説明

排水処理用の新規の微生物、及び対応する方法

本発明は、i)ケルダール態窒素、アンモニア性窒素及び/又は窒素酸化物を気体窒素へと変換し;そしてii)炭素系物質を二酸化炭素へと変換することができ、ここで両方の変換プロセスが好気的条件下で行われるということを特徴とする新規の単離された微生物に関する。本発明は、当該微生物を用いた排水処理方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水汚染の制御の分野に関する。
特に、本発明は、炭素系物質及び窒素系物質を好気条件下で変換できる新規微生物の単離及び特徴決定に関する。当該微生物は、炭素及び窒素を含む廃液の生物学的処理に特に有用である。
【背景技術】
【0002】
炭素系及び窒素系物質の生物学的処理は、現在、少なくとも2つのタイプの微生物、すなわち炭素系物質の処理に特化した第一の微生物、窒素系物質の処理に特化した第二の微生物を使用する。
【0003】
事実、有機物質の汚染防止は、一般的に、好気条件下で炭素系物質をバイオマス及び二酸化炭素へと変換する活性汚泥タンクで行われる。あるいは、有機物質は、好気条件下でバイオマス及びメタンへと変換されうる。
【0004】
これらのいずれかの処理の後で、処理済の廃液の窒素量は、高いまま残存している。窒素負荷の処理は、特化した微生物を含めた後のステップを必要とする。
【0005】
水性廃液中のアンモニア性(NH3)又は酸化(NO2-、NO3-)形態で含まれる窒素を気体窒素(N2)へと変換するために、様々な方法が現在使用される。
【0006】
現在では、最も広く使用される処理は、好気的硝化のステップに続き嫌気性脱窒素のステップを行うことにより構成される。
【0007】
硝化は、ニトロソモナス(Nitrosomonas)、ニトロソスピラ(Nitrosospira)及びニトロソコッカス(Nitrosococcus)属の種を含む独立栄養細菌を用いて、アンモニア性窒素(NH3)を亜硝酸塩(NO2-)へと酸化し、次に例えば、ニトロバクター(Nitrobacter)、ニトロコッカス(Nitrococcus)、及びニトロスピラ(Nitrospira)属の種を含む独立栄養細菌を用いて、上で生成された亜硝酸塩を硝酸塩(NO3-)へと酸化することからなる。
【0008】
脱窒は、電子供与体の存在下で、多くの場合従属栄養性である脱窒機能微生物によって、無機窒素の酸化形態(亜硝酸塩(NO2-)、硝酸塩(NO3-))を、気体窒素へと還元することからなる。この方法は、例えば、シュードモナス(Pseudomonas)、バチルス(Bacillus)、パラコッカス(Paracoccus)、チオバチルス(Thiobacillus)、アルカリゲネス(Alcaligenes)に属する種を含む多くの細菌により行われる。その結果、窒素の酸化形態の還元は、有機化合物の酸化と連動している。これは、炭素が脱窒を制限する因子となることを意味する。実際、処理用の水性廃液が、窒素処理に対する活性微生物集合を支持するためには不十分である炭素系物質濃度しか有さない場合、炭素源の外からの添加は、脱窒反応の満足行く実行のために必須であることが分かる。これは、特に、処理用の廃液が、低い炭素量(炭素/窒素比(C/N)<4)しか有さない場合、又は脱窒の前に予備的処理が行われている場合がこれに該当する。
【0009】
硝化ステップ後に回収された廃液を脱窒細菌を含む無機タンク中で処理することにより脱窒は行われうる。
【0010】
操作の別の態様では、硝化タンクは、例えば、酸素供給を止め、そして電子供与体(その中でメタノールは最も多く使用されるものである)を加えることにより、嫌気性にすることによって、脱窒タンクとして一定期間使用できる。
【0011】
この硝化-脱窒方法の欠点の中で、独立栄養硝化株が、低い増殖速度しか有さないということに注意されたい。この反応速度上の特徴は、タンク中で長期間培養することを課し、大規模建造物を設計するか、又は投資費用を高くする新たな建造物を伴う処理ラインを伸張する必要性をもたらす。さらに、追加タンクにおいて行われる脱窒のステップでは、メタノールなどの有機炭素源を脱窒フローラに供給することが必要であり、このことは、追加の操業費用がかかる。
【0012】
