカム構造体である触媒担体33の上流側となる部分を浸漬し、引き上げる。そして、触媒担体33に塗布された第1酸化触媒スラリーを乾燥させる。
次いで、第2酸化触媒スラリー中に触媒担体33の下流側となる部分を浸漬し、引き上げる。そして、触媒担体33に塗布された第2触媒スラリーを乾燥させる。
【0074】
次いで、触媒担体33の上流側となる部分及び下流側となる部分に塗布された第1触媒スラリー及び第2触媒スラリーを加熱する。
これにより、触媒担体33の上流側に第1酸化触媒21が担持され、下流側に第2酸化触媒22が担持された触媒担持体4(図5)を得る。
【0075】
最後に、排ガス流路11において、第1触媒担持部41が上流側、第2触媒担持部42が下流側となるように触媒担持体4に配置する。
これにより、本例の排ガス浄化装置1(図4)を構築する。
【0076】
本例の場合には、第1触媒担持部41及び第2触媒担持部42は、第1酸化触媒21及び第2酸化触媒22をそれぞれ同一の触媒担体33に担持してなる。そのため、第1酸化触媒21及び第2酸化触媒22を担持させる触媒担体が1つとなることから、排ガス浄化装置1の小型化を図ることができる。
その他、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0077】
(実施例3)
上記第2の発明の実施例にかかる排ガス浄化装置について、図を用いて説明する。
本例の排ガス浄化装置1は、図6、図7に示すごとく、内燃機関から排出される排ガスGの流路となる排ガス流路11に設けられ、排ガスG中に含まれる少なくともHC、CO及びNOxを浄化するための排ガス浄化装置である。
排ガス浄化装置1は、第1酸化触媒21及び第2酸化触媒22をそれぞれ同一の触媒担体34に担持してなる触媒担持体5を有する。第1酸化触媒21は、COよりもHCを優先的に酸化させることができ、かつ、触媒担体34上に担持された第2酸化触媒22上に積層形成されている。
以下、これを詳説する。
【0078】
図6に示すごとく、排ガス浄化装置1は、自動車の内燃機関(エンジン)の排気管10内に形成された排ガス流路11に設けられている。
排ガス浄化装置1は、第1酸化触媒21(図7(b))及び第2酸化触媒22(図7(b))を触媒担体34に担持してなる触媒担持体5を備えている。
【0079】
図7(a)に示すごとく、触媒担体34は、コージェライトセラミックスからなる円筒形状のハニカム構造体により構成されている。触媒担体34は、四角形格子状に配された多孔質のセル壁341と、このセル壁341に囲まれた四角形状の多数のセル342とを有する。
【0080】
図7(b)に示すごとく、第1酸化触媒21及び第2酸化触媒22は、触媒担体34のセル壁341の表面において、互いに積層した状態で担持されている。すなわち、触媒担体34のセル壁341の表面上には、第2酸化触媒22が形成されている。また、第2酸化触媒22上には、第1酸化触媒21が形成されている。
【0081】
第1酸化触媒21としては、COよりもHCを優先的に酸化させる性質を有する酸化触媒を用いる。本例では、第1酸化触媒21として、Feを主成分とする酸化鉄(Fe2O3、Fe3O4)を用いた。
第2酸化触媒22としては、従来から公知の酸化触媒を用いることができる。本例では、第2酸化触媒22として、Cuを主成分とする酸化銅(CuO)を用いた。
【0082】
次に、本例の排ガス浄化装置1の製造方法について説明する。
まず、排ガス浄化装置1における触媒担持体5(図7)を作製する。
触媒担持体5を作製するに当たっては、第1酸化触媒21の成分である酸化鉄を溶媒である水に分散させ、第1酸化触媒スラリーを作製する。また、第2酸化触媒22の成分である酸化銅を溶媒である水に分散させ、第2酸化触媒スラリーを作製する。
【0083】
次いで、第2酸化触媒スラリー中にハニカム構造体である触媒担体34全体を浸漬し、引き上げる。そして、触媒担体34に塗布された第2酸化触媒スラリーを乾燥させる。
次いで、第1酸化触媒スラリー中に触媒担体34全体を浸漬し、引き上げる。そして、触媒担体34に塗布された第1触媒スラリーを乾燥させる。
【0084】
次いで、触媒担体34に積層して塗布された第1触媒スラリー及び第2触媒スラリーを加熱する。
これにより、触媒担体34上に第1酸化触媒21及び第2酸化触媒22が積層状態で担持された触媒担持体5(図7)を得る。
【0085】
最後に、排ガス流路11において、触媒担持体5を配置する。
これにより、本例の排ガス浄化装置1(図6)を構築する。
【0086】
次に、本例の排ガス浄化装置1における作用効果について説明する。
本例の排ガス浄化装置1は、第1酸化触媒21及び第2酸化触媒22をそれぞれ同一の触媒担体34に担持してなる触媒担持体5を有する。そして、第1酸化触媒21は、COよりもHCを優先的に酸化させることができ、かつ、触媒担体34上に担持された第2酸化触媒22上に積層形成されている。このような構成とすることにより、排ガスG中の有害成分であるHC、CO及びNOxを効率よく浄化することができる。
【0087】
すなわち、排ガス流路11内を流通する排ガスGは、まず、図8に示すごとく、触媒担持体5の触媒担体34の表面において上側に配置された第1酸化触媒21に接触する(図中の排ガスG1)。ここで、第1酸化触媒21は、排ガスG中のCOよりもHCを優先的に酸化させる性質を有する。そのため、第1酸化触媒21によって排ガスG中のHCを優先的かつ選択的に酸化(燃焼)させることができる。これにより、排ガスG中のHCを効率よく浄化することができると共に、HCの燃焼によって排ガスG中の酸素を消費することができる。
【0088】
