説明

排煙脱硫吸収装置及び排ガス処理方法

【課題】排煙脱硫吸収装置塔内で排ガス中の硫黄分を吸収した海水を効率良く処理することができる排煙脱硫吸収装置及び排ガス処理方法を提供する。
【解決手段】本実施例に係る第1の排煙脱硫吸収装置10Aは、排ガス11中のSO2を海水12と接触させて洗浄する排煙脱硫吸収装置において、排ガス11と海水12とを接触させる接触部13と、接触部13において排ガス11と海水12とを接触させて排ガス11中のSO2を吸収した硫黄分吸収液14が貯留される塔底部15と、この塔低部15内に配設され、ACFからなるACF層16で形成されたACF槽17と、を有する。硫黄分吸収液14中にACF槽17を浸漬し、ACFの触媒作用を利用することで、硫黄分吸収液14中の亜硫酸イオンの酸化を促進し、亜硫酸イオンを効率良く酸化処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業燃焼設備などから排出される排ガス中の硫黄酸化物を海水を用いて脱硫する排煙脱硫吸収装置及び排ガス処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭等の化石燃料を燃焼することで発生する排ガス中に含有される硫黄分を除去するため脱硫装置が設けられている。また、発電所などでは大量の冷却水を必要とするため海に面した場所に建設される場合が多く、脱硫処理の稼動コストを抑えることなどの観点から、海水を吸収液として利用して脱硫を行う海水脱硫が注目されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この吸収液として海水を用いた排煙脱硫吸収装置は、石灰‐石膏法に比べて低コストであるため、火力発電所などにおいて用いられている。また、ボイラの復水器で多量の海水を冷却水として用いるため、復水器から排出されて温められた海水排液の一部は脱硫装置に供給され、排ガス中のSO2の除去に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−55779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、従来の排煙脱硫装置では、排ガスと海水とを向流接触させて排ガス中のSO2を海水中に吸収しているが、海水中に吸収されたSO2は海水と反応して水素イオン(H+)が生成されているため、SO2を吸収した海水である硫黄分吸収液のpHは、例えば3.0〜3.5程度となる。このため、硫黄分吸収液中に吸収されたSO2が溶解して生成される亜硫酸イオンを酸化して硫酸イオンとするために、排煙脱硫装置の装置本体内にはpH調整剤などを供給し、硫黄分吸収液のpHを酸化可能な範囲に調整する必要がある。
【0006】
しかしながら、前記装置本体内には多量の海水が供給されているため、pH調整剤を用いて硫黄分吸収液のpHを調整する場合、多量の海水で希釈するか、多量のpH調整剤を供給する必要がある、という問題がある。
【0007】
そのため、排煙脱硫吸収装置内において海水中に吸収された排ガス中の硫黄分を効率良く有効に処理する方法が求められている。
【0008】
本発明は、前記問題に鑑み、排煙脱硫吸収装置塔内で排ガス中の硫黄分を吸収した海水を効率良く処理することができる排煙脱硫吸収装置及び排ガス処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、排ガス中の硫黄分を海水と接触させて洗浄する排煙脱硫吸収装置において、前記排ガスと前記海水とを接触させる接触部と、該接触部において前記排ガスと前記海水とを接触させて前記排ガス中の前記硫黄分を吸収した硫黄分吸収液が貯留される貯留部と、該貯留部内に配設され、活性炭素繊維からなる活性炭素繊維層で形成された活性炭素繊維槽と、を有することを特徴とする排煙脱硫吸収装置にある。
【0010】
第2の発明は、排ガス中の硫黄分を海水と接触させて洗浄する排煙脱硫吸収装置において、前記排ガスと前記海水とを接触させる接触部と、該接触部において前記排ガスと前記海水とを接触させて前記排ガス中の前記硫黄分を吸収した硫黄分吸収液が貯留される貯留部と、該貯留部内に分散され、活性炭素繊維に金属を含有させて成形された金属含有活性炭素繊維成形体と、前記貯留部に設けられ、前記金属含有活性炭素繊維成形体を回収する活性炭素繊維回収部と、を有することを特徴とする排煙脱硫吸収装置にある。
【0011】
第3の発明は、第2の発明において、前記活性炭素繊維回収部が、磁石又は電磁石であることを特徴とする排煙脱硫吸収装置にある。
【0012】
第4の発明は、第2又は3の発明において、前記金属が、鉄又はニッケルであることを特徴とする排煙脱硫吸収装置にある。
【0013】
第5の発明は、第2乃至4の何れか一つの発明において、前記金属含有活性炭素繊維成形体の形状が、すだれ状、暖簾状、すのこ状又は球状の何れかであることを特徴とする排煙脱硫吸収装置にある。
【0014】
第6の発明は、第2乃至5の何れか一つの発明において、前記貯留部内に、前記金属含有活性炭素繊維成形体が装置本体から流出することを防止するフィルタが設けられてなることを特徴とする排煙脱硫吸収装置にある。
【0015】
第7の発明は、第1乃至6の何れか一つの発明の排煙脱硫吸収装置と、前記海水を希釈用海水として前記排煙脱硫吸収装置に供給する希釈用海水供給ラインと、前記排煙脱硫吸収装置から排出される前記硫黄分吸収液中の硫黄分を酸化すると共に脱炭酸し、水質回復を行う酸化槽と、前記硫黄分吸収液を前記酸化槽に排出する硫黄分吸収液排出ラインと、前記希釈用海水の一部を、第一の希釈用海水として前記酸化槽に供給し、前記硫黄分吸収液と混合する第一の希釈用海水供給ラインと、前記希釈用海水の一部を第二の希釈用海水として前記酸化槽で水質回復された水質回復海水と合流させる第二の希釈用海水供給ラインと、を有することを特徴とする海水脱硫酸化処理装置にある。
