説明

排ガス浄化触媒

【課題】製造コストが低く、安定供給が可能であり、排ガス中において酸化による活性の低下を防止することができる共に、排ガス中に含まれるCO、THC、及びNOxを十分に浄化することができる排ガス浄化触媒を提供すること。
【解決手段】AB24で表されるスピネル型の複合金属酸化物からなる触媒粒子2を含有する排ガス浄化触媒1である。触媒粒子2においては、複合金属酸化物のAサイト元素がFe、Cr、Co、及びCuから選ばれる少なくとも1つであり、Bサイト元素がMn、Fe、Cr、Co、及びAlから選ばれる少なくとも1つである。排ガス浄化触媒1は、触媒粒子2と、Al23、ZrO2、TiO2、及びSiO2から選ばれる少なくとも1つからなる担体粒子3とを含有することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガスを浄化する排ガス浄化触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等から排出される排ガスに含まれるHC、CO、NOxなどの有害成分を浄化するため、排ガス浄化触媒が用いられている。排ガス浄化触媒としては、Pt、Pd、Rhなどの貴金属触媒が使用されている。これらの貴金属触媒は、排ガスとの接触面積を高めるために、ハニカム構造体の表面においてアルミナなどの担体に担持されて用いられる。貴金属触媒は、有害成分を高い活性で浄化することができる反面、コストが高く、また安定供給の観点からも懸念がある。また、貴金属触媒には、酸化により活性が低下するという問題がある。そこで、高温条件下で長期間にわたって排ガスを浄化できる触媒の開発が望まれている。
【0003】
具体的には、燃料電池等の改質触媒(特許文献1参照)等として利用されているスピネル構造の複合金属酸化物を担体として用い、貴金属等の活性金属を担持した排ガス浄化触媒が開発されている(特許文献2参照)。このように、スピネル構造の複合金属酸化物を担体として用いることにより、貴金属量を抑えて、触媒活性の低下を抑制することができると考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−69105号公報
【特許文献2】特開2010−207807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の排ガス浄化触媒は、貴金属を触媒の活性成分とするため、量を減らすことができたとしても、依然として貴金属を必要としている。そのため、コストの低下を若干抑制できたとしても、高価な貴金属を必要とするため、製造コストは依然として高く、また供給が不安定になるおそれがある。また、活性の低下を抑制できたとしても、活性成分は貴金属であるため、長期間の使用においては酸化による触媒活性の活性は避けられない。
【0006】
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであって、製造コストが低く、安定供給が可能であり、排ガス中において酸化による活性の低下を防止することができる共に、排ガス中に含まれるCO、THC、及びNOxを十分に浄化することができる排ガス浄化触媒を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、排ガスを浄化する排ガス浄化触媒において、
AB24で表されるスピネル型の複合金属酸化物からなる触媒粒子を含有し、
上記複合金属酸化物のAサイト元素がFe、Cr、Co、及びCuから選ばれる少なくとも1つであり、Bサイト元素がMn、Fe、Cr、Co、及びAlから選ばれる少なくとも1つである(但し、Aサイト元素とBサイト元素が同じ元素のもの、Aサイト元素がFeでありかつBサイト元素がAlであるもの、Aサイト元素がCrでありかつBサイト元素がAlであるもの、Aサイト元素がCoでありかつBサイト元素がAlであるものを除く)ことを特徴とする排ガス浄化触媒にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0008】
