説明

排出流から油を回収するためのシステム及び方法

本システム及び方法は、乳化した排出流から油を回収するものである。凝固剤及び/又は凝集剤又は両方を、乳化された排出流に添加し、水性流及び増粘化された乳化流への分離を促進させる。凝固剤はミョウバンを含むことができる。凝集剤はカチオン性ポリマーを含むことができる。増粘化された乳化流の、富油成分、第二水性成分及び固形ケークへの分離は、遠心機、濾過装置又はプレスにおける機械的分離により実施することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排出流又は他の油含有流から油を回収する、特に、エマルションを化学的に及び/又は機械的に不安定化させることにより、乳化流から油を回収するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製油所操作では、典型的には水中油型乳化流が生じる。それらの流は典型的には更なる処理を必要とする。しかし、エマルションは、破壊したり、不安定化させたりするのが困難であり得るので、油成分を水性成分から分離するのに、機械的エネルギーが用いられることがある。例えば、乳化流を遠心分離機にかけることにより乳化流を処理し、富油流及び水性流を生成させることができる。
【0003】
他の努力も行われている。例えば、Jacquesらによる米国特許第4,734,205号には、低含量の、アクリルアミド、アクリル酸又はその塩、及びアルキルアクリルアミド又はアルキルアクリレートもしくはアルキルメタクリレートから成る水分散性ターポリマー;アクリルアミド及びアルキルアクリルアミド又はアルキルアクリレートもしくはアルキルメタクリレートから成るコポリマーを、単独で又はカチオン種と組み合わせて使用することにより、水中油型エマルションを破壊する又は分解する方法が開示されている。その方法は、最初に、油滴における表面電荷を中和することができるか又はその表面電荷をわずかに陽の値に変換及び制御することができるカチオン性ポリマーを添加し、次に、有効量の疎水性官能基を有する水溶性ポリマーを添加し、適当な撹拌条件下で接触させた後に、静止条件下で、乳化した油滴を、別個の層に分離させ、その層を除去することを含む。後半の工程の代替工程として、気体浮選の使用、遠心分離機又はサイクロンが含まれる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の概要
一つ以上の態様によると、本発明は、乳化流から油を回収するためのシステムを提供する。本システムは、乳化流源、乳化流源に流通可能に連結された沈降タンク、沈降タンクの下流に流通可能に連結された分離機、及び沈降タンクの上流に流通可能に連結された凝固剤源を含むことができる。
【0005】
一つ以上の態様によると、本発明は、乳化流から油を回収する方法を提供する。本方法は、乳化流を不安定化させる工程、不安定化された乳化流を分離し、増粘化された乳化流及び水性流を生成する工程、並びに増粘化された乳化流を分離し、第二の水性流、富油流及び固形ケークを生成する工程を含むことができる。
【0006】
一つ以上の態様によると、本発明は、乳化流から油を回収するためのシステムを提供する。本システムは、乳化流源、乳化流源に流通可能に連結された沈降タンク、沈降タンクの上流に流通可能に連結された凝固剤源、及び沈降タンクの上流に流通可能に連結された凝集剤源を含むことができる。
【0007】
一つ以上の態様によると、本発明は、乳化流からの油回収を促進する方法を提供する。本方法は、乳化流源に流通可能に連結可能な沈降タンク、沈降タンクの上流に流通可能に連結可能な凝固剤源、及び沈降タンクの上流に流通可能に連結可能な凝集剤源を含む、油回収システムを設ける工程を含むことができる。
【0008】
一つ以上の態様によると、本発明は、油を回収するためのシステムを提供する。本システムは、乳化流源、乳化流源に流通可能に連結された第一分離機、第一分離機の上流に流通可能に連結された凝固剤源、第一分離機の上流に流通可能に連結された凝集剤源、及び第一分離機の下流に流通可能に連結された第二分離機を含むことができる。
【0009】
