説明

排ガス浄化触媒及びそれを備えた車用排ガス浄化装置

【課題】貴金属そのものの活性を向上させるとともに、高温時における活性の低下を防止することにより、自動車始動時又はアイドリング時の低温(400℃以下)運転中においても十分な性能を発揮する排ガス浄化触媒を提供する。
【解決手段】PdがLn1−aAl1−b(Ln:希土類元素、X:アルカリ土類金属、Z:2〜5族元素又は12〜14族元素、0.02≦a≦0.30、0.02≦b≦0.30)である示性式の複合酸化物上に担持されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化触媒及びそれを備えた車用排ガス浄化装置に係り、特に、自動車等の内燃機関の低温運転時に排出される排ガス中の窒素酸化物(NOx)、炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)を同時に効率よく浄化、低減させることのできる排ガス浄化触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
排ガス(例えばCO、HC、NO、NO等)の浄化には、貴金属元素(Pt、Rh、Pd、Ir)が高性能を示すことが知られている。このため、排ガス浄化触媒には、上記貴金属元素を用いることが好適である。通常、これらの貴金属は、La、Ce、Ndなどの添加剤とともに、高比表面積担体のAlに混合又は担持されて用いられる。一方、様々な元素を組み合わせることができるペロブスカイトなどの複合酸化物は、極めて多様な性質を有する。このため、排ガス浄化触媒には、上記複合酸化物を用いることが好適である。さらに、複合酸化物に貴金属を担持すると、貴金属の性質が大きく変化することも知られている。このような見地から、複合酸化物に貴金属を担持した排ガス浄化触媒では、さらに好適な排ガス浄化性能が得られる。
【0003】
このような排ガス浄化触媒は種々開発されており、例えば、貴金属元素の一部をペロブスカイト型構造の結晶中に含ませる技術が開示されている(特許文献1参照)。この技術では、貴金属元素をこの構造の結晶格子中に含ませると、貴金属粒子が微細化して分散度が向上し、さらに、触媒活性に寄与する格子欠陥が適度に生成するため、貴金属元素の触媒活性が向上するとしている。また、特許文献1に類似した技術としては、Pdをペロブスカイト型複合酸化物に固溶させることで耐熱性を向上させる技術も開示されている(特許文献2参照)。さらに、貴金属がPdの場合は、NO還元反応の活性種であるPdOが還元され、低活性のPdに変化するという問題があったが、Aサイト欠陥型のペロブスカイト型複合酸化物を用いることで、PdOの還元を抑制することができる技術も開示されている(特許文献3参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平6−100319号公報
【特許文献2】特開2004−41866号公報
【特許文献3】特開2003−175337号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の排ガス浄化触媒は、自動車の走行時等の特に高温(400℃以上)運転中においては、排ガス中のCO、HC、NOx(NO、NO等)を浄化する十分な性能を発揮するものの、自動車始動時又はアイドリング時等の低温(400℃以下)運転中においては、十分な性能を発揮するとはいえないのが現状である。
【0006】
このように、低温運転時に十分な排ガス浄化性能を発揮できない理由は、以下のとおりである。即ち、従来の排ガス浄化触媒においては、Pt、Rh、Pdなどの貴金属が、高比表面積を有するAl上に担持されて用いられている。Alは高比表面積であるため、貴金属は高分散状態で担持されるという利点がある。しかしながら、Alは安定化合物であり、担持された貴金属に対して相互作用を及ぼすことがないため、貴金属そのものの活性は向上しない。このため、低温運転時に十分な性能を得ることができない場合がある。
【0007】