上記排ガス浄化触媒は上記触媒粒子を含有し、該触媒粒子は、上記特定のスピネル型の複合金属酸化物からなる。そのため、上記排ガス浄化触媒は、例えば600℃以下という比較的低温度で、排ガス中に含まれるCO、THC、及びNOxを十分に浄化することができる。また、上記触媒粒子は、複合金属酸化物からなるため、酸化されることがない。そのため、酸化による触媒活性の低下を防止することができる。
【0009】
また、上記排ガス浄化触媒においては、貴金属を用いなくとも、上記特定のスピネル型の複合金属酸化物が十分に排ガスを浄化することができる。そのため、低コストで製造できる。
また、上記触媒粒子において、複合金属酸化物は、自然界に比較的豊富に存在する金属元素により構成されている。そのため、上記排ガス浄化触媒は、安定的に供給することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例1における、排ガス浄化触媒の構成を示す説明図。
【図2】実施例1における、ハニカム構造体からなる基材の全体構成を示す説明図。
【図3】実施例1における、ハニカム構造体からなる基材の軸方向における断面を示す説明図。
【図4】実施例1における、ハニカム構造体からなる基材の多孔質隔壁に担持された排ガス浄化触媒を示す説明図。
【図5】実施例2における、排ガス浄化触媒の構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の好ましい実施形態について説明する。
上記排ガス浄化触媒における上記触媒粒子は、AB24で表されるスピネル型の複合金属酸化物のAサイト元素はFe、Cr、Co、及びCuから選ばれる少なくとも1つであり、Bサイト元素はMn、Fe、Cr、Co、及びAlから選ばれる少なくとも1つである。但し、Aサイト元素とBサイト元素が同じ元素のもの、Aサイト元素がFeでありかつBサイト元素がAlであるもの、Aサイト元素がCrでありかつBサイト元素がAlであるもの、Aサイト元素がCoでありかつBサイト元素がAlであるものを除く。
具体的には、上記複合金属酸化物としては、FeMn24、FeCr24、FeCo24、CrMn24、CrFe24、CrCo24、CoMn24、CoFe24、CoCr24、CuMn24、CuFe24、CuCr24、CuCo24、及びCuAl24がある。複合酸化物としては、これらのうち1種又は2種以上を用いることができる。
【0012】
上記複合金属酸化物は、CuFe24、FeCr24、CuCr24であることが好ましい。この場合には、より低温で、排ガス中に含まれるCO、THC、及びNOxの全てを浄化することができる。また、Crの排出を防止できるという観点から、上記排ガス浄化触媒における複合金属酸化物はCuFe24であることがより好ましい。
【0013】
上記排ガス浄化触媒は、自動車等のエンジンから排出される排ガス中に含まれるCO、THC、及びNOx等の有害成分を除去するために用いられる。
上記排ガス浄化触媒は、基材に担持して用いることができる。該基材としては、例えば多孔質隔壁を多角形格子状に配して軸方向に伸びる多数のセルを形成したハニカム構造体を採用することができる。上記多孔質隔壁等の上記排ガス浄化触媒を担持させることにより、上記セル内に上記排ガスを通過させて効率的に排ガスの浄化を行うことができる。
ハニカム構造体としては、例えばコーディエライト、SiC、アルミナ、チタン酸アルミニウム、ゼオライト、又はSiO2等からなるものを採用することができる。
【0014】
上記排ガス浄化触媒を上記基材に担持させる場合には、一成分の複合金属酸化物からなる触媒粒子を担持させることもできるが、AサイトとBサイトとの組み合わせが異なる複数の複合金属酸化物をそれぞれ異なる基材に担持させることもできる。例えば、上記スピネル型の複合酸化物のうち、COやTHCの酸化反応が必要な浄化性能に特に優れた複合金属酸化物からなる触媒粒子を一つの基材に担持して排ガス流路の上流側に配置し、NOxの還元反応が必要な浄化性能に特に優れた複合酸化物からなる触媒粒子を別の基材に担持して排ガス流路の下流側に配置することができる。これにより、排ガスの浄化をより効率的に行うことが可能になる。
【0015】
