説明

掘削機のビット交換装置

【課題】交換用ビットを設置している開口部の閉鎖に大きい駆動力も不要で、交換用ビットを移動させることなく交換することができ、作業性を損なうことがない。
【解決手段】カッタヘッドのスポーク前面板21の背面側に、背面フレーム29により作業空間28を形成し、スポーク前面板21に交換用ビット31が挿脱自在な開口部33を形成するとともに、開口部33の背面側に、交換用ビット31を挿脱および固定可能なビットガイド穴38を有するビットガイド体37を設け、スポーク前面板21とビットガイド体37との間に、バルブ口35により開口部33とビットガイド穴38とを連通、閉鎖可能なゲート板34を回動自在に設け、ゲート板34を回動して開口部33を開閉可能なゲート開閉装置36を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削途中で磨耗したビットを新しいビットに交換するために、掘削機のカッタヘッドに設けられるビット交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、カッタヘッドの前面板の後部に、回転支持体をこの前面板に垂直な軸心周りに回動自在に配置し、前面板に形成された開口部に対応して、回転支持体に交換用ビットをスライド自在に収容する取付穴を形成し、交換用ビットを取付穴内に後退させた後に、回転支持体を90度回動させることで、回転支持体前面の閉鎖面部で開口部を閉鎖するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3692267号公報(図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1によれば、回転支持体は、取付穴に後退させた交換用ビットを保持した状態で回動させるため、大きい回転力が必要となり、回動装置が大型化するという問題点があった。
【0005】
本発明は上記問題点を解決して、開口部の閉鎖に大きい駆動力も不要で、交換用ビットを変位させることなく交換することができ、作業性を損なうことがない掘削機のビット交換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、掘削機本体の前部に配置されて地盤を掘削するカッタヘッドの交換用ビットを交換する掘削機のビット交換装置であって、
カッタヘッドの前面板の背面側に、作業員が出入り可能な作業空間を形成する背面フレームを設け、
前記前面板に交換用ビットが挿脱自在な開口部を形成するとともに、当該開口部の背面側に、交換用ビットを挿脱、固定自在なビットガイド穴を有するビットガイド体を設け、
前記前面板と前記ビットガイド体との間に、交換用ビットが挿脱自在なバルブ口を有するゲート板を、前記前面板に垂直な開閉軸心周りに回動自在に配置し、
前記ゲート板を前記開口部およびビットガイド穴を連通する連通位置と、前記開口部を閉鎖する閉鎖位置との間で回動可能なゲート開閉装置を設けたものである。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の構成において、
交換用ビットは、ゲート板の開閉軸心を中心として等角度ピッチで同一円周上に複数個が設けられたものである。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の構成において、
交換用ビットが、カッタヘッドの回転軸心を通る半径方向軸上に2個配置され、
作業空間の前記半径方向軸に垂直な断面形状において、背面側の周方向の幅が前面側より狭く形成されたものである。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の構成において、
ゲート板と前面板との間およびゲート板とビットガイド体の間で、ゲート板の外周部およびバルブ口の周縁部に止水するためのゲート用シール材をそれぞれ設け、
交換用ビットとビットガイド穴との隙間に、止水するためのビット用シール材を設けたものである。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の構成において、
