説明

掘削装置

【課題】簡単な構造で、広い角度まで供回り防止翼6を拡大させることができる掘削装置を提供する。
【解決手段】鋼棒などの芯材1と、芯材1を貫通させ、芯材1の先端を露出させた中空の掘削ロッド2と、掘削ロッド2の外周に位置して、掘削ロッド2の先端を露出させた内筒3とより構成する。掘削翼5は、掘削ロッド2の先端に一端を支持させ、他端は内筒3の先端に維持させて、軸点を介して円周方向に開閉自在である。供回り防止翼6は、内筒3の外周の軸点を介して、円周方向に開閉自在である。この供回り防止翼6は、掘削ロッド2に固定し先端を内筒3に開口した長溝31から外部へ露出したピン22と、内筒3の外周にスライド自在に嵌合した鍔板状の開閉用リング62との距離の変化によって開閉させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄筋のような鋼材、あるいはFRPロッドを補強材として周囲の地山をモルタルと攪拌し固化させるような補強工法は多数開発されているが、特にその直径を50〜60cmのような大径に拡大する工法がラディッシュ工法といった名称で知られている。
その場合に、アンカー孔のすべてを大きい直径で削孔して行うのではなく、削孔口付近の直径は小さく、内部の直径を大きく拡大する工法も、下記の「特許文献」で示すように多数が知られている。
削孔口付近の直径を小さく、地山の内部のアンカー体の直径を拡大する必要性は、例えば図5に示すように、RC擁壁や石積み擁壁aなどの背面にソイルセメントによる地盤改良体およびアンカー体bを造成するような場合である。
その場合に擁壁aには大きな穴を開けたくないので、擁壁aに小径の穴cを開けて地盤改良機の掘削回転軸の掘削攪拌翼を閉じた状態で挿入し、掘削攪拌翼の先端ビットで小径の穴cを掘削する。
そして一定の位置まで削孔したら、掘削回転軸先端の掘削攪拌翼を広げて大きい直径で土の攪拌dを行う。
そして掘削回転軸を引き抜く際に、あるいは掘進中に、拡径した掘削攪拌翼で大径の攪拌を行いつつセメントミルクと土とを攪拌混合する。
この際に、掘削回転軸内には鉄筋などの芯材eを挿入しておき、これを地山の地中に残して掘削回転軸を引き抜くから、ソイルセメント体内にアンカーbを設置することができる。
削孔口の直径の小さい部分を通過する場合には、再度掘削攪拌翼を閉じて縮径し、擁壁の穴から掘削回転軸を引き抜く。
こうして外部への露出部の直径は小さく、地山内部の攪拌部の直径は大径である地盤改良体を、擁壁の背面などに造成することができる。

