説明

排水処理装置及びそれを用いた排水処理方法

【課題】必要以上に装置全体が大きくなることを防止でき、一時的に被処理排水量が増加した場合にも対応可能な排水処理装置等を提供する。
【解決手段】被処理排水の汚濁物質濃度およびpHを均一化させて濃度調整排水にする濃度調整槽2aと、この濃度調整槽から送液された濃度調整排水を一時的に貯留する少なくとも1槽以上の緩衝槽2bと、この緩衝槽から送液された濃度調整排水に活性汚泥処理を施す曝気槽3とを直列に配置した排水処理装置とした。この排水処理装置を用いて第2の送液手段を作動させることにより緩衝槽内の水位が設定水位に達したことを検知した際に、第2の送液手段の作動を停止し、次いで、第1の送液手段を作動させて濃度調整排水を送液して、この送液された濃度調整排水と残留していた濃度調整排水とを混合した混合排水の一部を第2の送液手段を作動させて曝気槽に送液する排水処理方法とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活性汚泥を用いる好気性処理によって排水を処理する場合に、被処理排水の有機物濃度、pH、塩素濃度などを均一化して活性汚泥処理を効果的に行うことができる排水処理装置及びそれを用いた排水処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下水道、工場排水、畜産排水等の汚水を浄化処理する方法として、従来から活性汚泥法が広く利用されている。この活性汚泥法は、被処理排水を曝気槽に供給して、曝気を行いながら好気性微生物(活性汚泥)による被処理排水中の主として有機物からなる汚濁物質を酸化分解して浄化する方法である。
【0003】
かような活性汚泥法による浄化処理においては、曝気槽における活性汚泥の処理能力を良好に保つために、被処理排水中の有機物濃度、pH、塩素濃度などを均一に維持することが重要となる。例えば、曝気槽へ供給する被処理排水のBOD濃度は500mg/L以下が理想であり、これより高いBOD濃度の排水を供給した場合には、活性汚泥が仮眠状態となり、さらには死滅してしまい、活性汚泥の機能障害が生じることもあり、活性汚泥の機能が復活するまで1〜2週間を要してしまう。
【0004】
特に、被処理排水として、酪農で搾乳のために使用する機器の洗浄排水や廃棄乳を含むパーラー排水を処理する場合には、例えば50頭規模の酪農では1日当たり約2m3のパーラー排水が発生し、2週間で約28m3のパーラー排水が排出されることになるが、かような大容量の排水を貯留する大容量のタンクを設置することはコスト的に困難となる。
【0005】
そこで、上記排水処理装置としては、例えば、特許文献1に示すように曝気槽の上流側に調整槽を設けた装置なども提案されており、パーラー排水等の被処理排水を曝気槽へ直接供給せずに、調整槽に一旦貯留して汚濁物質の濃度をある程度均一にした後に、曝気槽に供給するようになっている。
【0006】
この曝気槽の上流側に被処理排水を一旦貯留する調整槽を設置した排水処理装置の一例を図2に示す。種々の排水発生場所から原水槽10へ順次供給された被処理排水は、直ちにポンプ81により濃度調整槽20へ圧送され、ここで一定時間貯留されて有機物濃度、pH、塩素濃度などが均一化された濃度調整排水となる。濃度調整排水はポンプ82により濃度調整槽20から曝気槽30へ流量を調整されながら連続的に圧送され、ここで曝気ブロアB1に接続された散気管31から曝気槽30内へ吹き込まれる気泡により、濃度調整排水が活性汚泥とともに曝気撹拌されて活性汚泥処理がなされ、排水中の汚濁物質が除去される。汚濁物質が除去された処理排水は、膜ユニット33によってろ過され、活性汚泥(余剰汚泥)と処理排水とに分離される。膜ユニット33には曝気ブロアB2に接続された散気管32から気泡が吹き付けられ、活性汚泥が膜に付着するのを防止する。分離された処理排水はポンプ83により曝気槽30から抜き出されて放流される。
【0007】