(好気アンモニア酸化用の)Anammoxと呼ばれるアンモニア性窒素の別の処理法は、アンモニア性窒素及び亜硝酸塩の気体窒素への生物学的変換を可能にする。この反応は、脱窒廃液(亜硝酸塩及び未処理アンモニウムを含む)を別のタンクで処理して、気体窒素をもたらすことにより、この反応を行うことができる。操作の別の態様では、硝化タンクは、有酸素条件及び無酸素条件で交互に実行することができるか、又は制限された酸素条件下で連続して実行することができる。この場合、硝化細菌による酸素の消費は、Anammoxプロセスの無酸素条件を作り出す。Anammox反応を触媒できる細菌は、慣用される活性汚泥がブロカルディア アナモキシダンス(Brocardia anammoxidans)型のプランクトマイセート(planctomycete)細菌を含む限り、慣用の活性汚泥から得ることができる。
【0013】
Anammox法の主な欠点は、使用される(planctomycete)細菌の低い増殖速度であり、長期間の装備始動期間に関わる。さらに、これらの細菌を培養し、そして純粋培養物中で細菌を維持することは難しいままである。最後に、部分的脱窒(50%のアンモニアを亜硝酸へ変換すること)は、完全に制御されていなければならず、これは実際の操作条件下で行うことは難しい。
【0014】
Anammox処理の上流に位置するシャロン法は、部分的硝化を得ることを可能にする。シャロン法は、アンモニアを酸化する細菌の増殖速度と、亜硝酸塩を酸化する細菌の増殖速度との間に存在する差異に基づいている。亜硝酸塩を酸化する細菌の増殖速度よりも低いが、アンモニアを酸化する細菌の増殖速度よりも高い水保持時間(およそ1日)で処理を行う。汚泥が保持されないので、亜硝酸塩を酸化する細菌は、反応容器中に維持されないし、そしてその結果排除されてしまう。
【0015】
近年、アルカリゲネス ファエカリス(Alcaligenes faecalis)は、好気条件下で硝化と脱窒を行うことができると同定された。Jooら(Biotechnology Letters(2005)27:773-778)による文献に記載されるアルカリゲネス ファエカリス第4番株がこのケースに当てはまる。このような株を用いて、アンモニア性窒素の処理が、一回の好気ステップで行うことができる。
【0016】
しかしながら、この細菌は、アンモニア性窒素の全てを気体窒素へと変換することを可能にするわけではない。実際、かなりの量の脱窒の中間体生成物が増加する。こうして、最良の場合には、10のC/N比を有する好気条件下で、アルカリゲネス・ファエカリス sp.第4番の使用に基づいた高レベルのアンモニウムの処理は、脱窒により40〜50%のNH4+の除去をもたらし、そして脱窒生成物の90%は、気体窒素である。一方、この細菌は、高C/N比で最適に機能し、処理される廃液に炭素の添加を必要とする(Jooら(2005))。
【0017】
結果として、排水中のアンモニア性窒素の処理のパフォーマンスの改善は、活性汚泥又はバイオフィルターを伴う3回処理と呼ばれる特異的な処理を現在の設定に加えることを使用する。これらの処理を実行するために必須である装備及び構造物は、例えば脱窒の間に炭素系物質を加えることを必要とする場合、高いレベルの投資を必要とし、そしてかなりの操業コストを発生させる。
【発明の開示】
【0018】
本発明は、従来技術の欠点を補うことを目的とし、そして炭素系物質及びケルダール態、アンモニア性又は酸化形態の窒素を、高い増殖速度を有する従属栄養微生物により単一の好気ステップで生物学的処理するための方法を記載する。この高い増殖速度により、小さいサイズの精製装置を設計することが可能になる。
【0019】
本発明は、精製プラント、特に硝化タンクの下流に位置する脱窒タンクを使用するプラントの操業コストを低下することを目的とする。実際、アンモニア性窒素は、エアレーションタンク中で気体窒素へと変換され、下流に位置する無酸素脱窒タンクはもはや使用されることはない。
【0020】
その結果得られた節約は、一方で有機炭素系物質(メタノール)の添加を排除することから、そして他方で、有酸素処理ステップを削除することにより汚泥生成物を低減することからもたらされる。
【0021】
その結果、本発明は、補完処理ステップを必要とすることなく、現在の水処理の最適実行を可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
