説明

排出ダクトの排出口締切り用ダンパー

【課題】圧力差のある配管系に設置した場合でも粉粒体の排出を安定して行うことができ、かつ、大掛かりな作業を必要とすることなく排出弁本体の取り換えを行えるようにする。
【解決手段】粉粒体を外部に排出する排出ダクト7の排出口7aに設置される締切り用ダンパー11である。ダンパー11は、排出口7aの外周部に、ダンパー本体12の一方側端部を支点とした上下揺動が自在なように設置する。ダンパー本体12に負荷が作用しない状態では、ダンパー本体12は、前記支点よりも排出口7aと反対側に設置した重錐13によって、水平状態或いは前記支点側から上り勾配状態で排出口7aを締め切るように成す。
【効果】重錐の重さを設定するだけで、圧力差のある配管系に設置した場合でも、粉粒体の排出を安定して行うことができる。そして、粉粒体の排出時、排出ダクト内に逆流する粉粒体量が少なくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排出ダクト内を送られてくる粉粒体を必要時に排出すべく、排出ダクトの排出口に設置されるダンパーに関するものであり、特に微粉炭ボイラの底部に落下した塊状の灰に含まれる石炭の灰分(アッシュ)の排出に適したダンパーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
微粉炭ボイラ内での微粉炭の燃焼によって生成された灰は炉壁に付着して成長し、塊状となってボイラ底部に落下する。この落下した塊状の灰をクリンカ灰といい、例えば下記表1に示すような粒径比率で、最大粒径は75mm程度、細かいものはパウダー状の粉粒体である。なお、下記表1に示した値は、発明者が微粉炭ボイラの底部に落下したクリンカ灰をサンプル採取して篩分け試験を行った結果である。
【0003】
【表1】

【0004】
石炭火力発電所の乾式ボトムアッシュ処理設備では、パウダー状の粉粒体を含む前記クリンカ灰をクーリングコンベアから抜き出して外部に排出する排出ダクトの内部は、大気圧下である外部に対して、−0.05〜−0.1kPaの負圧になっている。従って、排出ダクトの先端の排出口が開放されている場合は、圧力差のために外部から排出ダクトの内部に向かう空気の流れが生じる。
【0005】
前記空気の流れが生じた場合でも、粉粒体が粗粒であれば自重によって外部に排出されるが、パウダー状の粉粒体の場合は前記空気流れに随伴して排出ダクト内に逆流する。この逆流したパウダー状の粉粒体は、排出ダクト上流のクーリングコンベア部に堆積して排出ダクトの入口を閉塞するので、粉粒体の排出ができなくなる。
【0006】
このような外部と圧力差のある配管系を介して粉粒体を排出する設備としては、二重排出弁(ダブルダンパー)がよく知られている(例えば特許文献1。)。これは、排出経路内に、粉粒体を一時的に収容する中間室を形成し、この中間室の入口側に第1排出弁を、出口側に第2排出弁を設けた構造である。
【0007】
この二重排出弁構造の場合、第1排出弁を開けて粉粒体を中間室内に落下させ、次に第1排出弁を閉じて、第1排出弁より上流側の圧力が中間室に漏れないようにした状態で、第2排出弁を開けて中間室内の粉体を系外に排出する。
【0008】
この二重排出弁構造によれば、2つの排出弁の開閉を互いにオーバーラップしないタイミングで交互に行うことにより、粉粒体を一定の間隔で排出することができるので、中間室から輸送先容器へバッチ式に高能率で粉粒体を密閉輸送することができる。
【0009】
しかしながら、前記排出ダクトに二重排出弁構造を採用した場合、排出ダクトの内部が負圧であることから、第1排出弁、第2排出弁のどちらも、その上下流の差圧に抗して開けなければならない。この問題は、排出弁が一方側端部を支点として開閉する片開き式の場合に顕著になる。
【0010】
すなわち、第1排出弁より上流側は系統内の負圧が作用し、他方、第1排出弁の開弁前には中間室は大気圧下にあるので、これらの差圧が第1排出弁を閉じる方向に作用する。従って、この第1排出弁を開けるには、前記差圧に抗する回転トルクを第1排出弁に与えなければならない。
【0011】
同様に、第1排出弁を開けて粉粒体を中間室内に落下させた後は、中間室は前記負圧となり、他方、第2排出弁より下流側には大気圧が作用している。従って、第2排出弁を開ける際も、また、前記差圧に抗して行わなければならない。
【0012】
