説明

排気装置

【課題】
排気処理ユニットへの排気チューブの移行領域における排気の案内を、安価に製造可能な構造で、更に最適化する。
【解決手段】
横断面が拡大する漏斗状部材(3)を備えるケース内に排気処理ユニットを有し、漏斗状部材(3)内に、チューブ状の誘導要素(4)が配設されている、自動車用の排気装置において、誘導要素(4)の曲部の外側面に、少なくとも1つのビード(8,8’)を形成し、このビード(8,8’)により、流れの転向を行なわせ、これにより、排気流と排気処理ユニットのインサートの接触時間を増大させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横断面が拡大する漏斗状部材を備えるケース内に排気処理ユニットを有し、漏斗状部材内に、チューブ状の誘導要素が配設されている、自動車用の排気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1から、ケース内に触媒作用をするモノリスを有する触媒ユニットが公知である。この場合、このモノリスの横断面は、触媒ユニットが接続された排気チューブの横断面よりも大きい。このため、ケースは、漏斗状部材を有し、この漏斗状部材は、排気チューブに接続可能な一端を備え、他端は、触媒のケースに移行し、漏斗状部材は、その端部間で相応に拡大される。加えて、この触媒ユニットは、漏斗状部材内に配設された、長手方向に変位可能に支承された流れ誘導要素を備え、この流れ誘導要素の相対位置は、触媒の始動温度の達成を加速させるための、モノリスの排気が貫流する横断面を決める。しかしながら、このような流れ誘導要素の取付けは、比較的高い費用と結び付いている。
【0003】
特許文献2からは、触媒ユニット又はパーティクルフィルタユニットのケースを配設することが公知である。ケースは、これに続く排気チューブに合わせられているので、排気チューブは、ケースの漏斗状部材内に、横に、即ちモノリスもしくはフィルタボディの長手方向中心軸に対して傾けて、外側から差込み可能である。このように、触媒ユニット又はパーティクルフィルタユニットのケースへの排気チューブの接続は、簡素化される。加えて、漏斗状部材に排気チューブを横に差し込むことによって、漏斗状部材内の開口端を相応に形成することにより適切に所望の流れの案内を生じさせるとの可能性が得られる。この形成の場合、排気チューブへの排気処理ユニットの安価な接続が可能である。但し、このような構造的形態は、流れの案内に関して達成すべき最適化度も制限する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】独国特許出願公開第39 03 803号明細書
【特許文献2】独国特許第103 00 384号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の課題は、排気処理ユニットへの排気チューブの移行領域における排気の案内を、安価に製造可能な構造で、更に最適化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、本発明によれば、請求項1の特徴を有する自動車用の排気装置によって解決される。
【0007】
本発明の有利な発展形は、従属請求項に記載されている。
【0008】
本発明による自動車用の排気装置は、横断面が拡大する漏斗状部材を備えるケース内に排気処理ユニットを有する。漏斗状部材内に、チューブ状の誘導要素が配設されている。誘導要素の曲部の外側面に、少なくとも1つのビードが形成されている。
【0009】
曲部と少なくとも1つの付加的なビードによって、排気処理ユニット内に配設されたインサートへの衝突作用が最適化されるように、排気チューブによって誘導される排気が、ビードにおいて転向されるとの利点が得られる。これは、特に、排気流内の特別な排圧上昇が生じることなく、触媒又はパーティクルフィルタとして形成された排気処理ユニットの触媒表面又はパーティクルフィルタ表面の均一性指数(uniformity index)を改善する。
【0010】
好ましい実施形では、ビードが、排気の流れ方向に対して横に配設されている。これにより、流れの転向が生じ、流れ速度の変更も生じる。ビードにおける流れの転向により、流れにスワールと方向転換が生じる。この転向は、排気処理ユニット内に配設されたインサートに衝突した際に、流れ速度の低下を生じさせる。ビードは、適切な流れの誘導を生じさせ、これにより、触媒表面又はパーティクルフィルタ表面の良好な利用が得られる。
【0011】
別の好ましい実施形では、チューブ状の誘導要素のビードが、内側に向けられている。即ち、排気ガス流に向かうように形成されている。曲部により、排気流は、半径方向外側に向かって、曲部の外側面に押し付けられる。内側に向いたビードにより、この排気流が転向されるので、排気流は、邪魔されないで曲部の外側面に沿って流れるのではなく、少なくとも1つのビードによって、誘導要素の内側に、従って漏斗状部材の内側に転向される。これにより、排気処理ユニットに衝突した際に、分配され、最適化された均一な流れが構成される。
【0012】
特に好ましい実施形では、ビードが、本質的に、誘導要素の横断面幅全体にわたって形成されている。これにより、誘導要素内での排気流の主流成分の転向が行われる。
【0013】
