説明

掘削位置測定具

【課題】掘削孔の形状に関わらず掘削位置を十分に効率的且つ高い精度で測定できる掘削位置測定具を提供すること。
【解決手段】本発明の掘削位置測定具40Aは、先端面10cにビット部材10dを備える掘削機10によって地中に掘削孔80を形成する際に使用されるものであって、所定の長さ及び形状を有し、一端が掘削機10に固定され、他端が坑口80aから外側に突出するように配置される被計測ロッド25と、この被計測ロッド25を収容する容器35と、この容器35中に収容されて被計測ロッド25を浮遊させる液体50と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、先端面にビット部材を備える掘削機によって地中に掘削孔を形成する際に使用される掘削位置測定具に関する。
【背景技術】
【0002】
ボーリング工法や推進工法により地中に掘削孔を形成する工事では、掘削機の位置を適宜計測し、掘削機が所定のコースを掘進しているか否かを把握することが必要な場合がある。例えば、既存の構造物等が輻湊する地中を推進工法によって掘削する場合、近年では推進工法による長距離施工が求められる中、高い施工精度が求められる。即ち、高い計測精度による線形管理が求められる。
【0003】
掘削機の位置を測定する方法としては、掘削孔内に連続的に設けられた複数の測定点を備える計測システムを用いた方法が知られている(特許文献1を参照)。この方法では、各測定点の位置関係から掘削機の位置が算出される。また、掘削孔などの形状を測定する方法として、歪ゲージや角加速度計が組み込まれた計測装置を用いた方法が知られている(特許文献2を参照)。
【特許文献1】特開平8−233575号公報
【特許文献2】特開平10−300413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1のような計測システムを用いた場合、掘削孔内に複数の測定点を設置する作業を要するため作業効率が低下すると共に、計測システム自体が高価であるといった問題がある。一方、上記特許文献2のような歪ゲージなどが組み込まれた計測装置を用いた場合、測定精度が不十分であり、掘削機が所定のコースからはずれたことを十分早期に把握することができない。
【0005】
上記以外の位置測定手段として、レーザー光線の直進性を利用した計測器が挙げられる。しかし、かかる計測器は、掘削孔の径が十分に大きく、作業者が掘削坑内に入って計測を実施できる場合や形成される掘削孔が直線的であり、坑口から照射するレーザー光線が掘削機まで直接到達する場合などに限られ、適用できる掘削孔の形状が限定される。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、掘削孔の形状に関わらず掘削位置を十分に効率的且つ高い精度で測定できる掘削位置測定具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の掘削位置測定具は、先端面にビット部材を備える掘削機によって地中に掘削孔を形成する際に使用されるものであって、所定の長さ及び形状を有し、一端が掘削機に固定され、他端が坑口から外側に突出するように配置される被計測ロッドと、この被計測ロッドを収容する容器と、この容器中に収容されて被計測ロッドを浮遊させる液体と、を備える。
【0008】
本発明の掘削位置測定具が備える被計測ロッドは、一端が掘削機に固定され、他端が坑口から外側に突出するように配置される。このように被計測ロッドは掘削孔に挿入されるものであるため、形成する掘削孔の形状に応じてその長さ及び形状が設計される。この被計測ロッドの坑口から突出する端部の位置を実測し、この実測値と、被計測ロッドの長さ及び形状についての既知の値とに基づき、掘削機側の端部の位置、即ち、掘削機の位置を算出する。したがって、本発明の掘削位置測定具によれば、掘削孔の形状に関わらず、掘削位置を十分効率的に把握できる。
【0009】
この被計測ロッドは、一端のみが掘削機に固定されており、いわゆる片持ち梁の状態で容器内の液体中で浮遊するため、被計測ロッドの自重によるたわみが十分に低減される。したがって、被計測ロッドの坑口側の端部についての実測値と、被計測ロッドの長さ及び形状についての既知の値とに基づき、十分に高い精度で掘削位置を算出できる。
【0010】
