説明

採光断熱材の製造装置及び採光断熱材の製造方法

【課題】可撓性を有するシートと、そのシートの上に形成された構造体とを有するシート構造体の製造装置であって、シート構造体を容易に製造できるシート構造体の製造装置及びシート構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】製造装置1は、固定領域12を表面に有するテーブル10と、構造体2bを形成する形成機構31と、シート2aを固定領域12に固定する固定機構25と、制御装置40とを備えている。固定機構25は、少なくとも一部が固定領域12内に位置するようにテーブル10に設けられており、連続気泡を有する多孔体14b,15bと、負圧発生機構17と、正圧発生機構20とを有する。制御装置40は、負圧発生機構17に負圧を発生させることによりシート2aを固定した後に、形成機構31に構造体2bを形成させ、その後、正圧発生機構20に正圧を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート構造体の製造装置及びシート構造体の製造方法に関し、詳細には、可撓性を有するシートと、そのシートの上に形成された構造体とを有するシート構造体の製造装置及びシート構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可撓性を有するシートと、そのシートの上に形成された構造体とを有するシート構造体が種々知られている。このようなシート構造体の具体例としては、例えば、下記の特許文献1に開示されているような採光断熱材が挙げられる。
【0003】
特許文献1に開示されている採光断熱材は、透光性を有するベースシートと、ベースシートの上に、樹脂製スペーサを介して間隔をおいて積層された複数の透光性シートとを有する。この採光断熱材では、樹脂製スペーサと透光性シートとにより、ベースシートの上に形成された構造体が構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−80783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されている採光断熱材のようなシート構造体を作製する場合、例えば、特許文献1に記載されているように、まず、ベースシートをテーブル上に固定する必要がある。特許文献1には、テーブルに設けられた位置決めピンをベースシートに差し込むことにより、ベースシートをテーブル上に固定することが記載されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のベースシートの固定方法では、ベースシートのうち、位置決めピンが差し込まれた部分は、除去し、廃棄しなければならない。また、位置決めピンをベースシートに差し込む際に、ベースシートが変形したりする可能性もある。
【0007】
例えば、シートをテーブルの上に固定する別の方法として、両面粘着テープを用いてベースシートをテーブルに固定する方法も考えられる。この方法によれば、ベースシートを傷つけにくく、しかもベースシートの一部を廃棄する必要がない。
【0008】
しかしながら、この両面粘着テープを用いた場合、ベースシートの上に構造体を形成した後に、シート構造体をテーブルから剥がす際に、シート構造体にシワなどが生じるおそれがある。例えば、両面粘着テープの粘着性を低くすることにより、シート構造体を剥がすときにシート構造体にシワ等が生じることを抑制することができる。しかしながら、その場合は、テーブルに対してベースシートを確実に固定することが困難となる。
【0009】
さらに、両面粘着テープの粘着性は、使用と共に経時的に低下するため、両面粘着テープは、定期的に交換する必要がある。従って、両面粘着テープを用いてベースシートをテーブルに固定する場合、シート構造体の製造が困難となる。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、可撓性を有するシートと、そのシートの上に形成された構造体とを有するシート構造体の製造装置であって、シート構造体を容易に製造できるシート構造体の製造装置及びシート構造体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るシート構造体の製造装置は、可撓性を有するシートと、シートの上に形成された構造体とを有するシート構造体を製造するための装置である。本発明に係るシート構造体の製造装置は、テーブルと、形成機構と、固定機構と、制御装置とを備えている。テーブルは、シートが固定される固定領域を表面に有する。形成機構は、固定領域に固定されたシート上に構造体を形成する機構である。固定機構は、シートを固定領域に固定する機構である。固定機構は、多孔体と、負圧発生機構と、正圧発生機構とを有する。多孔体は、少なくとも一部が固定領域内に位置している。多孔体は、多孔体の表面がテーブルの表面と面一となるようにテーブルに設けられている。多孔体は、連続気泡を有する。負圧発生機構は、多孔体に負圧を与える機構である。正圧発生機構は、多孔体に正圧を与える機構である。制御装置は、負圧発生機構に負圧を発生させることによりシートを固定した後に、形成機構に構造体を形成させ、その後、正圧発生機構に正圧を発生させる。