上記排ガス浄化触媒においては、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Ag、及びAuの含有量が0〜0.1μg/gであることが好ましい(請求項2)。最も好ましくは、上記排ガス浄化触媒は、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Ag、及びAuを実質的に含有していないことがよい。
この場合には、貴金属を用いなくとも、排ガスを十分に浄化できるという上述の作用効果がより顕著になる。
【0016】
上記排ガス浄化触媒は、上記触媒粒子と、Al23、ZrO2、TiO2、及びSiO2から選ばれる少なくとも1つからなる担体粒子とを含有することが好ましい(請求項3)。
この場合には、上記担体粒子の集合によって多孔質構造を得ることができ、上記排ガス浄化触媒の表面積を大きくすることができる。そのため、上記排ガス浄化触媒の排ガスとの反応性をより向上させることができる。上記触媒粒子は、上記担体粒子に担持させることができる。なお、上記担体粒子の粒径は、上記触媒粒子の粒径よりも大きいことが好ましい。
【0017】
上記触媒粒子は平均粒径が20nm以下であり、上記担体粒子は平均粒径が5〜50nmであることが好ましい(請求項4)。
この場合には、上記排ガス浄化触媒の排ガスとの反応性をより一層向上させることができる。同様の観点から、上記担体粒子の平均粒径に対する上記触媒粒子の平均粒径の比は、1/3以下であることが好ましい。
【0018】
上記触媒粒子は、上述した特定の複合金属酸化物のみから構成してもよいが、さらに次の構成をとることもできる。
すなわち、上記触媒粒子の表面には、Mn、Fe、Cr、Co、Cuの少なくとも1つの金属元素を含む酸化物微粒子が存在している構成とすることができる(請求項5)。
上記触媒粒子がその表面に上記酸化物微粒子を備えることにより、さらに浄化性能を向上させることが可能となる。
【0019】
上記酸化物微粒子の上記触媒粒子表面での存在状態としては、上記触媒粒子の表面に接触して吸着されている状態、あるいは、固着している状態などがある。つまり、上記酸化物微粒子は、上記触媒粒子の表面に担持されていると表現することもできる。また、上記酸化物微粒子は、上記触媒粒子よりも小さく、具体的には外径が3nm程度あるいはそれ以下のものであることが好ましい。
【0020】
上記酸化物微粒子は、上記のごとく、Mn、Fe、Cr、Co、Cuの少なくとも1つの金属元素を含む酸化物から構成される。Mn、Fe、Cr、Co、Cuは、遷移金属のうちのいわゆる3d軌道を有する3d遷移金属に属するものであり、これらの酸化物が、上記特定の複合金属酸化物よりなる触媒粒子の表面に存在することが浄化性能の向上に寄与していると考えられる。上記酸化物微粒子を構成しうる具体的な酸化物としては、MnO、MnO2、FeO、Fe34、Fe23、CrO、CrO2、CoO、Co34、CuO、Cu2O等がある。
【0021】
上記酸化物微粒子は、上記複合金属酸化物の上記Aサイト元素又は上記Bサイト元素と同じ金属元素を含んでいることが好ましい(請求項6)。この場合には、上記触媒粒子の表面への上記酸化物微粒子の配置が比較的容易となる。また、上記排ガス浄化触媒の浄化性能をより向上させることができる。
【0022】
上記触媒粒子における上記複合金属酸化物の含有量(モル)に対する、上記酸化物微粒子における上記酸化物中含まれる上記金属元素の含有量(モル)は、1/3以下にすることができる(請求項7)。即ち、上記触媒粒子における上記複合金属酸化物の含有量(モル)をPとし、上記酸化物微粒子における上記酸化物中含まれる上記金属元素の含有量(モル)をQとすると、Q/Pを1/3以下にすることができる。これ以上の割合で上記酸化物微粒子を上記触媒粒子上に存在させても、酸化物微粒子の存在による浄化性能の更なる向上は困難である。一方、上記酸化物微粒子の存在による浄化性能の向上効果をより確実に得るためには、上記酸化物微粒子における上記酸化物中含まれる上記金属元素の含有量(モル)は、上記触媒粒子における上記複合金属酸化物の含有量(モル)に対して、1/20以上、即ちQ/Pが1/20以上であることが好ましい。
