説明

探傷装置

【課題】 安定性を向上させるとともに、柱状体に生じた傷を確実に探査させる探傷装置を提供する。
【解決手段】 探傷装置のロボット本体10は、柱状体を抱きかかえて昇降・旋回し、前記柱状体に生じた傷を探傷する装置であって、前記柱状体を挟み込む平行リンク機構16と、ストローク量にかかわらず設定値内の押圧力を前記平行リンク機構16に作用させて、前記柱状体の径の太さにかかわらず前記押圧力を前記柱状体に加えるガスバネ22とを有する構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は探傷装置に係り、特に道路照明柱のような柱状体の溶接部や照明灯取付部の損傷を探査するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
道路照明柱は、一般的に、柱状体を地面に立設するとともに、その先端部を道路側に向けて湾曲させ、この先端に照明灯を設けたものである。前記柱状体は、その上方が下方に比べて細くなったテーパ形状であり、直径の異なる複数のポールを溶接によって接合した構造である。このような道路照明柱は、建設以来数十年を経過したものが多くを占めているので、長期に渡り風雨や交通量の増加にともなう振動等の過酷な条件にさらされている。その結果、道路照明柱は、腐食や疲労等により傷が発生し倒壊する危険性が懸念されるので、定期的な点検が行われている。
【0003】
この道路照明柱の点検方法は、従来、熟練者による打音検査や目視により行われていたが、作業者の熟練度に依存する等の問題点があった。この問題点を解決するために特許文献1,2に開示された発明は、ロボット本体は、柱状体を昇降するためのローラおよび旋回するためのローラを備えるとともに、昇降時に柱状体の溶接箇所を検出するセンサおよび溶接箇所の傷を探査するセンサを備えた構成とされ、柱状体を抱着しながら上昇移動して柱状体の溶接部を検出し、探傷センサが溶接部に対応するように停止した後、柱状体を周回動作することにより探傷センサを周回させて探傷を行うとしたものである。
【0004】
また特許文献1,2に開示された発明は、ロボット本体に子ロボットを搭載し、この子ロボットは、細径となる柱状体先端部に抱着可能な転動ローラおよび柱状体先端部を撮像可能なカメラを備えた構成であり、ロボット本体が停止した位置から柱状体先端側に移動して、カメラを旋回させて柱状体先端部の外観を撮像することにより画像表示させて柱状体先端側の探傷を行うとしたものである。
【特許文献1】特開2004−34219号公報
【特許文献2】特開2004−37210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述したロボット本体や子ロボットに更なる改良を加えることにより、装置の安定性を向上させるとともに、柱状体に生じた傷を確実に探査させるようにした探傷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る探傷装置は、柱状体を抱きかかえて昇降・旋回し、前記柱状体に生じた傷を探傷する装置であって、前記柱状体を挟み込む挟持手段と、ストローク量にかかわらず設定値内の押圧力を前記挟持手段に作用させて、前記柱状体の径の太さにかかわらず前記押圧力を前記柱状体に加えるアクチュエータと、を有することを特徴としている。
【0007】
また前記挟持手段は、前記挟持手段を開く方向に力を作用させるシリンダを備えたことを特徴としている。
また前記挟持手段は、前記柱状体を周回方向に移動するための旋回ローラと前記柱状体を昇降するための昇降ローラとを有し、前記旋回ローラおよび前記昇降ローラは、前記旋回ローラが前記柱状体に接触したときの前記柱状体の断面中心と、前記昇降ローラが前記柱状体に接触したときの前記柱状体の断面中心とが同一として、選択接触可能に配設された、ことを特徴としている。
【0008】
また前記昇降ローラは前記柱状体に倣って配設され、前記昇降ローラと前記柱状体との把持角を設定値内に保つ円筒形状としたことを特徴としている。
また前記昇降ローラは、前記昇降ローラを駆動させるサーボモータを備えたことを特徴としている。この場合前記サーボモータに、逆転防止機能を備え、逆転落下を防止するためのウォームギアを設けることができる。
【0009】
