説明

排気浄化システムの異常検出装置

【課題】本発明は、選択還元型NOx触媒を有する排気浄化システムにおいて、より好適に、選択還元型NOx触媒の異常と尿素供給装置の異常とを区別して検出することを目的とする。
【解決手段】内燃機関の排気通路に設けられた選択還元型NOx触媒と、還元剤となるアンモニアを生成するための尿素を選択還元型NOx触媒に供給する尿素供給装置と、を有する内燃機関の排気浄化システムにおいて、NOx浄化率が所定浄化率以下となったときに、選択還元型NOx触媒が正常であると仮定した場合の該選択還元型NOx触媒におけるアンモニアの弱酸点吸着量が増加する条件が成立している時のNOx浄化率に基づいて選択還元型NOx触媒の異常と前記尿素供給装置の異常とを区別して判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、選択還元型NOx触媒を有する排気浄化システムの異常検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の排気通路に設けられた選択還元型NOx触媒を有する排気浄化システムが提案されている。このような排気浄化システムでは、選択還元型NOx触媒に尿素が供給される場合がある。この場合、尿素が加水分解することで生じたアンモニアが還元剤となり、選択還元型NOx触媒においてNOxの還元が行なわれる。
【0003】
また、上記のような排気浄化システムの異常を検出するための手法も提案されている。例えば、特許文献1に記載の技術では、実NOx浄化率が目標NOx浄化率よりも低い場合に、選択還元型NOx触媒に供給される尿素の添加量を増量し、その増量前後におけるNOx浄化率の変化に基づいて、尿素の添加量不足又はアンモニアスリップの発生の有無を判定する。
【0004】
また、特許文献1に記載の技術では、選択還元型NOx触媒の下流側に設けられたNOx及びアンモニアに感応する特定ガス濃度センサのセンサ値が閾値を超えたときに、還元剤の噴射量を要求噴射量よりも増加又は減少させ、所定時間経過後のセンサ値を閾値と比較することによって還元剤の実噴射量の過不足を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−293743号公報
【特許文献2】特開2010−133354号公報
【特許文献3】特開2009−127496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
選択還元型NOx触媒に流入したNOx量に対する該触媒において還元されたNOx量の比率であるNOx浄化率は、該触媒の劣化が進むと低下する。一方、NOx浄化率は、選択還元型NOx触媒が劣化したときのみならず、選択還元型NOx触媒に尿素を供給する尿素供給装置に異常が生じたときも低下する場合がある。そのため、単にNOx浄化率の低下を検知するのみでは、選択還元型NOx触媒の異常と尿素供給装置の異常とを区別して検出することは困難である。
【0007】
また、上記した特許文献1に記載の技術のように、異常検出のために尿素の供給量を増加すると、尿素の消費量が増加することになる。また、選択還元型NOx触媒におけるNOxの還元に寄与せずに、該選択還元型NOx触媒から流出する尿素(若しくは、アンモニア、又は、尿素がアンモニアに変化する途中で生成される中間生成物)が増加することで、排気特性の悪化を招く虞もある。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、選択還元型NOx触媒を有する排気浄化システムにおいて、より好適に、選択還元型NOx触媒の異常と尿素供給装置の異常とを区別して検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、選択還元型NOx触媒が正常であると仮定した場合の該選択還元型NOx触
媒におけるアンモニアの弱酸点吸着量が増加する条件が成立している時のNOx浄化率に基づいて選択還元型NOx触媒の異常と前記尿素供給装置の異常とを区別して判定するものである。
【0010】
より詳しくは、本発明に係る排気浄化システムの異常検出装置は、
内燃機関の排気通路に設けられ、アンモニアを還元剤として排気中のNOxを還元する選択還元型NOx触媒と、
アンモニアを生成するための尿素を前記選択還元型NOx触媒に供給する尿素供給装置と、を有する内燃機関の排気浄化システムの異常検出装置であって、
前記選択還元型NOx触媒におけるNOx浄化率を算出するNOx浄化率算出手段と、