また、自動車運転時においては、Pdが活性の大きなPdOの状態で存在することが望ましい。しかしながら、Al上に担持されたPdは、初期はPdOの状態で存在していても、高温時(900℃以上)に金属状態のPdに還元され、Pdが凝集することにより活性点が減少し、活性が大きく低下するという問題もある。これは、担体であるAlの表面が非常に安定であるため、自動車運転時に担体がPdの易動度を低下させることができず、また、担体表面のPdOの酸化状態を安定化させることができないためである。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、貴金属そのものの活性を向上させるとともに、高温時における活性の低下を防止することにより、自動車始動時又はアイドリング時の低温(400℃以下)運転中においても十分な性能を発揮する排ガス浄化触媒及びそれを備えた車用排ガス浄化装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、自動車始動時又はアイドリング時の低温(400℃以下)運転中においても十分な性能を発揮する排ガス浄化触媒について、鋭意、研究を重ねた。その結果、Pdを担持する複合酸化物の組成の適正化を図ること、具体的には、複合酸化物をLn1−aAl1−b(Ln:希土類元素、X:アルカリ土類金属、Z:2〜5族又は12〜14族元素、0.02≦a≦0.30、0.02≦b≦0.30)である示性式のものとすることにより、初期にPdOの状態で存在しているPdが、高温時(900℃以上)においても金属状態のPdに還元されず、Pdの凝集を防止して、活性点の減少を抑制し、活性の低下を最小限に食い止めることができるとの知見を得た。即ち、このような組成の複合酸化物を担体とした場合には、当該複合酸化物が従来担体として使用されていたAlに比して非常に不安定な表面を有するため、自動車運転時に担体がPdの易動度を低下させるとともに、担体表面のPdOの酸化状態を安定化させる効果を十分に奏するとの知見を得、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明(第1発明)は、PdがLn1−aAl1−b(Ln:希土類元素、X:アルカリ土類金属、Z:2〜5族元素又は12〜14族元素、0.02≦a≦0.30、0.02≦b≦0.30)である示性式の複合酸化物上に担持されてなることを特徴としている。
【0011】
また、本発明者等は、上記Ln1−aAl1−bの中でも、結晶系が三方晶又は菱面体晶であり、結晶構造がペロブスカイト型構造の複合酸化物は、電気的不安定さが大きく、Ln1−aAl1−bに隣接しているPdは、単独で存在するPdに比して電気的な揺らぎが大きくなっているとの知見を得た。このため、担持されたPdの表面においてPdの酸化状態は、大部分でPd2+となっている。この状態は、排ガス浄化に好ましい状態であるため、高い低温活性が得られる。なお、本発明者等は、この触媒が1000℃程度の使用条件にさらされた後でも、高い低温活性が得られることも確認した。
【0012】
本発明(第2発明)は、上記知見に基づいてなされたものである。即ち、上記排ガス浄化触媒(第1発明)においては、上記複合酸化物の結晶系が三方晶又は菱面体晶であるとともに、上記複合酸化物の結晶構造がペロブスカイト型構造であること(第2発明)が望ましい。
【0013】
さらに、本発明者等は、Ln1−aAl1−bを作製する際、カルボン酸等を含む構成元素の硝酸塩水溶液或いは塩化物水溶液を蒸発乾固させて得たカルボン酸錯体重合物を経ることにより、Ln1−aAl1−bが単相で生成し、さらにPdを担持した際にLn1−aAl1−bの表面が、Pdと相互作用し易い形態になるとの知見を得た。これにより、Ln1−aAl1−bにPdを担持した排ガス浄化触媒では、高い低温活性が得られる。
【0014】
本発明(第3,4発明)は、上記知見に基づいてなされたものである。即ち、上記排ガス浄化触媒(第1,2発明)においては、化合物群(OH基又はSH基を有する炭素数2〜20のカルボン酸、炭素数2又は3のジカルボン酸、及び炭素数1〜20のモノカルボン酸)から選ばれた少なくとも1種を構成元素の硝酸塩水溶液或いは塩化物水溶液へ添加する工程を経て製造されたこと(第3発明)が望ましい。また、このような排ガス浄化触媒(第3発明)においては、上記硝酸塩水溶液を蒸発乾固させて、カルボン酸錯体重合物を作製する工程と、上記カルボン酸錯体重合物を焼成する焼成工程とを経て製造されたこと(第4発明)がさらに望ましい。
【0015】
ここで、OH基又はSH基を有する炭素数2〜20のカルボン酸としては、オキシカルボン酸、及び該酸のOH基の酸素原子を硫黄原子に置換した化合物が挙げられる。これらのカルボン酸の炭素数は、水への溶解性の観点から2〜20であり、好ましくは2〜12、より好ましくは2〜8、さらに好ましくは2〜6である。また、モノカルボン酸の炭素数は、水への溶解性の観点から1〜20であり、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜8、さらに好ましくは1〜6である。
