説明

掘削装置及び掘削方法

【課題】掘削ズリを地上側に効率良く排出すると共に、掘削されたボーリング孔の内壁面と掘削装置の外表面の隙間に掘削ズリが詰まってしまうことを防止することが出来る掘削装置及び掘削方法の提供。
【解決手段】ダウンザホールハンマー(2)の半径方向外方には当該ハンマー(2)を包囲して中空円筒形状のハンマー保護部材(2C)が設けられており、ダウンザホールハンマー(2)にはダウンザホールハンマー駆動流体が流れるダウンザホールハンマー駆動流体用管路(22i)が設けられており、ダウンザホールハンマーの外周面(2o)とハンマー保護部材(2C)の内壁面(2Ci)の間に、掘削ズリ排出促進流体が流過する円環状の掘削ズリ排出促進流体用管路(DAL)が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インナー管に接続されたダウンザホールハンマーと、先端にリングビットを設けた外管を備えた掘削装置に関し、当該掘削装置を用いた掘削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
係る掘削装置或いは掘削方法は、硬い地盤や岩盤、深度が深い(50mを越える)領域の掘削に好適である。
従来技術における係る掘削装置では、インナー管はボーリングマシンに接続されており、当該ボーリングマシンから地中方向へ進行する力(前進力)と回転力がインナー管に伝達される。
インナー管の地中側端部にはダウンザホールハンマーが接続され、ダウンザホールハンマーの先端(地中側端部)にはパイロットビットが接続されている。そして、ダウンザホールハンマーからの打撃力がパイロットビットに伝達される。
ボーリングマシンからの前進力及び回転力と、ダウンザホールハンマーからの打撃力とがパイロットビットに伝達され、地盤或いは岩盤を削孔する。
【0003】
図示しないボーリングマシンからは、外管に対しても、前進力と回転力が伝達される。しかし、ダウンザホールハンマーからの打撃力が外管に伝達されないと、外管の削孔能力が低下してしまう。
そのため、外管先端にリングビットを設け、そのリングビットをパイロットビットに接続して、両者により掘削を行なっている。
【0004】
係る掘削装置では、掘削ズリを効果的に地上側へ排出することができないと、土壌或いは地盤を掘削することができない。
そのため、上述した従来の掘削装置では、掘削された領域の土壌或いは破砕された岩盤(いわゆる「掘削ズリ」)を、掘削されたボーリング孔の内壁面と外管との間の円環状の隙間を介して、地上側に排出していた。
しかし、ボーリング孔の崩落や、掘削現場土壌の陥没等の外乱により、掘削ズリがボーリング孔内壁面と外管との隙間に詰まってしまう(いわゆる「ジャミング」を生じる)場合がある。
その様なジャミングが生じると、掘削ズリを地上側に排出することが困難になり、掘削そのものが出来なくなってしまう。
また、ジャミングを生じると、掘削装置が動かなくなり、インナー管、外管、パイロットビットのみならず、高価なダウンザホールハンマーを地中に残存しなければならない、と言う事態が生じてしまう。
【0005】
その他の従来技術では、三重管からなるロッドの先端にダウンザホールハンマーを設けて掘削する技術が存在する(特許文献1参照)。
しかし、係る従来技術(特許文献1)においても、掘削されたボーリング孔の内壁面と三重管ロッドの間の隙間を介して、掘削ズリを地上側に移動させているので、上述した様なジャミングを防止することが出来ず、掘削が困難になる事態や、機器を地中に残存しなければならない事態を防ぐことが出来ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−88952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、掘削ズリを地上側に効率良く排出すると共に、掘削されたボーリング孔の内壁面と掘削装置の外表面の隙間に掘削ズリが詰まってしまうこと(ジャミング)を防止することが出来る掘削装置及び掘削方法の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の掘削装置は、インナー管(4)に接続され且つ掘削用ビット(パイロットビット1)に接続されたダウンザホールハンマー(2)と、先端にリングビット(1R)を設けた外管(3)を備えた掘削装置(100)において、ダウンザホールハンマー(2)の半径方向外方には当該ハンマー(2)を包囲して中空円筒形状のハンマー保護部材(ハンマーカバーチューブ2C)が設けられており、
ダウンザホールハンマー(2)にはダウンザホールハンマー駆動流体(例えば、水)が流れるダウンザホールハンマー駆動流体用管路(22i:半径方向最内方或いは半径方向中央の管路)が設けられており、
ダウンザホールハンマーの外周面(2o)とハンマー保護部材(2C)の内壁面(2Ci)の間に、掘削ズリ排出促進流体(例えば、空気)が流過する円環状の掘削ズリ排出促進流体用管路(DAL)が形成され、
ハンマー保護部材(2C)の外周面(2Co)と外管(3)の内壁面(3i)の間に、掘削ズリが流過する円環状の掘削ズリ排出用管路(DSL)が形成され、
ハンマー保護部材(2C)には、掘削ズリ排出促進流体用管路(DAL)と掘削ズリ排出用管路(DSL)を連通し、掘削ズリ排出促進流体(例えば、空気)が流過する掘削ズリ排出促進流体用通路(連通路2Cc)が形成されており、
掘削ズリ排出促進流体用通路(2Cc)は、円周方向に等間隔に配置されており、半径方向外方に向かうほど羽口側(地上側)に近づく様に傾斜していることを特徴としている。
【0009】
