説明

排気機構および画像形成装置

【課題】回収部の設置スペースの大型化を招くことなく外部に空気を排出する場合の排気能力を長期に亘って維持できる構成を備えた排気機構を提供する。
【解決手段】磁性を有する粉体の捕集面を有したフィルタ202が装備されている排出容器200において、フィルタ202の捕集面と反対側に該捕集面を横断可能な可動磁石203を備え、可動磁石203を予め設定されている時期あるいはトナー濃度の変化に応じた時期に基づき、捕集面から外れた位置に向けて横断させることにより、捕集面に付着している粉体を可動磁石の磁気的拘束を利用して掃き寄せて捕集面から除去することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気機構および画像形成装置に関し、さらに詳しくは、二成分現像剤を気流搬送する際に用いられる排気機構の浄化機構に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタあるいはファクシミリ装置や印刷機などの画像形成装置においては、潜像担持体である感光体上に形成された静電潜像を現像装置により可視像処理し、可視像をシートなどに転写することにより記録出力を得ることができる。
【0003】
現像に用いられる現像剤には磁性あるいは非磁性トナーのみの一成分系現像剤の他にトナーとキャリアとを混合した二成分系現像剤がある。
二成分系現像剤は、粉体の体をなすトナーとこれを担持するキャリアとで構成され、攪拌混合時に生起される摩擦帯電作用によりトナーを帯電させて感光体上の静電潜像に対して静電吸着できる状態とされる。
【0004】
現像装置に用いられる二成分系現像剤は、攪拌混合により帯電電荷を保持した状態で、例えば、磁気現像方式を用いる現像装置の場合に現像剤担持体に用いられる現像スリーブに内蔵されている磁極の作用により表面に形成された磁気ブラシを感光体表面に接触させることで磁気ブラシ中のトナーを感光体上の潜像担持体に静電吸着させて可視像処理する。
【0005】
現像装置に収容されている現像剤でのトナー濃度及び感光体上での画像濃度を安定させて画像品質の安定化のためには、現像装置内での攪拌混合性を高く維持することが必要となる。
従来、現像装置内には現像剤を攪拌しながら移動させることができる2本スクリューを設け、一方のスクリューは現像剤供給空間内に、そして、他方のスクリューは現像後に現像剤を回収する回収空間内にそれぞれ配置したうえで相反する方向に現像剤を移動させる構成が知られている。
上述した回収される現像剤とは、磁気ブラシを担持する現像スリーブ内に配置されている反発磁極の作用により現像スリーブから反発飛翔して回収空間に導入される現像剤を意味している。
【0006】
しかし、上述した構成では、2本のスクリューによる回転によって現像剤の攪拌混合が行われることから、トナー消費量が急増するなどのトナーの収支が多い場合には、現像装置という限られた攪拌混合空間内では補給されたトナーが十分に分散しないことがある。このため、トナーの帯電量が十分でなく、地汚れや飛散トナーにより周辺部への汚損等を招く虞がある。
【0007】
そこで、このような不具合を解消する目的で、現像装置とは別の位置の場所に攪拌部を設け、攪拌された現像剤を搬送スクリューを用いて現像装置に供給する構成が知られている。
また、上述した構成を備えた現像部に加えて空気などの気体を利用して新規トナーを補給する構成を備えた撹拌部を循環手段によって接続し、撹拌部で現像剤の状態に応じた撹拌を行い、トナー濃度、帯電量を適切に調整した現像剤を、現像部に供給および現像部から攪拌部へと循環させる構成が提案されている(例えば、特許文献1〜4)。
【0008】
気流搬送を用いる場合には、エアポンプなどを用いて外部から空気を導入するため、現像剤の搬送系において内圧が上昇する。
搬送系において内圧が上昇すると、搬送経路での外部開放部、つまり、現像スリーブ上流および下流において各部品の接合部などから排圧される。このため、排圧部からは圧力が上昇したエアが噴出し、トナーや現像剤を噴出させることが原因となって装置内が汚染される虞がある。
【0009】
そこで、吸引ポンプを用いて現像装置内を負圧化して現像装置内に発生している飛散トナーを現像装置とは別の位置に設けられた回収部に向け搬送し、空気は、フィルタを介して外部に排出する構成も提案されている(特許文献5)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