好ましい実施形では、2つ以上のビードが、外側面に、流れ方向に相並んで配設されるように形成されている。相並んで形成された複数のビードによって、流れの変化は、種々の適用例に適合させ、改善することができる。例えば、パーティクルフィルタのためには、触媒のためのものとは違う排気流の衝突特性が必要である。衝突特性は、種々の流れに対して適切に2つ以上のビードを配設及び寸法設定することによって得ることができる。例えば、触媒は、触媒を迅速に加熱して作動可能状態にするために、エンジンスタート時には既に最適化されたモノリスへの衝突面を必要とする。これに対して、ディーゼルパーティクルフィルタは、次に高温の排気流によって作動温度にするために、先ず、比較的低温の排気流を誘導する必要がある。この時点以降に初めて、排気処理ユニット内のフィルタインサートへの適切な衝突が、パーティクルフィルタの場合には合目的である。
【0014】
別の好ましい実施形では、誘導要素の横断面形状が、円形から非円形に移行する。非円形とは、本発明の範囲内では、特に、台形と楕円形の混成形状を意味する。しかしながら、例えば、丸みを付けたコーナーを有する三角形、半円形、又は、前記実施バリエーションの混成形状も、本発明の範囲内で考えられる。横断面の拡大により、流れ速度の低下が得られ、これにより、触媒又はパーティクルフィルタ内のインサートの端面への流れが均一化される。更に、排気と排気処理ユニットのインサートの間に特に長い接触時間が実現されるとの利点が得られる。
【0015】
別の特に好ましい実施形では、誘導要素の横断面が、流れ方向に増加する。この横断面の拡大は、横断面の形状変化と同様に連続的に行われる。即ち、突然変化することはない。突然の横断面の変化を回避することは、圧力損失の最小化のために役立つ。
【0016】
別の実施形では、排気チューブが、誘導板の入口に配設されている。これにより、部品は、簡単に接合することができる。この場合、気密な連結は、形状的係合及び/又は物質的係合により行なうことができる。物質的係合による連結は、本発明の範囲内では、たとえな熱的接合方法によって可能である。
【0017】
別の好ましい実施形では、誘導要素が、漏斗状部材の収容口に配設されている。これは、製造を簡素化する。誘導要素と漏斗状部材の連結は、物質的係合及び/又は形状的係合による気密な結合によって行なうことができる。
【0018】
特に、誘導要素の出口は、漏斗状部材と排気処理ユニットのインサートとによって構成される空間内で、インサートから間隔を置いて存在する。付加的に、出口が存在する平面が、排気処理ユニットが漏斗状部材に連結されている平面(インサートの端面)に対して角度をなしていてもよい。これにより、取付けスペースが制限されている場合でも、誘導要素の領域内で、排気装置システムを、使用すべきエンジンのそれぞれの流れ要求と、エンジンの後に接続された排気処理システムとに、適合させる可能性が得られる。
【0019】
別の好ましい実施バリエーションでは、誘導板とチューブ要素の間に、間隙が形成されており、漏斗状部材と誘導要素の曲部の外側面の間の間隔が、流れ方向に増加する。この間隙により、ある程度の範囲で、漏斗状部材の外側面からの熱的負荷が、遮断される。従って、排気チューブと排気処理ユニットの間の熱的応力は、漏斗状部材の領域で最小化される。これにより、システム全体の耐久性が高まる。
【0020】
本発明の別の利点、特徴、特性及び様相は、概略図に図示した好ましい実施形の説明から分かる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による誘導要素を有する排気ラインの横断面を示す。
【図2】本発明による誘導要素を有する排気ラインの平面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
各図において、同じ部分又は同様の部分に対しては、同じ符号が使用され、簡単にするとの理由から繰返しの説明を省略した場合でも、相応の又は比較可能な利点が得られる。
【0023】
図1は、排気チューブ2、漏斗状部材3及び誘導要素4を有する排気ライン1を示す。排気チューブ2は、円形チューブ状の横断面を備え、流れ方向Sで示したその連結領域5において、誘導要素4によって包囲されている。誘導要素4のこの包囲は、気密の連結6によって実現される。この場合、連結6は、物質的係合又は形状的係合により行なうことができる。
【0024】
誘導要素4自体は、更にまた、流れ方向Sにおける開始領域により、連結領域5において、誘導要素4と連結されている。この場合、漏斗状部材3の開始領域Aは、誘導要素4を上から把持する。この連結6は、物質的係合及び/又は形状的係合により行なうことができる。従って、両連結6は、気密に行なわれる。
【0025】
誘導要素4は、この図で、下に向かって曲げられている。誘導要素は、外側面7に、2つのビード8を備える。これらビード8は、排気流に対し、内側に向かって押し出されている。この場合、押出しは、ここに示すように、波状に行なうことも、ここには図示されていないが小さい曲げ半径でシャープエッジに行なうこともできる。流れ方向Sで最初のビード8は、ここに図示されているように、流れ方向Sで第2のビード8’よりも強く押し出されている。
【0026】
誘導要素4と漏斗状部材3の間には、環状に間隙9が存在する。誘導要素4の外側面7については、間隙9が、流れ方向Sに連続的に増加する。排気の主流は、曲部の外側面7に沿って流れ、そのため、ここには、特に高い熱的負荷がある。従って、誘導要素4と漏斗状部材3の間の間隙9が占める間隔10によって、漏斗状部材3の付加的な熱的保護が生じる。
【0027】