次いで、排ガスGは、同図に示すごとく、触媒担持体5の触媒担体34の表面において下側に配置された、つまり第1酸化触媒21の下側に配置された第2酸化触媒22まで拡散し、その第2酸化触媒22に接触する(図中の排ガスG2)。このとき、排ガスGは、第2酸化触媒22上に積層形成された第1酸化触媒21に接触して通過してきたものであることから、HCの燃焼によって酸素が消費されており、酸素濃度が低い状態となっている。そのため、第2酸化触媒22によって、排ガスG中に残っているCOとNOとを良好に反応させることができる。これにより、排ガスG中のCO及びNOを効率よく浄化することができる。
【0089】
よって、排ガス浄化装置1は、上述のごとく、性質の異なる酸化触媒(第1酸化触媒21及び第2酸化触媒22)の組み合わせ及び積層配置によって排ガスGを2段階に分けて浄化することにより、排ガスG中の有害成分であるHC、CO及びNOxを効率よく浄化することができる。また、従来の三元触媒のような高価な貴金属を用いなくても、排ガスG中のHC、CO及びNOxを効率よく浄化することが可能となるため、排ガス浄化装置1を安価なものとすることができる。
【0090】
また、本例では、第1酸化触媒21は、Feを主成分とする酸化鉄である。そのため、第1酸化触媒21によって排ガスG中のHCを優先的かつ選択的に酸化(燃焼)させるという効果を十分に発揮することができる。
【0091】
また、第2酸化触媒22は、Cuを主成分とする酸化銅である。そのため、第2酸化触媒22によって排ガスG中のCOとNOとを良好に反応させるという効果を十分に発揮することができる。
【0092】
また、触媒担体34は、多孔質のコージェライトセラミックスよりなる。そのため、触媒担体34は、熱膨張係数が低く、耐熱衝撃性に優れたものとなる。これにより、排ガス浄化装置1は、高温下での使用においても、優れた耐久性を示すことができる。
【0093】
また、触媒担体34は、ハニカム構造体よりなる。そのため、触媒担体34の表面積を増やすことが可能であり、排ガスGと触媒担体34に担持されている第1酸化触媒21及び第2酸化触媒22との接触機会を増やすことができ、排ガスGを効果的に浄化することができる。
【0094】
このように、本例によれば、排ガスG中に含まれるHC、CO及びNOxを効率よく浄化することができる安価な排ガス浄化装置1を提供することができる。
【0095】
(実施例4)
本例は、本発明の排ガス浄化装置の効果を示す実験例である。
本例では、本発明の排ガス浄化装置(E1)と、比較としての従来の排ガス浄化装置(C1)を準備し、それぞれに対して排ガス浄化性能を評価した。
【0096】
排ガス浄化装置E1は、実施例1と同様の排ガス浄化装置である。すなわち、排ガス浄化装置E1は、上流側に第1酸化触媒(COよりもHCを優先的に酸化させる性質を有する)としての酸化鉄を触媒担体に担持した触媒担持体(第1触媒担持部)を配置し、下流側に第2酸化触媒としての酸化銅を触媒担体に担持した触媒担持体(第2触媒担持部)を配置したものである(図1〜図3参照)。
【0097】
排ガス浄化装置C1は、酸化触媒としての酸化銅を触媒担体に担持した触媒担持体のみを配置したものである。つまり、排ガス浄化装置E1から上流側に配置した触媒担持体(第1触媒担持部)を除いたものと同様である。
【0098】
なお、排ガス浄化装置E1、C1において、触媒担体としては、多孔質のコージェライトセラミックスよりなるハニカム構造体を用いた。ハニカム構造体は、外径30mm、長さ50mmの大きさのものを用いた。また、ハニカム構造体に対する触媒の担持量は、100g/Lとした。
【0099】
次に、排ガス浄化性能の評価方法について説明する。
まず、準備した排ガス浄化装置E1、C1に対して、排気管内に排ガスを20L/分の流量で流通させる。排ガス中の三元ガス濃度は、CO:4600ppm、HC:1700ppm、NO:2500ppmとした。
【0100】
次いで、排ガス浄化装置E1、C1に流入させる排ガスの温度を昇温速度20℃/分の条件で室温から徐々に温度を上げていく。そして、排ガス浄化装置E1、C1を通過した後の排ガス中に含まれる三元ガス(CO、HC、NO)の浄化率を測定すると共に、排ガス浄化装置E1、C1を通過した後の排ガスの酸素濃度を測定した。
【0101】
次に、測定結果を図9、図10に示す。同図は、排ガス浄化装置E1、C1に流入させる排ガスの温度(℃)と、排ガス浄化装置E1、C1を通過した後の排ガスの三元ガスの浄化率(%)及び酸素濃度(%)との関係を示したものである。
図9に示すごとく、従来の排ガス浄化装置C1は、酸素濃度が0.1%となった時点の温度が約439℃であり、NOの浄化率が10%となった時点の温度T10もほぼ同様の温度である。
【0102】
一方、図10に示すごとく、本発明の排ガス浄化装置E1は、酸素濃度が0.1%となった時点の温度が約406℃であり、NOの浄化率が10%となった時点の温度T10もほぼ同様の温度である。どちらも従来の排ガス浄化装置C1に比べて温度が低くなっている。
このことから、本発明の排ガス浄化装置E1は、上流側の第1酸化触媒によって排ガス中のHCを優先的かつ選択的に酸化(燃焼)させ、より低い温度で酸素濃度が低い状態を作り出していることがわかる。そして、下流側の第2酸化触媒によって排ガス中のCOとNOとを良好に反応させ、これらを効率よく浄化していることがわかる。特に、排ガス中のNOをより低い温度で効率よく浄化することができ、NOの浄化性能が高いことがわかる。
【0103】
以上の結果から、本発明の排ガス浄化装置は、排ガス流路の上流側及び下流側に2段階で酸化触媒を配置し、その上流側の酸化触媒としてCOよりもHCを優先的に酸化させる性質を有するものを用いることにより、排ガス中に含まれるHC、CO及びNOx(特にNOx)を効率よく浄化することができることがわかった。
【0104】
(実施例5)
本例は、実施例1の排ガス浄化装置における第1酸化触媒を変更した例である。