装置外部に空気を排出する際には、特許文献5に開示されているように、フィルタを用いることにより空気に含まれているトナーやキャリアなどの粉体を回収する。
しかし、回収部には現像剤が貯留されることになるので、その回収量が増加するに従い、空気の排出機能が低下する。
このため、所定量となった時点で回収部の交換が必要となる。そこで、交換頻度を低くするには回収部の容積を大きくしなければならず、結果として回収部を配置するスペースの大型化により画像形成装置の大型化を招くことになる。
しかも、回収部の交換は、環境問題として着目されている現像剤のリユースができないという問題もある。
【0011】
本発明の目的は、上記従来の現像装置、特に気流を用いた現像剤循環機構における問題に鑑み、回収部の設置スペースの大型化を招くことなく外部に空気を排出する場合の排気能力を長期に亘って維持できる構成を備えた排気機構およびこれを用いる画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明は、粉体の気流搬送に用いられる空気の排気部に、粉体を捕集して空気のみを排出させるためのフィルタを備えた排気機構において、
前記粉体の少なくとも一つには、磁性を有する物質が対象として用いられ、
前記粉体が付着するフィルタの粉体捕集面と反対側には、該粉体捕集面を横断可能な可動磁石が設けられ、
前記可動磁石は、前記粉体捕集面を横断した後、該粉体捕集面を外れた位置に向けて前記粉体を掃き寄せることを特徴とする排気機構にある。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フィルタの粉体捕集面を横断する可動磁石を設けることにより、粉体捕集面に付着して捕集されている粉体が可動磁石の掃き寄せに順じて粉体捕集面から外れた位置に移動する。これにより、粉体捕集面での粉体の貯留量増加が解消されて排気機能が維持されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一実施形態にかかる画像形成装置の全体構成図である。
【図2】図1に示した画像形成装置に用いられる現像装置の構成を説明するための模式図である。
【図3】図2に示した現像装置を対象とした現像剤の供給機構の構成を説明するための図である。
【図4】図3に示した供給機構の展開図である。
【図5】図3に示した供給機構に用いられる排気機構の構成を示す外観図である。
【図6】図5に示した排気機構に用いられる可動磁石の構成について説明する為の図である。
【図7】図5に示した排気機構の作用を説明するための図である。
【図8】図5に示した排気機構の作用による圧力変化に関する説明のためのタイミングチャートである。
【図9】図5に示した排気機構を対象として要部変形例の構成および作用を説明するための図である
【図10】図5に示した排気機構の動作頻度を設定する要件の一つであるトナー濃度とトナー集塵量との関係を説明するための線図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図示実施例により本発明を実施するための形態について説明する。
図1は、排気機構を用いる現像装置が適用される画像形成装置を示す図であり、排気帰庫の説明の前に画像形成装置を説明すると次の通りである。なお、図1に示す画像形成装置は、タンデム方式によるフルカラープリンタであるが、本発明は、これに限らず、複写機やファクシミリ装置などにも適用することができる。
【0016】
図1に示す画像形成装置は、装置本体100内で中間転写ユニット10に設けられている未定着像担持体としての中間転写ベルト10Aの下面に対向して、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した作像部6Y、6M、6C、6Kが並設されている。
【0017】
これらの作像部6Y、6M、6C、6Kは、作像プロセスに用いられるトナーの色が異なる以外は同一構造である。なお、以下の説明では、各作像部で共通する数字の符号のみを挙げて説明し、トナーの色を示すアルファベットの符号は省く。
各作像部6は、潜像担持体としての感光体ドラム1と、感光体ドラム1の周囲に配設された帯電手段2、現像装置3、クリーニング手段4等で構成されている。
感光体ドラム1上で、作像プロセス(帯電工程、露光工程、現像工程、転写工程、クリーニング工程)が行われ、感光体ドラム1上に所望のトナー像が形成される。
感光体ドラム1は、不図示の駆動部によって図中、時計回り方向に回転駆動され、帯電手段2の位置で表面が一様に帯電される(帯電工程)。