ゲート開閉装置は、ゲート板の外周部で開閉軸心を中心とする周方向に形成された外歯ギヤと、当該外歯ギヤに噛合するピニオンとを有するギヤ式回動機構を具備したものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、交換用ビットを後退させてビットガイド穴内に収容した後、ゲート開閉装置によりゲート板を回動させてバルブ口を開口部から位置ずれさせて、ゲート板により開口部を閉鎖することができる。したがって、従来のように、交換用ビットとビット支持部材とともに回動させるのに比較して、小さな駆動力で開口部を閉鎖することができる。これにより、前面板の背面にゲート板を介してビットガイド体を配置するだけでよく、交換装置の軽量化およびコンパクト化が図れ、作業空間を広く確保することができる。またビット交換時には、地盤の土圧や水圧が作用しているため、交換用ビットの抜き出しに治具が必要となるが、交換用ビットは変位させずに抜き出すので、治具の設置を容易に行うことができる。さらに回動されるゲート板は、前面板とビットガイド体の間に内装されて駆動部分が露出されることがないので、安全性が高い。さらにまた、交換用ビットを変位させることなく引き抜くので、予め交換用ビット後方の作業空間が広く確保できるように、背面フレームを容易に設計することができる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、複数の交換用ビットが設置できるので、コスト的に有利となり、また複数の交換用ビットを密に設置できるので、効果的な掘削が可能となる。
請求項3記載の発明によれば、作業空間の横断面形状を、周方向の幅が前面側(カッタヘッド側)より背面側(掘削機本体側)が狭くなるように形成することにより、掘削土砂の取り込みや攪拌による摩擦抵抗を軽減しているが、このため作業空間の周方向の両側で奥行きが狭くなっている。これに対処するために、半径方向軸上に交換用ビットを配置して、交換用ビットの後方の作業空間を広く確保し、作業性を向上させることができる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、ゲート用シール材により、ゲート板と前面板との隙間およびゲート板とビットガイド体の隙間に浸入する高圧の泥水が浸入するのを効果的に防止することができる。またビット用シール材により、交換用ビットとビットガイド穴との隙間に高圧の泥水が浸入するのを効果的に防止することができる。
【0014】
請求項5記載の発明によれば、ゲート開閉装置に、外歯ギヤとピニオンからなるギヤ式回動機構を設けたので、ゲート板を手動工具または自動工具により容易に回動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)および(b)は本発明に係るシールド掘進機のビット交換装置の実施例1を示す主スポーク部材の横断面図で、(a)はビットの掘削使用状態、(b)はビットの交換退避状態を示す。
【図2】シールド掘進機の全体正面図である。
【図3】シールド掘進機の全体縦断面図である。
【図4】主カッタスポークの部分拡大正面図である。
【図5】主カッタスポークの背面視の部分拡大断面図である。
【図6】ビット交換ユニットの縦断面図である。
【図7】(a)〜(c)は交換用ビットを示し、(a)は底面視の部分断面図、(b)は側面視の部分断面図、(c)は背面図である。
【図8】図6に示すA−A断面図である。
【図9】図6に示すB−B断面図である。
【図10】(a)および(b)は外周ビット交換ユニットを示し、(a)は正面図、(b)は中央縦断面図である。
【図11】(a)および(b)は本発明に係るシールド掘進機のビット交換装置の実施例2を示し、(a)はビット交換ユニットの正面図、(b)は(a)に示すC−C断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る掘削機であるシールド掘進機のビット交換装置の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0017】
図3に示すように、円筒形のシールド本体(掘削機本体)11の前部には、切羽崩壊土圧を保持する圧力隔壁12が設けられ、この圧力隔壁12に旋回軸受13を介して旋回リング体14がシールド軸心(掘削機軸心)O周りに回転自在に支持されている。そして、この旋回リング体14に複数の支持脚15が前方に突設され、これら支持脚15の前端部に円形のカッタヘッド16が支持されている。圧力隔壁12の後部には、カッタヘッド16を回転駆動するカッタ駆動装置17が設けられており、このカッタ駆動装置17は、旋回リング体14の背面に設けられたリングギヤ17aと、このリングギヤ17aに噛み合う複数の駆動ピニオン17bと、前記駆動ピニオン17bをそれぞれ回転駆動する複数の回転駆動装置(油圧式または電動式モータ)17cとで構成されている。さらに圧力隔壁12には、カッタヘッド16により掘削された土砂を、切羽崩壊土圧を保持しつつ後部の大気圧側に排出する排土用スクリュコンベヤ装置18が設けられている。