【0016】
第8の発明は、ボイラと、前記ボイラから排出される排ガスを蒸気発生用の熱源として使用すると共に、発生した蒸気を用いて発電機を駆動する蒸気タービンと、前記蒸気タービンで凝縮した水を回収し、循環させる復水器と、前記ボイラから排出される排ガスの脱硝を行う排煙脱硝装置と、前記排ガス中の煤塵を除去する集塵装置と、第7の発明の海水脱硫酸化処理装置と、前記排煙脱硫吸収装置で脱硫された浄化ガスを外部へ排出する煙突と、からなることを特徴とする発電システムにある。
【0017】
第9の発明は、排ガスを海水と接触させて前記排ガス中の硫黄分を前記海水中に吸収させ、前記排ガスを洗浄する排ガス処理方法において、前記硫黄分を吸収した硫黄分吸収液に、活性炭素繊維からなる活性炭素繊維層で形成された活性炭素繊維槽を浸漬し、前記活性炭素繊維により、前記硫黄分を吸収した硫黄分吸収液中の前記硫黄分の酸化を促進することを特徴とする排ガス処理方法にある。
【0018】
第10の発明は、排ガスを海水と接触させて前記排ガス中の硫黄分を前記海水中に吸収させ、前記排ガスを洗浄する排ガス処理方法において、前記硫黄分を吸収した硫黄分吸収液に、活性炭素繊維に金属を含有させた金属含有活性炭素繊維成形体を分散させ、前記硫黄分吸収液中の前記硫黄分を前記金属含有活性炭素繊維成形体と接触させて酸化することを特徴とする排ガス処理方法にある。
【0019】
第11の発明は、第10の発明において、前記硫黄分吸収液中の前記金属含有活性炭素繊維成形体を活性炭素繊維回収部により回収することを特徴とする排ガス処理方法にある。
【0020】
第12の発明は、第11の発明において、前記活性炭素繊維回収部が、磁石又は電磁石であることを特徴とする排ガス処理方法にある。
【0021】
第13の発明は、第11又は12の発明において、前記金属が、鉄又はニッケルであることを特徴とする排ガス処理方法にある。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、脱硫に用いた海水である硫黄分吸収液中に活性炭素繊維からなる活性炭素繊維層で形成された活性炭素繊維槽を配設しているため、海水中に吸収された硫黄分と前記活性炭素繊維とが接触することで、前記硫黄分吸収液中の前記硫黄分の酸化を促進し、前記硫黄分を効率良く処理することができる。
【0023】
また、本発明によれば、脱硫に用いた海水である硫黄分吸収液中に金属含有活性炭素繊維成形体を分散させているため、海水中に吸収された硫黄分と前記金属含有活性炭素繊維成形体の活性炭素繊維との接触効率を向上させることができ、前記硫黄分吸収液中の前記硫黄分を効率良く均一に酸化処理することができる。
また、前記硫黄分吸収液が貯留される貯留部に設けた活性炭素繊維回収部により前記金属含有活性炭素繊維成形体を回収可能としているため、回収した金属含有活性炭素繊維成形体を再生して再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の実施例1に係る排煙脱硫吸収装置の概略図である。
【図2】図2は、活性炭素繊維層の構成を示す図である。
【図3】図3は、本発明の実施例2に係る排煙脱硫吸収装置の概略図である。
【図4】図4は、図3に示す排煙脱硫吸収装置の部分拡大図である。
【図5】図5は、活性炭素繊維を回収する方法の一例を示す図である。
【図6】図6は、活性炭素繊維を回収する方法の他の一例を示す図である。
【図7】図7は、活性炭素繊維の他の形状を示す図である。
【図8】図8は、活性炭素繊維の他の形状を示す図である。
【図9】図9は、活性炭素繊維の他の形状示す図である。
【図10】図10は、活性炭素繊維の他の形状を示す図である。
【図11】図11は、本発明の実施例3に係る排煙脱硫吸収装置の概略図である。
【図12】図12は、本発明の実施例4に係る発電システムの構成を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0026】
本発明による実施例1に係る排煙脱硫吸収装置について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施例1に係る排煙脱硫吸収装置の概略図であり、図2は、活性炭素繊維層の構成を示す図である。
図1、2に示すように、本実施例に係る第1の排煙脱硫吸収装置10Aは、排ガス11中のSO2を海水12と接触させて洗浄する排煙脱硫吸収装置において、排ガス11と海水12とを接触させる接触部13と、接触部13において排ガス11と海水12とを接触させて排ガス11中のSO2を吸収した硫黄分吸収液14が貯留される塔底部(貯留部)15と、この貯留部15内に配設され、活性炭素繊維(Active Carbon Fiber:ACF)からなる活性炭素繊維層(ACF層)16で形成された活性炭素繊維槽(ACF槽)17と、を有するものである。
また、本発明において、貯留部とは、硫黄分吸収液14を貯留している装置本体18内の一定の領域をいい、本実施例では、硫黄分吸収液14が貯留される塔底部15をいう。
【0027】
排ガス11中に含有されているSO2は海から汲み上げられた海水12を用いて海水脱硫が行なわれる。排ガス11は排ガス送給ライン21を介して装置本体18の塔底部15側の壁面より装置本体18内に送給される。一方、海水12は海水供給ライン22を介して装置本体18の塔頂部23側より装置本体18内に送給される。装置本体18内で塔底から導入される排ガス11と、散水ノズル24から供給される海水12とを対向して気液接触させることで、装置本体18内の接触部13において、排ガス11中のSO2を海水12中に吸収し、そのSO2を亜硫酸イオン(HSO3-)とし、装置本体18の塔底部15に貯留される。
