説明

排水勾配付き防水床

【課題】大面積の排水勾配付き防水床であっても容易に構築することができる排水勾配付き防水床を提供する。
【解決手段】架台4上に必要に応じ下地合板(図示略)を敷設した後、スロープ面材10,30とフラット面材20によって排水勾配付き防水床を形成する。スロープ面材10は、排水勾配方向に沿う縦断面形状が台形であり、排水勾配を有した上面11と、水平な下面12と、水上側の木口面13と水下側の木口面14とを有している。スロープ面材10の凸実部15を隣接するスロープ面材10の凹実部16に嵌合させたとときに、双方のスロープ面材10,10の上面11,11が連続面となる。排水樋5に隣接してスロープ面材10が1枚のみ敷設され、それに隣接して1枚のスロープ面材10と1枚のフラット面材20とが敷設され、それに隣接して1枚のスロープ面材10と2枚のフラット面材20とが敷設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水勾配を有した防水床に関する。
【背景技術】
【0002】
排水勾配を有した防水床を、排水勾配付きの床材あるいは防水パンを用いて構築する技術は特開平5−98680号公報及び特開平8−120724号公報に記載されている。
【0003】
前者の特開平5−98680号公報では、複数枚の排水勾配付き防水パンを、それらの上面が連続面となるように、足ボルトで高さ調整しながら隣接配置している。
【0004】
後者の特開平8−120724号公報では、上面が排水勾配を有した、比較的大きな一枚物のスロープ面材を敷設して排水勾配付き防水床を構築している。
【特許文献1】特開平5−98680号公報
【特許文献2】特開平8−120724号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特開平5−98680号公報の技術によって排水勾配付き防水床を構築する場合、隣接する防水パンの上面が連続面となるように足ボルトによる高さ調整を厳密に行う必要があり、構築作業に手間がかかる。
【0006】
上記特開平8−120724号公報の技術では、排水勾配付き防水床の大きさが1枚のスロープ面材の大きさに限られてしまい、大きな面積の排水勾配付き防水床を構築することができない。
【0007】
本発明は、大面積の排水勾配付き防水床であっても容易に構築することができる排水勾配付き防水床を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明(請求項1)の排水勾配付き防水床は、上面が排水勾配を有したスロープ面材が敷設され、その上に防水層が形成されている排水勾配付き防水床において、複数の該スロープ面材が、各々の上面が連続面となるように配置され、水上側のスロープ面材の下側には、上面が水平なフラット面材が敷設されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2の排水勾配付き防水床は、請求項1において、該スロープ面材の排水勾配方向に沿う縦断面形状が台形であり、このスロープ面材の水上側の木口面の厚みをa、水下側の木口面の厚みをbとし、前記フラット面材の厚みをcとした場合、bとcとの和がaにほぼ等しいことを特徴とするものである。
【0010】
請求項3の排水勾配付き防水床は、請求項2において、水上側スロープ面材の水下側の木口面と、水下側スロープ面材の水上側の木口面とに、互いに係合した実部が設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の排水勾配付き防水床にあっては、複数のスロープ面材を、上面が連続面となるように敷設するため、所望の大きさの排水勾配付き防水床を構築することができる。
【0012】
本発明では、水上側のスロープ面材の下側にフラット面材を敷設するため、スロープ面材を所定勾配にて容易に設置することができる。特に、スロープ面材の排水勾配方向に沿う縦断面形状が台形であり、スロープ面材の水上側の木口面の厚みa、水下側の木口面の厚みb及びフラット面材の厚みcの関係をa≒b+cとすることにより、隣接するスロープ面材の上面を簡単に連続面とすることができる。
【0013】
本発明では、水上側スロープ面材の水下側の木口面と、水下側スロープ面材の水上側の木口面とに、互いに係合した実部を設けることにより、隣接するスロープ面材の上面を極めて容易に連続面とすることが可能となる。また、隣接するスロープ面材同士の連結強度を高めることも可能である。
【0014】
当該スロープ面材は、それ自体が防水機能を有することが望ましい。スロープ面材の継ぎ目の防水処理は、ゴムアス系テープやブチルテープ、シール材による処理を行い、その上にセメント系の下地ボードを接着固定することが好適であるが、これに限定されない。
【0015】
また、スロープ面材が防水機能を有しない場合は、防水層として、シート防水、塗膜防水、FRP現場打ちなどの適用が可能である。当該スロープ面材を敷設後、必要に応じてプライマーによる下地処理を施し、防水シートを圧着させたり、ウレタン塗膜を施したりしてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。図1は実施の形態に係る排水勾配付き防水床を示す縦断面図、図2はスロープ面材及びフラット面材の側面図、図3はスロープ面材の斜視図、図4はスロープ面材の別例を示す側面図である。図5は床仕上げ状況を示す断面図、図6は階上の構造図である。
【0017】
図1の通り、コンクリート床1と柱又は腰壁2に囲まれた浴室構築予定スペース3に架台4が設置されている。この架台4は例えば囲桁状などのフレームよりなり、コンクリート床1上に足ボルトや脚部(図示略)などによって設置されている。この架台4上に必要に応じ下地合板(図示略)を敷設した後、スロープ面材10,30とフラット面材20によって排水勾配付き防水床を形成する。スロープ面材10,30間には排水樋5が配設され、該排水樋5に設けられた排水トラップ6に排水管7が接続される。
【0018】