しかしながら、図2のように曝気槽30の上流に被処理排水を貯留する濃度調整槽20を設置した場合でも、排水の濃度調整槽20への圧送と調整槽20から曝気槽30への圧送とが同時に行われる結果、濃度調整槽20で排水が十分に滞留せず濃度調整が未だなされていないうちに曝気槽30へ圧送してしまう危険がある。また、このような危険性に備えて活性汚泥の機能障害が生じた場合に活性汚泥の機能が復活するまで被処理排水を貯留する大容量の濃度調整槽20を設置することはコスト的に困難である。
【0008】
これに対して、本発明者らは、図3に示すように原水槽10の下流側に並列に接続された2槽の濃度調整槽20a、20bと、これら濃度調整槽20a、20bの下流側に接続された曝気槽30とを有する排水処理装置を提案している。
この排水処理装置における原水槽10から一方の濃度調整槽20aに圧送した被処理排水を一定時間曝気攪拌することにより、被処理排水の汚濁物質濃度およびpHを均一化させた濃度調整排水を曝気槽30へ圧送して活性汚泥処理を施す工程Aと、他方の上記濃度調整槽20bに圧送した被処理排水を一定時間曝気攪拌することにより被処理排水の汚濁物質濃度およびpHを均一化させた濃度調整排水を曝気槽30へ圧送して活性汚泥処理を施す工程Bとを交互に行うことにより、連続的に濃度調整排水を曝気槽30に圧送して被処理排水を処理することができる。
【0009】
ところが、上述の排水処理装置は、2槽の濃度調整槽20a、20bがそれぞれ原水槽10との間及び曝気槽30との間に被処理排水を流通させるための配管を設けるとともに、原水槽10との間の各配管に固形物を分離するスクリーン及びポンプを介装し、かつ曝気槽30との間の各配管にポンプを介装する必要があるため、必要以上に装置全体が大きくなってしまうという欠点がある。
また、上述の排水処理装置は、一時的に被処理排水量が増加した場合に、濃度調整槽20a、20bによる曝気攪拌の時間を短くすることができないことから、一時的な排水量の増加に対応することができないという欠点がある。
【0010】
【特許文献1】特開平8−257582号公報
【特許文献2】特開2006−2977336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、必要以上に装置全体が大きくなってしまうことを防止でき、かつ一時的に被処理排水量が増加した場合にも対応可能な排水処理装置およびそれを用いた排水処理方法を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
すなわち、請求項1に記載の本願発明に係る排水処理装置は、被処理排水の汚濁物質濃度およびpHを均一化させて濃度調整排水にする曝気攪拌手段が備えられた濃度調整槽と、この濃度調整槽から第1の送液ラインを介して送液された上記濃度調整排水を一時的に貯留する少なくとも1槽以上の緩衝槽と、この緩衝槽から第2の送液ラインを介して送液された濃度調整排水に活性汚泥処理を施す曝気槽とが直列に配置されていることを特徴とするものである。
なお、本明細書中で「汚濁物質」という用語は、排水中に含まれる有機物、SS、n−Hex、N、P、Clなどを総称する用語として使用しており、「汚濁物質濃度」とは、これらの濃度を意味するものである。
【0013】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の排水処理装置において、上記緩衝槽は、1槽設けられており、かつ上記第1の送液ラインには、上記濃度調整槽から上記緩衝槽に上記濃度調整排水を送液する第1の送液手段が介装されるとともに、上記第2の送液ラインには、上記第1の送液手段が作動停止している際に作動可能であって、上記緩衝槽から上記曝気槽に上記濃度調整排水を送液する第2の送液手段が介装されていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の排水処理装置において、上記緩衝槽には、上記濃度調整排水が設定水位に達したことを検知可能な水位検知手段が設けられていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項4に記載の発明に係る排水処理方法は、請求項3に記載の排水処理装置を用いて、被処理排水を処理する排水処理方法であって、上記緩衝槽に貯留された濃度調整排水の一部を上記第2