本発明において、ダウンザホールハンマー(2)の外周面(2o)とハンマー保護部材(2C)の内壁面(2Ci)の間に設けられて掘削ズリ排出促進流体(例えば、空気)が流過する円環状の掘削ズリ排出促進流体用管路(DAL)は、ハンマー継手(5)に設けられた掘削ズリ排出促進流体用管路(JAL、5p)に連通しており、
ハンマー継手(5)に設けられた掘削ズリ排出促進流体用管路(JAL、5p)は、インナー管(4)内に設けられ、ハンマー継手(5)の半径方向中央のダウンザホールハンマー駆動流体用管路(6)の半径方向外方に設けられた第1の領域(円環状の中空部5n或いはJAL)と、第1の領域(5n)の地中側(切羽側)に設けられ、ハンマー継手の地中側端面(5a)へ向かう第2の領域(連通孔5p)を有しており、
第2の領域(5p)がハンマー継手(5)の地中側端面(5a)に連通した箇所は、ハンマー保護部材(2C)に包囲されているのが好ましい。
【0010】
ここで、ハンマー継手(5)に設けられた掘削ズリ排出促進流体用管路(JAL、5p)の第1の領域(JAL或いは5n)は、インナー管(4)の半径方向中央のダウンザホールハンマー駆動用の流体が流れる管路(7)の半径方向外方に形成された円環状断面の掘削ズリ排出促進流体用管路(IAL)に連通しているのが好ましい。
【0011】
また本発明の掘削方法は、インナー管(4)に接続され且つ掘削用ビット(パイロットビット1)に接続されたダウンザホールハンマー(2)と、先端にリングビット(1R)を設けた外管(3)を備えた掘削装置(例えば、請求項1の掘削装置100)を用いた掘削方法において、
ダウンザホールハンマー(2)に設けられた管路(ダウンザホールハンマー駆動流体用管路22i:半径方向最内方或いは半径方向中央の管路)を介してダウンザホールハンマー(2)にダウンザホールハンマー駆動流体(例えば、水)を供給すると共に、
ダウンザホールハンマー(2)の半径方向外方に設けられて当該ハンマーを包囲した中空円筒形状のハンマー保護部材(ハンマーカバーチューブ2C)の内壁面(2Ci)と、ダウンザホールハンマー(2)の外周面(2o)の間に形成された円環状の掘削ズリ排出促進流体用管路(DAL)に、掘削ズリ排出促進流体(例えば、空気)を流過し、
ダウンザホールハンマー駆動流体(例えば、水)を掘削用ビット(1)内の貫通孔(1d、1e)を介して切羽に供給し、掘削ズリと共に、ハンマー保護部材(2C)の外周面(2Co)と外管(3)の内壁面(3i)の間に設けられた円環状の掘削ズリ排出用管路(DSL)を介して、地上側に排出し、
掘削ズリ排出促進流体用管路(DAL)と掘削ズリ排出用管路(DSL)を連通し、円周方向に等間隔に配置されており、半径方向外方に向かうほど羽口側(地上側)に近づく様に傾斜している掘削ズリ排出促進流体用通路(連通路2Cc)を介して、掘削ズリ排出促進流体(例えば、空気)を掘削ズリ排出用管路(DSL)に供給することを特徴としている。
【0012】
本発明において、インナー管(4)の半径方向中央のダウンザホールハンマー駆動用の流体が流れる管路(7)の半径方向外方に形成された円環状断面の掘削ズリ排出促進流体用管路(IAL)と、
当該掘削ズリ排出促進流体用管路(IAL)に連通しているハンマー継手(5)に設けられた掘削ズリ排出促進流体用管路の第1の領域(JAL、5n)と、
第1の領域(JAL、5n)の切羽側(地中側)に設けられ且つハンマー継手(5)の切羽側(地中側)端面(5a)へ連通する第2の領域(連通孔5p)を介して、
掘削ズリ排出促進流体を、ダウンザホールハンマー(2)の外周面(2o)とハンマー保護部材(2C)の内壁面(2Ci)の間に設けられて掘削ズリ排出促進流体(例えば、空気)が流過する円環状の掘削ズリ排出促進流体用管路(DAL)に、流入させるのが好ましい。
【0013】
本発明において、ダウンザホールハンマー駆動流体として水を使用し、掘削ズリ排出促進流体として圧縮空気を用いることが出来る。その場合には、ダウンザホールハンマーは、いわゆる「ウォーターハンマー」である。
ただし、ダウンザホールハンマー駆動流体として圧縮空気を使用し、掘削ズリ排出促進流体として水を用いても良い。その場合には、ダウンザホールハンマーは、いわゆる「エアーハンマー」となる。
【発明の効果】
【0014】
上述する構成を具備する本発明によれば、掘削ズリとダウンザホールハンマー駆動流体の混合流体を、ハンマー保護部材(ハンマーカバーチューブ2C)の外周面(2Co)と外管(3)の内壁面(3i)の間に設けられた円環状の掘削ズリ排出用管路(DSL)を介して、地上側に排出しているので、ボーリング孔の崩落や、掘削現場土壌の陥没等の外乱が生じたとしても、外管(3)の内側に設けられた掘削ズリ排出用管路(DSL)は何等影響を受けない。
そのため、掘削ズリやスラリーが詰まって、排出用管路(DSL)を閉塞する(いわゆる「ジャミング」を生じる)ことが防止される。
【0015】
それに加えて、本発明によれば、掘削ズリ排出促進流体用通路(連通路2Cc)を介して、掘削ズリ排出促進流体(例えば、空気)を掘削ズリ排出用管路(DSL)に供給するので、掘削ズリ排出促進流体(例えば、空気)が地上側に上昇しようとする力が付加される。そのため、掘削ズリ排出用管路(DSL)において、掘削ズリを包含する混合流(スラリー)が地上側に流出しようとする力が増加し、地上側へ良好に排出される。
換言すれば、掘削ズリ排出促進流体(例えば、空気)の作用により、掘削ズリ排出促進流体が掘削ズリを地上側に引っ張り上げて、掘削ズリ排出用管路(DSL)を流れる掘削ズリを包含する混合流(スラリーと圧縮空気の混合流)が地上側に良好に排出されるのである。
そのため本発明によれば、掘削ズリ排出用管路(DSL)を介して掘削ズリが効率的に地上側に排出されると共に、掘削ズリ排出用管路(DSL)が掘削ズリにより閉塞されてしまうことが防止される。
【0016】
