説明

排気管

【課題】高温の排ガスが排気管内を流れる際に、排ガスの温度を低下させることができる排気管を提供すること。
【解決手段】本発明の排気管は、金属からなる筒状の基材と、前記基材の外周面上に形成された、結晶性無機材と非晶質結合材とからなる表面被覆層とを備え、前記表面被覆層において、前記結晶性無機材は、前記表面被覆層の厚さ方向に複数積み重なった状態で分布しており、かつ、前記結晶性無機材よりも外周面側に位置する前記非晶質結合材の平均厚さが、20μm以下であり、内部を排ガスが流れることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気管に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車エンジンに接続される排気管は、燃焼ガス(排ガス)が流れることから運転時には著しく高温となる。エンジンの高負荷、高回転領域では、排気ガスの温度の上昇を抑えるために、燃量を増量することが行われているが、この場合は、燃費が悪化するとともに、排気ガスの濃度が高くなり有害物質の排出量が増加するという問題がある。
また、高温の排気ガスが流れることにより、排気管の温度が上昇すると、排気管の熱劣化を促す原因となる。
【0003】
また、排気管内には、自動車エンジンから排出される排ガスを処理するために触媒が設けられている。例えば、三元触媒では、排ガス中に含まれる炭化窒素(HC)、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)などの有害物質を浄化処理することができる。
これらの有害物質を三元触媒により効率的に処理するためには、三元触媒を所定の活性化温度に維持する必要がある。
【0004】
しかしながら、自動車エンジンの高速運転時には、排ガスが高温となり、三元触媒の温度が排ガスの浄化処理領域を外れて有害物質を適正に浄化処理できなくなったり、三元触媒が高温の排ガスにより熱劣化してしまうことがある。
【0005】
そのため、自動車エンジンに接続される排気管は、自動車エンジンの高速運転時において、排気管内を通る排ガスの熱を外部に放熱することができることが要求されている。
【0006】
そこで、例えば、特許文献1には、二重管構造を備え、二重管の内管と外管との間に可動式の伝熱部材を設けられた排気管が開示されている。この排気管では、自動車エンジンの高速運転時において排ガスが高温になることを防止し、上記の排気管に対する要求を満足している。
【0007】
【特許文献1】特開2005−194962号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された排気管では、内燃機関の高速運転時において排ガスが高温になることを防止するために、内管と外管との間に伝熱部材を設けており、部品点数が多く、構造が複雑になる点で不利であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明者らは鋭意検討を行い、上記の排気管に対する要求を満足する排気管として、特許文献1に開示された排気管とは、全く異なる技術的思想に基づいて排気管を完成した。
【0010】
即ち、請求項1に記載の排気管は、金属からなる筒状の基材と、
上記基材の外周面上に形成された、結晶性無機材と非晶質結合材とからなる表面被覆層とを備え、
上記表面被覆層において、上記結晶性無機材は、上記表面被覆層の厚さ方向に複数積み重なった状態で分布しており、かつ、上記結晶性無機材よりも外周面側に位置する上記非晶質結合材の平均厚さが、20μm以下であり、
内部を排ガスが流れることを特徴とする。
【0011】
請求項1に記載の排気管によると、結晶性無機材と非晶質結合材とからなる表面被覆層とを備えており、本発明の排ガスは放熱性に優れることとなる。
これについて、もう少し詳細に説明すると、上記表面被覆層は、結晶性無機材と非晶質結合材とを用いて形成されているが、このような表面被覆層では、上記結晶性無機材は、上記表面被覆層の厚さ方向に複数個積み重なった状態で分布している。本発明においては、上記結晶性無機材が排気管の放熱性を担う主な構成要素であるが、排気管の放熱性は、上記結晶性無機材を基材表面に投影した際に、その投影面積が大きいほど、排気管の放熱性は向上することとなる。そして、表面被覆層内の結晶性無機材が上記表面被覆層の厚さ方向に複数積み重なった状態で分布していると、上記結晶性無機材の基材表面への投影面積が大きくなりやすくなる。そのため、請求項1に記載の排気管は、放熱性に優れることとなる。
【0012】
さらに、請求項1に記載の排気管に係る表面被覆層では、上記結晶性無機材よりも外周面側に位置する上記非晶質結合材の平均厚さが、20μm以下である。上記表面被覆層からの放熱は、主に、上記結晶性無機材からの赤外線の放射に依存している。そのため、結晶性無機材よりも外周面側に位置する上記非晶質結合材の平均厚さが、20μm以下と薄い上記表面被覆層は放熱性に優れ、その結果、請求項1に記載の排気管は、放熱性に優れることとなる。
以上のように、上記結晶性無機材と上記非晶質結合材とからなる表面被覆層が特定の要件を満足しているため、本発明の排ガスは放熱性に優れることとなる。
【0013】
請求項2に記載の発明は、上記基材及び上記表面被覆層とからなる排気管本体に加え、上記排気管本体の外周面に対向する部分に受熱部材が配設されている。
【0014】