本発明は、その適用において、以下の記載に示されたり、図面に示されたりする構成の細部や構成部分の配置に限定されるものではない。本発明は、他の態様を提供することができ、種々のやり方で実施されることができ又は行なうことができる。又、本明細書で用いられている表現及び用語は、説明の目的のためのものであり、限定するものと考えられるべきではない。「含む」又は「有する」、「含有する」及び本明細書におけるそれらのバリエーションの使用は、そこに挙げたもの及びそれらの同等のもののみならず追加のものをも包含することを意味する。
【0010】
一つ以上の態様によると、本発明は、水性成分、油状成分、及び場合により固形成分を有する乳化相又は混合相として、又は、場合により同様の表面電荷を有し得る懸濁化物を有する乳化相又は混合相として特徴付けられ得る、例えば、一つ以上の製油所排出流を含む排出流から油を回収するためのシステム及び方法を提供する。本発明は、機械的なエネルギーを利用する単位操作を使用して、油含有流を、水性成分、富油成分及び必要な場合には固形成分に分離する前に、油含有流の流体容量を低減させるシステム及び技術を提供するものとして更に特徴付けられ得る。本発明は、少なくとも約70容量%、典型的には少なくとも約80容量%の低減が達成され得るように、化学的及び機械的技術を用いることにより、乳化流を不安定化させるものとしても特徴付けられ得る。例えば、本発明のシステム及び技術を用いることにより、遠心機のような機械的分離操作において分離されるべき流体容量は、約100バレルの乳化流から約30バレルの増粘化エマルションに低減することができる。
【0011】
本明細書において用いられているように、「不安定化させる」という用語は、一つの流れの、成分相への分離を促進する任意のプロセスをいう。例えば、エマルションを不安定化させるということは、例えば、水中油型エマルションを、脱水された富油成分及び水性成分に破壊することをいう。「機械的分離」及び「機械的に不安定化させる」という表現は、一つの流れ、典型的には混合相流の、その成分相への分離をもたらすために機械的エネルギーを導入する単位操作を用いることをいう。そのような単位操作の例には、それらに限定されるわけではないが、遠心機及び濾過装置が含まれ、これらは更に、濾過助剤のような分離補助物質及び/又は衝突捕集システムのような特徴及び/又は技術を単独で又は組み合わせて用いることができる。
【0012】
一つ以上の態様によると、本発明は、乳化流から油を回収するためのシステムを提供する。本システムは、乳化流源;乳化流源に流通可能に連結された、沈降タンク、液体サイクロン、デカンター、溶解空気浮選単位装置、溶解窒素浮選単位装置、誘導空気浮選単位装置及び/又は誘導窒素浮選単位装置のような、しかしそれらに限定されない、分離機又は分離単位操作;その分離単位操作の下流に流通可能に連結された第二分離機;並びに前記分離単位操作の上流に流通可能に連結された凝固剤源を含むことができる。本システムは、前記分離単位操作の上流に流通可能に連結された凝集剤源を更に含むことができる。凝固剤源及び/又は凝集剤源を、乳化流源の下流で、かつ、分離単位操作の上流に流通可能に連結することができる場合もある。乳化流源は、例えば製油所からの脱塩器を含む、一つ以上の化学プラントからの一つ以上の単位操作からの一つ以上の流出流を含有することができる。
【0013】
例えば、図1に表された態様に示されているように、油回収システム10は、一つ以上の分離単位操作30、又は、例えば静止条件を備える同様の単位操作に流通可能に連結した、乳化流22の源20を含むことができ、当該一つ以上の分離単位操作30、又は、例えば静止条件を備える同様の単位操作は、それらから引き出され得る水性流32及び増粘化された乳化流34を与える。システム10は、増粘化された乳化流34を受け入れ、富油成分流42、第二水性成分流46、及び、場合により、固形ケーク44への増粘化された乳化流の成分の分離をもたらすための、流通可能に連結された、そして典型的には配備され、配置された、一つ以上の分離機40を更に含むことができる。システム10は、凝固剤源50及び/又は凝集剤源60を更に含むことができる。凝固剤源50及び凝集剤源60は、乳化流22及び分離単位操作30に流通可能に連結することができる。図1に例示されているように、典型的には分離単位操作30の上流に、そして好ましくは乳化流源20の下流に、凝固剤源50及び凝集剤源60を流通可能に連結し、又は配備、配置し、凝固剤及び凝集剤の一方又は両方の、乳化流22への添加を可能にすることができる。
【0014】
富油成分流42は、任意選択的に化学プラント(示されていない)の単位操作に移送することができる。例えば、富油流は、一つ以上の製油所単位操作に移送され、富油流に伴う炭化水素価を誘導し、又は利用することができる。