の送液手段を作動させて上記曝気槽に送液することにより、当該緩衝槽内の水位が上記設定水位に達したことを検知した際に、上記第2の送液手段の作動を停止し、次いで、上記第1の送液手段を作動させて、上記濃度調整槽から当該緩衝槽に上記濃度調整排水を送液して、この送液された濃度調整排水と残留していた濃度調整排水とを混合した混合排水の一部を、上記第1の送液手段の作動を停止させた後に、上記第2の送液手段を作動させて、上記曝気槽に送液することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1〜3に記載の排水処理装置及び請求項4に記載の排水処理方法によれば、被処理排水の汚濁物質濃度およびpHを濃度調整槽における曝気攪拌によって均一化させた濃度調整排水を、第1の送液ラインを介して緩衝槽に送液して、この緩衝槽から第2の送液ラインを介して曝気槽に送液することによって、活性汚泥処理による汚濁物質の酸化分解により、被処理排水を浄化することができ、濃度未調整の被処理排水をそのまま曝気槽に流出させてしまうことを防止できる。
加えて、濃度調整槽と緩衝槽と曝気槽とを直列に配置したため、2槽の濃度調整槽を並列に配置した場合と異なって、配管等によって必要以上に装置全体が大きくなってしまうことを防止することができる。
【0017】
さらには、2槽の濃度調整槽を並列に配置した場合と異なって、一時的に被排水量が増加した場合にも、緩衝槽から濃度調整排水の一部を曝気槽に送液した後に、当該緩衝槽に濃度調整排水を送液して、新たに送液された濃度調整排水と残留していた濃度調整排水とを当該緩衝槽において混合することにより、濃度調整槽における曝気攪拌時間を短くして、濃度調整排水を曝気槽に送液しても、活性汚泥の機能障害が生じることを防止できる。
従って、請求項1〜3に記載の排水処理装置は、上述のように濃度調整槽による曝気攪拌時間等を短くして、濃度調整排水を攪拌槽に送液することにより、残留していた濃度調整排水と混合して、混合排水を曝気槽に送液させる等の状況に応じた様々な利用方法による排水処理を可能にすることができる。
【0018】
特に、請求項2に記載の発明によれば、確実に濃度未調整の被処理排水をそのまま曝気槽に送液してしまうことを阻止できる。
また、請求項3に記載の発明によれば、容易に水位検知手段によって設定水位に達したことを検知することができ、その結果、新たに送液する濃度調整排水と残留していた濃度調整排水との混合割合を一定に保つことができるとともに、混合割合を調整することができる。
【0019】
従って、請求項4に記載の発明に係る排水処理方法によれば、上述のように曝気攪拌時間を短くして、汚濁物質濃度およびpHの均一化の不十分な濃度調整排水を緩衝槽に送液しても、混合排水とすることにより曝気槽において活性汚泥の機能障害が生じることを防止でき、その結果、一時的な被処理排水量の増加にも対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明に係る排水処理装置の一実施形態について、図1を用いて説明する。
本実施形態の排水処理装置は、被処理排水が貯留された原水槽1と、第1の濃度調整槽2aと、第2の濃度調整槽(緩衝槽)2bと、曝気槽3とが上流側から下流側に向けて直列に配置されて概略構成されている。
【0021】
これらの第1の濃度調整槽2aおよび第2の濃度調整槽2bには、それぞれ曝気ブロアB1及びそれに接続された散気管23が設けられるとともに、pH調整剤投入管21および塩素還元剤投入管22が接続されている。
加えて、第2の濃度調整槽2b内には、その水面に浮くフロート(図示を略す)が配設されており、この第2の濃度調整槽2bの外方には、このフロートの高さから濃度調整排水の水位を受信する受信器(図示を略す)が設けられている。これらのフロートおよび受信器により水位検知手段が構成されている。
【0022】
また、曝気槽3は、曝気ブロアB2及びそれに接続された散気管31が設けられているとともに、その排出口に臨む位置に被処理排水を濾過する膜ユニット33が設置されており、この膜ユニット33に気泡を吹き付ける散気管32及びそれに接続された曝気ブロアB3が設けられている。