さらに本発明によれば、掘削ズリ排出促進流体用通路(2Cc:連通路)は、半径方向外方に向かうほど羽口側(地上側)に近づく様に傾斜しているため、掘削ズリ排出促進流体用通路(2Cc)を介して掘削ズリ排出用管路(DSL)に流入した掘削ズリ排出促進流体(例えば、空気)は、その速度成分として、羽口側(地上側)に向う成分(矢印L:図6参照)を有している。
係る地上側に向う速度成分(L)により、掘削ズリ排出用管路(DSL)に流入した掘削ズリ排出促進流体は、その全量が、掘削ズリ排出用管路(DSL)内を、地上側に向かって流れる。
掘削ズリ排出促進流体(例えば、空気)が地上側に向かって流れることにより、掘削ズリを地上側に引っ張り上げる力が作用する。或いは、切羽に存在する掘削ズリに対して、地上側に吸引する様に負圧が作用する
係る負圧により、切羽に存在する掘削ズリも、地上側へ良好に移動する。
【0017】
ここで、掘削ズリ排出促進流体用通路(2Cc:連通路)を介して掘削ズリ排出用管路(DSL)に流入した掘削ズリ排出促進流体(例えば、空気)が、切羽側(地中側)に向う速度成分を有していると、切羽における掘削ズリと水が地上側に移動するのを妨害してしまう。
しかし、本発明では、掘削ズリ排出用管路(DSL)に流入した掘削ズリ排出促進流体は、その全量が、掘削ズリ排出用管路(DSL)内を地上側に向かって流れるため、切羽側(地中側)に向う速度成分は存在せず、切羽における掘削ズリの排出を妨害することはない。
【0018】
さらに本発明では、ダウンザホールハンマー駆動流体(例えば、水)が流れるダウンザホールハンマー駆動流体用管路(インナー管4の半径方向中央の管路7、ハンマー継手5内に形成された管路6、ダウンザホールハンマー2の半径方向中央部の流路22i)と、掘削ズリ排出促進流体(例えば、空気)が流過する円環状の掘削ズリ排出促進流体用管路(流路AL1、流路AL2、流路AL3、流路IAL、流路JAL、ハンマーカバー2Cとダウンザホールハンマー2の間の流路DAL)と、掘削ズリが流過する円環状の掘削ズリ排出用管路(ハンマーカバー2Cと外管3の間の流路DSL、ハンマー継手5と外管3の間に形成された流路JSL、インナー管4と外管3の間に形成された流路ISL)とを設けており、いわゆる三重管を構成している。
三重管は剛性が高いため、本発明によれば、掘削の際における直進性が向上する。
また、本発明ではダウンザホールハンマー(2)を使用しているので、切羽側の先端で打撃を加えることになり、掘削された孔が曲がり難い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る掘削装置の地中側の構造を示す断面図である。
【図2】実施形態における図1で示すよりも地上側の構造を示す断面図である。
【図3】実施形態に係る掘削装置の地中側端部を示す部分拡大断面図である。
【図4】実施形態に係る掘削装置のハンマー継手を示す部分拡大断面図である。
【図5】実施形態に係る掘削装置の地中側端部でスライム排出用流体がスライムの流れる流路に連通する部分を示す部分拡大断面図である。
【図6】図5で示す流路を流れるスライム排出用流体を成分するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
図1、図2において、全体を符号100で示す掘削装置は、パイロットビット1と、ダウンザホールハンマー2と、外管3と、インナー管4と、ハンマー継手5とを有している。
インナー管4は、マスターカップリング8と、延長ロッド9を介して、クリーニングスウィベル12と、クリーニングアダプター13に連通している。そして、インナー管4は、いわゆる「二重管」として構成されており、半径方向中央の管路7(二重管構造の内管)と、半径方向外側の円環状断面形状の流路IALを有している。インナー管4の半径方向中央における管路7にはダウンザホールハンマー駆動用の流体(例えば、水)が流れ、半径方向外側の流路IALには掘削ズリ排出促進流体(例えば、圧縮空気)が流れる。
外管3の先端(地中側端部)には接続部材J1を介してリングビット1Rが接続されている(図1、図3参照)。
【0021】
図1、図2において、インナー管4の半径方向中央の管路7の地中側(切羽側)はハンマー継手5内に形成された管路6と連通しており、管路7の地上側はクリーニングアダプター13内に形成された管路10に連通している。
図1〜図5はいずれも、図示の左方が地中側(切羽側)を示し、図示の右方が地上側(羽口側)を示している。
図1、図3において、外管3の地中側端部3aは、接続部材J1によってリングビット1Rと接続している。
図2において、外管3の地上側端部に形成された雄ねじ3bは、スウィベル11の雌ねじ11aと螺合している。
【0022】
図3において、パイロットビット1は、概略円柱状のビット本体1aと、ビット本体1aの地中側端部(図3では左端部)に複数設けられた掘削用チップ1cを有している。
パイロットビット1における半径方向中央部には、ダウンザホール駆動用流体(図示の実施形態では、例えば水)が流れる流路1dが形成されている。
流路1dにおける地中側端部近傍から軸心に対して傾斜した流路1eが分岐し、分岐流路1eは、ビット本体1aの地中側端面に開放されている。
【0023】
図1において、ダウンザホールハンマー2は、地中側端部に位置するハンマーヘッド20と、ハンマー本体21と、地上側接続端部22とを有している。
図1及び図3では明示されていないが、ダウンザホールハンマー2はロータリーパーカッションとして構成されている。
ダウンザホールハンマー2の打撃力は、パイロットビット1に伝達される様に構成されている。
図示は省略しているが、ハンマー本体21は、例えば、シリンダと、当該シリンダ内を軸方向に摺動する移動体を備えており、当該シリンダにおける移動体を挟んで、地中側の圧力室と、地上側の圧力室に交互に水の注入・排出を繰り返すことにより、ハンマーヘッド20を介して、パイロットビット1に打撃(衝撃)力を加える様に構成されている。