【0016】
さらに、OH基又はSH基を有する炭素数2〜20のカルボン酸の具体例としては、グリコール酸、メルカプトコハク酸、チオグリコール酸、乳酸、β−ヒドロキシプロピオン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、イソクエン酸、アロクエン酸、グルコン酸、グリオキシル酸、グリセリン酸、マンデル酸、トロパ酸、ベンジル酸、及びサリチル酸等が挙げられる。モノカルボン酸の具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、デカン酸、及びラウリン酸等が挙げられる。これらの中でも、酢酸、シュウ酸、マロン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、グリオキシル酸、クエン酸及びグルコン酸が好ましく、シュウ酸、マロン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、グリオキシル酸、クエン酸及びグルコン酸がさらに好ましい。
【0017】
次に、本発明の排ガス浄化触媒の製造方法について説明する。即ち、この製造方法は、上記排ガス浄化触媒(第1〜4発明)を好適に製造するための方法である。具体的には、Pdが上記Ln1−aAl1−b(Ln:希土類元素、X:アルカリ土類金属、Z:2〜5族元素又は12〜14族元素、0.02≦a≦0.30、0.02≦b≦0.30)である組成式の複合酸化物に担持されている排ガス浄化触媒を製造するにあたり、化合物群(OH基又はSH基を有する炭素数2〜20のカルボン酸、炭素数2又は3のジカルボン酸、及び炭素数1〜20のモノカルボン酸)から選ばれる少なくとも1種を構成元素の硝酸塩水溶液或いは塩化物水溶液に添加する。
【0018】
このような排ガス浄化触媒の製造方法では、上記硝酸塩水溶液或いは塩化物水溶液を蒸発乾固させて、カルボン酸錯体重合物を作製する工程と、上記カルボン酸錯体重合物を焼成する焼成工程とを含むことが望ましく、焼成工程における焼成温度が、1000℃以下であることがさらに望ましい。
【0019】
以上のように製造される排ガス浄化触媒は、本発明の概要であるが、本発明者等は、上記発明(第1〜4発明)の具体的な用途について鋭意検討し、本発明の排ガス浄化触媒は、内燃機関の中でも特に車用として使用することが好適であるとの知見を得、下記の第5発明を完成した。
【0020】
即ち、本発明(第5発明)は、Pdが複合酸化物に担持されており、車から排出される排ガスを浄化する車用排ガス浄化装置であって、上記複合酸化物の示性式がLn1−aAl1−b(Ln:希土類元素、X:アルカリ土類金属、Z:2〜5族元素又は12〜14族元素、0.02≦a≦0.30、0.02≦b≦0.30)であることを特徴としている。なお、このような車用排ガス浄化装置に、上記発明2〜4の発明構成要件を付加した場合には、自動車始動時のみならずアイドリング時の低温(400℃以下)運転中においても十分な性能をさらに高いレベルで発揮することができる。
【発明の効果】
【0021】
先ず、上記本発明(第1発明)の効果について説明する。Ln1−aAl1−b(Ln:希土類元素、X:アルカリ土類金属、Z:2〜5族元素又は12〜14族元素、0.02≦a≦0.30、0.02≦b≦0.30)である示性式の複合酸化物は、LnAlOのAサイト及びBサイトにLnやAlとイオン半径の異なる元素が固溶した構造をとっている。イオン半径が異なる元素が固溶していることにより結晶構造が歪み、電気的な不安定さが増大し、担持したPdとの相互作用が強くなり、高活性が得られる。具体的に、LnやAlとイオン半径の異なる元素としては、Aサイトには2族元素(アルカリ土類金属)を適用し、Bサイトには2〜5族元素又は12〜14族元素を適用すると、上記高活性が効率的に得られる。
【0022】
また、Ln1−aAl1−b上にPdを担持した本発明の排ガス浄化触媒においては、高温運転時にPdOのPd金属への還元を抑制する効果がある。Ln(希土類元素)は、酸化物の状態でその形状を様々に変化させることが知られている。例えば、LaにPdを担持した触媒を高温にさらすと、PdとLaとの接触部からLaがPd粒子上に移動し、Pd粒子がLaに埋まった形状となり、さらにPd表面に微小なLaが移動することが知られている(Zhang et al., J.Phys.Chem.,vol.100,No.2,P.744-754,1996)。本系(Ln1−aAl1−b)においても、上記挙動によりLnとPdとが複合化し、PdOのPd金属への還元を抑制する。この効果により、本発明の排ガス浄化触媒においては、高温耐久後の低温(400℃以下)運転時における高活性を維持することができる。