また、本実施例において、硫黄分吸収液14とは、海水脱硫することで生成されるSO2、亜硫酸イオンなど硫黄分を高濃度に含んだ海水をいい、装置本体18において硫黄分を吸収した海水の流下液のことをいう。
【0028】
また、装置本体18内に供給された排ガス11は装置本体18の塔頂部23に至るころには、排ガス11中の硫黄分は海水12中に吸収されるため、除去され、塔頂部23からはほとんど亜硫酸イオンを含まない浄化された浄化ガス25が装置本体18の塔頂部23から外部に排出されている。
【0029】
また、本実施例に係る排煙脱硫装置10Aにおいては、貯留部15内に、活性炭として活性炭素繊維(ACF)からなるACF層16で形成されたACF槽17を浸漬させている。また、ACF槽17は、図2に示すように、ACF槽17を構成するACF層16が、平板部活性炭素繊維シート(平板部ACFシート)16aと波板状活性炭素繊維シート(波板状ACFシート)16bとを接合してその断面が例えば三角形状の通路16cに構成されている。なお、本実施例では、通路16cの断面を三角形状としているが、これに限定されるものではなく、四角形状等としてもよい。
【0030】
ACFに硫黄分吸収液14中の亜硫酸イオンを吸着させ、ACFの触媒作用を利用することで、pHが3.0以上、3.5以下の酸化条件でも硫黄分吸収液14中に含まれる酸素により亜硫酸イオンを酸化し、これを装置本体18内に供給された海水12と反応して、硫酸(H2SO4)とすることができる。よって、塔底部15において硫黄分吸収液14中の亜硫酸イオンがACF槽17を形成するACF層16の表面のACFと接触し、吸着することで、硫黄分吸収液14中の亜硫酸イオンの酸化を促進し、亜硫酸イオンを効率良く処理することができる。
【0031】
また、硫黄分吸収液14中の亜硫酸イオンを酸化処理し、硫酸(H2SO4)とした後、海水排出ライン28より装置本体18の外部に排出する。
【0032】
また、本実施例に係る第1の排煙脱硫吸収装置10Aにおいては、装置本体18の塔頂部23側より散水ノズル24により海水12を装置本体18内に供給するようにしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、海水12を装置本体18内で塔頂部23側に向かって噴流させ、流下した海水12と塔底部側より供給される排ガス11とを向流接触させるようにしてもよい。
【0033】
このように、本実施例に係る第1の排煙脱硫吸収装置10Aは、排ガス11中のSO2を海水12と接触させて洗浄する排煙脱硫吸収装置において、排ガス11と海水12とを接触させる接触部13と、接触部13において排ガス11と海水12とを接触させて排ガス11中のSO2を吸収した硫黄分吸収液14が貯留される貯留部15と、この貯留部15内に配設され、ACF層16で形成されたACF槽17と、を有する。よって、本実施例に係る第1の排煙脱硫吸収装置10Aによれば、塔底部15において脱硫に用いた硫黄分吸収液14中にACF槽17を浸漬しているため、ACFの触媒作用を利用することで、硫黄分吸収液14中の亜硫酸イオンがACF層16の表面のACFと接触し、吸着することにより、硫黄分吸収液14中の亜硫酸イオンの酸化を促進し、亜硫酸イオンを効率良く処理することができる。
【0034】
また、本実施例に係る第1の排煙脱硫吸収装置10Aにおいては、排ガス11中の硫黄分としてSO2の場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、硫黄分としてSO3など他の硫黄酸化物の場合についても同様に用いることができる。
【0035】
本実施例に係る第1の排煙脱硫吸収装置10Aにおいては、燃焼設備から排出される硫黄分を含有する排ガス11を用いて説明したが、本発明に係る排煙脱硫吸収装置はこれに限定されるものではなく、各種産業における工場、発電所、ボイラ等から排出される排ガス中に含まれる硫黄酸化物を含有する排ガス処理に用いることも可能である。
【実施例2】
【0036】
本発明による実施例2に係る排煙脱硫吸収装置について、図面を参照して説明する。
排煙脱硫吸収装置の構成は、本発明の実施例1に係る排煙脱硫吸収装置と同様であるため、上記実施例1と同一構成については同一符号を付して重複した説明は省略する。
図3は、本発明の実施例2に係る排煙脱硫吸収装置の概略図であり、図4は、図3に示す排煙脱硫吸収装置の部分拡大図である。
本実施例に係る第2の排煙脱硫吸収装置10Bは、図1に示す上記実施例1に係る第1の排煙脱硫吸収装置10Aの塔底部15において脱硫に用いた硫黄分吸収液14中に浸漬していたACF槽17に代えて、ACFで成形された活性炭素繊維成形体(ACF成形体)を硫黄分吸収液14中に分散させてなるものである。
【0037】
即ち、図3、4に示すように、本実施例に係る第2の排煙脱硫吸収装置10Bは、排ガス11中のSO2を海水12と接触させて洗浄する排煙脱硫吸収装置において、排ガス11と海水12とを接触させる接触部13と、接触部13において排ガス11と海水12とを接触させて排ガス11中のSO2を吸収した硫黄分吸収液14が貯留される塔底部(貯留部)13と、塔底部15内に分散され、ACFに鉄(Fe)を含有させて成形された金属含有活性炭素繊維成形体(金属含有ACF成形体)26Aと、塔底部15に設けられ、金属含有ACF成形体26Aを回収する電磁石(活性炭素繊維回収部)27Aと、を有するものである。
【0038】
脱硫に用いた硫黄分吸収液14は塔頂部23側に設けられている散水ノズル24から供給されているため、塔底部15に流下してくる硫黄分吸収液14により、塔底部15にある硫黄分吸収液14には自然対流が発生している。このため、金属含有ACF成形体26Aは硫黄分吸収液14中で分散させることができる。