スロープ面材10は、排水勾配方向に沿う縦断面形状が台形であり、排水勾配を有した上面11と、水平な下面12と、水上側の木口面13と、水下側の木口面14とを有している。
【0019】
水上側の木口面13の上部には凸実部15が設けられ、水下側の木口面14には凹実部16が設けられている。これらの実部15,16は嵌合しうる大きさであり、スロープ面材10の凸実部15を隣接するスロープ面材10の凹実部16に嵌合させたときに、双方のスロープ面材10,10の上面11,11が連続面となるように、凸実部15及び凹実部16の各木口面13,14の上縁からの距離が等しいものとなっている。
【0020】
フラット面材20は、水平な上面21及び下面22と、鉛直な木口面23,24とを有した直方体形状である。
【0021】
この実施の形態では、スロープ面材10の水上側の木口面13の厚さをa、水下側の木口面14の厚さをb、フラット面材20の厚さをcとした場合、a=b+cとなっている。ただし、誤差ゼロにてb,cの和がaと等しくなっている必要はなく、±2mm程度の誤差は許容される。
【0022】
図1において、排水樋5を挟んで左側の領域にあっては、排水樋5に隣接して最水下側の1枚のスロープ面材10が敷設され、それに隣接して1枚のスロープ面材10と1枚のフラット面材20とが重ね合わされて敷設され、それに隣接して最水上側の1枚のスロープ面材10と2枚のフラット面材20とが重ね合わされて敷設されている。
【0023】
なお、柱又は腰壁2に隣接して配置された図1の最も左側(最水上側)のスロープ面材10の凸実部15は、敷設施工時に切断除去されている。
【0024】
上記の通り、a=b+cの関係があるため、水上側から水下側に向って配設された3枚のスロープ面材10,10,10の上面11,11,11は一直線状に連続している。
【0025】
なお、図1の排水樋5の右側にあっては、1枚のスロープ面材30のみによって排水勾配が形成されているが、排水樋5の右側のスペースが大きいときには、左側と同様に複数のスロープ面材30を隣接配置すると共に、水上側のスロープ面材30の下側にフラット面材を敷設すればよい。
【0026】
この実施の形態では、各面材10,20,30を敷設することにより排水勾配付き防水床を形成することができる。排水樋5の左側にあっては、スペースが広いにもかかわらず、複数のスロープ面材10とフラット面材20とによって極めて容易に排水勾配付き防水床を構築することができる。
【0027】
特に、この実施の形態では、凸実部15と凹実部16とを嵌合させるようにしているので、隣接するスロープ面材10,10の上面11,11を極めて正確に連続させることができると共に、両スロープ面材10,10の連結強度を高めることもできる。
【0028】
なお、実部の形状は図1〜3の他、図4のスロープ面材10’のように、木口面13,14の最上部に形成された凸実部15’、凹実部16’等であってもよい。
【0029】
上記の如くして面材10,20,30あるいは10’を敷設した後は、図5に示すように、その上に例えば防水シート41を張設し、その上にセメント系等のタイル張り下地板42を敷設し、この下地板上にタイル43張りして仕上げを行う。ただし、この仕上げは一例であり、これ以外であってもよい。
【0030】
本発明で用いる面材の材料は、特に限定されるものではないが、発泡合成樹脂ボードが軽量で且つ断熱性を有し、切断も容易であり、好適である。
【0031】
上記実施の形態では、排水樋5の両側に排水勾配をつけているが、排水樋5を床の辺縁に沿って配置してもよい。なお、スロープ面材の配設枚数は図示のものに限定されない。スロープ面材の上面の勾配は1/30〜1/80程度が好適である。
【0032】
本発明は、図6に示す2階以上の階上にも適用できる。図6では、2階床梁50上に根太51が設置され、その上に床合板52が設置されている。53は壁合板、54は胴差し、55は柱である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】実施の形態に係る排水勾配付き防水床を示す縦断面図である。
【図2】スロープ面材及びフラット面材の側面図である。
【図3】スロープ面材の斜視図である。
【図4】スロープ面材の別例を示す側面図である。
【図5】床仕上げ状況を示す断面図である。
【図6】階上の構造図である。
【符号の説明】
【0034】
5 排水樋
6 排水トラップ
7 排水管
10,10’,30 スロープ面材
15,15’ 凸実部
16,16’ 凹実部
20 フラット面材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が排水勾配を有したスロープ面材が敷設され、その上に防水層が形成されている排水勾配付き防水床において、
複数の該スロープ面材が、各々の上面が連続面となるように配置され、
水上側のスロープ面材の下側には、上面が水平なフラット面材が敷設されていることを特徴とする排水勾配付き防水床。
【請求項2】
請求項1において、該スロープ面材の排水勾配方向に沿う縦断面形状が台形であり、
このスロープ面材の水上側の木口面の厚みをa、水下側の木口面の厚みをbとし、
前記フラット面材の厚みをcとした場合、bとcとの和がaにほぼ等しいことを特徴とする排水勾配付き防水床。
【請求項3】
請求項2において、水上側スロープ面材の水下側の木口面と、水下側スロープ面材の水上側の木口面とに、互いに係合した実部が設けられていることを特徴とする排水勾配付き防水床。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−144299(P2006−144299A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−333450(P2004−333450)
【出願日】平成16年11月17日(2004.11.17)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】