また柱状体を抱きかかえて昇降し、前記柱状体に生じた傷を探傷する装置であって、前記柱状体を挟み込む開閉アームと、前記開閉アームの基部側と接続され、前記開閉アームの開閉を行うモータ・スクリュー駆動手段と、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る探傷装置は、挟持手段を閉じるのにアクチュエータを用いるので、挟持手段は、柱状体の径が変化しても、ある設定値内の押圧力で柱状体を把持抱きかかえることができる。また挟持手段にシリンダを設けることで、アクチュエータの押圧力に対向して挟持手段を容易に開くことができる。また旋回ローラが道路照明柱に接触するときの道路照明柱中心位置と、昇降ローラが道路照明柱に接触するときの道路照明柱中心位置とが同一になるよう選択可能に配設されているので、探傷装置の昇降時や旋回時における各センサの道路照明柱への接触性を向上させることができ、安定して探傷を行うことができる。またロボット本体の昇降ローラは円筒V字型に配設されているので、道路照明柱の径の太さにかかわりなく、設定値内の当接角度(把持角)で昇降ローラと道路照明柱とが当接することができる。また探傷装置の昇降にウォーム減速機付サーボモータの駆動を利用しているので、昇降時における速度を一定にすることができる。またウォーム減速機により探傷装置が道路照明柱から落下するのを防ぐことができる。
また開閉アームはモータ・スクリュー駆動方式であるので、停電等の異常が発生しても探傷装置が落下するのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明に係る探傷装置の好ましい実施形態について説明する。探傷装置は、柱状体である道路照明柱の探傷を行うロボット本体と、このロボット本体に搭載され、ロボット本体から分離・独立して探傷を行う子ロボットとを備えている。
【0012】
まずロボット本体について説明する。図1はロボット本体の昇降ローラ部分を示す平面図である。また図2はロボット本体の平行リンク機構部分を示す平面図である。また図3はロボット本体の昇降ローラおよび旋回ローラ部分を示す平面図である。また図4はロボット本体の概略正面図である。ロボット本体10は、道路照明柱12に対面するフレーム14と、道路照明柱12を左右から挟み込み可能にフレーム14に取付けられた挟持手段とを備えた構成である。前記挟持手段は、道路照明柱12を抱きかかえることができる手段であればよく、例えば平行リンク機構16(16L,16R)を用いることができる。本実施形態では、前記挟持手段として平行リンク機構16を用いた形態で説明する。この平行リンク機構16には、道路照明柱12を昇降するのに用いられる昇降ローラ18と、道路照明柱12を周回方向に移動するために用いられる旋回ローラ20とが道路照明柱12に選択接触可能に取付けられている。
【0013】
一対の平行リンク機構16は、フレーム14の上下位置にそれぞれ取付けられている。この平行リンク機構16の開閉は、ストローク量にかかわらず設定値内の押付力を作用させることが可能なアクチュエータよって行われる。前記アクチュエータには、例えばガスバネを用いることができる。以下の説明ではガスバネ22を用いた形態で説明する。ガスバネ22は、その一端がフレーム14に固定ピン24を用いて結合され、ガスバネ本体28が平行リンク機構16にトラニオンピン26を用いて結合されている。そして平行リンク機構16には、ガスバネ22のスプリング推力により、この機構16の内側(道路照明柱12の中心方向)へ向かう押圧力が作用する。
【0014】
また前記フレーム14の中央部には、フレーム14に対して交差する方向に動作する直動ガイド30が設けられ、この直動ガイド30は、直動ガイドレール32と直動ガイド本体34とから構成されている。この直動ガイド本体34には、平行リンク機構16の先端部と接続する開脚アーム36が設けられている。そして直動ガイド本体34は、平行リンク機構16が外側に開いた状態であるとフレーム14側に位置し、平行リンク機構16が内側に閉じるにしたがって直動ガイドレール32に沿ってフレーム14から離れる方向に移動する。これにより直動ガイド30と開脚アーム36とは、左右の平行リンク機構16が同期を取って開閉可能にしている。
【0015】