更に、本発明の掘削位置測定具によれば、掘削機の掘進方向が何らかの原因で所定の方向からずれた段階で、当該ずれの発生が被計測ロッドの坑口側端部の位置の変化として現れるため、掘削機の軌道修正を早期に実施できる。
【0011】
本発明の掘削位置測定具において、被計測ロッドを収容する容器は、当該被計測ロッドを略全長にわたって包囲する筒状部材であることが好ましい。このような構成を採用することにより、容器内に満たされた液体が漏洩しにくくなるという効果が奏される。したがって、容器が筒状部材からなる掘削位置測定具は、上向き又は下向きに形成される掘削孔などの掘削位置の測定に好適である。
【0012】
本発明の掘削位置測定具において、被計測ロッドは、坑口側の端部に基端が固定された被計測部を有し、この被計測部は、筒状部材に設けられた貫通孔から外側に露出していることが好ましい。このような構成を採用することにより、筒状部材全体を不透明な材料(例えば、ステンレス製の鋼管)で形成した場合でも被計測ロッドの坑口側の端部の位置を容易に計測できる。
【0013】
本発明の掘削位置測定具は、筒状部材の貫通孔の被計測部との隙間を封止する伸縮自在な封止手段を更に備えることが好ましい。このような構成を採用することにより、例えば、上向きに形成される掘削孔に適用した場合でも筒状部材内の液体が貫通孔から漏洩することを防止できる。
【0014】
本発明の掘削位置測定具において、筒状部材の坑口側の端部は、透明な材料で形成されることが好ましい。このような構成を採用することにより、被計測ロッドの坑口側の端部を目視でも監視しやすく、また、被計測ロッドに被計測部を設けない場合でも被計測ロッドの坑口側端部の位置を容易に計測できる。
【0015】
本発明の掘削位置測定具において、被計測ロッドは、見かけ比重が容器内の液体の比重と略等しくなるように調整されたものであることが好ましい。このことにより、被計測ロッドの一部に液体の比重と異なる材質を使用した場合でも、当該被計測ロッドを液体中で浮遊させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、掘削孔の形状に関わらず掘削位置を十分に効率的且つ高い精度で測定できる掘削位置測定具が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ここでは、地下空間内に設けられた坑口から上方に向かいその後下方に向かうように形成される単曲線の掘削孔に本発明に係る掘削位置測定具を適用する場合を例に説明する。
【0018】
(第1実施形態)
図1は、推進工法によって掘削機10が左側の坑口80aから右方向に掘進している状態を示す断面図である。同図に示すように、上に凸の形状を有する掘削孔80が目標到達地点80bに向けて形成される。掘削機10は、地下空間50の上部に設けられた坑口80aから挿入されるパイプP1からの押圧力によって前進する。なお、図1では掘削位置測定具及び推進工法用の装置(例えば、推進架台、泥水循環装置など)の図示は省略する。
【0019】
図2は、掘削機10と、これに固定された本実施形態に係る掘削位置測定具とを示す斜視図である。同図に示す掘削機10は、その前方本体部10aの先端面10cにビット部材10dを備え、後方本体部10bの後方面10eに掘削位置測定具40Aの一端が固定される。掘削機10の前方本体部10aは遠隔操作により先端面10cの角度を変更でき、これにより掘削機10の掘進方向を制御できるようになっている。
【0020】
掘削位置測定具40Aは、所定の長さ及び形状を有する被計測ロッド25と、この被計測ロッド25を略全長にわたって包囲する筒状部材(容器)35とを備える。この筒状部材35内には被計測ロッド25を浮遊させるための水50が収容されている。被計測ロッド25は筒状部材35内に収まるように長さ及び形状が設計され、筒状部材35はパイプP1内に収まるように長さ及び形状が設計されている。
【0021】
被計測ロッド25の掘削機10側の端部をなす掘削機側ロッド25aは、ステンレス製の中空部材からなり、その一端25bが掘削機10の後方面10eに固定されている。一方、被計測ロッド25の坑口80a側の端部をなす坑口側ロッド25cは、ステンレス製の中空部材からなり、その先端付近にY字状の被計測部28の基端が固定されている。
【0022】