【0012】
本発明のある特定の局面では、多孔体は、固定領域の第1の方向の一方側に位置する第1の端部内に少なくとも一部が配置されている第1の多孔体と、固定領域の第1の方向の他方側に位置する第2の端部内に少なくとも一部が配置されている第2の多孔体とを含む。この構成によれば、高価な多孔体の必要量を減らしつつ、シートを確実に固定することができる。
【0013】
本発明の他の特定の局面では、第1及び第2の多孔体のそれぞれは、細長形状を有しており、第1及び第2の多孔体のそれぞれは、第2の方向に沿って配置されている。この構成によれば、シートをより確実に固定することができる。
【0014】
本発明の別の特定の局面では、シートの平面形状は、長手方向が第1の方向に沿った矩形状であり、第1の端部は、固定領域の長さ方向の一方側端部であり、第2の端部は、固定領域の長さ方向の他方側端部である。
【0015】
本発明のさらに他の特定の局面では、多孔体は、固定領域のうちの第1の端部と第2の端部との間の領域に配置されている少なくともひとつの第3の多孔体をさらに含む。この構成によれば、シートをさらに確実に固定することができる。
【0016】
本発明のさらに他の特定の局面では、多孔体は、ポーラスカーボンからなる。このため、多孔体は、高い導電率を有する。従って、シートに静電気が帯電することをより効果的に抑制することができる。また、多孔体は、例えば、金属よりも低硬度である。従って、多孔体によりシートが傷つくことをより効果的に抑制することができる。
【0017】
本発明のさらに別の特定の局面では、多孔体の気孔率が10体積%〜50体積%の範囲内にある。多孔体の気孔率を10体積%以上とすることにより、高い吸引力が得られ、シートをより確実に固定することができる。また、多孔体の気孔率を50体積%以下とすることにより、多孔体の一部の上にシートが位置していない場合であっても、シートを強固に固定することができる。また、多孔体の剛性及び硬度を高めることができる。
【0018】
本発明のまた他の特定の局面では、シートは、樹脂シートである。樹脂シートを用いる場合、樹脂シートに応力が加わると樹脂シートが塑性変形しやすいため、本発明は、樹脂シートを用いる場合に特に有効である。
【0019】
本発明のまた別の局面では、正圧発生機構は、多孔体に対して圧縮されたイオンエアーを供給する機構である。この場合、多孔体に正圧が付与され、シートが取り外される際に、シート構造体の帯電が確実に解除されるため、シートをより容易に剥がすことができる。
【0020】
本発明のさらにまた他の特定の局面では、多孔体は、複数設けられており、複数の多孔体は、テーブルにマトリクス状に配置されている。この構成によれば、シートをより確実に固定することができる。
【0021】
本発明のさらにまた別の特定の局面では、複数の多孔体は、第1のベクトルと、第1のベクトルに対して傾斜している第2のベクトルとを基底ベクトルとするマトリクス状に配置されている。この構成によれば、シートをさらに確実に固定することができる。
【0022】
本発明に係るシート構造体の製造方法は、上記本発明に係るシート構造体の製造装置を用いてシート構造体を製造する方法に関する。本発明に係るシート構造体の製造方法は、負圧発生装置により多孔体に負圧を与えることによって、テーブルの固定領域にシートを固定する工程と、負極発生装置により多孔体に負圧を与えることにより固定領域にシートを固定した状態で、固定されたシートの上に、形成機構により構造体を形成し、シート構造体を得る工程と、正圧発生機構により、多孔体に正圧を付与した状態で、または多孔体に正圧を付与した後に、シート構造体をテーブルから取り外す工程とを備えている。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、連続気泡を有する多孔体を用いてシートを固定するため、シートの位置が固定領域からずれ、多孔体の一部の上にシートが位置していない場合であっても、シートを固定することができる。従って、シートを容易に固定することができる。また、正圧発生機構により正圧を発生させることにより、シートを容易にテーブルから取り外すことができ、かつ、シートの取り外し時に、シートが変形することを抑制することができる。従って、本発明によれば、シート構造体を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】採光断熱材の一部分を拡大した略図的断面図である。
