説明

掘進機

【課題】 先端のカッターで地盤を掘削し、その掘削された土砂をカッター後方の隔壁に有する排土取込口から機内に取り込み、その排土取込口と連通する排土装置を介して土砂を坑外へ排出する掘進機であって、1体の装置で様々な土質の掘削に使用でき、しかも掘進中の土質変化にも対応できる汎用性に優れる掘進機を提供する。
【解決手段】 排土装置30内に土砂を後方へ搬送するスクリュー32を設け、排土装置30の中間位置と後端位置に搬送された土砂を排出する扉付きの前方排出口34と後方排出口35を設け、前方排出口34から後ろ側の排土装置30の内径を後方へ向かって縮径する。スクリュー32の途中位置には羽根32bの無い軸32aのみの部分を形成し、その位置の排土装置30内に通路の断面積を変える膨縮自在のバルブ36を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推進工法で用いられる掘進機に関し、詳しくは掘削された土砂を機内に取り込んで後方へ排出するための排土装置に関する。
【背景技術】
【0002】
推進工法は、泥水式・土圧式(泥土圧式)・泥濃式に分類される(それぞれ特許文献1〜3参照)。泥水式掘進機は、切羽形成の基本が「安定液工法」であり、送泥水比重や粘性が自然水圧以上に管理されるもので、特別な排土装置を必要としない。すなわち、送泥水パイプと排泥水パイプが掘進機の隔壁に直結されており、排土は液状態の流体輸送のために送泥・排泥ポンプ圧送のバランスで切羽圧力の保持が成されている。切羽圧力の保持は、送泥圧が切羽自然圧力より水圧差2m程度高く保持することが基本である。
【0003】
土圧式掘進機は、前記の泥水式とは違って地山の保持は掘削された土粒子で行うもので、カッターチャンバー室内は攪拌された土砂で充満され、その性状を加圧することで地山の安定を図っている。泥土圧式は、切羽に添加材を注入して流動性を向上させたものである。そのため、強制的に排土させる排土装置が必要となる。排土装置は軸付スクリューやリボンスクリューで構成され、終端の排出口の開口をゲート(扉)で制御している。
【0004】
泥濃式掘進機は、前記の泥水式・土圧式の中間土砂性状(生コンクリート様)で切羽カッター室内が構成され、切羽に掘削添加材を注入して混合・攪拌が行われ、液体でもなく塑性体でもない性状で、切羽圧力の保持を図りつつ地山の崩壊を防止する考え方である。
【0005】
ところで、特許文献1〜3記載の掘進機は、いずれも特定の土質用に製作されたものであるから、例えば土圧式掘進機を排出口の開口率で制限を加えながら軟弱地盤の掘削に用いた場合、噴発が想定され、地山の安定が得られなくなる。また、従来の排土装置は、前後が同径の円柱状の鋼管内にスクリューを配置した構造が一般的で、硬質土地盤の掘進中に土質が軟弱地盤や地下水が滞留した地盤に変化すると、噴発した流動性の高い土砂が流速を速めて取り込み量が増大し、切羽圧力が低下して地盤沈下を招くことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−146658号公報
【特許文献2】特開2003−184488号公報
【特許文献3】特開2004−169455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、従来のこれらの問題点を解消し、1体の装置で様々な土質の掘削に使用でき、しかも掘進中の土質変化にも対応できる汎用性に優れる掘進機の排土機能を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) 先端のカッターで地盤を掘削し、その掘削された土砂をカッター後方の隔壁に有する排土取込口から機内に取り込み、その排土取込口と連通する排土装置を介して土砂を坑外へ排出する掘進機であって、前記排土装置内に土砂を後方へ搬送するスクリューを設け、排土装置の中間位置と後端位置に搬送された土砂を排出する扉付きの前方排出口と後方排出口を設け、前方排出口から後ろ側の排土装置の内径を後方へ向かって縮径するように形成したことを特徴とする、掘進機