【特許文献1】特開2001−26923号公報。
【特許文献2】特開平9−256355号公報。
【特許文献3】特開平4−213614号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
掘削装置には供回り防止翼が取り付けてある。
ここで供回り防止翼とは、土砂と掘削翼との供回りを防止する翼のことである。
すなわち、掘削翼で地山を掘削する場合に、この掘削翼に付着した土砂が掘削翼の回転と一体となって回転してしまい、混練することができない現象が発生する可能性がある。
ところが供回り防止翼を、回転軸とはフリーな状態で取り付けておくと、供回り防止翼は土の抵抗で回転せずに地中に切り込んでゆく。
その結果、掘削翼とともに回転する土砂に対して供回り防止翼の存在が抵抗となって、土砂の掘削翼との供回りが阻止されることになる。
これが供回り防止翼の効果である。
本発明は前記したような従来の掘削装置において、さらに大きな角度まで供回り防止翼を拡大、縮小できる装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記のような課題を解決するために本発明は、鋼棒などの芯材と、芯材を貫通させ、芯材の先端を露出させた中空の掘削ロッドと、掘削ロッドの外周に位置して、掘削ロッドの先端を露出させた内筒とより構成し、掘削ロッドの先端に一端を支持させ、他端は内筒の先端に維持させて、軸点を介して円周方向に開閉自在である掘削翼を備え、内筒の外周には軸点を介して、円周方向に開閉自在である、供回り防止翼を備え、この供回り防止翼の掘削翼側には、内筒の外周にスライド自在に嵌合した鍔板状の開閉用リングを備え、掘削ロッドに固定し、先端を内筒に開口した長溝から外部へ露出して前記の開閉用リングの接している押しピンを備え、この供回り防止翼の反対側には、中筒の外周にスライド自在に嵌合した鍔板状の押しリングを備えた掘削装置を特徴としたものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明の掘削装置は以上説明したようになるから、簡単な構造によって供回り防止翼を必要な角度まで大きく拡大することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下図面を参照にしながら本発明の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【実施例】
【0007】
<1>全体の構成。
本発明の装置は、鋼棒などの芯材1と、その外周に位置する三重管によって構成する。
三重管とは、中空の掘削ロッド2と、掘削ロッド2の外周に位置して、掘削ロッド2の先端を露出させた内筒3と、内筒3の外周に位置して、内筒3の先端を露出させた外筒4とである。
これらの三重管ともに、相互にスライド自在である。
なお、説明の簡単のために、掘削する方向を前方、あるいは先端と、また削孔の入り口側を後方、あるいは後端と表現する場合がある。
【0008】
<2>掘削ロッド。
掘削ロッド2は、芯材1を貫通させ、芯材1の先端を露出させた中空の筒体である。
この掘削ロッド2は、回転する駆動源と一体であって、その先端に放射方向に拡大した掘削翼5をロッド2と一体で回転することによって地山を掘削し、あるいは地山とモルタルとを混合する機能を果たす。
掘削ロッド2の一部には円周方向にピン22を突出させる。
このピン22は、後述する内筒3の長溝31を貫通して内筒3の外部に露出している。
掘削ロッド2の内径は、芯材1の外径よりも大きいので、両者間の空間をモルタル、セメントミルク、薬液などの注入通路として使用する。
【0009】
<3>内筒。
内筒3は、掘削ロッド2の外周に位置して、掘削ロッド2の先端を露出させた中空の筒体である。
内筒3と掘削ロッド2とは相互にスライド自在であるが、固定するネジ、すなわち掘削ロッド・内筒固定ネジ23などによって両者を拘束すれば、一体の作動を行わせることができる。
内筒3の一部には、筒の中心軸方向と平行に長溝31を開口する。
この長溝31から前記したピン22の先端を突出させておく。
すると、掘削ロッド2と内筒3とを相対的にスライドさせれば、ピン22は長溝31の前端から後端まで移動することになる。
【0010】
<4>掘削翼。
掘削翼5は、掘削ロッド2にのみ固定しているものではなく、2枚のリンクによって構成する。
すなわちリンクの一方の掘削翼5の一端は、掘削ロッド2の先端に回転自在に軸支21させ、掘削翼5の他端は内筒3の先端に、支持リンク32を介して回転自在に軸支33させたものである。
そのために掘削翼5は2枚のリンクが開閉する機構として構成されることになる。
したがって掘削ロッド2と内筒3とを相対的にスライドさせれば、2枚のリンクは軸支点21、33を介して円周方向に開閉することになる。
【0011】
<5>供回り防止翼。
内筒3の外周には軸点61を介して、円周方向に開閉自在である、供回り防止翼6を備えている。
供回り防止翼6は短冊状の鋼材であり、その基端を軸点61として、掘削方向に倒れた状態で内筒3に設置してある。
供回り防止翼6は、後述する開閉機構によって、倒れた状態から、内筒3に対してほぼ直交する状態まで立ち上がることが可能である。
【0012】
<6>供回り防止翼の開閉機構。
供回り防止翼6を掘削方向に倒したり起き上がらせる開閉作動ために、供回り防止翼6は開閉用リング62と押しリング41との間に位置させる。
開閉用リング62も押しリング41も内筒3にスライド自在に嵌合した鍔状の円盤である。
そして、開閉用リング62は供回り防止翼6の軸点よりも先端側に、押しリング41は供回り防止翼6の軸点よりも後端側に位置させる。
この両リング間の距離を変えることによって供回り防止翼6の開閉を行うものである。
その場合に、開閉用リング62の前後方向へのスライドは、ピン22のスライドによる。
前記したように、ピン22は掘削ロッド2に固定してあってかつ内筒3に開口した長溝31から外部へ露出しているから掘削ロッド2と内筒3との相対的な移動によってスライドが可能である。
一方、押しリング41のスライドは、その削孔口側に位置させた外筒4のスライドによって行う。
【0013】
<7>外筒。
内筒3の外周に位置して、内筒3の先端を露出させた筒体が外筒4である。
この外筒4の先端に前記した押しリング41が位置している。
この外筒4の後端には、鍔状の受け板42が取り付けてある。
この受け板42には、外筒4を前方に押し出す押し出し機構43を取り付ける。
この押し出し機構43としては、外筒4の軸方向と平行方向に配置したネジ、あるいはジャッキなどを採用することができる。
これらの押し出し機構43はその反力を内筒3にとって外筒4を前方に向けて押し出すから、押しリング41を前進させ、その前進によって供回り防止翼6に対してそれが起き上がる方向に力を与えることができる。
【0014】
<8>掘削翼の拡大。
次に装置の作用について説明する。
前記したように掘削翼5は2枚のリンクによって構成し、その一端を掘削ロッド2に、他端を内筒3に取り付けてある。
この状態で、内筒3を掘削ロッド2に対して前進させ、あるいは掘削ロッド2を内筒3に対して後退させると、2枚のリンクが折りたたまれ、掘削翼5は円周方向に拡大する。
この状態で、掘削ロッド2と内筒3とを固定ネジ23などで固定、拘束して回転を与えれば、掘削翼5を回転させることができる。
こうして、小径部分の掘削、混合と、大径部分の掘削、混合とを使い分けることができる。
【0015】
<9>供回り防止翼の拡大。
供回り防止翼6の拡大に際しても、掘削ロッド2と内筒3とを相対的にスライドさせる。
すると、掘削ロッド2に固定したピン22が後退する。
ピン22は内筒3の長溝31を貫通してその頭部が内筒3の外部に露出しているので、ピン22の後退によって開閉用リング62が後方へ移動する。
その状態で外筒4の位置を固定しておけば、開閉用リング62と外筒4にはさまれた供回り防止翼6は、軸点61を中心に外側に向けて起き上がることになる。
こうして供回り防止翼6を拡大することができる。
【0016】
<10>供回り防止翼の更なる拡大。
上記したように、ピン22の後退、すなわち開閉用リング62の後退によって供回り防止翼6を拡大することができる。
しかしピン22の後退距離、すなわち掘削ロッド2と内筒3との相対的なスライド可能な距離は、掘削翼5の起き上がり角度などから、一定の限界があり、供回り防止翼6の拡大が十分でない場合も予想できる。
その場合には外筒4の押し出し機構43のネジやジャッキによって外筒4を前方に押し出す。
すると、押しリング41が前進して供回り防止翼6を更に外向きに起き上がらせることができ、内筒3に対してほぼ直交する角度まで設定することができる。
【0017】
<11>アンカー体の構築。
掘削翼5を回転して引き抜くときに、モルタルを注入して地山の土と攪拌、混合し、かつ芯材1を残してゆく。
こうして中央に芯材1を配置し、その周囲の土を改良したアンカー体を構築することができる。
掘削翼5と供回り防止翼6の引き抜きに際しては、前記の拡大工程と反対方向に掘削ロッド2、内筒3、外筒4をスライドさせて、掘削翼5、供回り防止翼6を折り畳んで内筒3に沿わせ、直径を縮小して引き出す。
削孔口の外部まで露出させた芯材1には、鉄筋などを溶接し、その鉄筋を包囲した状態で外壁コンクリートを打設する。
こうして従来の擁壁、石積みの外側面にあらたな外壁コンクリートを打設して擁壁、石積みを補強することができる。
なお、これらの工法は公知のものであるから、その他の公知の工法を採用することもできる。