前記NOx浄化率算出手段によって算出されたNOx浄化率が第一所定浄化率以下となったときに、前記選択還元型NOx触媒が正常であれば該選択還元型NOx触媒におけるアンモニアの弱酸点吸着量が増加する条件である弱酸点吸着量増加条件が成立している時のNOx浄化率に基づいて前記選択還元型NOx触媒の異常と前記尿素供給装置の異常とを区別して判定する判定手段と、
を備える。
【0011】
本発明に係る排気浄化システムにおいては、尿素供給装置から供給された尿素が加水分解することで生じたアンモニアが選択還元型NOx触媒に吸着する。このとき、アンモニアは、選択還元型NOx触媒における弱酸点と強酸点とのそれぞれに吸着する。そして、NOxの還元に寄与するのは、主に弱酸点に吸着したアンモニアである。そのため、アンモニアの弱酸点吸着量が増加すればNOx浄化率が上昇する。
【0012】
ここで、第一所定浄化率とは、選択還元型NOx触媒又は尿素供給装置に異常が発生していると判断できる閾値となるNOx浄化率である。NOx浄化率がこの第一所定浄化率以下の場合であっても、弱酸点吸着量増加条件が成立し、選択還元型NOx触媒における実際のアンモニアの弱酸点吸着量が増加すれば、NOx浄化率が上昇する。しかしながら、選択還元型NOx触媒に劣化等の異常が生じていれば、弱酸点吸着量増加条件が成立しても選択還元型NOx触媒における実際のアンモニアの弱酸点吸着量が増加しないため、NOx浄化率は上昇しない。
【0013】
このようなことから、NOx浄化率が第一所定浄化率以下となったときに、その原因が選択還元型NOx触媒の異常であるのか尿素供給装置の異常であるのかを、弱酸点吸着量増加条件が成立している時のNOx浄化率に基づいて判定することができる。
【0014】
例えば、本発明において、判定手段は、弱酸点吸着量増加条件が成立している時のNOx浄化率が、選択還元型NOx触媒が正常であると仮定した場合の該選択還元型NOx触媒におけるアンモニアの弱酸点吸着量に基づいて定まる第二所定浄化率以上のときは尿素供給装置の異常と判定し、該第二所定浄化率より低いときは選択還元型NOx触媒の異常と判定してもよい。ここで、第二所定浄化率とは、選択還元型NOx触媒は正常であると判断できる閾値となる浄化率である。
【0015】
また、本発明において、判定手段は、弱酸点吸着量増加条件が成立している時のNOx浄化率が、選択還元型NOx触媒が正常であると仮定した場合の該選択還元型NOx触媒におけるアンモニアの弱酸点吸着量の増加に応じて上昇するときは尿素供給装置の異常と判定し、選択還元型NOx触媒が正常であると仮定した場合の該選択還元型NOx触媒におけるアンモニアの弱酸点吸着量が増加しても上昇しないときは前記選択還元型NOx触媒の異常と判定してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、選択還元型NOx触媒を有する排気浄化システムにおいて、尿素の消費量の増加や排気特性の悪化を伴うことなく、選択還元型NOx触媒の異常と尿素供給装置の異常とを区別して検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例に係る内燃機関の排気系の概略構成を示す図である。
【図2】選択還元型NOx触媒NOx触媒における尿素及びアンモニアの吸着態様を説明するためのイメージ図である。
【図3】実施例に係る、内燃機関を搭載した車両の速度(車速)と、NOx触媒における、尿素の吸着量並びにアンモニアの強酸点吸着量及び弱酸点吸着量との関係を示す図である。
【図4】実施例に係る、内燃機関を搭載した車両の速度(車速)と、NOx触媒におけるアンモニアの弱酸点吸着量と、NOx触媒におけるNOx浄化率との関係を示す図である。
【図5】実施例に係る排気浄化システムの異常検出のフローを示すフローチャートである。
【図6】実施例の変形例に係る排気浄化システムの異常検出のフローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。本実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に記載がない限りは発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0019】
<実施例>
ここでは、本発明を、車両駆動用のディーゼルエンジンの排気浄化システムに適用した場合を例に挙げて説明する。ただし、本発明に係る内燃機関はディーゼルエンジンに限られるものではなく、ガソリンエンジン等であってもよい。
【0020】
[内燃機関の排気系の概略構成]