【図2】シート構造体の製造装置の略図的構成図である。
【図3】テーブルの略図的平面図である。
【図4】図3の線IV−IVにおける略図的断面図である。
【図5】図3の線V−Vにおける略図的断面図である。
【図6】ベースシートを固定する工程を説明するためのシート構造体の製造装置の略図的構成図である。
【図7】ベースシートを固定する工程を説明するためのシート構造体の製造装置の一部分を拡大した略図的構成図である。
【図8】ベースシートを固定する工程を説明するためのシート構造体の製造装置の一部分を拡大した略図的構成図である。
【図9】ベースシートを固定する工程を説明するためのシート構造体の製造装置の一部分を拡大した略図的構成図である。
【図10】ベースシートを固定する工程を説明するためのシート構造体の製造装置の一部分を拡大した略図的構成図である。
【図11】ベースシート上に樹脂製スペーサを形成する工程を説明するためのシート構造体の製造装置の一部分を拡大した略図的構成図である。
【図12】樹脂製スペーサが形成されたベースシートの略図的平面図である。
【図13】第1の変形例におけるテーブルの略図的平面図である。
【図14】第2の変形例におけるテーブルの略図的平面図である。
【図15】第3の変形例におけるテーブルの略図的平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施した好ましい形態について、図2に示す製造装置1を例に挙げて説明する。なお、本実施形態の製造装置1は、シート構造体の一種である採光断熱材を製造するための装置である。但し、本発明のシート構造体の製造装置は、採光断熱材以外のシート構造体を製造するための装置であってもよい。また、シートの上に形成される構造体も特に限定されず、構造体は、例えばシートと一体に形成されていてもよい。すなわち、構造体は、プレス、エッチングなどの処理により、シートの表面に形成されたものであってもよい。具体的には、本発明のシート構造の製造装置は、例えば、レンズアレイシート、偏光シートなどの光学シート、フレキシブル配線基板などを製造するための装置であってもよい。
【0026】
(採光断熱材2)
まず、図2に示す本実施形態の製造装置1について説明する前に、製造装置1により製造される採光断熱材2について、図1を参照しつつ説明する。図1に示すように、採光断熱材2は、矩形状のベースシート2aを備えている。ベースシート2aの上には、構造体2bが形成されている。構造体2bは、樹脂製スペーサ2cと、ベースシート2aの上に、樹脂製スペーサ2cを介して相互に間隔をおいて積層された複数のシート2dとを有する。シート2a、2dは、透光性を有し、かつ可撓性を有する樹脂シートにより構成されている。この採光断熱材2では、樹脂製スペーサ2cにより、シート2a、2d間に空気層が形成されているため、高い断熱効果を得ることができる。
【0027】
なお、本実施形態において、ベースシート2aは、細長形状に形成されている。具体的には、ベースシート2aは、幅が50cm〜2mであり、長さが2m〜5mである矩形状に形成されている。もっとも、本発明において、ベースシートの形状寸法は特に限定されるものではない。ベースシートは、例えば、楕円形状、円形状、長円形状、多角形状などであってもよい。
【0028】
また、シート2a及び2dは、可撓性を有するシートである限りにおいて特に限定されず、例えば、樹脂以外の材料からなるシートであってもよい。
【0029】
(製造装置1)
次に、図2〜図5を参照しつつ、採光断熱材2の製造装置1について詳細に説明する。図2に示すように、製造装置1は、テーブル10を備えている。テーブル10は、駆動機構11に取り付けられている。テーブル10は、この駆動機構11により、x方向に移動可能となっている。なお、駆動機構11の構成は、特に限定されないが、駆動機構11は、例えば、レールと、サーボモーターとにより構成することができる。
【0030】
図3に示すように、テーブル10の表面10aには、ベースシート2aが固定される固定領域12が設けられている。本実施形態では、上述のように、ベースシート2aが矩形状であるため、固定領域12も矩形状である。固定領域12の長さ方向は、x方向(第1の方向)に沿っている。
【0031】
図2及び図3に示すように、テーブル10は、駆動機構11に接続されているテーブル本体13と、テーブル本体13に取り付けられている矩形状の第1及び第2の吸着部材14,15とを備えている。図4及び図5に示すように、吸着部材14,15は、吸着部材本体14a、15aと、吸着部材本体14a、15aの上に設けられている多孔体14b、15bとを備えている。
【0032】