誘導要素4の出口11は、漏斗状部材3と、これに続く、ここには図示されてない排気再処理ユニットのインサートとによって構成される内室I内に存在する平面内に位置する。この場合、出口11が位置する平面は、ここに図示したように、漏斗状部材3の出口が存在する平面12に対して角度αをなしている。
【0028】
ここに示した好ましい実施形では、誘導要素4の横断面も、漏斗状部材3の横断面も、流れ方向Sに拡大する。この場合、横断面の拡大は、漏斗状部材3で図示したように、連続的に変化しても、しかしながらまた、誘導要素4で示したように、非連続的に変化してもよく、連結領域5における誘導要素4の横断面は、出口11の横断面よりも小さい。
【0029】
図2は、漏斗状部材3の平面図を示す。この場合、誘導要素4の出口11が、平面図に図示されている。同様に、流れ方向Sに対して横に、本質的に誘導要素4の幅全体にわたってビード8’が延在することが認められる。出口11は、丸みを付けたコーナーを有する本質的に台形の形状を備える。出口11の横断面は、排気チューブ2の横断面よりも大きいが、平面12(図1)内の漏斗状部材3の出口よりも50%以上小さい。これにより、流れ速度が低下するので、排気再処理ユニットへの流入が、均一になる。
【符号の説明】
【0030】
1 排気ライン
2 排気チューブ
3 漏斗状部材
4 誘導要素
5 連結領域
6 連結
7 外側面
8 ビード
8’ ビード
9 間隙
10 間隔
11 出口
12 平面
13 内室
S 流れ方向
I 内室
A 開始領域
E コーナー
α 角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断面が拡大する漏斗状部材(3)を備えるケース内に排気処理ユニットを有し、漏斗状部材(3)内に、チューブ状の誘導要素(4)が配設されている、自動車用の排気装置において、
誘導要素(4)の曲部の外側面に、少なくとも1つのビード(8,8’)が形成されていることを特徴とする排気装置。
【請求項2】
ビード(8,8’)が、排気の流れ方向(S)に対して横に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の排気装置。
【請求項3】
チューブ状の誘導要素(4)のビード(8,8’)が、内側に向けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の排気装置。
【請求項4】
ビード(8,8’)が、本質的に、誘導要素(4)の横断面幅全体にわたって延在することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の排気装置。
【請求項5】
2つ以上のビード(8,8’)が、外側面(7)に、流れ方向(S)に相並んで配設されるように形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の排気装置。
【請求項6】
誘導要素(4)の横断面が、円形から非円形に移行することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の排気装置。
【請求項7】
誘導要素(4)の横断面が、流れ方向(S)に増加することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の排気装置。
【請求項8】
排気チューブ(2)が、誘導要素(4)の入口に係合することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の排気装置。
【請求項9】
誘導要素(4)が、漏斗状部材(3)の開始領域(A)に固定されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の排気装置。
【請求項10】
誘導要素(4)の出口(11)が、漏斗状部材(3)と排気処理ユニットのインサートとによって構成される内室(I)内で、インサートに対して間隔を置いて形成されていること、及び/又は、出口(11)が存在する平面が、排気処理ユニット接続部が存在する平面(12)に対して角度αをなしていることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の排気装置。
【請求項11】
誘導板とチューブ要素の間に、間隙(9)が形成されており、漏斗状部材(3)と誘導要素(4)の外側面(7)の間の間隔(10)が、流れ方向に増加することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の排気装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−157970(P2011−157970A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20306(P2011−20306)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(504258871)ベンテラー アウトモビールテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (60)
【氏名又は名称原語表記】Benteler Automobiltechnik GmbH
【住所又は居所原語表記】Elsener Strasse 95, D−33102 Paderborn, Germany
【Fターム(参考)】