ダウンザホールハンマー2内には駆動用流体(例えば水)が流れる流路(図示せず)が形成されており、当該流路はパイロットビット1内の流路1dと連通している。
【0024】
図4において、ダウンザホールハンマー2の地上側接続端部22の地上側端部にはフランジ22fが形成され、フランジ22fの端面22eよりも地上側の領域には雄のテーパーねじ22t(例えば、いわゆる「APIねじ」)が形成されている。
ハンマー継手5の地中側端部には雌の管用テーパーねじ5jが形成されており、テーパーねじ5jは、ダウンザホールハンマー2の地上側接続端部22に形成されたテーパーねじ22tと螺合している。
ここで、ダウンザホールハンマー2の地上側接続端部22よりも地上側の領域に形成されたテーパーねじ22tは、インナー管4における地中側端部4aの外周に形成された雄ねじ4d(例えば、いわゆる「ロープねじ」)とは異なっている。そのため、ダウンザホールハンマー2とインナー管4の間にハンマー継手5を介装している。
【0025】
図1、図2及び図4において、インナー管4は、地中側端部4aと、二重管構造の外管を構成する管本体4bと、地上側端部4c(図2参照)とを有している。前述したように、インナー管4の二重管構造の外管を構成する管本体4bと、二重管構造の内管を構成する管路7の間の円環状の空間(管本体4bの内周面4iと管路7の外周7oの間の空間)が、掘削ズリ排出促進用流体である圧縮空気の流路IALを構成している。
図4において、インナー管4における管本体4bと地中側端部4aの間の領域4eは、ハンマー継手5の地上側端部の開口部5iと嵌合される様に形成されており、継手を構成している。
インナー管4において、領域4eと管本体4bとの間の段部(不連続部)4fに、ハンマー継手5の地上側端面5hが当接している。
図2において、インナー管4の地上側端部4cには雌ねじ4gが形成されており、この雌ねじ4gは、マスターカップリング8の地中側端部8bにおける雄ねじ8eと螺合している。
【0026】
図1、図3において、ダウンザホールハンマー2は、円筒状のハンマーカバーチューブ2Cによって覆われている。ダウンザホールハンマー2の半径方向外方をハンマーカバーチューブ2Cで包囲することにより、掘削ズリやスラリーによってダウンザホールハンマー2が損傷するのを防止するためである。
円筒状のハンマーカバーチューブ2Cは、地中側のキャップ20Cと、カバー本体21Cとを有している。
キャップ20Cの地上側端部には円筒部20Caが形成されており、キャップ20Cの地中側端部には円環状の鍔部20Ctが形成されている。
ハンマーカバーチューブ2Cにおけるカバー本体21Cの地中側端部21Cbは、キャップ20Cの円筒部20Caに嵌合しており、溶接、その他の公知の手法により固定されている。
図示はされていないが、キャップ20Cに嵌合部を形成し、当該嵌合部にハンマーカバーチューブ2Cの地中側端部が嵌合する様に構成することも出来る。
【0027】
図4において、ハンマーカバーチューブ2Cにおけるカバー本体21Cの地上側開口部21Ce近傍には、雌のテーパーねじ21Cmが形成されている。
図4において、ハンマー継手5は、地中側端面5aの近傍部分に雄のテーパーねじ5bが形成されており、ハンマーカバーチューブ2Cにおけるカバー本体21Cの雌のテーパーねじ21Cmと螺合して、固定されている。
これに対して、ハンマー継手5の地中側端面5aにハンマーカバーチューブ2Cの取付部材を固定し、当該取付部材にハンマーカバーチューブ2Cの地上側端部嵌合部を形成し、当該嵌合部にハンマーカバーチューブ2Cの地上側端部を嵌合しても良い。
なお、図4では、ハンマー継手5のテーパーねじ5bの地上側に直管部5cが設けられ、直管部5cの地上側に鍔部5eが形成されている。そして、直管部5cと鍔部5eとの間には段部5dが設けられている。段部5dには、ハンマーカバーチューブ2Cにおけるカバー本体21Cの地上側端面21Cnが当接するように構成されている。
【0028】
図4において、ハンマー継手5の半径方向中央には管路6が形成されており、管路6は、インナー管4の半径方向中央の管路7(二重管構造の内管)の地中側(切羽側)に連通している。管路6には、ダウンザホールハンマー駆動用の流体(例えば、水)が流れる。
管路6の半径方向外方には、円環状の空間である中空部5nが形成されている。この中空部5nは流路JALを構成し、流路JALには、掘削ズリ排出促進流体(例えば、圧縮空気)が流過する。
掘削ズリ排出促進流体流路JALを構成する中空部5nは嵌合部5mに隣接しており、嵌合部5mは、管路6の中央拡径部6bと嵌合している。
掘削ズリ排出促進流体流路である中空部5n(第1の領域)は、嵌合部5mが形成された箇所において、連通孔5p(第2の領域)に連通している。連通孔5pは、ハンマー継手5の軸方向(図4の左右方向)へ且つ半径方向外方へ(傾斜して)延在している。そして、連通孔5pは、ダウンザホールハンマー2における環状の管路DALに連通している。環状の管路DALは断面形状が円環状に構成され、ハンマーカバーチューブ2Cの内周面2Ciとダウンザホールハンマー2の外周面2oとの間に構成されている。換言すると、連通孔5pはハンマー継手5の地中側端面5aに連通している。そして、連通孔5pが連通しているハンマー継手5の地中側端面5aは、ハンマーカバーチューブ2Cによって包囲されている。
【0029】
図1、図4において、ハンマー継手5内の管路6は、地中側部分6aと、中央拡径部6bと、地上側部分6cを有している。
地中側部分6aと地上側部分6cの内壁面は面一に構成されている。前述したように、中央拡径部6bは、ハンマー継手5の嵌合部5mに嵌合されている。