【実施例】
【0023】
(実施例1)
次に、排ガス浄化触媒の実施例について説明する。
本例においては、排ガスを浄化する排ガス浄化触媒を製造する。
図1に示すごとく、本例の排ガス浄化触媒1は、AB24で表されるスピネル型の複合金属酸化物からなる触媒粒子2を含有する。排ガス浄化触媒1は、触媒粒子2と担体粒子3とを含有する。本例において後述する試料X1を例にとると、触媒粒子2は、AサイトがCu、BサイトがFeであるCuFe24からなる。また、担体粒子3は、Al23からなる。排ガス浄化触媒1においては、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Ag、及びAuの含有量が0μg/gである。
【0024】
以下、本例の排ガス浄化触媒(試料X1)の製造方法について説明する。
金属元素のモル比でCu/Fe=0.5となるように水酸化銅4.9gと硝酸鉄9水和物40.4gとをビーカ中で水900mlに溶解させた。次いで、撹拌子で溶液を撹拌しながら、ジエタノールアミンを添加した。24時間経過後、遠心分離により生成物を分離し、水による洗浄を3回繰り返し、ジエタノールアミンを除去し、固形状合成物(CuFe24の水酸化物)を得た。次に、水中に分散した固形状合成物に、硝酸又は塩酸等の酸を添加してpHを3以下にすることにより、固形状合成物を再度水に溶解させた。
【0025】
水に溶解した固形状合成物について、その平均粒径を動的光散乱法により測定した。その結果、固形状合成物の平均粒径は5nmであった。
また、固形状合成物を温度600℃以上で焼成することにより、CuFe24を主成分とする複合金属酸化物からなる触媒粒子が合成されることをX線回折により確認した。また、触媒粒子を透過型電子顕微鏡にて観察し、その一次粒子径(平均粒径)が5nmであることを確認した。平均粒径は、透過型電子顕微鏡観察により、100個以上の触媒粒子の一次粒子径の算術平均により求めた。
【0026】
次に、固形状合成物の水溶液に、平均粒径20nmのべーマイト水溶液を混合して混合液を得た。混合は、後述の焼成後に生成するCuFe24からなる触媒粒子と酸化アルミニウムからなる担体粒子との重量比(触媒粒子:担体粒子)が1:3となるような配合割合で行った。なお、ベーマイト水溶液の平均粒径は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。
【0027】
次いで、混合液を凍結乾燥により乾燥させて水分を除去した。そして、乾燥後の固形物を温度600℃で大気雰囲気にて焼成して排ガス浄化触媒を得た。
得られた排ガス浄化触媒の透過型電子顕微鏡観察により、図1に示すように、排ガス浄化触媒1においては、CuFe24からなる平均粒径5nmの触媒粒子2とAl23からなる平均粒径20nmの担体粒子3が形成されていることを確認した。平均粒径は、透過型電子顕微鏡観察により、100個以上の粒子の一次粒子径の算術平均により求めた。
以上のようにして、CuFe24からなる触媒粒子とAl23からなる担体粒子とからなる排ガス浄化触媒を得た。これを試料X1とする。
【0028】
次に、AサイトとBサイトとの組み合わせが試料X1とは異なる複合金属酸化物からなる触媒粒子を含有する複数の排ガス浄化触媒(試料X2〜試料X12)を作製した。試料X2〜X12は、試料X1と同様に、AB24で表されるスピネル型の複合金属酸化物からなる触媒粒子と、アルミナからなる担体粒子とを含有する。
【0029】
具体的には、試料X2は、触媒粒子として、CuMn24の粒子を含有する。
試料X2は、その作製時に、水酸化銅4.9g及び硝酸鉄9水和物40.4gの代わりに、金属元素のモル比でCu/Mn=0.5となるように水酸化銅4.9g及び硝酸マンガン6水和物28.6gを用いた点を除いては、上記試料X1と同様にして作製した。
【0030】
また、試料X3は、触媒粒子として、FeCr24の粒子を含有する。
試料X3は、その作製時に、水酸化銅4.9g及び硝酸鉄9水和物40.4gの代わりに、金属元素のモル比でFe/Cr=0.5となるように硝酸鉄9水和物20.2g及び硝酸クロム9水和物39.8gを用いた点を除いては、上記試料X1と同様にして作製した。