図1は、本実施例に係る内燃機関の排気系の概略構成を示す図である。内燃機関1は車両駆動用のディーゼルエンジンである。ただし、本発明に係る内燃機関はディーゼルエンジンに限られるものではなく、ガソリンエンジン等であってもよい。内燃機関1には排気通路2が接続されている。
【0021】
排気通路2には、酸化触媒3、パティキュレートフィルタ4、及び選択還元型NOx触媒(以下、単にNOx触媒と称する)5が上流から順に設けられている。パティキュレートフィルタ4は排気中の粒子状物質を捕集するフィルタである。パティキュレートフィルタ4には酸化触媒が担持されていてもよい。
【0022】
また、本実施例に係る内燃機関1の排気系には尿素添加装置7が設けられている。尿素添加装置7は、パティキュレートフィルタ4より下流側且つNOx触媒5より上流側の排気通路2を流れる排気中に尿素水を添加するための装置である。尿素添加装置7は、尿素添加弁71、尿素通路72、尿素タンク73、及び電動ポンプ74を備えている。
【0023】
尿素添加弁71は、パティキュレートフィルタ4より下流側且つNOx触媒5より上流側の排気通路2に設けられている。尿素添加弁71には尿素通路72の一端が接続されている。尿素通路72の他端は尿素タンク73に接続されている。尿素タンク73には尿素水が貯留されている。尿素通路72には電動ポンプ74が設けられている。電動ポンプ74が駆動することで、尿素タンク73から尿素通路72を通して尿素添加弁71に尿素水
が供給される。そして、尿素添加弁71に供給された尿素水が、該尿素添加弁71に形成された噴射孔から排気中に添加される。
【0024】
尿素添加弁71から排気中に尿素水が添加されることで、NOx触媒5に尿素が供給される。この尿素が加水分解することでアンモニアが生じる。そして、NOx触媒5において、このアンモニアが還元剤となって排気中のNOxが還元される。
【0025】
NOx触媒5より下流側の排気通路2には、NOxセンサ11及び温度センサ12が設けられている。NOxセンサ11は、NOx触媒5から流出した排気のNOx濃度を検出するセンサである。温度センサ12は、NOx触媒5から流出した排気の温度を検出するセンサである。
【0026】
内燃機関1には電子制御ユニット(ECU)10が併設されている。ECU10は内燃機関1の運転状態等を制御するユニットである。ECU10には、NOxセンサ11、温度センサ12、クランクポジションセンサ13、及び内燃機関1を搭載した車両のアクセル開度を検出するアクセル開度センサ14が電気的に接続されている。そして、各センサの出力信号がECU10に入力される。
【0027】
ECU10は、クランクポジションセンサ13の出力値に基づいて内燃機関1の機関回転速度を導出する。また、ECU10は、アクセル開度センサ14の出力値に基づいて内燃機関1の機関負荷を導出する。
【0028】
また、ECU10には、尿素添加弁71、及び電動ポンプ74が電気的に接続されている。そして、ECU10によってこれらの装置が制御される。
【0029】
[アンモニアの吸着態様]
上述したように、本実施例では、尿素添加弁71から尿素水が添加されることでNOx触媒5に尿素が供給され、該尿素が加水分解することで生成されたアンモニアを還元剤としてNOx触媒5において排気中のNOxが還元される。
【0030】
図2は、NOx触媒5における尿素及びアンモニアの吸着態様を説明するためのイメージ図である。図2に示すように、尿素添加弁71から添加された尿素はNOx触媒5に物理的に吸着する。この吸着した尿素が加水分解することで気相のアンモニアが生じる。尚、尿素添加弁71から添加された尿素がNOx触媒5に吸着することなく、加水分解することでアンモニアが生じる場合もある。
【0031】
尿素が加水分解することで生成されたアンモニアはNOx触媒5に吸着する。このとき、アンモニアは、NOx触媒5における弱酸点と強酸点とのそれぞれに吸着する。ただし、弱酸点に吸着したアンモニアが一旦脱離し強酸点に再度吸着する場合もあり、逆に、強酸点に吸着したアンモニアが一旦脱離し弱酸点に再度吸着する場合もある。
【0032】
ここで、NOx触媒5において、強酸点に吸着したアンモニアは弱酸点に吸着したアンモニアに比べて脱離し難い。そのため、NOxの還元に寄与するのは主に弱酸点に吸着したアンモニアである。
【0033】
[排気浄化システムの異常検出]
ここで、NOx触媒5に流入したNOx量に対する該NOx触媒5において還元されたNOx量の比率をNOx浄化率とする。NOx触媒5におけるNOx浄化率はNOx触媒5の劣化が進むと低下する。一方、尿素添加弁71の詰まり等の尿素添加装置7の異常が生じた場合においても、NOx触媒5に十分な量の尿素が供給されないことに起因して、