【0039】
塔底部15に貯留されている硫黄分吸収液14に生じる自然対流により硫黄分吸収液14中に金属含有ACF成形体26Aを分散させることができるため、塔底部15において硫黄分吸収液14中の亜硫酸イオンと金属含有ACF成形体26AのACFとの接触効率を向上させることができる。よって、硫黄分吸収液14中の亜硫酸イオンを硫黄分吸収液14中に分散している金属含有ACF成形体26Aと接触させることで、均一に酸化し、海水12と反応してH2SO4とすることができ、硫黄分吸収液14中で効率良く均一に処理することができる。
【0040】
また、図1に示すような実施例1に係る第1の排煙脱硫吸収装置10Aでは、図2に示すように、ACF槽17を構成するACF層16が、平板部ACFシート16aと波板状ACFシート16bとを接合してその断面が三角形状の通路16cに構成されている。このため、通路16c内に硫黄分吸収液14を流通させる際、通路16c内の通気抵抗が各通路16cごとに異なると各通路16cごとに硫黄分吸収液14の通過量が異なり、硫黄分吸収液14を複数の通路16c内を均一に通過させることはできない場合もある。
【0041】
これに対し、本実施例に係る第2の排煙脱硫吸収装置10Bによれば、塔底部15において硫黄分吸収液14中に金属含有ACF成形体26Aを分散させることができるため、硫黄分吸収液14中の亜硫酸イオンと金属含有ACF成形体26Aとの接触効率を向上させることで、硫黄分吸収液14中の亜硫酸イオンを硫黄分吸収液14中に分散している金属含有ACF成形体26Aと均一に酸化することができ、硫黄分吸収液14中で効率良く均一に処理することができる。
【0042】
また、金属含有ACF成形体26Aの製造方法の一例としては、ACF成形体を鉄イオンを含んだ溶液中に浸漬してACF成形体中に鉄イオンを含有させた後、ACF成形体を鉄イオンを含んだ溶液から引上げ、例えば炉内で1000℃以上、1200℃以下の温度で1時間程度、熱処理する。これにより、ACF成形体中に鉄イオンが金属の鉄やカーバイトとなった状態で含有され、金属含有ACF成形体26Aが製造される。また、ACF成形体に鉄以外の金属を含有させる場合には、ACF成形体を鉄イオン以外の金属イオンを含んだ溶液中に浸漬し、鉄イオン以外の金属イオンを含んだ溶液から引上げ、上述と同様に熱処理する。これにより、ACF成形体中に鉄以外の金属が含有された金属含有ACF成形体を製造することができる。ACF成形体への金属の含有方法はこれに限定されるものではなく、他の方法として例えば電子銃を用いてACF成形体に金属を含有させるようにしてもよい。
【0043】
また、金属含有ACF成形体26A中の金属の含有量としては、硫黄分吸収液14中での金属含有ACF成形体26Aの分散性を保つため、海水12より比重が重いのが好ましい。金属含有ACF成形体26A中の金属の含有量としては、例えば0.1wt%以上、20.0wt%以下が好ましく、更には0.1wt%以上、1.5wt%以下が好ましく、更には0.3wt%以上、1.5wt%以下がより好ましく、0.5wt%以上、1.5wt%以下が最も好ましい。これは、金属含有ACF成形体26A中の金属の含有量が0.1wt%より小さいと後述するように、電磁石27Aに金属含有ACF成形体26Aが吸着され難いためである。また、金属含有ACF成形体26A中の金属の含有量が20.0wt%より大きいと、塔底部15の底に金属含有ACF成形体26Aが沈澱し易くなるためである。
【0044】
また、例えば、海水量が100m2/min程度、ガス量が10万m3/h程度、SO2含有量が1000ppm程度、塔内の海水量が326m3程度としたとき、図1に示すような従来より用いられているハニカム形状のACFの場合、3.0〜3.3t程度のACFが必要である。これに対し、金属含有ACF成形体26Aを用いれば、0.8〜1.0t程度のACFで足りる。また、硫黄分吸収液14中でのACFの分散濃度は、従来より用いられているハニカム形状のACFの場合では、3〜5wt%程度である。これに対し、金属含有ACF成形体26Aの場合では、0.2以上、2.0wt%程度である。よって、金属含有ACF成形体26Aを用いれば塔内で用いるACFの量を大幅に減少させることができる。
【0045】
また、塔底部15の内壁15aには、金属含有ACF成形体26Aを回収する電磁石27Aが設けられている。金属含有ACF成形体26AはFeを含有しているため、塔底部15の内壁15aに設けた電磁石27Aに金属含有ACF成形体26Aを吸着させることができる。
【0046】
また、内壁15aに電磁石27Aを上下方向に移動可能な可動部を設け、電磁石27Aを硫黄分吸収液14に付着させないように上方に移動させた後、電磁石27Aを装置本体18外に取り出して電磁石27Aに吸着した金属含有ACF成形体26Aを装置本体18の外に排出するようにしてもよい。
【0047】
また、金属含有ACF成形体26Aの回収方法の一例を図5に示す。図5に示すように、回転可能な電磁石27Bを装置本体18の内壁15aに設け、この電磁石27Bに金属含有ACF成形体26Aを吸着させ、電磁石27Bを回転させることで装置本体18の外に金属含有ACF成形体26Aを排出し、スクレーパー30などを用いて電磁石27Bに吸着された金属含有ACF成形体26Aを取り出すようにしてもよい。また、硫黄分吸収液14が装置本体18の外部に漏れないように、装置本体18の内壁15aに液漏れ防止部材31を設けるようにする。
【0048】