掘削機側ロッド25aと坑口側ロッド25cとの間は、複数の接続用ロッド25dが直列に接続されている。各接続用ロッド25dは、ステンレス製の中空部材からなり、両端にフランジ部25eを有している。被計測ロッド25は、掘削孔80の掘進に伴い、接続用ロッド25dを継ぎ足すことによって伸長できるようになっている。このように複数の接続用ロッド25dを直列に接続することによって、掘削孔80と同様の曲率を有する被計測ロッド25が構成される。
【0023】
図3は、2つの接続用ロッド25dの接続部分を示す断面図である。同図に示すように、各接続用ロッド25dの両端は、端板25fによって閉鎖され、内部に空気が密閉されている。接続用ロッド25dは、内部の空気による浮力とその自重とがバランスして水50中で浮遊するように、ステンレス鋼からなる部分の肉厚が調整されている。掘削機側ロッド25a及び坑口側ロッド25cについても接続用ロッド25dと同様に、ステンレス鋼からなる部分の肉厚を調整することにより、全体の比重が調整されている。このように被計測ロッド25は、全体としてその見かけ比重が水50の比重と等しくなるように調整されている。
【0024】
また、図3に示すように、隣り合う接続用ロッド25dのフランジ部25e同士はボルト26及びナット27によって複数の箇所で固定される。複数の箇所でフランジ部25e同士を強固に固定することによって、被計測ロッド25が設計された形状に維持される。掘削機側ロッド25a及び坑口側ロッド25cも隣り合う接続用ロッド25dと接続するためのフランジ部25eを有しており、フランジ部25eを介して隣り合う接続用ロッド25dと接続される。
【0025】
筒状部材35は、図2に示すように、被計測ロッド25を略全長にわたって包囲するように配置される。この筒状部材35は、その内部に水50を収容し、被計測ロッド25を浮遊させる。
【0026】
筒状部材35の掘削機10側の端部をなす掘削機側筒部35aは、ステンレス製の筒状部材からなり、その一端35bが掘削機10の後方面10eに固定されている。一方、筒状部材35の坑口80a側の端部をなす坑口側筒部35cは、ステンレス製の筒状部材からなり、その他端35eは閉鎖されている。この坑口側筒部35cには、被計測ロッド25に基端が固定された被計測部28を外側に露出させるための貫通孔35fが設けられている。
【0027】
掘削機側筒部35aと坑口側筒部35cとの間は、複数の接続用筒部35dが直列に接続されている。各接続用筒部35dは、ステンレス製の筒状部材からなり、両端にそれぞれ雄螺子と雌螺子が設けられている。隣り合う接続用筒部35dの雄螺子と雌螺子とを締め付けることによって、接続用筒部35d同士が接続されると共に、接続部分35gの密閉性が確保される。筒状部材35は、掘削孔80の掘進に伴い、接続用筒部35dを継ぎ足すことによって伸長できるようになっている。このように複数の接続用筒部35dを直列に接続することによって、掘削孔80と同様の曲率を有する筒状部材35が構成される。
【0028】
筒状部材35は、坑口側筒部35cに水の排出及び注入を行うための手動バルブ(図示せず)を備える。また、筒状部材35は、遠隔操作により開閉する通気用バルブ(図示せず)を備え、水の排出及び注入の作業時に必要に応じて開放できるようになっている。
【0029】
被計測部28は、図2に示す通り、Y字状の形状を有する。即ち、被計測部28は、基端が坑口側ロッド25cに固定され、坑口側筒部35cの貫通孔35fに挿入される棒状部材28aと、坑口側筒部35cの外側に露出するV字状部材28bとからなる。V字状部材28bを坑口側筒部35cの外側に露出させることにより、レーザー光などを利用した計測器によって被計測ロッド25の位置が直接計測される。
【0030】
被計測部28の棒状部材28aが挿入される貫通孔35fには、棒状部材28aとの隙間を封止するゴムシール(封止手段)36が設けられ、筒状部材35内の水50が漏洩しないようになっている。また、このゴムシール36は、伸縮自在であるため、筒状部材35内で浮遊する被計測ロッド25の動きが阻害されることを十分に抑制でき、被計測ロッド25は設計された形状に維持される。
【0031】
次に、本実施形態に係る掘削位置測定具40Aの使用方法について説明する。図4は、掘削機10で掘進中の掘削孔80内に設置された掘削位置測定具40Aの坑口80a側の端部を示す斜視図である。なお、説明の便宜のため、図4では推進工法用の坑口装置等の図示は省略する。
【0032】