2) スクリューの途中位置に羽根の無い軸のみの部分を形成し、その位置の排土装置内に通路の断面積を変える膨縮自在のバルブを設けた、前記1)記載の掘進機
3) 前方排出口と後方排出口の下方に排出した土砂を受ける第1貯泥槽と第2貯泥槽を設け、その各貯泥槽内の土砂を後方へ排出する排土パイプをそれぞれ設け、その各排土パイプを途中で接続した、前記1)又は2)記載の掘進機
にある。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、硬質土地盤の場合は前方排出口から排土することで、流動性の低い土砂が迅速に排出されて坑外へ効率的に搬送できる。軟弱地盤や高水圧地盤の場合は前方排出口を閉鎖して後方排出口から排土することで、排土装置の縮径位置で土砂の圧密を促進し、その圧密で流速が低下して切羽圧力が保持され、土砂の取り込み量の増加を抑えて地盤沈下が防止される。したがって、硬質土地盤や軟弱地盤や高水圧地盤のいずれでも同一の排土装置で対応可能な汎用性に優れたものとなり、トンネル工事における陥没などのトラブルの減少に効果的に装置となる。しかも、掘進中に土質が変化しても、前後の排出口をその土質に適した側に切り替えることで、安定的に掘進を継続できるようになる。
【0010】
また、排土装置の通路の断面積を変える膨縮自在のバルブを設けた構成では、土砂の流動性が極めて高くて排土装置の縮径でも不足な場合、ゴムバルブ等を膨張させて通路を狭幅にすることで、排土量がより制限されて切羽圧力の低下を確実に防止できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例の掘進機の断面図である。
【図2】実施例の排土を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を実施例と図面に基づいて具体的に説明する。
【実施例】
【0013】
図1は実施例の掘進機の断面図、図2は実施例の排土を示す説明図である。図中、10は外殻、11は前胴、12は後胴、13は方向修正用ジャッキ、14は隔壁、15は排土取込口、20は駆動部、21はカッター、22はモーター、30は排土装置、31は排土外殻鋼管、32はスクリュー、32aは軸、32bは羽根、33はモーター、34は前方排出口、34aは扉、34bは伸縮ジャッキ、35は後方排出口、35aは扉、35bは伸縮ジャッキ、36はバルブ、40は第1貯泥槽、41は第2貯泥槽、50は排土パイプ、60は推進管、Aは掘進機である。
【0014】
図1に示すように、掘進機Aの外殻10は、前胴11と後胴12を方向修正用ジャッキ13で中折れ可能に連結し、前胴11に隔壁14を設け、その隔壁14に土砂を取り込む排土取込口15を開口している。駆動部20は、カッター21とこれを駆動するモーター22とを備え、隔壁14の背面に取り付けてカッター21を前胴11の直前に配置している。排土装置30は、排土取込口15と連通するように外殻10内に取り付け、後側が高くなるように勾配を形成している。
【0015】
排土装置30は、長尺の排土外殻鋼管31と、排土外殻鋼管31内を回転するスクリュー32と、スクリュー32を駆動するモーター33とを備え、中間位置と後端位置の下面に前方排出口34と後方排出口35を開口し、その前方排出口34と後方排出口35に伸縮ジャッキ34b,35bで前後方向へ開閉する断面半円状の扉34a,35aを設けている。前方排出口34と後方排出口35の下方位置には、落下した土砂を受ける第1貯泥槽40と第2貯泥槽41を設け、それらの第1貯泥槽40内と第2貯泥槽41内の土砂を後方へ排出する排土パイプ50をそれぞれ配管して途中で接続している。
【0016】
スクリュー32の前方排出口34直後の位置には、羽根32bを撤去した軸32aのみの部分を形成し、その位置の排土装置30内に空気の注入出で膨縮できるゴム製のバルブ36を設けている。そのバルブ36の位置から後ろ側の途中位置まで間の排土装置30の内径とスクリュー32の外径を後方へ向かって縮径し、その後方は後端位置まで同径に形成している。
【0017】