NOx浄化率が低下する場合もある。そのため、単にNOx浄化率の低下を検知するのみでは、NOx触媒5の異常(即ち、過度な劣化)と尿素添加装置7の異常とを区別して検出することは困難である。
【0034】
また、異常検出を目的として、NOx触媒5への尿素の供給量を増量すべく排気中への尿素水の添加量を増量すると、尿素水の消費量が増加することになる。さらに、NOx触媒5におけるNOxの還元に寄与せずに、該NOx触媒5から流出する尿素(若しくは、アンモニア、又は、尿素がアンモニアに変化する途中で生成される中間生成物)が増加することで、排気特性の悪化を招く虞もある。
【0035】
そこで、本実施例においては、NOx浄化率がNOx触媒5又は尿素添加装置7に異常が発生していると判断できる閾値(以下、この閾値を第一所定浄化率と称する)以下となった場合に、NOx触媒5が正常であれば該NOx触媒5におけるアンモニアの弱酸点吸着量が増加する条件(以下、この条件を弱酸点吸着量増加条件と称する)が成立している時のNOx浄化率に基づいてNOx触媒5の異常と尿素添加装置7の異常とを区別して検出する。
【0036】
図2に示したように、NOx触媒5の弱酸点には、尿素が加水分解して生成されたアンモニアおよび強酸点から脱離したアンモニアが吸着される。そのため、NOx触媒5におけるアンモニアの弱酸点吸着量は、(a)強酸点に吸着したアンモニアの脱離量が多いとき、(b)尿素の加水分解が活発なとき、に増加する。(a)の場合、強酸点から脱離したアンモニアが弱酸点に再度吸着することで、弱酸点吸着量が増加する。(b)の場合、尿素が加水分解して生成されるアンモニアの量が増加することで、弱酸点吸着量が増加する。そして、排気の温度が上昇することで、NOx触媒5の温度が上昇すると、(a)および/または(b)の状態が成立する。そのため、NOx触媒5におけるアンモニアの弱酸点吸着量が増加する。
【0037】
図3は、内燃機関1を搭載した車両の速度(車速)と、NOx触媒5における、尿素の吸着量並びにアンモニアの強酸点吸着量及び弱酸点吸着量との関係を示す図である。車両の速度が上昇すると、内燃機関1の機関負荷が上昇し排気温度が上がる。そのため、図3に示すように、車両の速度が上昇すると、NOx触媒5においては、アンモニアの弱酸点吸着量が増加する。このとき、尿素の物理的な吸着量およびアンモニアの強酸点吸着量は減少する。
【0038】
図4は、内燃機関1を搭載した車両の速度(車速)と、NOx触媒5におけるアンモニアの弱酸点吸着量と、NOx触媒5におけるNOx浄化率との関係を示す図である。図4における弱酸点吸着量およびNOx浄化率を示すグラフにおいて、実線はNOx触媒5が正常な場合を示しており、破線はNOx触媒5が異常な場合(即ち、過度に劣化している場合)を示している。
【0039】
上記のように、車両の速度が上昇すると、NOx触媒5が正常であれば、該NOx触媒5におけるアンモニアの弱酸点吸着量が増加する。これにより、NOxの還元に寄与するアンモニアが増加する。そのため、図4に示すように、NOx浄化率が上昇する。
【0040】
しかしながら、NOx触媒5が異常であると、車両の速度が上昇した時のように弱酸点吸着量増加条件が成立している場合であっても、図4において破線で示すように、NOx触媒5における実際のアンモニアの弱酸点吸着量は増加しなくなる。その結果、NOx浄化率も上昇しないこととなる。
【0041】
従って、NOx浄化率が第一所定浄化率以下となった場合であっても、その原因が尿素
添加装置7の異常であり、NOx触媒5は正常であれば、弱酸点吸着量増加条件が成立すると、NOx浄化率が第一所定浄化率以下の範囲で上昇する。一方、NOx浄化率が第一所定浄化率以下となった場合に、その原因が尿素添加装置7の異常ではなくNOx触媒5の異常であれば、弱酸点吸着量増加条件が成立しても、NOx浄化は上昇しない。このようなことから、弱酸点吸着量増加条件が成立している時のNOx浄化率に基づいてNOx触媒5の異常と尿素添加装置7の異常とを区別して検出することができる。
【0042】
図5は、本実施例に係る排気浄化システムの異常検出のフローを示すフローチャートである。本フローは、ECU10に予め記憶されており、所定の間隔で繰り返し実行される。
【0043】
本フローでは、先ずステップS101において、NOx触媒5における現時点のNOx浄化率Rnoxが算出される。本実施例では、NOx触媒5に流入する排気のNOx濃度(以下、流入排気NOx濃度と称する)が内燃機関1の運転状態に基づいて推定され、NOx触媒5から流出する排気のNOx濃度(以下、流出排気NOx濃度と称する)がNOxセンサ11によって検出される。そして、推定された流入排気NOx濃度及び検出された流出排気NOx濃度に基づいてNOx浄化率Rnoxが算出される。尚、NOx触媒5より上流側の排気通路2にもNOxセンサを設け、流出排気NOx濃度を該NOxセンサによって検出してもよい。
