説明

掘削工具、掘削ビット及びデバイス

【課題】掘削時に発生する掘削ずりを効率良くケーシングパイプの内周側に取り込んで外部へと排出することが可能な掘削工具を提供する
【解決手段】ケーシングトップ11とケーシングパイプ15とロッド60とデバイス40と掘削ビット20とを備えた掘削工具10において、デバイス40には、その外周面に掘削ずりを排出する排出溝46が形成され、掘削ビット20はヘッド部22とスカート部23とを有し、このスカート部23の内周にデバイス40が挿入可能とされ、ヘッド部22には、その先端面に開口するとともに径方向外方に向けて延びるフェイス溝27と、フェイス溝27の外周端に連なり後端側に向けて延びる連絡溝28と、連絡溝28からスカート部23の内周側に開口してデバイス40の排出溝46へと連通する取込孔29とが形成され、連絡溝28の後端には、ケーシングトップ11よりも径方向外側に大きく張り出した遮蔽壁35が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、岩盤等に掘削孔を形成するとともに、掘削孔にケーシングパイプを建て込む、いわゆる二重管ビット式の掘削工具及びこれに用いられる掘削ビット、デバイスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、岩盤等に掘削孔を形成する際には、円筒状のケーシングパイプ内に挿入されたロッドの先端に掘削ビットを装着した二重管ビット式の掘削工具が多用されており、前記ロッドを介して掘削ビットに回転、推力及び打撃力を与えて掘削を行い、こうして掘削された削孔にケーシングパイプを建て込んで削孔の崩落を防ぐようにしている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
詳述すると、軸線方向に推力と打撃力が伝達されるケーシングトップと、このケーシングトップの後端側に接続されるケーシングパイプと、このケーシングパイプの内部に同芯上に配置されていて、軸線方向に推力と打撃力が伝達されるとともに回転力が伝達されるロッドと、該ロッドの先端部に取り付けられたデバイスと、該デバイスの先端に該デバイスに対する回転が拘束されて装着される掘削ビットとを備えており、ロッドによって回転、推力及び打撃をデバイスに与えることで、掘削ビットによって掘削孔を形成するとともに、この掘削孔にケーシングパイプを建て込んでいくものである。
【0004】
このような掘削工具においては、掘削時に発生する掘削ずりを掘削孔の外部へと排出する必要がある。例えば、特許文献1には、掘削ビットの先端面の中心近傍に掘削ずりの取込孔を開口させ、この取込孔を通じて掘削ずりをケーシングパイプの内周側に取り込んで排出するものが開示されている。また、特許文献2には、掘削ビットの先端面に径方向外方に向けて延びるフェイス溝を形成するとともに、掘削ビットの外周面に前記フェイス溝の外周端に連なり、軸線方向後端側に延びる溝部を形成し、この溝部とケーシングトップとの隙間からケーシングパイプの内周側に掘削ずりを取り込んで掘削孔の外部へと排出するものが開示されている。
【特許文献1】特許第3726179号公報
【特許文献2】特許第3903881号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示された掘削工具においては、掘削ずりをケーシングパイプの内周側に取り込む取込孔が掘削ビットの先端面の中心近傍に開口させられているので、掘削工具の回転による遠心力によって径方向外方へと移動する掘削ずりをケーシングパイプの内周側に取り込むことができず、掘削ずりの排出を効率的に行うことができないといった問題があった。
【0006】
また、特許文献2に開示された掘削工具においては、掘削ビットの先端面に径方向外方へ向けて延びるフェイス溝が形成されるとともに掘削ビットの外周面に溝部が形成されているので、掘削工具の回転による遠心力によって径方向外方へと移動する掘削ずりをフェイス溝から外周面の溝部を通じて、ケーシングトップの内周側に取り込むことが可能となる。しかしながら、掘削ずりの一部が掘削孔の内周面とケーシングトップおよびケーシングパイプの間に入り込んでしまうおそれがあった。これにより、掘削抵抗の増加や掘削孔、ケーシングトップ及びケーシングパイプの損傷が発生し、ケーシングパイプを建て込むことができなくなってしまうおそれがあった。