すなわち、二重排出弁を前記排出ダクトの排出口上流側に設置した場合、排出弁のスピーディな開閉が難しいので、排出すべき粉粒体の流量が多くなりすぎると中間室での粉粒体の排出が追いつかなくなって、安定した状態での排出が困難になる。この問題を解決するためには、排出すべき粉粒体の流量を把握して排出弁の開閉にフィードバックする必要があるので、設備構成や制御が複雑になって、そのメンテナンスに要する工数も多くなる。
【0013】
さらに、排出弁本体が排出ダクト内に設置されているため、排出弁本体の取り換えに際しては、排出口を分解する等の大掛りな作業が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】実公昭61−40718号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明が解決しようとする問題点は、圧力差のある配管系に二重排出弁を設置して粉粒体の排出を行う場合は、圧力が作用した状態の排出弁を開閉する必要があるので、粉粒体の排出を安定して行うことが難しいという点である。また、排出弁本体が排出ダクト内に設置されているため、排出弁本体の取り換えに際しては、排出口を分解する等の大掛りな作業が発生するという点である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の排出ダクトの排出口締切り用ダンパーは、
圧力差のある配管系に設置した場合でも粉粒体の排出を安定して行うことができ、かつ、大掛かりな作業を必要とすることなく排出弁本体の取り換えを行えるようにするために、
粉粒体を外部に排出する排出ダクトの排出口に設置される締切り用ダンパーであって、
当該ダンパーは、前記排出口の外周部に、ダンパー本体の一方側端部を支点とした上下揺動が自在なように設置され、
ダンパー本体に負荷が作用しない状態では、前記ダンパー本体は、前記支点よりも前記排出口と反対側に設置した重錐によって、水平状態或いは前記支点側から上り勾配状態で前記排出口を締切るように成されていることを最も主要な特徴としている。
【0017】
本発明では、ダンパー本体の排出ダクト内側の面上に粉粒体が存在しないか、存在する粉粒体の重さがある値になるまでは、重錐の作用によってダンパー本体は締切り状態を維持する。一方、ダンパー本体の排出ダクト内側の面上に存在する粉粒体の重さがある値以上になると、重錐の重量に打ち勝ってダンパー本体が開動作して粉粒体を排出する。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、ダンパー本体の排出ダクト内側の面上に存在する粉粒体の重さがある値以上になると、重錐の重量に打ち勝ってダンパー本体が開動作するように重錐の重さを設定するだけで、圧力差のある配管系に設置した場合でも、粉粒体の排出を安定して行うことができる。
【0019】
そして、粉粒体の排出時にダンパー本体が開いた状態では、重錐は負荷が作用しない状態から高く持ち上げられるので、粉粒体の排出後、ダンパー本体が閉じる迄の時間が短くなって排出ダクト内に外気が吸い込まれる時間が短くなり、排出ダクト内に逆流する粉粒体量が少なくなる。
【0020】
また、本発明では、ダンパー本体、重錐を排出口の外周部に設置しているので、ダンパー本体の取り換えやメンテナンスを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の締切り用ダンパーを設置した石炭火力発電所の乾式クリンカアッシュ処理設備の全体概略図である。
【図2】排出ダクトの排出口に設置する本発明の締切り用ダンパーを下方向から見た斜視図である。
【図3】本発明の締切り用ダンパーを設置した排出口部を側面方向から見た図である。
【図4】本発明の締切り用ダンパーのダンパー本体を側面方向から見た図である。
【図5】図4を平面方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明では、圧力差のある配管系における粉粒体の排出を安定して行うという目的を、一方側端部を支点として上下揺動が自在なダンパー本体を、負荷が作用しない状態で、重錐によって、水平状態或いは前記支点側から上り勾配状態で前記排出口を締切るようになすことで実現した。
【実施例】
【0023】
以下、本発明を、石炭火力発電所の乾式ボトムアッシュ処理設備の排出ダクトに設置した場合の実施例について、図1〜図5を参照しながら説明する。
【0024】
図1は本発明の締切り用ダンパーを設置した石炭火力発電所の乾式クリンカアッシュ処理設備の全体概略図であり、以下のような構成である。
【0025】