この関係で、出願人は、排水処理を特に有用にする好気条件化で、炭素系物質及び窒素系物質を変換できる新規の微生物を単離した。
【0023】
本発明に従い微生物により変換される窒素物質は、ケルダール態窒素、アンモニア性窒素及び/又は窒素酸化物でありうる。
【0024】
ケルダール態窒素は、窒素含有形態(亜硝酸塩、硝酸塩)を除いて、アンモニア性の形態で及び有機物の形態で窒素を含む。
【0025】
このことは、本発明の第一の主題が、以下の:
i)ケルダール態窒素、アンモニア性窒素、及び/又は窒素酸化物を気体窒素に変換し;そして
ii)炭素系物質を二酸化炭素へと変換する、ここで当該変換は好気条件化で行われる
を達成できると言う点で特徴付けられる単離微生物に関している理由である。
【0026】
好ましい様式では、本発明に記載された微生物は、ケルダール態窒素、アンモニア性窒素、及び/又は窒素酸化物を、1%未満の窒素酸化物しか蓄積していない気体窒素へと変換できる。
【0027】
好ましい様式では、本発明に記載される微生物は、1%未満の窒素酸化物しか蓄積しない一方ケルダール態窒素、アンモニア性窒素、及び/又は窒素酸化物を気体窒素への変換をもたらすことができ、当該変換は、媒質のC/N比が4未満、好ましくは3未満、好ましくは1.5のオーダーである場合に最適である。
【0028】
本発明の微生物は、0.2kgBOD5/kgVMS/d未満の適用量(applied loading; AL)の下で、ケルダール態窒素、アンモニア性窒素、及び/又は窒素酸化物を気体窒素に変換することができる。
【0029】
以前に記載されたように単離された微生物が、特により好ましく、当該微生物が、0.2kgBOD5/kgVMS/dと同じ又はそれより多くの、好ましくは0.5kgBOD5/kgVMS/d超の適用量(AL)の下で、ケルダール態窒素、アンモニア性窒素、及び/又は窒素酸化物を変換するということを特徴とする。
【0030】
本発明に記載の微生物は、優先的にアルカリゲネス属、特にアルカリゲネス・ファエカリス種に属する。
【0031】
さらにより好ましい様式では、本発明に従った微生物は、2005年6月10日にパスツール研究所の国立培養微生物保存機関(CNCM)にCNCN I-3448の番号で受託されたアルカリゲネス・ファエカリスに相当する。
【0032】
本発明は、好気条件下で、炭素系物質及び窒素系物質を変換する能力を有するCNCM I-3448から派生した微生物にまで及ぶ。
【0033】
派生微生物とは、CNCM I-3448株から派生する任意の微生物であって、例えば、CNCM I-3448株の培養、変異、変換、あるいはさらには別の微生物との交雑のステップから生じ、かつCNCM I-3448株の必須の特徴を保持する微生物を意味する。
【0034】
本発明の別の主題は、排水の処理のための本発明に記載の微生物の使用である。
【0035】
本発明に記載された微生物の好ましい使用は、好気条件下で、排水中に含まれたケルダール態窒素、アンモニア性窒素及び/又は窒素酸化物を変換することに関する。
【0036】
本発明に従った使用の態様では、1%未満の窒素酸化物(NO3-、NO2-)しか蓄積しない。
【0037】
さらに好ましい態様では、本発明に従った微生物の使用は、好気条件下で、排水中に含まれた炭素系物質とケルダール態窒素、アンモニア性窒素、及び/又は窒素酸化物の複合処理に関する。
【0038】
特に、本発明に従った使用の間に、ケルダール態窒素、アンモニア性窒素、及び/又は窒素酸化物は、気体窒素に変換され、そして炭素系物質は、二酸化炭素へと変換される。
【0039】
本発明に従った使用は、培地の適用量(AL)が、0.2kgBOD5/kgVMS/dである条件下で行われうる。
【0040】
好ましくは、本発明に記載の使用は、適用量(AL)が、0.2kgBOD5/kgVMS/d超であり、さらにより好ましい態様では、0.5kgBOD5/kgVMS/d超である。
【0041】
本発明に記載の使用の好ましい実施形態では、外因性の炭素源は処理用の排水に加えられない。
【0042】