【0023】
そして、原水槽1と第1の濃度調整槽2aとの間には、スクリーン70およびポンプP1が介装された第1の配管71が設けられるとともに、第1の濃度調整槽2aと第2の濃度調整槽2bとの間には、ポンプ(第1の送液手段)P2が介装された第2の配管(第1の送液ライン)72が設けられている。
また、第2の濃度調整槽2bと曝気槽3との間には、ポンプ(第2の送液手段)P3が介装された第3の配管(第2の送液ライン)73が設けられるとともに、この曝気槽3の排出口にポンプP4を介装した配管74が接続されており、本実施形態の排水処理装置には、これらのポンプP1〜P3を制御する制御装置(図示を略す)が設けられている。
【0024】
この制御装置は、上記受信器に受信した水位に応じてポンプP1〜P3を制御可能に設けられており、かつポンプP2と、ポンプP1、P3とを同時に作動させないように設定されている。なお、ポンプP4は、曝気槽3の水位制御装置(図示を略す)によって、常に活性汚泥が曝気槽3内に残存するように作動制御されている。
【0025】
次に、上記排水処理装置を用いた被処理排水の2つの排水処理方法について説明する前に、これらの排水処理方法によって処理される被処理排水について説明する。
これらの第1の排水処理方法および第2の排水処理方法は、いずれも被処理排水として、酪農で搾乳のために使用する機器の洗浄排水及び初乳や乳房炎治療後の牛乳の廃棄乳を含むパーラー排水を処理するものである。
【0026】
ここで、搾乳機器には、パイプラインミルカーやバルククーラーなどがある。パイプラインミルカーは、牛の乳房に取り付けて搾乳するミルカーで搾乳された生乳をタンクに集めてポンプでバルククーラーへ送るための一連の装置であり、バルククーラーは、集乳用の車が生乳を集めにくるまで生乳を冷却保存する装置である。これらの装置の洗浄排水には、強酸洗剤、強アルカリ洗剤、殺菌塩素、機器残留牛乳が含まれるため、環境汚染の原因となる。また、廃棄乳とは、出産後に出る初乳や乳房炎治療後の牛乳で、出荷できずに廃棄処理するものを意味するものである。
【0027】
そして、初乳のBOD濃度は120,000mg/L、牛乳のBOD濃度は78,000mg/Lと非常に高いため、これらの廃棄乳を単独で浄化処理することは不可能である。
このため、これらのBOD濃度の高い廃棄乳は、BOD濃度の低い洗浄排水と混合することにより濃度を均一にする必要がある。
【0028】
そこで、これらのパイプラインミルカー洗浄排水及びバルククーラー洗浄排水の機器の洗浄排水、廃棄乳や洗濯機排水などの各種被処理排水からなるパーラー排水を、排出された順番に原水槽1へ供給する。
【0029】
次に、第1の排水処理方法について、説明する。
第1の排水処理方法においては、原水槽1に貯留した一日分のパーラー排水を、ポンプP1を作動させて、第1の濃度調整槽2aに圧送して、貯留し、ポンプP1を停止させる。
これにより、この第1の濃度調整槽2aに貯留したパーラー排水を、約一日かけて曝気ブロアB1から散気管23を通じて吹き込まれる気泡により、曝気攪拌して、BOD濃度の低い洗浄排水とBOD濃度の高い廃棄乳とを混合するとともに、必要に応じてpH調整剤投入管21からpH調整剤や塩素還元剤投入管22から塩素還元剤を投入して、BOD、COD、SS、n−Hex、T−N、T−PおよびClなどの汚濁物質濃度の値やpH値を均一化させ且つ活性汚泥処理可能な値に調整した濃度調整排水とした。
【0030】
次いで、この濃度調整排水を、ポンプP2を作動させて、第1の濃度調整槽2aから第2の濃度調整槽2bに圧送して、貯留し、ポンプP2を停止させた。この第2の濃度調整槽2bに貯留した濃度調整排水を、第1の濃度調整槽2aと同様に、曝気ブロアB1から散気管23を通じて吹き込まれる気泡により、曝気攪拌して、必要に応じてpH調整剤投入管21からpH調整剤や塩素還元剤投入管22から塩素還元剤を投入して、さらに汚濁物質濃度やpH値を均一化させた。
他方、ポンプP2の停止後、ポンプP1を作動させて、一日後のパーラー排水を第1の濃度調整槽2aに貯留し、同様に曝気攪拌させている。
【0031】