【0015】
固形ケーク44は、任意選択的に処分されるか又はコークス器に送られるか、又は、これに限定されるものではないが、セメント処理操作(示されていない)における燃料のような、一つ以上の工業的用途における燃料として使用することができる。
【0016】
水性成分流32及び46の一方又は両方は処分することができ、又は図1に任意選択的に示されているように、例えば、放出に適した流れにする廃水処理単位装置又は施設70において更に処理することができる。
【0017】
一つ以上の態様において、本発明は、乳化流から油を回収する方法を提供する。本方法は、乳化流を不安定化させる工程、不安定化された乳化流を分離し、増粘化された乳化流及び水性流を生成する工程、並びに増粘化された乳化流を分離し、第二の水性流、富油流及び固形ケークを生成する工程を含むことができる。得られた水性流は、廃水処理施設において更に処理することができる。得られた富油流は、例えば製油所における一つ以上の単位操作に送ることができる。乳化流を不安定化させる工程は、凝固剤及び凝集剤の少なくとも一つを添加することを含むことができる。増粘化された乳化流を分離させる工程は、例えば、機械的エネルギーを導入して相分離を加速し又は促進することにより、機械的に不安定化させることを含むことができる。乳化流を不安定化させる工程は、ミョウバン及びカチオン性ポリマーを乳化流に添加すること、そして、その乳化流を加熱することを含むことができる。加熱は、約100°F(約38℃)乃至約160°F(約71℃)の温度で行なうことができる。例えば、供給源20からの乳化流は、一つ以上の凝固剤及び/又は一つ以上の凝集剤の存在下で、沈降機又は沈降タンクのような分離単位操作30において静止条件下で不安定化することができる。本方法は、乳化流を加熱する工程を更に含むことができる。加熱は、炉又は熱交換器(示されていない)のような伝熱単位操作を用いることにより乳化流22への伝熱をもたらすこと及び/又は分離単位操作30におけるジャケット又はコイル加熱により行なうことができる。増粘化された乳化流34を分離させることは、これらに限定されるわけではないが、遠心機又は濾過装置のような、機械的タイプの分離操作において実施することができる。
【0018】
凝固剤は、水性流体中に懸濁した油滴の不安定化を促進する化合物又は物質を含むことができる。典型的には、凝固剤は、油滴及び/又は懸濁された固体が互いに引き付けあうことができるか又は少なくとも反発しないように、油滴及び/又は懸濁された固体のような懸濁された物質又はコロイド物質の電荷に影響を与える。凝固剤は、高分子電解質(大きな水溶性有機分子)、カチオン性凝固剤、ミョウバン(硫酸アルミニウム)、ポリアミン、ポリ第四級アミン、ポリ第四級アンモニウムクロリド、メラミンホルムアルデヒド、並びにポリ(ジアリル−ジメチル−アンモニウムクロリド)(ポリDADMAC、低分子量ポリマー)、エピクロロヒドリン−ジメチルアミン(EPI−DMA)及びDADMACのような高、中又は低分子量ポリマーを単独で、又はミョウバン、アルミニウムクロロハイドレートもしくはポリヒドロキシル−アルミニウムクロリドとのブレンドで、又は水性相に分散された油滴の凝固を凝集剤を用いて又は用いずに促進する任意の適当な化合物又は塩の少なくとも一つを含むことができる。市販の凝固剤の例には、Axchem Solutions,Inc.(ミシガン州、Manistee)からのAF 6524TM ポリDADMACが含まれる。凝固剤の選択は、例えば乳化流のpH、懸濁化物質のサイズ及びサイズ分布、懸濁化物質の有効電荷の電荷又は性質、そしてある場合には、用いられる凝集剤のタイプ並びに所望の沈降/分離速度を含むいくつかの因子に依存し得る。
【0019】
