説明

排気ガス浄化装置

【課題】高分子電解質膜を有する電気化学リアクタによって内燃機関の排気ガスを浄化可能な排気ガス浄化装置を提供する。
【解決手段】ディーゼルエンジン1は、ディーゼルエンジン1から排出された排気ガスが流通する排気管2を有している。排気管2には、電気化学リアクタ3が設けられ、さらに、電気化学リアクタ3よりも上流側に、排気管2を流通する排気ガスを冷却するための冷却装置4が設けられている。電気化学リアクタ3は、カソードと、アノードと、カソード及びアノードの間に配置された高分子電解質膜とを有する電気化学的セルから構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、排気ガス浄化装置に係り、特に、高分子タイプの電気化学リアクタを用いた排気ガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、カソードと、アノードと、カソード及びアノードの間に配置された高分子電解質膜とを有する電気化学的セルから構成された流体精製装置が記載されている。電気化学的セルには、ヒドロキシラジカルを生成する反応を促進する触媒をカソード内に設けることにより、汚水等の流体は、カソードに接触する際に、酸化反応によって精製される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−113468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された流体精製装置を、ディーゼルエンジンの排気ガスを浄化する目的で、ディーゼルエンジンの排気管に設けようとすると、排気ガスは数百度といった高温になり得る反面、高分子電解質膜の動作温度の上限はせいぜい100度程度であるため、耐熱性に問題があった。
【0005】
この発明はこのような問題点を解決するためになされたもので、高分子電解質膜を有する電気化学リアクタによって内燃機関の排気ガスを浄化可能な排気ガス浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る排気ガス浄化装置は、内燃機関から排出された排気ガスが流通する排気管と、該排気管に設けられた、高分子電解質膜を有する電気化学リアクタと、該電気化学リアクタよりも上流側で前記排気管に設けられ、該排気管を流通する排気ガスを冷却する冷却装置とを備える。冷却装置によって冷却された排気ガスが電気化学リアクタに流入し浄化される。
前記電気化学リアクタよりも上流側で前記排気管に設けられたバイパス管と、前記バイパス管及び前記排気管のいずれか一方のみに前記排気ガスが流通するように切り替える切替手段とを備え、前記冷却装置は、前記バイパス管と、前記排気管のうち、該排気管と接続する前記バイパス管の上流端及び下流端の間とのいずれか一方に設けられ、前記切替手段は、前記排気ガスの温度に基づいて、該排気ガスの流通を切り替えてもよい。
前記排気ガスの温度を測定する温度センサが前記排気管に設けられていてもよい。
前記内燃機関の運転条件と前記排気ガスの温度との関係を表すマップを備え、前記排気ガスの温度は、前記マップに基づいて前記運転条件から推定してもよい。
前記冷却装置は、前記排気管のうち前記電気化学リアクタよりも上流部分の外周に設けられた凹凸状の凹凸部であってもよい。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、高分子電解質膜を有する電気化学リアクタの上流側に冷却装置が設けられていることにより、冷却装置によって冷却された排気ガスが電気化学リアクタに流入し浄化されるので、内燃機関の排気ガスを浄化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1に係る排気ガス処理装置の構成を示す模式図である。
【図2】実施の形態2に係る排気ガス処理装置の構成を示す模式図である。
【図3】実施の形態1または2に係る排気ガス処理装置に用いられる冷却装置の変形例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1.