請求項2に記載の排気管によると、上記受熱部材を備えているため、排気管本体から受熱部材への熱の移動が容易になり、排気管本体からの放熱がより確実に進行することとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の排気管について詳細に説明する。
本発明の排気管は、金属からなる筒状の基材と、
上記基材の外周面上に形成された、結晶性無機材と非晶質結合材とからなる表面被覆層とを備え、
上記表面被覆層において、上記結晶性無機材は、上記表面被覆層の厚さ方向に複数積み重なった状態で分布しており、かつ、上記結晶性無機材よりも外周面側に位置する上記非晶質結合材の平均厚さが、20μm以下であり、
内部を排ガスが流れることを特徴とする。
【0016】
本発明の排気管は、自動車エンジン等の内燃機関に接続される排気系を構成する部材として、好適に使用することができる。具体的には、例えば、エキゾーストマニホールド等に好適に使用することができる。勿論、本発明の排気管の用途は、これに限定されるわけではない。
以下、自動車エンジン等の内燃機関に接続されるエキゾーストマニホールドを例に本発明の排気管について説明する。
【0017】
図1(a)は、自動車エンジンと、これに接続された排気系とを模式的に示す断面図であり、(b)は、(a)のA−A線断面図である。なお、(b)では、(a)のA−A線断面図を拡大して示している。
【0018】
図1(a)に示すように、エンジン10には、エキゾーストマニホールド11が接続され、さらに、このエキゾーストマニホールド11には、触媒担体13を備えた触媒コンバータ12が接続されている。
そして、エンジン10から排出された排ガスGは、エキゾーストマニホールド11内を通って、触媒コンバータ12内に流入し、触媒担体13に担持された触媒により浄化され、出口から排出されることとなる。
なお、図1(a)において、矢印は排ガスGの流れを示す。
【0019】
エキゾーストマニホールド11は、図1(b)に示すように、ステンレス製の筒状の基材14と、基材14の外周面上に形成された表面被覆層15とを備えている。
ここで、表面被覆層15は、波長1.5〜8μmにおける放射率が、0.78以上であることが望ましい。
なお、上記赤外線の放射率は、600℃で測定した放射率であり、例えば、FT−IR装置を用いて測定することができる。
【0020】
図1(a)、(b)に示したエキゾーストマニホールド11では、高温の排ガスが流入した際に、表面被覆層15が備える高い放熱性により、排ガスの温度を低下させることができる。
【0021】
エキゾーストマニホールド11を構成する基材14の材質は、ステンレスに限定されず、基材の材質として、ステンレス以外に、鋼、鉄、銅等の金属、インコネル、ハステロイ、インバー等のニッケル基合金等が挙げられる。これらの金属材料は熱伝導率が高いため、エキゾーストマニホールドの放熱性の向上に寄与することができる。
【0022】
また、これらの金属材料は耐熱性が高いため、高温領域で好適に使用することができる。また、これらの金属材料を基材に使用することにより、上記エキゾーストマニホールドは、耐熱衝撃性、加工性、機械的特性等に優れ、比較的安価なエキゾーストマニホールドとすることができる。
【0023】
上記基材の形状は、筒状であれば特に限定されず、その断面の外縁の形状は図1(b)に示したように円形であってもよいし、その他、楕円形、多角形等任意の形状であればよい。
そして、上記基材の断面の外縁の形状が真円以外の形状である場合には、真円の場合に比べて、排ガスとの接触面積が大きくなるため、熱の放射性が向上する傾向にある。
なお、本発明において、排気管の断面の外縁の形状は、上記基材の断面の外縁の形状と略相似形となる。
【0024】
エキゾーストマニホールド11を構成する表面被覆層15は、結晶性無機材と非晶質結合材とからなる。
そして、表面被覆層15において、上記結晶性無機材は、表面被覆層15の厚さ方向に複数積み重なった状態で分布しており、かつ、上記結晶性無機材よりも外周面側に位置する上記非晶質結合材の平均厚さは、20μm以下である。
【0025】
ここで、表面被覆層15について、図面を参照しながら詳しく説明する。
図2(a)は、図1(b)に示した排気管(エキゾーストマニホールド)11のB−B線断面の部分拡大図であり、図2(b)は、図2(a)における領域Cの拡大図である。
基材14の外周面上に形成された表面被覆層15は、結晶性無機材151と非晶質結合材152とから構成されており、結晶性無機材151が非晶質結合材152中に分散した状態となっている。ここで、結晶性無機材151よりも外周面側に位置する非晶質結合材152の平均厚さが、20μm以下となっている。
【0026】
本発明において、結晶性無機材151よりも外周面側に位置する非晶質結合材152の厚さは、以下のように規定される。
図2(b)に示すように、表面被覆層の厚さ方向において、最も外側に位置する各結晶性無機材151(表面被覆層の厚さ方向において、より外側に他の結晶性無機材が存在しない結晶性無機材)の最外周側と表面被覆層の表面との距離、即ち、図2(b)中において矢印で示す部分の距離として規定される。
【0027】
また、結晶性無機材よりも外周面側に位置する非晶質結合材の厚さは下記の方法により測定する。
まず、排気管を任意の部分で、長手方向及び長手方向に垂直な方向に切断し、その切断面の観察画像を取得する。その後、その観察画像について、表面被覆層の厚さ方向において、最も外側に位置する各結晶性無機材の最外周側と表面被覆層の表面との平均距離を測定する。