【0018】
カッタヘッド16は、図2に示すように、シールド軸心O上に配置された中心部材20から半径方向軸ROに沿って延びる複数の主スポーク部材21と、主スポーク部材21の間で半径方向に延びる複数の副スポーク部材22と、シールド軸心Oを中心とする円弧方向に配設されて主スポーク部材21および副スポーク部材22を連結する中間リング部材23および外周リング部材24とを具備し、これら部材21〜24間に土砂取り入れ口25が形成されている。
【0019】
そして主スポーク部材21の前部に、本発明に係る複数のビット交換ユニット(ビット交換装置)30が配列され、各ビット交換ユニット30に2本の交換用ビット31がそれぞれ設けられている。また主スポーク部材21の外周端の周方向両側に外周ビット交換ユニット60が設けられている。さらに中心部材20や副スポーク部材22の前面および側面、主スポーク部材21の側面に複数の固定ビット26がそれぞれ設けられている。
【0020】
図3に示すように、前記中心部材20の背面側に、作業員が出入り可能なマンホール27が設けられており、このマンホール27は圧力隔壁12を貫通して大気圧側から出入り可能に連通されている。また各主スポーク部材21の背面側に、マンホール27から出入り可能な作業空間28を形成する背面フレーム29が設けられており、この背面フレーム29の横断面形状は、図1に示すように、半径方向軸線RLを中心とする周方向の幅が、前面側に比較して背面側が狭く形成されている。すなわち、スポーク前面板(前面板)21aの左右側縁から後方に垂設された左右の側面板29aと、左右の側板29aの後縁部から内側に傾斜して背面側ほど狭くなる傾斜面板29bと、左右の側面傾斜板の後縁部を連結する背面板29cとで略釣鐘形の横断面に形成され、掘削土砂の取り込みや攪拌による摩擦抵抗を軽減するとともに、強度を確保しているが、作業空間28が周方向両側で後方への奥行きが狭くなっている。
【0021】
図2、図4,図5に示すように、主スポーク部材21に半径方向に沿って所定ピッチで配設された複数のビット交換ユニット30には、各ビット交換ユニット30に毎にそれぞれ2本ずつの交換用ビット31が、半径方向軸線RL上に配置されて、交換用ビット31の後方の作業空間28での奥行きおよび周方向の幅を十分確保して、作業性の向上を図っている。
【0022】
(交換用ビット)
交換用ビット31は、図7に示すように、円筒形の基筒部31bと、基筒部31bの前面に取り付けられた基台部31hおよびこの基台部31hから前方に突出された掘削刃31iを有する掘削刃部31aと、基筒部31bの後端部から外周側に突設されて固定用ボルト穴が形成されたフランジ部31cからなり、掘削刃部31aは、基筒部31bに比較して外径が小さく形成されて、後述のビットガイド穴38から出退可能なように構成されている。基筒部31b内には、図1,図6に示すように、交換用ビット31を引出し、押込み可能な押引きジャッキ(治具)55を挿入するための中空部31dが形成され、この中空部31dはフランジ部31cの中心穴31jを介して作業空間28に連通開口されている。またフランジ部31cの対称位置に形成されて掘削使用状態で位置決めする使用位置凹部31eと、基筒部31bの前部に形成されて交換用ビット31が後退された交換退避位置で位置決めする退避位置凹部31fが形成されている。さらにフランジ部31cには、使用位置凹部31eと直交交差する面を平行に切り欠いて形成した回り止め用エッジ31gが設けられている。
【0023】
(ビット交換ユニット)
図4に示すように、ビット交換ユニット30は、主スポーク部材21のスポーク前面板21aに半径方向軸線RLに沿って円形の装着穴部21bが、その一部が重なる連続形状に形成され、これら装着穴部21bの円形部分に左右一対の取付リング片40を介してそれぞれユニット前面板32が嵌合され、固定ボルトにより固定されている。これら各ユニット前面板32の中心にシールド軸心と平行な配置される開閉軸心OCが配置され、この開閉軸心OCを中心とする同一円弧線と半径方向軸線RLの交点に等ピットで2個の開口部33がそれぞれ形成されている。そして図1,図6に示すように、ユニット前面板32の背面側に、取付リング片40を介してゲート板34が開閉軸心OCを中心に回動自在に配置され、ゲート板34には、2つの開口部33を開閉自在な2個のバルブ口35が形成されている。そしてゲート板34を、開口部33とバルブ口35とが合致する連通位置と、開口部33からバルブ口35が位置ずれして閉鎖する閉鎖位置との間で90度往復回動可能なゲート開閉装置36が設けられている。さらにゲート板34の背面側に、開口部33にバルブ口35を介してそれぞれ連通する2つのビットガイド穴38が形成されたビットガイド体37が取り付けられている。