【0018】
感光体ドラム1の表面は、不図示の露光部から発せられたレーザ光の照射位置に達して、この位置での露光走査によって静電潜像が形成され(露光工程)、現像装置3と対向する位置に達すると、そこから供給される現像剤に含まれるトナーにより可視像処理されて現像工程が実行される。
現像工程において可視像処理されたトナー像を担持する感光体ドラム1の表面は、中間転写ベルト10A及び1次転写バイアスローラ5との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム1上のトナー像が中間転写ベルト10A上に転写される(1次転写工程)。
【0019】
転写を終えて感光体1の表面は、クリーニング手段4との対向位置に達し、この位置で感光体ドラム1上に残存した未転写トナーが回収される(クリーニング工程)。クリーニング後、感光体ドラム1の表面は図示しない除電ローラにより電位を初期化される。このような工程を経過することで、感光体ドラム1上で行われる一連の作像プロセスが終了する。
上述した作像プロセスは、モノクロ画像のみの単一画像形成時およびフルカラー画像形成時にそれぞれ行われるが、フルカラー画像形成時には、図1に示した4つの作像部6Y、6M、6C、6Kにおいて各工程がそれぞれ行われる。すなわち、作像部の下方に配設された不図示の露光部(光書き込み装置)から、画像情報に基づいたレーザ光が、各作像部6Y、6M、6C、6Kの感光体ドラム上に向けて照射される。その後、現像工程を経て各感光体ドラム上に形成した各色のトナー像を、中間転写ベルト10A上に重ねて転写する。こうして、中間転写ベルト10A上にカラー画像が形成される。
【0020】
4つの1次転写バイアスローラ5Y、5M、5C、5Kは、それぞれ、中間転写ベルト10Aを感光体ドラム1Y、1M、1C、1Kとの間に挟み込んで1次転写ニップを形成している。1次転写バイアスローラ5Y、5M、5C、5Kにはトナーの極性とは逆極性の転写バイアスが印加される。
中間転写ベルト10Aは、矢印方向に走行して、各1次転写バイアスローラ5Y、5M、5C、5Kの1次転写ニップを順次通過する。こうして、感光体ドラム1Y、1M、1C、1K上の各色のトナー像が、中間転写ベルト10A上に重ねて1次転写される。
各色のトナー像が重ねて転写された中間転写ベルト10Aは、2次転写手段としての2次転写ローラ7との対向位置に達する。中間転写ベルト10A上に形成されたカラートナー像は、2次転写ニップの位置に搬送された記録媒体としての転写紙P上に一括転写される。
【0021】
装置本体100の下部に配設された給紙部8には、転写紙Pが複数枚重ねて収納されており、給紙コロ9により1枚ずつ分離されて給紙される。給紙された転写紙Pはレジストローラ対10で一旦停止され、斜めずれを修正された後レジストローラ対10により所定のタイミングで2次転写ニップに向けて搬送される。そして、前記のように、2次転写ニップにおいて転写紙P上に、所望のカラー画像が転写される。
2次転写ニップの位置でカラー画像を転写された転写紙Pは、定着部11へ搬送され、ここで、定着ローラ及び圧力ローラによる熱と圧力とにより、表面に転写されたカラー画像を定着される。
定着を終えた転写紙Pは、排紙ローラ対12により、装置本体100の上面に形成された排紙部100Aへ出力画像として排出され、スタックされる。こうして、画像形成装置における一連の画像形成プロセスが完了する。なお、図1において符号13は、中間転写ベルト10Aのクリーニング装置を示している。
【0022】
図2は、現像装置3を示しており、同図に示す現像装置3は、作像部での現像部として用いられる。
現像槽30の内部には、縦方向に配置された2本の搬送スクリューからなる現像剤供給部材3Aおよび現像剤回収部材3Bがそれぞれ配置されている現像剤供給部30Aおよび現像剤回収部30Bが設けられている。
現像剤供給部材3Aには、現像剤担持体である現像スリーブ3Cが対峙しており、現像剤供給部材3Aから供給される現像剤がドクターブレード3Dにより層厚を規定されたうえで供給されるようになっている。
現像剤供給部材3Aと現像剤回収部材3Bとは、回転方向が逆方向に設定されており、回転時には相対する方向に現像剤が搬送される。
現像剤供給部30Aおよび現像剤回収部30Bは、図3に示す現像剤供給機構に示す構成において循環部に含まれる位置に配置されている。
【0023】
図3は、現像剤供給機構の全体構成を示している。