【0028】
また、基材14の外周面上に形成された表面被覆層15では、結晶性無機材151は、表面被覆層15の厚さ方向(図2(a)、(b)中、上下方向)に複数積み重なった状態で分布している。
本発明において、結晶性無機材151が表面被覆層15の厚さ方向に複数積み重なった状態で分布しているとは、表面被覆層を外周側から基材側に向かって表面被覆層の厚さ方向に観察した際に、複数の結晶性無機材が重なって観察される部位が存在していることをいう。
【0029】
上記結晶性無機材の材質としては、特に限定されるものでないが、遷移金属の酸化物を用いることが望ましく、具体例としては、例えば、二酸化マンガン、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化銅、酸化クロム、酸化ニッケルが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
これらの遷移金属の酸化物は、高い赤外線の放射率を有する結晶性無機材の作製に適している。
【0030】
上記非晶質結合材としては、例えば、バリウムガラス、ボロンガラス、ストロンチウムガラス、アルミナ珪酸ガラス、ソーダ亜鉛ガラス、ソーダバリウムガラス等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0031】
このような非晶質結合材は低融点ガラスであり、軟化温度が400〜1100℃の範囲にあるため、融解させて基材の外周面にコートした後、加熱焼成処理を施すことにより、基材の外周面に表面被覆層を容易にしかも強固に形成することができる。
【0032】
上記非晶質結合材が低融点ガラスである場合、その融点は、400〜1100℃であることが望ましい。
上記低融点ガラスの融点が400℃未満では、使用時に容易に軟化し、異物の付着や移行が発生する原因となることがあり、一方、上記融点が1100℃を超えると、表面被覆層を形成する際の熱処理により、基板が劣化するおそれがあるからである。
【0033】
また、上記非晶質結合材は、波長2〜8μmの赤外線の透過率が、0.25以上であることが望ましい。
上記非晶質結合材の波長2〜8μmの赤外線の透過率が、上記範囲にあると、赤外線が外部により放射されやすく、排気管は放熱性により優れることとなるからである。
【0034】
このような結晶性無機材と非晶質結合材とからなる表面被覆層では、上記遷移金属の酸化物からなる結晶性無機材の熱膨張率は8〜9×10−6/℃と低く、上記低融点ガラスからなる非晶質結合材の熱膨張率は8〜25×10−6/℃と高いため、上記結晶性無機材と上記非晶質結合材との配合比を調整することにより表面被覆層の熱膨張率を制御することができる。一方、金属からなる基材、例えば、ステンレスからなる基材は、熱膨張率が10〜18×10−6/℃である。
ここで、上記結晶性無機材と上記非晶質結合材との配合比を調整することにより、表面被覆層の熱膨張率を基材の熱膨張率に近づけることができ、両者の熱膨張率の差が小さいと、表面被覆層と基材とが高い密着力を有することとなる。
上記表面被覆層の熱膨張率と、上記基材の熱膨張率との差は、10×10−6/℃以下であることが望ましい。両者の熱膨張率の差が上記範囲にあると、内部を高温の排ガスが通過しても、両者の間での剥離や、表面被覆層及び基材の変形や破損が特に発生しにくいからである。
【0035】
上記表面被覆層が上記結晶性無機材と上記非晶質結合材とからなる場合、上記結晶性無機材の配合量は、望ましい下限が10重量%、望ましい上限が90重量%である。
上記結晶性無機材の配合量が10重量%未満では、上記赤外線の放射率が不十分となり、高温での放熱性が低下することがあり、一方、上記配合比率が90重量%を超えると、基材との密着性が低下する場合があるからである。
上記結晶性無機材の配合量は、より望ましい下限が30重量%であり、より望ましい上限が70重量%である。
また、上記配合量が10重量%未満では、上記結晶性無機材が、上記表面被覆層の厚さ方向に複数積み重なった状態とならない場合がある。
【0036】
上記エキゾーストマニホールド11において、上記表面被覆層の100〜200℃における熱伝導率は、上記基材の100〜200℃における熱伝導率よりも低いことが望ましい。
この理由は、以下のように考えられる。即ち、エキゾーストマニホールド11内に排ガスが流入し、基材が加熱された場合、基材の伝導伝熱速度は速いのに対し、基材から表面被覆層を介して外部に熱が伝導伝熱される速度は遅くなる。そのため、特に、伝導伝熱が熱の移動に大きく寄与する低温領域(本明細書においては、概ね500℃未満)において、断熱性に優れることとなり、このように低温領域における断熱性に優れると、自動車エンジン等の始動直後から短時間で排ガスの温度を所定の温度(例えば、排ガス浄化触媒の活性温度)まで昇温させることができると考えられるからである。
【0037】
なお、上記表面被覆層の100〜200℃での熱伝導率の値は、0.1〜4W/mKであることが望ましい。
また、上記表面被覆層の室温での熱伝導率は、細線加熱法、熱線法、レーザーフラッシュ法等の既知の測定方法によって測定することができる。
【0038】
上記表面被覆層の厚さは0.5〜10μmであることが望ましい。
上記表面被覆層の厚さが0.5μm未満では、充分な放熱性を確保することができない場合があり、一方、上記表面被覆層の厚さが5μmを超えると、表面被覆層にクラックが発生したり、エキゾーストマニホールドが変形したりする場合がある。