【0024】
(ゲート開閉装置)
前記ゲート開閉装置36は、円形のゲート板34の外周部に開閉軸心OCを中心とする周方向に約90度の範囲で形成された外歯ギヤ36aと、ビットガイド体37と取付リング片40に回転自在に支持されて外歯ギヤ36aに噛合するピニオン36bと、作業空間28側に突出されてピニオン36bが固定された駆動軸36cとを有するギヤ式回動機構を具備している。この駆動軸36cに、ラチェットレンチなどの手動工具や、電動式、油圧式のトルクレンチなどの自動工具を装着して、ゲート板34を回動し開口部33を開閉することができる。
【0025】
また、ゲート板34の背面(または前面)には、ゲート板34の回動限を規制する回動規制具39が設けられている。この回動規制具39は、たとえばゲート板34の背面に開閉軸OCを中心とする円弧溝39aが90度の範囲にわたって形成され、ビットガイド体37の面板部41の内面に円弧溝39aに移動自在に嵌合されるガイドピン39bが突設されて構成され、ゲート板34の回動限を規制することができる。
【0026】
上記ゲート開閉装置36によれば、ゲート板34を外周部で駆動するので、作業空間28との空間的な干渉が少ない。また小さいトルクでゲート板34を回動させることができ、手動工具や自動工具などの簡易な作業機器により、容易に駆動することができる。さらに、ゲート板34は円形に形成されて取付リング片40を介して回転自在に支持されるので、回動中心となる軸部材が不要となり、この分、ゲート板34の外径を小さくすることができ、ビット交換ユニット30のコンパクト化を図ることができる。
【0027】
(ビットガイド体)
ビットガイド体37は、外周部がユニット前面板32に取付リング片40を介して固定ボルトにより固定されゲート板34の背面を覆う面板部41と、この面板部41から後方に突設されてビットガイド穴38が形成された保持筒部42と、保持筒部42間を連結する連結ブロック43とを具備し、連結ブロック43の後端面には、交換用ビット31の回り止め用エッジ31gに係合する固定ブロック44が取り付けられている。また保持筒部42の後端面には、交換用ビット31のフランジ部31cが固定ボルトを介して固定されるボルト穴と、使用位置凹部31eと退避位置凹部31fとに係合離脱自在な位置決め用の係止爪45が対称位置に設けられ、これら係止爪45は、長穴と係脱用ボルト46により使用位置凹部31eと退避位置凹部31fとに係脱、固定自在に取り付けられている。
【0028】
(止水用シール材)
このビット交換ユニット30において、切羽側から高圧泥水が浸入するのを防止するために、交換用ビット31の基台31hと基筒部31の後端部の外周部に、装着溝を介して第1,第2ビット用シール材51,52がそれぞれ装着されている。使用位置では、第1ビット用シール材51により、交換用ビット31と開口部33の隙間をシールし、第2ビット用シール材52により基筒部31とビットガイド穴38との隙間をシールする。また交換退避位置では、第1ビット用シール材51により、交換用ビット31の基台とビットガイド穴38との隙間をシールする。これら第1,第2ビット用シール材51,52は、交換用ビット31の交換時に交換することができ、十分なシール性を確保することができて信頼性が高い。
【0029】
もちろん、第1,第2ビット用シール材51,52をスポーク前面板32および面板部41の摺接面に装着溝を介して取り付けることもできる。
またゲート板34には、その前面と後面でバルブ口35の周縁部に第1ゲート用シール材53が装着溝を介して装着されるとともに、ゲート板34の外周部に第2ゲート用シール材54が装着溝を介して装着されている。前面の第1,第2ゲート用シール材53,54により、ゲート板34とスポーク前面板32と隙間に泥水が浸入するのを防止し、後面の第1,第2ゲート用シール材53,54により、ゲート板34と面板部41と隙間に泥水が浸入するのを防止する。
【0030】
バルブ口35の周囲をシールする第1ゲート用シール材53は、ゲート板34の回動途中で開口部33またはビットガイド穴38を通過するが、掘削作業中および交換作業中は、完全に摺動面に密着しており、損傷の危険性も低くシール性を十分に確保することができる。またゲート板34の外周部をシールする第2ゲート用シール材54は、常時摺動面と密着しており、シール空間の容積変化もなく、損傷などの危険性も低くシール性を十分に確保することができる。