現像剤供給機構には次の部材が設けられている。
感光体ドラム1上の静電潜像を現像する現像剤を収容可能な現像槽30と、現像槽30から離れた位置で現像槽30から回収された現像剤および消費されたトナーに見合う新規トナーを撹拌混合する現像剤収容部40と、現像剤収容部40に向け新規トナーを補給するトナー供給部60と、現像剤収容部40から排出される撹拌混合後の現像剤を移送するためのロータリーフィーダ50と、現像剤を空気などの気体(以下、便宜上、空気の場合で説明する)により現像槽30に向け移送する、いわゆる、気流搬送機構を構成するための現像剤循環駆動源に相当する空気ポンプ51とが主要部として備えられている。
図3では、現像槽30がカートリッジ状に構成されている。なお、図3においては、便宜上、現像剤供給部材3A、現像剤回収部材3Bに関し、これらの回転軸を対象として符号を付して示してある。
【0024】
現像槽30と現像剤収容部40とは、現像槽30内の現像剤回収部30Bに接続されている現像剤回収流路41およびロータリーフィーダ50と現像槽30内の現像剤供給部30Aに接続された現像剤供給流路42とで現像剤の循環路を構成し、循環路に設けられている部材を含めた循環部が構成されている。
【0025】
現像槽30に接続されている現像剤供給流路42は、現像剤供給部材3Aの軸方向一端、詳しくは、現像剤供給部材3Aによる現像剤の搬送方向上流側が該当する現像剤搬送開始位置側に対峙するように接続されている。また、現像剤回収流路41は、現像槽30に設けられている現像剤回収部材3Bの軸方向で現像剤回収部材3Bによる現像剤の搬送方向下流側が該当する現像剤排出位置側に対応させて接続されている。
【0026】
現像剤収容部40は、上部が円筒状であって、下部が下向き円錐状のサイロのような外観を呈しており、内部には、図4において詳述する攪拌部材が設けられている。
【0027】
図4において現像剤収容部40の上部には、攪拌部材の駆動部をなす駆動モータ40Aおよび減速ギヤ群GRが設けられている。
現像剤収容部40において攪拌混合された現像剤は、供給量を調整できるパドルを内部に備えて駆動モータ50Aにより回転駆動されるロータリーフィーダ50に給送され、この位置で供給量を調整される現像剤が空気ポンプ51により生成される気流により現像槽30に向け搬送される。
【0028】
図3においてトナー供給部60は、トナータンク61と、このトナータンク61と現像剤収容部40との間に接続されている補給トナー搬送路62と補給トナー搬送路62内にて補給されたトナーを補給路内に配置されている搬送スクリュー(図示されず)を駆動する駆動モータ63とを備えている
【0029】
現像後の現像剤は、現像剤回収部30Bに装備されている現像剤回収部材3Bの端部に接続されている現像剤回収流路41(図3参照)から現像剤収容部40に搬送される。
現像剤回収部材3Bによる現像剤移動方向の最下流には、図示しないトナー濃度検知手段が設置されており、その信号を基にトナータンク61から新規トナーの補給が行われる。トナーの補給は前述したように補給トナー搬送路62に接続されている空気ポンプ63による気流搬送によって行われる。
【0030】
図3に示す現像剤収容部40は、図4に詳細が示されている。
図4において現像剤収容部40には、上部が円筒状で縦断面が下向き錐状をなす漏斗状の形状とされた容器43が用いられており、最下部に位置して最も小径の排出口400がロータリーフィーダ50に連通している。
【0031】
現像剤収容部40の内部空間には、攪拌部材として駆動モータ40Aから垂下している回転軸44に一体化されて現像剤の流下方向と逆方向に現像剤を移動させる向きのスクリュー44Aと、回転軸44により駆動される減速ギヤ群GRの出力ギヤと連動可能な端板45を有する攪拌羽根45Aが設けられている。攪拌羽根45Aは、端板45の径方向に平行する板状部材に複数のスリットが形成されて現像剤の一部を通過させながら残りの現像剤を押し動かして攪拌できる構成が用いられている。
【0032】
容器43の最下部に位置する排出口400に接続されているロータリーフィーダ50は、モータ50A(図3参照)の回転量に応じて現像剤の排出量を制御するために設けられており、モータ50Aの回転軸に固定されて放射状に延長された複数の羽根50B1を有するロータリーバルブ部材50Bを備えている。
【0033】
以上のような構成を対象として、本実施例の特徴について説明すると次の通りである。