【0039】
上記表面被覆層の外周面は、JIS Z 8721に規定される明度がN4以下であることが望ましい。
上記明度がN4以下であると、可視光領域における放射率も良好となるからである。
【0040】
ここで、明度のNは、理想的な黒の明度を0とし、理想的な白の明度を10とし、これらの黒の明度と白の明度との間で、その色の明るさの知覚が等歩度となるように各色を10分割し、N0〜N10の記号で表示したものである。そして、実際の測定は、N0〜N10に対応する色票と比較して行う。この場合の小数点1位は0または5とする。
【0041】
上記表面被覆層は、上記基材の外周面上全体に形成されていることが望ましい。表面被覆層の面積が最大となり、放熱性に特に優れるからである。しかしながら、上記表面被覆層は、上記基材の外周面上の一部にのみ形成されていてもよい。特に、排気管を取り付ける際に溶接することとなる部分やネジ穴となる部分、また、取り付け後、他部品が接触、摺動することとなる部分は、表面被覆層を形成しても剥がれることとなり易いため、これらの部分には上記表面被覆層は形成されていなくてもよい。
また、上記基材の外周面上の一部にのみ表面被覆層が形成されている場合、上記表面被覆層が形成された部分の面積は、上記基材の外周面全体の面積の50%以上であることが望ましい。
上記表面被覆層が形成された部分の面積が、50%未満では、エキゾーストマニホールド11の放熱性が不充分となる場合があり、エキゾーストマニホールド11の温度上昇を充分に抑制することができない場合があるからである。
【0042】
また、上記基材の外周面上の一部に表面被覆層が形成されている場合、その形成領域は特に限定されず、基板の外周面全体から選択された一箇所又は複数箇所の領域にベタ塗りの表面被覆層が形成されていてもよいし、上記基材の外周面上の全体に、網目状の規則的な模様又は不規則な模様を描くように形成されていてもよい。
さらには、上記基材の外周面上の全体に形成された表面被覆層に、等間隔に又はランダムに該表面被覆層を貫通する貫通孔(ピンホール)が形成されていてもよい。
【0043】
また、上記基材の内周面の最大高さRzは、0.1μm以上であることが望ましい。
排ガスの熱が基材に伝熱されやすいからである。
【0044】
ここまで、本発明の排気管について、エキゾーストマニホールドを例に説明してきたが、本発明の排気管は、図1(a)に示した触媒コンバータ12を構成する管や、タービンハウジング等としても好適に使用することができる。
【0045】
以下、本発明の説明では、ここまで説明した排気管の基材と表面被覆層とからなる部分を排気管本体という。
本発明の排気管は、基材と表面被覆層とからなる排気管本体とは別に、上記排気管本体の外周面に対向する部分に配設される、排ガスが排気管本体内部を通過している際に、上記排気管本体よりも温度の低い受熱部材を備えていてもよい。
このように、排気管本体よりも温度の低い受熱部材を備えることにより、特に、高温の排ガスが排気管内に流れ込んだ際に、その上昇を抑制することができる。
具体的には、上記排気管本体がエキゾーストマニホールドである場合には、その表面被覆層に対向する部分に、受熱部材として、所謂、ヒートインシュレータが配設されていることが望ましい。
【0046】
上記ヒートインシュレータについて、図面を参照しながら説明する。
図3は、自動車エンジンと、これに接続された本発明の排気管とを模式的に示す分解斜視図である。
図3において、10はエンジンを示しており、自動車エンジン10のシリンダブロック16の頂部には、シリンダヘッド17が取り付けられている。そして、シリンダヘッド17の一方の側面には、排気管本体であるエキゾーストマニホールド11が取り付けられている。
【0047】
エキゾーストマニホールド11は、各気筒からの排ガスを集合させ、さらに、図示しない触媒コンバータ等に排ガスを送る機能を有する。そして、エキゾーストマニホールド11は、その外周面の一部がヒートインシュレータ18により覆われている。ヒートインシュレータ18は、エキゾーストマニホールド11の外周面と所定の間隔をもって配置されている。
【0048】
上記排気管本体の外周面に対向する部分に、上記受熱部材が配設されている場合、上記受熱部材による上記排気管本体の外周面に対するカバー率が、30〜100%が望ましい。
上記受熱部材の上記カバー率が30%未満であると、排気管からの放射熱を充分に受けることができず、排気管の冷却が不充分となる場合がある。
【0049】
以下、本発明におけるカバー率の算出方法について図面を参照しながら説明する。
図4は、受熱部材のカバー率の算出方法を説明するための断面図である。
上記カバー率の算出は、まず、受熱部材を備えた排気管110の一断面において、排気管本体111のカバー部材118により覆われている領域を算出する。具体的には、排気管本体110の中心cからみて、カバー部材118が存在する部分の角度θとして算出する。そして、この角度θの360°に対する割合が、図4に示した断面におけるカバー率となる。なお、図4に示した断面では、θが90°であるため、そのカバー率は25%となる。そして、このようにして算出する排気管の断面のカバー率を、排気管の長手方向に積分することにより、排気管における受熱部材のカバー率を算出することができる。
なお、排気管本体の周囲全体が受熱部材で覆われている場合には、上記カバー率は100%となる。
【0050】