図4に示すように、坑口80aからはパイプP1の一端P1aが突出しており、このパイプP1から更に掘削位置測定具40Aの坑口1a側の端部(坑口側ロッド25c及び坑口側筒部35c)が突出している。また、坑口側筒部35cの貫通孔35fからは被計測部28が露出している。筒状部材35は、坑口80a周辺に設けられた筒状部材用架台(図示せず)によって保持され、被計測ロッド25が筒状部材25の内面に接触しないように配置される。また、筒状部材35を架台で保持することで、その重量によって掘削機10が影響されないようになっている。一方、被計測ロッド25は、一端25bのみが固定されており、いわゆる片持ち梁の状態で筒状部材35内の水50中で浮遊している。筒状部材35内に収容された水50は、被計測ロッド25が外乱によって振動することを抑制するダンパーとしての役割も果たす。
【0033】
本実施形態においては、被計測部28上の一直線上にない3点の位置を計測する。具体的には、図4にX印で示した計測点S1〜S3と任意の固定点との間の距離を計測する。この実測値から計測点S1〜S3を含む平面の位置を決定する。この平面の位置は被計測ロッド25に一体的に固定された被計測部28の位置に基づき決定されたものであるため、被計測ロッド25の長さ及び形状についての設計値を用いることで、この平面と被計測ロッド25の一端25b側に位置する掘削機10との位置関係を算出できる。
【0034】
このように掘削機10の位置を算出するにあたっては、被計測ロッド25の長さ及び形状についての設計値を使用するが、被計測ロッド25は、その略全長にわたって筒状部材35内に収容され、水50中で浮遊しているため、自重による変形が少なく、設計された形状を十分に維持している。したがって、被計測部28上の計測点S1〜S3についての実測値と、被計測ロッド25の設計値とに基づき、十分に高い精度で掘削位置を算出できる。
【0035】
図5(a)は、掘削機が所定のコースを掘削している状態を示す模式断面図であり、図5(b)は掘削機が所定のコースからはずれた状態を示す模式断面図である。なお、図5(a),(b)では、説明に必要な構成(掘削孔80、掘削機10、被計測ロッド25及び被計測部28)のみを図示する。
【0036】
図5(b)に示す通り、掘削位置測定具40Aによれば、掘削機10の掘進方向が何らかの原因で所定の方向からずれた段階で、当該ずれの発生が被計測部28の位置の大きな変化として現れるため、掘削機10の軌道修正を早期に実施できる。
【0037】
上述の通り、本実施形態に係る掘削位置測定具40Aを使用して掘削位置を適宜測定し、掘削機10の軌道修正を早期に実施することにより、掘削機10の目標到達位置からのずれを十分に抑制することができる。
【0038】
掘削位置測定具40Aの被計測ロッド25及び筒状部材35は、接続用ロッド25d及び接続用筒部35dをそれぞれ継ぎ足すことにより、全長を長くすることができる。新たに継ぎ足される接続用ロッド25dは、坑口側ロッド25cとその隣の接続用ロッド25dとの間に装着される。同様に、新たに継ぎ足される接続用筒部35dは、坑口側筒部35cとその隣の接続用筒部35dとの間に装着される。かかる構成により、掘削孔80の掘削が進んだとしても坑口側ロッド25c及び坑口側筒部35cを坑口80aから常に突出させておくことができる。したがって、掘削位置測定を適宜実施することができる。
【0039】
接続用ロッド25d及び接続用筒部35dを継ぎ足すための作業は以下のように行えばよい。まず、筒状部材35に設けられた手動バルブ及び通気用バルブを開放して筒状部材35内の水50を排出する。その後、坑口側筒部35cを取り外して坑口側ロッド25cとその隣の接続用ロッド25dとの接続部分を露出させる。坑口側ロッド25cを取り外し、接続されていた隣の接続用ロッド25dとの間に新たに継ぎ足す接続用ロッド25dを装着する。被計測ロッド25の継ぎ足し作業が終了したら、新たに継ぎ足す接続用筒部35dと坑口側筒部35cとを順次装着し、筒状部材35の継ぎ足しを行う。その後、筒状部材35内に注水して内部を水で満たし、継ぎ足し作業を終了する。
【0040】
上記の継ぎ足し作業を効率的に行うため、被計測部28のV字状部材28bは棒状部材28aに着脱自在に設けられていることが好ましい。なお、被計測部28の形状は、筒状部材35の外側に露出し、一直線上にない3点以上の計測点を設けることができるものであれば、Y字状に限定されず、例えば、棒状の部材を被計測部28として使用してもよい。また、このような棒状の部材からなる被計測部を坑口側ロッド25cに複数設けてもよい。被計測部28の形態については、坑口80a周辺の坑口装置などの配置に応じて選択すればよい。