本発明に従った使用の好ましい特徴のひとつは、排水中に含まれた炭素系物質と、ケルダール態窒素、アンモニア性窒素、及び/又は窒素酸化物の複合処理が、単一のフリーな活性汚泥タンク(single free activated sludge tank)中で行われるということにより特徴付けられる。
【0043】
或いは、本発明に従った使用は、排水中に含まれた炭素系物質と、ケルダール態窒素、アンモニア性窒素、及び/又は窒素酸化物の複合処理が、担体に固定された培養装置内で行われるということにより特徴付けられる。
【0044】
別の態様では、本発明は、あらかじめ連続培養により産生される上記微生物の使用に関する。好ましくは、当該連続培養は、滅菌条件下で行われる。さらにより好ましい様式では、当該連続培養は、選択できる圧力の下、無期限で行われる。
【0045】
本発明の別の主題は、上に記載される微生物を利用することを特徴とする、廃水処理方法に関する。
【0046】
本発明の態様に従い、排水処理法は、以下のステップ:
i)上に記載される微生物を培養し;
ii)ステップi)において産生される培養物を繰り返し入れることにより処理用の排水を含む処理装置を自動的に供給し;そして
iii)処理装置内において好気条件下で排水中に含まれる炭素系物質及び窒素系物質を生物学的に処理する
を含む。
【0047】
本発明の態様では、ステップiii)において、炭素系物質の生物学的処理、及び窒素系物質の生物学的処理が同時に行われる。
【0048】
好ましい態様では、ステップii)及びiii)において言及される廃水処理装置がエアレーションタンクである。
【0049】
本発明の主題は、制約、例えば炭素負荷と窒素負荷の増加、に応じて廃液の処理を最適化するために、廃液の生物学的汚染制御の有効性をコントロールすることである。
【0050】
さらにより好ましい態様では、上に記載される方法の一つに従ってエアレーションタンク中でフリーな活性汚泥(the free activated sludge)中に存在する本発明に記載の微生物の活性は、サンプルを培養装置に通常通りに移すことにより評価され、次に選択的圧力の下で維持される微生物の培養物と比べられる。
【0051】
別の実施態様では、本発明に従った方法は、処理装置において、本発明に従った微生物によりケルダール態窒素、アンモニア性窒素、及び/又は窒素酸化物、並びに炭素系物質を好気的に変換し、当該微生物で処理装置を定期的に植菌するために、微生物増殖に必須である栄養(炭素源、窒素源など)を含む倍地中で本発明に従った微生物を連続的に培養することを含む。
【0052】
優先的に、滅菌培養条件下で、本発明に記載の微生物を培養することを可能にする装置中で微生物増殖が起こる。より具体的に、この培養物は、選択圧の下、及び無期限で行われる。
【0053】
本発明の特定の実施形態では、数百リットルから数立方メートルの体積を有する増幅反応容器に定期的に植菌するために平行培養が使用され、ここで本発明に記載される微生物の培養物は、かなりの量で非滅菌様式にて産生される。培養培地は、合成培地であってもよいし、又は処理用の廃液からなり、そして当該微生物の有意な生産を促進するように十分選択的でなければならない。この培養物の繰り返し入力は、廃水処理装置、例えば、フリーな活性汚泥エアレーションタンクについて定めた頻度に従って、自動的に行うことができる。本発明に従った微生物が、炭素源として処理する排水中に存在する有機物質を使用するならば、有機物質、例えばメタノールが、本発明に従った微生物の維持を促進するために処理装置に加えられることはない。
【0054】
或いは、有利な態様では、ステージii)及びiii)において言及された排水処理装置は、担体上に固定された培養装置である。
【0055】
本発明に従った方法の別の態様では、当該方法は、治療装置の上流に、微生物に対する入力廃水の毒性を評価するためのステップを含む。毒性評価ステップは、特に、当該廃水上での微生物の計測に基づきうる。
【0056】
微生物に対して毒性であり、そしてその結果ケルダール態窒素、アンモニア性窒素及び/又は窒素酸化物の気体窒素への変換について有害である廃水は、次の処理についての安全タンクに向けられうる。
【0057】
本発明の別の態様では、微生物は、担体上に固定されている。
【0058】