管路6における地中側部分6aは、ダウンザホールハンマー2の半径方向中央部に位置している流路22iに連通している。
また、管路6における地上側部分6cの地上側端部近傍の領域は、インナー管4における半径方向中央の管路7(二重管構造の内管)に連通している。
【0030】
図4において、ハンマー継手5の外周面5sと外管3の内周面3iの間に形成される断面円環状の流路ISLには、掘削したズリ(スラリー)及び/又は掘削したズリと圧縮空気の混合流体が流れる。
図4における符号Fwは、ダウンザホールハンマー2を駆動するための駆動流体(例えば、水)の流れを示す。また、符号Faは掘削ズリ排出促進流体である圧縮空気の流れを示し、符号Fzは掘削ズリの流れを示す。ここで、掘削ズリの流れFz内に存在する符号Fsは、掘削したズリと圧縮空気の混合流体の流れを示している。
【0031】
図1、図2及び図4において、インナー管4における半径方向中央の管路7(二重管の内管)は、地中側端部に設けた接続部7aと、管本体7bとを有している。
図4で示すように、管路7における接続部7aの地中側端部(図4の右端部)には、接続孔(嵌合孔)7cが形成されている。
図2で示すように、管路7における管本体7bの地上側端部は、管路10における接続孔(嵌合孔)10cに挿通されている(図2参照)。
【0032】
図2において、管路10は、地中側端部に設けた接続部10aと、管本体10bとを有している。管路10における接続部10aの地中側端部には、接続孔(嵌合孔)10cが開口している。
管路10における管本体10bの地上側端部は、クリーニングアダプター13におけるインナー管接続孔(嵌合孔)13dに連通している。
【0033】
図2において、マスターカップリング8は、中央部8aと、地中側端部8bと、地上側端部8cとを有している。地中側端部8bには雄の管用ねじ8eが形成され、地上側端部8cには雄の管用ねじ8fが形成されている。
地中側端部8bにおける雄の管用ねじ8eには、インナー管4の地上側端部に形成された雌の管用ねじ4gが螺合している。地上側端部8cにおける雄の管用ねじ8fには、延長ロッド9における地中側の雌の管用ねじ9iが螺合している。
マスターカップリング8の半径方向中央部には、中空部8dが形成されている。この中空部8dと管路10の間の断面が円環状の空間により流路AL3が構成されており、流路AL3には、掘削ズリ排出促進用流体である圧縮空気が流過する。
【0034】
図2において、延長ロッド9は、地中側の大径部9aと、地上側の小径部9bとを有し、大径部9aと小径部9bとはテーパー部9cによって接続されている。
延長ロッド9における地中側(図2の左側)には、管用雌ねじ9iが形成された開口部9fが設けられている。延長ロッド9の地上側(図2の右側)において、管路10の外周面と、延長ロッド9の小径部9bの内周面の間には、断面円環状の隙間が形成され、当該隙間により流路9gが構成されている。流路9gは流路AL2を構成しており、流路AL2には掘削ズリ排出促進用流体である圧縮空気が流過する。
延長ロッド9における開口部9fと流路9gとは、テーパー部9hを介して連通している。
図2における符号9dは、延長ロッド9の地中側端面を示し、符号9eは延長ロッド9の地上側端面を示している。
【0035】
図2において、クリーニングスウィベル12の内周12iには、円柱状のクリーニングアダプター13が回動自在に収容されている。明確には図示されていないが、クリーニングスウィベル12の地上側(図2の右側)は、回転機構を構成している。
クリーニングアダプター13は、地中側端部に開口部13aが設けられ、この開口部13aの内周面には雌の管用ねじ13gが形成されている。開口部13aの地上側の領域には延長ロッド嵌合穴13bが形成され、延長ロッド嵌合穴13bには延長ロッド9の小径部9bが嵌合している。
延長ロッド嵌合穴13bの地上側には、圧縮空気流路13cが形成されている。圧縮空気流路13cは、管路10の外周10oの半径方向外方に存在する断面が円環状の流路AL1を構成しており、流路AL1には掘削ズリ排出促進用流体である圧縮空気が流過する。
圧縮空気流路13cの地上側には嵌合穴13dが形成され、嵌合穴13dには管路10の地上側端部が嵌合している。嵌合穴13dの地上側には、ドリル穴13eが形成されている。
【0036】
クリーニングアダプター13において、開口部13a、延長ロッド嵌合穴13b、圧縮空気流路13c、嵌合穴13d、ドリル穴13eは、全て同心に構成されている。
圧縮空気流路13cと嵌合穴13dとの境界において、圧縮空気流路13c側には、複数の圧縮空気供給孔13iが設けられている。複数の圧縮空気供給孔13iは、クリーニングアダプター13の半径方向に延在しており、圧縮空気流路13cからクリーニングアダプター13の外周まで貫通している。
【0037】
クリーニングアダプター13におけるドリル穴13eの地上側端部近傍には、複数の水供給孔13jが設けられている。複数の水供給孔13jは、クリーニングアダプター13の半径方向に延在しており、ドリル穴13eからクリーニングアダプター13の外周まで貫通している。
クリーニングアダプター13における地上側端部には開口部13fが設けられ、その開口部13fには雌ねじ13hが形成されており、必要に応じて、図示しないロッド状の部材が接続可能に構成されている。
【0038】
クリーニングスウィベル12には、クリーニングアダプター13における複数の圧縮空気供給孔13iに対応する位置に、半径方向に延在する複数の圧縮空気供給孔12aが設けられている。複数の圧縮空気供給孔12aは、図では明示しない地上側の圧縮空気供給源SAに連通している。