更に、金属含有ACF成形体26Aの回収方法の他の一例を図6に示す。図6に示すように、一対の電磁石27B、24Cと、電磁石27B、24Cに巻装された磁性を有するベルト32とで構成されるコンベア33を用いて、硫黄分吸収液14中の金属含有ACF成形体26Aを回収するようにしてもよい。また、電磁石27B、24Cは電源を入れて電流を流すことで励磁させ、電源を切ることで消磁させるようにする。電磁石27Bを励磁させ、電磁石27Bと接触しているベルト32の表面に金属含有ACF成形体26Aを吸着させる。そして、ベルト32に吸着した金属含有ACF成形体26Aは、電磁石27Bの回転に伴ってベルト32により装置本体18の外部に搬送される。ベルト32により装置本体18の外部に搬送された金属含有ACF成形体26Aは電磁石27Cを消磁させることで、ベルト32から離脱され、金属含有ACF成形体26Aを回収容器34に回収することができる。また、ベルト32にも電源を入れて電流を流し、励磁させるようにしてもよい。これにより金属含有ACF成形体26Aを装置本体18の外部に安定して搬送することができる。
【0049】
電磁石27Aに吸着した金属含有ACF成形体26Aを装置本体18の外で回収し、装置本体18から回収した金属含有ACF成形体26Aを再生し、装置本体18内の硫黄分吸収液14中に再度投入することで再利用することができる。回収した金属含有ACF成形体26Aは、例えば海水、希水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液で洗浄することで再生することができる。また、鉄イオン含有する排水などに浸漬することでも再生することができる。
【0050】
また、本実施例に係る第2の排煙脱硫吸収装置10Bにおいては、ACFに鉄を含有させるようにしているが、電磁石27Aに吸着可能な磁性を有する金属であればよく、例えばニッケル(Ni)、コバルト(Co)など他の金属を用いてもよい。
【0051】
また、本実施例に係る排煙脱硫吸収処理装置10Bにおいては、活性炭素繊維回収部として電磁石を用いているが、本発明はこれに限定されるものではなく、金属が吸着可能な磁性を有する材料であればよく、例えば磁石なども用いることができる。
【0052】
また、本実施例に係る第2の排煙脱硫吸収装置10Bにおいては、ACFの形状をフェルト状の長方形状に成形した金属含有ACF成形体26Aを用いているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図7に示すように、暖簾状のACF成形体にFeなどの金属を含有させた金属含有ACF成形体26Bを用いるようにしてもよい。また、図8に示すように、すだれ状のACF成形体にFeなどの金属を含有させた金属含有ACF成形体26Cを用いるようにしてもよい。また、図9に示すように、すのこ状のACF成形体にFeなどの金属を含有させた金属含有ACF成形体26Dを用いるようにしてもよい。また、この金属含有ACF成形体26Dは塔底部15の硫黄分吸収液14中に棚段状にして複数設けるようにしてもよい。更に、図10に示すように、球状のACF成形体にFeなどの金属を含有させた金属含有ACF成形体26Eを用いるようにしてもよい。図7〜図10に示すような金属含有ACF成形体26B〜23Eを用いることで、硫黄分吸収液14中の亜硫酸イオンとACFとの接触効率を上昇させることができるため、硫黄分吸収液14中の亜硫酸イオンを更に効率良く均一に酸化し、水と反応させてH2SO4とすることができる。
【0053】
また、塔底部15には、金属含有ACF成形体26Aが装置本体18から流出するのを防止するフィルタ34が設けられている。フィルタ34により、塔底部15はACF反応室35と海水排水室36とに区画され、硫黄分吸収液14のみがACF反応室35と海水排水室36との間を流出入可能な構成としている。よって、塔底部15にフィルタ34を設けることで、硫黄分吸収液14を海水排出ライン28より排出する際、硫黄分吸収液14中に分散している金属含有ACF成形体26Aが硫黄分吸収液14に同伴して装置本体18から排出されるのを防ぐことができる。
【0054】
以上、本実施例に係る第2の排煙脱硫吸収装置10Bは、排ガス11中のSO2を海水12と接触させて洗浄する排煙脱硫吸収装置において、排ガス11と海水12とを接触させる接触部13と、排ガス11中のSO2を吸収した硫黄分吸収液14が貯留される塔底部15と、塔底部15内に分散され、ACFにFeを含有させた金属含有ACF成形体26Aと、塔底部15に設けられ、金属含有ACF成形体26Aを回収する電磁石27Aとを有し、金属含有ACF成形体26Aを脱硫に用いた硫黄分吸収液14中に分散させている。よって、本実施例に係る第2の排煙脱硫吸収装置10Bによれば、塔底部15において脱硫に用いた硫黄分吸収液14中に金属含有ACF成形体26Aを分散させているため、塔底部15内で硫黄分吸収液14中の亜硫酸イオンと金属含有ACF成形体26AのACFとの接触効率を向上させることができる。また、金属含有ACF成形体26Aを塔底部15の内壁15aに設けた電磁石27Aに吸着させ、回収することができる。
従って、装置本体18内での硫黄分吸収液14中の亜硫酸イオンの酸化処理を均一とし、効率良く処理することを可能とすると共に、金属含有ACF成形体26Aを回収可能とし、回収した金属含有ACF成形体26Aを再生して再利用を図ることができる。
【実施例3】
【0055】
本発明による実施例3に係る排煙脱硫吸収装置について、図面を参照して説明する。
排煙脱硫吸収装置の構成は、本発明の実施例1、2に係る排煙脱硫吸収装置と同様であるため、上記実施例1、2と同一構成については同一符号を付して重複した説明は省略する。また、本実施例に係る排煙脱硫吸収装置で用いられるACF成形体の構成は、図7〜図10と同様であるため、図面は省略する。