当該担体は、構造又は他のタイプの裏打ちを含むことができ、本発明に従った微生物の培養された集合の移植、その固定、及び好ましい条件下でのその発達を最適化することができる。この裏打ちは、当業者に知られている異なるタイプであり、そして異なる物質でありうる。
【0059】
特に、本発明に従った微生物は、単独で固定されるか、又は炭素計汚染の処理に特化した1以上の微生物と共培養で固定される。
【0060】
担体の表面上への本発明に従った微生物の分布は、最良でなければならず、そして当該方法のうまくいった開発は、微生物と処理用廃液との間の移動に依存する。エアレーションの点で、酸素の移動が担体上に固定された微生物を精製するのにできる限り効果的であるように、当該装備は設計されなければならない。他方、固定された微生物に対する廃液の良好な移動が、処理用の汚染物質(特に、ケルダール態窒素、アンモニア性窒素及び/又は窒素酸化物及び炭素系物質)に対して必要とされ、そして微生物の代謝産物(特に、二酸化炭素及び気体窒素)に対しては反対の方向に必要とされる。
【0061】
本発明では、処理用の廃液は、市街地の廃水、工業廃水、農業廃水、又は任意の起源の廃液を含み、これらはかなりのレベルのアンモニア性窒素を含む。処理用の廃液におけるケルダール態窒素又はアンモニア性窒素のレベルは、例えば、50mg/l、特に1g/l、特に30g/lである。処理用の廃水は、アンモニア性窒素を含むガスを精製するために使用された水から得ることができる。
【0062】
本発明に従った方法は、特に、30g/l超のケルダール態窒素、又はアンモニア性窒素を含む廃水の処理に特に適している。
【0063】
処理用の廃水は、かなりのレベルの有機炭素を含んでいる。合計の有機炭素含量は、例えば80mg/l、特に1g/l、特に80g/l又は95g/lでありうる。
【0064】
別の態様では、本発明に記載の方法は、1%未満の窒素酸化物(NO2-、NO3-)の蓄積しか伴わない。
【0065】
以下の例は、本発明を例示するが、限定的なものとして解釈すべきではない。
【0066】
実施例1:都市合成廃液の生物変換
1lの発酵器に連続して都市排水の平均的な組成を有する合成廃液を連続して与えた。この廃液の組成は以下のとおりである:(NH4)2SO4の形態の53mg/lのN-NH3、酢酸ナトリウムの形態の82mg/lの合計有機炭素(TOC)、0.1g/lのK2HPO4、及びこれらの微生物の増殖を促進するための当業者に既知の微量元素。必要があれば溶液のpHをHCl/NaOHで8に調節した。
【0067】
発酵器は、アルカリゲネス ファエカリス CNCM I-3448株の純粋な培養物を含む。
【0068】
1.9gNH3/m3/d及び2.6gC/m3/dの容積量(volumetric load)を固定することにより維持する。
【0069】
この実施態様は、適用量(AL)が0.27kgBOD5/kgVMS/dであり、そして培地のC/N比が1.5である条件に対応する。
【0070】
培養物のエアレーションは、圧縮空気をバブリングすることにより保障される(溶解酸素濃度は3mg/l超である)。単一の空気の出口をpH5の2lの浸透圧精製水を含むバブラーにつなげる。このアッセンブリの目的は、流出物の連続的生物分解の間にエアレーションによってアンモニアが排出されないということを保障するためである。
【0071】
安定化された状態が達成される場合、バブラー中のアンモニア濃度(pH5)は0であり、乾燥物質の平均濃度は0.7g/l、90%の流入炭素(TOC)は、バイオマスか又は二酸化炭素へと変換される。
【0072】
アンモニア性窒素の99.9%が減少したということが計測され、これは、バイオマスか又は気体窒素のいずれかに変換される。得られた窒素の生物変換収率は、その結果99.9%超である。
【0073】
さらに、亜硝酸塩及び硝酸塩の蓄積は、培地にも廃液出口のいずれでも計測されない。
【0074】
実施例2:有機窒素を有する濃縮工業廃水の生物変換
7.5lの発酵器に、ペプチドの製造から得られた窒素系溶媒(アセトニトリル又はジメチルホルムアミド)を本質的に含む廃水を連続して与えた。
【0075】
廃液の分析により、合計有機炭素(TOC)濃度は95g/lであり、そしてケルダール態窒素濃度が34g/l(主にアセトニトリルに由来する)であることが明らかにされた。
【0076】