圧縮空気供給源SAから、圧縮空気供給孔12a、クリーニングアダプター13における圧縮空気供給孔13iを介して、圧縮空気流路13cで構成された流路AL1に掘削ズリ排出促進用流体である圧縮空気が供給される。
【0039】
また、クリーニングスウィベル12には、クリーニングアダプター13における複数の水供給孔13jに対応する位置に、半径方向に延在する複数の水供給孔12wが設けられている。複数の水供給孔12wは、図では明示しない地上側の水供給源SWに連通している。
水供給源SWから、水供給孔12w、クリーニングアダプター13における水供給孔13jを介して、ダウンザホールハンマー駆動流体である水が、ドリル穴13eに供給される。
【0040】
図2において、断面円環状の流路AL1は、延長ロッド9における中空の流路9gで構成される断面円環状の流路AL2と連通している。そして、流路AL2は、マスターカップリング8の中空部8dと管路10の間の断面円環状の流路AL3に連通している。
さらに、流路AL3は、インナー管4の内周面4iと管路7の外周面7oとの間における断面円環状の流路IALと連通している。
そのため、圧縮空気供給源SAから供給される(掘削ズリ排出促進用流体である)圧縮空気は、流路AL1〜AL3を介して、インナー管4の流路IALを流れる。
なお、図2において、排出スウィベル11から排出されたスラリーが点線で示されており、当該スラリーは、地上側の明示しないスラリー処理施設SPに搬送される。
【0041】
図3において、パイロットビット1のビット本体1aの外周近傍には、軸方向(図3の左右方向)に平行に、掘削ズリ排出用のズリ排出孔1gが複数形成されている。
ズリ排出孔1gは、断面円環状の管路DSLと連通している。図3、図5において、管路DSLは断面円環状の空間により構成されており、外管3の内周面3iとハンマーカバーチューブ2Cの外周面2Coの間に形成される。
【0042】
ハンマーカバーチューブ2Cの内周面2Ciとダウンザホールハンマー2の外周面2oとの間には、断面円環状の管路DALが形成され、掘削ズリ排出促進用流体である圧縮空気が管路DALに流過する。
図3、図5において、ハンマーカバーチューブ2Cのキャップ20C近傍には、エア連通路2Ccが複数形成されている。
エア連通路2Ccは、カバー本体21Cの外周側(圧縮空気の出口)が、カバー本体21Cの内周側(圧縮空気の入口)に比較して地上側に位置している様に、地上側(図3、図5の右方)に傾斜して設けられている。
【0043】
図2〜図5を参照して、ダウンザホールハンマー駆動流体である水の流れ(Fw)、掘削ズリ排出促進流体である圧縮空気の流れ(Fa)、掘削ズリの流れ(Fz)、掘削ズリと圧縮空気の混合流体(スラリー)の流れ(Fs)を説明する。
先ず、ダウンザホールハンマー駆動流体である水の流れ(Fw)に関して説明する。
【0044】
図2において、水供給源SWから供給された水(矢印Fw)は、クリーニングスウィベル12の水供給孔12w、クリーニングアダプター12の水供給孔13jを介して、クリーニングアダプター13のドリル穴13eに流入する。
ドリル穴13eに流入した水は、クリーニングアダプター13の嵌合穴13d、管路10を介して、そして図4で示すように、インナー管4の半径方向中央の管路7(二重管構造の内管)、ハンマー継手5内に形成された管路6を経由して、ダウンザホールハンマー2の半径方向中央部の流路22iに流入する。
ダウンザホールハンマー2の半径方向中央部の流路22iに流入した水は、ダウンザホールハンマー2を駆動した後、図3で示すように、パイロットビット1における流路1d、1e(参照)を経由して、パイロットビット1の先端から掘削中の地盤に噴射される。
そして、掘削ズリと共に、掘削ズリ排出用のズリ排出孔1gを流れる。それ以降については、ズリの流れFz及び掘削ズリと圧縮空気の混合流体(スラリー)の流れFsとして、後述する。
【0045】
次に、掘削ズリ排出促進流体である圧縮空気の流れ(Fa)を説明する。
図2において、圧縮空気の供給源Saから圧縮空気(矢印Fa)が、クリーニングスウィベル12の供給孔12aを介して、流路AL1に流入する。
流路AL1に流入した圧縮空気Faは、流路AL2、流路AL3を介して、流路IALを流れる。そして、図4で示すように、掘削ズリ排出促進流体である圧縮空気は、流路IALから、ハンマー継手5内に形成された流路JAL、連通孔5pを経由して、ハンマーカバー2Cとダウンザホールハンマー2の間の流路DAL(図3、図5参照)に流入する。
図3、図5で示すように、流路DALを流れる圧縮空気Faは、ハンマーカバー2Cに形成されたエア連通路2Ccを経由して、ハンマーカバー2C外方の流路DSL(掘削ズリやスラリーが流れる流路:掘削ズリの回収流路)に流入する。
流路DSLに流入した圧縮空気Faは、掘削ズリの地上への回収に寄与する。
【0046】
ここで、連通孔5pは、ハンマー継手5の外表面或いは地中側端部5aに連通しており、ハンマー継手5の外表面或いは端部5aは、ハンマーカバーチューブ2Cによって包囲されている。そのため、連通孔5pを流過する圧縮空気は、ハンマー継手5と外管3の間の円環状流路JSLに漏洩することなく、その全量が、ハンマーカバー2Cとダウンザホールハンマー2の間の流路DALに流入する。
また、ハンマー継手5のテーパーねじ5bとハンマーカバーチューブ2Cのテーパーねじ21Cmとが螺合しており、テーパーねじ5bとテーパーねじ21Cmの螺合箇所は気密状態を維持している。そのため、連通孔5pを流過する圧縮空気が、ハンマー継手5の地中側(図4の左側)端部とハンマーカバーチューブ2Cの地上側(図4の右側)端部との接合箇所から漏出してしまうことも防止される。
【0047】