【0007】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、掘削時に発生する掘削ずりを効率良くケーシングパイプの内周側に取り込んで外部へと排出することが可能な掘削工具及びこの掘削工具に用いられる掘削ビット、デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決して、前記目的を達成するために、本発明の掘削工具は、ケーシングパイプの先端に配置される掘削ビットと、前記ケーシングパイプと前記掘削ビットの内部に同芯上に配置されていて、掘削装置から打撃力と推力と回転を受けるデバイスと、を備えた掘削工具において、前記デバイスには、その外周面に掘削時に発生した掘削ずりを排出するための排出溝が前記軸線方向後端側に向けて形成されるとともに、前記軸線に沿って延びる流体供給孔が設けられており、前記掘削ビットは、前記デバイスから回転と推力と打撃を受けるスカート部と、前記デバイスの前記流体供給孔に連通するとともに前記掘削ビットの先端面に開口する流体吐出孔と、前記掘削ビットの先端面に形成され、径方向外方に向けて延びるフェイス溝と、前記掘削ビットの外周面に形成され、前記フェイス溝の外周端に連なり前記軸線方向後端側に向けて延びる連絡溝と、この連絡溝から前記スカート部の内周側に開口して前記デバイスの前記排出溝へと連通する取込孔と、を備えていることを特徴としている。
【0009】
この構成の掘削工具においては、掘削ビットの先端面に径方向外方へと延びるフェイス溝が形成されているので、掘削時に発生する掘削ずりは、掘削工具の回転による遠心力及び流体吐出孔から吐出される流体の流れによってフェイス溝を通じて掘削ビットの外周側へと移動する。掘削ずりは、フェイス溝の外周端に連なり前記軸線方向後端側に向けて延びる連絡溝及び取込孔を介してデバイスの排出溝へと取り込まれ、排出溝より後方のケーシングパイプ内部を通じて掘削孔の外部へと排出される。このようにして、掘削時に発生する掘削ずりを、効率良く掘削孔の外部へと排出することが可能となる。
【0010】
ここで、前記連絡溝の後端に、径方向外側に大きく張り出した遮蔽壁を形成してもよい。
この場合、連絡溝と掘削孔との間の隙間を通過する掘削ずりがケーシングパイプの外周面と掘削孔の内周面との間に入り込むことが防止されることになり、掘削抵抗の増加や掘削孔、ケーシングパイプの損傷を確実に防止することができる。これにより、掘削孔へのケーシングパイプの建て込みを確実に行うことができる。
【0011】
また、前記デバイスに、前記流体供給孔から径方向外方に向かうにしたがい漸次前記軸線方向後端側へと向かって前記排出溝へと開口する流体噴出孔を設けてもよい。
この場合、流体噴出孔から噴出される流体の流れによって、掘削ずりが、連絡溝及び取込孔を介してデバイスの排出溝へと取り込まれ易くなり、掘削ずりの排出をさらに促進させることができる。
【0012】
さらに、前記流体噴出孔を、前記掘削ビットの前記スカート部の内周に位置するようにしてもよい。
この場合、径方向外側に向かうにしたがい漸次前記軸線方向後端側へと向かって前記排出溝へと開口する流体噴出孔が、掘削ビットの先端面の近傍に設けられることになり、この流体噴出孔から噴出される流体の流れによって掘削ずりを効率良く取り込むことが可能となる。
【0013】
さらに、本発明の掘削ビットは、前述の掘削工具に用いられる掘削ビットであって、 前記デバイスから回転と推力と打撃を受けるスカート部と、前記デバイスの前記流体供給孔に連通するとともに前記掘削ビットの先端面に開口する流体吐出孔と、前記掘削ビットの先端面に形成され、径方向外方に向けて延びるフェイス溝と、前記掘削ビットの外周面に形成され、前記フェイス溝の外周端に連なり前記軸線方向後端側に向けて延びる連絡溝と、この連絡溝から前記スカート部の内周側に開口する取込孔と、を備えていることを特徴としている。
【0014】