図11に示すように、本実施例に係る第3の排煙脱硫吸収装置10Cは、金属を含有していないACFを用い、図7〜図10に示すような暖簾状、すだれ状、すのこ状、および球状の何れかの形状にACFを成形した活性炭素繊維成形体(ACF成形体)37を装置本体18内の硫黄分吸収液14中に分散させたものである。
【0056】
即ち、図11に示すように、本実施例に係る第3の排煙脱硫吸収装置10Cは、排ガス11中のSO2を海水12と接触させて洗浄する排煙脱硫吸収装置において、排ガス11と海水12とを接触させる接触部13と、接触部13において排ガス11と海水12とを接触させて排ガス11中のSO2を吸収した硫黄分吸収液14が貯留される塔底部(貯留部)15と、塔底部15内に分散され、ACFを成形した活性炭素繊維成形体(ACF成形体)37と、を有するものである。このACF成形体37は、暖簾状(図7参照)、すだれ状(図8参照)、すのこ状(図9参照)、および球状(図10参照)の何れかの形状に成形されている。
【0057】
ACF成形体37の形状を、図7〜図10に示すような暖簾状、すだれ状、すのこ状、および球状の何れかとすることで、ACF中にFeなどの金属を含有させなくとも硫黄分吸収液14中にACF成形体37を浸漬することができると共に、硫黄分吸収液14中からACF成形体37を回収することができる。ACF成形体37の回収方法としては、例えば、硫黄分吸収液14中に予め入れておいた網等を上げることで硫黄分吸収液14中からACF成形体37を回収する方法がある。
【0058】
また、ACF成形体37の形状を、図7〜図10に示すような暖簾状、すだれ状、すのこ状、および球状の何れかとすることで、ACF成形体37の表面積を大きくし、硫黄分吸収液14との接触面積を大きくすることができるため、硫黄分吸収液14中の亜硫酸イオンとACFとの接触効率を上昇させることができる。このため、硫黄分吸収液14中にACF成形体37を浸漬することで、硫黄分吸収液14中の亜硫酸イオンを効率良く均一に酸化し、水と反応させてH2SO4とすることができる。
【実施例4】
【0059】
本発明の実施例4に係る発電システムについて、図面を参照して説明する。
本実施例に係る発電システムに適用される海水脱硫酸化処理装置には、実施例1に係る排煙脱硫吸収装置が用いられる。
図12は、本発明の実施例4に係る発電システムの構成を示す概略図である。なお、実施例1と同様の部材については、同一符号を付してその説明は省略する。
図12に示すように、本実施例に係る発電システム40は、空気予熱器(AH)41で予熱された空気42を用いて図示しないバーナにより燃焼させるボイラ43と、ボイラ43から排出される排ガス11を蒸気発生用の熱源として使用すると共に、発生した蒸気44を用いて発電機45を駆動する蒸気タービン46と、この蒸気タービン46で凝縮した水47を回収し、循環させる復水器48と、ボイラ43から排出される排ガス11の脱硝を行う排煙脱硝装置49と、ボイラ43から排出される排ガス11中の煤塵を除去する集塵装置50と、排ガス11中の硫黄分を海水12を用いて海水脱硫し、海水脱硫することで生成される硫黄分を高濃度に含んだ硫黄分吸収液14の水質回復処理を行う海水脱硫酸化処理装置51と、海水脱硫酸化処理装置51で排ガス11が脱硫された浄化ガス25を外部へ排出する煙突52とからなるものである。
尚、本実施例において、硫黄分吸収液とは、第1の排煙脱硫吸収装置10Aにおいて硫黄分を吸収した海水の流下液のことをいう。
【0060】
外部から供給される空気42は押込みファン53により空気予熱器41に送給され予熱される。例えば油タンクなどから供給される燃料(不図示)と空気予熱器41で予熱された空気42とは前記バーナに供給され、前記燃料がボイラ43で燃焼され蒸気タービン46を駆動するための蒸気44を発生する。
【0061】
ボイラ43内で燃焼して発生する排ガス11は排煙脱硝装置49に送給される。このとき、排ガス11は復水器48から排出される水47と熱交換し、蒸気44を発生する熱源として使用され、発生した蒸気44は蒸気タービン46の発電機45を駆動している。そして、蒸気タービン46で凝縮した水47を再びボイラ43に戻し、循環させるようにしている。
【0062】
そして、ボイラ43から排出され、排煙脱硝装置49に導かれた排ガス11は排煙脱硝装置49内で脱硝され、空気予熱器41で空気42と熱交換した後、集塵装置50に送給され、排ガス11中の煤塵を除去する。そして、集塵装置50で除塵された排ガス11は、誘引ファン54により第1の排煙脱硫吸収処理装置10A内に供給される。この時、排ガス11は熱交換器55で第1の排煙脱硫吸収処理装置10Aで脱硫され排出される浄化ガス25と熱交換された後、第1の排煙脱硫吸収処理装置10Aの装置本体18内に供給される。また、排ガス11は熱交換器55で浄化ガス25と熱交換することなく第1の排煙脱硫吸収処理装置10Aに直接供給するようにしてもよい。
【0063】
本実施例に係る第1の排煙脱硫吸収処理装置10Aを適用した発電システム40においては、海水脱硫酸化処理装置51は、第1の排煙脱硫吸収装置10Aと、海水12を第1の排煙脱硫吸収装置10Aに供給する海水供給ラインL1と、第1の排煙脱硫吸収装置10Aから排出される硫黄分吸収液14中の硫黄分を酸化すると共に脱炭酸し、水質回復を行う酸化槽56と、硫黄分吸収液14を酸化槽56に送給する硫黄分吸収液排出ラインL2と、海水12の一部を第一の希釈用海水12Bとして酸化槽56に供給する第一の希釈用海水供給ラインL3と、希釈用海水の一部を第二の希釈用海水12Cとして酸化槽56で水質回復された水質回復海水57と合流させる第二の希釈用海水供給ラインL4とを有するものである。
【0064】
尚、本実施例において、海水12のうち、第1の排煙脱硫吸収装置10Aで海水脱硫に用いる海水を海水12A、硫黄分吸収液14の希釈用に用いる海水を第一の希釈用海水12B、水質回復海水57の希釈用に用いる海水を第二の希釈用海水12Cとして用いる。