吸着部材本体14a、15aの材質は特に限定されず、吸着部材本体14a、15aは、例えば、金属、合金、セラミックなどの硬質かつ、通気性の低い材料により形成される。具体的には、本実施形態では、吸着部材本体14a、15aは、表面にアルマイト処理が施されたAlにより形成されている。
【0033】
図2及び図3に示すように、多孔体14b、15bは、細長形状を有している。具体的には、多孔体14b、15bは、矩形状である。多孔体14b、15bは、多孔体14b、15bの表面がテーブル本体13の表面と面一となるように設けられている。
【0034】
図3に示すように、多孔体14b、15bは、少なくとも一部が固定領域12内に位置するように設けられている。具体的には、多孔体14bは、固定領域12のx方向のx1側に位置する第1の端部12a内に少なくとも一部が位置するように配置されている。多孔体14bは、第1の端部12a内において、y方向(第2の方向)に沿って配置されている。
【0035】
多孔体15bは、固定領域12のx方向のx2側に位置する第2の端部12b内に少なくとも一部が位置するように配置されている。多孔体15bは、第1の端部12a内において、y方向に沿って配置されている。
【0036】
多孔体14b、15bは、連続気泡を有する多孔体である。本実施形態では、多孔体14b、15bは、実質的にカーボンからなるポーラスカーボンにより構成されている。
【0037】
多孔体14b、15bの気孔率は、10体積%〜50体積%の範囲内にあることが好ましく、30体積%〜40体積%の範囲内にあることがより好ましい。多孔体14b、15bの平均気孔径は、例えば、1μm〜10μm程度であることが好ましく、3μm〜7μm程度であることがより好ましい。なお、本発明において、「気孔率」とは、アルキメデス法により測定された気孔率をいうものとする。
【0038】
図4及び図5に示すように、吸着部材14,15には、多孔体14b、15bの背面に接続されている連通孔14c、15cが形成されている。図2に示すように、この連通孔14c、15cには、多孔体14b、15bに負圧を与える負圧発生機構としての減圧ポンプ17に接続されている。減圧ポンプ17と、多孔体14b、15bとの間には、ソレノイドバルブ18,19が設けられている。これらソレノイドバルブ18,19を開状態とすることにより、多孔体14b、15bに負圧を与えることができる。一方、ソレノイドバルブ18,19が閉状態である場合は、多孔体14b、15bには、負圧は供給されない。
【0039】
また、連通孔14c、15cには、多孔体14b、15bに正圧を与える正圧発生機構20が接続されている。本実施形態では、この正圧発生機構20と、上述の多孔体14b、15bと、負圧発生機構としての減圧ポンプ17とによって、ベースシート2aを固定領域12に固定する固定機構25が構成されている。
【0040】
正圧発生機構20は、圧縮空気を供給する圧縮ポンプ21と、圧縮ポンプ21と連通孔14c、15cとの間に配置されているイオン供給機構22とを備えている。このイオン供給機構22により、圧縮ポンプ21から供給される圧縮空気に、イオンが供給される。このため、本実施形態においては、正圧発生機構20からは、圧縮されたイオンエアーが多孔体14b、15bに供給される。
【0041】
正圧発生機構20と、連通孔14c、15cとの間には、ソレノイドバルブ23,24が設けられている。これらソレノイドバルブ23,24を開状態とすることにより、多孔体14b、15bに圧縮されたイオンエアーを供給することができる。一方、ソレノイドバルブ23,24が閉状態である場合は、多孔体14b、15bには、圧縮されたイオンエアーは供給されない。
【0042】
また、製造装置1には、ベースシート2aをテーブル10上に供給するためのベースシート供給機構30と、構造体2bを形成するための形成機構31が設けられている。ベースシート供給機構30は、ベースシート2aが巻回されているロール30aと、ロール30aから供給されたベースシート2aを搬送するための搬送ロール30b〜30fと、吸着機構34と、カッター35とを備えている。
【0043】
形成機構31は、シート2dを供給するシート供給機構32と、樹脂製スペーサ2cを形成するための樹脂を吐出する吐出ノズル33とを備えている。シート供給機構32は、シート2dが巻回されているロール32aと、ロール32aから供給されたシート2dを搬送するための搬送ロール32b〜32fと、吸着機構36と、カッター37とを備えている。
【0044】
さらに、製造装置1には、制御装置40が設けられている。図示は省略するが、制御装置40は、製造装置1の各デバイスに接続されており、各デバイスを制御するものである。具体的には、制御装置40は、減圧ポンプ17に負圧を発生させることによりベースシート2aをテーブル10の固定領域12に固定した後に、形成機構31に構造体2bをベースシート2a上に形成させ、その後、正圧発生機構20に正圧を発生させることにより、ベースシート2aをテーブル10から取り外す。