本実施例での特徴は、気流搬送による現像剤の循環路において現像剤の搬送に用いられる空気が作用する箇所での圧力が上昇した際の空気を外部に排出する排気機構を備え、排気機構に用いられるフィルタを清浄化する機構を設けたことに特徴がある。
【0034】
以下、この特徴について説明する。
図3及び図4において現像剤収容部40の現像剤の剤面上方に位置する天板には現像剤回収流路41とは別に、排気部をなす排出容器200に連通する排気管路201が接続されている。なお、図4及び後述する図7において矢印は現像剤の移動方向を示している。
【0035】
排出容器200は、外部と連通する開口で構成された連通部200Aが外周の少なくとも1カ所に設けられた箱状容器が用いられている。排出容器200は、内部に体積膨張部として用いられる空間を有し、導入された空気の圧力を下げる機能を発揮できるようになっている。
【0036】
連通部200Aは、現像剤の排出を阻止して空気のみを外部に排出可能なフィルタ202により覆われており、連通部101A及びフィルタ202は、網目状メッシュ構造のものが用いられ、現像剤収容部40から管路201内に導入される空気の圧力が気流搬送機構において生起される圧力以下に設定できる面積及び個数を設定されている。
網目状メッシュ構造の場合には、例えば、パンチングメタルと同様に、表面に凹凸がない状態となるので、繊維を編み込んだ構成のフィルタと違って、トナーが繊維の中に入り込むことがなく、掃き寄せしやすくなる。
【0037】
一方、図5は、排出容器200のみを抽出して拡大した図であり、同図において排出容器200に設けられているフィルタ202には、気流搬送により飛翔可能な物質であるトナーやこれを含む現像剤中で磁性を有する磁性キャリアを捕集する部材であるフィルタ202の清浄化機構が設けられている。
【0038】
図5において、排出容器100の近傍には、図5においてトナーや磁性キャリアなどの粉体捕集面をなすフィルタ202を水平方向に横断可能な可動磁石203が配置されている。
可動磁石203は、フィルタ202の捕集面に対向する捕集面掃き寄せ用磁石203Aと、排出容器200の底部に対向する底部掃き寄せ用磁石203Bとを備えている。従って、捕集面に対向する捕集面掃き寄せ用磁石203Aは、トナーや磁性キャリアなどの粉体が付着するフィルタ202の捕集面と反対側に配置されている。
【0039】
可動磁石203をフィルタ202の捕集面反対側で横断させる機構は、横断方向においてフィルタ202の占有領域を外れた位置までの軸方向長さを持つ駆動ネジ204と、これを回転駆動する駆動モータ205とで構成されており、駆動モータ205は、後述するが、現像装置内でのトナー濃度に応じて回転時期を設定されるようになっている。なお、図5において符号206は、可動磁石203を支持する可動台を示している。
【0040】
可動磁石203として用いられる磁石は、図6に示す磁極構成を備えている。
図6(A)に示すように、可動磁石203は、フィルタ202の捕集面に対向する端部がN,S極のいずれかを一様磁化された単極の磁石で構成されている。
これにより、フィルタ202の捕集面に対して磁力線が垂直に生起されることで捕集力を強めることができる。
なお、図6(B)は、捕集面に沿って磁石端部を位置させ、各端部の磁極を捕集面に沿ってN,S極とした場合が示されている。このような磁極構成では、不利多202の捕集面に沿った、換言すれば、捕集面に平行する磁力線が生起されるので、捕集面内部を通過する磁力線が弱く、捕集力を強めることができない。
【0041】
可動磁石203が横断する際にトナーや磁性キャリアを除去されるフィルタ202の捕集面の面積は、横断時での可動磁石203の投影面積に対して必要排気能力が得られる面積を加えた面積を設定されている。つまり、捕集面において可動磁石203が存在していても、可動磁石203が存在していない場合の排気能力が得られる面積を確保するようになっている。
【0042】
以上のような構成において、その作用を説明すると、図7に示すとおりである。
図7において、フィルタ202の捕集面に気流搬送されてきたトナーや磁性キャリアが捕集されて空気のみが排出される状態が継続されると、経時的にトナーや磁性キャリアが捕集面に堆積する(図7(A)に示す状態)。
予め、画像形成置の稼働時間あるいはプリント枚数に応じた可動磁石203の動作時期を設定しておき、可動磁石203を駆動モータ205およびこれに連動する駆動ネジ204を介して可動台206を移動させてフィルタ202の捕集面と反対側で可動磁石を横断させる。可動磁石203が捕集面を横断すると、可動磁石203の磁力に拘束される現像剤、つまり磁性キャリアが移動するのを利用してトナーも掃き寄せされる(図7(B)に示す状態)。