図11(a)及び(b)に示すごとく、本例の第1酸化触媒21は、3d遷移金属の酸化物211と5価又は6価の遷移金属の酸化物212、又は3d遷移金属の酸化物の3d遷移金属の一部に5価又は6価の遷移金属が置換固溶してなる固溶体213を少なくとも含有する。本例においては、3d遷移金属がFe、5価又は6価の遷移金属がWである第1酸化触媒21を用いる。
また、本例の第1酸化触媒21は、酸化アルミニウム210をさらに含有する。
【0105】
本例の第1酸化触媒の製造にあたっては、溶解工程と乾燥焼成工程とを行う。
本例の溶解工程においては、3d遷移金属の塩と、5価又は6価の遷移金属の塩とを水に溶解させて遷移金属水溶液を得る。
また、乾燥焼成工程においては、遷移金属水溶液を乾燥させ、焼成する。
【0106】
以下、本例の第1酸化触媒の製造方法につき、詳細に説明する。
まず、Feに対するWの量が50atm%となる配合割合で、硝酸鉄とタングステン酸アンモニウムパラ5水和物とを水に溶解させた。得られた水溶液に、水に酸化アルミニウムを分散させたアルミナ分散液を添加した。ここで添加する酸化アルミニウム量は、焼成後に得られる酸化鉄と酸化アルミニウムとの重量比が1:3となるような配合割合に調整した。
【0107】
次いで、水溶液を温度120℃で乾燥させ、水分を除去して固形物を得た。この固形物を温度600℃で焼成し、第1酸化触媒の粉末を得た。これを試料e1とする。
X線回折(XRD)による分析結果から、本例の第1酸化触媒1(試料e1)は、酸化鉄(3d遷移金属の酸化物211)と酸化タングステン(5価又は6価の遷移金属の酸化物212)とを含有すると共に、酸化鉄の一部は、その鉄の一部にタングステンが固溶した固溶体213を形成していると考えられる(図1(a)及び(b))。
【0108】
次に、本例において作製した第1酸化触媒21を、実施例1と同様に触媒担体31に担持して第1触媒担持部41を構成し、その排ガスに対する浄化性能を評価する(図2(a)及び(b)参照)。
第1触媒担持部41は、本例で作製した第1酸化触媒21を用いた点を除いては、実施例1と同様にして作製することができる。
即ち、図2(a)及び(b)に示すごとく、第1触媒担持部41は、第1酸化触媒21を触媒担体31に担持してなる触媒担持体により構成されている。そして、触媒担体31は、コージェライトセラミックスからなる円筒形状のハニカム構造体により構成されている。触媒担体31は、四角形格子状に配された多孔質のセル壁311と、このセル壁311に囲まれた四角形状の多数のセル312とを有する。
【0109】
次に、第1触媒担持部41の排ガスに対する浄化性能を評価するために、図12に示すごとく、第1触媒担持部41を単独で排気管10内に配置し、排気管10内に流量20L/分で排ガスGを流通させた。第1触媒担持部41に流入させる排ガスG(G0)中の三元ガス(CO、HC、NO)の濃度は、それぞれCO:4600ppm、HC:1700ppm、NO:2500ppmとした。
【0110】
次いで、第1触媒担持部41に流入させる排ガスGの温度を昇温速度20℃/分で室温から徐々に上昇させた。そして、第1触媒担持部41を通過した後の排ガスG(G1)中に含まれる各三元ガスの浄化率(%)を測定した。
各三元ガスの浄化率は、第1触媒担持部41を通過する前の排ガスG(G0)中における各三元ガスの濃度と第1触媒担持部41を通過した後の排ガスG(G1)中における各三元ガスの濃度との差を求めると共に、この差を、第1触媒担持部41を通過する前の排ガスG(G0)中における各三元ガスの濃度で除し、100分率で表すことにより算出することができる。その結果を図13に示す。図13において、横軸は排ガスの温度(℃)を示し、縦軸は浄化率(%)を示す。なお、排ガスG中に含まれる各三元ガスの濃度は、HORIBA製のMEXA1500Dにより測定した。
【0111】
また、本例においては試料e1の比較用として、酸化鉄からなる酸化触媒を準備した。
かかる酸化触媒は、酸化鉄と酸化アルミニウムとを重量比が1:3となるような配合割合で水中に混合し、乾燥し温度600℃で加熱して得られたものである。これを試料c1とする。
試料c1についても、試料e1と同様にしてこれをハニカム構造体からなる触媒担体に担持し、排ガス(三元ガス)に対する浄化性能を評価した。その結果を図14に示す。図14において、横軸は排ガスの温度(℃)を示し、縦軸は浄化率(%)を示す。
【0112】
図13及び図14より知られるごとく、試料e1及び試料c1は、排ガス中のHCを酸化して浄化できることがわかる。
試料c1においては、比較的低温領域において、HCを選択的に酸化し、浄化できるものの、温度450℃を超えたあたりからCOも浄化され、さらに温度550℃を超えたあたりからNOも浄化されている(図14参照)。これに対し、図13に示すごとく、試料e1においては、広い温度領域においてHCを酸化して浄化する一方、CO及びNOについてはほとんど浄化していない。
したがって、試料e1の第1酸化触媒は、炭化水素(HC)をより選択的に酸化して浄化できることがわかる。
【0113】
次に、第1酸化触媒として上記試料e1を用いた点を除いては、実施例1と同様にして、第1酸化触媒を担持してなる第1触媒担持部と、第2酸化触媒を担持してなる第2触媒担持部とを有する排ガス浄化装置を構築した。
本例の排ガス浄化装置は、上流側に第1酸化触媒(試料e1)を触媒担体に担持した触媒担持体(第1触媒担持部)を配置し、下流側に第2酸化触媒としての酸化銅を触媒担体に担持した触媒担持体(第2触媒担持部)を配置したものである(図1〜図3参照)。触媒担体としては、多孔質のコージェライトセラミックスよりなるハニカム構造体を用いた。ハニカム構造体は、外径30mm、長さ50mmの大きさのものを用いた。また、ハニカム構造体に対する触媒の担持量は、100g/Lとした。
【0114】
