説明

掘進機の測量システム

【課題】掘進時における掘進機1の位置及び掘進方向を、高い精度で計測可能とする。
【解決手段】予め掘進機1内の複数箇所にターゲット31を設けると共に、掘進機1の後方の既設トンネル2内における所定箇所にディジタルカメラ32を設置し、掘進機1内をターゲット31と共に撮影し、その画像データを画像処理することによって、この画像におけるターゲットの位置座標を検出して初期値とする。次に、掘進機1による地中掘進開始後の所定のタイミングで、掘進距離計測手段によって掘進機1の掘進距離を計測すると共に、ディジタルカメラ32で掘進機1内を前記ターゲット31と共に撮影し、このときの画像から検出されたターゲット画像の間隔Pが、掘進距離計測値と前記初期値とから求められる座標間隔Pと等しければ、掘進機は直進しているものと判定し、P<Pの場合は掘進方向が変化したものと判定し、かつP及びPから掘進機1の偏向角度θを求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中での掘進機の掘進位置及び掘進方向を測量するためのシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネルや、都市部の下水道、ガス管、電力や通信ケーブル用管、共同溝などをシールド工法等によって施工する場合、計画路線からの施工のずれを最小にするには、地中での掘進機の掘進位置及び方位を常時測量する必要がある。
【0003】
従来、地中を掘進しているシールド掘進機の掘進位置及び掘進方向を測量するための技術としては、方位計測器及びピッチング計測器による計測データとシールドジャッキストローク計測器による計測データから計算値として求め、その変位データに基づいて掘進中の方向制御を行うことが知られている(例えば下記の特許文献参照)。
【特許文献1】特開平5−321577号公報
【0004】
しかしながら、上述のような計算値によるシールド掘進機の測量データは、所定距離(例えば10m程度)だけ掘進した後でシールド掘進機を停止させ、光波測距儀を使用して光学測量を行うことにより得られる測量データとの較差を生じていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述のような問題に鑑みてなされたもので、その技術的課題は、掘進時における掘進機の位置及び掘進方向を、より高い精度で計測可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の技術的課題を有効に解決するための手段として、請求項1の発明に係る掘進機の測量システムは、掘進機内の複数箇所に設けたターゲットと、前記掘進機の後方の既設トンネル内における所定箇所に設置されて前記掘進機内を前記ターゲットと共に撮影して画像信号を出力するカメラと、前記掘進機の掘進距離を計測する掘進距離計測手段と、前記画像信号を処理することにより前記ターゲットの画像を抽出してその位置座標を検出する画像処理手段と、前記ターゲット画像の位置座標の初期値及び任意の時点で前記掘進距離計測手段により計測された掘進距離から求められるターゲットの間隔P及び前記任意の時点で前記カメラにより撮影され前記画像処理手段において検出されたターゲット画像の間隔Pに基づいて次式(1)により前記掘進機の偏向角度θを求める演算処理手段と、からなるものである。
【数2】

【0007】
すなわち、上記構成によれば、まず予め掘進機内の複数箇所にターゲットを設けると共に、掘進機の後方の既設トンネル内における所定箇所にカメラを設置し、前記掘進機内を前記ターゲットと共に撮影する。カメラからの画像信号は、画像処理手段で画像処理することによって、この画像におけるターゲットの位置座標を検出して初期値とする。
【0008】
次に、掘進機による地中掘進開始後の所定のタイミングで、掘進距離計測手段によって掘進機の掘進距離を計測すると共に、カメラで前記掘進機内を前記ターゲットと共に撮影する。そして、このときの画像を画像処理することによって検出されたターゲット画像の間隔Pが、掘進距離計測手段によって計測された掘進距離と予め得られたターゲットの位置座標の初期値とから求められる座標間隔Pと等しければ、掘進機は直進しているものと把握することができ、P<Pの場合は掘進方向が変化したものと把握することができ、上記式によって掘進機の偏向角度θを求めることができる。
【0009】
請求項2の発明に係る掘進機の測量システムは、請求項1の構成において、ターゲットが特定の輝度又は色調を有するものであり、撮影した画像データにおけるターゲットの位置座標が、画像処理により前記画像データから特定の輝度又は色調を抽出することにより求められる。