可動磁石203は、フィルタ202の占有領域を外れる位置まで移動すると、トナーおよび磁性キャリアへの磁力が弱まり、排出容器端部に磁力の拘束を解消された掃き寄せられたトナーおよび現像剤は、集約されることになる(図7(C)に示す状態)。
【0043】
図8は、可動磁石203によるフィルタ202の清浄化が行われる場合と行われない場合とを圧力変化に関して比較した結果を示す図である。
同図において、フィルタ202の清浄化が行われない場合には、破線で示すように、経時的にフィルタ202の捕集面へのトナーや現像剤の堆積により排出容器200内での圧力が上昇し、これが原因して現像剤の搬送系での圧力上昇を招く。
これに対し上記構成を用いた場合には、実線で示すように、清浄化により圧力上昇が解消されることになる。
【0044】
次に、上記構成に要部変形例について説明する。
フィルタ202は、交換可能なように、排出容器200が相当するフィルタ202の支持枠に対して着脱可能に設けられている。
一方、図9に示すように、排出容器200の連通部200Aにおいて、可動磁石203の横断開始側には、粉体である磁性キャリアを貯留可能な空間を構成する保持部207が設けられている。
保持部207は、可動磁石の横断開始位置側に設けられており、飛翔してきた磁性キャリアが入りやすい空間容積を持たせてある。
保持部207は、可動磁石203が横断開始側に復帰する際に、磁気的拘束を利用して磁性キャリアの一部を導入して溜めることができる部分として用いられる。
従って、フィルタ202の捕集面にトナーが多く散在している場合には、可動磁石203を横断させてもトナーへの磁気的拘束が有効に機能しないが、保持部207に溜められていた磁性キャリアが可動磁石203の横断開始と共に捕集面を移動することで磁性キャリアに捕獲されたトナーが捕集面を横断して掃き寄せられることになる。
【0045】
また、排出容器200の連通部200Aにおいて可動磁石203の横断終了側の位置には、可動磁石203の横断移動に連動して掃き寄せられて互いに付着している粉体同士であるトナーと磁性キャリアとを剥離する剥離部208が設けられている。
剥離部208は、排出容器200の内壁面から内側に張り出して横断方向に平行な片部で構成され、その片部が捕集面を移動してくる塊状のトナーと磁性キャリアとの間に進入できるようになっている。
【0046】
以上の構成においては、フィルタ202の捕集面にトナーが多く散在している場合に捕集面の清浄化が効率よく行われる。つまり、図9(A)に示すように、フィルタ202の捕集面にトナーが多く散在している場合、保持部207に溜まっている磁性キャリアが可動磁石203の移動開始と共に捕集面上を移動する。
捕集面上を磁性キャリアが移動するときには捕集面上に散乱しているトナーも掃き寄せられ(図9(B)に示す状態)、剥離部208に塊状となったトナーおよび磁性キャリアが進入する。
剥離部208に達したトナーおよび磁性キャリアは、剥離部208の片部がトナーと磁性キャリアの塊内に進入することでトナーおよび磁性キャリアの粉体同士が剥がされて別々に回収される。
なお、上述した作用は、フィルタ202の捕集面にトナーのみが主に付着して捕集されている場合を対象として説明したが、トナーに変えて磁性キャリアの場合も同様である。
【0047】
可動磁石203の駆動モータ205は、前述したように、予め設定されている画像形成装置の稼働時間あるいはプリント枚数に応じて動作時期を設定されている代わりに、フィルタ202でのトナー捕集量、つまり集塵量に影響するトナー濃度に応じて起動させることも可能である。
【0048】
図10は、トナー濃度に対する単位時間あたりのトナー集塵量を示す線図である。
同図に示すように、トナー濃度の増加とともにトナー集塵量が増加し、フィルタ202の捕集面に多くのトナーが付着することになる。
このような現象を踏まえ、現像装置内の現像剤のトナー濃度が高い場合、頻度を多くしてフィルタ202の性能低下を抑え、逆にトナー濃度が低い場合、頻度を少なくして余分な掃き寄せ動作を少なくするように、駆動モータ205の駆動タイミングを設定することも可能である。
以上のように、可動磁石203による剤掃き寄せ動作の頻度を、現像装置内の現像剤のトナー濃度によって変えることで、余分な動作をさせることがなくなるので、省電力化が図れる。
【0049】