【0045】
(採光断熱材2の製造)
次に、採光断熱材2の製造工程について説明する。まず、制御装置40は、駆動機構11に、テーブル10を図1に示す位置から、x方向のx2側に、図6及び図7に示す位置まで移動させる。すなわち、吸着機構34のx方向x1側端部と、多孔体15bのx方向x1側端部とがx方向において同位置となるまで、テーブル10を移動させる。
【0046】
次に、図8に示すように、制御装置40は、吸着機構34を降下させ、ベースシート2aの端部を多孔体15bの表面に密着させる。次に、制御装置40は、吸着機構34による吸着を停止すると共に、図2に示すソレノイドバルブ24を開状態とし、多孔体15bにベースシート2aの端部を吸着させる。
【0047】
次に、制御装置40は、吸着機構34を上昇させ、吸着機構34をベースシート2aから離す。その後、図9に示すように、制御装置40は、テーブル10を、x方向のx1側に移動させる。そして、ベースシート2aがテーブル10の多孔体14bのx方向のx2側端よりもx2側にまで供給されたときに、制御装置40は、テーブル10の移動を停止させる。なお、テーブル10をx方向のx1側に移動させる際に、ロール30aにバックテンションをかけるようにしてもよい。そうすることにより、ベースシート2aにたるみが生じることを効果的に抑制することができる。
【0048】
次に、制御装置40は、ソレノイドバルブ23を開状態とし、多孔体14bにベースシート2aの端部を吸着させる。これにより、図3に示す固定領域12において、ベースシート2aのx1側の端部と、x2側の端部との両方が吸着された状態となる。
【0049】
次に、図10に示すように、制御装置40は、吸着機構34を降下させ、吸着機構34に、ベースシート2aのx2側の端部を吸着させる。その後、制御装置40は、カッター35を降下させてベースシート2aを切断した後に、吸着機構34を上昇させる。これにより、ベースシート2aのテーブル10への固定が完了する。
【0050】
次に、制御装置40は、駆動機構11に、テーブル10のx1側端部が、吐出ノズル33よりもx2側に位置するまで、テーブル10を移動させる。続いて、図11に示すように、テーブル10をx1側に移動させながら、吐出ノズル33からベースシート2a上に樹脂を吐出する。これにより、図12に示すように、x方向に沿って、ベースシート2a上に、相互に平行に延びる複数の樹脂製スペーサ2cを形成する。
【0051】
次に、ベースシート2aをテーブル10上に固定した要領と実質的に同様の要領で、ロール32aから供給されるシート2dをベースシート2a上に配置する。具体的には、まず、制御装置40は、テーブル10上に固定されたベースシート2aのx2側の端部が吸着機構36の下方に位置するようにテーブル10を移動させる。次に、吸着機構36を降下させ、ベースシート2aに樹脂製スペーサ2cを介してシート2dを接着させる。その後、制御装置40は、吸着機構36によるシート2dの吸着を解除させ、吸着機構36を上昇させる。続いて、制御装置40は、テーブル10をx2側に移動させ、移動完了後、吸着機構36によりシート2dを吸着させた状態でカッター37によりシート2dを切断することにより、シート2dの配置を完了させる。
【0052】
以下、上記樹脂製スペーサ2cの形成、シート2dの配置を複数回繰り返すことにより、図1に示す採光断熱材2を完成させる。そして、最後に、制御装置40は、正圧発生機構20に、圧縮されたイオンエアーを多孔体14b,15bに供給させる。これにより、吸着部材14,15によるベースシート2aの吸着を解除する。その後、テーブル10から採光断熱材2を取り外す。
【0053】
以上説明したように、本実施形態では、ベースシート2aの固定に多孔体14b,15bが使用されている。このため、例えば、ベースシート2aの位置がずれ、多孔体14b,15bの表面の一部がベースシート2aにより覆われていない場合であっても、ベースシート2aを確実に固定することができる。
【0054】
多孔体14b,15bの表面の一部がベースシート2aにより覆われていない場合におけるベースシート2aの固定をより確実にする観点から、多孔体14b、15bの気孔率は、10体積%〜50体積%の範囲内にあることが好ましい。多孔体14b、15bの気孔率が10体積%を下回ると、得られる吸着力の大きさが小さくなるため、ベースシート2aが十分に強固に固定されない場合がある。一方、多孔体14b、15bの気孔率が50体積%を上回ると、多孔体14b,15bの表面全体がベースシート2aにより覆われている場合に得られる吸着力の大きさは大きくなる。しかしながら、多孔体14b,15bの表面の一部がベースシート2aにより覆われていない場合に得られる吸着力の大きさが小さくなる傾向にある。このため、多孔体14b,15bの表面の一部がベースシート2aにより覆われていない場合にベースシート2aを十分に強固に固定できない場合がある。