【0010】
請求項3の発明に係る掘進機の測量システムは、請求項1の構成において、ターゲットが、略水平方向及び略鉛直方向にそれぞれ複数設置される。このようにすれば、掘進機の水平方向及び俯仰方向への掘進方向の変化を検出することができる。
【0011】
請求項4の発明に係る掘進機の測量システムは、請求項1の構成において、ターゲットが、掘進機内の任意の部位又は部品から選択されたものである。すなわち、ターゲットは、カメラで撮影可能な固定物であって、かつカメラからの画像信号を画像処理することによって容易に抽出可能な色彩あるいは輝度を有するものであれば、必ずしもターゲットとしての専用部材でなくても良く、掘進機内の任意の部位又は部品を代用することができる。
【0012】
請求項5の発明に係る掘進機の測量システムは、請求項1の構成において、掘進距離計測手段が、掘進機を推進させるジャッキのストローク長さを計測するストロークセンサからなるものである。
【0013】
請求項6の発明に係る掘進機の測量システムは、請求項1の構成において、演算処理手段が、画像処理により抽出された各ターゲットの画像面積の差、又は各ターゲットの画像面積の初期値に対する面積変化率の差に基づいて、掘進機の偏向方向を判定可能としたものである。
【0014】
請求項7の発明に係る掘進機の測量システムは、請求項1の構成において、演算処理手段が、画像処理により抽出された任意のターゲット間の間隔と、他の任意のターゲット間の間隔との比率を、その初期値と比較することによって、掘進機の偏向方向を判定可能としたものである。
【0015】
請求項8の発明に係る掘進機の測量システムは、請求項1の構成において、演算処理手段が、画像上での掘進機の基準点の計画位置の座標と撮影された掘進機の基準点の座標との間の距離Lと、前記計画位置における掘進方向と、前記計画位置を通るカメラの光軸の方向から、計画路線に対する掘進機のずれ量Qを算出可能としたものである。このようにすれば、掘進機の掘進距離及び掘進方向に加えて、計画路線に対する掘進機のずれ量も計測できるので、掘進機を一層高い精度で制御することができる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1〜6の発明に係る掘進機の測量システムによれば、掘進機の掘進過程で、掘進距離の計測と、ターゲットを含む掘進機内の撮影を任意のタイミングで同期して行い、そのときの画像上におけるターゲットの間隔と、前記掘進距離の計測値及び画像上におけるターゲットの初期位置座標によって求められるターゲットの位置座標の間隔との差に基づいて、掘進機の掘進方向を、高い精度で計測することができ、このため、掘進機の運転を高い精度で制御して、計画路線からの施工のずれを最小に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る掘進機の測量システムの好ましい実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る掘進機の測量システムにおけるシールド掘進機とターゲット及びディジタルカメラとの関係を示す説明図、図2は、図1におけるII方向から見たターゲットの配置図、図3は、本発明に係る掘進機の測量システムの概略構成を示す説明図である。
【0018】
まず図1において、参照符号1は、シールド工法によるトンネルの施工に用いられるシールド掘進機である。このシールド掘進機1は、円筒状の前部鋼殻111と、その後方に不図示の中折れ用油圧ジャッキを介して互いに角変位可能に連結された円筒状の後部鋼殻112とからなるシールドフレーム11と、その先端に設けられ前面に地山を掘削する多数のカッタビットを有するカッタフェイス12と、このカッタフェイス12を回転駆動させる油圧モータ等からなるカッタ駆動装置13と、カッタフェイス12の背面に形成され掘削土砂(ズリ)が取り込まれるチャンバ14と、このチャンバ14内から前記掘削土砂を排出する排土管15と、後部鋼殻112内で、覆工用セグメント21を順次組み立てて円筒状の覆工体2を施工していくための不図示のエレクタと、円周方向に多数配置されて、既設覆工体2の先端を後方へ押し出すように動作することによって掘進方向への推力を得る推進用油圧ジャッキ16と、シールドフレーム11の後部鋼殻112の内周で、不図示のエレクタによって円弧状の複数の一次覆工用セグメント21を環状に組み立てて地山Gの土圧に耐えるための覆工体2を施工する不図示のエレクタと、既に組み立てられた覆工体2の先端を後方へ押圧することによってその反力でシールド掘進機1を推進させる推進用油圧ジャッキ16とを備える。