上記排気管本体の外周面に対向する部分に、上記受熱部材が配設されている場合、上記受熱部材の上記排気管本体の外周面に対向する部分の面積は、上記排気管本体の外周面の面積の0.3〜10倍であることが望ましい。
上記受熱部材の上記面積が0.3倍未満であると、排気管からの放射熱を充分に受けることができず、排気管の冷却が不充分となる場合があり、上記受熱部材の上記面積が10倍を超えると、受熱部材の大型化や受熱部材の形状の複雑化(断面が波型になる等)を招く場合があるからである。
【0051】
また、ヒートインシュレータ等の上記受熱部材は、その排気管本体と対向する面に、上記排気管本体を構成する表面被覆層と同様の表面被覆層が形成されていることが望ましい。
上記基材の外周面状のみならず、上記保持部材の上記排気管本体と対向する面にも表面被覆層を形成することにより、排気管本体の放熱性がより向上することとなるからである。
この理由は以下のように考えられる。
即ち、排気管から放射される熱を受け取るとともに、受熱部材から熱を放射し、全体として熱の移動を確保することができるからである。
【0052】
また、上記受熱部材が、平板、湾曲板、屈曲板等の板状体である場合、上記受熱部材の上記排気管本体と対向する面のみならず、その反対側の面にも表面被覆層が形成されていてもよい。また、場合によっては、上記受熱部材の上記排気管本体と対向する面と反対側の面にのみ形成されていてもよい。
上記受熱部材に表面被覆層を形成する場合、上記排気管本体を構成する表面被覆層の組成と上記受熱部材に形成する表面被覆層の組成とは完全に同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0053】
なお、上記受熱部材において、上記表面被覆層は、上記排気管本体を構成する基材と同様の金属や、FRP等の樹脂等からなるベース部材の表面に形成されていればよい。
【0054】
また、上記受熱部材に表面被覆層が形成される場合、上記排気管本体を構成する表面被覆層の厚さに対する、上記受熱部材に形成された表面被覆層の厚さの比は、0.7〜10であることが望ましい。
上記の厚さの比が0.7未満では、排気管から放射される熱を充分に受けることができない場合があり、一方、上記の厚さの比が10を超えると、上記受熱部材が変形してしまう場合があるからである。
【0055】
ここまで、排気管本体がエキゾーストマニホールドであり、受熱部材がヒートインシュレータである場合を例に、受熱部材を備えた排気管の構成について説明したが、上記受熱部材は、ヒートインシュレータに限定されるわけではなく、他の自動車の構成要素が上記受熱部材として機能してもよい。
また、本発明の排気管が触媒コンバータを構成する管や、タービンハウジング等である場合も上記受熱部材を備えていてもよい。
【0056】
本発明の排気管を構成する排気管本体は、図1(a)、(b)に示したような1重管に限定されず、2重管であってもよい。
図5は、本発明の排気管の別の一例を模式的に示す断面図である。
【0057】
図5に示す排気管21は、内管21aと外管21bとから構成される2重管構造を有している。内管21aと外管21bとは、内管21aの外側と外管21bの内側を複数箇所スポット溶接(図示せず)等で接続することにより、一定の間隔を維持した状態で一体化されている。
内管21aは、金属からなる筒状の基材24aと基材24aの外周面上に形成された表面被覆層25aとから構成されており、内管21bは、金属からなる筒状の基材24bと基材24bの外周面上に形成された表面被覆層25bとから構成されている。
【0058】
本発明の排気管は、このような2重管構造を有していてもよく、このような2重管構造を有することにより、下記の効果を享受することができる。
即ち、自動車エンジンの始動直後等、排気管の温度が低温領域にある場合には、断熱性に優れるため、短時間で排ガス温度を触媒活性温度に維持することができ、一方、排ガスが高温になった際には、放射による放熱効果が高いため、伝導伝熱に依存することなく、排ガスの過昇温を防止することができる。
【0059】
また、排気管21を構成する外管21bは、基材24bの外周面上に表面被覆層25bが形成されているが、2重管構造の排気管を構成する外管では、必ずしも基材の外周面上に表面被覆層を備えている必要はなく、外管21bでは、基材の内周面上にのみ表面被覆層が形成されていてもよいし、基材の内周面上及び外周面上に表面被覆層が形成されていてもよい。
【0060】
本発明の排気管は、400〜1000℃の排ガスに対して使用することが望ましい。
このような温度の排ガスを使用することが、既に説明した効果を発揮するのに適しているからである。
【0061】
次に、本発明の排気管を製造する方法について工程順に説明する。
ここでは、金属からなる基材(金属基材)の外周面に、結晶性無機材と非晶質結合材とからなる表面被覆層が形成された排気管本体の製造方法について説明する。
【0062】
(1)所定の形状に加工された筒状の金属基材を出発材料とし、まず、金属基材の表面の不純物を除去すべく洗浄処理を行う。
上記洗浄処理としては特に限定されず、従来公知の洗浄処理を用いることができ、具体的には、例えば、アルコール溶媒中で超音波洗浄を行う方法等を用いることができる。
【0063】