次に、本例の排ガス浄化装置について、実施例4と同様にして排ガス浄化性能の評価を行った。
具体的には、まず、排ガス浄化装置に対して、排気管内に排ガスを20L/分の流量で流通させる。排ガス中の三元ガス濃度は、CO:4600ppm、HC:1700ppm、NO:2500ppmとした。次いで、排ガス浄化装置に流入させる排ガスの温度を昇温速度20℃/分の条件で室温から徐々に温度を上げていく。そして、排ガス浄化装置を通過した後の排ガス中に含まれる三元ガス(CO、HC、NO)の浄化率を測定すると共に、排ガス浄化装置を通過した後の排ガスの酸素濃度を測定した。その測定結果を図15に示す。同図は、排ガス浄化装置に流入させる排ガスの温度(℃)と、排ガス浄化装置通過した後の排ガスの三元ガスの浄化率(%)及び酸素濃度(%)との関係を示したものである。
【0115】
図15に示すごとく、本例において作製した試料e1を第1酸化触媒として用いた排ガス浄化装置は、酸素濃度が0.1%となった時点の温度が約400℃であり、NOの浄化率が10%となった時点の温度T10もほぼ同様の温度であった。この結果は、第1酸化触媒として酸化鉄を用いた場合(図10参照)に比べてもさらに低くなっている。
【0116】
このことから、試料e1、即ち、3d遷移金属の酸化物と5価又は6価の遷移金属の酸化物、又は3d遷移金属の酸化物の3d遷移金属の一部に5価又は6価の遷移金属が置換固溶してなる固溶体を含有する第1酸化触媒を用いた排ガス浄化装置は、上流側の第1酸化触媒によって排ガス中のHCをより一層優先的かつ選択的に酸化(燃焼)させ、より低い温度で酸素濃度が低い状態を作り出していることがわかる。そして、下流側の第2酸化触媒によって排ガス中のCOとNOとを良好に反応させ、これらを効率よく浄化していることがわかる。特に、排ガス中のNOをより低い温度で効率よく浄化することができ、NOの浄化性能が高いことがわかる。
【0117】
また、本例の第1酸化触媒(試料e1)を用いて、実施例1だけでなく、実施例2及び3に示す各排ガス浄化装置を構築することもできる。この場合にも、排ガスG中に含まれるHC、CO及びNOxを効率よく浄化することができる安価な排ガス浄化装置を提供することができる。
【0118】
(実施例6)
実施例5においては、3d遷移金属がFeで、5価又は6価の遷移金属がWである第1酸化触媒を製造したが、本例においては、3d遷移金属がFeで、5価又は6価の遷移金属がMo、Nb、又はTaである3種類の第1酸化触媒(試料e2〜e4)をそれぞれ作製する。
本例において、試料e2が5価又は6価の遷移金属としてMoを用いた第1酸化触媒であり、試料e3が5価又は6価の遷移金属としてNbを用いた第1酸化触媒であり、試料e4が5価又は6価の遷移金属としてTaを用いた第1酸化触媒である。
【0119】
各試料e2〜試料e4は、実施例5における塩化タングステンの代わりに、それぞれ塩化モリブデン、塩化ニオブ、塩化タンタルを用いた点を除いては、実施例5の試料e1と同様にして作製した。
XRDによる分析結果から、各第1酸化触媒(試料e2〜試料e4)は、酸化鉄と、それぞれ酸化モリブデン、酸化ニオブ、又は酸化タンタルとを含有すると共に、酸化鉄の一部は、その鉄の一部にそれぞれモリブデン、ニオブ、又はタンタルが固溶した固溶体を形成していると考えられる。
【0120】
次に、実施例5の試料e1と同様に、各試料e2〜試料e4の第1酸化触媒を触媒担体に担持し、排ガス(三元ガス)に対する浄化性能の評価を行った。その結果を図16〜図18に示す。図16が試料e2の結果、図17が試料e3の結果、図18が試料e4の結果である。図16〜図18において、横軸は排ガスの温度(℃)を示し、縦軸は浄化率(%)を示す。
【0121】
図16〜図18より知られるごとく、試料e2〜試料e4の第1酸化触媒は、実施例5の試料e1と同様に、HCを酸化して浄化する一方、CO及びNOについてはほとんど浄化していないことがわかる。
【0122】
したがって、本例によれば、実施例1のWだけでなく、Mo、Nb、及びTa等の5価又は6価の遷移金属を用いても、炭化水素をより選択的に酸化して浄化できる第1酸化触媒を製造できることがわかる。
そして、本例の第1酸化触媒(試料e2〜試料e4)を用いて、実施例1〜3に示す各排ガス浄化装置を構築することにより、排ガスG中に含まれるHC、CO及びNOxを効率よく浄化することができる安価な排ガス浄化装置を提供することができる。
【0123】
(実施例7)
実施例5においては、3d遷移金属としてFeを用いて第1酸化触媒を製造したが、本例は、3d遷移金属としてCuを用いて第1酸化触媒(試料e5)を製造する例である。
【0124】
本例の第1酸化触媒は、実施例5の硝酸鉄の代わりに、硝酸銅を用いた点を除いては、実施例5の試料e1と同様にして作製した。これを試料e5とする。
XRDによる分析結果から、本例の第1酸化触媒(試料e5)は、酸化銅と、それぞれ酸化タングステンとを含有すると共に、酸化銅の一部は、その銅原子の一部にタングステンが固溶した固溶体を形成していると考えられる。
【0125】
次に、実施例5の試料e1と同様に、試料e5の第1酸化触媒を触媒担体に担持し、排ガス(三元ガス)に対する浄化性能の評価を行った。その結果を図19に示す。図19において、横軸は排ガスの温度(℃)を示し、縦軸は浄化率(%)を示す。
【0126】
また、本例においては、試料e5の比較用として、酸化銅からなる酸化触媒(試料c2)を準備した。
かかる酸化触媒は、酸化銅と酸化アルミニウムとを重量比が1:3となるような配合割合で水中に混合し、乾燥し温度600℃で加熱して得られたものである。これを試料c2とする。
試料c2についても、触媒担体に担持し、排ガス(三元ガス)に対する浄化性能を評価した。その結果を図20に示す。図20において、横軸は排ガスの温度(℃)を示し、縦軸は浄化率(%)を示す。