このような平行リンク機構16には、平行リンク機構16を開くためのシリンダ38が設けられている。このシリンダ38の先端部40には長穴42が形成され、この長穴42を通るピン44によりシリンダ38と一方の平行リンク機構16とが結合され、シリンダ38の本体における端部46は平行リンク機構16にピン結合されている。そしてシリンダ38は、平行リンク機構16が内側に閉じているとシリンダロッドを縮めた状態にしているので、長穴42を通るピン44は長穴42内を自由に動くことができ、道路照明柱12を挟み込むことが可能になる(図2(b)参照)。また平行リンク機構16を外側に開く場合、シリンダロッドを伸ばす方向に動作させると長穴42の内側端部にピン44が押されて、平行リンク機構16が強制的に開放される(図2(a)参照)。これによりガスバネ22の押圧力により強制的に閉じていた平行リンク機構16を、シリンダ38を動作させることにより強制開放することが可能になる。なおシリンダ38には、電動シリンダを用いればよい。
【0016】
前記昇降ローラ18および前記旋回ローラ20は各平行リンク機構16に設けられている。昇降ローラ18は円筒のローラであり、これを道路照明柱12の周回方向に倣ってV字状に配設されている。昇降ローラ18と道路照明柱12とが接触する角度は、昇降ローラ18をV字状に配設すると、道路照明柱12の径の太さが変化したとしても同じ角度となる。この昇降ローラ18には、駆動手段となるウォーム減速機付サーボモータ48が設けられている。サーボモータとすることにより、昇降時の速度を安定させることが可能になる。なお駆動手段にパルスモータを用いた場合は、負荷バランスの不平衡によりモータの脱調現象が生じて速度が不安定となり、逆転落下する虞があるが、サーボモータを用いた場合は、このような逆転落下が生じることはない。またサーボモータにウォーム減速機を設けることにより、停電等の異常時においてもロボット本体10が落下するのを防ぐことが可能になる。
【0017】
また旋回ローラ20は、昇降ローラ18が道路照明柱12に接触していると道路照明柱12から離れており、昇降ローラ18が道路照明柱12から離れていると道路照明柱12に接触している。そして旋回ローラ20が道路照明柱12に接触したときの道路照明柱12の中心位置と、昇降ローラ18が道路照明柱12に接触したときの道路照明柱12の中心位置とは、同一位置となっている。なお同一位置には、同一とみなせる位置を含むものとする。すなわちロボット本体10は、昇降ローラ18が道路照明柱12に当接している場合と、旋回ローラ20が道路照明柱12に当接している場合とで、道路照明柱12に対する位置がずれることはない。このような旋回ローラ20の中心と昇降ローラ18の中心とが同じとなる構造にするために、旋回ローラ20は、各平行リンク機構16に2つ設けられて、左右の平行リンク機構16で4点支持する構成としている。
【0018】
フレーム14の上下にそれぞれ配設された一対の平行リンク機構16の間には、ロボット本体10の昇降時に道路照明柱12の溶接箇所を検出する探傷位置検出センサ50と、溶接箇所に生じた傷を旋回しながら検出する探傷センサ54とが設けられている。なお各センサを昇降ローラ18間の中央に配置することで、ロボット本体10の重心を道路照明柱12における断面方向の中心位置に合わせることができ、ロボット本体10の昇降・旋回時の動作安定を図ることが可能になる。
【0019】
探傷位置検出センサ50は、上下に配設された平行リンク機構16における左右いずれか一方のリンク機構16Lの中間部に配設され、これは溶接処理が肉厚の厚い下部ポールと、肉厚の薄い上部ポールとの間で行われるとの見地から道路照明柱12の肉厚を検出するようにし、この肉厚変化が急峻な箇所を特定して探傷領域である溶接箇所とみなしている。このため探傷位置検出センサ50は超音波センサで構成されている。そして探傷位置検出センサ50には、道路照明柱12と対面する側と反対位置に、ロボット本体10の昇降時に探傷位置検出センサ50を道路照明柱12へ押付けるシリンダ52が設けられている。
【0020】
また探傷センサ54は、上下に配設された平行リンク機構16における探傷位置検出センサ50が設けられていないリンク機構16Rの中間部に配設されている。そして探傷センサ54は磁気探傷センサを用いており、検査対象としての道路照明柱12を磁化させ、溶接箇所に傷が発生している場合に、この傷から漏れた磁束を検出して探傷を行う漏洩磁束探知方法を利用している。そして探傷センサ54には、道路照明柱12と対面する側と反対位置に、ロボット本体10の旋回時に探傷センサ54を道路照明柱12へ押付けるシリンダ56が設けられている。このようなロボット本体10は、内部に雨等が侵入するのを防止する形状とされた樹脂カバー58に覆われている。