カチオン性、アニオン性又は非イオン性であり得る凝集剤は、水性流体中に分散した、典型的には懸濁した油滴の、浮かびやすい、沈降しやすい、さもなければ水性相から分離しやすいと考えられる、(凝集していない油滴と比較して)より大きい凝集体への凝集を促進する任意の化合物又は物質を含むことができる。このように、凝集剤は、例えば懸濁化物質、例えば油滴の浮遊又は沈降により、合体及び分離を促進する。凝集剤は、アクリルアミドポリマーのようなカチオン性ポリマー、低分子量低電荷ポリマー及び/又は高分子量高カチオン性電荷ポリマー、アクリルアミドとDADMACのコポリマー又はジメチル−アミノエチル−メタクリレート、又は凝固剤の助けをかりて又はかりずに懸濁化物質の凝集を促進する任意の適当な化合物を含むことができる。いろいろな因子の中でも特にエマルションの性質により、一つ以上の種々の凝集剤を用いることができる。凝集剤の選択は、以下に限定されるわけではないが、乳化流のpH、乳化流の水性成分、及び/又は懸濁化物質並びに不溶化懸濁化物質の性質、すなわち、相対サイズ及び/又はサイズの分布、そしてある場合には、用いられる凝固剤のタイプ及び所望の沈降/分離速度を含むいくつかの因子に依存し得る。市販の凝集剤の例にはAF 3910TM低分子量低カチオン性電荷ポリマー及びAF 4880TM高分子量高カチオン性電荷ポリマーが含まれ、両方ともAxchem Solutions,Inc.から入手可能である。
【0020】
添加される凝固剤の量は変えることができる。好ましくは、凝固剤の量は、乳化流の代表的な試料において、凝集剤を添加して又は添加せずに、約30分乃至約2時間の静止沈降時間内にエマルションの破壊をもたらすか又は少なくとも破壊を促進する。凝固剤の量は、約30分乃至約2時間の静止沈降時間内に、得られた水性成分及び/又は得られた富油成分のいずれか一つに約500mg/l未満しか懸濁された固体が残存しないように決定することができる。例えば、添加される凝固剤の量は、乳化流中、0ppm乃至約100ppmの範囲の凝固剤濃度をもたらす。
【0021】
このように、一つ以上の凝固剤及び一つ以上の凝集剤の選択は、乳化流の性質に依存し得る。
【0022】
凝固剤は、乳化流中の凝固剤の分散を促進する任意の適当な方法で乳化流に添加することができる。例えば、凝固剤は、乳化流を含有する容器中の乳化流に導入することができる。凝固剤の添加は、乳化流を含有する一つ以上のライン又は導管への注入によっても実施することができる。凝固剤の添加の制御は、乳化流中の所望の濃度を与えるために必要に応じて調節することができる。例えば、凝固剤の注入は、制御弁を操作すること又は凝固剤源から凝固剤を送る注入ポンプに電圧を印加/脱印加することにより制御することができる。
【0023】
添加される凝集剤の量は変えることができる。好ましくは、凝集剤の量は、乳化流の代表的な試料において、凝固剤を添加して又は添加せずに、好ましくは、約30分乃至約2時間の静止沈降時間内にエマルションの凝集をもたらすか、又は少なくとも凝集を促進するかもしくは容易にする。凝集剤の量は、約30分乃至約2時間の静止沈降時間内に、水性成分及び/又は富油成分のいずれか一つに約500mg/l未満しか懸濁された固体が残存しないように決定することができる。例えば、添加される凝集剤の量は、乳化流中、0ppm乃至約200ppmの範囲の凝集剤濃度をもたらす。
【0024】
凝集剤は、乳化流中の凝集剤の分散を促進する任意の適当な方法で乳化流に添加することができる。例えば、凝集剤は、乳化流を含有する容器中の乳化流に導入することができる。凝集剤の添加は、乳化流を含有する一つ以上のライン又は導管への注入によっても実施することができる。凝集剤の添加の制御は、乳化流中の所望の濃度を与えるために必要に応じて調節することができる。例えば、凝集剤の注入は、制御弁を操作すること又は凝集剤源から凝集剤を送る注入ポンプに電圧を印加/電圧を脱印加することにより制御することができる。
【0025】
凝集剤は、凝固剤を添加すると同時に、添加する前に又は添加した後に添加することができる。凝固剤、凝集剤又は両方の添加の後に、乳化流の混合を行なうことができる。混合は、静的又は動的技術を用いることにより行なうことができる。混合は、沈降タンクのような第一分離機の前に又は第一分離機において行なうことができる。
【0026】
分離単位操作は典型的には液体容量の、富油相からの水性相の分離を促進する。従って、本発明の一つ以上の態様によると、分離単位操作は、2つ以上の液相の分離をもたらす又は促進する任意の装置又はシステムを含むことができる。そのようなシステムの例には、沈降タンク、液体サイクロン、デカンター、溶解空気浮選単位装置、溶解窒素浮選単位装置、誘導空気浮選単位装置及び/又は誘導窒素浮選単位装置が含まれる。
【0027】