次に、この第2の濃度調整槽2bの濃度調整排水を、ポンプP3を作動させて、曝気槽3に圧送する。
これにより、曝気槽3に貯留した濃度調整排水を、曝気ブロアB2から散気管31を通じて吹き込まれる気泡により、曝気槽3内に常に存在する活性汚泥とともに曝気攪拌して、活性汚泥処理を施し、汚濁物質を分解除去する。そして、この汚濁物質を分解除去した処理排水を、膜ユニット33によって濾過して、活性汚泥(余剰汚泥)と処理排水とに分離して、この処理排水を排水口からポンプP4の作動により排出する。
それとともに、第2の濃度調整槽2bの全ての濃度調整排水を曝気槽3に圧送した後に、ポンプP3を停止させ、その後、ポンプP2を作動させることにより、一日後の濃度調整排水を第2の濃度調整槽2bに圧送して、同様に曝気攪拌させている。次いで、上記ポンプP4の作動停止後、第2の濃度調整槽2bで曝気攪拌させた一日後の濃度調整排水を同様に、ポンプP3を作動させて、曝気槽3に圧送することにより、繰り返し、パーラー排水を処理している。
【0032】
次に、本発明に係る上記排水処理装置を用いた第2の排水処理方法について、説明する。
第2の排水処理方法においては、原水槽1内のパーラー排水をポンプP1を作動させて、第1の濃度調整槽2aに圧送して貯留した後に、ポンプP1を停止させる。
これにより、この第1の濃度調整槽2aに貯留したパーラー排水を、例えば約半日等の第1の排水処理方法よりも短い時間、曝気ブロアB1から散気管23を通じて吹き込まれる気泡により曝気攪拌するとともに、必要に応じてpH調整剤投入管21からpH調整剤や塩素還元剤投入管22から塩素還元剤を投入して、汚濁物質濃度やpH値を均一化させ且つ活性汚泥処理可能な値に調整する。
【0033】
次いで、この濃度調整排水を、第1の排水処理方法と同様に、ポンプP2を作動させて第2の濃度調整槽2bに圧送して、残留していた濃度調整排水とともに曝気攪拌して混合排水とする。また、必要に応じてpH調整剤投入管21からpH調整剤や塩素還元剤投入管22から塩素還元剤を投入する。
【0034】
次に、この第2の濃度調整槽2bの混合排水を、ポンプP3を作動させて、上記受信器によってフロートの高さが設定位置に達したことを検知するまで曝気槽3に圧送する。
これにより、曝気槽3に貯留した混合排水を、第1の排水処理方法と同様に、曝気ブロアB2から散気管31を通じて吹き込まれる気泡により活性汚泥とともに曝気攪拌して、汚濁物質を分解除去する。そして、この汚濁物質を分解除去した処理排水を、膜ユニット33によって濾過して、活性汚泥(余剰汚泥)と処理排水とに分離して、この処理排水を排水口からポンプP4の作動により排出する。
【0035】
上述の排水処理装置によれば、第1の濃度調整槽2aにおける曝気ブロアB1等による曝気攪拌により被処理排水の汚濁物質濃度およびpHを均一化させ且つ活性汚泥可能な値に調整した濃度調整排水を第2の濃度調整槽2bに圧送した後に、この第2の濃度調整槽2bから濃度調整排水を曝気槽3に圧送させることによって、活性汚泥による汚濁物質の酸化分解により濃度調整排水を浄化することができ、濃度未調整の被処理排水をそのまま曝気槽に流出させてしまうことを防止できる。
【0036】
加えて、第1の濃度調整槽2aと第2の濃度調整槽2bと曝気槽3とを直列に配置したため、第1の濃度調整槽2aと第2の濃度調整槽2bとを並列に配置した場合と異なって、これらの濃度調整槽2a、2bと上下流側にそれぞれ設けられた装置とを接続する配管等によって必要以上に装置全体が大きくなってしまうことを防止することができる。
【0037】
さらには、2槽の濃度調整槽2a、2bを並列に配置した場合と異なって、一時的に被排水量が増加した場合にも、混合排水の一部を第2の濃度調整槽2bから曝気槽3に圧送することにより受信器によってフロートの高さが設定位置に達したことを検知した際に、この曝気槽3への圧送を停止し、かつ第2の濃度調整槽2bに濃度調整排水を圧送して、新たに送液した濃度調整排水と残留していた濃度調整排水とを混合することにより、第1の濃度調整槽2aにおける曝気攪拌時間を短くしても、活性汚泥の機能障害が生じることを防止できる。
【0038】