【0031】
また、試料X4は、触媒粒子として、CuCr24の粒子を含有する。
試料X4は、その作製時に、水酸化銅4.9g及び硝酸鉄9水和物40.4gの代わりに、金属元素のモル比でCu/Cr=0.5となるように水酸化銅4.9g及び硝酸クロム9水和物39.8gを用いた点を除いては、上記試料X1と同様にして作製した。
【0032】
また、試料X5は、触媒粒子として、CuAl24の粒子を含有する。
試料X5は、その作製時に、水酸化銅4.9g及び硝酸鉄9水和物40.4gの代わりに、金属元素のモル比でCu/Al=0.5となるように水酸化銅4.9g及び硝酸アルミニウム9水和物37.3gを用いた点を除いては、上記試料X1と同様にして作製した。
【0033】
また、試料X6は、触媒粒子として、CoFe24の粒子を含有する。
試料X6は、その作製時に、水酸化銅4.9g及び硝酸鉄9水和物40.4gの代わりに、金属元素のモル比でCo/Fe=0.5となるように硝酸コバルト6水和物14.0g及び硝酸鉄9水和物40.4gを用いた点を除いては、上記試料X1と同様にして作製した。
【0034】
また、試料X7は、触媒粒子として、CuCo24の粒子を含有する。
試料X7は、その作製時に、水酸化銅4.9g及び硝酸鉄9水和物40.4gの代わりに、金属元素のモル比でCu/Co=0.5となるように水酸化銅4.9g及び硝酸コバルト6水和物29.0gを用いた点を除いては、上記試料X1と同様にして作製した。
【0035】
また、試料X8は、触媒粒子として、CrFe24の粒子を含有する。
試料X8は、その作製時に、水酸化銅4.9g及び硝酸鉄9水和物40.4gの代わりに、金属元素のモル比でCr/Fe=0.5となるように硝酸クロム9水和物19.0g及び硝酸鉄9水和物40.4gを用いた点を除いては、上記試料X1と同様にして作製した。
【0036】
また、試料X9は、触媒粒子として、FeCo24の粒子を含有する。
試料X9は、その作製時に、水酸化銅4.9g及び硝酸鉄9水和物40.4gの代わりに、金属元素のモル比でFe/Co=0.5となるように硝酸鉄9水和物20.2g及び硝酸コバルト6水和物29.0gを用いた点を除いては、上記試料X1と同様にして作製した。
【0037】
また、試料X10は、触媒粒子として、FeAl24の粒子を含有する。
試料X10は、その作製時に、水酸化銅4.9g及び硝酸鉄9水和物40.4gの代わりに、金属元素のモル比でFe/Al=0.5となるように硝酸鉄9水和物20.2g及び硝酸アルミニウム9水和物37.3gを用いた点を除いては、上記試料X1と同様にして作製した。
【0038】
また、試料X11は、触媒粒子として、CoAl24の粒子を含有する。
試料X11は、その作製時に、水酸化銅4.9g及び硝酸鉄9水和物40.4gの代わりに、金属元素のモル比でCo/Al=0.5となるように硝酸コバルト6水和物14.0g及び硝酸アルミニウム9水和物37.3gを用いた点を除いては、上記試料X1と同様にして作製した。
【0039】
また、試料X12は、触媒粒子として、CrAl24の粒子を含有する。
試料X12は、その作製時に、水酸化銅4.9g及び硝酸鉄9水和物40.4gの代わりに、金属元素のモル比でCr/Al=0.5となるように硝酸クロム9水和物19.0g及び硝酸アルミニウム9水和物37.3gを用いた点を除いては、上記試料X1と同様にして作製した。
【0040】
また、本例においては、スピネル構造の複合金属酸化物以外の例として、各種金属酸化物又は各種複合金属酸化物からなる触媒粒子を含有する排ガス浄化触媒(試料X13〜試料X18)を作製した。試料X13〜X18は、試料X1と同様に、触媒粒子と、アルミナからなる担体粒子とからなる。
【0041】
具体的には、試料X13は、触媒粒子として、Cr23粒子を含有する。
試料X13は、その作製時に、水酸化銅4.9g及び硝酸鉄9水和物40.4gの代わりに、硝酸クロム9水和物24.0gを用いた点を除いては、上記試料X1と同様にして作製した。
【0042】
また、試料X14は、触媒粒子としてMn23粒子を含有する。