また、本発明のデバイスは、前述の掘削工具に用いられるデバイスであって、先端に、掘削ビットのスカート部に装入される装入部が形成され、外周面に掘削時に発生した掘削ずりを排出するための排出溝が前記軸線方向後端側に向けて設けられるとともに、前記軸線に沿って延びる流体供給孔と、この流体供給孔から径方向外方に向かうにしたがい漸次前記軸線方向後端側へと向かって前記排出溝へと開口する流体噴出孔が設けられており、 該流体噴出孔が、前記装入部に設けられていることを特徴としている。
【0015】
このような構成とされた本発明の掘削ビット及びデバイスを用いることにより、前述した本発明の掘削工具を構成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、掘削時に発生する掘削ずりを効率良くケーシングパイプの内周側に取り込んで外部へと排出することが可能な掘削工具及びこの掘削工具に用いられる掘削ビット、デバイスを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の実施形態である掘削工具について添付した図面を参照して説明する。
この掘削工具10は、図1に示すように、中心軸Oに沿って延びる概略多段円柱状をなすデバイス40と、このデバイス40の先端側(図1において左側)に装着された掘削ビット20と、デバイス40の後端側に挿入されたロッド60と、掘削ビット20及びデバイス40の外周側に嵌合されたケーシングトップ11と、ケーシングトップ11の後端側に連設されたケーシングパイプ15と、を備えている。
【0018】
ケーシングトップ11は、図1及び図4に示すように概略多段円筒状をなしており、掘削ビット20及びデバイス40の外周側に嵌合される構成とされ、デバイス40から打撃を受けて推進力が与えられるものである。ケーシングトップ11の先端部には、径方向外方へと凹んで環状に延びる係止凹部12が形成されている。また、ケーシングトップ11の後端側部分は、外径及び内径が一段小さくされた接続部13が設けられており、この接続部13にケーシングパイプ15が接続される。
【0019】
ケーシングパイプ15は、円筒状をなし、その外径がケーシングトップ11の先端部の外径と略同一あるいは小さくされ、内径がケーシングトップ11の接続部13の外径と略同一とされている。なお、このケーシングパイプ15は、ケーシングトップ11の接続部13に嵌合された状態で、先端部がケーシングトップ11に溶接されている。
【0020】
掘削ビット20は、図1から図3に示すように、超硬合金等の硬質材料で構成されたチップ21が複数植設され、概略円柱状をなすヘッド部22と、このヘッド部22の後端側に連なり中心軸Oに沿って延びるスカート部23とを備えている。この掘削ビット20には、その後端側に開口して後述するデバイス40が装入される装着孔部24が設けられている。
ヘッド部22は、中心軸Oに対して直交する方向に延在する平面部25と、この平面部25の外周端に連なり、径方向外方に向かうにしたがい漸次後端側へと後退するテーパ面部26と、を備えている。この平面部25及びテーパ面部26にそれぞれ複数のチップ21が植設されている。
【0021】
平面部25には、先端側に開口するとともに中心軸Oの近傍から径方向外方に向けて延びるフェイス溝27が形成されている。なお、本実施形態では、図2及び図4に示すように、3つのフェイス溝27が周方向に120°間隔に設けられている。
【0022】
また、ヘッド部22の外周面には、外周側に向けて開口するとともに中心軸Oと平行に延びる連絡溝28が形成されている。この連絡溝28は、テーパ面部26の部分を切り欠いて形成されており、フェイス溝27の外周端に連設されている。本実施形態では、3つのフェイス溝27の外周端にそれぞれ連なるように3つの連絡溝28が周方向に120°間隔に設けられている。この連絡溝28の後端側には、図1に示すように、ケーシングトップ11の外径よりも大きく径方向外方に向けて張り出した遮蔽壁35が画成されている。
【0023】
この連絡溝28の後端部分には、図1に示すように、後端側に向かうにしたがい漸次径方向内方へと向かうように中心軸Oに対して傾斜する方向に延在する取込孔29が開口されている。なお、本実施形態では、取込孔29は、延在方向に直交する断面が概略長円形状をなしている。また、ヘッド部22には、装着孔部24の底面に開口するとともに中心軸Oに沿って延びる止まり孔30と、この止まり孔30に連通するとともにフェイス溝27の内周端に開口する流体吐出孔31と、が形成されている。