【0055】
また、多孔体14b,15bの表面の一部がベースシート2aにより覆われていない場合におけるベースシート2aの固定をより確実にする観点からは、多孔体14b、15bの平均気孔径は、例えば、1μm〜10μm程度であることが好ましく、3μm〜7μm程度であることがより好ましい。
【0056】
また、本実施形態の場合、両面粘着テープを用いてベースシートを固定する場合とは異なり、ベースシート2aを容易に着脱できる。従って、ベースシート2aの位置ずれを容易に補正することができる。
【0057】
さらに、本実施形態では、採光断熱材2をテーブル10から取り外す前に、正圧発生機構20により圧縮されたイオンエアーを多孔体14b,15bに供給する。これにより、吸着部材14,15によるベースシート2aの吸着が解除される。従って、採光断熱材2を容易に取り外すことができ、採光断熱材2の取り外し時に、採光断熱材2が変形することを効果的に抑制することができる。特に、本実施形態では、イオンエアーの供給により、ベースシート2aに帯電している静電気を効果的に除去できる。従って、採光断熱材2をより容易に取り外すことができる。
【0058】
従って、本実施形態の製造装置1を用いることにより、採光断熱材2を容易かつ安定して製造することができる。
【0059】
なお、本実施形態では、採光断熱材2の取り外し前に圧縮されたイオンエアーを供給する場合について説明したが、圧縮されたイオンエアーの供給を、採光断熱材2の取り外しが完了するまで継続してもよい。
【0060】
また、本実施形態では、多孔体14b、15bは、実質的にカーボンにより形成されている。ここのため、多孔体14b、15bは、高い導電率を有する。従って、ベースシート2aに静電気が帯電することをより効果的に抑制することができる。
【0061】
また、多孔体14b、15bが実質的にカーボンにより形成されているため多孔体14b、15bは、例えば、金属よりも低硬度である。従って、多孔体14b、15bによりベースシート2aが傷つくことをより効果的に抑制することができる。
【0062】
以下、上記実施形態の変形例について説明する。なお、以下の説明において、上記実施形態と実質的に共通の機能を有する部材を共通の符号で参照し、説明を省略する。
【0063】
(第1〜第3の変形例)
上記実施形態では、図3に示すように、固定領域の長さ方向の両端部12a、12bに多孔体14b,15bを設ける例について説明した。但し、本発明において、多孔体の配置は、上記実施形態の配置に限定されない。
【0064】
例えば、図13に示すように、多孔体14b,15bと共に、テーブル10のx方向における中央部に多孔体16bをさらに設けてもよい。
【0065】
また、図14に示すように、多孔体14b〜16bを、x方向に沿うように配置し、y方向に沿って配列してもよい。すなわち、多孔体14bを、テーブル10のy1側端部においてx方向に沿って配置し、多孔体15bを、テーブル10のy2側端部においてx方向に沿って配置し、多孔体16bをy方向の中央部においてx方向に沿って配置してもよい。
【0066】
また、ひとつの多孔体を固定領域12の全面に設けてもよい。
【0067】
また、例えば、図15に示すように、複数の多孔体14bをテーブル10にマトリクス状に配置してもよい。この場合、ベースシート2aを、ベースシート2aの表面が平坦となるように確実に固定することができる。
【0068】
具体的に、図15に示す例では、第1のベクトルV1と、第1の基底ベクトルV1に対して傾斜している第2のベクトルV2とを基底ベクトルとして有するマトリクス状に複数の多孔体14bが配置されている。この場合、ベースシート2aを、ベースシート2aの表面が平坦となるように、より確実に固定することができる。
【0069】
特に、本実施形態では、第1のベクトルV1が搬送方向であるx方向と直交しており、第2のベクトルV2がx方向に傾斜しており、x方向と、y方向との両方において、多孔体14bが均一に配置されている。従って、ベースシート2aを、ベースシート2aの表面が平坦となるように、さらに確実に固定することができる。
【符号の説明】
【0070】
1…製造装置
2…採光断熱材
2a…ベースシート
2b…構造体
2c…樹脂製スペーサ
2d…シート
10…テーブル
10a…テーブルの表面
11…駆動機構
12…固定領域
12a…固定領域の第1の端部
12b…固定領域の第2の端部
13…テーブル本体
14,15…吸着部材
14a、15a…吸着部材本体
14b、15b、16b…多孔体
14c、15c…連通孔
17…減圧ポンプ
18,19,23,24…ソレノイドバルブ
20…正圧発生機構
21…圧縮ポンプ
22…イオン供給機構
25…固定機構