沈降タンク及び/又はデカンターは、静止沈降条件を与えるように構成され配置された一つ以上の容器を含むことができる。本発明の好ましい態様によると、沈降タンク及び/又はデカンターは、成分、流体の相の分離を促進する、先細の横断面を備える円錐形又は切頭円錐形のような低減する容量部分を有し得る。低減部分の程度又は性質は変えることができ、以下に限定されるわけではないが、全処理水量負荷、相間の界面の性質、及び各相間の相対的対比又は一つの相を他の相から画することにおける困難性を含む、いくつかの因子に依存し得る。本発明の他の態様によると、沈降タンク及び/又はデカンターは、相間(例えば、富油相と水性相との間)の界面の位置の特定を可能にし又は容易にし得る部分を含むことができる。例えば、沈降タンク及び/又はデカンターは、その長さに沿って、典型的にはその垂直の長さに沿って、2つ以上の抜出口又は排出口を有し得る。沈降タンク及び/又はデカンターは、界面の位置の目視検出を可能にする一つ以上の覗きガラスを更に含むことができる。沈降タンク及び/又はデカンターは、静止を促進する及び/又は相の成長を加速する特徴を更に含むことができる。例えば、沈降タンク及び/又はデカンターは、乳化流の導入、又はそれからの一つ以上の相の取り出しに典型的に伴う乱流を低減するように配置された、じゃま板又はそらせ板又は他の構成部分のような特徴を有し得る。
【0028】
先に記載したように、乳化流を加熱して、増粘化されたエマルション相及び水性相への相分離を促進させることができる。加熱は、熱交換器又は炉のような任意の適当な伝熱単位操作において行なうことができる。加熱は、静止条件の前に又はその最中に行なうこともできる。例えば、沈降タンクは、その中に流れる加熱流体を有する加熱コイル又は加熱ジャケットを含むことができる。乳化流は、任意の適当な温度に加熱することができる。好ましくは、乳化流は、約100°F(約38℃)乃至約160°F(約71℃)に加熱される。より低い温度において、分離は進行し得るが、より遅い速度においてである。同様に、より高い温度において、分離速度は成し遂げ得るが、凝固剤又は凝集剤又は両方の劣化又は分解がもたらされ、沈降速度又は分離速度が事実上低減することがある。
【0029】
本発明の一つ以上の態様によると、増粘化された乳化流は、例えば、分離機40における分離に先立って、増粘化された乳化流を加熱及び/又は冷却する構成部分又はサブシステムを備え得る、一つ以上の容器又は保持タンクに移送することができる。その構成部分又はサブシステムは、保持タンクの内容物を約160°F(約71℃)乃至約200°F(約93℃)の温度に加熱することができる。
【0030】
分離機40は、一つ以上の機械的分離機システムを含むことができる。先に記載したように、第二分離機により、好ましくは、増粘化された乳化流が、富油流、水性流、及び場合により固形ケークに分離される。従って、本発明の一つ以上の態様によると、第二分離機は、乳化液の3つ以上の相分離をもたらし得るか又は容易にし得る一つ以上の装置又はシステムを含むことができる。例えば、第二分離機は、有効適用重力を増大させることにより、相の層の成長を促進する一つ以上の遠心機装置を含むことができる。適当な装置の例には、Guinnard Oil Services(フランス、Saint−Cloud)から入手可能なモデルDC6TM縦型遠心機、Centrisys Corporation(ウィスコンシン州ケノーシャ)から入手可能なモデル3003横型遠心機、又は、例えば、Alfa Laval AB(スウェーデン)及びWestfalia Separator,Inc.(ニュージャージー州、Northvale)から入手可能な他の同様の縦型又は横型の遠心機のような三相遠心機が含まれる。本発明の他の態様によると、第二分離機は、混合相すなわち乳化流からの液体の分離を促進する一つ以上の圧搾システム又は濾過システムを含むことができる。その圧搾システム又は濾過システムは、増粘化された乳化流を含む、得られた乳化流の、富油流及び水性流への分離を更にもたらす一つ以上のシステムと連結することができる。適当な圧搾又は濾過システムの例には、プレス類、フィルタープレス類及びベルトフィルタープレス類が含まれるが、それらに限定されない。
【0031】
第二の凝集剤流を増粘化された乳化流に添加し、増粘化された乳化流の、その成分への分離を補助又は促進することができる。第二の凝集剤流は、先に記載した一つ以上の凝集剤を含有し得る。添加される第二の凝集剤流の量は、例えば、増粘化された乳化流の機械的分離を促進するために必要に応じて変えることができる。例えば、その添加量は、約0ppm乃至約200ppmで変えることができる。
【0032】