【0023】
次に、上記本発明(第2発明)の効果について説明する。複合酸化物のBサイトの大部分がAlであるLn1−aAl1−bの中でも、特に、結晶系が三方晶又は菱面体晶であり、しかもその結晶構造がペロブスカイト型構造である場合には、さらに優れた触媒性能を示す。三方晶とは、図1に示すように、理想的な立方晶の単位格子からc軸方向に格子が変化し、さらにa軸とb軸との間の角度が120°である結晶系である。即ち、三方晶は、理想的な立方晶ペロブスカイトから大きく歪みを生じた結晶系であり、この結晶系においては、構成する原子間の電子の存在状態が極めて不安定となる。次に、菱面体晶とは、図2に示すように、三方晶を異なる基本軸で表した場合の結晶系であり、三方晶と構造自体は同じである。また、Ln1−aAl1−bは、ペロブスカイトのBサイトの大部分がAlであるため、Al−Oの結合は共有結合性が強い。このため、通常イオン結合性の強いペロブスカイト結晶中に、なんらかの電気的偏りを生じさせている。
【0024】
以上のように、結晶系が三方晶又は菱面体晶であること、及び結晶構造がペロブスカイトであってそのBサイトの大部分がAlであることから、Ln1−aAl1−bである示性式のペロブスカイト型複合酸化物は、排ガス浄化用触媒として既知のLaFeO等に比して、電気的不安定さが大きい。
【0025】
このような電気的不安定さから、Ln1−aAl1−bに隣接しているPdOは、単独で存在するPdOに比して電気的な揺らぎが大きくなっている。この結果、担持されているPdOの表面におけるPdの酸化状態はその大部分がPd2+となる。表面Pdの酸化状態は、Pd2+及びPd(金属状態)の二種類の存在が知られており、Pd2+の方が排ガス浄化には高活性である。即ち、PdをLn1−aAl1−bに担持した本発明の排ガス浄化触媒は、Pd表面がPd2+の状態であり、高活性である。また、1000℃程度の使用条件にさらされた後でも、低温(400℃以下)運転時に高活性を維持することができる。
【0026】
さらに、上記本発明(第3,4発明)の効果について説明する。Ln1−aAl1−bを製造する際、カルボン酸等を含む構成元素の硝酸塩水溶液或いは塩化物水溶液を蒸発乾固させて作製したカルボン酸錯体重合物を比較的低温の800℃或いは900℃で焼成することにより、Ln1−aAl1−bが単相で生成する。これに対し、Ln1−aAl1−bと類似した化合物であるLaAlOを固相反応法等の他の方法で製造した場合には、1700℃の高温で焼成しても単相のLaAlOは生成しない(希土類の科学、化学同人、足立吟也編著、P.564)。即ち、Ln1−aAl1−bもLaAlOと類似した化合物であるため、カルボン酸等を用いることにより、上記低温で単相のLn1−aAl1−bを合成することができる。このため、十分な比表面積が得られるとともに、結晶格子表面を活性な状態で用いることができる。以上により、本発明の方法により作製したLn1−aAl1−bにPdを担持した排ガス浄化触媒においては、十分な比表面積と、Ln1−aAl1−bとPdとの強い相互作用とが得られるため、低温における高活性が実現される。
【実施例1】
【0027】
以下、本発明を実施例により、さらに具体的に説明する。
<製造例1>
[担持用担体複合酸化物の作製]
所定量の硝酸ランタン六水和物、硝酸カルシウム、硝酸アルミニウム九水和物及び硝酸マグネシウムをイオン交換水に溶解し、混合水溶液を作製した。次に、所定量のリンゴ酸をイオン交換水に溶解し、リンゴ酸水溶液を作製した。これら2つの水溶液を混合して、ホットプレートスターラにのせ、250℃で撹拌子を用いて撹拌しながら加熱し、水分蒸発の後、分解乾固させ、乾固物を乳鉢で粉砕した。これをアルミナ坩堝に移し、マッフル炉にて2.5℃/minで350℃まで昇温し、350℃で3時間熱処理を施した。これにより、リンゴ酸塩、硝酸根を除去した仮焼成体を作製した。仮焼成体を乳鉢で15分間粉砕混合した後、再びアルミナ坩堝に入れ、マッフル炉にて5℃/minで900℃まで昇温し、900℃で10時間熱処理を施した。これにより、La0.8Ca0.2Al0.8Mg0.2なる組成のペロブスカイト複合酸化物を作製した。
【0028】
[貴金属の担持]