【0031】
もちろん、スポーク前面板32側または面板部41側に装着溝を介して第1,第2ゲート用シール材53,54を装着することもできる。
(押引用ジャッキ)
図1,図6に示す押引用ジャッキ55は、交換用ビット31を引き抜き、押し込みする治具で、背面フレーム29の背面板29cの内面に、半径方向軸ROに沿って蟻溝形断面の固定ガイド部材56が取り付けられている。一方、押引用ジャッキ55のジャッキ本体55aは、交換用ビット31の中空部31dに挿入され、ジャッキ本体55aの外周部に固定された連結リング57がフランジ部31cに連結ボルトを介して連結される。また押引用ジャッキ55のピストンロッド55bと、固定ガイド部材56に位置調整自在に嵌合された係合ブロック58が連結されている。したがって、ジャッキ本体55aを中空部31dに挿入して連結リング57を交換用ビット31に取り付け、固定ガイド部材56に嵌合された係合ブロック58にピストンロッド55bを連結し、押引用ジャッキ55を収縮させることにより交換用ビット31を開口部33、バルブ口35およびビットガイド穴38から引き抜くことができる。
【0032】
上記構成によれば、次のビット交換ユニット30と同様にビット交換作業を行うことができる。
(ビット交換ユニット30のビット交換作業)
トンネル掘削状態では、交換用ビット31は掘削使用位置に固定されている。掘削が進み、交換用ビット31が磨耗すると、目的とする交換用ビット31を有する主スポーク部材21がたとえば水平となる位置で、カッタ駆動装置17を停止する。そして作業員がマンホール27から作業空間28に入り、ビット交換作業を行う。
【0033】
1)目的のビット交換ユニット30の作業空間28内で、両保持筒部42にそれぞれ背面から、押引用ジャッキ55のジャッキ本体55aをそれぞれ交換用ビット31の中心穴31jから中空部31dに挿入し、ジャッキ本体55aを連結リング57を介して交換用ビット31のフランジ部31cに取り付ける。さらに背面フレーム29の背面板29cに取り付けられた固定ガイド部材56に、係合ブロック58をそれぞれ係合し、押引用ジャッキ55のピストンロッド55bを伸展して押引ジャッキ55と係合ブロック58とを連結する。
【0034】
2)フランジ部31cの固定ボルトを外して交換用ビット31とビットガイド体37とを分離するとともに、係脱ボルト46を緩めて係止爪45を使用位置凹部31eから後退させる。
【0035】
3)各押引用ジャッキ55をそれぞれ収縮して交換用ビット31を後退させ、掘削刃部31bの先端がゲート板34のバルブ口35を通過してビットガイド穴38に収容されると、係止爪45を突出させて退避位置凹部31fに係合させ、係脱ボルト46を締め付けて各交換用ビット31をそれぞれ交換退避位置に固定する。
【0036】
4)2本の交換用ビット31を交換退避位置に固定すると、手動工具または自動工具を使用して、ゲート開閉装置36の駆動軸36cを回転駆動し、開閉ギヤ機構を介してゲート板34を90度回動させて、ゲート板34により2つの開口部33をそれぞれ閉鎖する。
【0037】
5)各押引用ジャッキ55のピストンロッド55bと固定ガイド部材56とをそれぞれ分離し、さらに各ジャッキ本体55aの連結リング57を交換用ビット31のフランジ部31cから取り外して、各押引用ジャッキ55を交換用ビット31から分離した後、各押引用ジャッキ55を取り外す。
【0038】
6)係脱ボルト46を緩めて係止爪45を退避位置凹部31fから後退させた後、磨耗した交換用ビット31をビットガイド穴38から取り出し、搬出する。
7)新たな交換用ビット31を搬入してビットガイド穴38に装填し、係止爪45を退避位置凹部31fに係合させて係脱ボルト46を締め付け、各交換用ビット31をそれぞれ交換退避位置に固定する。
【0039】
8)押引用ジャッキ55のジャッキ本体55aを、交換用ビット31の中心穴31jから中空部31dに挿入し、連結リング57を介してジャッキ本体55aを交換用ビット31のフランジ部31cに固定する。さらに固定ガイド部材56に係合された係合ブロック58と押引用ジャッキ55のピストンロッド55bとを連結する。
【0040】
9)手動工具または自動工具を使用して、ゲート開閉装置36を駆動してゲート板34を反対方向に90度回動させ、バルブ口35を2つの開口部33に合致させて開口部33をそれぞれ開放する。
【0041】