試料X14は、その作製時に、水酸化銅4.9g及び硝酸鉄9水和物40.4gの代わりに、硝酸マンガン6水和物17.2gを用いた点を除いては、上記試料X1と同様にして作製した。
【0043】
また、試料X15は、触媒粒子としてFe23粒子を含有する。
試料X15は、その作製時に、水酸化銅4.9g及び硝酸鉄9水和物40.4gの代わりに、硝酸鉄9水和物24.2gを用いた点を除いては、上記試料X1と同様にして作製した。
【0044】
また、試料X16は、触媒粒子としてCo34粒子を含有する。
試料X16は、その作製時に、水酸化銅4.9g及び硝酸鉄9水和物40.4gの代わりに、硝酸コバルト6水和物17.4gを用いた点を除いては、上記試料X1と同様にして作製した。
【0045】
また、試料X17は、触媒粒子としてMgAl24粒子を含有する。
試料X17は、その作製時に、水酸化銅4.9g及び硝酸鉄9水和物40.4gの代わりに、金属元素のモル比でMg/Al=0.5となるように硝酸マグネシウム6水和物12.8g及び硝酸アルミニウム9水和物37.3gを用いた点を除いては、上記試料X1と同様にして作製した。
【0046】
また、試料X18は、触媒粒子としてLaAl24粒子を含有する。
試料X18は、その作製時に、水酸化銅4.9g及び硝酸鉄9水和物40.4gの代わりに、金属元素のモル比でLa/Al=0.5となるように硝酸ランタン6水和物21.7g及び硝酸アルミニウム9水和物37.3gを用いた点を除いては、上記試料X1と同様にして作製した。
【0047】
次に、上記のように作製した18種類の排ガス浄化触媒(試料X1〜試料X18)をそれぞれ基材に担持した。
具体的には、まず、図2及び図3に示すごとく、基材4として、コーディエライトからなり、多孔質隔壁41を四角形格子状に配して軸方向に伸びる多数のセル42を形成してなるハニカム構造体を準備した。
【0048】
次いで、各排ガス浄化触媒(試料X1〜試料X18)をそれぞれ水に分散させてスラリーとした。そして、各スラリー中に基材をそれぞれ浸漬し、スラリー中の各排ガス浄化触媒(試料X1〜試料X18)をそれぞれ基材に均一にコートした。
次に、排ガス浄化触媒をコートした各基材を温度600℃で2時間焼成することにより、排ガス浄化触媒を基材に焼き付けた。このようにして、図4に示すごとく、触媒粒子2と担体粒子3とからなる排ガス浄化触媒1を、基材4の多孔質隔壁41等に担持させた。多孔質隔壁41には、多数の細孔415が形成されており、排ガス浄化触媒1は、細孔415内まで担持されている。
【0049】
次に、各排ガス浄化触媒(試料X1〜試料X18)を担持した基材を用いて、排ガスに対する浄化性能の評価を行った。
具体的には、排ガス浄化触媒を担持した各基材に、排気ガスのモデルガスを流速35000kL/秒で流通させた。モデルガスの成分は、THC(炭化水素ガスの総称):1300ppm、CO:5500ppm、NO:2500ppm、CO2、O2:0.5vol%、H2O、N2、H2:残部である。そして、流入ガスの温度を室温から一定の割合で上昇させ、排ガス浄化触媒を担持した基材を通過した排ガス中に含まれるCO、THC、及びNOの濃度をモニタリングした。そして、流入ガス中に含まれる排ガスに比べて、基材を通過した排ガス中に含まれるCO、THC、及びNOの濃度がそれぞれ50%になったときの温度を測定し、これを浄化温度とした。その結果を表1に示す。なお、表1には、各排ガス浄化触媒(試料X1〜試料X18)における触媒粒子の種類、触媒粒子の平均粒径(nm)、及び担体粒子の平均粒径(nm)を併記する。
【0050】
【表1】

【0051】
表1より知られるごとく、AB24で表されるスピネル型の複合金属酸化物のうち、Aサイト元素がFe、Cr、Co、及びCuから選ばれる少なくとも1つであり、Bサイト元素がMn、Fe、Cr、Co、及びAlから選ばれる少なくとも1つである(但し、Aサイト元素とBサイト元素が同じ元素のもの、Aサイト元素がFeでありかつBサイト元素がAlであるもの、Aサイト元素がCrでありかつBサイト元素がAlであるもの、Aサイト元素がCoでありかつBサイト元素がAlであるものを除く)複合金属酸化物からなる触媒粒子を含有する排ガス浄化触媒(試料X1〜試料X9)は、比較的低温度で、排ガス中に含まれるCO、THC、及びNOxの全てを十分に浄化できることがわかる。