【0021】
次に、子ロボットについて説明する。図5は子ロボットの説明図である。そして図5(a)は子ロボットの概略平面図であり、同図(b)は子ロボットの概略側面図である。子ロボット60は、ロボット本体10の上部に搭載され、ロボット本体10の上面に設置された囲い枠付収納台59によって着脱自在とされている。この子ロボット60は基台62を有しており、この基台62を照明柱12との面以外を囲むよう枠が設けられている。また基台62の上部には、道路照明柱12を挟み込む一対の開閉アーム64が設けられている。この開閉アーム64の開閉には、モータ・スクリュー駆動方式が用いられている。具体的には、開閉アーム64の基部側は、基部方向に対して斜めに延びる延設部66が形成され、この延設部66に長穴68が形成されている。また基台62上には、開閉アーム駆動ネジ70とこれを動作させるアーム駆動モータ72が設けられ、開閉アーム駆動ネジ70は、延設部66に形成された前記長穴68とピン結合されている。そしてアーム駆動モータ72が動作して開閉アーム駆動ネジ70が回転すると、駆動ネジ70の回転方向に応じて開閉アーム64が開閉される。
【0022】
また基台62上には、開閉アーム駆動ネジ70と交差する方向に動作する直動ガイド74が設けられ、この直動ガイド74はロボット本体10に設けられた直動ガイド30と同様の構成となっている。すなわち開閉アーム64と直動ガイド本体76とが開脚アーム78を介して接続され、直動ガイド本体76は、開脚アーム78が閉じると直動ガイドレール80に沿って道路照明柱12から離れる方向に移動し、開脚アーム78が開くと道路照明柱12側に移動するので、左右の開閉アーム64は同期を取って開閉される。
【0023】
そして開閉アーム64は、アームの先端方向へシャフトが延びるガイドローラ駆動シリンダ82を有し、ガイドローラ直動シャフト84の先端にガイドローラ86と子ロボット60が道路照明柱12から落下するのを防止するアーム(落下防止アーム)88が設けられている。そしてガイドローラ直動シャフト84を伸縮させることにより、ガイドローラ86は、道路照明柱12の径に追従可能に当接される。
【0024】
また子ロボット60には、子ロボット60を昇降させる昇降駆動ベルト100が設けられている。この昇降駆動ベルト100は、道路照明柱12の高さ方向に沿って設けられた2つのローラ102に掛け渡されており、このローラ102の1つに昇降モータ104が設けられている。そして昇降モータ104を駆動させるとローラ102が回転し、これに伴い昇降駆動ベルト100も動作する。
【0025】
さらに子ロボット60には、道路照明柱12から離れる方向に延びる旋回アーム90が設けられ、この旋回アーム90の先端部には、道路照明柱12や照明灯の取付け部に生じた傷の探傷を行う撮像手段92が設けられている。この撮像手段92には、道路照明柱12を撮像する画角を遮らない側方の位置に遮光板94が設けられている。なお撮像手段92の撮像方向、すなわち道路照明柱12に対して撮像手段92と反対側にある前記落下防止アーム88に遮光板を設けて、撮像手段92に入射する光の遮光をしてもよい。また旋回アーム90の基部には、旋回アーム90を道路照明柱12の周方向に旋回させるための旋回アームモータ96が設けられている。このような子ロボット60は、内部に雨等が侵入するのを防止する形状とされた樹脂カバー98に覆われている。
【0026】
次に、上述したロボット本体10と子ロボット60を操作する地上ユニットについて説明する。図6は探傷装置のシステムのブロック図である。地上ユニット110は、ロボット本体10と子ロボット60を制御するものである。すなわち地上ユニット110は、ロボット本体10や子ロボット60に搭載されているセンサ類や駆動手段を制御するための手段を備えており、ロボット制御指令を入力するロボット操作盤112と、昇降や旋回のための駆動系制御を行う駆動制御装置114を備えている。この駆動制御装置114は、同時に探傷センサユニット115を介して探傷センサ54の駆動制御と探傷監視装置116を作動制御し、探傷監視装置116は探傷センサ54の検出波形をモニター表示させ、傷の有無を表示させるようになっている。一方、子ロボット60の撮像手段92による撮像画像は、ビデオキャプチャー機能118によって取り込まれて前記探傷監視装置116に出力され、画像表示によって視覚判断にて探傷が行われる。そして電源設備として発電機120が装備され、電源を各機器に供給している。