10)係脱ボルト46を緩めて係止爪45を退避位置凹部31fから後退させた後、各押引用ジャッキ55をそれぞれ伸展して交換用ビット31をビットガイド穴38に押し込み、掘削刃部31bをバルブ口35から開口部33を介して前方に突出させる。さらに係止爪45を使用位置凹部31eに係合させて位置決めするとともに、固定ボルトによりフランジ部31cと保持筒部42とを連結し、掘削使用位置で新たな交換用ビット31をビットガイド体37に固定する。
【0042】
11)各押引用ジャッキ55の各ジャッキ本体55aの連結リング57を交換用ビット31のフランジ部31cから取り外すとともに、ピストンロッド55bと固定ガイド部材56とをそれぞれ分離し、各押引用ジャッキ55を交換用ビット31から分離して取り外す。
【0043】
(外周ビット交換ユニット)
前記外周ビット交換ユニット60は、図10に示すように、外周掘削するための1本の外周掘削ビット(交換用ビット)61が設けられており、この外周掘削ビット61は、開閉軸心OCに対してθ°前方外方に傾斜して取り付けられている。カッタヘッド16の主スポーク部材21に連結された外周前板に、取付リング62を介して円形の外周ユニット前面板63が取り付けられ、この外周ユニット前面板63の外周寄りに開口部64が形成されている。外周ユニット前面板63の背面には、取付リング62を介して開閉軸心OCを中心に90度の範囲で回動可能なゲート板65が配置され、ゲート板65には、開口部64に合致して連通可能な1個のバルブ口66が形成されている。また外周ユニット前面板63の背面で取付リング62を介して取り付けられたビットガイド体66には、バルブ口66および開口部64に連通するビットガイド穴67が同一の傾斜角θ°で傾斜して形成されている。その他の構成部材は、ゲート開閉装置36ほか、ビット交換ユニット30と同様に構成されているため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0044】
(実施例の効果)
上記実施例によれば、交換用ビット31を後退させてビットガイド体37のビットガイド穴38に収容した後、ゲート開閉装置36によりゲート板34を回動させてバルブ口35を開口部33からずらせて開口部33をゲート板34により閉鎖することができる。
【0045】
したがって、従来のように、交換用ビットをビット支持部材と共に回動させるのに比較して、小さな駆動力で開口部33を閉鎖することができる。またスポーク前面板21aの背面にはゲート板34を介してビットガイド体37を配置するだけでよく、ビット交換ユニット30の軽量化およびコンパクト化が図れ、作業空間28を広く確保することができる。
【0046】
また、ビット交換時には、地盤の土圧や水圧が作用して交換用ビット31の引き抜きや押し込みに押引ジャッキ55が必要となるが、交換用ビット31を変位させることがないので、押引ジャッキ55の設置を容易に行うことができる。
【0047】
さらに、ゲート板34は、スポーク前面板21aとビットガイド体37の面板部41の間に内装され取付リング片40で囲まれて、駆動部分が作業空間28内に露出されることがないので、安全性が高い。
【0048】
また、背面フレーム29により形成される作業空間28の断面形状を、周方向の幅が前面側(カッタヘッド側)より、背面側(掘削機本体側)が狭くなるように形成することで、強度を確保しつつ掘削土砂の取り込みや攪拌による摩擦抵抗を軽減し、さらに半径方向軸RL上に交換用ビット31を配置することで、交換時に交換用ビット31が変位されることがなく、交換作業時に交換用ビット31を引き抜く方向の作業空間28を広く確保することができ、作業性を向上させることができる。
【0049】
さらに、第1,第2ゲート用シール材53,54により、ゲート板34とユニット前面板32との隙間およびゲート板34とビットガイド体37の隙間に、高圧泥水が浸入するのを効果的に防止することができる。さらにまた第1,第2ビット用シール材51,52により、交換用ビット31とビットガイド穴38との隙間に高圧の泥水が浸入するのを効果的に防止することができる。
【0050】
さらにまた、ゲート開閉装置36に、外歯ギヤ36aとピニオン36bからなるギヤ式回動機構を設けたので、ゲート板34を手動工具または自動工具によりゲート板34を回動させて開口部33を容易に開閉することができる。
【実施例2】
【0051】
(ビット交換ユニット)