【0127】
図19及び図20より知られるごとく、試料e5及び試料c2は、排ガス中のHCを酸化して浄化できることがわかる。また、試料c2においては、HCだけでなくCO及びNOも浄化されている(図20参照)。これに対し、図19に示すごとく、試料e5においては、試料c2よりも優れた浄化性能でHCを浄化する一方、試料c2比べてCO及びNOに対する浄化が抑制されている。
【0128】
したがって、本例によれば、実施例5のようにFeだけでなく、Cu等の3d遷移金属を用いても、炭化水素を選択的に酸化して浄化できる第1酸化触媒を製造できることがわかる。
そして、本例の第1酸化触媒(試料e5)を用いて、実施例1〜3に示す各排ガス浄化装置を構築することにより、排ガスG中に含まれるHC、CO及びNOxを効率よく浄化することができる安価な排ガス浄化装置を提供することができる。
【0129】
(実施例8)
本例は、実施例5の試料e1とは、5価又は6価の遷移金属(W)の量の異なる複数の第1酸化触媒を作製し、そのHCに対する選択的な浄化性能を評価する例である。
具体的には、まず、Feに対するWの量を変えて異なる配合割合で硝酸鉄と塩化タングステンとを水に溶解させた。次いで、実施例5と同様に、水溶液にアルミナ分散液を添加し、乾燥後焼成してW量が異なる複数の第1酸化触媒を作製した。
【0130】
次に、実施例5と同様にして、各第1酸化触媒を触媒担体にそれぞれ担持し、排ガス(三元ガス)に対する浄化性能の評価を行った。そして、本例においては、各第1酸化触媒について、HCの変化量(浄化率)が50%になるときの温度T50(℃)を求めた。その結果を図21に示す。同図において、横軸はFeに対するWの添加量(atm%)を示し、縦軸はHCのT50(℃)を示す。
【0131】
また、本例においては、各第1酸化触媒について、HCに対する浄化の選択性を評価した。
選択性(%)は、次のようにして算出した。
具体的には、まず、実施例5の浄化性能の評価と同様に、本例の各第1酸化触媒をそれぞれ担持した各第1触媒担持部をそれぞれ排気管内に配置し、排気管内に流量20L/分で排ガスを流通させた。排ガス中の三元ガス(CO、HC、NO)の濃度は、CO:4600ppm、HC:1700ppm、NO:2500ppmとした。次いで、第1触媒担持部に流入させる排ガスの温度を600℃まで上昇させた。そして、温度600℃の条件下において、第1触媒担持部に担持された各第1酸化触媒による酸化によって浄化されたCO及びHCの浄化濃度を求めた。
CO及びHCの各浄化濃度は、第1触媒担持部を通過する前の排ガス中のCO及びHCの濃度と第1触媒担持部を通過した後の排ガス中のCO及びHCの濃度との差から求めることができる。
そして、COの浄化濃度をCCO(ppm)、HCの浄化濃度をCHC(ppm)とすると、選択性S(%)は、S=CHC/(CCO+CHC)×100という式から算出することができる。
その結果を図22に示す。同図において、横軸は各第1酸化触媒におけるFeに対するWの添加量(atm%)を示し、縦軸はHCの選択性(%)を示す。
【0132】
図21より知られるごとく、3d遷移金属であるFeに対する5価又は6価の遷移金属であるWの添加量が増大すると、HCを酸化して浄化するために必要な温度が高くなる傾向にあり、HCに対する酸化性能が低下することがわかる。図21より、W等の5価又は6価の遷移金属の添加量は、Feなどの3d遷移金属に対して100atm%以下が好ましいことがわかる。より好ましくは75atm%以下、さらにより好ましくは50atm%以下がよい。
【0133】
また、図22より知られるごとく、3d遷移金属であるFeに対する5価又は6価の遷移金属であるWの添加量が少なくなると、HCに対する選択的な浄化性能(選択性)が低下する傾向にあることがわかる。図22より、W等の5価又は6価の遷移金属の添加量は、Feなどの3d遷移金属に対して2.5atm%以上が好ましいことがわかる。
【0134】
このように、本例によれば、第1酸化触媒においては、5価又は6価の遷移金属の添加量を3d遷移金属に対して2.5atm〜100atm%にすることにより、3d遷移金属が本来有するHCに対する酸化性能を損ねることなく、HCに対する選択的な酸化性能を向上できることがわかる。
【0135】
(実施例9)
本例は、実施例5の試料e1とは、5価又は6価の遷移金属(W)の量の異なる複数の第1酸化触媒を作製し、Feの2P3/2の結合エネルギーとHCに対する浄化の選択性との関係を調べる例である。
具体的には、まず、Feに対するWの量を変えて異なる配合割合で硝酸鉄と塩化タングステンとを水に溶解させた。次いで、実施例5と同様に、水溶液にアルミナ分散液を添加し、乾燥後焼成してW量が異なる複数の第1酸化触媒を作製した。
本例においては、Feに対するWの添加量が0atm%、1.25atm%、2.5atm%、12.5atm%、25atm%の第1酸化触媒を作製した。これらをそれぞれ試料x1〜試料x5とする。
【0136】
このようにして作製した各第1酸化触媒(試料x1〜x5)においては、Feに固溶したW量が異なるため、Feの価数が異なる。
このFeの価数を調べるために、X線光電子分光分析装置(XPS)により、試料x1〜x5におけるFeの2P3/2の結合エネルギーを求めた。
【0137】
次に、実施例8と同様にして、各第1酸化触媒(試料x1〜x5)について、HCに対する浄化の選択性を評価した。
そして、各第1酸化触媒(試料x1〜x5)におけるFeの2P3/2の結合エネルギーと、HCに対する浄化の選択性との関係を図23に示す。同図において、横軸はFeの2P3/2の結合エネルギー(eV)を示し、縦軸はHCの選択性(選択率)(%)を示す。
【0138】