【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の掘削装置の掘削翼5と供回り防止翼6の実施例の説明図。
【図2】供回り防止翼6を開く前の状態の説明図。
【図3】供回り防止翼6を一部だけ開いた状態の説明図。
【図4】供回り防止翼6を完全に開いた状態の説明図。
【図5】本発明の掘削装置を使用して地中にアンカー体を施工する場合の説明図。
【符号の説明】
【0019】
1:芯材
2:掘削ロッド
3:内筒
4:外筒
5:掘削翼
6:供回り防止翼

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼棒などの芯材と、
芯材を貫通させ、芯材の先端を露出させた中空の掘削ロッドと、
掘削ロッドの外周に位置して、掘削ロッドの先端を露出させた内筒とより構成し、
掘削ロッドの先端に一端を支持させ、他端は内筒の先端に維持させて、軸点を介して円周方向に開閉自在である掘削翼を備え、
内筒の外周には軸点を介して、円周方向に開閉自在である供回り防止翼を備え、
この供回り防止翼は、
掘削ロッドに固定し、かつ先端を内筒に開口した長溝から外部へ露出したピンと、
内筒の外周にスライド自在に嵌合した鍔板状の開閉用リングとの距離の変化によって開閉させるように構成した、
掘削装置。
【請求項2】
請求項1記載の掘削装置において、
内筒の外周に位置して、内筒の先端を露出させた外筒を設け、
押しリングには、外筒の一端を固定し、
外筒の他端には内筒に反力を取って押しリングを先端に押し出しが可能な押し出し機構を備えた、
掘削装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−59680(P2010−59680A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226190(P2008−226190)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(303056368)東急建設株式会社 (225)
【出願人】(504406634)株式会社 北斗工業 (4)
【Fターム(参考)】