【0027】
次に、探傷装置の作用について説明する。まず子ロボット60を搭載したロボット本体10を道路照明柱12に対面させ、ガスバネ22を動作させて平行リンク機構16を閉じると昇降ローラ18が道路照明柱12に当接される。そしてロボット本体10は、ウォーム減速機付サーボモータ48を駆動させると、道路照明柱12を昇っていく。このとき昇降ローラ18は円筒V字状に配置されているので、道路照明柱12を昇っていっても昇降ローラ18と道路照明柱12との当接角度(把持角)は設定値内となり、そしてロボット本体10の道路照明柱12を昇る速度は一定となる。なお昇降ローラを鼓型(テーパローラ式)に配設した場合、ロボット本体が道路照明柱の上方に至るにつれて昇降ローラと道路照明柱との当接角度が変化するので、ロボット本体の道路照明柱を昇る速度を一定にすることはできない。
【0028】
ロボット本体10は、道路照明柱12を昇っている間、探傷位置検出センサ50により道路照明柱12の溶接部を探査し、この溶接部を検知すると昇るのを停止する。このとき探傷位置検出センサ50と探傷センサ54とは対面して平行リンク機構16に設けられているので、探傷位置検出センサ50が溶接部を検知してロボット本体10が停止すると、探傷センサ54が溶接部に対応して停止することになる。
【0029】
なお他の実施形態として、探傷位置検出センサ50と探傷センサ54とをオフセットさせて平行リンク機構16に配設されてもよい。この場合、探傷位置検出センサ50が溶接部を検知してロボット本体10が停止したときに、探傷センサ54が溶接部に対応して停止する必要がある。したがってオフセットさせる距離は、探傷位置検出センサ50による検出遅れ制御距離分とし、探傷位置検出センサ50から出力される超音波によって道路照明柱12の板厚変化が設定値より大きくなったことを演算して溶接部であると出力して停止させるまでの時間遅れ距離に対応させればよい。ここで昇降ローラを鼓型に配設した場合、道路照明柱の高さが変わることにより柱径が変化することになり、鼓型ローラと道路照明柱の接触部が変わる。このため昇降速度が変化し、上述のようにオフセット距離を設定しても探傷センサが溶接部に対応して停止しない恐れがあるが、本実施形態に係る昇降ローラ18の配置では、道路照明柱12の高さにかかわらずロボット本体10の速度は一定なので、探傷センサ54が溶接部に対応して停止される。
【0030】
溶接部が検出されると、旋回ローラ20が道路照明柱12に当接されるとともに、昇降ローラ18が道路照明柱12から離れる。そしてロボット本体10は、探傷センサ54を溶接部に対面させながら道路照明柱12を旋回して探傷を行う。また子ロボット60は、ロボット本体10から分離・独立した後、道路照明柱12を昇っていき、撮像手段92を用いて探傷を行う。
【0031】
このように探傷装置は、ロボット本体10の平行リンク機構16を閉じるのにガスバネ22を用いるので、ガスバネ22のストローク量にかかわりなく、道路照明柱12に対して設定値内の押付力を作用させることができる。
【0032】
またロボット本体10の昇降ローラ18は円筒V字型に配設されているので、道路照明柱12の径の太さにかかわりなく、昇降ローラ18と道路照明柱12との当接角度(把持角)を最適角度(90°)にすることができる。したがってロボット本体10が道路照明柱12を昇降するときの把持角度が変化していないため把持性能が良くなり、安全性の向上を図ることができる。また摩擦による駆動ロスを低減することができる。
【0033】
またロボット本体10の昇降に、ウォーム減速機付サーボモータ48の駆動を利用しているので、ロボット本体10の昇降時における速度を一定にすることができる。また不意の停電等が生じたとしても、ウォーム減速機によりロボット本体10が道路照明柱12から落下するのを防ぐことができる。
【0034】
また昇降ローラ18と旋回ローラ20とは、道路照明柱12に選択接触可能であり、且つ昇降ローラ18が道路照明柱12に接触するとき道路照明柱12中心位置と、旋回ローラ20が道路照明柱12に接触するときの道路照明柱12中心位置とが同一になるように平行リンク機構16に取付けられているので、ロボット本体10の昇降時や旋回時における各センサの道路照明柱12への接触性を向上させることができ、安定した計測を行うことができる。なお本実施形態では、昇降時における道路照明柱12の中心位置と、旋回時における道路照明柱12の中心位置とを同一にするために、旋回ローラ20を一対の平行リンク機構16において4点式としているが、中心位置を同一にできるならばこれに限定されることはない。