1は微粉炭を燃焼するボイラであり、微粉炭の燃焼によって生成された灰は炉壁に付着して成長し、塊状となってその底部に落下する。この落下した塊状のクリンカ灰は、クリンカコンベア2によって炉外に搬出される。なお、8はボイラ内の圧力を計測する圧力計、9は前記クリンカ灰のボイラ底部への落下量を調整するダンパーである。
【0026】
炉外に搬出されたクリンカ灰は、一次破砕機3で粉砕されて冷却効率を高められた後、クーリングコンベア4によって冷却されつつクリンカタンク5まで搬送される。そして、クリンカタンク5への受け渡し前に、二次破砕機6で所定の大きさに粉砕される他、二次破砕機6の上流側から別途排出ダクト7に抜き出される。
【0027】
本発明の締切り用ダンパー11は、前記排出ダクト7の先端の排出口7aの外周部に、一方側端部を支点とする上下揺動自在に設置して排出口7aを外側から締切ったり、送られてきた粉粒体を排出すべく開くものであり、例えば図2〜図5に示すような構成である。
【0028】
12は前記排出口7aの内径より大きい板状のダンパー本体であり、その一方側を前記排出口7aの外周壁に直接、又は前記排出口7aの外周部近傍にて蝶番等を介して上下揺動自在に取り付けると共に、前記上下揺動の支点よりも前記排出口7aと反対側に重錐13を取り付けている。そして、ダンパー本体12に粉粒体が存在しない場合には、ダンパー本体12は、重錐13によって水平状態或いは前記支点側から上り勾配状態で排出口7aを締め切るように成されている。
【0029】
例えば図2〜5に示した例では、前記排出口7a近傍の排出ダクト7の外周にブラケット14を接合している。そして、このブラケット14に形成した穿孔14aと、ダンパー本体12の一方側に接合した取り付け部材15に形成した穿孔15aを一致させてピン16により接合することで、ピン16を支点としてダンパー本体12が上下揺動自在なようにしている。但し、接合の方法としてここではピン16を用いたが、ダンパー本体12が上下揺動自在にできるものであればどのようなものでもよい。
【0030】
また、前記取り付け部材15には、上記穿孔15aより排出口7aと反対の側に第2穿孔15bを形成し、この第2穿孔15bに丸棒等の接続治具17を貫通させて重錐13を一体的に取り付けている。
【0031】
上記構成の締切り用ダンパー11では、以下のように動作する。
ダンパー本体12には、自らの自重による下向力F1と、ダンパー本体12に設置した重錐13の作用による上向力F2が作用する。また、系統内の圧力をP、排出口7aの端部の有効面積をAとすると、ダンパー本体12にはP×Aの力が作用する。
【0032】
従って、ダンパー本体12に作用する全体の力f1は、f1=(P×A)−F1+F2となり、f1>0の時、排出口7aの端面とダンパー本体12の排出ダクト内側の面(以下、表面という。)12aが面接触して締切り状態を維持する。
【0033】
一方、ダンパー本体12の表面12aに粉粒体が堆積すると、ダンパー本体12に下向力Mgが作用する。この時、ダンパー本体12に作用する全体の力f2は、f2=(P×A)−Mg−F1+F2となる。そして、ダンパー本体12上に粉粒体が堆積し、ダンパー本体12に作用する下向力Mgが大きくなって、f2<0となった時、ダンパー本体12はf2が0となった瞬間以降に開動作してダンパー本体12に堆積した粉粒体が系外に排出される。
【0034】
ダンパー本体12が開いて、ダンパー本体12上に堆積した粉粒体を排出した後は、全体の力f2は0より大きくなってダンパー本体12が閉じられ、排出口7aの端面とダンパー本体12の表面12aが面接触する。
【0035】
以後、ダンパー本体12の表面12a上への粉粒体の堆積、粉粒体の排出を交互に繰り返しつつ粉粒体の処理を行うことになる。
【0036】
上記本発明の締切り用ダンパー11では、排出ダクト7及びその排出口7aの内径を粉粒体4の大きさよりも大きいものとすれば、粉粒体の粒径、密度を問わず、粉粒体を安定して排出することができる。
【0037】
そして、粉粒体の排出時にダンパー本体12が開いた状態では、重錐13は上下揺動の支点よりも高い位置に持ち上げられるので、粉粒体の排出後にダンパー本体12を閉じる際の時間が短くなる。従って、負圧状態の排出ダクト7内に外気を吸い込む時間が短くなって、排出すべき粉粒体が排出ダクト内に逆流する量を可及的に減少することができる。
【0038】
また、上記締切り用ダンパー11は設備構成が簡素であり、そのメンテナンスは、各部の締結状況を確認するのみで、従来の二重排出弁構造に比べてメンテナンス費用を安価にすることができる。さらに、排出ダクト7及びダンパー本体12の材質に耐摩耗材料を使用すれば、メンテナンス費用のさらなる削減が可能になる。またさらに、一切の動力源、動力供給設備、ユーティリティーを必要としないので、ランニングコストの削減にも寄与することができる。