また、上記洗浄処理後には、必要に応じて、基材の外周面の比表面積を大きくしたり、基材の内周面の最大高さRzを調整したりすべく、基材の表面に粗化処理を施してもよい。具体的には、例えば、サンドブラスト処理、エッチング処理、高温酸化処理等の粗化処理を施してもよい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0064】
(2)別途、結晶性無機材及び非晶質結合材を湿式混合し、表面被覆層用原料組成物を調製する。
具体的には、結晶性無機材の粉末と、非晶質結合材の粉末とをそれぞれ所定の粒度、形状等になるように調製し、各粉末を所定の配合比率で乾式混合して混合粉末を調製し、さらに水を加えて、ボールミルで湿式混合することにより表面被覆層用原料組成物を調製する。
ここで、混合粉末と水との配合比は、特に限定されるものでないが、混合粉末100重量部に対して、水100重量部程度が望ましい。金属基材に塗布するのに適した粘度となるからである。また、必要に応じて、上記表面被覆層用原料組成物には、無機繊維や有機溶剤を配合してもよい。
また、気孔が形成された表面被覆層を形成する場合には、この工程において、上記表面被覆層用原料組成物中に、発泡剤、中空フィラー及び無機繊維のうちの少なくともいずれか1つを配合する。
【0065】
(3)金属基材の外周面に、上記表面被覆層用原料組成物をコートする。
上記表面被覆層用原料組成物をコートする方法としては、例えば、スプレーコート、静電塗装、インクジェット、スタンプやローラ等を用いた転写、ハケ塗り等の方法を用いることができる。
また、上記表面被覆層用原料組成物中に、上記金属基材を浸漬することにより、上記表面被覆層用原料組成物をコートしてもよい。
【0066】
さらには、上記表面被覆層用原料組成物を調製する際に、上記表面被覆層用原料組成物を電着用組成物として調製し、この電着用組成物中に上記金属基材を浸漬し、電着により上記表面被覆層用原料組成物を上記金属基材の外周面にコートしてもよい。
なお、この場合、電着用組成物を調製する際に、表面被覆層用原料組成物中にゼータ電位の制御や溶液の抵抗値を調製するため添加剤、結晶性無機材や非晶質結合材の分散性を確保するための安定化剤を配合する必要がある。
【0067】
上記電着用組成物は、具体的には、例えば、表面被覆層用原料組成物にアセトンとヨウ素との混合物を加えて調整すればよい。
そして、電着によりコート層を形成するには、上記表面被覆層用原料組成物にアセトンとヨウ素とを添加した溶液中に、金属基材と、陽極として機能するスチール線等を配置させ、上記金属基材を陰極とし機能させ、電圧を印加すればよい。
また、上記電着用組成物としては、上記表面被覆層用原料組成物を水に分散させ、さらに有機溶媒を添加して調製した溶液を用いてもよい。
【0068】
また、上記表面被覆層用原料組成物を金属基材の外周面にコートする方法としては、エアロゾルデポジション法(AD法)を用いることもできる。
なお、この場合は、表面被覆層用原料組成物を調整する際に、表面被覆層用原料組成物を粒子径1μm以下の粒子に調整することが望ましい。これにより、表面被覆層用原料組成物の活性度が向上するからである。
なお、上記AD法を用いる場合、真空中において、金属基材に表面被覆層用原料組成物の粒子が衝突し、コート層が形成されることとなる。
【0069】
また、表面被覆層用原料組成物を金属基材の外周面にコートする処理に先立ち、上記金属基材の外周面に、ニッケルメッキ、クロムメッキ等のメッキ処理、及び/又は、金属基材の外周面の酸化処理等を施してもよい。
金属基材と表面被覆層との密着性が向上することがあるからである。
【0070】
(4)表面被覆層用原料組成物をコートした金属基材に焼成処理を施す。
具体的には、表面被覆層用原料組成物をコートした金属基材を乾燥後、加熱焼成することにより表面被覆層を形成する。
ここでは、上記焼成温度は、非晶質結合材の融点以上とすることが望ましく、配合した非晶質結合材の種類にもよるが700℃〜1100℃程度が望ましい。焼成温度を非晶質結合材の融点以上の温度とすることにより金属基材と非晶質結合材とを強固に密着させることができ、基材と強固に密着した表面被覆層を形成することができるからである。
このような工程を経ることにより本発明に係る排気管本体を製造することができる。
【0071】
また、上記(2)〜(4)の方法を用いて、表面被覆層を形成することにより、通常、上記結晶性無機材は、上記表面被覆層の厚さ方向に複数積み重なった状態で分布することとなる。
また、表面被覆層を形成する際に、結晶性無機材よりも外周面側に位置する非晶質結合材の平均厚さを制御するには、下記の方法等を用いることができる。
例えば、上記(4)の工程における焼成条件を制御することにより、結晶性無機材よりも外周面側に位置する非晶質結合材の平均厚さを制御することができる。具体的には、加熱時間を長くしたり、加熱温度を高くしたりすることにより、上記結晶性無機材よりも外周面側に位置する非晶質結合材の平均厚さを薄くすることができる。これは、非晶質結合材が基材と反応したり、非晶質結合材が蒸発したりすることにより非晶質結合材が減少するからである。
【0072】
また、例えば、上記表面被覆層用原料組成物を調製する際に、結晶性無機材と非晶質結合材との配合量を制御することによっても、上記結晶性無機材よりも外周面側に位置する非晶質結合材の平均厚さを制御することができる。
【0073】
また、例えば、上記表面被覆層用原料組成物を調製する際に、結晶性無機材の配合量を充分に多くすることにより、結晶性無機材が表面に露出する態様の放熱層を形成し、その後、その上に非晶質結合材のみを塗布することによっても、上記結晶性無機材よりも外周面側に位置する非晶質結合材の平均厚さを制御することができる。