本実施例では、外殻10の後端に推進管60を接続し、モーター22,33を駆動して推進管60を後方から押し出すと、カッター21が地盤を掘削しながら地中を掘進する。掘削された土砂は排土取込口15から取り込まれてスクリュー32で後方へ搬送され、前方排出口34又は後方排出口35から第1貯泥槽40又は第2貯泥槽41に落下して排土パイプ50で排出される。推進管60が地中に推進すると、その推進管60の後端に別の推進管60を継ぎ足して押し出し、これらを繰り返して地中に管路を構築していく。
【0018】
ここで、地盤が硬質土地盤の場合は、図2(a)に示すように、前方排出口34から土砂を落下させるようにする。これにより、流動性の低い土砂が迅速に搬送されて効率的に排出される。
【0019】
これに対し、地盤が軟弱地盤や高水圧地盤の場合は、図2(b)に示すように、前方排出口34を閉鎖し、後方排出口35から土砂を落下させるようにする。流動性が高い土砂を前方排出口34から落下させると、流速が速くなって切羽圧力が低下し、土砂の取り込み量が増加して地盤沈下を招くことがある。しかし、後方排出口35から土砂を落下させるようにすることで、排土装置30の縮径による圧密で流速が低下して切羽圧力が保持され、土砂の取り込み量の増加を抑えて地盤沈下が防止される。土砂の流動性が極めて高くて排土装置30の縮径でも不足な場合は、バルブ36を膨張させて通路を狭幅にすることで、排土量がより制限されて切羽圧力の低下が確実に防止される。
【0020】
このように、地盤が硬質土地盤や軟弱地盤や高水圧地盤のいずれでも同一の排土装置30で対応できる汎用性に優れたものとなり、トンネル工事における陥没などのトラブルの減少に効果的な装置となる。また、掘進中で土質が想定外に変化しても、前方排出口34と後方排出口35をその土質に適した側に切り替えることで迅速に対応でき、安定的に掘進を継続できるようになる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の技術は、硬質土地盤・軟弱地盤・高水圧地盤、及び掘進中で土質の大きな変化が想定される地盤のトンネル工事に利用できる。
【符号の説明】
【0022】
10 外殻
11 前胴
12 後胴
13 方向修正用ジャッキ
14 隔壁
15 排土取込口
20 駆動部
21 カッター
22 モーター
30 排土装置
31 排土外殻鋼管
32 スクリュー
32a 軸
32b 羽根
33 モーター
34 前方排出口
34a 扉
34b 伸縮ジャッキ
35 後方排出口
35a 扉
35b 伸縮ジャッキ
36 バルブ
40 第1貯泥槽
41 第2貯泥槽
50 排土パイプ
60 推進管
A 掘進機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端のカッターで地盤を掘削し、その掘削された土砂をカッター後方の隔壁に有する排土取込口から機内に取り込み、その排土取込口と連通する排土装置を介して土砂を坑外へ排出する掘進機であって、前記排土装置内に土砂を後方へ搬送するスクリューを設け、排土装置の中間位置と後端位置に搬送された土砂を排出する扉付きの前方排出口と後方排出口を設け、前方排出口から後ろ側の排土装置の内径を後方へ向かって縮径するように形成したことを特徴とする、掘進機。
【請求項2】
スクリューの途中位置に羽根の無い軸のみの部分を形成し、その位置の排土装置内に通路の断面積を変える膨縮自在のバルブを設けた、請求項1記載の掘進機。
【請求項3】
前方排出口と後方排出口の下方に排出した土砂を受ける第1貯泥槽と第2貯泥槽を設け、その各貯泥槽内の土砂を後方へ排出する排土パイプをそれぞれ設け、その各排土パイプを途中で接続した、請求項1又は2記載の掘進機。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−122306(P2011−122306A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278537(P2009−278537)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(599111965)株式会社アルファシビルエンジニアリング (32)
【出願人】(505229391)ボーディング株式会社 (19)
【Fターム(参考)】