説明

排ガス送風機用インペラーの振動防止方法

【課題】排ガス送風機のインペラーのうちで、翼型の中空羽根を備えたインペラーを対象にして、その翼型中空羽根のエロージョン磨耗に起因して発生する異常振動を的確に防止することができる排ガス送風機用インペラーの振動防止方法を提供する。
【解決手段】インペラー2の異常振動を防止するために、粉塵ダストによるエロージョン磨耗に起因して穴開き部5hが発生した翼型中空羽根(穴開き翼型中空羽根)5Aを特定し、その穴開き翼型中空羽根5Aの穴開き部5hを塞ぐことにより、穴開き翼型中空羽根5Aの中空部5dへの粉塵ダストの蓄積を抑止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼結機等の排ガス発生源から排ガスを集塵機に送給する際に用いる送風機(排ガス送風機)に関するものであり、特に、排ガス送風機におけるインペラーの振動防止方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
焼結機等で発生する排ガスは多量の粉塵ダストを含んでおり、その排ガスは集塵機等に送給されて粉塵を取り除かれて無害化された後に放散される。
【0003】
その際に、焼結機等の排ガス発生源から排ガスを集塵機に送給する手段として、送風機(排ガス送風機)が使用される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−344515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
粉塵ダストを含んだ排ガスを送給する排ガス送風機では、粉塵ダストによりインペラー(羽根車)の羽根がエロージョン磨耗(侵食磨耗)を受ける。その際、エロージョン磨耗は全ての羽根が均一に受けるわけではないので、インペラーのバランスが崩れて、回転がアンバランスになり、異常振動や機械破損が生じるという問題があった。
【0006】
そこで、インペラーの振動が許容上限値に至ると、操業を停止して、インペラーにバランス調整用ウエイトを取り付けるなどのアンバランス修正作業を余儀なくされ、生産性が阻害されていた。
【0007】
しかも、羽根のエロージョン磨耗部の特定やそのエロージョン磨耗の原因追及までは至っておらず、インペラーの異常振動が再発し、その都度、上記のような対処療法をとっていたため、生産性が著しく阻害されていた。
【0008】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、排ガス送風機のインペラーのうちで、翼型の中空羽根を備えたインペラーを対象にして、その翼型中空羽根のエロージョン磨耗に起因して発生する異常振動を的確に防止することができる排ガス送風機用インペラーの振動防止方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は以下のような特徴を有する。
【0010】
[1]排ガス送風機での翼型中空羽根を備えたインペラーの振動防止方法であって、粉塵ダストによるエロージョン磨耗に起因する穴開き部が発生した翼型中空羽根を特定し、その翼型中空羽根の穴開き部を塞ぐことにより、当該翼型中空羽根の中空部への粉塵ダストの蓄積を抑止することを特徴とする排ガス送風機用インペラーの振動防止方法。
【0011】
[2]インペラーの回転により生じるパルス波形と、インペラーの振動により生じる振動波形との位相差から、穴開き部が発生した翼型中空羽根を特定することを特徴とする前記[1]に記載の排ガス送風機用インペラーの振動防止方法。
【0012】
[3]穴開き部が発生したことが特定された翼型中空羽根に対して、エアーノズルを接続して当該翼型中空羽根の中空部に圧縮空気を注入するとともに、当該翼型中空羽根の外表面に石鹸水を塗布し、それによる当該翼型中空羽根の外表面での気泡の発生によって、当該翼型中空羽根の穴開き部の位置を特定することを特徴とする前記[1]または[2]に記載の排ガス送風機用インペラーの振動防止方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によって、排ガス送風機のインペラーでの翼型中空羽根のエロージョン磨耗に起因して発生する異常振動を的確に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態における排ガス送風機の断面図である。
【図2】本発明の一実施形態における排ガス送風機の側面図である。
【図3】翼型中空羽根の穴開き部からの粉塵ダストの侵入状態を示す図である。
【図4】本発明の一実施形態におけるインペラーの軸回転パルス波形と振動波形を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態における翼型中空羽根の中空部への圧縮空気の注入と、翼型中空羽根の外表面への石鹸水の塗布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は本発明の一実施形態における排ガス送風機1を示す断面図であり、図2はその側面図である。
【0017】
図1、図2に示すように、この実施形態における排ガス送風機1のインペラー2では、回転軸3に取り付けられた芯板4の面上に周方向に複数の翼型羽根5(この例では、片面ごとに#1〜#10の10個)が配置されている。これらの翼型羽根5は軽量化のため中空構造(翼型中空羽根)となっている。
【0018】
ここで、翼型中空羽根5は、図3に示すように、翼型中空羽根本体5aと、その表面のトッププレート5bと、その表面の肉盛部5cを有し、翼型中空羽根本体5aの内部が中空部5dとなっている。
【0019】
そして、このインペラー2は回転軸3が軸受6で支持されて回転することで、左右両側から排ガスを吸込む構造になっている。吸引された排ガスは芯板4に衝突して直角に流れを替え、翼型中空羽根5を通過して、芯板4の外周方向へ排気される。
【0020】
その際に、この排ガスは多量の粉塵ダストを含むため、図3に示すように、翼型中空羽根5を通過する時に、翼型中空羽根5の先端部の母材が侵食され、エロージョン磨耗を受けて、穴開き部5hが生じる。この穴開き部5hから粉塵ダストが翼型中空羽根5(5A)の中空部5dに侵入するようになる。