図3、図5で示すように、ハンマーカバー2Cに形成された連通路2Ccは、半径方向外側に向かうほど、羽口側(地上側:図3、図5では右側)に近づく様に配置されている。そのため、連通路2Ccを介して流路DSLに流入する圧縮空気(掘削ズリ排出促進流体)は、流路DSLに流入した際に、その速度成分として、図6で示すように、羽口側(地上側:図6では右側)に向う成分(図6では矢印Lで示す)を有している。係る羽口側に向う速度成分Lにより、流路DSLに流入した圧縮空気は、その全量が、流路DSL内を、羽口側(地上側)に向かって流れる。
そのため、連通路2Ccを介して、圧縮空気が、流路DSLを流れる掘削ズリ及び水の混合流(スラリー)に合流すると、圧縮空気が地上側に上昇しようとする力、すなわち図6では矢印Lで示す力が、掘削ズリ及び水の混合流(スラリー)に対して付加される。
【0048】
それに加えて、空気が地上側に浮上しようとする力も作用して、いわゆる「エアリフト」により、流路DSLを流れる掘削ズリ及び水の混合流(スラリー)は、地上側に流出しようとする力が増加する。
これにより、流路DSL内のスラリーが地上側へ良好に噴出する。
換言すれば、流路DAL及び連通路2Ccを介して合流する圧縮空気の作用により、圧縮空気が掘削ズリを地上側に引っ張り上げて、流路DSLを流れる掘削ズリ、水、圧縮空気の混合流(スラリーと圧縮空気の混合流)が地上側に良好に排出される。
【0049】
ここで、連通路2Ccを介して流路DSLに流入する圧縮空気が、仮に、切羽側(地中側:図3、図5、図6では左側)に向う速度成分を有している場合には、その様な圧縮空気は切羽側に向かって流れようとするので、切羽における掘削ズリと水が地上側に移動するのを妨害してしまう。そのため、切羽における掘削ズリを地上側に排出することが出来なくなり、掘削そのものが阻害されてしまう。
その様な事態を回避するために、図示の実施形態では、連通路2Ccを介して流路DSLに流入する圧縮空気が、羽口側(地上側:図3、図5、図6では右側)に向う成分(図6では矢印Lで示す)は有するが、切羽側(地中側:図3、図5、図6では左側)に向う速度成分は有さないように構成されている。
具体的には、連通路2Ccは上述した様に、ハンマーカバー2Cの半径方向外側(厚さ方向について外周側)に向かうほど、羽口側(地上側:図3、図5では右側)に近づく様に傾斜して構成されている。
【0050】
掘削によって発生したズリの流れ(Fz)及び掘削ズリと圧縮空気の混合流体(スラリー)の流れ(Fs)について、説明する。
図3において、掘削によって発生したズリFzは、パイロットビット1の先端から噴射された水と共に、掘削ズリ排出用のズリ排出孔1gを流れる。そしてハンマーカバー2Cと外管3の間の流路DSLを、地上側に向かって流れる。
図3、図5で示すように、流路DSLを流れるズリFzは、ハンマー継手5の連通孔5pから流入した圧縮空気Faによって、掘削ズリと圧縮空気の混相状態となり、上述した様に地上側に向う力が増加して、流路DSLを地上側(図3、図5の右側)へ流れる。そして、ハンマー継手5と外管3の間に形成された流路JSL(図1、図4参照)と、インナー管4と外管3の間に形成された流路ISL(図1、図4参照)を経由して、排出スウィベル11(図2参照)から地上側の処理施設PSに搬送される。
【0051】
図示の実施形態によれば、ダウンザホールハンマー2の外表面2oと、ハンマーカバーチューブ2Cの内周面2Ciとで形成される円環状の隙間により、掘削ズリ排出促進流体用管路である流路DALが構成され、ハンマーカバーチューブ2Cの外周面2Coと、外管3の内周面3iとで形成される円環状の隙間により、掘削ズリ排出用管路である流路DSLが構成されている。
そして、流路DALを流れる圧縮空気は、連通路2Ccを介して、流路DSLを流れる掘削ズリ及び水の混合流(スラリー)に合流しており、連通路2Ccを介して圧縮空気が、流路DSLを流れる掘削ズリ及び水の混合流(スラリー)に合流する結果、圧縮空気が地上側に上昇しようとする力が付加される。また、いわゆる「エアリフト」の作用により、流路DSLにおいて、掘削ズリ及び水の混合流(スラリー)が地上側に流出しようとする力が増加し、流路DSL内のスラリーが地上側へ良好に噴出する。
【0052】
換言すれば、流路DAL及び連通路2Ccを介して合流する圧縮空気の作用により、圧縮空気が掘削ズリを地上側に引っ張り上げて、流路DSLを流れる掘削ズリ、水、圧縮空気の混合流(スラリーと圧縮空気の混合流)が地上側に良好に排出される。
そして、流路DAL及び連通路2Ccを介して合流する圧縮空気が、流路DSLを流れる掘削ズリを地上側に引っ張り上げているため、切羽に存在する掘削ズリに対して、地上側に吸引する様に負圧が作用する。
係る負圧によって、切羽に存在する掘削ズリも、流路DSL、流路JSL、流路ISLを介して、羽口側(地上側の処理施設PS)へ良好に移動する。
その結果、掘削ズリの排出効率が向上する。
ここで、掘削ズリ排出促進流体である圧縮空気の供給系統である流路DAL、JAL、5p、IALは、その他の管路から独立しているので、ズリの量や掘削深度により、圧縮空気の供給量を自在に変化させることが容易且つ正確に行うことが出来る。
【0053】
図示の実施形態では、半径方向中央におけるダウンザホールハンマー2の駆動用流体である水が流れる管路(インナー管4の半径方向中央の管路7、ハンマー継手5内に形成された管路6、ダウンザホールハンマー2の半径方向中央部の流路22i)、その外側に形成された掘削ズリ排出促進流体である圧縮空気が流過する円環状の流路(流路AL1、流路AL2、流路AL3、流路IAL、流路JAL、ハンマーカバー2Cとダウンザホールハンマー2の間の流路DAL)と、掘削ズリが流過する円環状流路(ハンマーカバー2Cと外管3の間の流路DSL、ハンマー継手5と外管3の間に形成された流路JSL、インナー管4と外管3の間に形成された流路ISL)を設けており、いわゆる三重管を構成している。