【0024】
スカート部23は、概略円筒状をなしており、その外径はヘッド部22よりも一段小径とされ、前述のケーシングトップ11の係止凹部12が形成された部分の内径と略同一に設定されている。このスカート部23の外周面には環状凹部32が形成されており、この環状凹部32に、弾性変形によって拡縮径可能な止め輪33が嵌め込まれている。また、スカート部23の後端には、装着孔部24の内周側へと突出した係合凸部34が形成されている。この係合凸部34は、前述の取込孔29の後端側部分とは異なる位置に部分的に形成されている。
【0025】
次に、デバイス40について説明する。デバイス40は、図1、図7及び図8に示すように、中心軸Oに沿って延びる概略多段円柱状をなしており、前述した掘削ビット20の装着孔部24に嵌入される装着軸部41と、この装着軸部41の後端側に連なるとともに装着軸部41と同等または一段大径とされた本体部42と、本体部42の後端側に連なるとともに本体部42よりも一段大径とされた大径部43と、大径部43の後端側に連なるとともに大径部43よりも小径のとされた小径部44と、を有している。
【0026】
装着軸部41には、径方向外方に向けて突出する係合部45が設けられている。本実施形態では、図8に示すように、3つの係合部45が中心軸Oを中心として120°等間隔に配設されている。この係合部45は、前述の掘削ビット20の装着孔部24に設けられた係合凸部34と互いに係合可能な構成とされている。つまり、装着軸部41は、係合部45が形成されていない部分の外径が、装着孔部24の係合凸部34が形成された部分の内径より小径とされており、係合部45が形成された部分の外径が、装着孔部24の係合凸部34より大きく、係合凸部34が形成されていない部分の内径より小径とされているのである。また、係合部45の中心軸O方向長さは、装着孔部24の底面から係合凸部34の先端面までの中心軸O方向長さよりも短く設定されている。
【0027】
本体部42は、図1に示すように、その外径が、掘削ビット20の装着孔部24の係合凸部34が形成された部分の内径よりも大きく、前述のケーシングトップ11の接続部13の内径と略同一に設定されている。この本体部42と装着軸部41との間に位置する段差部が掘削ビット20の係合凸部34の後端部分に当接する構成とされている。つまり、掘削ビット20の係合凸部34は、その先端側が装着軸部41に設けられた係合部45に係合し、後端側が本体部42と装着軸部41との間に位置する段差部に係合することになり、デバイス40と掘削ビット20とが中心軸O方向に摺動可能な構成とされている。
【0028】
大径部43は、図1に示すように、その外径が、ケーシングトップ11の接続部13の内径よりも大きく、ケーシングトップ11の後端側に連設されるケーシングパイプ15の内径よりも僅かに小さくなるように設定されている。この大径部43と本体部42との間に位置する段差部がケーシングトップ11の後端に当接し、ロッド60からの打撃と推力をケーシングトップ11へと伝達することが可能な構成とされている。
【0029】
そして、このデバイス40には、その外周面に、中心軸Oに平行に延びるとともに装着軸部41の先端面から大径部43の後端面にまで達する排出溝46が形成されている。本実施形態では、図8に示すように、3つの排出溝46が中心軸Oを中心として120°等間隔に配設されている。
【0030】
また、このデバイス40には、図1に示すように、小径部44の後端面に開口して中心軸Oに沿って延びて装着軸部41の後端にまで達する挿入孔部47が形成されている。この挿入孔部47の内周面には雌ネジが形成されている。また、挿入孔部47の開口端近傍には、挿入孔部47に挿入されるロッド60を係止する係止ピン18を嵌入するためのピン孔48が配設されている。