本発明の更なる態様によると、増粘化された乳化流に解乳化剤を添加して、第二分離機における、増粘化された乳化流の、その成分への分離を補助する又は促進することができる。解乳化剤は、一つ以上の界面活性剤又は分散剤を含むことができる。さらに、解乳化剤は、本明細書に記載された凝固剤と称される一つ以上の化合物を含むことができる。適当な界面活性剤の例には、例えば、SCALBREAKTM DP−102TM界面活性剤としてU.S.Filter/Scaltech,Inc.から商業的に入手することができる酸化エチレン、酸化プロピレン又はそれらのブレンドのようなイオン性又は非イオン性の界面活性剤が含まれる。
【0033】
本質において例示であって、本発明の範囲を限定するものと考えるべきではない下記の例を参照して、本発明は更に理解することができる。
【実施例】
【0034】
例 脱塩器ブローダウン及びマッドウォッシュ流出流からの油回収
下記の例は、本発明の一つ以上の態様による、脱塩器排出流からの油を回収するために用いられるシステム及び方法を記載する。
【0035】
脱塩器からの流出流を蓄積させた。その流出流は、一つ以上の、脱塩器ブローダウン及びマッドウォッシュ流出流で構成され、約0.02乃至1重量%の固体、0.5乃至2重量%の油及び残量を構成する水から構成されることを特徴とした。約1リットルの試料を回収することにより特性決定を行った。ミョウバンを約20ppmの濃度まで各試料に添加した。AF 4880Tm凝集剤も約30ppmの濃度まで添加した。加熱、沈降及び水性成分の分離の後に、水性内容物を、ASTM D 95による、トルエンでの共沸蒸留により分析した。固体含量を、後に記載する溶媒抽出試験を行うことにより特徴付けた。残量は、油含量であることが導き出された。
【0036】
図2は、本例において用いられた油回収システム100のプロセスフロー図を示している。乳化流102を、約130バレルを含有するようにサイズ設計された円錐形底沈降タンク104に移送した。凝固剤流106を乳化流102に、そのタンク104への移送中に添加した。凝固剤流は、ミョウバン(約48%の硫酸アルミニウム(A1(S0)*14H0))で構成され、乳化流102のバレル当り約0.001乃至約0.002ガロンの比率で添加されるように制御された。凝集剤流108を沈降タンク104に導入した。凝集剤は、AF 4880TMポリマーで構成されており、乳化流102のバレル当り約0.0005乃至約0.003ガロンの比率で添加されるように制御された。
【0037】
蒸気110を、沈降タンク102における加熱コイル(示されていない)中に循環させ、乳化流を加熱した。沈降タンク102の内容物の温度を約100°F(約38℃)乃至約120°F(約49℃)に制御するように蒸気を調節した。沈降タンク102の内容物を約2時間静止させて沈降させた。その後に、水層及び増粘化された乳化層が形成した。沈降タンク102から水層を水性流112として抜き出し、廃水処理単位装置(示されていない)に移送した。
【0038】
沈降タンク102から約400バレルの増粘化された乳化層を、増粘化された乳化流114として抜き出し、保持タンク116に移送し、約180°F(約82℃)乃至約200°F(約93℃)の温度に加熱した。タンク116からの増粘化された乳化流を処理し、すなわち、分離機118においてその成分に分離した。分離機118は、横型の三相遠心機から構成されていた。分離機118での処理の間に、第二凝集剤流120を、増粘化された乳化流116に添加した。第二凝集剤流120は、AF 4880Tmポリマーで構成され、増粘化された乳化流116のバレル当り約0.01乃至約0.04ガロンの比率で添加された。解乳化剤流122も、増粘化された乳化流116に添加した。解乳化剤流122は、SCALBREAKTM DP−102TM界面活性剤で構成されており、増粘化された乳化流116のバレル当り約0.0005乃至約0.005ガロンの比率で添加された。
【0039】
増粘化された乳化流116は第二水性流124、富油流126及び固形ケーク生成物128に分離された。第二水性流124を廃水処理単位装置(示されていない)に移送し、富油流126を製油所プロセス(示されていない)に移送し、固形ケーク生成物128を処分した。
【0040】
表1に、数日間のシステムの測定された操作パラメーターを挙げる。表1には、典型的には廃水処理単位装置の流出流からのものである、付加的な乳化流(示されていない)とともに脱塩器からの乳化流102の処理された容量が挙げられている。従って、各日では、処理された乳化流の容量は、脱塩器流容量及び付加的な乳化流容量から構成されていた。