これに対し、他の排ガス浄化触媒(試料X10〜試料X18)は、CO、THC、及びNOxの全てを浄化することはできない。
【0052】
また、試料X1〜試料X9の排ガス浄化用触媒は、複合金属酸化物からなるため、酸化されることがない。そのため、例えば貴金属等からなる排ガス浄化触媒に比べて、酸化による触媒活性の低下を防止することができる。
【0053】
また、試料X1〜試料X9の排ガス浄化触媒においては、貴金属を用いなくとも、上記特定のスピネル型の複合金属酸化物が十分に排ガスを浄化することができる(表1参照)。そのため、低コストで製造できる。また、試料X1〜試料X9の排ガス浄化触媒において、複合金属酸化物は、自然界に比較的豊富に存在する金属元素により構成されている。そのため、試料X1〜試料X9の排ガス浄化触媒は、安定的に供給することが可能である。
【0054】
(実施例2)
さらに、排ガス浄化触媒の実施例について説明する。
図5に示すごとく、本例の排ガス浄化触媒102が含む触媒粒子2は、その表面に、Mn、Fe、Cr、Co、Cuの少なくとも1つの金属元素を含む酸化物微粒子5が存在した構成を有している。つまり、排ガス浄化触媒102は、酸化物微粒子5を備えた触媒粒子2と担体粒子3とを含有してなる。
【0055】
本例の触媒粒子2は、実施例1と同様に、AB24で表されるスピネル型の複合金属酸化物からなる。本例において後述する試料X19を例にとると、触媒粒子2は、AサイトがFe、BサイトがAlである複合金属酸化物FeAl24の表面に、Feの酸化物からなる酸化物微粒子5が存在するものである(適宜、Fe/FeAl24と表現する)。また、担体粒子3は、Al23からなる。排ガス浄化触媒102においても、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Ag、及びAuの含有量が0μg/gである。
【0056】
試料X19の触媒粒子2は、実施例1の試料X1の製造方法を基本として、水酸化銅4.9g及び硝酸鉄9水和物40.4gの代わりに、金属元素のモル比でFe/Al=0.5となるように硝酸鉄9水和物20.2g及び硝酸アルミニウム9水和物37.3gを用いた点を除いては、上記試料X1と同様にして作製した。
そして、この触媒粒子2に対してモル比でFe:スピネル=1:6となるように硝酸鉄9水和物を添加し、超音波攪拌を実施し、その後、150℃の温度で20時間保持する乾燥と、600℃の温度に4時間保持する焼成を経て、その表面にFeの酸化物からなる酸化物微粒子5が存在する状態とした。酸化物微粒子5を構成するFe酸化物は、Fe23又はFe34からなる(以下、同様)。
【0057】
また、試料X20は、表面に酸化物微粒子5を備えた触媒粒子2として、Co/CoFe24の粒子を含有する。
試料X20の触媒粒子2は、その作製時に、水酸化銅4.9g及び硝酸鉄9水和物40.4gの代わりに、金属元素のモル比でCo/Fe=0.5となるように硝酸鉄9水和物20.2g及び硝酸コバルト6水和物12.5gを用いた点を除いては、上記試料X1と同様にして作製した。
そして、この触媒粒子2に対してモル比でCo:スピネル=1:6となるように硝酸コバルト6水和物を添加し、超音波攪拌実施し、その後、上記と同様の乾燥と焼成を経て、その表面にCoの酸化物からなる酸化物微粒子5が存在する状態とした。酸化物微粒子5を構成するCo酸化物は、CoO2からなる。
【0058】
また、試料X21は、表面に酸化物微粒子5を備えた触媒粒子2として、Fe/CoFe24の粒子を含有する。
試料X21の触媒粒子2は、その作製時に、水酸化銅4.9g及び硝酸鉄9水和物40.4gの代わりに、金属元素のモル比でCo/Fe=0.5となるように硝酸鉄9水和物20.2g及び硝酸コバルト6水和物12.5gを用いた点を除いては、上記試料X1と同様にして作製した。