【0044】
次に、ステップS102において、S101で算出されたNOx浄化率Rnoxが第一所定浄化率Rnox1以下であるか否かが判別される。上述したように、第一所定浄化率Rnox1は、NOx浄化率がNOx触媒5又は尿素添加装置7に異常が発生していると判断できる閾値である。このような第一所定浄化率Rnox1は、実験等に基づいて予め求めることができる。第一所定浄化率Rnox1は、一定値であってもよく、また、内燃機関1の運転状態、温度センサ12よって検出される排気温度、および排気の流量(吸入空気量)等の少なくともいずれかに基づいて定められる値であってもよい。
【0045】
ステップS102において否定判定された場合、即ちNOx浄化率Rnoxが第一所定浄化率Rnox1より高い場合、NOx触媒5及び尿素添加装置7はいずれも正常であると判断できる。この場合、本フローの実行は一旦終了される。
【0046】
一方、ステップS102において肯定判定された場合、NOx触媒5又は尿素添加装置7のいずれかが異常であると判断できる。この場合、次にステップS103の処理が実行される。ステップS103においては、弱酸点吸着量増加条件が成立しているか否かが判別される。
【0047】
尚、弱酸点吸着量増加条件としては、上述したように車両の速度が上昇しているときが例示できるが、これに限られるものではなく、上記(a)および/または(b)の状態が成立する条件であればよい。例えば、温度センサ12よって検出される排気温度が上昇していることを、弱酸点吸着量増加条件としてもよい。また、内燃機関1の運転状態、尿素添加装置7に対する尿素水の添加量の指令値、および温度センサ12よって検出される排気温度等の履歴に基づいて、NOx触媒5が正常であると仮定した場合のNOx触媒5におけるアンモニアの弱酸点吸着量を推定し、その推定値が増加していることを弱酸点吸着量増加条件としてもよい。
【0048】
ステップS103において否定判定された場合、該ステップS103の処理が再度実行される。つまり、この時点では、選択還元型NOx触媒の異常が発生しているのか又は尿素供給装置の異常が発生しているのかの判定が保留される。
【0049】
一方、ステップS103において肯定判定された場合、次にステップS104の処理が実行される。ステップS104では、ステップS101と同様の方法により、NOx触媒5における現時点のNOx浄化率Rnoxが算出される。
【0050】
次に、ステップS105において、S104で算出されたNOx浄化率Rnoxが第二所定浄化率Rnox2以上であるか否かが判別される。ここで、第二所定浄化率Rnox2は、NOx触媒5が正常であると判断できる閾値である。第二所定浄化率Rnox2は、NOx触媒5が正常であると仮定した場合の該NOx触媒5におけるアンモニアの弱酸点吸着量に基づいて定まる値である。つまり、NOx触媒5が正常であると仮定した場合の該NOx触媒5におけるアンモニアの弱酸点吸着量が多いほど、第二所定浄化率Rnox2は大きい値に設定される。
【0051】
また、NOx触媒5が正常であると仮定した場合の該NOx触媒5におけるアンモニアの弱酸点吸着量は上記のような方法により推定することができる。そのため、その推定値に基づいて第二所定浄化率Rnox2を定めてもよい。また、上記のように、NOx触媒5が正常であると仮定した場合の該NOx触媒5におけるアンモニアの弱酸点吸着量は、内燃機関1の運転状態や排気温度等のパラメータと相関がある。そのため、これらのパラメータに基づいて第二所定浄化率Rnox2を定めてもよい。
【0052】
そして、ステップS105において肯定判定された場合、ステップS106において、尿素添加装置7が異常であると判定される。一方、ステップS105において否定判定された場合、ステップS107において、NOx触媒5が異常であると判定される。
【0053】
本実施例に係る異常検出方法によれば、NOx触媒5の異常と尿素添加装置7の異常とを区別して検出することができる。また、異常検出を目的として尿素添加装置7により尿素水の添加量を増加させる必要がない。そのため、尿素水の消費量の増加や排気特性の悪化を抑制することができる。
【0054】
[変形例]