図23より知られるごとく、Feの2P3/2電子の結合エネルギーとHCに対する浄化の選択性には相関があることがわかる。即ち、Feの2P3/2電子の結合エネルギーの増大、即ちFeの高価数化により、HCに対する浄化の選択性が向上することがわかる。
したがって、Fe等の3d遷移金属に対するW等の5価又は6価の遷移金属の固溶量が増大することにより、HCに対する浄化の選択性をより向上できることがわかる。
【符号の説明】
【0139】
1 排ガス浄化装置
11 排ガス流路
41 第1触媒担持部
42 第2触媒担持部
G 排ガス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出される排ガスの流路となる排ガス流路に設けられ、上記排ガス中に含まれる少なくともHC、CO及びNOxを浄化するための排ガス浄化装置であって、
該排ガス浄化装置は、第1酸化触媒を担持してなる第1触媒担持部と、第2酸化触媒を担持してなる第2触媒担持部とを有し、
上記第1触媒担持部は、上記第1酸化触媒によってCOよりもHCを優先的に酸化させることができるよう構成されており、かつ、上記第2触媒担持部よりも上記排ガス流路の上流側に配置されていることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の排ガス浄化装置において、上記第1酸化触媒は、Fe又はCrを主成分とすることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項3】
請求項1に記載の排ガス浄化装置において、上記第1酸化触媒は、3d遷移金属の酸化物と5価又は6価の遷移金属の酸化物、又は3d遷移金属の酸化物の3d遷移金属の一部に5価又は6価の遷移金属が置換固溶してなる固溶体を含有することを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項4】
請求項3に記載の排ガス浄化装置において、上記第1酸化触媒は、上記5価又は6価の遷移金属を、上記3d遷移金属に対して2.5atm〜100atm%含有することを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の排ガス浄化装置において、上記3d遷移金属は、Fe及び/又はCuであることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置において、上記5価又は6価の遷移金属は、W、Mo、Nb、及びTaから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置において、上記第1酸化触媒は、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、及び二酸化珪素から選ばれる少なくとも1種をさらに含有することを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項8】
請求項3〜7のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置において、上記第1酸化触媒中に含まれる上記3d遷移金属の酸化物、5価又は6価の遷移金属の酸化物、及び3d遷移金属の酸化物の3d遷移金属の一部に5価又は6価の遷移金属が置換固溶してなる固溶体の含有量は、10〜60質量%であることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置において、上記第2酸化触媒は、Cuを主成分とすることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の排ガス浄化装置において、上記第1触媒担持部及び上記第2触媒担持部は、上記第1酸化触媒及び上記第2酸化触媒をそれぞれ別々の触媒担体に担持してなることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の排ガス浄化装置において、上記第1触媒担持部及び上記第2触媒担持部は、上記第1酸化触媒及び上記第2酸化触媒をそれぞれ同一の触媒担体に担持してなることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の排ガス浄化装置において、上記触媒担体は、多孔質のコージェライトセラミックスよりなることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか1項に記載の排ガス浄化装置において、上記触媒担体は、ハニカム構造体よりなることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項14】
内燃機関から排出される排ガスの流路となる排ガス流路に設けられ、上記排ガス中に含まれる少なくともHC、CO及びNOxを浄化するための排ガス浄化装置であって、
該排ガス浄化装置は、第1酸化触媒及び第2酸化触媒をそれぞれ同一の触媒担体に担持してなる触媒担持体を有し、
上記第1酸化触媒は、COよりもHCを優先的に酸化させることができ、かつ、上記触媒担体上に担持された上記第2酸化触媒上に積層形成されていることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項15】
請求項14に記載の排ガス浄化装置において、上記第1酸化触媒は、Fe又はCrを主成分とすることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項16】
請求項14に記載の排ガス浄化装置において、上記第1酸化触媒は、3d遷移金属の酸化物と5価又は6価の遷移金属の酸化物、又は3d遷移金属の酸化物の3d遷移金属の一部に5価又は6価の遷移金属が置換固溶してなる固溶体を含有することを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項17】