30…ベースシート供給機構
30a…ロール
30b〜30f…搬送ロール
31…形成機構
32…シート供給機構
32a…ロール
32b〜32f…搬送ロール
33…吐出ノズル
34,36…吸着機構
35,37…カッター
40…制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するシートと、前記シートの上に形成された構造体とを有するシート構造体の製造装置であって、
前記シートが固定される固定領域を表面に有するテーブルと、
前記固定領域に固定されたシート上に前記構造体を形成する形成機構と、
前記シートを前記固定領域に固定する固定機構と、
制御装置とを備え、
前記固定機構は、
少なくとも一部が前記固定領域内に位置すると共に、表面が前記テーブルの表面と面一となるように前記テーブルに設けられており、連続気泡を有する多孔体と、
前記多孔体に負圧を与える負圧発生機構と、
前記多孔体に正圧を与える正圧発生機構とを有し、
前記制御装置は、前記負圧発生機構に負圧を発生させることにより前記シートを固定した後に、前記形成機構に前記構造体を形成させ、その後、前記正圧発生機構に正圧を発生させる、シート構造体の製造装置。
【請求項2】
前記多孔体は、前記固定領域の第1の方向の一方側に位置する第1の端部内に少なくとも一部が配置されている第1の多孔体と、前記固定領域の前記第1の方向の他方側に位置する第2の端部内に少なくとも一部が配置されている第2の多孔体とを含む、請求項1に記載のシート構造体の製造装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の多孔体のそれぞれは、細長形状を有しており、
前記第1及び第2の多孔体のそれぞれは、第2の方向に沿って配置されている、請求項2に記載のシート構造体の製造装置。
【請求項4】
前記シートの平面形状は、長手方向が前記第1の方向に沿った矩形状であり、
前記第1の端部は、前記固定領域の長さ方向の一方側端部であり、前記第2の端部は、前記固定領域の長さ方向の他方側端部である、請求項2または3に記載のシート構造体の製造装置。
【請求項5】
前記多孔体は、前記固定領域のうちの前記第1の端部と前記第2の端部との間の領域に配置されている少なくともひとつの第3の多孔体をさらに含む、請求項2〜4のいずれか一項に記載のシート構造体の製造装置。
【請求項6】
前記多孔体は、ポーラスカーボンからなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシート構造体の製造装置。
【請求項7】
前記多孔体の気孔率が10体積%〜50体積%の範囲内にある、請求項1〜6のいずれか一項に記載のシート構造体の製造装置。
【請求項8】
前記シートは、樹脂シートである、請求項1〜7のいずれか一項に記載のシート構造体の製造装置。
【請求項9】
前記正圧発生機構は、前記多孔体に対して圧縮されたイオンエアーを供給する機構である、請求項1〜8のいずれか一項に記載のシート構造体の製造装置。
【請求項10】
前記多孔体は、複数設けられており、
前記複数の多孔体は、前記テーブルにマトリクス状に配置されている、請求項1,6〜9のいずれか一項に記載のシート構造体の製造装置。
【請求項11】
前記複数の多孔体は、第1のベクトルと、前記第1のベクトルに対して傾斜している第2のベクトルとを基底ベクトルとするマトリクス状に配置されている、請求項10に記載のシート構造体の製造装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載のシート構造体の製造装置を用いたシート構造体の製造方法であって、
前記負圧発生装置により前記多孔体に負圧を与えることによって、前記テーブルの前記固定領域に前記シートを固定する工程と、
前記負極発生装置により前記多孔体に負圧を与えることにより前記固定領域に前記シートを固定した状態で、前記固定されたシートの上に、前記形成機構により前記構造体を形成し、前記シート構造体を得る工程と、
前記正圧発生機構により、前記多孔体に正圧を付与した状態で、または前記多孔体に正圧を付与した後に、前記シート構造体を前記テーブルから取り外す工程とを備える、シート構造体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−73133(P2011−73133A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8230(P2010−8230)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【特許番号】特許第4644301号(P4644301)
【特許公報発行日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】