三重管は剛性が高いため、掘削の際における直進性が向上する。
また、図示の実施形態では、ダウンザホールハンマー2を使用しているので、切羽側の先端で打撃を加えることになり、掘削された孔が曲がり難いという利点がある。
【0054】
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではない。
例えば、図示の実施形態では、ダウンザホールハンマー駆動流体として水を使用し、掘削ズリ排出促進流体として圧縮空気を用いる場合について説明している。しかし、これに限定されるものではなく、ダウンザホールハンマー駆動流体として圧縮空気を使用し、掘削ズリ排出促進流体として水を用いる場合においても、図示の実施形態はそのまま適用することが出来る。
【符号の説明】
【0055】
1・・・パイロットビット
2・・・ダウンザホールハンマー
2C・・・ハンマーカバー
3・・・外管
4・・・インナー管
5・・・ハンマー継手
6、7、10・・・ダウンザホールハンマー駆動流体用管路
8・・・マスターカップリング
9・・・延長ロッド
11・・・排出スウィベル
12・・・クリーニングスウィベル
13・・・クリーニングアダプター
IAL、DAL・・・圧縮空気用流路
ISL、DSL・・・掘削ズリ排出用管路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナー管に接続され且つ掘削用ビットに接続されたダウンザホールハンマーと、先端にリングビットを設けた外管を備えた掘削装置において、ダウンザホールハンマーの半径方向外方には当該ハンマーを包囲して中空円筒形状のハンマー保護部材が設けられており、
ダウンザホールハンマーにはダウンザホールハンマー駆動流体が流れるダウンザホールハンマー駆動流体用管路が設けられており、
ダウンザホールハンマーの外周面とハンマー保護部材の内壁面の間に、掘削ズリ排出促進流体が流過する円環状の掘削ズリ排出促進流体用管路が形成され、
ハンマー保護部材の外周面と外管の内壁面の間に、掘削ズリが流過する円環状の掘削ズリ排出用管路が形成され、
ハンマー保護部材には、掘削ズリ排出促進流体用管路と掘削ズリ排出用管路を連通し、掘削ズリ排出促進流体が流過する掘削ズリ排出促進流体用通路が形成されており、
掘削ズリ排出促進流体用通路は、円周方向に等間隔に配置されており、半径方向外方に向かうほど羽口側に近づく様に傾斜していることを特徴とする掘削装置。
【請求項2】
ダウンザホールハンマーの外周面とハンマー保護部材の内壁面の間に設けられて掘削ズリ排出促進流体が流過する円環状の掘削ズリ排出促進流体用管路は、ハンマー継手に設けられた掘削ズリ排出促進流体用管路に連通しており、
ハンマー継手に設けられた掘削ズリ排出促進流体用管路は、インナー管内に設けられ、ハンマー継手の半径方向中央のダウンザホールハンマー駆動流体用管路の半径方向外方に設けられた第1の領域と、第1の領域の切羽側に設けられ、ハンマー継手の地中側端面へ向かう第2の領域を有しており、
第2の領域がハンマー継手の地中側端面に連通した箇所は、ハンマー保護部材に包囲されている請求項1の掘削装置。
【請求項3】
ハンマー継手に設けられた掘削ズリ排出促進流体用管路の第1の領域は、インナー管の半径方向中央のダウンザホールハンマー駆動用の流体が流れる管路の半径方向外方に形成された円環状断面の掘削ズリ排出促進流体用管路に連通している請求項2の掘削装置。
【請求項4】
インナー管に接続され且つ掘削用ビットに接続されたダウンザホールハンマーと、先端にリングビットを設けた外管を備えた掘削装置を用いた掘削方法において、
ダウンザホールハンマーに設けられた管路を介してダウンザホールハンマーにダウンザホールハンマー駆動流体を供給すると共に、
ダウンザホールハンマーの半径方向外方に設けられて当該ハンマーを包囲した中空円筒形状のハンマー保護部材の内壁面と、ダウンザホールハンマーの外周面の間に形成された円環状の掘削ズリ排出促進流体用管路に、掘削ズリ排出促進流体を流過し、
ダウンザホールハンマー駆動流体を掘削用ビット内の貫通孔を介して切羽に供給し、掘削ズリと共に、ハンマー保護部材の外周面と外管の内壁面の間に設けられた円環状の掘削ズリ排出用管路を介して、地上側に排出し、
掘削ズリ排出促進流体用管路と掘削ズリ排出用管路を連通し、円周方向に等間隔に配置されており、半径方向外方に向かうほど羽口側に近づく様に傾斜している掘削ズリ排出促進流体用通路を介して、掘削ズリ排出促進流体を掘削ズリ排出用管路に供給することを特徴とする掘削方法。
【請求項5】
インナー管の半径方向中央のダウンザホールハンマー駆動用の流体が流れる管路の半径方向外方に形成された円環状断面の掘削ズリ排出促進流体用管路と、
当該掘削ズリ排出促進流体用管路に連通しているハンマー継手に設けられた掘削ズリ排出促進流体用管路の第1の領域と、
第1の領域の切羽側に設けられ且つハンマー継手の地中側端面へ連通する第2の領域を介して、
掘削ズリ排出促進流体を、ダウンザホールハンマーの外周面とハンマー保護部材の内壁面の間に設けられて掘削ズリ排出促進流体が流過する円環状の掘削ズリ排出促進流体用管路に流入させる請求項4の掘削方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−28936(P2013−28936A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164943(P2011−164943)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(390002233)ケミカルグラウト株式会社 (79)
【Fターム(参考)】