【0035】
また探傷位置検出センサ50と探傷センサ54とは、左右の平行リンク機構16のどちらか一方に探傷位置検出センサ50が設けられ、他方に探傷センサ54とが設けられている。そして各センサはローラ間の中央部に設けられている。したがってロボット本体10の重心位置を道路照明柱12における断面中心位置に合わせることができるので、ロボット本体10の昇降時や旋回時における動作の安定を図ることができる。またロボット本体10や子ロボット60をアルミ合金により構成することで、ロボットを軽量にすることができる。
【0036】
また開閉アーム64はモータ・スクリュー駆動方式であるので、停電等の異常が発生しても子ロボット60が落下するのを防止できる。
なお上述した形態では道路照明柱に生じた傷を探傷することについて説明したが、探傷装置が探傷できるのは道路照明柱に限定されることはなく、様々な柱状体の探傷を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】ロボット本体の昇降ローラ部分を示す平面図である。
【図2】ロボット本体の平行リンク機構部分を示す平面図である。
【図3】ロボット本体の昇降ローラおよび旋回ローラ部分を示す平面図である。
【図4】ロボット本体の概略正面図である。
【図5】子ロボットの説明図である。
【図6】探傷装置のシステムのブロック図である。
【符号の説明】
【0038】
10………ロボット本体、12………道路照明柱、16………平行リンク機構、18………昇降ローラ、20………旋回ローラ、22………ガスバネ、50………探傷位置検出センサ、54………探傷センサ、60………子ロボット、64………開閉アーム、92………撮像手段、110………地上ユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状体を抱きかかえて昇降・旋回し、前記柱状体に生じた傷を探傷する装置であって、
前記柱状体を挟み込む挟持手段と、
ストローク量にかかわらず設定値内の押圧力を前記挟持手段に作用させて、前記柱状体の径の太さにかかわらず前記押圧力を前記柱状体に加えるアクチュエータと、
を有することを特徴とする探傷装置。
【請求項2】
前記挟持手段は、前記挟持手段を開く方向に力を作用させるシリンダを備えたことを特徴とする請求項1に記載の探傷装置。
【請求項3】
前記挟持手段は、前記柱状体を周回方向に移動するための旋回ローラと前記柱状体を昇降するための昇降ローラとを有し、
前記旋回ローラおよび前記昇降ローラは、前記旋回ローラが前記柱状体に接触したときの前記柱状体の断面中心と、前記昇降ローラが前記柱状体に接触したときの前記柱状体の断面中心とが同一として、選択接触可能に配設された、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の探傷装置。
【請求項4】
前記昇降ローラは前記柱状体に倣って配設され、前記昇降ローラと前記柱状体との把持角を設定値内に保つ円筒形状としたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の探傷装置。
【請求項5】
前記昇降ローラは、前記昇降ローラを駆動させるサーボモータを備えたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の探傷装置。
【請求項6】
柱状体を抱きかかえて昇降し、前記柱状体に生じた傷を探傷する装置であって、
前記柱状体を挟み込む開閉アームと、
前記開閉アームの基部側と接続され、前記開閉アームの開閉を行うモータ・スクリュー駆動手段と、
を有することを特徴とする探傷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−313081(P2006−313081A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−135019(P2005−135019)
【出願日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(301031783)国土交通省中国地方整備局長 (5)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】