【0019】
この実施の形態に係る掘進機の測量システムは、シールド掘進機1の後部内周に設置される複数のターゲット31と、既設覆工体2の内周における所定の箇所に設置されて、シールド掘進機1内を前記ターゲット31と共に撮像するディジタルカメラ32とを備える。
【0020】
ターゲット31としては、例えば赤色光を発する発光ダイオードによる円形ターゲットが採用される。ディジタルカメラ32は、請求項1に記載されたカメラに相当するもので、CCD等の固体撮像素子によって、撮影した画像を少なくともR、G、Bの三色の画像信号として出力するものである。
【0021】
更に、この実施の形態に係る掘進機の測量システムは、図3に示されるように、ストロークセンサ33と、ディジタルカメラ32からの画像信号を処理して赤の色調を識別することにより各ターゲット31の画像を抽出してその座標を検出する画像処理部34と、本システムによる処理を実行するためのアプリケーションプログラムに基づいて動作し、ターゲット31の画像間の間隔や、各ターゲット31の画像面積を、画素数から求めたり、掘進機の偏向角度を求めたりするといった各種の演算処理を行う演算処理部35と、演算処理部35による演算処理結果のデータや、前記アプリケーションプログラム等、種々のデータが蓄積されるメモリ36と、画像や演算処理部35による演算処理結果のデータを出力表示するモニタディスプレイ装置やプリンタ等の出力表示部37を備える。このうち、画像処理部34や、演算処理部35及びメモリ36等は、パーソナルコンピュータとして構成される。なお、既設覆工体2は、請求項1に記載された既設トンネルに相当するものである。
【0022】
ストロークセンサ33は、推進用油圧ジャッキ16に装備されてその伸縮ストローク長さを計測することによって掘進機1の掘進距離を計測するものであり、請求項1に記載された掘進距離計測手段に相当する。
【0023】
画像処理部34は、ディジタルカメラ32からの画像信号を処理して、特定階層のRの画像信号を識別することによって各ターゲット31の画像を抽出するものである。
【0024】
以上のように構成された掘進機の測量システムによる測量においては、まず予め掘進機1の後部内周の複数箇所にターゲット31を固定する。詳しくは、図2に示されるように、例えば略鉛直方向及び略水平方向(左右方向)に各一対、4個のターゲット31(31R,31L,31T,31B)が互いに十字をなすように、すなわち時計の文字盤に例えると12時、3時、6時及び9時の位置に、それぞれ適当な固定手段を介して固定される。
【0025】
一方、既設覆工体2の内周における既知の所定箇所に、ディジタルカメラ32を、その光軸を前方(シールド掘進機1側)へ向けて、全てのターゲット31が視野に入るように設置し、掘進機1内をターゲット31(31R,31L,31T,31B)と共に撮影する。
【0026】
図4は、ディジタルカメラ32によって掘進機1内をターゲット31と共に撮影した初期画像を概略的に示す説明図、図5は、掘進開始後の所定のタイミングで撮影した画像を概略的に示す説明図、図6は、掘進機の偏向角度の算出原理を示す説明図である。
【0027】
図4に示されるように、ディジタルカメラ32によって撮影された画像データは、例えばX方向・Y方向にそれぞれ3000画素、すなわち900万画素からなるものである。この画像データは、画像処理部34で画像処理され、赤の色調(R信号)を識別することによって、各ターゲット31R,31L,31T,31Bの画像を抽出する。
【0028】
ここで、図4に示される初期画像データにおいて、例えば右側のターゲット31Rの中心位置座標を(X,Y)とし、左側のターゲット31Lの中心位置座標を(X,Y)とすると、両ターゲット31R,31Lの中心位置座標間の間隔Pは、
【数3】

である。そしてこれらのデータは、初期値としてメモリ36に蓄積される。
【0029】
次に、シールド掘進機1による地中掘進を開始する。この掘進においては、シールドフレーム11の前部鋼殻111の先端で、カッタフェイス12を回転させることによって地山Gを掘削し、発生する掘削土砂(ズリとも呼ばれる)を、カッタフェイス12に形成されたスリットからその背面のチャンバ14内に取り込むと共に、このチャンバ14に不図示の給水管を介して泥水などを加圧供給し、これによってカッタフェイス12の背圧を、地山Gの地下水圧とバランスする加圧状態に保持し、前面の泥土の噴発を防止しながら、掘削土砂の取り込みに伴い、排土管15を介して連続的に排出するようになっている。