【0041】
(第2実施形態)
図6は、本発明に係る掘削位置測定具の第2実施形態を示す部分断面図である。同図に示す掘削位置測定具40Bは、第1実施形態に係る掘削位置測定具40Aと以下の点において相違する。即ち、掘削位置測定具40Bは、掘削位置測定具40Aのステンレス製の坑口側筒部35cに代えて、透明な材料からなる坑口側筒部37cを備える。また、掘削位置測定具40Bは、この坑口側筒部37cの外側に露出する被計測部28を具備しておらず、坑口側ロッド25cの外面に計測点S及び端面に計測用のラインLが刻印されている。本実施形態においては、計測点Sの位置と、ラインLの両端の位置とを測定し、これらの実測値と、被計測ロッド25の設計値とに基づき、第1実施形態と同様にして掘削位置を算出する。
【0042】
本実施形態に係る掘削位置測定具40Bによれば、内部に収容する被計測ロッド25の動きを目視で監視しやすいという利点がある。また、本実施形態においては、坑口側筒部35cから突出する被計測部28を具備しないため、接続用ロッド25d及び接続用筒部35dの継ぎ足し作業を一層効率的に実施でき、また、貫通孔35f及びゴムシール36も不要とすることができる。
【0043】
(第3実施形態)
図7は、本発明に係る掘削位置測定具の第3実施形態を示す部分断面図である。同図に示す掘削位置測定具40Cは、第1実施形態に係る掘削位置測定具40Aと以下の点において相違する。即ち、掘削位置測定具40Cは、被計測部28を具備しておらず、坑口側ロッド25cの外面に計測点S及び坑口側ロッド25cの端面に計測用のラインLが刻印されている。また、掘削位置測定具40Cは、掘削位置測定具40Aの坑口側筒部35cに代えて、開放された先端39eにゴムシール38が設けられたステンレス製の坑口側筒部39cを備え、この先端39eから坑口側ロッド25cが外側に露出している。
【0044】
本実施形態においては、計測点Sの位置と、ラインLの両端の位置とを測定し、これらの実測値と、被計測ロッド25の設計値とに基づき、第1実施形態と同様にして掘削位置を算出する。
【0045】
本実施形態に係る掘削位置測定具40Cによれば、被計測ロッド25の動きを目視で監視しやすいという利点がある。また、本実施形態においては、坑口側筒部35cから突出する被計測部28を具備しないため、接続用ロッド25d及び接続用筒部35dの継ぎ足し作業を一層効率的に実施できる。また、測定対照が外側に露出しているため、レーザー光などを利用した計測器によってそれぞれの位置を直接計測できる。
【0046】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では被計測ロッド25を浮遊させる液体として水を例示したが、被計測ロッド25の動きを拘束しないものであれば、例えば、水よりも粘性の高い液体やゲル状を呈するものを使用してもよい。ここで、「被計測ロッド25の動き拘束しない」とは、被計測ロッド25が何らかの理由で筒状部材35に対して変位した場合でも一定の時間経過後に被計測ロッド25が設計値の形状に概ね復旧できることをいう。
【0047】
また、被計測ロッド25は、十分な剛性を有し且つ見かけ比重が調整されて液体中で浮遊するものであれば、ステンレス製の中空部材からなるものに限定されず、例えば、図8に示すように、H型鋼45と、その上板45aと下板45bの間に挟まれた発泡部材46とによって構成されたものであってもよい。また、被計測ロッド25を構成する部材の材質を適宜選択することによって、被計測ロッドの見かけ比重を調整してもよい。
【0048】
更に、筒状部材35は、パイプP1内に設置可能であり、内部に液体を収容可能なものであれば、ステンレス製の筒状部材からなるものに限定されず、例えば、可撓性を有するパイプを筒状部材35として使用してもよい。更に、筒状部材35の断面形状は、円形に限られず、楕円形や矩形であってもよい。
【0049】
また、接続用ロッド25d等の接続手段は、接続部分におけるずれの発生を十分防止できるものであれば、フランジ部25e、ボルト26及びナット27によるものに限定されない。また、接続用筒部35d等の接続手段は、接続部分の密閉性を十分に確保でき、筒状部材35を所定の形状に構成できるものであれば、雄螺子と雌螺子とによるものに限定されない。
【0050】