先の実施例のビット交換ユニット30では、交換用ビット31(開口部33)を半径方向軸RL上に2個配置したが、このビット交換ユニット70では、開閉軸心OCを中心として等間隔ごとに3個の交換用ビット31を設けたものである。すなわち、開閉軸心OCを中心とする同一円弧上に120°ごとに3個の開口部33とバルブ口35、ビットガイド穴38がそれぞれ形成され、3本の交換用ビット31が設けられている。これら交換用ビット31は、前部外周側に向かってα°傾斜して設けられるとともに、ゲート開閉装置36がゲート板34を120°の範囲で往復回動させる以外は、先の実施例と同一であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0052】
上記ビット交換ユニット70によれば、3本の交換用ビット31を設置できるので、コスト的に有利となり、また3本の交換用ビット31を密に設置できるので、効果的な掘削が可能となる。さらに交換用ビット31を傾斜させることにより、作業空間27のスペースを有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0053】
O シールド軸心(掘削機軸心)
RL 半径方向軸
OC 開閉軸心
16 カッタヘッド
17 カッタ駆動装置
18 排土用スクリュコンベヤ装置
20 中心部材
21 主スポーク部材
21a スポーク前面板
21b 装着穴部
27 マンホール
28 作業空間
29 背面フレーム
29a 側面板
29b 傾斜板
29c 背面板
30 ビット交換ユニット
31 交換用ビット
31e 使用位置凹部
31f 退避位置凹部
32 ユニット前面板(前面板)
33 開口部
34 ゲート板
35 バルブ口
36 ゲート開閉装置
37 ビットガイド体
38 ビットガイド穴
39 回動規制具
41 面板部
42 保持筒部
51 第1ビット用シール材
52 第2ビット用シール材
53 第1ゲート用シール材
54 第2ゲート用シール材
55 押引用ジャッキ
56 固定ガイド部材
60 外周ビット交換ユニット
61 外周掘削ビット(交換用ビット)
63 外周ユニット前面板
64 開口部
65 ゲート板
66 バルブ口
67 ビットガイド体
68 ビットガイド穴
70 ビット交換ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削機本体の前部に配置されて地盤を掘削するカッタヘッドの交換用ビットを交換する掘削機のビット交換装置であって、
カッタヘッドの前面板の背面側に、作業員が出入り可能な作業空間を形成する背面フレームを設け、
前記前面板に交換用ビットが挿脱自在な開口部を形成するとともに、当該開口部の背面側に、交換用ビットを挿脱、固定自在なビットガイド穴を有するビットガイド体を設け、
前記前面板と前記ビットガイド体との間に、交換用ビットが挿脱自在なバルブ口を有するゲート板を、前記前面板に垂直な開閉軸心周りに回動自在に配置し、
前記ゲート板を前記開口部およびビットガイド穴を連通する連通位置と、前記開口部を閉鎖する閉鎖位置との間で回動可能なゲート開閉装置を設けた
ことを特徴とする掘削機のビット交換装置。
【請求項2】
交換用ビットは、ゲート板の開閉軸心を中心として等角度ピッチで同一円周上に複数個が設けられた
ことを特徴とする請求項1記載の掘削機のビット交換装置。
【請求項3】
交換用ビットが、カッタヘッドの回転軸心を通る半径方向軸上に2個配置され、
作業空間の前記半径方向軸に垂直な断面形状において、背面側の周方向の幅が前面側より狭く形成された
ことを特徴とする請求項2記載の掘削機のビット交換装置。
【請求項4】
ゲート板と前面板との間およびゲート板とビットガイド体の間で、ゲート板の外周部およびバルブ口の周縁部に止水するためのゲート用シール材をそれぞれ設け、
交換用ビットとビットガイド穴との隙間に、止水するためのビット用シール材を設けた
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の掘削機のビット交換装置。
【請求項5】
ゲート開閉装置は、ゲート板の外周部で開閉軸心を中心とする周方向に形成された外歯ギヤと、当該外歯ギヤに噛合するピニオンとを有するギヤ式回動機構を具備した
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の掘削機のビット交換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−6932(P2011−6932A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−151677(P2009−151677)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】