【0030】
一方、シールドフレーム11の後部鋼殻112の内周では、不図示のエレクタによって円弧状の複数の一次覆工用セグメント21を環状に組み立てて、掘削された坑内壁に、地山Gの土圧に耐えるための覆工体2を施工すると共に、既に組み立てられた既設覆工体2の先端に推進用油圧ジャッキ16を当てて後方へ押圧し、その反力で、シールド掘進機1を、上述のカッタフェイス12による掘削を伴いながら推進させるようになっている。
【0031】
シールド掘進機1による地中掘進が開始されると、ディジタルカメラ32による撮影と、ストロークセンサ33による推進用油圧ジャッキ16のストローク長さの計測による掘進距離の計測が、所定時間経過毎に同期して行われる。そして掘進の進捗と共に、シールド掘進機1及びこれに取り付けられたターゲット31がディジタルカメラ32の設置位置から遠ざかって行くため、掘進開始後に撮影された画像データは、図4に示される初期画像データに比較して、シールド掘進機1及びターゲット31の撮像が掘進距離に反比例して小さくなる。
【0032】
ここで図5に示されるように、掘進開始後の所定のタイミングで撮影された画像データにおいて、例えば右側のターゲット31Rの中心位置座標を(X11,Y11)とし、左側のターゲット31Lの中心位置座標を(X12,Y12)とすると、この場合、両ターゲット31R,31Lの中心位置座標間の間隔Pは、
【数4】

である。
【0033】
そして、シールド掘進機1が直進していれば、Pの大きさは、ストロークセンサ33により計測される初期位置からの掘進距離Lと、図4に示される初期画像データにおける両ターゲット31R,31Lの中心位置座標間の間隔Pとによって求められる両ターゲット31R,31Lの中心位置座標間の間隔Pと等しくなるはずであり、図6に示されるように、もし掘進方向が変化した場合は、P<Pとなる。そして、その場合のシールド掘進機1の偏向角度θは、次式(1)により求められる。
【数5】

【0034】
また、画像処理により抽出された各ターゲット31の画像面積は、その画素数をカウントすることによって求められる。そして、ディジタルカメラ32を、各ターゲット31から等距離となる位置に設置した場合は、図4に示される初期画像における各ターゲット31の画像面積は互いに等しく、その後、シールド掘進機1が直進した場合は、図5に示される掘進開始後の画像における各ターゲット31の画像面積も互いに等しいものとなるが、もし掘進方向が変化した場合は、各ターゲット31の画像面積が互いに異なるものとなる。具体的には、図6に示されるように、もしシールド掘進機1が右へ偏向している場合は、右側のターゲット31Rの画像面積が、左側のターゲット31Lの画像面積より大きくなる。
【0035】
したがって、演算処理部35は、各ターゲット31の撮像の画素数から求められる画像面積を比較することで、シールド掘進機1の偏向方向を判定することができる。
【0036】
これに対し、ディジタルカメラ32を、とくに各ターゲット31から等距離となる位置に設置しない場合は、図4に示される初期画像における各ターゲット31の画像面積は互いに異なるものとなるため、検出された各ターゲット31の画像面積を初期値としてメモリ36に登録しておく。その後、シールド掘進機1が直進した場合は、図5に示される掘進開始後の画像における各ターゲット31の画像面積は初期値に対する変化率が互いに等しいものとなるが、もし掘進方向が変化した場合は、各ターゲット31の画像面積は初期値に対する変化率が異なるものとなる。具体的には、図6に示されるように、もしシールド掘進機1が右へ偏向した場合は、画像面積の初期値に対する変化率は、右側のターゲット31Rよりも左側のターゲット31Lのほうが大きくなる。
【0037】
したがって、演算処理部35は、各ターゲット31の撮像の画素数から求められる画像面積の変化率を比較することで、シールド掘進機1の偏向方向を判定することができる。
【0038】
なお、上述の説明では、シールド掘進機1の左右への偏向についてのみ言及しているが、上下方向への偏向方向や偏向角度についても、上側のターゲット31Tと、下側のターゲット31Bから、上述と同様にして求められる。
【0039】
また、上述の説明は、直線トンネルを前提としたものであるが、本発明は、曲線トンネルの施工にも実施することができる。
【0040】