【0041】
先に記載した処理条件により各試験を行ない、水性流及び第二水性流の試料を回収し、分析して総懸濁固体(TSS)をmg/l単位で求めた。
【0042】
三相遠心機に導入された増粘化された乳化流の、重量%単位での油非含有乾燥固体含量(OFDSC)を、後記する抽出試験により特徴付けた。
【0043】
遠心機から排出された、富油流の油の品質を、ASTM D 96により遠心機を用いることにより、容量%単位でのそのベーシックセディメント及び水(BS&W)含量を求めることにより、特徴付けた。
【0044】
表1に表された結果は、本発明のシステム及び方法が、乳化流からの油を回収し、低固体含量しか有しない富油流、及び約500mg/l未満のTSSしか有しない水性流を生成するために用いられ得ることを示している。
【0045】
抽出試験は、オーブン中において約10gの増粘化された乳化流を約103℃乃至約105℃に加熱し、水を蒸発させ(一定の残渣重量まで)、次にその残渣を約150mlの塩化メチレン中に溶解させることを含んだ。その溶液を濾過し、実質的にすべての固体を回収した。濾過装置により捕捉された清浄な、油を含有しない固体を乾燥させ、実質的にすべての溶媒を蒸発させた後に、その重量を求めた。そのOFDSCを、増粘化された乳化流の初期重量に対して求めた。
【0046】
【表1】

【0047】
本発明の少なくとも一つの態様のいくつかの面をこのように記載したが、種々の変更、改変及び改良が当業者には容易になされるであろうことを認識すべきである。そのような変更、改変及び改良は、本開示の一部であることが意図され、本発明の範囲内であることが意図される。例えば、本発明は、脱塩器単位操作からの乳化流を複数の成分流に不安定化させるものと特徴付けられているが、製油所からの他の単位操作又は排出物操作、並びに混合相流を生じる他の化学施設からの他の操作を含む、乳化流の他の源は、乳化流源を構成し得る。従って、先の記載及び図面は、例示としてのみである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
添付図面は、正確な縮尺率で描くことを意図したものではない。本図面において、一つ以上の図において示される各々の同一の又はほとんど同一の構成部分は同様の数字で表されている。明確化のために、すべての図においてすべての構成部分が名称付けされているわけではない。
【図1】本発明の一つ以上の態様による、乳化流から油を回収するためのシステムのプロセスフロー図である。
【図2】例に記載されているような、本発明の一つ以上の態様による、油を回収するためのシステムのプロセスフロー図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳化流源;
乳化流源に流通可能に連結された沈降タンク;
沈降タンクの下流に流通可能に連結された分離機;及び
沈降タンクの上流に流通可能に連結された凝固剤源
を含む、乳化流から油を回収するためのシステム。
【請求項2】
沈降タンクの上流に流通可能に連結された凝集剤源を更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
乳化流源が脱塩器からの流出流を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
乳化流を不安定化させること;
不安定化された乳化流を分離し、増粘化された乳化流及び水性流を生成すること;並びに
増粘化された乳化流を分離し、第二の水性流、富油流及び固形ケークを生成すること
を含む、乳化流から油を回収する方法。
【請求項5】
乳化流を不安定化させることが、凝固剤及び凝集剤の少なくとも一つを添加することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
凝固剤が、ミョウバン及び低分子量ポリマーの少なくとも一つを含有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
凝集剤が、カチオン性ポリマー、低分子量低電荷ポリマー及び高分子量高電荷ポリマーの少なくとも一つを含有する、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