【0065】
第1の排煙脱硫吸収装置10Aでは、排ガス11中に含有されている硫黄分を海58から汲み上げられた海水12を用いて海水脱硫を行っている。また、海水12は海58からポンプ59により、汲み上げられ、復水器48で熱交換して排出される海水12は海水12Aとして海水供給ラインL1を介してポンプ60により第1の排煙脱硫吸収装置10Aに送給される。
【0066】
第1の排煙脱硫吸収装置10Aにおいて排ガス11と海水供給ラインL1を介して供給される海水12Aとを気液接触させて、排ガス11中のSO2を海水12に吸収している。第1の排煙脱硫吸収装置10Aは、上述の実施例1に係る排煙脱硫吸収装置を用いている。第1の排煙脱硫吸収装置10Aにおいて脱硫に用いた硫黄分吸収液14中にACF槽17を浸漬しているため、第1の排煙脱硫吸収装置10A内でACFの触媒作用を利用し、硫黄分吸収液14中の亜硫酸イオンの酸化を促進し、H2SO4とすることができ、硫黄分吸収液14中の亜硫酸イオンを効率良く処理することができる。
【0067】
また、本実施例に係る発電システム40においては、排煙脱硫吸収装置として実施例1に係る第1の排煙脱硫吸収装置10Aを用いているが、本発明はこれに限定されるものではなく、図3に示すような第2の排煙脱硫吸収装置10B、図11に示すような第3の排煙脱硫吸収装置を用いるようにしてもよい。
【0068】
第1の排煙脱硫吸収装置10Aで浄化された排ガス11は、浄化ガス25となって浄化ガス排出ラインL5を介して煙突52より外部へ排出される。
【0069】
また、海58から汲み上げられた海水12は復水器48で熱交換して排出される排海水である海水12の一部を海水12Aとして装置本体18に送給し、海水脱硫に用いているが、海58から汲み上げた海水12を海水供給ラインL1を介して第1の排煙脱硫吸収装置10Aに直接送給し、海水脱硫に用いるようにしてもよい。
【0070】
また、第1の排煙脱硫吸収装置10Aにおいて海水脱硫により海水12Aと排ガス11との気液接触により発生した水素イオン(H+)が海水12A中に遊離するため、pHが下がり、硫黄分吸収液14には多量の硫黄分が吸収される。このとき、硫黄分吸収液14のpHとしては、例えば3〜6程度となる。
【0071】
また、本実施例に係る海水脱硫酸化処理装置51においては、海水供給ラインL1から分岐され、海水12の一部を第一の希釈用海水12Bとして第一の希釈用海水供給ラインL3を介して酸化槽56の上流側に送給する。第一の希釈用海水12Bは、酸化槽56の上流側に設けられている流入板56aの手前に供給する。
【0072】
そして、酸化用空気ブロア61より空気62を散気管63を介して酸化空気用ノズル64から酸化槽56内に供給し、酸化槽56で硫黄分吸収液14中の亜硫酸イオン(HSO3-)を酸化すると共に、脱炭酸反応により二酸化炭素(CO2)を脱離することで、硫黄分吸収液14は水質回復され、水質回復海水57となる。また、装置本体18内で硫黄分吸収液14中の亜硫酸イオンをH2SO4とすることができるため、酸化用空気ブロア61より酸化槽56に供給する空気量を軽減することができる。
【0073】
また、海水供給ラインL1から海水12の一部を第二の希釈用海水12Cとして第二の希釈用海水供給ラインL4を介して酸化槽56の下流側に設けられている流出板55bの後流側に供給する。水質回復海水57に第二の希釈用海水12Cを供給することで、水質回復海水57を更に希釈する。これにより、水質回復海水57のpHを上昇させ、海水排液のpHを海水近くにまで上昇させ、海水排液のpHの排水基準(pH6.0以上)を満たすと共に、CODを低減することができ、水質改質回復溶液57のpH、CODを海水放流可能なレベルとして放出することができる。そして、水質回復海水57は海水排出ラインL6を介して海水廃液として海58に排出される。
【0074】
このように、本実施例に係る海水脱硫酸化処理装置51を適用した発電システム40によれば、第1の排煙脱硫吸収装置10Aにおいて、脱硫に用いた硫黄分吸収液14中にACF槽17を浸漬しているため、第1の排煙脱硫吸収装置10A内でACFの触媒作用を利用し、硫黄分吸収液14中の亜硫酸イオンの酸化を促進することで、亜硫酸イオンを効率良く処理することができる。また、装置本体18内で硫黄分吸収液14中の亜硫酸イオンをH2SO4とすることができるため、酸化槽56に供給する空気量を軽減することができる。
従って、発電システム40において用いられる酸化設備コスト及びランニングコストを抑制することができる。
【0075】
また、本実施例に係る発電システム40は、各種産業における工場、大型、中型火力発電所などの発電所、電気事業用大型ボイラ又は一般産業用ボイラ等から排出される排ガス中に含まれる硫黄酸化物を海水脱硫することで生じる硫黄分吸収溶液中の硫黄分の除去に利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上のように、本発明に係る排煙脱硫吸収装置は、海水脱硫に用いた海水中に含まれる硫黄分を酸化処理するのに有用であり、海水を用いて排ガスを浄化する排煙脱硫吸収装置に用いるのに適している。
【符号の説明】
【0077】
10A〜10C 第1〜第3の排煙脱硫吸収装置
11 排ガス
12 海水
13 接触部
14 硫黄分吸収液
15 塔底部(貯留部)
16 活性炭素繊維層(ACF層)
17 活性炭素繊維槽(ACF槽)
18 装置本体
21 排ガス送給ライン
22 海水供給ライン
23 塔頂部
24 散水ノズル
25 浄化ガス
26A〜26E 金属含有活性炭素繊維成形体(金属含有ACF成形体)
27A〜27C 電磁石(活性炭素繊維回収部)