この場合は、まず工学測量により、もしくは絶対位置がわかっているシールド掘進機1を撮影して画像から逆算することによって、ディジタルカメラ32の絶対位置(X,Y,Z)と、絶対撮影方向(eX,eY,eZ)を算出し、これを初期値とする。次に、ディジタルカメラ32を固定する際に、画像上におけるターゲット31又はシールド掘進機1の一部分の位置座標を、シールド掘進機1の推進位置ごとに計画位置としてシミュレートする。そして、このシミュレーション結果と、実際の画像を比較することによって、シールド掘進機1の実際の掘進位置を算出することができる。
【0041】
図7は、曲線トンネルの計画路線に対するシールド掘進機1のずれ量の算出原理を示す説明図である。この図7において、曲線Aはトンネルの計画路線の基準線、すなわちシールド掘進機1の基準点(例えばシールドフレーム11の後端の中心点)の、設計上の移動軌跡(以下、単に計画路線という)であり、計画路線Aからのシールド掘進機1のずれ量Qは、このシールド掘進機1の基準点Oから計画路線Aへ向けて引いた垂線Lの長さに相当し、この垂線Lと計画路線Aとの交点Oが、シールド掘進機1の基準点Oが本来存在すべき計画位置である。また、ディジタルカメラ32による画像上では、ずれ量Qは、先に説明した図5に示されるように、シールド掘進機1の基準点Oの座標(X21,Y21)と計画位置Oの座標(X22,Y22)との間の距離Lとして表れる。なお、この座標間距離Lは、座標(X21,Y21)と(X22,Y22)から、先に説明したPあるいはPと同様にして求められる。
【0042】
そして、図7に示されるように、計画位置Oにおけるシールド掘進機1の掘進方向と、シールド掘進機1の計画位置Oを通るディジタルカメラ32の光軸Vの方向から、垂線Lと光軸Vとの角度αがわかるので、ずれ量Qは、次式(2)により求めることができる。
【数6】

【0043】
また、演算処理部35は、演算結果をジャッキ駆動制御部38に出力し、このジャッキ駆動制御部38を介して、図1に示される推進用油圧ジャッキ16の駆動を制御することができる。すなわち、上述のようにして求められたシールド掘進機1の偏向方向及び偏向角度θ、ずれ量Qから、掘進方向を補正するための各推進用油圧ジャッキ16のストローク量を算出し、その制御値をジャッキ駆動制御部38に出力することによって、掘進方向をリアルタイムで制御し、計画路線からの施工のずれを最小に抑えることができる。
【0044】
また、ターゲット31は、必ずしも上述したような赤色発光ダイオードによる専用部材でなくても良く、ディジタルカメラで撮影可能な固定物であって、かつ画像処理によって容易に抽出可能なものであれば、シールド掘進機1内の任意の部位を着色したり、又は特定の色彩や明度を有する部品を、ターゲットとして代用しても良い。
【0045】
また、図8は、ターゲットを図2と異なる配置とした場合の初期画像を概略的に示す説明図、図9は、同じく掘進開始後の所定のタイミングで撮影された画像を概略的に示す説明図である。
【0046】
すなわち、ターゲット31は、図2のような配置例に限らず、図8に示されるように、例えば、一辺が略水平な正方形(又は長方形)の各頂点に位置するように配置しても良い。そしてこの場合も、図8に示される初期画像におけるターゲット31の中心位置座標間の間隔P及びストロークセンサ33により計測される初期位置からの掘進距離Lにより求められる計算上の間隔Pと、図9に示される掘進開始後の所定のタイミングで撮影された画像におけるターゲット31の中心位置座標間の間隔P(PnR,PnL,PnT,又はPnB)とから、先に説明した式(1)によって、シールド掘進機1の偏向角度θを求めることができる。
【0047】
また、図9に示される掘進開始後の所定のタイミングで撮影された画像における右上のターゲット31RU、左上のターゲット31LU、右下のターゲット31RL、左下のターゲット31LLの中心位置座標間の間隔P(PnR,PnL,PnT,PnB)の互いの比率は、初期位置からシールド掘進機1が直進した場合は初期画像での比率と等しくなるが、もし掘進方向が変化した場合は、前記比率が変化する。具体的には、もし例えばシールド掘進機1が右へ偏向した場合は、図9に示されるように、右上のターゲット31RUと右下のターゲット31RLとの中心位置座標間の間隔PnRは、左上のターゲット31LUと左下のターゲット31LLとの中心位置座標間の間隔PnLよりも相対的に大きくなる。同様に、シールド掘進機1が上下に偏向した場合は、右上のターゲット31RUと左上のターゲット31LUとの中心位置座標間の間隔PnTと、右下のターゲット31RLと左下のターゲット31LLとの中心位置座標間の間隔PnBとの比率が変化する。
【0048】