乳化流を加熱することを更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
乳化流を約100°F(約38℃)乃至約160°F(約71℃)に加熱する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
水性流を廃水処理施設に移送することを更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
富油流を製油所施設の単位操作に移送することを更に含む、請求項4に記載の方法。
【請求項12】
増粘化された乳化流を分離させることが、増粘化された乳化流を機械的に不安定化させ、第二の水性流、富油流及び固形ケークを生成することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項13】
乳化流を不安定化させることが、乳化流にミョウバン及びカチオン性ポリマーを添加すること及び乳化流を加熱することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項14】
乳化流を約100°F(約38℃)乃至約160°F(約71℃)に加熱する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
増粘化された乳化流を分離させることが、増粘化された乳化流を機械的に不安定化させることを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
増粘化された乳化流を機械的に不安定化させることが、遠心機、フィルタープレス及びベルトプレスの少なくとも一つにおいて処理することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
乳化流源;
乳化流源に流通可能に連結された沈降タンク;
沈降タンクの上流に流通可能に連結された凝固剤源;及び
沈降タンクの上流に流通可能に連結された凝集剤源
を含む、乳化流から油を回収するためのシステム。
【請求項18】
沈降タンクの下流に流通可能に連結された分離機を更に含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
乳化流源に流通可能に連結可能な沈降タンク、沈降タンクの上流に流通可能に連結可能な凝固剤源、及び沈降タンクの上流に流通可能に連結可能な凝集剤源を含む、油回収システムを設けることを含む、乳化流からの油回収を促進する方法。
【請求項20】
油回収システムが、沈降タンクの下流に流通可能に連結可能な機械的分離機を更に含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
乳化流源;
乳化流源に流通可能に連結された第一分離機;
第一分離機の上流に流通可能に連結された凝固剤源;
第一分離機の上流に流通可能に連結された凝集剤源;及び
第一分離機の下流に流通可能に連結された第二分離機
を含む、油を回収するためのシステム。
【請求項22】
第一分離機が、沈降タンク、液体サイクロン、デカンター、溶解空気浮選装置、誘導空気浮選装置、溶解窒素浮選装置及び誘導窒素浮選装置からなる群より選択される少なくとも一つの単位操作を含む、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
第二分離機が、遠心機、濾過装置及びプレスからなる群より選択される少なくとも一つの単位操作を含む、請求項21に記載のシステム。


【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−526123(P2007−526123A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−501880(P2007−501880)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/006433
【国際公開番号】WO2005/092469
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(506297429)ヴェオリア ウォーター ノース アメリカ オペレイティング サービシズ、エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】