この実施の形態1に係る排気ガス処理装置の構成を図1に示す。内燃機関であるディーゼルエンジン1は、ディーゼルエンジン1から排出された排気ガスが流通する排気管2を有している。排気管2には、電気化学リアクタ3が設けられ、さらに、電気化学リアクタ3よりも上流側に、排気管2を流通する排気ガスを冷却するための冷却装置4が設けられている。
【0010】
電気化学リアクタ3は、カソードと、アノードと、カソード及びアノードの間に配置された高分子電解質膜とを有する電気化学的セルから構成されている。高分子電解質膜には、例えば、ナフィオン(登録商標,デュポン社)を使用することができる。また、冷却装置4は、例えば、水冷式クーラーを使用することができる。
【0011】
次に、実施の形態1に係る排気ガス浄化装置の動作について説明する。
ディーゼルエンジン1から排出された排気ガスは、ディーゼルエンジン1の運転条件により、最高600℃の温度で排気管2を流通する。一般に、排気ガスの温度が高いほど、電気化学リアクタ3における浄化作用の効率は高くなるが、電気化学リアクタ3の高分子電解質膜の動作温度はせいぜい100℃程度であるので、排気ガスを直接電気化学リアクタ3に流入させると、高分子電解質膜を損傷させてしまうおそれがある。そのため、実施の形態1では、電気化学リアクタ3よりも上流側に冷却装置4が設けられているので、排気ガスが冷却装置4に流入すると、冷却装置4に流入する冷却水と排気ガスとが熱交換することにより、排気ガスの温度を100℃以下に冷却することができる。冷却装置4から流出して100℃以下になった排気ガスが電気化学リアクタ3に流入すると、電気化学反応により、排気ガス中の窒素酸化物(NOx)成分が窒素及び水等に還元されて浄化され、大気中へ排出される。
【0012】
ここで、高分子電解質膜の損傷の防止という観点からは、排気ガスの温度は低い方がいいが、浄化効率という観点からは、排気ガスの温度は高い方がいい。そのため、冷却装置4における排気ガスの冷却は、高分子電解質膜の動作温度の上限付近に調整することが好ましい。このように、電気化学リアクタ3の上流側に冷却装置4が設けられていることにより、高分子電解質膜の動作温度範囲に冷却された排気ガスが電気化学リアクタ3に流入し浄化されるので、高分子電解質膜を損傷させずに、ディーゼルエンジン1の排気ガスを浄化することができる。
【0013】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2に係る排気ガス浄化装置について説明する。尚、実施の形態2において、図1の参照符号と同一の符号は、同一又は同様な構成要素であるので、その詳細な説明は省略する。
この発明の実施の形態2に係る排気ガス浄化装置は、実施の形態1に対して、排気管2にバイパス管を設け、このバイパス管に冷却装置4を設けたものである。
【0014】
図2に示されるように、排気管2には、電気化学リアクタ3よりも上流側に、バイパス管10が設けられている。バイパス管10は、上流端10a及び下流端10bにおいて、排気管2に接続されており、上流端10aと排気管2との接続部分に、切替手段である三方弁11が設けられている。また、排気管2には、三方弁11よりも上流側に、排気管2を流通する排気ガスの温度を測定するための温度センサ12が設けられている。三方弁11及び温度センサ12はそれぞれ、ECU13に電気的に接続されている。
【0015】
次に、実施の形態2に係る排気ガス浄化装置の動作について説明する。
ディーゼルエンジン1から排出された排気ガスが排気管2を流通する際、温度センサ12により温度が測定され、排気ガスの温度に関する電気信号がECU13に送られる。一般に、ディーゼルエンジン1が起動したばかりや、負荷が小さい場合には、排気ガス温度は低く、場合によっては100℃以下となることもある。このような場合には、排気ガスが直接電気化学リアクタ3に流入しても、電気化学リアクタ3の高分子電解質膜を熱で損傷することはないので、ECU13は、三方弁11を作動させて、排気ガスを冷却装置4で冷却させることなく、電気化学リアクタ3に直接流入させるようにする。このようにすることで、冷却装置4によって必要以上に排気ガス温度を低下させることがないので、電気化学リアクタ3における浄化効率の低下が防止される。
【0016】
一方、温度センサ12によって測定された排気ガスの温度が100℃よりも高くなった場合には、ECU13は、三方弁11を作動させて、排気ガスがバイパス管10を流通するようにさせ、冷却装置4において排気ガスを冷却し、排気ガスの温度を100℃以下にする。この場合、冷却装置4によって排気ガスの温度が100℃以下に冷却され、冷却された排気ガスが電気化学リアクタ3に流入するので、電気化学リアクタ3の高分子電解質膜を熱で損傷することなく、電気化学反応により、排気ガス中のNOx成分が窒素及び水等に還元されて浄化され、大気中へ排出される。尚、冷却装置4における排気ガスの冷却は、実施の形態1と同様に、電気化学リアクタ3における浄化効率の観点についても考慮する必要がある。