【0039】
上記のように、本発明の締切り用ダンパー11は、ダンパー本体12の表面12aに粉粒体が存在しない場合は、重錐13の作用により、てこの原理によってダンパー本体12に上方向の力が作用し、排出口7aの端面とダンパー本体12の表面12aが面接触して締切り状態を維持する。
【0040】
また、ダンパー本体12の表面12aに粉粒体が存在する時は、粉粒体の自重により、ダンパー本体12に下方向の力が作用する。この下向きの力が大きくなってダンパー本体12に作用する上向きの力より大きくなると閉塞状態が解除され、ダンパー本体12が開いて粉粒体が系外に排出される。
【0041】
ところで、粉粒体を排出する際のダンパー本体12の開き量が少ないと、一度に排出される粉粒体量が少なくなって、ダンパー本体12の表面12a上に溜まった粉粒体が一度の開動作では完全に排出されなくなる。この場合、ダンパー本体12の表面12a上に序々に粉粒体が溜まり、最終的に、排出ダクト7内、クーリングコンベア4内が粉粒体で埋め尽くされる。クーリングコンベア4の内部まで粉粒体が多量に存在するとクーリングコンベア4が過負荷状態となり、一旦、排出ダクト7への粉粒体の抜出しを停止し、人為的な作業によりクーリングコンベア4から粉粒体を抜出す必要がある。
【0042】
一方、粉粒体を排出する際のダンパー本体12の開き量が大きすぎると、粉粒体は排出されるものの、外気を多量に吸い込むことになり、粉粒体中の細かい灰が排出されずに、序々にクーリングコンベア4のテール部に溜まり、ダンパー本体12の開き量が少ない場合と同じようにクーリングコンベア4が過負荷となる。
【0043】
従って、排出ダクト7内の負圧範囲(−0.05〜−0.1kPa)に最適な範囲に重錐13の重量を設定することが望ましい。
【0044】
発明者が内径26.7cmの排出口7aに、嵩密度0.4〜0.5g/cm3のクリンカ灰を用いて調査した結果によれば、ダンパー本体12の表面に堆積する粉粒の堆積高さhと排出口7aの内径dの比であるh/dが0.02以上、0.5以下の範囲においてダンパー本体12が開くように重錐の重量を調整すれば、排出ダクト7内やクーリングコンベア4内に粉粒体が溜まることがなかった。なお、排出口7aが円形でない場合、前記内径dは円相当径、すなわち排出口7aの断面積と同じ断面積の円であったとした場合の、当該円の内径とする。
【0045】
前記h/dが0.02未満の場合は、粉粒体の量が少なくなって外気の吸い込みが多くなるので好ましくないからである。また、前記h/dが0.5を超える場合は、排出ダクト7内への粉粒体の滞留量が多くなるので、円滑な排出ができなくなって脈動を生じる原因となるので好ましくないからである。より好ましくはh/dが0.03以上、0.3以下であれば更によい。
【符号の説明】
【0046】
7 排出ダクト
7a 排出口
11 締切り用ダンパー
12 ダンパー本体
13 重錐
14 ブラケット
14a 穿孔
15 取り付け部材
15a 穿孔
15b 第2穿孔
16 ピン
17 接合治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体を外部に排出する排出ダクトの排出口に設置される締切り用ダンパーであって、
当該ダンパーは、前記排出口の外周部に、ダンパー本体の一方側端部を支点とした上下揺動が自在なように設置され、
ダンパー本体に負荷が作用しない状態では、前記ダンパー本体は、前記支点よりも前記排出口と反対側に設置した重錐によって、水平状態或いは前記支点側から上り勾配状態で前記排出口を締め切るように成されていることを特徴とする排出ダクトの排出口締切り用ダンパー。
【請求項2】
前記ダンパー本体の表面に堆積する粉粒の堆積高さhと排出口の内径dの比であるh/dが0.02以上、0.5以下の範囲においてダンパー本体が開となるように重錐の重量を調整したことを特徴とする請求項1に記載の排出ダクトの排出口締切り用ダンパー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−240780(P2012−240780A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−111594(P2011−111594)
【出願日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】