この挿入孔部47の先端側には、図1に示すように、中心軸Oに沿ってデバイス40の先端面に開口する流体供給孔49が連設されている。また、装着軸部41には、流体供給孔49から径方向外方に向かうにしたがい漸次後端側へと向かうように延びてそれぞれの排出溝46の溝底に開口する流体噴出孔50が設けられている。本実施形態では、図8に示すように、3つの流体噴出孔50が中心軸Oを中心として120°等間隔に配設されている。
【0031】
ロッド60は、図1に示すように、先端側が一段小径とされるとともにデバイス40の挿入孔部47に挿入可能な構成とされた挿入軸部61と、後端側に向かうにしたがい漸次外径が大きくなる肩部62と、この肩部62の後端側に連なり断面正六角形をなすロッド本体63と、を備えている。挿入軸部61の外周面には雄ネジが形成されている。また、ロッド60には、中心軸Oに沿って延びて先端面に開口に開口する流体孔64が形成されている。
【0032】
このロッド60の挿入軸部61が、デバイス40の挿入孔部47に挿入されて係止ピン18によって係止される。このとき、ロッド60の先端面が挿入孔部47の底面に密着させられ、流体孔64と流体供給孔49とが連通されることになる。
【0033】
また、デバイス40の先端に形成された装着軸部41が掘削ビット20の装着孔部24へと嵌入され、係合凸部34と係合部45とが互いに係止するようにしてデバイス40と掘削ビット20が、中心軸O方向に僅かに摺動可能な状態で接続される。このとき、図2及び図3に示すように、掘削ビット20に形成された連絡溝28及び取込孔29とデバイス40に設けられた排出溝46の周方向位置が互いに一致するように、デバイス40と掘削ビット20との周方向の相対位置が決定されている。また、装着軸部41の先端面が装着孔部24の底面に密着させられ、流体供給孔49と止まり孔30とが連通されることになる。
【0034】
また、ケーシングトップ11の先端部分が掘削ビット20のスカート部23に外嵌され、ケーシングトップ11の係止凹部12に、スカート部23の環状凹部32に収容された止め輪33が係合し、ケーシングトップ11が掘削ビット20に対して中心軸O方向に僅かに摺動可能な状態で接続されている。
このようにして、本実施形態である掘削工具10が構成される。
【0035】
この掘削工具10は、掘削機械(図示なし)に備えられた打撃装置及び回転駆動装置によって駆動され、掘削工具10に回転力、打撃力及び推力が伝達され、掘削工具10の先端に形成された掘削ビット20によって岩盤等の被掘削物を破壊して掘削孔を形成するとともに、この掘削孔の内部にケーシングパイプ15を建て込んでいくものである。このとき、前記掘削機械から、ロッド60の流体孔64及びデバイス40の流体供給孔49を通じてエア等の流体が掘削工具10の先端側へと供給される。
【0036】
本実施形態である掘削工具10においては、掘削ビット20のヘッド部22の先端面に径方向外方へと延びるフェイス溝27が形成されているので、掘削時に発生する掘削ずりは、掘削工具10の回転による遠心力及び流体供給孔49に止まり孔30を介して連通した流体吐出孔31から吐出されるエア等の流体の流れにより、フェイス溝27を通じてヘッド部22の外周側へと移動する。
【0037】
ここで、デバイス40には径方向外側に向かうにしたがい漸次中心軸O方向後端側へと向かって排出溝46へと開口する流体噴出孔50が設けられているので、この流体噴出孔50から噴出される流体の流れによって掘削ずりが、フェイス溝27の外周端に連なり後端側に向けて延びる連絡溝28及びこの連絡溝28の後端部に形成された取込孔29を介して、デバイス40の外周面に形成された排出溝46へと取り込まれるとともに後端側へと排出される。また、掘削ずりが、連絡溝28及び取込孔29を介してデバイスの排出溝へと取り込まれ易くなり、掘削ずりの排出をさらに促進させることができる。
【0038】
ヘッド部22の外周面に形成された連絡溝28の後端には、ケーシングトップ11よりも径方向外方まで大きく張り出した遮蔽壁35が形成されているので、連絡溝28と掘削孔の内周面との間の隙間を通過する掘削ずりがケーシングトップ11の外周面と掘削孔の内周面との間に入り込むことがこの遮蔽壁35によって防止され、掘削時の掘削抵抗の増加や掘削孔、ケーシングトップ11及びケーシングパイプ15の損傷を確実に防止することができる。これにより、掘削孔へのケーシングパイプ15の建て込みを確実に行うことができる。