本実施例の変形例に係る排気浄化システムの異常検出の方法について図6に基づいて説明する。図6は、本実施例の変形例に係る排気浄化システムの異常検出のフローを示すフローチャートである。本フローは、ECU10に予め記憶されており、所定の間隔で繰り返し実行される。尚、本フローは、図5に示すフローにおけるステップS105をステップS205に置き換えたものである。そのため、ステップS205の処理についてのみ説明し、その他のステップの処理についての説明は省略する。
【0055】
本フローにおけるステップS205では、NOx触媒5が正常であると仮定した場合の該NOx触媒5におけるアンモニアの弱酸点吸着量の増加に応じてNOx浄化率が上昇しているか否かが判別される。尚、NOx触媒5が正常であると仮定した場合の該NOx触媒5におけるアンモニアの弱酸点吸着量の値自体を推定しなくとも、内燃機関1の運転状態や排気温度等の該弱酸点吸着量と相関のあるパラメータが該弱酸点吸着量が増加する方向に変化しているときにNOx浄化率が上昇していれば、ステップS205において肯定判定することができる。
【0056】
図4に示すように、NOx触媒5が正常であると仮定した場合の該NOx触媒5におけるアンモニアの弱酸点吸着量の増加に応じてNOx浄化率が上昇していれば、NOx触媒5における実際のアンモニアの弱酸点吸着量も増加していると判断できる。つまり、NOx触媒5は正常であると判断できる。
【0057】
そのため、ステップS205において肯定判定された場合、ステップS106において
、尿素添加装置7が異常であると判定される。一方、ステップS105において否定判定された場合、ステップS107において、NOx触媒5が異常であると判定される。
【0058】
本変形例に係る異常検出方法によっても、尿素水の消費量の増加や排気特性の悪化を伴うことなく、NOx触媒5の異常と尿素添加装置7の異常とを区別して検出することができる。
【符号の説明】
【0059】
1・・・内燃機関
2・・・排気通路
3・・・酸化触媒
4・・・パティキュレートフィルタ
5・・・選択還元型NOx触媒
7・・・尿素添加装置
71・・尿素添加弁
10・・ECU
11・・NOxセンサ
12・・温度センサ
13・・クランクポジションセンサ
14・・アクセル開度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気通路に設けられ、アンモニアを還元剤として排気中のNOxを還元する選択還元型NOx触媒と、
アンモニアを生成するための尿素を前記選択還元型NOx触媒に供給する尿素供給装置と、を有する内燃機関の排気浄化システムの異常検出装置であって、
前記選択還元型NOx触媒におけるNOx浄化率を算出するNOx浄化率算出手段と、
前記NOx浄化率算出手段によって算出されたNOx浄化率が第一所定浄化率以下となったときに、前記選択還元型NOx触媒が正常であれば該選択還元型NOx触媒におけるアンモニアの弱酸点吸着量が増加する条件である弱酸点吸着量増加条件が成立している時のNOx浄化率に基づいて前記選択還元型NOx触媒の異常と前記尿素供給装置の異常とを区別して判定する判定手段と、
を備える排気浄化システムの異常検出装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記弱酸点吸着量増加条件が成立している時のNOx浄化率が、前記選択還元型NOx触媒が正常であると仮定した場合の該選択還元型NOx触媒におけるアンモニアの弱酸点吸着量に基づいて定まる第二所定浄化率以上のときは前記尿素供給装置の異常と判定し、該第二所定浄化率より低いときは前記選択還元型NOx触媒の異常と判定する請求項1に記載の排気浄化システムの異常検出装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記弱酸点吸着量増加条件が成立している時のNOx浄化率が、前記選択還元型NOx触媒が正常であると仮定した場合の該選択還元型NOx触媒におけるアンモニアの弱酸点吸着量の増加に応じて上昇するときは前記尿素供給装置の異常と判定し、前記選択還元型NOx触媒が正常であると仮定した場合の該選択還元型NOx触媒におけるアンモニアの弱酸点吸着量が増加しても上昇しないときは前記選択還元型NOx触媒の異常と判定する請求項1に記載の排気浄化システムの異常検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−92056(P2013−92056A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−232839(P2011−232839)
【出願日】平成23年10月24日(2011.10.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】