発酵器は、アルカリゲネス・ファエカリスCNCM I-3448の純粋な培養物を含む。
【0077】
連続操作は、1.2kgN/m3/dと3.2kgC/m3/dの添加体積量を固定することにより維持する。
【0078】
当該実施態様は、適用量(AL)が0.96kgBOD5/kgVMS/dであり、そして培地のC/N比が2.8である条件に対応する。
【0079】
培養液に送られる空気(8l/分)は、加湿器を通過する。1つの空気出口は、pH5の浸透圧精製水2lを含むバブラーにつながれている。このアッセンブリの目的は、ケルダール態窒素が、廃液の連続した生分解の間にエアレーションにより排出されることがないことを保障することである。気体廃液中のケルダール態窒素の流れは、入力流の十分の1を示す。
【0080】
安定化された状態が達成された場合、バブラー(pH5)中のケルダール態窒素濃度はゼロである。乾燥物質の平均濃度は、10g/lであり、入力炭素(TOC)の98%は、バイオマスか又は二酸化炭素へと変換される。
【0081】
ケルダール態窒素における99.9%還元が計測され、これはバイオマス又は気体窒素のいずれかに変換される。
【0082】
さらに、培地及び廃液出力中における酸化形態の窒素(NO2及びNO3)は、1%未満であり、そして一時的なものである(<12h)。
その結果、得られたケルダール態窒素の生物変換収率は、99%超である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の:
i)ケルダール態窒素、アンモニア性窒素及び/又は窒素酸化物を、気体窒素へと変換し;そして
ii)炭素系物質を、二酸化炭素に変換し、この2つの変換が、好気条件下で行われる
ことを達成できることを特徴とする、単離微生物。
【請求項2】
前記単離微生物が、ケルダール態窒素、アンモニア性窒素及び/又は窒素酸化物を、0.2kgBOD5/kgVMS/dに等しい又はそれより高い適用量の条件下で変化させることを特徴とする、請求項1に記載の単離微生物。
【請求項3】
前記単離微生物が、ケルダール態窒素、アンモニア性窒素及び/又は窒素酸化物を、0.5kgBOD5/kgVMS/dよりも高い適用量条件下で変化させることを特徴とする、請求項1に記載の単離微生物。
【請求項4】
前記単離微生物が、ケルダール態窒素、アンモニア性窒素及び/又は窒素酸化物を、気体窒素に変換する一方で、1%未満の窒素酸化物を蓄積することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の微生物。
【請求項5】
前記単離微生物が、ケルダール態窒素、アンモニウム性窒素、及び/又は窒素酸化物を、培地中のCN比が4未満、好ましくは3未満である場合の最適態様で、1.5のオーダーのより好ましい態様で、気体窒素へと変換することを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の微生物。
【請求項6】
前記単離微生物が、アルカリゲネス(Alcaligenes)属に属することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の微生物。
【請求項7】
前記単離微生物が、アルカリゲネス ファエカリス(Alcaligenes faecalis)種に属することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の微生物。
【請求項8】
前記単離微生物が、アルカリゲネス ファエカリス(Alcaligenes faecalis)のCNCM I-3448株、又はアルカリゲネスファエカリスから派生した微生物の株である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の微生物。
【請求項9】
廃液の処理用の請求項1〜8のいずれか一項に記載の微生物の使用。
【請求項10】
好気条件下で、廃液中に含まれるケルダール態窒素、アンモニア性窒素及び/又は窒素酸化物を気体窒素へと変換するための請求項9に記載の使用。
【請求項11】
好気条件下で、廃液中に含まれるケルダール態窒素、アンモニア性窒素及び/又は窒素酸化物、並びに炭素系物質を複合処理するための請求項10に記載の使用。
【請求項12】