【0017】
このように、電気化学リアクタ3よりも上流側で、排気管2に、冷却装置4を備えたバイパス管10を設けると共に、バイパス管10及び排気管2のいずれか一方のみに排気ガスが流通するように切り替える三方弁11を設け、三方弁11が、排気ガスの温度に基づいて、排気ガスが冷却装置4によって冷却されるか又はされないかを切り替えることにより、必要以上に排気ガスの温度を低下させることがないので、電気化学リアクタにおける浄化効率の低下を防止しつつ、高分子電解質膜を損傷させずに、ディーゼルエンジン1の排気ガスを浄化することができる。
【0018】
実施の形態2では、バイパス管10に冷却装置4を設けていたが、この形態に限定するものではない。排気管2のうち、排気管2と接続するバイパス管10の上流端10a及び下流端10bの間に冷却装置4を設けてもよい。
【0019】
実施の形態2では、排気ガスの温度を温度センサ12によって直接測定したが、この形態に限定するものではない。ECU13に、ディーゼルエンジン1の運転条件(回転数や燃料噴射量等)と排気ガス温度とのマップを組み込んでおき、このマップに基づいてディーゼルエンジン1の運転条件から排気ガスの温度を推定するようにしてもよい。
【0020】
実施の形態1及び2では、冷却装置4として水冷式クーラーを想定していたが、これに限定するものではない。図3に示されるように、電気化学リアクタ3よりも上流側の排気管2の外周に、凹凸部20を設け、排気管2の外周の表面積を大きくする構造にしてもよい。凹凸部20は、水冷式クーラーとは異なり、積極的には排気ガスを冷却することはないが、排気管2の外周の表面積を大きくすることにより放熱面積が増加するので、排気管2を流通する排気ガスの冷却効果を高めることができ、本発明の冷却装置として代替することができる。
【符号の説明】
【0021】
1 ディーゼルエンジン(内燃機関)、2 排気管、3 電気化学リアクタ、4 冷却装置、10 バイパス管、10a (バイパス管の)上流端、10b (バイパス管の)下流端、11 三方弁(切替手段)、12 温度センサ、20 凹凸部(冷却装置)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出された排気ガスが流通する排気管と、
該排気管に設けられた、高分子電解質膜を有する電気化学リアクタと、
該電気化学リアクタよりも上流側で前記排気管に設けられ、該排気管を流通する排気ガスを冷却する冷却装置と
を備える排気ガス浄化装置。
【請求項2】
前記電気化学リアクタよりも上流側で前記排気管に設けられたバイパス管と、
前記バイパス管及び前記排気管のいずれか一方のみに前記排気ガスが流通するように切り替える切替手段と
を備え、
前記冷却装置は、
前記バイパス管と、
前記排気管のうち、該排気管と接続する前記バイパス管の上流端及び下流端の間と
のいずれか一方に設けられ、
前記切替手段は、前記排気ガスの温度に基づいて、該排気ガスの流通を切り替える、請求項1に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項3】
前記排気ガスの温度を測定する温度センサが前記排気管に設けられている、請求項2に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項4】
前記内燃機関の運転条件と前記排気ガスの温度との関係を表すマップを備え、
前記排気ガスの温度は、前記マップに基づいて前記運転条件から推定される、請求項2に記載の排気ガス浄化装置。
【請求項5】
前記冷却装置は、前記排気管のうち前記電気化学リアクタよりも上流部分の外周に設けられた凹凸状の凹凸部である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の排気ガス浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−180799(P2010−180799A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25928(P2009−25928)
【出願日】平成21年2月6日(2009.2.6)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】