【0039】
また、デバイス40の装着軸部41に流体噴出孔50が形成されており、この装着軸部41が掘削ビット20のスカート部23の内周側に位置させられているので、流体噴出孔50が、掘削ビット20のヘッド部22近傍に配設されることになり、この流体噴出孔50から噴出されるエア等の流体の流れによって、掘削ずりを、効率良くデバイス40の排出溝46に取り込むことが可能となる。よって、掘削ずりをさらに効率良く掘削孔の外部へと排出できる。
【0040】
以上、本発明の実施形態である掘削工具について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である
例えば、排出溝、フェイス溝、連絡溝及び取込孔を3つ周方向に等間隔に設けたものとして説明したが、これに限定されることはなく、これら排出溝、フェイス溝、連絡溝及び取込孔の数や配置は、掘削する掘削孔の大きさ等を考慮して適宜設定することが好ましい。
【0041】
また、掘削ビットとケーシングトップとの係止構造は、本実施形態に限定されることはなく、適宜変更することができる。例えば、図9に示す掘削工具110のように、ケーシングトップ111と掘削ビット120とをネジ171で連結してもよい。
【0042】
また、掘削ビット、デバイスの形状は本実施形態に限定されることはなく、掘削時の状況等に併せて適宜変更しても良い。
また、ロッドの後端側が断面正六角形をなすものとして説明したが、これに限定されることはなく、六角形以外の多角柱状又は円柱状をなしていてもよい。
さらに、ロッドを有する掘削工具に限定されることはなく、例えば図10に示す掘削工具210ように、デバイス240がダウンザホールドリル272に装着される構成とされていてもよい。
【0043】
また、デバイスがケーシングトップに打撃力を伝達するものとして説明したが、例えば図11に示す掘削工具310のように、ケーシングトップ311及びケーシングパイプ315に打撃が伝達されない構成とされていてもよい。
さらに、ケーシングトップを備えたものとして説明したが、例えば図12に示す掘削工具410のように、ケーシングトップを有していない構成であってもよい。また、掘削ビット420のスカート部423の外径をヘッド部422の外径と同一に設定してもよい。
【0044】
また、例えば図13に示す掘削工具510のように、ケーシングトップ511と掘削ビット520とが係合せず、ケーシングトップ511と掘削ビット520との間に空間が形成されていてもよい。
さらに、例えば図14に示す掘削工具610のように、掘削ビット620のスカート部623の後端面とデバイス640との間に空間を形成し、掘削ビット620はデバイス640の先端部分からのみ打撃を受けるように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施形態である掘削工具の側面部分断面図である。
【図2】図1におけるX方向矢視図である。
【図3】図1におけるY−Y断面図である。
【図4】図1に示す掘削工具の掘削ビット、デバイス及びケーシングトップの分解斜視図である。
【図5】図4に示す掘削ビットの側面図である。
【図6】図5におけるZ方向矢視図である。
【図7】図4に示すデバイスの側面図である。
【図8】図7におけるX方向矢視図である。
【図9】本発明の他の実施形態である掘削工具の側面部分断面図である。
【図10】本発明の他の実施形態である掘削工具の側面部分断面図である。
【図11】本発明の他の実施形態である掘削工具の側面部分断面図である。
【図12】本発明の他の実施形態である掘削工具の側面部分断面図である。
【図13】本発明の他の実施形態である掘削工具の側面部分断面図である。
【図14】本発明の他の実施形態である掘削工具の側面部分断面図である。
【符号の説明】
【0046】
10、110、210、310、410、510、610 掘削工具
11、111、211、311、511、611 ケーシングトップ
15、115、215、315、415、515、615 ケーシングパイプ
20、120、220、320、420、520、620 掘削ビット
23、123、223、323、423、523、623 スカート部