【0021】
そして、回転遠心力によって、穴開き部5hが生じた翼型中空羽根5Aの中空部5dに粉塵ダストが徐々に蓄積され、その翼型中空羽根5Aの重量が増大し、インペラー2全体のバランスが崩れて、回転がアンバランスになり、異常振動が発生することになる。
【0022】
そこで、この実施形態においては、上記のようにして発生するインペラー2の異常振動を防止するために、粉塵ダストによるエロージョン磨耗に起因して穴開き部5hが発生した翼型中空羽根(穴開き翼型中空羽根)5Aを特定し、その穴開き翼型中空羽根5Aの穴開き部5hを塞ぐことにより、穴開き翼型中空羽根5Aの中空部5dへの粉塵ダストの蓄積を抑止するようにしている。
【0023】
その際に、インペラー2の回転により生じるパルス波形と、インペラー2の振動により生じる振動波形との位相差から、穴開き翼型中空羽根5Aを特定するようにしている。
【0024】
すなわち、図2に示すように、インペラー2の回転を計測するためのインペラー回転計測手段11として、インペラー2の回転軸3に#1翼型中空羽根取り付け位置と同じ角度位置で軸回転検出用鉄片12を取り付けるととともに、回転軸3の軸心を通る水平線上に軸回転検出用近接センサー13を固定し、軸回転検出用鉄片12が軸回転検出用近接センサー13の固定角度位置(水平方向位置)を通過する毎にパルス信号が得られるようにしている。また、図2に示すように、インペラー2の振動(ここでは、軸受6の振動)を計測するために、インペラー2の回転軸3の軸心に向く水平線上に振動計14を設置し、インペラー2の振動波形(ここでは、軸受6の水平方向の振動波形)が得られるようにしている。そして、近接センサー13からの軸回転パルス信号(軸回転パルス波形)と振動計14からの軸受振動信号(軸受振動波形)が信号処理装置15に送られ、記録計16からプリントアウトされるようにしている。
【0025】
図4は、プリントアウトされた軸回転パルス波形と軸受振動波形の一例を示すものである。図4から軸受振動波形のピーク値の位置と軸回転パルス波形のパルスの位置との位相差としてX度が求められる。これにより、軸回転検出用鉄片12の角度位置(#1翼型中空羽根の角度位置)からインペラー2の回転方向にX度ずれた角度位置の翼型中空羽根(図2では、#3翼型中空羽根)に穴開き部5hが発生して、その#3翼型中空羽根の中空部5dに粉塵ダストが蓄積し、その重量が増大したと判断される。つまり、#3翼型中空羽根が穴開き翼型中空羽根5Aであると特定される。
【0026】
そして、穴開き翼型中空羽根5Aに対して、その中空部5dの気密試験を行なって、穴開き部5hの位置を特定するようにしている。
【0027】
すなわち、穴開き翼型中空羽根5Aの中空部5dにエアーノズル21を接続して圧縮空気を注入するとともに、穴開き翼型中空羽根5Aの外表面に石鹸水22を塗布する。そして、穴開き翼型中空羽根5Aの外表面での気泡の発生を観測することによって、微細な穴開き部5hの位置を特定することができる。この穴開き部5hに対して肉盛補修を施すことで、穴開き部5hを適切に塞ぐことが可能になる。
【0028】
このようにして、この実施形態においては、インペラー2の穴開き翼型中空羽根5Aの穴開き部5hを適切に塞ぐことができるようになったことから、粉塵ダストが穴開き翼型中空羽根5Aの中空部5dに蓄積して重量が増大することで発生する異常振動の発生を的確に防止することができる。また、排ガス送風機1の運転中にインペラー2の回転パルス波形と振動波形を測定できるので、補修前にインペラー2の穴開き翼型中空羽根5Aを特定することができる。さらに、補修段階では、特定した穴開き翼型中空羽根5Aに対する気密試験によって微細な穴開き部5hの位置を確実に知ることができ、その穴開き部5hに限定して肉盛補修を実施することができるので、補修時間の大幅短縮が達成できる。このような効率的で効果的な補修により、補修費の削減とダウンタイム抑止による生産性向上が達成できる。
【符号の説明】
【0029】
1 排ガス送風機
2 インペラー
3 回転軸
4 芯板
5 翼型中空羽根
5a 翼型中空羽根本体
5b トッププレート
5c 肉盛部
5d 中空部
5h 穴開き部
5A 穴開き翼型中空羽根
6 軸受
11 インペラー回転計測手段
12 軸回転検出用鉄片
13 軸回転検出用近接センサー
14 振動計
15 信号処理装置
16 記録計
21 エアーノズル
22 石鹸水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス送風機での翼型中空羽根を備えたインペラーの振動防止方法であって、粉塵ダストによるエロージョン磨耗に起因する穴開き部が発生した翼型中空羽根を特定し、その翼型中空羽根の穴開き部を塞ぐことにより、当該翼型中空羽根の中空部への粉塵ダストの蓄積を抑止することを特徴とする排ガス送風機用インペラーの振動防止方法。
【請求項2】
インペラーの回転により生じるパルス波形と、インペラーの振動により生じる振動波形との位相差から、穴開き部が発生した翼型中空羽根を特定することを特徴とする請求項1に記載の排ガス送風機用インペラーの振動防止方法。
【請求項3】
穴開き部が発生したことが特定された翼型中空羽根に対して、エアーノズルを接続して当該翼型中空羽根の中空部に圧縮空気を注入するとともに、当該翼型中空羽根の外表面に石鹸水を塗布し、それによる当該翼型中空羽根の外表面での気泡の発生によって、当該翼型中空羽根の穴開き部の位置を特定することを特徴とする請求項1または2に記載の排ガス送風機用インペラーの振動防止方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−137078(P2012−137078A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−291714(P2010−291714)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】