以上のような実施例においては、排出容器200に装備されているフィルタ202の捕集面を清浄化することにより、フィルタの交換頻度を少なくすることができる。これにより、交換頻度低減のためにフィルタなどの捕集面を大きくする必要がなくなり、装置の大型化を回避することができる。また、当然のごとく、フィルタの捕集面が清浄化されていることにより排気機能の低下を抑えて排気能力を長期間に亘って維持することができる。
【符号の説明】
【0050】
3 現像装置
30 現像槽
40 現像剤収容部
41 現像剤回収流路
42 現像剤供給流路
100 画像形成装置本体
200 排出容器
201 管路
202 フィルタ
203 可動磁石
204 駆動ネジ
205 駆動モータ
207 保持部
208 剥離部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0051】
【特許文献1】特許3734096号
【特許文献2】特許3349286号
【特許文献3】特開平11−143196剛公報
【特許文献4】特開2008−003561号公報
【特許文献5】特開2003−215918号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体の気流搬送に用いられる空気の排気部に、粉体を捕集して空気のみを排出させるためのフィルタを備えた排気機構において、
前記粉体の少なくとも一つには、磁性を有する物質が対象として用いられ、
前記粉体が付着するフィルタの粉体捕集面と反対側には、該粉体捕集面を横断可能な可動磁石が設けられ、
前記可動磁石は、前記粉体捕集面を横断した後、該粉体捕集面を外れた位置に向けて前記粉体を掃き寄せることを特徴とする排気機構。
【請求項2】
前記粉体を掃き寄せる機構として、前記粉体捕集面の一部において該粉体捕集面に沿って延長された回転軸を備え、前記可動磁石は該回転軸に装着されて該回転軸の回転方向に応じて前記粉体捕集面を外れた位置まで移動可能であることを特徴とする請求項1記載の排気機構。
【請求項3】
前記可動磁石には、前記フィルタの粉体捕集面に対向する端部がN極、S極のいずれかに一様磁化された単極の磁石が用いられることを特徴とする請求項1または2記載の排気機構。
【請求項4】
前記フィルタは、網目状メッシュ構造とされていることを特徴とする請求項1記載の排気機構。
【請求項5】
前記フィルタは支持枠に着脱可能に取り付けられ、該支持枠において前記可動磁石の横断開始側の支持枠壁部には、前記粉体が付着する粉体捕集面側に前記粉体のうちの磁性を有する粉体を貯留可能な保持空間を構成する保持部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至4のうちの一つに記載の排気機構。
【請求項6】
前記支持枠において前記可動磁石の横断終了側の支持枠壁部には、可動磁石の横断移動に連動して互いに付着しながら掃き寄せられた粉体同士間に進入して粉体同士を剥離する剥離部が設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のうちの一つに記載の排気機構。
【請求項7】
前記フィルタの面積は、前記可動磁石が粉体捕集面を横断する際の可動磁石の投影面積に対して、必要排気能力が得られる面積を加えた面積に設定されていることを特徴とする請求項1乃至6のうちの一つに記載の排気機構。
【請求項8】
トナーと磁性キャリアとを用いる二成分系現像剤を用いる現像装置により潜像担持体に形成された静電潜像を可視像処理する画像形成装置であって、
前記現像装置は、潜像担持体に現像剤を供給する現像部と該現像部とは別に設けられた現像剤攪拌部との間で現像剤を気流搬送し、前記現像部に排気機構を備え、該排気機構には請求項1乃至7のうちの一つに記載の排気機構が用いられることを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
前記排気機構における可動磁石の掃き寄せ動作が、前記現像装置における現像装置のトナー濃度に応じて頻度を設定されることを特徴とする請求項8記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−80034(P2013−80034A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218944(P2011−218944)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】