したがって、演算処理部35は、各ターゲット31の撮像の中心位置座標間の間隔を比較することで、シールド掘進機1の偏向方向を判定することができる。またこの場合、ターゲット31の画像面積を求める必要がないから、ターゲット31は、比較的小さなものでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る掘進機の測量システムの好ましい形態におけるシールド掘進機とターゲット及びディジタルカメラとの関係を示す説明図である。
【図2】図1におけるII方向から見たターゲットの配置図である。
【図3】本発明に係る掘進機の測量システムの好ましい形態を示す概略構成説明図である。
【図4】初期画像を概略的に示す説明図である。
【図5】掘進開始後の所定のタイミングで撮影された画像を概略的に示す説明図である。
【図6】掘進機の偏向角度の算出原理を示す説明図である。
【図7】計画路線に対する掘進機のずれ量の算出原理を示す説明図である。
【図8】ターゲットを図2と異なる配置とした場合の初期画像を概略的に示す説明図である。
【図9】ターゲットを図2と異なる配置とした場合の、掘進開始後の所定のタイミングで撮影された画像を概略的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1 シールド掘進機
16 推進用油圧ジャッキ
2 覆工体(既設トンネル)
31(31R,31L,31T,31B) ターゲット
32 ディジタルカメラ(カメラ)
33 ストロークセンサ(掘進距離計測手段)
34 画像処理部
35 演算処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘進機内の複数箇所に設けたターゲットと、前記掘進機の後方の既設トンネル内における所定箇所に設置されて前記掘進機内を前記ターゲットと共に撮影して画像信号を出力するカメラと、前記掘進機の掘進距離を計測する掘進距離計測手段と、前記画像信号を処理することにより前記ターゲットの画像を抽出してその位置座標を検出する画像処理手段と、前記ターゲット画像の位置座標の初期値及び任意の時点で前記掘進距離計測手段により計測された掘進距離から求められるターゲット画像の間隔P及び前記任意の時点で前記カメラにより撮影され前記画像処理手段において検出されたターゲット画像の間隔Pに基づいて次式により前記掘進機の偏向角度θを求める演算処理手段と、からなることを特徴とする掘進機の測量システム。
【数1】

【請求項2】
ターゲットが特定の輝度又は色調を有するものであり、撮影した画像データにおけるターゲットの位置座標が、画像処理により前記画像データから特定の輝度又は色調を抽出することにより求められることを特徴とする請求項1に記載の掘進機の測量システム。
【請求項3】
ターゲットが、略水平方向及び略鉛直方向にそれぞれ複数設置されることを特徴とする請求項1に記載の掘進機の測量システム。
【請求項4】
ターゲットが、掘進機内の任意の部位又は部品から選択されたものであることを特徴とする請求項1に記載の掘進機の測量システム。
【請求項5】
掘進距離計測手段が、掘進機を推進させるジャッキのストローク長さを計測するストロークセンサからなることを特徴とする請求項1に記載の掘進機の測量システム。
【請求項6】
演算処理手段が、画像処理により抽出された各ターゲットの画像面積の差、又は各ターゲットの画像面積の初期値に対する面積変化率の差に基づいて、掘進機の偏向方向を判定可能であることを特徴とする請求項1に記載の掘進機の測量システム。
【請求項7】
演算処理手段が、画像処理により抽出された任意のターゲット間の間隔と、他の任意のターゲット間の間隔との比率を、その初期値と比較することによって、掘進機の偏向方向を判定可能であることを特徴とする請求項1に記載の掘進機の測量システム。
【請求項8】
演算処理手段が、画像上での掘進機の基準点の計画位置の座標と撮影された掘進機の基準点の座標との間の距離Lと、前記計画位置における掘進方向と、前記計画位置を通るカメラの光軸の方向から、計画路線に対する掘進機のずれ量Qを算出可能であることを特徴とする請求項1に記載の掘進機の測量システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−202287(P2008−202287A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−38820(P2007−38820)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(302060926)株式会社フジタ (285)
【Fターム(参考)】