そして、この触媒粒子2に対してモル比でFe:スピネル=1:6となるように硝酸鉄9水和物を添加し、超音波攪拌実施し、その後、上記と同様の乾燥と焼成を経て、その表面にFeの酸化物からなる酸化物微粒子5が存在する状態とした。
【0059】
次に、上記のように作製した3種類の排ガス浄化触媒(試料X19〜試料X21)をそれぞれ基材に担持した。具体的な方法は、実施例1と同様とした。
【0060】
次に、各排ガス浄化触媒(試料X19〜試料X21)を担持した基材を用いて、排ガスに対する浄化性能の評価を行った。
具体的な評価方法も、実施例1と同様である。この結果を表2に示す。なお、表2には、各排ガス浄化触媒(試料X19〜試料X21)における触媒粒子の種類、触媒粒子の平均粒径(nm)、及び担体粒子の平均粒径(nm)を併記する。
【0061】
【表2】

【0062】
表2より知られるごとく、本例のすべての排ガス浄化触媒(試料X19〜試料X21)は、比較的低温度で、排ガス中に含まれるCO、THC、及びNOxの全てを十分に浄化できることがわかる。特に、THCの浄化温度は、実施例1の場合よりも大きく低下しており、触媒粒子2の表面に酸化物微粒子5を存在させることが非常に有効であることがわかる。
【符号の説明】
【0063】
1 排ガス浄化触媒
2 触媒粒子
3 担体粒子
4 基材
5 酸化物微粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスを浄化する排ガス浄化触媒において、
AB24で表されるスピネル型の複合金属酸化物からなる触媒粒子を含有し、
上記複合金属酸化物のAサイト元素がFe、Cr、Co、及びCuから選ばれる少なくとも1つであり、Bサイト元素がMn、Fe、Cr、Co、及びAlから選ばれる少なくとも1つである(但し、Aサイト元素とBサイト元素が同じ元素のもの、Aサイト元素がFeでありかつBサイト元素がAlであるもの、Aサイト元素がCrでありかつBサイト元素がAlであるもの、Aサイト元素がCoでありかつBサイト元素がAlであるものを除く)ことを特徴とする排ガス浄化触媒。
【請求項2】
請求項1に記載の排ガス浄化触媒は、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Pt、Ag、及びAuの含有量が0〜0.1μg/gであることを特徴とする排ガス浄化触媒。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の排ガス浄化触媒は、上記触媒粒子と、Al23、ZrO2、TiO2、及びSiO2から選ばれる少なくとも1つからなる担体粒子とを含有することを特徴とする排ガス浄化触媒。
【請求項4】
請求項3に記載の排ガス浄化触媒において、上記触媒粒子は平均粒径が20nm以下であり、上記担体粒子は平均粒径が5〜50nmであることを特徴とする排ガス浄化触媒。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の排ガス浄化触媒において、上記触媒粒子の表面には、Mn、Fe、Cr、Co、Cuの少なくとも1つの金属元素を含む酸化物微粒子が存在していることを特徴とする排ガス浄化触媒。
【請求項6】
請求項5に記載の排ガス浄化触媒において、上記酸化物微粒子は、上記複合金属酸化物の上記Aサイト元素又は上記Bサイト元素と同じ金属元素を含んでいることを特徴とする排ガス浄化触媒。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の排ガス浄化触媒において、上記触媒粒子における上記複合金属酸化物の含有量(モル)に対する、上記酸化物微粒子における上記酸化物中含まれる上記金属元素の含有量(モル)が、1/3以下であることを特徴とする排ガス浄化触媒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−27858(P2013−27858A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246667(P2011−246667)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】