27、127、227、327、427、527、627 フェイス溝
28、128、228、328、428、528、628 連絡溝
29、129、229、329、429、529、629 取込孔
31、131、231、331、431、531、631 流体吐出孔
35、135、235、335、435、535、635 遮蔽壁
40、140、240、340、440、540、640 デバイス
41、141、241、341、441、541、641 装着軸部(装入部)
46、146、246、346、446、546、646 排出溝
49、149、249、349、449、549、649 流体供給孔
50、150、250、350、450、550、650 流体噴出孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングパイプの先端に配置される掘削ビットと、前記ケーシングパイプと前記掘削ビットの内部に同芯上に配置されていて、掘削装置から打撃力と推力と回転を受けるデバイスと、を備えた掘削工具において、
前記デバイスには、その外周面に掘削時に発生した掘削ずりを排出するための排出溝が前記軸線方向後端側に向けて形成されるとともに、前記軸線に沿って延びる流体供給孔が設けられており、
前記掘削ビットは、前記デバイスから回転と打撃を受けるスカート部と、前記デバイスの前記流体供給孔に連通するとともに前記掘削ビットの先端面に開口する流体吐出孔と、前記掘削ビットの先端面に形成され、径方向外方に向けて延びるフェイス溝と、前記掘削ビットの外周面に形成され、前記フェイス溝の外周端に連なり前記軸線方向後端側に向けて延びる連絡溝と、この連絡溝から前記スカート部の内周側に開口して前記デバイスの前記排出溝へと連通する取込孔と、を備えていることを特徴とする掘削工具。
【請求項2】
前記連絡溝の後端には、径方向外側に大きく張り出した遮蔽壁が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の掘削工具。
【請求項3】
前記デバイスには、前記流体供給孔から径方向外方に向かうにしたがい漸次前記軸線方向後端側へと向かって前記排出溝へと開口する流体噴出孔が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の掘削工具。
【請求項4】
前記デバイスに設けられた前記流体噴出孔は、前記掘削ビットの前記スカート部の内周側に位置していることを特徴とする請求項3に記載の掘削工具。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の掘削工具に用いられる掘削ビットであって、
前記デバイスから回転と打撃を受けるスカート部と、前記デバイスの前記流体供給孔に連通するとともに前記掘削ビットの先端面に開口する流体吐出孔と、前記掘削ビットの先端面に形成され、径方向外方に向けて延びるフェイス溝と、前記掘削ビットの外周面に形成され、前記フェイス溝の外周端に連なり前記軸線方向後端側に向けて延びる連絡溝と、この連絡溝から前記スカート部の内周側に開口する取込孔と、を備えていることを特徴とする掘削ビット。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の掘削工具に用いられるデバイスであって、
先端に、掘削ビットのスカート部に装入される装入部が形成され、
外周面に掘削時に発生した掘削ずりを排出するための排出溝が前記軸線方向後端側に向けて設けられるとともに、前記軸線に沿って延びる流体供給孔と、この流体供給孔から径方向外方に向かうにしたがい漸次前記軸線方向後端側へと向かって前記排出溝へと開口する流体噴出孔が設けられており、
該流体噴出孔が、前記装入部に設けられていることを特徴とするデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−68190(P2009−68190A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235250(P2007−235250)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】