次に、所定量の硝酸パラジウム二水和物をイオン交換水に溶解し、硝酸パラジウム水溶液を作製した。次いで、硝酸パラジウム水溶液と所定量のLaAlO粉末をナス型フラスコに入れ、ナス型フラスコをロータリーエバポレータで減圧しながら、60℃の湯浴中で蒸発乾固させた。その後、マッフル炉にて2.5℃/minで250℃まで昇温し、さらに5℃/minで750℃まで昇温して、750℃で3時間保持した。これにより、PdをLa0.8Ca0.2Al0.8Mg0.2に含浸担持したPd/La0.8Ca0.2Al0.8Mg0.2なる製造例1の触媒粉末を得た。
【0029】
[活性評価]
次に、得られた製造例1の触媒粉末について、初期及び耐久処理後の活性評価を実施した。評価は、自動車のモデル排ガスを触媒に流通させ、A/F(空燃比)=14.6相当、SV(空間速度)=50000h−1にて行った。耐久処理は、A/F=14.6相当のモデル排ガスにより900℃の耐久温度で20時間行った。これらの結果を表1,2に示す。即ち、表1には、触媒の昇温試験における、CO、HC、NOの50%浄化温度(耐久処理前の触媒性能評価)を示す。また、表2には、耐久処理後の触媒の昇温試験における、CO、HC、NOの400℃における浄化率(耐久処理後の触媒性能評価)を示す。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
<製造例2>
製造例1と同様の方法で、Pd/La0.8Sr0.2Al0.8Mg0.2を製造し、各種活性評価を行った。その結果を表1,2に併記する。
【0033】
<製造例3>
製造例1と同様の方法で、Pd/La0.8Ca0.2Al0.8Ti0.2を製造し、各種活性評価を行った。その結果を表1,2に併記する。
【0034】
<製造例4>
製造例1と同様の方法で、Pd/La0.8Ca0.2Al0.8Nb0.2を製造し、各種活性評価を行った。その結果を表1,2に併記する。
【0035】
<製造例5>
製造例1と同様の方法で、Pd/La0.8Ca0.2Al0.8Zn0.2を製造し、各種活性評価を行った。その結果を表1,2に併記する。
【0036】
<製造例6>
製造例1と同様の方法で、Pd/La0.8Ca0.2Al0.8Ga0.2を製造し、各種活性評価を行った。その結果を表1,2に併記する。
【0037】
<製造例7>
製造例1と同様の方法で、Pd/La0.8Ca0.2Al0.8Mg0.2を製造し、各種活性評価を行った。その結果を表1,2に併記する。
【0038】
<製造例8>
製造例1と同様の方法で、Pd/La0.8Ca0.2Al0.8Li0.2を製造し、各種活性評価を行った。その結果を表1,2に併記する。
【0039】
<製造例9>
製造例1と同様の方法で、Pd/Gd0.8Ca0.2Al0.8Li0.2を製造し、各種活性評価を行った。その結果を表1,2に併記する。
【0040】
<製造例10>
製造例1と同様の方法で、Pd/La0.80.2Al0.8Li0.2を製造し、各種活性評価を行った。その結果を表1,2に併記する。
【0041】
<製造例11>
製造例1と同様の方法で、Pd/La0.8Ca0.2Al0.8Mn0.2を製造し、各種活性評価を行った。その結果を表1,2に併記する。
【0042】
<製造例12>
製造例1と同様の方法で、Pd/La0.8Ca0.2Al0.8Co0.2を製造し、各種活性評価を行った。その結果を表1,2に併記する。
【0043】
<製造例13>
市販のアルミナ(AF115、住友化学製)に、上記製造例1と同様の方法で貴金属を担持し、Pd/Alを作製し、各種活性評価を行った。その結果を表1,2に併記する。
【0044】
<製造例14>
所定量の酸化ランタン、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムをめのう乳鉢で混合し、アルミナ坩堝に入れ、マッフル炉にて1100℃で10時間焼成し、固相反応法によりLa0.8Ca0.2Al0.8Mg0.2を作製した。これを用いて、上記製造例1と同様にPdを担持し、Pd/La0.8Ca0.2Al0.8Mg0.2を作製し、各種活性評価を行った。その結果を表1,2に併記する。
【0045】