故に、上記排水処理装置は、被処理排水を第1の濃度調整槽2aにおいて曝気攪拌することにより濃度調整排水として、第2の濃度調整槽2bに圧送させた全量の濃度調整排水を曝気槽3に圧送して、活性汚泥処理を施すだけでなく、上述のように第1の濃度調整槽2aにおける曝気攪拌時間等を短くして、第2の濃度調整槽2bにおいて混合排水にする等の状況に応じた様々な利用方法による排水処理を可能にすることができる。
【0039】
従って、上述の第2の排水処理方法によれば、活性汚泥の機能障害が生じることを防止しつつも一時的な被処理排水量の増加に対応することができる。
【0040】
なお、本発明は、上述の実施形態に何ら限定されるものでなく、例えば、水位検知手段が設けられていなくてもよいものである。
さらに、第2の濃度調整槽2bは、pH調整剤投入管21、塩素還元剤投入管22、散気管23や曝気ブロアB1が設けられた濃度調整槽でなくてもよく、曝気槽3に圧送するまでの一時的な間、濃度調整排水を貯留混合可能な緩衝槽であれば足りるものである。また、第2の濃度調整槽2bは、複数槽設けられていてもよいものである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明による排水処理装置の一実施例を示す概念説明図である。
【図2】従来の排水処理装置の一例を示す概念説明図である。
【図3】図2の排水処理装置を改良した従来の排水処理装置を示す概念説明図である
【符号の説明】
【0042】
1 原水槽
2a 第1の濃度調整槽
2b 第2の濃度調整槽(緩衝槽)
21 pH調整剤投入管
22 塩素還元剤投入管
3 曝気槽
33 膜ユニット
71〜74 配管
P1〜P5 ポンプ
B1〜B3 曝気ブロア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理排水の汚濁物質濃度およびpHを均一化させて濃度調整排水にする曝気攪拌手段が備えられた濃度調整槽と、この濃度調整槽から第1の送液ラインを介して送液された上記濃度調整排水を一時的に貯留する少なくとも1槽以上の緩衝槽と、この緩衝槽から第2の送液ラインを介して送液された濃度調整排水に活性汚泥処理を施す曝気槽とが直列に配置されていることを特徴とする排水処理装置。
【請求項2】
上記緩衝槽は、1槽設けられており、かつ上記第1の送液ラインには、上記濃度調整槽から上記緩衝槽に上記濃度調整排水を送液する第1の送液手段が介装されるとともに、上記第2の送液ラインには、上記第1の送液手段が作動停止している際に作動可能であって、上記緩衝槽から上記曝気槽に上記濃度調整排水を送液する第2の送液手段が介装されていることを特徴とする請求項1に記載の排水処理装置。
【請求項3】
上記緩衝槽には、上記濃度調整排水が設定水位に達したことを検知可能な水位検知手段が設けられていることを特徴とする請求項2に記載の排水処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の排水処理装置を用いて、被処理排水を処理する排水処理方法であって、
上記緩衝槽に貯留された濃度調整排水の一部を上記第2の送液手段を作動させて上記曝気槽に送液することにより、当該緩衝槽内の水位が上記設定水位に達したことを検知した際に、上記第2の送液手段の作動を停止し、次いで、上記第1の送液手段を作動させて、上記濃度調整槽から当該緩衝槽に上記濃度調整排水を送液して、この送液された濃度調整排水と残留していた濃度調整排水とを混合した混合排水の一部を、上記第1の送液手段の作動を停止させた後に、上記第2の送液手段を作動させて、上記曝気槽に送液することを特徴とする排水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−61410(P2009−61410A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−232582(P2007−232582)
【出願日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(000204099)太洋興業株式会社 (30)
【Fターム(参考)】