28 海水排出ライン
30 スクレーパー
31 液漏れ防止部材
32 ベルト
33 コンベア
34 フィルタ
35 ACF反応室
36 海水排水室
37 活性炭素繊維成形体(ACF成形体)
40 発電システム
41 空気予熱器(AH)
42 空気
43 ボイラ
44 蒸気
45 発電機
46 蒸気タービン
47 水
48 復水器
49 排煙脱硝装置
50 集塵装置
51 海水脱硫酸化処理装置
52 煙突
53 押込みファン
54 誘引ファン
55 熱交換器
56 酸化槽
56a 流入板
56b 流出板
57 水質回復海水
58 海
59、60 ポンプ
61 酸化用空気ブロア
62 空気
63 散気管
63 酸化用空気ノズル
L1 海水供給ライン
L2 硫黄分吸収液排出ライン
L3 第一の希釈用海水供給ライン
L4 第二の希釈用海水供給ライン
L5 浄化ガス排出ライン
L6 海水排出ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガス中の硫黄分を海水と接触させて洗浄する排煙脱硫吸収装置において、
前記排ガスと前記海水とを接触させる接触部と、
該接触部において前記排ガスと前記海水とを接触させて前記排ガス中の前記硫黄分を吸収した硫黄分吸収液が貯留される貯留部と、
該貯留部内に配設され、活性炭素繊維からなる活性炭素繊維層で形成された活性炭素繊維槽と、
を有することを特徴とする排煙脱硫吸収装置。
【請求項2】
排ガス中の硫黄分を海水と接触させて洗浄する排煙脱硫吸収装置において、
前記排ガスと前記海水とを接触させる接触部と、
該接触部において前記排ガスと前記海水とを接触させて前記排ガス中の前記硫黄分を吸収した硫黄分吸収液が貯留される貯留部と、
該貯留部内に分散され、活性炭素繊維に金属を含有させて成形された金属含有活性炭素繊維成形体と、
前記貯留部に設けられ、前記金属含有活性炭素繊維成形体を回収する活性炭素繊維回収部と、
を有することを特徴とする排煙脱硫吸収装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記活性炭素繊維回収部が、磁石又は電磁石であることを特徴とする排煙脱硫吸収装置。
【請求項4】
請求項2又は3において、
前記金属が、鉄又はニッケルであることを特徴とする排煙脱硫吸収装置。
【請求項5】
請求項2乃至4の何れか一つにおいて、
前記金属含有活性炭素繊維成形体の形状が、すだれ状、暖簾状、すのこ状又は球状の何れかであることを特徴とする排煙脱硫吸収装置。
【請求項6】
請求項2乃至5の何れか一つにおいて、
前記貯留部内に、前記金属含有活性炭素繊維成形体が装置本体から流出することを防止するフィルタが設けられてなることを特徴とする排煙脱硫吸収装置。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか一つの排煙脱硫吸収装置と、
前記海水を希釈用海水として前記排煙脱硫吸収装置に供給する希釈用海水供給ラインと、
前記排煙脱硫吸収装置から排出される前記硫黄分吸収液中の硫黄分を酸化すると共に脱炭酸し、水質回復を行う酸化槽と、
前記硫黄分吸収液を前記酸化槽に排出する硫黄分吸収液排出ラインと、
前記希釈用海水の一部を、第一の希釈用海水として前記酸化槽に供給し、前記硫黄分吸収液と混合する第一の希釈用海水供給ラインと、
前記希釈用海水の一部を第二の希釈用海水として前記酸化槽で水質回復された水質回復海水と合流させる第二の希釈用海水供給ラインと、
を有することを特徴とする海水脱硫酸化処理装置。
【請求項8】
ボイラと、
前記ボイラから排出される排ガスを蒸気発生用の熱源として使用すると共に、発生した蒸気を用いて発電機を駆動する蒸気タービンと、
前記蒸気タービンで凝縮した水を回収し、循環させる復水器と、
前記ボイラから排出される排ガスの脱硝を行う排煙脱硝装置と、
前記排ガス中の煤塵を除去する集塵装置と、
請求項7の海水脱硫酸化処理装置と、
前記排煙脱硫吸収装置で脱硫された浄化ガスを外部へ排出する煙突と、
からなることを特徴とする発電システム。
【請求項9】
排ガスを海水と接触させて前記排ガス中の硫黄分を前記海水中に吸収させ、前記排ガスを洗浄する排ガス処理方法において、
前記硫黄分を吸収した硫黄分吸収液に、活性炭素繊維からなる活性炭素繊維層で形成された活性炭素繊維槽を浸漬し、
前記活性炭素繊維により、前記硫黄分を吸収した硫黄分吸収液中の前記硫黄分の酸化を促進することを特徴とする排ガス処理方法。
【請求項10】
排ガスを海水と接触させて前記排ガス中の硫黄分を前記海水中に吸収させ、前記排ガスを洗浄する排ガス処理方法において、
前記硫黄分を吸収した硫黄分吸収液に、活性炭素繊維に金属を含有させた金属含有活性炭素繊維成形体を分散させ、前記硫黄分吸収液中の前記硫黄分を前記金属含有活性炭素繊維成形体と接触させて酸化することを特徴とする排ガス処理方法。
【請求項11】
請求項10において、
前記硫黄分吸収液中の前記金属含有活性炭素繊維成形体を活性炭素繊維回収部により回収することを特徴とする排ガス処理方法。
【請求項12】
請求項11において、
前記活性炭素繊維回収部が、磁石又は電磁石であることを特徴とする排ガス処理方法。
【請求項13】
請求項11又は12において、
前記金属が、鉄又はニッケルであることを特徴とする排ガス処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−269248(P2010−269248A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−123443(P2009−123443)
【出願日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】