表1,2によれば、製造例1〜7の排ガス浄化触媒は、耐久処理前後にかかわらず、優れた結果を示す。この理由は、以下のとおりである。即ち、製造例1〜7の排ガス浄化触媒は、全てLn1−aAl1−b(Ln:希土類元素、X:アルカリ土類金属、Z:2〜5族元素又は12〜14族元素、0.02≦a≦0.30、0.02≦b≦0.30)である示性式の複合酸化物上にPdを担持したものであり、これらの触媒には、高温時のPd2+のPdへの還元を抑制する効果があり、高温にさらされた後でも高活性を維持することができる。また、製造例1〜7の排ガス浄化触媒は、Al酸化物の結晶系が三方晶又は菱面体晶であり、しかもその結晶構造がペロブスカイト構造であるため、電気的不安定さが大きい。このため、La0.8Ca0.2Al0.8Mg0.2等に隣接しているPdは、単独で存在するPdに比して電気的な揺らぎが大きくなっている。さらに、製造例1〜7の排ガス浄化触媒では、La0.8Ca0.2Al0.8Mg0.2等を作製する際、カルボン酸を含む構成元素の硝酸塩水溶液を蒸発乾固させて得たカルボン酸錯体重合物を経ることにより、La0.8Ca0.2Al0.8Mg0.2等が単相で生成し、さらに表面状態がPdを担持した際、Pdと相互作用し易い形態となる。なお、上記混合水溶液の作製に際して、リンゴ酸を使用したが、クエン酸又はシュウ酸を使用した場合においても同様の結果が得られることが判明した。
【0046】
これに対し、製造例8〜14の排ガス浄化触媒が製造例1〜7の排ガス浄化触媒に比して耐久前及び耐久後に十分な性能を得ることができない理由は、以下のとおりである。製造例8,9,11,12の排ガス浄化触媒については、担体の酸化物のBサイトに2〜5族元素及び12〜14族元素以外の元素が使用されているため、優れた結果が得られていない。また、製造例10の排ガス浄化触媒については、担体の酸化物のAサイトにアルカリ土類金属以外の元素が使用されているため、優れた結果が得られていない。さらに、製造例13の排ガス浄化触媒については、Alは安定化合物であり、担持された貴金属Pdに対して相互作用を及ぼすことがないため、Pdそのものの活性は向上しない。加えて、製造例14の排ガス浄化触媒については、触媒製造時にカルボン酸等を用いていないことから、単相の担体を合成することができない。このため、十分な比表面積が得られないとともに、結晶格子表面を活性な状態で用いることができない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の排ガス浄化触媒は、近年、排ガス中の窒素酸化物(NOx)、炭化水素(HC)及び一酸化炭素(CO)を同時に効率よく浄化、低減させることが要求される、自動車等の内燃機関に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の排ガス浄化触媒を構成するAl酸化物の結晶系の一例(三方晶)を示す斜視図である。
【図2】本発明の排ガス浄化触媒を構成するAl酸化物の結晶系の一例(菱面体晶)を示す斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PdがLn1−aAl1−b(Ln:希土類元素、X:アルカリ土類金属、Z:2〜5族元素又は12〜14族元素、0.02≦a≦0.30、0.02≦b≦0.30)である示性式の複合酸化物上に担持されてなる排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
前記複合酸化物の結晶系が三方晶又は菱面体晶であるとともに、前記複合酸化物の結晶構造がペロブスカイト型構造であることを特徴とする請求項1に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項3】
化合物群(OH基又はSH基を有する炭素数2〜20のカルボン酸、炭素数2又は3のジカルボン酸、及び炭素数1〜20のモノカルボン酸)から選ばれた少なくとも1種を構成元素の硝酸塩水溶液或いは塩化物水溶液に添加する工程を経て製造されたことを特徴とする請求項1又は2に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項4】
前記硝酸塩水溶液或いは塩化物水溶液を蒸発乾固させてカルボン酸錯体重合物を作製する工程と、前記カルボン酸錯体重合物を焼成する焼成工程とを経て製造されたことを特徴とする請求項3に記載の排ガス浄化触媒。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の排ガス浄化触媒を備えた車用排ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−116418(P2006−116418A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−306612(P2004−306612)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】