【実施例】
【0074】
以下に実施例を掲げ本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
まず、実施例1〜5及び比較例1、2の方法で排気管本体を作製し、これらの排気管本体に受熱部材を取り付けて排気管としての性能を評価した。
【0075】
(実施例1)
(1)直径(外径)40mm、肉厚2mm、長さ300mmの筒状(断面が略真円形状)の金属基材(SUS430製、100〜200℃における熱伝導率:25W/mK、600℃での波長1〜15μmにおける放射率:0.30、室温から500℃の範囲で測定した熱膨張率:10.4×10−6/℃)を出発材料とし、まず、この金属基材をアルコール溶媒中で超音波洗浄し、その後、サンドブラスト処理を施し、上記金属基材の外周面を最大高さRzが2.5μmの粗化面とした。ここで、サンドブラスト処理は、♯80のAl砥粒を用いて10分間行った。
【0076】
(2)別途、結晶性無機材料としてMnO粉末30wt%、FeO粉末5wt%、CuO粉末5wt%と、非晶質結合材としてBaO−SiOガラス粉末60wt%を乾式混合して混合粉末を調製し、混合粉末100重量部に対して水を100重量部加えて、ボールミルで湿式混合することによりスラリーを調製した。
【0077】
(3)スプレーコートにより、上記(2)で調製したスラリーを金属基材の上記サンドブラスト処理した面に塗布した。
その後、スプレーコートによりスラリー塗布層が形成された上記金属基材を、100℃で2時間乾燥させ、その後、空気中900℃で20分間加熱焼成処理を行うことにより表面被覆層(100〜200℃における熱伝導率:2.6W/mK、室温から500℃の範囲で測定した熱膨張率:9.6×10−6/℃)を金属基材の外周面に形成し、排気管本体を製造した。
ここでは、上記加熱焼成処理後の表面被覆層の厚さが4.9μmとなるように、スラリー塗布層を形成した。
また、上記の条件で加熱焼成処理を行って形成した上記表面被覆層において、結晶性無機材よりも外周面側に位置する非晶質結合材の平均厚さは、0.1μmであった。
【0078】
また、結晶性無機材よりも外周面側に位置する非晶質結合材の平均厚さは下記の方法により測定した。
即ち、排気管を本体の長手方向及び長手方向に垂直な方向に切断し、その切断面の観察画像を取得した。ここで、観察画像として、長手方向の切断面、及び、長手方向に垂直な方向の切断面の観察画像を2箇所ずつ取得した。その後、その観察画像について、表面被覆層の厚さ方向において、最も外側に位置する各結晶性無機材の最外周側と表面被覆層の表面との平均距離を測定した。なお、測定した領域の幅は100μmとした。
【0079】
なお、表面被覆層の熱伝導率及び/又は熱膨張率は、下記の方法で測定した。
即ち、上記表面被覆層と同一の組成の結晶性無機材と非晶質結合材を粉砕混合し、次に、非晶質結合材の融点以上の温度に加熱して非晶質結合材を融解させた状態で混錬し、冷却固化して固形物を作製した後、熱伝導率を迅速熱伝導率計(京都電子工業製:QTM−500)により測定し、熱膨張率をTMA(Thermomechanical Analysis)装置(リガク製:TMA8310)により測定した。
【0080】
(実施例2〜5)
結晶性無機材よりも外周面側に位置する非晶質結合材の平均厚さを、表1に示した厚さとした以外は、実施例1と同様にして排気管本体を作製した。
平均厚さの調整は、加熱焼成温度を調整することにより行った。
即ち、実施例2では850℃に、実施例3では820℃に、実施例4では800℃に、実施例5では780℃に加熱焼成温度を変更した。
【0081】
(比較例1)
結晶性無機材よりも外周面側に位置する非晶質結合材の平均厚さを、加熱焼成温度を730℃に変更することにより、表1に示した厚さとした以外は、実施例1と同様にして排気管本体を作製した。
【0082】
(比較例2)
実施例1の(2)の工程におけるスラリーの調製方法を、下記の方法に変更した以外は、実施例1と同様にして、排気管本体を作製した。
即ち、結晶性無機材料であるMnO粉末75wt%、FeO粉末12.5wt%、CuO粉末12.5wt%を乾式混合して混合粉末を調製し、この混合粉末100重量部に対して水を100重量部加えて、ボールミルで湿式混合することによりスラリーを調製した。
従って、本比較例の排気管本体では、表面被覆層の外周面には、結晶性無機材が露出していることとなる。
【0083】
【表1】

【0084】
次に、実施例1〜5、及び、比較例1、2のそれぞれで作製した排気管本体の周囲に、受熱部材を配設して排気管1〜12とし、その特性を評価した。なお、排気管11では、受熱部材を配設しなかったものを排気管として評価した。受熱部材の構成、及び、評価結果を表2に示した。
上記受熱部材は、下記の方法により作製した。
まず、厚さ0.6mmの鋼板を準備し、まず、この鋼板の片面に、実施例1の(2)、(3)の工程と同様の方法を用いて表面被覆層を形成した。次に、表面被覆層を形成した鋼板を所定のサイズに加工し、その後、この鋼板を所定の形状に加工した。
【0085】
具体的には、排気管1〜5、9、10のカバー率100%の受熱部材は、片面に表面被覆層を形成した13.8mm×300mmの鋼板を円管状に加工して作製した。
また、排気管6のカバー率100%の受熱部材は、片面に表面被覆層を形成した62.8mm×300mmの鋼板を円管状に加工して作製した。