ケルダール態窒素、アンモニア性窒素、及び/又は窒素酸化物が、気体窒素に変換され、そして炭素系物質が二酸化炭素に変換されることを特徴とする、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
適用量(AL)が、0.2kgBOD5/kgVMS/dであることを特徴とする、請求項11又は12に記載の使用。
【請求項14】
前記適用量(AL)が、0.5kgBOD5/kgVMS/dより大きいことを特徴とする、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
外部の炭素源を処理用廃液に加えることはないということを特徴とする、請求項9〜14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
前記処理が、単一のフリーな活性汚泥タンク中で行われることを特徴とする、請求項9〜15のいずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
前記処理が、担体に固定された培養装置で行われることを特徴とする、請求項9〜12、又は15のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
前記微生物が、あらかじめ連続培養により産生されることを特徴とする、請求項9〜17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
前記微生物の連続培養が、滅菌条件化で行われることを特徴とする請求項18に記載の使用。
【請求項20】
前記微生物の連続培養が、選択的圧力の下において無期限で行われることを特徴とする、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の微生物を利用することを特徴とする、排水処理法。
【請求項22】
以下のステップ:
i)請求項1〜8のいずれか一項に記載の微生物を培養し;
ii)ステップi)において産生される培養物を繰り返し入力することにより、処理用の排水を処理装置に自動的に供給し;そして
iii)好気条件下で処理装置内で、排水中の炭素系物質及び窒素系物質の生物学的処理を行う
を含む、請求項21に記載の排水処理方法。
【請求項23】
ステップiii)において炭素系物質の生物学的処理及び窒素系物質の生物学的処理が同時に行われる、請求項22に記載の排水処理法。
【請求項24】
前記排水処理装置が、フリーな活性汚泥エアレーションタンクである、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
前記排水処理が、担体上に固定された培養装置中で行われる、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項26】
処理装置の上流に微生物に対する入力排水の毒性を評価するステップを含む、請求項21〜25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記微生物が担体上に固定されている、請求項21〜26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記微生物が、単独で固定されているか、又は炭素系汚染の処理に特化した1以上の微生物と共培養で固定されている、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
処理用の前記排水が、30g/l超のケルダール態窒素又はアンモニア性窒素を含む、請求項21〜28のいずれか一項に記載の方法。

【公表番号】特表2009−534046(P2009−534046A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−507110(P2009−507110)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【国際出願番号】PCT/FR2007/000669
【国際公開番号】WO2007/128897
【国際公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(506107612)
【Fターム(参考)】