請求項16に記載の排ガス浄化装置において、上記第1酸化触媒は、上記5価又は6価の遷移金属を、上記3d遷移金属に対して2.5atm〜100atm%含有することを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項18】
請求項16又は17に記載の排ガス浄化装置において、上記3d遷移金属は、Fe及び/又はCuであることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項19】
請求項16〜18のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置において、上記5価又は6価の遷移金属は、W、Mo、Nb、及びTaから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項20】
請求項16〜19のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置において、上記第1酸化触媒は、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、及び二酸化珪素から選ばれる少なくとも1種をさらに含有することを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項21】
請求項16〜20のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置において、上記第1酸化触媒中に含まれる上記3d遷移金属の酸化物、5価又は6価の遷移金属の酸化物、及び3d遷移金属の酸化物の3d遷移金属の一部に5価又は6価の遷移金属が置換固溶してなる固溶体の含有量は、10〜60質量%であることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項22】
請求項16〜21のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置において、上記第2酸化触媒は、Cuを主成分とすることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項23】
請求項16〜22のいずれか1項に記載の排ガス浄化装置において、上記触媒担体は、多孔質のコージェライトセラミックスよりなることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項24】
請求項16〜23のいずれか1項に記載の排ガス浄化装置において、上記触媒担体は、ハニカム構造体よりなることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項1】
内燃機関から排出される排ガスの流路となる排ガス流路に設けられ、上記排ガス中に含まれる少なくともHC、CO及びNOxを浄化するための排ガス浄化装置であって、
該排ガス浄化装置は、第1酸化触媒を担持してなる第1触媒担持部と、第2酸化触媒を担持してなる第2触媒担持部とを有し、
上記第1触媒担持部は、上記第1酸化触媒によってCOよりもHCを優先的に酸化させることができるよう構成されており、かつ、上記第2触媒担持部よりも上記排ガス流路の上流側に配置されていることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の排ガス浄化装置において、上記第1酸化触媒は、Fe又はCrを主成分とすることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項3】
請求項1に記載の排ガス浄化装置において、上記第1酸化触媒は、3d遷移金属の酸化物と5価又は6価の遷移金属の酸化物、又は3d遷移金属の酸化物の3d遷移金属の一部に5価又は6価の遷移金属が置換固溶してなる固溶体を含有することを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項4】
請求項3に記載の排ガス浄化装置において、上記第1酸化触媒は、上記5価又は6価の遷移金属を、上記3d遷移金属に対して2.5atm〜100atm%含有することを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の排ガス浄化装置において、上記3d遷移金属は、Fe及び/又はCuであることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項6】
請求項3〜5のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置において、上記5価又は6価の遷移金属は、W、Mo、Nb、及びTaから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項7】
請求項3〜6のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置において、上記第1酸化触媒は、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、及び二酸化珪素から選ばれる少なくとも1種をさらに含有することを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項8】