また、排気管7の受熱部材は、片面に表面被覆層を形成した13.8mm×300mmの鋼板を、断面形状が、中心角342°の円弧状となるように加工して作製した。
また、排気管8の受熱部材は、片面に表面被覆層を形成した18.8mm×300mmの鋼板を、断面形状が、中心角108°の円弧状となるように加工して作製した。
また、排気管12の受熱部材は、片面に表面被覆層を形成した2.5mm×300mmの鋼板を、断面形状が、中心角36°の円弧状となるように加工して作製した。
【0086】
また、排気管の特性の評価は、下記の方法により行った。
図6(a)は、排気管の放熱性の評価方法を説明するための模式図であり、(b)は、(a)のD−D線断面図である。
図6(a)、(b)に示すように、排気管本体32と受熱部材33とを備えた排気管34を燃焼ガス発生装置30に接続して測定を行った。
即ち、排気管34の入口側をガス導入管31を介して燃焼ガス発生装置30に接続するとともに、出口側を内部に熱電対(図示せず)を備えたガス導出管に接続し、燃焼ガス発生装置30で天然ガス10L/minを酸素40L/minを供給しながら燃焼させ、燃焼により発生した燃焼ガスを排気管34内に導入し、排気管34の出口側から出てきた燃焼ガスの温度を熱電対により測定し、排気管34の入口側と出口側との燃焼ガスの温度差を算出した。結果を表3に示した。本評価においては、950℃の燃焼ガスを排気管34内に導入した。
なお、本評価では、温度差が210℃以上であれば、排気管として好適に使用することができると考えられる。
【0087】
【表2】

【0088】
表2に示した結果から明らかなように、実施例1〜5の排気管本体を備えた排気管1〜15では、比較例1の排気管本体を備えた排気管9に比べて、放熱性に優れている。
このことから、排気管本体を構成する表面被覆層において、結晶性無機材よりも外周面側に位置する非晶質結合材の平均厚さを20μm以下とすることにより、排気管の放熱性が優れたものとなることが明らかとなった。これは、表1に示したように、上記結晶性無機材よりも外周面側に位置する非晶質結合材の平均厚さが20μmを超えると、表面被覆層の赤外線の放射率が大きく低下するためと考えられる。
また、非晶質結合材が配合されておらず、結晶性無機材が露出した表面被覆層を有する比較例2の排気管本体を備えた排気管10は、放熱性の点では排気管1〜5と比較して遜色がなかったものの、放熱性の評価試験後、表面被覆層(結晶性無機材)が剥離しているという問題点が観察された。これは、非晶質結合材が配合されていないことが原因であると考えられる。
【0089】
また、排気管6と排気管1との比較から、受熱部材の内側面積の排気管本体の外周面積に対する比率(受熱部材の内側の面積/排気管本体の外周面積)が大きくなると、放熱性が向上する傾向にあることが明らかとなった。
また、排気管1、7、8と排気管11、12との比較から、受熱部材のカバー率は、30%以上であることが望ましいことが明らかとなった。
上記受熱部材が配設されていなかったり、上記カバー率が30%未満である場合には、放熱性に劣ることとなるからである。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】(a)は、自動車エンジンと、これに接続された排気系とを模式的に示す断面図であり、(b)は、(a)のA−A線断面図である。なお、(b)では、(a)のA−A線断面図を拡大して示している。
【図2】(a)は、図1(b)に示した排気管のB−B線断面の部分拡大図であり、(b)は、図2(a)における領域Cの拡大図である。
【図3】自動車エンジンと、これに接続された本発明の排気管とを模式的に示す分解斜視図である。
【図4】受熱部材のカバー率の算出方法を説明するための断面図である。
【図5】本発明の排気管の別の一例を模式的に示す断面図である。
【図6】(a)は、排気管の放熱性の評価方法を説明するための模式図であり、(b)は、(a)のD−D線断面図である。
【符号の説明】
【0091】
21 排気管
10 エンジン
11 エキゾーストマニホールド
12 触媒コンバータ
14、24a、24b 基材
15、25a、25b 無機材料表面層
18 ヒートインシュレータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属からなる筒状の基材と、
前記基材の外周面上に形成された、結晶性無機材と非晶質結合材とからなる表面被覆層とを備え、
前記表面被覆層において、前記結晶性無機材は、前記表面被覆層の厚さ方向に複数積み重なった状態で分布しており、かつ、前記結晶性無機材よりも外周面側に位置する前記非晶質結合材の平均厚さが、20μm以下であり、
内部を排ガスが流れることを特徴とする排気管。
【請求項2】
前記基材及び前記表面被覆層とからなる排気管本体に加え、前記排気管本体の外周面に対向する部分に受熱部材が配設されている請求項1に記載の排気管。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−133214(P2009−133214A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−307946(P2007−307946)
【出願日】平成19年11月28日(2007.11.28)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】