更に、上記実施形態においては、推進工法によって形成される単曲線からなる掘削孔に対して本発明を使用する場合を例示したが、本発明は掘削位置を高精度で測定する必要がある掘削孔に適用でき、掘削方法や掘削孔の形状によってその適用が限定されるものではない。本発明は、例えば、シールド工法やボーリング工法によって形成する掘削孔に適用してもよい。また、掘削孔80のような上に凸の形状を有する掘削孔に限られず、下に凸の形状を有する掘削孔、右方向もしくは左方向に湾曲した掘削孔、上方もしくは下方に湾曲した掘削孔あるいは直線的な掘削孔にも適用できる。
【0051】
略水平方向に形成される掘削孔に本発明に係る掘削位置測定具を適用する場合にあっては、ゴムシール36,38は必ずしも設けなくてもよい。また、この場合、被計測ロッド25を収容する容器として、筒状部材35の代わりに上方が開放された容器(例えば、断面形状がU字形の容器)を使用してもよい。かかる形状の容器は、略水平方向に形成された掘削孔であれば、直線的な掘削孔に限られず、右方向及び/又は左方向に湾曲した掘削孔にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】掘削機が坑口から右方向に掘進している状態を示す断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る掘削位置測定具が掘削機に固定された状態を示す斜視図である。
【図3】被計測ロッドの接続部分を示す断面図である。
【図4】図3に図示された掘削位置測定具の坑口側の端部を示す斜視図である。
【図5】(a)は掘削機が所定のコースを掘削している状態を示す模式断面図であり、(b)は掘削機が所定のコースからはずれた状態を示す模式断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る掘削位置測定具の坑口側の端部を示す斜視図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る掘削位置測定具の坑口側の端部を示す斜視図である。
【図8】被計測ロッドの好適な他の形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0053】
10…掘削機、10c…掘削機の先端面、10d…ビット部材、25…被計測ロッド、28…被計測部、35…筒状部材(容器)、35f…貫通孔、36…ゴムシール(封止手段)、40A,40B,40C…掘削位置測定具、50…水(液体)、80…掘削孔、80a…坑口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端面にビット部材を備える掘削機によって地中に掘削孔を形成する際に使用される掘削位置測定具であって、
所定の長さ及び形状を有し、一端が前記掘削機に固定され、他端が坑口から外側に突出するように配置される被計測ロッドと、
前記被計測ロッドを収容する容器と、
前記容器中に収容されて前記被計測ロッドを浮遊させる液体と、
を備えることを特徴とする掘削位置測定具。
【請求項2】
前記容器は、前記被計測ロッドを略全長にわたって包囲する筒状部材であることを特徴とする、請求項1に記載の掘削位置測定具。
【請求項3】
前記被計測ロッドは、前記坑口側の端部に基端が固定された被計測部を有し、前記被計測部は、前記筒状部材に設けられた貫通孔から外側に露出していることを特徴とする、請求項2に記載の掘削位置測定具。
【請求項4】
前記貫通孔の前記被計測部との隙間を封止する伸縮自在な封止手段を更に備えることを特徴とする、請求項3に記載の掘削位置測定具。
【請求項5】
前記筒状部材の前記坑口側の端部は、透明な材料で形成されていることを特徴とする、請求項2〜4のいずれか一項に記載の掘削位置測定具。
【請求項6】
前記被計測ロッドは、見かけ比重が前記液体の比重と略等しくなるように調整されたものであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の掘削位置測定具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−304265(P2008−304265A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−150695(P2007−150695)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】