請求項3〜7のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置において、上記第1酸化触媒中に含まれる上記3d遷移金属の酸化物、5価又は6価の遷移金属の酸化物、及び3d遷移金属の酸化物の3d遷移金属の一部に5価又は6価の遷移金属が置換固溶してなる固溶体の含有量は、10〜60質量%であることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置において、上記第2酸化触媒は、Cuを主成分とすることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の排ガス浄化装置において、上記第1触媒担持部及び上記第2触媒担持部は、上記第1酸化触媒及び上記第2酸化触媒をそれぞれ別々の触媒担体に担持してなることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項11】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の排ガス浄化装置において、上記第1触媒担持部及び上記第2触媒担持部は、上記第1酸化触媒及び上記第2酸化触媒をそれぞれ同一の触媒担体に担持してなることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の排ガス浄化装置において、上記触媒担体は、多孔質のコージェライトセラミックスよりなることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれか1項に記載の排ガス浄化装置において、上記触媒担体は、ハニカム構造体よりなることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項14】
内燃機関から排出される排ガスの流路となる排ガス流路に設けられ、上記排ガス中に含まれる少なくともHC、CO及びNOxを浄化するための排ガス浄化装置であって、
該排ガス浄化装置は、第1酸化触媒及び第2酸化触媒をそれぞれ同一の触媒担体に担持してなる触媒担持体を有し、
上記第1酸化触媒は、COよりもHCを優先的に酸化させることができ、かつ、上記触媒担体上に担持された上記第2酸化触媒上に積層形成されていることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項15】
請求項14に記載の排ガス浄化装置において、上記第1酸化触媒は、Fe又はCrを主成分とすることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項16】
請求項14に記載の排ガス浄化装置において、上記第1酸化触媒は、3d遷移金属の酸化物と5価又は6価の遷移金属の酸化物、又は3d遷移金属の酸化物の3d遷移金属の一部に5価又は6価の遷移金属が置換固溶してなる固溶体を含有することを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項17】
請求項16に記載の排ガス浄化装置において、上記第1酸化触媒は、上記5価又は6価の遷移金属を、上記3d遷移金属に対して2.5atm〜100atm%含有することを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項18】
請求項16又は17に記載の排ガス浄化装置において、上記3d遷移金属は、Fe及び/又はCuであることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項19】
請求項16〜18のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置において、上記5価又は6価の遷移金属は、W、Mo、Nb、及びTaから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項20】
請求項16〜19のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置において、上記第1酸化触媒は、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、及び二酸化珪素から選ばれる少なくとも1種をさらに含有することを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項21】
請求項16〜20のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置において、上記第1酸化触媒中に含まれる上記3d遷移金属の酸化物、5価又は6価の遷移金属の酸化物、及び3d遷移金属の酸化物の3d遷移金属の一部に5価又は6価の遷移金属が置換固溶してなる固溶体の含有量は、10〜60質量%であることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項22】
請求項16〜21のいずれか一項に記載の排ガス浄化装置において、上記第2酸化触媒は、Cuを主成分とすることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項23】
請求項16〜22のいずれか1項に記載の排ガス浄化装置において、上記触媒担体は、多孔質のコージェライトセラミックスよりなることを特徴とする排ガス浄化装置。
【請求項24】
請求項16〜23のいずれか1項に記載の排ガス浄化装置において、上記触媒担体は、ハニカム構造体よりなることを特徴とする排ガス浄化装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2012−135754(P2012−135754A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90802(P2011−90802)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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